JP6603191B2 - 水質管理システムおよび方法 - Google Patents

水質管理システムおよび方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6603191B2
JP6603191B2 JP2016193480A JP2016193480A JP6603191B2 JP 6603191 B2 JP6603191 B2 JP 6603191B2 JP 2016193480 A JP2016193480 A JP 2016193480A JP 2016193480 A JP2016193480 A JP 2016193480A JP 6603191 B2 JP6603191 B2 JP 6603191B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
pipe network
water quality
drainage
distribution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016193480A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018053638A (ja
Inventor
太一 石飛
賢司 小泉
進吾 足立
信補 高橋
達広 佐藤
剛 武本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2016193480A priority Critical patent/JP6603191B2/ja
Publication of JP2018053638A publication Critical patent/JP2018053638A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6603191B2 publication Critical patent/JP6603191B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A20/00Water conservation; Efficient water supply; Efficient water use
    • Y02A20/152Water filtration

Landscapes

  • Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Description

本発明は、水を配給するシステムにおける、水質の管理に関する技術である。本発明は特に、水道水質管理システムに関し、特に管路全体の水質予測、及び管理方法に関する。
水を配給する配水管網においては、ブロック化された管網のバルブ付近や、管網末端において水が長期間滞留する場合がある。長期間滞留した水は、残留塩素濃度が低下するなど水質が変化する場合があるため、長時間滞留した水を排水する捨水という作業がある。
水質の維持と捨水作業に係るシステムの先行技術は、例えば特許文献1に見ることができる。なお、本明細書では、配水に係る管路全体を「配水管網」ということにする。また、配水管網において、ループ構造を持ち常に水が流れている管網を「本管」と、ループ構造が弱いかあるいは無く、水が滞留している管網を「管網末端」と、本管のうち配水池(あるいは、配水施設や浄水場)から可能な限り遠い箇所を「本管末端」ということにする。
特開2012−237156号公報
特許文献1の技術では、残留塩素計、水温計、及び導電率計を有する水質検出手段により、水道管路内の水質に関する情報を検出し、この検出された情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、排水手段の電動弁を制御して排水量を増減することで、水質の変化した水道管路内の水を排出し、水道管路内の水質を改善させる。また、水圧計により、水道管路内の水圧に関する情報を検出し、この検出された情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水手段の電動弁を制御して排水量を減らすことで、水道管路内の水圧低下を軽減する。
特許文献1の技術では、配水管網の他の箇所、例えば本管の塩素濃度を制御することはできないため、捨水の制御は特定箇所の塩素濃度に依存し、柔軟な制御ができない。さらに管網末端内の水質分布を予測できないため効率的に捨水できず、捨水量が増大する。
例えば、市規模の配水管網では、1000−10000箇所程度の捨水ポイントを、数十人単位の人で1年程度の周期で巡回して作業を行う。各箇所の作業時間は約1時間と見積もられる。また、捨水量は総配水量の0.5〜1.0%程度と予想される。このため、捨水量をより効率的に制御する課題は重要である。
また、捨水を少なくするためには、配水管網の最高残留塩素濃度を高く保てばよいが、残留塩素濃度はカルキ臭などの水質に影響するため、水質維持に必要な範囲にコントロールすることが望ましい。
そこで、本願発明の課題は、捨水作業を自動化し人的コストを下げるとともに、捨水量と消費者への水質の影響との関係をユーザに提示し、運用方法を選択できるようにすることにある。
上記課題を解決するための本願発明の一側面は、水供給源と、水供給源において水に塩素を注入する塩素注入設備と、水供給源から水を配水する本管と、本管に接続される管網末端とを備え、消費者に水の供給を行う配水管網に適用する、水質管理システムである。当該システムは配水管網の構造に関する管網図面情報を格納した管網図面情報データベースと、管網末端における排水に伴う水質変化の測定値である排水運用情報を格納する排水運用情報データベースと、水の需要量を推定するための需要量履歴情報データベースにアクセスが可能である。このシステムは、管網末端モデル化部と、水質分布計画策定部と、捨水計画策定部とを備えるものである。管網末端モデル化部は、排水運用情報に基づいて、管網末端における水質の経時的変化を表現する管網末端モデルを生成する。水質分布計画策定部は、塩素注入設備の塩素注入量が異なる複数の塩素注入計画について、管網図面情報と水の需要量に基づいて本管の残留塩素濃度分布を算出し、また、塩素注入計画の其々について、管網図面情報に基づいて、管網末端の入り口における残留塩素濃度を算出する。捨水計画策定部は、管網末端における排水の量とタイミングの組み合わせを複数の捨水計画として生成し、また、塩素注入計画の其々について、複数の捨水計画を適用し、管網末端入り口における残留塩素濃度と、管網末端モデルに基づいて、管網末端の残留塩素濃度分布を算出する。また、捨水計画策定部は、塩素注入計画の其々について適用した複数の捨水計画のなかから、管網末端の残留塩素濃度分布が規定の条件を満足し、かつ、捨水量が最小の捨水計画を最適捨水計画として抽出する。
本発明の他の一側面は、水供給源と、水供給源において水に塩素を注入する塩素注入設備と、水供給源から水を配水する本管と、本管に接続される管網末端と、管網末端に接続される水質計および排水設備を備え、消費者に水の供給を行う配水管網において、水質計および排水設備と交信可能な情報処理装置である水質管理装置による水質管理方法である。水質管理装置は、配水管網の残留塩素濃度分布をシミュレートするためのデータベースをアクセス可能であるものとする。この方法では、塩素注入設備の塩素注入量が異なる複数の塩素注入計画について、データベースに基づいて配水管網の残留塩素濃度分布を算出し、管網末端における排水の量とタイミングの組み合わせを複数の捨水計画として生成し、塩素注入計画の其々について、複数の捨水計画を適用し、データベースに基づいて、管網末端の残留塩素濃度分布を算出し、塩素注入計画の其々について適用した複数の捨水計画のなかから、管網末端の残留塩素濃度分布が規定の条件を満足し、かつ、捨水量が規定の条件を満たす捨水計画を最適捨水計画として抽出する。
本発明によれば、捨水作業を自動化し人的コストを下げるとともに、捨水量と消費者への水質の影響との関係をユーザに提示し、運用方法を選択することができる。
実施例が適用される配水管網の一例を示すモデル図。 実施例の水質管理システムの全体構成を説明するブロック図。 管網図面情報データベースの格納情報の一例を示す表図。 需要量履歴情報データベースの格納情報の一例を示す表図。 水質運用履歴データベースの格納情報の一例を示す表図。 排水運用情報データベースの格納情報の一例を示す表図。 管網末端モデルデータベースの格納情報の一例を示す表図。 システムの処理全体を俯瞰するフロー図。 管網末端の概念図。 管網末端の拡大モデル図。 キャリブレーション方法を説明する概念図。 水質測定結果の一例を示す表図。 キャリブレーションのフロー図。 管網末端モデル生成の詳細フロー図。 水質管理装置の全体フロー図。 水質分布計画策定部の処理の詳細フロー図。 捨水計画策定部の処理の詳細フロー図。 捨水シミュレーションの処理の詳細フロー図。 演算結果表示操作部に表示される操作画面の一例の平面図。 他の実施例の水質管理システムの全体構成を説明するブロック図。 検針データベースの一例を示す表図。 他のキャリブレーション方法を説明する概念図。 塩素注入計画の概念を示すグラフ図。 実施例の処理の全体概念を示すモデル図。 管網末端モデルのデータ概念図。
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数または順序を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下で詳細に説明する実施例の代表例では、捨水と水質のバランスを調整可能にする。そのため、少なくとも2つ以上の水質計(本管に設置される)、複数の自動排水設備を備えた管網の水質分布を推定し、塩素濃度を管理する。
一例を挙げると、浄水場から需要家へ水道水を供給する水道管路内において、水道管路内の管網を形成する配水本管内の水質に関する情報を検出する水質検出手段を設ける。また、水道管路内に設けられ、管網を形成しない配水支管内の水質に関する情報を検出する水質手段を備えた、管網を形成しない配水支管内の水を排出する排水手段を設ける。これらの構成と連動して、水質検出手段と排水手段から検出された情報を基に水道管路内の水質を制御する水質管理装置を設ける。水質管理装置は遠隔通信にて外部の情報を受け取る通信インタフェース部と、水質検出手段から検出された情報を保持する水質運用履歴情報データベースと、ユーザによって入力された水道管路の過去の需要量情報を保持する需要量履歴データベースと、ユーザによって入力された水道管路の情報を保持する管網図面情報データベースと、排水手段から検出された制御情報を保持する排水運用情報データベースと、管網を形成しない配水支管の水質変化モデルを保持する管網末端モデルデータベースと、管網を形成しない配水支管の水質変化モデルを計算する管網末端モデル化部と、管網を形成する配水本管内の水質分布を予測および変更する水質分布計画策定部と、水質分布計画策定部の計算結果を用いて捨水量が最小になるよう排水手段の操作計画を計算する捨水計画策定部と、水質分布計画策定部の計算結果と捨水計画策定部の計算結果を表示しユーザの操作を受け付ける演算結果表示操作部と、外部装置を遠隔通信によって制御する外部装置制御手段と、を備える。
管網末端モデル化部は、管網を形成しない配水支管内の水をあらかじめすべて排水し、その後排水を停止し、指定時間後または前記排水手段に備えられた水出検出手段において水質異常が検知された時点で排水を開始し、排水を開始すると共に排水された水の水質を微細に測定することで、ある時間後における前記管網を形成しない配水支管内の水質変化量を測定し水質変化モデルを計算できるように構成する。
<1.配水管網>
図1は、本実施例が適用される配水管網の一例を示すモデル図である。1は浄水場(水供給源)、2は捨水装置、3は水質計、4は管網末端、5は本管の範囲である。
浄水場1は、配水すべき水を生成し蓄える設備であり水の供給源となる。浄水場1は、塩素を水に投入する塩素注入装置を含む。捨水装置2は、所定量の水を捨水する機構であり、そのため例えばバルブのような機構を備える。水質計3は、水に含まれる残留塩素の量と温度を測定する。水質計3は、その他の物理量を測定しても良い。管網末端4は先に述べたように水が滞留している部分であり、管網末端4には図示しない水の消費者への配水管が存在する。
本管の範囲5には、複数の箇所に水質計3が設置されている。水質計3は図1に示すように、浄水場1からの距離が異なるものが複数配されている。
<2.水質管理システム構成>
<2−1.全体構成>
図2は、本実施例の水質管理システムの全体構成を説明するブロック図である。
浄水場1は、飲料水を生成する施設であり、図示しない塩素注入装置を備えている。塩素注入の量やタイミングは、監視制御端末201または監視制御サーバ202によって操作することができる。
水質計3は、一定時間ごとに残留塩素濃度と水温を測定する。測定データは、通信回線203を通して水質管理装置で収集され、後述する各種データベースへ登録する情報のための基礎データとなる。また、水質計3は監視制御サーバ202へ水質情報を送っている。ここで扱う水質とは残留塩素濃度と水温であるが、その他、水の濁度やpH値なども取得、送信が可能である。
捨水装置2は、例えば排泥弁と称される装置を用いる。これは、捨水を行うための装置であり、バルブを開けることにより管網内の水が外部へ排出される。既に述べたように従来は手動で操作するが、本実施例では通信回線203を介し、水質管理装置200からの遠隔通信によって、自動で開閉するものとする。捨水装置2は通常管網末端4に最低1つ設置され、対応して水質計が配置される。捨水装置2の近くに配置された水質計は、特にキャリブレーション機能を備える水質計204となっている。この水質計は、通信回線203を介した制御によって動作方法を制御可能となっている。
消費者205は、配水される水を利用する施設であり、例えば各家庭や工場その他の施設である。消費者205に供給される水の品質を保証することが重要である。
以上の設備に対して、通信回線203を介して水質管理装置200が接続されている。水質管理装置200は、例えばサーバのような情報処理装置であり、入力装置、出力装置、処理装置および記憶装置を備える。本実施例では計算や制御等の機能は、記憶装置に格納されたプログラムが処理装置によって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。情報処理装置が実行するプログラム、その機能、あるいはその機能を実現する手段を、「機能」、「手段」、「部」、「ユニット」、「モジュール」等と呼ぶ場合がある。また、データやプログラムを格納する記憶装置の部分を称して、「格納部」「データベース(DB)」と呼ぶ場合がある。
水質管理装置200は、管網末端モデル化部210、水質分布計画策定部220、捨水計画策定部230、演算結果表示操作部240、を備える。また、後述する各種データベースを備える。これらの動作の詳細は後に処理フローとともに説明するが、以下には概要のみ示す。
管網末端モデル化部210は、本実施例ではソフトウェアで構成する管網末端モデル算出部211を備える。
水質分布計画策定部220は、本実施例ではソフトウェアで構成する塩素注入計画算出部221および水質分布予測算出部222を備える。また、水質分布予測情報を格納する記憶装置である、水質分布予測格納部223を備える。
捨水計画策定部230は、本実施例ではソフトウェアで構成する捨水動作シミュレーション部231および捨水動作最適化部232を備える。また捨水計画を格納する記憶装置である、捨水計画格納部233を備える。
演算結果表示操作部240は、水質運用計画を格納する記憶装置である、水質運用計画格納部241を備える。また、ユーザが運用方法の提示を受け、また運用方法を選択するためのインタフェースである、運用方法表示選択部242を備える。
外部装置制御部206は、通信回線203を介して外部の装置を制御する、入力および出力装置の一つである。通信インタフェース部207は、通信回線203を介してデータ等を送受信する、入力および出力装置の一つである。また、特に図示しないが、水質管理装置200は、サーバが当然備えるキーボード等の入力装置や、画像表示装置やプリンタなどの出力装置を備えるものとする。また、水質管理装置200は磁気ディスク装置や半導体メモリ等の記憶装置を内蔵し、あるいは、通信回線203等を介してアクセス可能なものとする。磁気ディスク装置や半導体メモリ等には、後述する各種データベースやプログラムが格納されるものとする。
<2−2.水質管理装置の利用するデータベース>
水質管理装置200は、管網図面情報データベース251、需要量履歴情報データベース252、水質運用履歴データベース253、排水運用情報データベース254、管網末端モデルデータベース255、を利用する。これらは、水質管理装置200に内蔵される。あるいは、データベースは、通信回線などを介してアクセスできれば、水質管理装置の外部にあってもよい。以下に内容を説明する。
<2−2−1.管網図面情報データベース>
図3は、管網図面情報データベース251の格納情報の一例である。管網図面情報データベース251は、配水管網の物理的な構成や特性をデータベース化したものである。
例えば配管情報2511は配管の属性を現すものであり、配管のID、配管の位置を示す座標情報、配管の種類や材質、配管の口径、配管の長さ、配管内での残留塩素濃度の減少係数、配管の接続元の節点ID、接続先の節点ID等がある。残塩減少係数は後述する管網計算に用いる。
また、節点情報2512は節点の属性を現すものであり、節点のID、節点の座標、節点を介した水の需要量の変化パターン、節点に接続される配管を示す接続配管のID、節点の種別等がある。
また、管網末端情報は、管網末端の属性を現すものであり、管網末端のID,管網末端を構成する配管のID,管網末端に含まれる節点のID等が含まれる。
本実施例では、管網図面情報データベース251に上記3種類の情報を含んでいるが、これらが対応付けられていれば、3種類の情報を別個のデータベースとしても良いことは言うまでもない。また、管網末端情報2513は、配水管網の管網末端部分を抽出したものであるため、配管情報2511と節点情報2512に含め、管網末端であることを示すフラグを付して識別しても良い。配管情報と節点情報は現状の既存設備の動作に必要な情報として運用されている。本実施例では管網図面情報データベース251は配水管網の物理的な設置に伴って準備されるものとし、既存の値を用いるものとする。
<2−2−2.需要量履歴情報データベース>
図4は、需要量履歴情報データベース252の格納情報の一例である。需要量履歴情報データベース252は、水の過去の需要パターンを保存するものである。
図4の例では、節点ごとに需要量を管理するものとし、需要量情報2521では、対象となる節点のID、記録日、需要変化履歴ID、その他を格納している。需要量変化履歴情報2522では、需要変化履歴IDに対応して、何時どれだけの容量を使用したかを保存している。記録頻度や格納方法は一例であり、これに限るものではない。この情報は、通常の配水管網で管理される値を用いるものとし、通信回線203を経由して水質管理装置200に提供されるものとする。需要量変化履歴情報2522は、後述の各種管網計算に利用する。
<2−2−3.水質運用履歴データベース>
図5は、水質運用履歴データベース253の格納情報の一例である。水質運用履歴データベース253には、水質計3や水質計204から得られた水質のデータを保存しておく。
図5の例では、水質計ごとにデータを管理するものとし、水質運用履歴情報2531では、対象となる水質計のID、記録日、水質変化履歴ID、その他を格納している。水質変化履歴情報2532では、水質変化履歴IDに対応して、何時どんな水質だったかを保存している。記録頻度や格納方法は一例であり、これに限るものではない。この情報は、通信回線203を経由して水質管理装置200に提供されるものとし、後述の各種管網計算に利用する。
<2−2−4.排水運用情報データベース>
図6は、排水運用情報データベース254の格納情報の一例である。排水運用情報データベース254には、捨水装置2で排水を行った場合に、その情報を記録する。このとき、捨水装置には排水のための弁と、排水時の水質を測定する水質計が備わっているものとする。
図6の例では、管網末端ごとにデータを管理するものとし、排水運用情報2541では、対象となる管網末端のID、記録日、記録時刻、キャリブレーション用排水(後述)を行ったか否かのフラグ、排水水質情報ID、その他を格納している。排水水質分布情報2542では、排水水質情報IDに対応して、総排水量、および、排水量の推移に対応した水質を保存している。記録頻度や格納方法は一例であり、これに限るものではない。この情報は、後述の各種管網計算に利用する。後述する管網末端モデル化部において管網末端のキャリブレーションを実施した場合は、キャリブレーション用排水の属性に値「True」を入れ、通常の排水とは異なることを示しておく。この情報は、水質計204と連動する捨水装置2から、通信回線203を経由して水質管理装置200に提供されるものとする。
<2−2−5.管網末端モデルデータベース>
図7は、管網末端モデルデータベース255の格納情報の一例である。管網末端モデルデータベース255は、管網末端4の水質の変化量を記録するデータベースであり、キャリブレーション用排水の記録を基に、所定時間後に水質がどう変化したかを記録してある。
図7の例では、管網末端ごとにデータを管理するものとし、管網末端モデル対応情報2551では、対象となる管網末端のID、管網末端モデルID、その他を格納している。管網末端モデル構成情報2552では、管網末端モデルIDに対応して、モデル適用時間幅、モデル適用可能時期、および、管の長さに応じた水質の変化量を保存している。例えば、図7の例では、排泥弁1003の箇所を原点0として、原点から50m奥までの配管の範囲における24時間経過後の水質変化量は、マイナス0.3mg/Lの塩素濃度減少であることを示している。
各管網末端は複数のモデルを持っており、条件に応じてモデルを使い分ける。モデル適用時間幅は、管網末端の残留塩素濃度を初期状態においてから、何時間後にこのモデルが適用されるかを示す。例えば24時間後の水質変化量をまとめたものなら「24h」と記録される。一度作成されたモデルは、管網末端4のどのような状態からでも適用が可能である。従って、初期状態は、前日の残留塩素濃度分布結果があればそれを使用し、なければ末端の水質と管網末端モデルを用いて予測すればよい。また、モデル適用可能時期とは、このモデルを適用できる条件の情報である。条件は例えば、季節や祝日であり、例えば「春に適用」や「正月に適用」などである。これは、残留塩素濃度は、水温や水の消費量により影響を受けるためである。記録頻度や格納方法は一例であり、これに限るものではない。
<2−3.水質管理装置の機能ブロック>
以下、水質管理装置200の各機能ブロックの概要を説明する。機能ブロックの動作詳細は、後にシステムの動作フローを用いて説明する。
上述のように、これらの機能ブロックは、記憶装置に格納されたプログラムが処理装置によって実行されることで所望の機能を実行する。また、プログラムで実現した機能と同等の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアでも実現できる。そのような態様も本願発明の範囲に含まれる。
なお、水質管理装置200の構成は、単体のサーバで構成してもよいし、あるいは、入力装置、出力装置、処理装置、記憶装置の任意の部分が、ネットワークで接続された他のコンピュータで構成されてもよい。発明の思想としては等価であり、変わるところがない。
<2−3−1.管網末端モデル化部>
管網末端モデル化部210は、管網末端モデルのためのキャリブレーション指示を、外部装置制御部206と通信回線203を介して、捨水装置2および水質計204に与える。キャリブレーションの結果得られた情報は、通信回線203および通信インタフェース部207を介して収集される。収集された情報は排水運用情報データベース254に格納され、管網末端モデル算出部を基に管網末端の水質変化のモデル化を行う。モデルは管網末端モデルデータベース255に格納される。
また、モデル化としては新規作成の他、既存モデルに対する修正を行っても良い。修正は排水運用情報データベース254にデータが追加された場合に、その値を基に行う。データが追加される場合とは、例えば、管網末端4の水質計で水質違反を検知し、捨水計画とは無関係に排水を行った場合などが想定される。
<2−3−2.水質分布計画策定部>
水質分布計画策定部220では、塩素注入計画算出部221で浄水場1における塩素注入方法を生成する。その塩素注入方法の条件下で、水質分布予測算出部222は、管網図面情報データベース251と需要量履歴情報データベース252の情報を用いて本管の水質分布がどうなるかを計算する。計算結果は水質分布予測格納部223に格納する。
水質分布予測は需要量によって変化するため需要量を予測することが望ましく、そのため需要量履歴情報データベース252の需要量の過去の履歴を利用する。また水質分布の過去の履歴と照らし合わせ、乖離していないか、残塩減少係数が大幅に変わっていないかを確認することも可能である。なお、残塩減少係数はユーザから与えられるものとしているので、水質運用履歴情報データベース253の使用は必須ではない。
<2−3−3.捨水計画策定部>
捨水計画策定部230は、水質分布情報や各種データベース情報を基に、捨水量が最小になるよう運用する捨水計画を生成する。捨水動作最適化部232は、水質分布予測格納部223から管網末端の入り口の残留塩素濃度を取得する。捨水動作シミュレーション部231では、取得した残留塩素濃度と管網末端モデルデータベース255によるモデルや、他のデータベースのデータを用いて捨水動作のシミュレーションを行い、管網末端の塩素濃度分布を得る。シミュレーションは、塩素注入計画算出部221で設定された種々の注入塩素濃度、および、捨水動作最適化部232で生成されて捨水計画格納部233に格納された、種々の捨水計画の組み合わせ条件で複数とおり行われる。シミュレーションの結果として、各組み合わせ条件における捨水の総量を得ることができる。
<2−3−4.演算結果表示部>
演算結果表示操作部240は、捨水計画策定部230の処理結果を水質運用計画格納部241に格納し、運用方法表示選択部242で結果を表示し、ユーザの操作を受け付ける。
<3.システムの処理概要>
図8は、本実施例のシステムの処理全体を俯瞰するフロー図である。図8で概要を説明し細部は後に図を用いて詳述する。
処理S801で処理を開始する。開始トリガーは、例えば装置初期化処理や、電源ONである。装置初期化処理では、前回の記録を利用できるか(前回の水質分布や管網末端水質)、キャリブレーションが必要か、必要なデータがあるかなどのチェックを行っている。
処理は3つの部分からなり、主に、データを受け取り各種のデータベースを生成あるいは更新する部分(処理S802〜S805)、画面操作し、水質運用方法を計画する部分(処理S806〜S809)、運用計画に従い外部装置を動かす部分(処理S810〜S812)が存在する。
処理S802では、水質管理装置200は、通信インタフェース部207を介して、通信回線203から送られるデータを受信する。受信するデータは各節点、捨水装置2や水質計3、204から送信される排水情報や水質情報である。
処理S803では、受信したデータが排水情報か水質情報かで処理を分岐する。処理S804では、排水情報を受信し、排水運用情報を記録する。処理S805では水質情報を受信し、水質運用情報を記録する。
具体的には、処理S804において、管網末端からの排水運用情報をもとに、排水運用情報データベース254(図6)を生成あるいは更新する。また、処理S405では、水質計3,204、捨水装置2、からの水質データをもとに、水質運用履歴データベース253(図5)を生成あるいは更新する。
なお、他のデータベースである、管網図面情報データベース251(図3)は先に述べたように、配水管網の設置時に準備され、設備の改変が無い限り通常は不変である。需要量履歴情報データベース252(図4)は、節点を介した需要量の時間的変化を記録しており、通常は配水管網の運用上必要なデータとして別途蓄積される。管網末端モデルデータベース255(図7)は、排水運用情報データベース254(図6)のデータに基づいて生成、更新される(後述)。
水質運用方法を計画する部分では、処理S806で操作画面を起動し、処理S807で水質管理装置を起動し、処理S808で生成した運用計画を結果画面に表示する。その後処理S809で必要な運用計画を保存する。
処理S810では、運用計画が生成済みかどうかを判定し、処理S811では生成済みの運用計画を読み込み、S812では運用計画に従って捨水計画のための排水装置の制御を行う。また、塩素注入装置の制御を行ってもよい。また、キャリブレーション用排水(後述)などの計画も運用計画として保存され、ここで実行される
<4.キャリブレーション>
以下、管網末端におけるキャリブレーションについて説明する。キャリブレーションの結果に基づいて、管網末端の水質分布をシミュレートするための管網末端モデルを生成する。
図9は、管網末端4の概念図である。ループ構造を形成しない端、またはバルブ91が閉まっているためループ構造が失われている箇所が対象となる。またループ構造を形成しているが、ループ構造が非常に弱く、水が滞留し動かない場所も対象となる。管網末端4は、予め管網図面情報データベース251(図3)で管理者が定義しておく。
図10は管網末端4の拡大モデル図である。管網末端4は、配水管網を構成する本管1001から分岐した部分である。管網末端4には、キャリブレーション機能を有する水質計204が配置されている。また、管網末端には捨水装置2が配置されており、図10においては、排水口1002、排水口につながる排泥弁1003、および制御装置1004が捨水装置2を構成する。水質計204および捨水装置2は、通信回線203を介して水質管理装置200により操作の制御が可能となっている。
図10では、管網末端と排泥弁1003と排水口1002が直接つながっているが、排水管として別途分岐して接続された管に設置されていても問題ない。情報を送受信する通信装置1005は通信回線203を介して水質管理装置200と送受信が可能であり。制御装置1004は、その送受信する情報に基づいて排泥弁1003の開閉を制御する。また、水質計204に水を導入するために、水質データ測定用のサンプリング管1006が備えられている。サンプリング管1006開口を排泥弁1003近傍に配置すると、排泥弁1003の箇所の水質を、水質計204で測定することができる。水質計204は水質データを送信するほか、通信によって制御方法(測定頻度)が変更可能である点が、通常の水質計2とは異なる。
図11はキャリブレーション方法を説明する概念図である。ある時刻(例00:00)に排泥弁1003を開放し、本管1001の水が管網末端4を満たすまで排水口1002から水を捨てる。このため、例えば水を捨てながら水質を測定し、水質が一定になった時点で排泥弁を止める(図11(a))。
その後、指定時間、例えば24時間後まで待機する(図11(b))。または水質計204の測定値が基準値(例0.1mg/L)を下回るまで待機してもよい。時間の経過とともに、残留塩素量は減少するが、均一に減少するとは限らず、例えば図11(b)のように、残留塩素量は例えば温度や滞留時間に依存して、濃度が濃い部分と薄い部分が生じる。指定時間後、排泥弁1003を開放し、水を捨てながら細かく水質を測定する。その場合、図11(c)に示すように、水質計204に近い水から順番に、水質計204によって残留塩素濃度が測定される。
図12は、水質測定結果の一例である。図12に示すように、排水量に応じて水質の変化を測定する。こうすることで、図11の例では24時間後の配水支管内の水質分布を把握することが可能となる。この時捨てる量は管の長さから割り出した配水管内の水の量で決定する。すなわち、図12では排水量0〜200リットルまでの残留塩素量が0.1mg/Lであるから、排泥弁1003の位置から当該体積を配水支管の断面積で除した長さの部分までの残留塩素量が0.1mg/Lであることがわかる。このようにして得られた分布を基にモデルを計算する。
<5.管網末端モデル生成>
<5−1.キャリブレーションのフロー>
図13は、キャリブレーションのフローチャートであり、特定の管網末端における処理を説明している。キャリブレーションにより、特定の管網末端における水質変化のモデルである管網末端モデルを生成する。開始のトリガーは水質管理装置の初回起動時、またはユーザの指示により行われる。本フローチャートでは、図11で説明したように管網末端の水を一度すべて排水し、指定時間後に排水しながら水質を測定することで管網末端内の水質変化量を取得する。同様の処理は、各管網末端において行われるものとする。
処理S1301では、排水計画を立案する。すなわち、どの管網末端において、何時排水を開始し、何時排水を終了するかを定める。
処理S1302では、指定開始時刻になるまで待機する。
処理S1303では、管網末端の水の総入れ替えを実行する。水の総入れ替えにおいては、図11に示したように排水中において残留塩素濃度の推移を水質計204によって測定する。
処理S1304では、終了時刻に至るまでの間、水質計204の測定値において残留塩素濃度の異常発生を監視する。
処理S1305では、残留塩素濃度が規定値を逸脱した場合(例えば0.1mg/Lを下回った場合)には、その時点で測定を終了し、処理S1306に進む。規定値を逸脱しない場合には、引き続き測定を続ける。
以上の処理は、管網末端モデル化部210が外部装置制御部206を制御し、通信回線203を介して水質計204と捨水装置2を制御することで実行する。
処理S1306では、測定結果として、図12に例を示したデータを取得する。そのためには、水質計204と捨水装置2からの測定データを、通信回線203を介して水質管理装置200に送信する。データは通信インタフェース部207を介して受信される。
処理S1307では、測定データに基づいて、図6に例を示した排水運用情報データベース254にデータを格納する。キャリブレーション用の排水の場合には、排水運用情報2541のキャリブレーション用排水のフラグが「True」となり、測定された排水水質分布情報2542が格納される。
処理S1308では、排水運用情報データベース254のデータを基に、管網末端モデル算出部211が管網末端モデルを生成する。モデルでは、排水水質分布情報2542から、例えば排水量あたりの水質の変化量を規定する。詳細は図14で説明する。
処理S1309では、算出した管網末端モデルを、図7に例を示した管網末端モデルデータベース255に格納する。
以上のように、管網末端4は、水質計204と排水弁(排泥弁1003)を備える排水設備を備え、排水設備を制御することにより、排水弁により管網末端の水を全て排水し、その後排水を停止し、指定時間後または水質計204において所定の水質が検知された時点で排水を開始し、排水を開始すると共に排水された水の水質を水質計で測定することにより、排水運用情報2541を取得する。
<5−2.管網末端モデル生成の詳細フロー>
図14は、管網末端モデル算出部211による、管網末端モデル生成S1308の詳細フロー図である。開始のトリガーは。排水運用情報データベース254が生成された場合または更新があった場合である。またはユーザの指示により行うこともできる。
処理S1401では、更新された、または新規の排水運用情報を排水運用情報データベース254から読み込む。
処理S1402では、管網末端モデルデータベース255に既存のモデルがあるかどうかを確認する。
処理S1403では、既存モデルがなければ排水運用情報から管網末端モデルを生成する。管網末端モデルは、排水運用情報に基づいて、管網末端の所定の箇所の所定時間経過時における水質変化量のデータとして、管網末端モデルデータベース255に保存して終了する。
処理S1404では、管網末端モデルデータベース255に既存のモデルがある場合、既存のモデルを読み込む。既存のモデルが存在する場合には、必要に応じて、管網末端モデルを修正する。既存のモデルかどうかの確認は、管網末端IDの整合をチェックする。また、新たな排水運用情報の取得時期がモデル適用可能時期に該当するかどうかをチェックする。両者が一致するモデルは既存のモデルと判定される。
処理S1405では、既存の管網末端モデルを修正する。修正方法は、新規に得られた排水運用情報がキャリブレーションにより得られた排水運用情報の場合には、新規に得られた管網末端モデルの数値と、過去の管網末端モデルの数値の平均値を採用するという方法がある。また、最も大きい変化量を採用するという方法がある。あるいは、平均値を採用した上で、最も大きい変化量に応じて平均値に補正を行うことが考えられる。例えば、大きい変化量は、残留塩素濃度の減少割合が大きく、水質劣化の可能性があるため、平均値に対して水質劣化の余裕を確保するように補正を行う。
排泥弁1003は、水質計204の測定水質が規定範囲を逸脱した場合には、自動的に排水を行うように構成しているが、水質悪化により排水が自動実行された場合は、管網末端の水を全て入れ替え、そのままキャリブレーションを実行する。あるいは、悪化した水質の部分のみ必要分だけ捨て、捨てた量だけ既存モデルに補正をかける。
以上のキャリブレーション処理は、管網末端モデルデータベース255を構築するために行うが、管網末端モデルとしては、季節や時期に応じて種々のモデルを準備することが望ましいため、配水管網の通常の運用のバックグランドで常時実行することが望ましい。
<6.水質分布計画策定部および捨水計画策定部の動作>
<6−1.全体フロー>
図15は、水質管理装置の動作のフローチャートであり、主に水質分布計画策定部220と捨水計画策定部230が関係する部分である。開始のトリガーはユーザによって操作があった場合を想定している。このフローでは浄水場で投入する最高残塩濃度を種々設定し、各設定条件の中で捨水の量が最小になるよう運用する計画を生成する。
処理S1501では、最高残留塩素濃度(a)を初期化する。例えば、残留塩素濃度には適正範囲があるので、0.1mg/Lを下限とし、1mg/Lを上限とすれば、初期値として0.4mg/Lを設定する。この後の処理では、最高残留塩素濃度(a)を少しずつ増やしながら塩素注入計画を立てる。例えば0.4mg/Lから始め、ループのたびに0.05mg/Lずつ増やす
処理S1502では、設定した最高残留塩素濃度(a)で水質分布計画策定部220を実行する。ここでは、塩素注入計画を作成し、本管の水質分布を予測する。すなわち、時間と残留塩素濃度の組み合わせによって1日の塩素注入方法を表す塩素注入計画を上限値(a)、下限値(ユーザ指定、例えば0.1mg/L)の範囲で複数立案する。立案する数は例えば10個程度で、それぞれについて後に水質分布予測を立て、管網末端入口の濃度を予測する。後に図16で説明する。
処理S1503では、捨水計画策定部230を実行する。ここでは、捨水計画として捨水時刻と捨水量を決定する。ここでは、ある1つの塩素注入計画と水質予測の下、捨水計画を立てる。捨水計画は複数ある管網末端それぞれで決定される。例えばある管網末端aでは、10:00に500L、管網末端bでは17:00に100Lとなる。この捨水計画の決定は、管網末端aにおいて複数立てられた捨水計画案(例えば100個)の中から最も条件に合うものを選択る。条件に合うかどうかは捨水シミュレーションを実行することで確認できる。全ての管網末端についてこれを実行し、それぞれの末端での捨水計画を立案することで、水質と捨水の両方の計画を備えた水質運用方法が決定できる。後に図17で説明する。
処理S1504では、処理S1502および処理S1503の実行が指定回数以上となったかどうかを判定する。計画回数が指定回数以上とは、ここでは塩素注入計画の個数のことを表している。図15のフローチャート上では1つ塩素注入計画を立案し、捨水計画を立てることを、を繰り返す表現になっている。捨水の量を最小化する条件を得るための処理については、既知の組み合わせ最適化アルゴリズムから自由に選択して利用できるが、本実施例では、モンテカルロ法を利用している。
すなわち、図15の処理では、ひとつの最高残留塩素濃度(a)に対して、水質分布計画を複数生成する(S1502)。水質分布計画によって生成される水質分布は、配水管網その他の条件が普遍とすれば、浄水場1における塩素注入計画に依存している。そして、各水質分布計画について、捨水計画策定部で複数の捨水計画をランダムに生成し、捨水が最小になる捨水計画を選ぶ(S1503)。そのモンテカルロ法の試行回数を処理S1504で判定している。
処理S1505では、試行回数を実行した後に、最高残留塩素濃度(a)ごとに、捨水が最小の捨水計画を選択して水運用計画格納部241に保存する。保存されるデータは、ある塩素注入計画と対応付けられた捨水計画である(後の図24参照)。すなわち、複数の塩素注入計画の内、最も良い捨水量を示したものを選択し保存する。そしてこれをある塩素注入計画における捨水量、および水質分布とする。さらにオプションとして、その中で平均塩素注入量が少ないものや、捨水ポイント数が少ないものを選択してもよい。
処理S1506では、最高残留塩素濃度が上限に達しているかどうか判定し、達していない場合には、処理S1507で残留塩素濃度を一定値増加して、処理S1502に戻る。最高残留塩素濃度としては、例えば1mg/Lである。
最高残留塩素濃度が上限に達している場合には、処理S1508に進み、演算結果表示操作部240に結果を表示する。演算結果表示操作部への結果の表示については、後述する。
結局、図15の処理の出力としては、ひとつの最高残留塩素濃度(a)に対して、捨水量が最小となる、水質分布計画と捨水計画の組み合わせを得ることができる。水質分布計画は浄水場の塩素注入の条件を制御し、捨水計画は管網末端の捨水の条件を制御する。なお、配水管網全体での捨水量を評価するためには、各管網末端において捨水量が最小となる条件を求め、その捨水量を合計すればよい。
<6−2.水質分布計画策定部の処理フロー>
図16は、水質分布計画策定部220の実行処理S1502の詳細フローチャートである。開始のトリガーは水質管理装置200からの呼び出しである。このフローでは、塩素注入計画を作成し、本管の水質分布を予測する。要素技術としては、既存技術である(EPANET)などを利用することができる。EPANET(エパネット) はアメリカ合衆国環境保護庁の水道水資源課(英:Water Supply and Water Resources Division)により開発された管網解析用のパブリックドメインソフトウェアである。
処理S1601では、塩素注入計画算出部221で、浄水場1における塩素の注入量を立案する。 図23は、塩素注入計画算出部221で作成される塩素注入計画の概念を示す図である。最高残留塩素濃度2301と、最低残留塩素濃度2302の間で、残留塩素濃度2303を制御する。例えば最高残留得塩素濃度を1.0mg/L、最低残留塩素濃度を0.1mg/Lとした場合、図23のような塩素注入計画が複数生成できる。つまり、与えられた上下限値の中で濃度を例えばランダムに変化させ、それを塩素注入計画として立案する。
図16以降で説明する本実施例では、例えばこの上下限値の中で10通りの塩素注入計画を立案し、次にそれぞれの案について捨水計画を立案する。
図24は、本実施例の処理の全体概念を示す図である。上述のように塩素注入計画2401を複数生成する。処理の手順としては、まず1つの塩素注入計画2401(およびそれに付随する水質分布予測)を選択する。次に複数存在する管網末端2402の中から1つ選択し、選択した管網末端において複数の捨水計画2403を立案し、シミュレーションによってその結果を確かめる。例えば、100通りの捨水計画2403(時刻と捨水量の組み合わせ)を生成し、その中で最も良いもの、例えば規定の残留塩素濃度で最も捨水量が少ないものを選択する。これを管網末端2402すべてに対し実行することで、管網末端2402ごとに最も好ましい捨水計画を決定し、それらを合算することで選択した塩素注入計画2401(例えば塩素注入計画(1))の捨水量を計算する。これを立案した全ての塩素注入計画2401に対し実行する。その後、最も捨水量が少ない塩素注入計画2401を選択する(同時に捨水計画2403も決定する)。
塩素注入計画において注入できる残留塩素濃度の最高値が増えると、より捨水量を減らせる計画を立てられる代わりにカルキ臭が増大する可能性がある。反対に、最高値が下がるとカルキ臭は収まるが、捨水量が増大する。従って、最高残留塩素濃度をすこしずつ変えながら捨水量を計算することで、最終的に後に図19で説明するトレードオフのグラフを作成することが可能になる。
なお、塩素注入計画で一定の濃度にしない理由としては、需要量が一定ではないということがある。例えば朝の需要量が多く水が大量に消費される場面では、残塩濃度を上げる必要はほとんどない。ここで浄水池の水に高い濃度を設定すると、その濃度のまま需要家に届いてしまう。反対に夜は需要量が少ないため高い濃度にしないと需要家に届くまでに残留塩素濃度が低下し、水質違反を起こす可能性がある。そのため、浄水場で投入する塩素量は一定ではなくある上下限値の中で変動させる必要があり、捨水を削減するのに最もよい変動方法を見つけるため複数計画を立案することが望ましい。以降の説明で、具体的な処理は詳細に説明される。
処理S1602では、水質分布予測算出部222にて、ある塩素注入方法において、本管における水質分布を管網計算によりシミュレートする。このために、管網図面情報データベース251(図3)、需要量履歴情報データベース252(図4)、水質運用履歴データベース253(図5)のデータを用いる。
管網計算によって水質分布を計算する場合、基本的には次のようなステップを踏む。
(1)まず管網内の水の動きを調べるため、水圧、流速、流向、滞留時間などを求める。これには管網図面と管網のパラメータ(延長や口径、標高)、需要量データが必要となる。水道水は消費者が水を使用することによって流れるため、需要量を設定して水の流れを計算する必要がある。需要量は過去のデータを参考に将来予測を立て利用する。予測手法としては、平均値を取る、あるいは、直近の値をとる等周知の方法を適宜適用してよい。
このため、管網計算によるシミュレーションでは、管網図面情報データベース251のデータから水の流量、流向、水圧などの解析を行う。また、需要量履歴情報データベース252のデータから需要量予測などが行われる。
(2)次に(1)の結果を用いて、水質分布を計算する。水質分布の計算には(1)の計算結果に加えて各配管の残塩減少速度係数が必要になる。残塩減少速度係数は、過去のある日の需要量、水質データを用いて計算することができる。
残留塩素の減少量は原理的に以下の数式1
=C・e−kt (数式1)
で与えられる。ここで、
: t時間経過後の残留塩素濃度(mg/L)
: 残留塩素濃度の初期値
k : 残留塩素濃度の減少速度係数
t : 経過時間(hr)
である。
数式1はある残塩濃度の水の水質がt時間後にどうなるかを示す。よって、逆算することで管網の減少速度係数kを求められる。減少速度係数kは管網の種別や劣化具合で変わる。
このk値と滞留時間(浄水場1から水が出発し経過した時間)がわかれば、水質分布予測が可能となる。管網図面情報データベース251は、実験等で求めたこのk値を予め持っているものとする。滞留時間については、管網図面情報データベース251の配管の物理的なデータと水の供給量、需要量を用いて推定することができる。
従って、本管の水質分布予測に必要なデータは管網図面情報データベース251と需要量履歴情報データベース252となる。水質運用履歴情報データベース253は、水質分布計算時に過去データとかい離が無いかどうかや、その場合の補正のかけ方などを検討するためのオプション的な情報として用いる。
また、需要量によって水の流れは変わるため、同様に水質分布も変わる。浄水場で一定の濃度で塩素を注入した場合でも、本管の水質分布は時間帯によって異なる分布を示す。捨水を実行することで本管の需要量が変わるため、厳密に言えば水質分布に影響があるが、捨水量および捨水箇所が少なく捨水回数も日に数回程度の場合は、実質的に無視して問題がない。
処理S1603では、本管の水質分布から各管網末端入り口における水質の遷移データを作成する。管網末端入口の水質遷移は、捨水計画策定部230でデータとして用いる。
処理S1604では、作成した本管の水質分布と各管網末端入り口における水質の遷移データを、水質分布予測格納部223に保存する。
<6−3.捨水計画策定部の処理フロー>
図17は、捨水計画策定部230の処理S1503のフローチャートを示す。開始のトリガーは水質管理装置200からの呼び出しである。捨水計画は捨水時刻と捨水量を決定するもので、これは組み合わせ最適化アルゴリズムを自由に用いて決定できる。
処理S1701では、捨水制御回数を設定する。捨水制御回数は、一日の排水の回数である。例えば、「1日1回まで」のように設定する。
処理S1702では、捨水時刻と捨水量の組み合わせを捨水制御回数の制約条件で生成する。時刻としては例えば1時間刻みで24とおり、捨水量としては例えば0から管網末端全体の容量まで所定の体積刻みで設定することができる。例えば、「15時に500リットルの捨水を行う」のように設定する。消費者の使用方法により管網末端4入口の濃度が変化し、管網末端4内の濃度も消費者の使用方法により変化する。消費量は時刻により異なることが想定されるため、いつどれだけ捨水するかによりシミュレーションの結果が異なってくる。
処理S1703では、生成した捨水時刻と捨水量の組み合わせで捨水動作のシミュレーションを実施する。本実施例では、モンテカルロ法を利用している。処理S1702でランダムに時刻と捨水量の組み合わせを作成し計画を立て、処理S1703で捨水シミュレーションを実行することで捨水量を算出する。
シミュレーションS1703では、水質分布予測格納部223から設定時刻における管網末端の残留塩素濃度をシミュレートする。そのためには、管網末端モデルデータベース255から、該当する管網末端に対応する管網末端モデルの中から、適用可能時期を持つモデルを呼び出す。例えば、管網末端IDが1で、時期が春であれば、図7のモデルID1のモデルが使用できる。管網末端入り口の残留塩素濃度とこのモデルにより、捨水前の管網末端における残留塩素濃度分布を得ることができる。そして、捨水量を基に捨水後の管網末端における残留塩素濃度分布を得ることができる。そのためには、捨水前の管網末端における残留塩素濃度分布を、捨水量分排泥弁1103側にシフトさせればよい。また、排水に伴って本管から管網末端に流入する水の残留塩素濃度は、排水前の管網末端入り口の残留塩素濃度と同じであると仮定する。
シミュレーションS1703により、ある捨水計画の結果である、管網末端の残留塩素濃度分布が得られるので、処理S1704で水質違反をチェックする。たとえば、残留塩素濃度の許容範囲が、0.1mg/L〜1mg/Lであるとすれば、管網末端の残留塩素濃度分布の中で、一部分でも許容範囲から逸脱した場合は、その捨水計画は不採用とし、次の捨水計画候補を検証するために処理S1702へ戻る。水質違反が無かった場合には、処理S1705で結果を保存する。シミュレーション結果が、所定量保存できるまで同様の処理を繰り返し(処理S1706)、最後に保存した捨水計画から捨水量が最小となるものを抽出する(処理1707)。その後、結果を保存する(処理S1708)。
捨水量最小の計画の抽出では、その名の通り複数の捨水計画から捨水最小のものを抽出するほか、オプションとして平均残塩濃度が低いものなどを選択できる。上記の捨水量最小の計画の抽出を各管網末端それぞれについて行い、当該計画による捨水量を合算することによって、ある最大残留塩素濃度に対して、配水管網全体での捨水量を評価することができる。この場合、捨水時刻や捨水量、あるいは捨水の実行要否は管網末端ごとに設定するものとする。
以上のように、本実施例では、捨水計画および捨水シミュレーションは管網末端ごとに実行されて、最後に結果が統合される。本管を流れる水の量が非常に多いのに対して捨水量は非常に小さく捨水箇所も少ないため、捨水による本管の残塩濃度への影響はほぼ無いと考えられ、そのため各管網末端のシミュレーションは独立して実行することが可能である。
<6−4.捨水シミュレーションの処理フロー>
図18は、捨水シミュレーションの処理S1703の詳細フローを示す。開始トリガーは、捨水計画策定部230からの呼び出しである。
最初に管網末端の水質分布を設定する。一例としては、捨水計画格納部233を参照し、前回の捨水計画の有無を確認する(処理S1801)。
前回の捨水計画が無い場合には、初期値を入力し(処理S1802)、管網末端の水質を初期化する(処理S1803)。初期値としては、過去の排水運用情報や管網末端モデルを利用する。排泥弁1003近くの水質計204で水質を測定しているため、これを基準に管網末端4の分布を予測し初期値とする。 前回の捨水計画がある場合には、捨水計画格納部233から前回の捨水計画から想定される、前回(前日など)の捨水の結果である管網末端の水質分布を呼び出して用いる(処理S1804)。
処理S1805では、捨水計画策定部230の処理S1702でランダムに生成された捨水計画である捨水時刻と捨水量の組み合わせを一つずつ読み込む。例えば、捨水計画は「15時に500リットル」のようなものである。
処理S1806では、管網末端の水質変化を管網末端モデルデータベース255から呼び出したモデルを用いてシミュレートし、時間経過後の管網末端の水質分布を得る。
管網末端モデルが表すのは、たとえば24時間後の管網末端の水質変化量である。この変化は24時間かけて行われるが、時間と変化量、初期値が分かっているため1時間あたりの変化量も計算可能である。1時間あたりの変化量は残留塩素濃度のモデル式(数式1)を基に各区間のk値(残塩減少速度係数)を求めるか、または単に24で割った値を利用することを想定している。管網計算においては1つの配管のk値は一定であると想定するが、このk値には需要家の使用方法を考慮した分が入るため、区間ごとに値が異なる。従って生成される管網末端モデルのデータは図25のようなもの表している(例:24時間の変化量と計算されたk値)。
図25では、各区間における24時間後の水質変化量と、この区間の残塩減少速度係数を示している。与えられる条件としては、塩素注入計画による管網末端入口の水質分布予測、管網末端の図面、管網末端モデル、捨水計画がある。これにより、開始時刻、捨水時刻、捨水実行後、指定時刻の其々における管網末端の水質分布を得ることができる。
処理S1807では、捨水計画で規定される捨水時刻になったかどうかを判定する。捨水時刻になっていなければ、シミュレーションの指定時間を経過しているかどうか判定する(処理S1808)。指定時間が経過していなければ、処理1809で時間を進め、経過時間分の水質分布の変化を計算する(処理S1806)。この結果、例えば、「0時から15時まで管網末端4の水質分布の変化」が得られる。
処理S1807では、捨水計画で規定される捨水時刻になった場合には、捨水計画で規定される捨水量分の水の入れ替えを行う。先の例では、「15時に500リットル」の捨水を行う。入れ替えた分量だけの水が、本管から管網末端入り口を経て流入するものとし、その際の残留塩素濃度は水質分布予測格納部223から得た、管網末端入り口の残留塩素濃度を用いる。
処理S1808で指定時間を経過した場合には、管網末端内の水質分布を確認し、水質違反の有無を確認する(処理S1704)。水質違反があった場合には、その旨を記録し終了する(処理S1811)。水質違反がなければ、処理S1705(図17)に進む。水質違反の設定は、ユーザが任意に行うことができ、残留塩素濃度の上限、下限あるいは温度その他の条件を設定することができる。先の例では、「15時から24時まで水質変化を実行」する。処理S1704の水質確認では、水質違反を確認するだけでなく、本日最後の水質の状態を得ることができる。次の日に捨水計画を立案する場合はこの水質を初期値として利用する。
図15で説明したように、水質分布計画策定部220および捨水計画策定部230の処理の結果、ひとつの最高残留塩素濃度(a)に対して、捨水量が最小となる、水質分布計画と捨水計画の組み合わせを得ることができる。この結果を演算結果表示操作部240で表示する。
<7.演算結果表示操作部の処理>
図19は、演算結果表示操作部240において、水質管理装置200の出力装置(例えば画像表示装置)に表示される操作画面の一例である。
図の下部は、水質分布計画策定部220および捨水計画策定部230の演算結果表示と操作を受け付ける部分である。本実施例ではグラフ形式で示すものとしている。
棒グラフの横軸は、浄水場1での最高残留塩素濃度を示している。浄水場1において塩素を注入するため、これは配水管網全体での最高残留塩素濃度と等価である。この値は、図15の最高残留塩素濃度(a)の設定処理により与えられる。
棒グラフの上部のグラフは、実線1901が配水管網全体での捨水量を示し、点線1902は残留塩素濃度が所定値(例えば0.4mg/L)を超える需要家率を示している。捨水量は、図17のフローによる処理結果より得られる。また、需要家率については、捨水シミュレーション結果(S1705)と管網図面情報データベース251を利用し、需要家への給水管入り口部分の残留塩素濃度により得ることができる。また、棒グラフはシミュレーションの結果捨水が必要なポイント(管網末端の排水装置)の数を示している。当該捨水が必要なポイントは、図左上のモデル図にも表示することができる。
一般に、最高残留塩素濃度を高く設定すると、捨水の量は少なくすることができる。これは、捨水は残留塩素濃度が低くなった水を捨てるものであることから容易に理解できる。よって、例えば、浄水場での最高残留塩素濃度が高い1.50の領域と、低い0.60の領域を比較すると、最高残留塩素濃度が低い領域では、実線1901で示す捨水量と棒グラフで示す捨水ポイントが増加している。
一方、最高残留塩素濃度が高いということは、塩素濃度が高い水が需要者に供給されているということになり、例えば、点線1902で示す、濃度0.4mg/Lを超える水を供給される需要者の割合は、最高残留塩素濃度が高い領域で増加する。塩素濃度が高い場合、カルキ臭が強くなるなど水の品質に影響が出るため、殺菌などに必要な量の範囲で、塩素濃度は低いことが望ましい。
本実施例に拠れば、水質管理装置200の出力として、図19に示す情報をユーザに示すことができる。この結果、ユーザは最高残留塩素濃度と捨水量のバランスを所望の条件に設定することができる。すなわち、水の供給者側の損失となる捨水の量と、需要者の満足度を高める最高残量塩素濃度を所望の関係に設定することが可能となる。
そのためのインタフェースの例を示す。例えば三角形付の黒い縦線1903をスライドすることで、運用方法を選択できる。グラフは一例で、ユーザの設定によって表示内容を変更可能である。表示する基本的な情報としては、浄水場での最高残塩濃度(あるいは塩素注入量)と捨水量の関係がある。他に、選択した運用の残塩注入計画を表示し、ユーザによって注入計画を変更することなども可能である。
また、左上には、例えば縦線1903で選択した条件による排水管網が図示されている。捨水が必要な管網末端が表示され、ポイントを選択することで右上に当該管網末端の捨水計画情報を表示できる。
右上は、管網末端の捨水計画の詳細情報を表示する箇所である。捨水計画の詳細や、残塩分布の遷移、管網末端モデルなど、データベースに基づいた各種の情報を表示できる。
水質運用計画格納部241には、上記の表示に必要なデータを格納するものとする。運用方法表示選択部242によって、例えば黒い縦線1901で選択された運用方法に基づき、通信回線203を介して捨水装置2を制御することで所望の捨水を行うことができる。
以上のように、捨水計画策定部230は、配水管網が備える複数の管網末端の其々について捨水が最小となる最適捨水計画を抽出し、抽出した最適捨水計画の捨水量を合算する。演算結果表示操作部240は、塩素注入計画の其々について、塩素注入設備の塩素注入量に対応させて、合算した捨水量を、図19に示すような操作画面として表示する。
また演算結果表示操作部240は、操作画面の表示に応答して選択された前記塩素注入計画を認識し、配水管網が備える複数の管網末端の其々について、選択された塩素注入計画の合算した捨水量を実現するように、外部装置制御部206から通信回線203を介して最適捨水計画の実行を指示し、捨水装置2の排泥弁を動作させる。
第2の実施例について、実施例1と異なる部分のみ説明する。実施例1では、
水質管理装置200の計算結果をユーザに表示し、ユーザがその情報を基に塩素注入装置を制御する。排泥弁1003の制御は水質管理装置200が直接制御する。すなわち、捨水装置2について、水質管理装置200からの遠隔操作を可能としていたが、塩素の注入量については、演算結果表示操作部240で表示するが、実際の塩素の注入は別途行うことにしていた。
第2の実施例としては、演算結果表示操作部240から外部装置制御部206を制御する構成を追加し、通信回線203を介して浄水場1に付随する監視制御端末201や監視制御サーバ202と連携して、浄水場1での塩素注入装置も水質管理装置200から制御可能としてもよい。具体例としては、水質管理装置200の計算結果を浄水場1の監視制御端末201に直接送信し、水質管理装置200が直接塩素注入装置を制御するとともに、排泥弁1003の制御も水質管理装置200が直接制御する。
図20を用いて、第3の実施例について、実施例1と異なる部分のみ説明する。管網末端4の需要家にスマートメータ(通信機能付き水道メーター)2001が備えられている。水質管理装置200には検針データベース2002が追加されており。スマートメータ2001で取得されたデータは、通信回線203を介して通信インタフェース部207により受信され、受信した検針データは検針データベース2002に格納される。検針データとしては、各消費者205の使用した水の量を時系列的に取得したものがある。
検針データベース2002のデータは、水質管理装置200の各種計算手段で利用することができる。例えば、検針データベース2002のデータは、管網末端モデル化部210において管網末端モデルの算出に使うことができる。また、例えば、水の需要量を精密に取得することができるため、捨水動作シミュレーション部231で使用することにより、実施例1の計算に補正を行い、さらに精緻に計算することができる。
図21は検針データベース2002の一例を示す表図である。検針データデータベースでは、各消費者でいつどれくらいの水が使用されたかの検針データが記録されている。検針場所情報2101では、スマートメータ2001が配置される節点IDと、記録日、および当該記録日の検針データIDが格納される。検針データIDに対応して、検針データ情報2012には、各時間における使用量が格納される。
図22では、検診データをキャリブレーションに用いる例を説明する。図22は、スマートメータ2001付きの消費者205が配置されている管網末端4のモデル図を示す。キャリブレーション手順は実施例1と同様である。ただし、実施例3では、キャリブレーション時に検針データを取得し、管網末端4の配水管内の滞留時間分布を求める。すなわち、スマートメータ2001により、消費者205が使用した使用量のデータ2201を得ることができる。したがって、使用量分の水を配管内から除去し、その分を本管から水を引き込むことにより、配水支管内の水の移動をより精密に検出することが可能となる。それにより、管内の精密な水の滞留時間の分布2202を得ることができる。そして最終的に滞留時間分布と排水した水の水質を比較し、滞留時間と水質変化量の相関を求める。このとき、値が一意に決まればその値を、変化する場合は回帰分析などを使用し近似すればよい。求めた水質変化量は、管網末端モデルに反映し、捨水動作シミュレーションS1703で用いることができる。
従来の捨水装置は本管の水質を制御できず、さらに管網末端内の水質分布を予測できないため効率的に捨水できず、捨水量が増大する。また、特許文献1のように管網末端のさらに末端の水質しかみていないため、管網末端内に水質異常(残塩濃度違反)があっても検知できないという課題があった。
しかし、以上説明した実施例によれば、捨水作業を自動化すると共に、捨水量が最小となるよう、塩素注入と捨水装置を連動させて制御することが可能となる。また、管網末端の水質変化をキャリブレーションし、予測を正確に立てられるようになる。さらに、塩素注入量と、捨水量と、需要家への水質の影響との関係をユーザに視覚化し、運用方法を選択できるようにすることが可能となる。
1:浄水場(水供給源)
2:捨水装置
3:水質計
4:管網末端
5:本管

Claims (7)

  1. 水供給源と、前記水供給源において水に塩素を注入する塩素注入設備と、前記水供給源から水を配水する本管と、前記本管に接続される管網末端とを備え、消費者に水の供給を行う配水管網に適用する、水質管理システムであって、
    前記配水管網の構造に関する管網図面情報を格納した管網図面情報データベースと、前記管網末端における排水に伴う水質変化の測定値である排水運用情報を格納する排水運用情報データベースと、水の需要量を推定するための需要量履歴情報データベースにアクセスが可能であって、
    管網末端モデル化部と、水質分布計画策定部と、捨水計画策定部とを備え、
    前記管網末端モデル化部は、
    前記排水運用情報に基づいて、前記管網末端における水質の経時的変化を表現する管網末端モデルを生成し、
    前記水質分布計画策定部は、
    前記塩素注入設備の塩素注入量が異なる複数の塩素注入計画について、前記管網図面情報と前記水の需要量に基づいて前記本管の残留塩素濃度分布を算出し、
    前記塩素注入計画の其々について、前記管網図面情報に基づいて、前記管網末端の入り口における残留塩素濃度を算出し、
    前記捨水計画策定部は、
    前記管網末端における排水の量とタイミングの組み合わせを複数の捨水計画として生成し、
    前記塩素注入計画の其々について、前記複数の捨水計画を適用し、前記管網末端入り口における残留塩素濃度と、前記管網末端モデルに基づいて、前記管網末端の残留塩素濃度分布を算出し、
    前記塩素注入計画の其々について適用した前記複数の捨水計画のなかから、前記管網末端の残留塩素濃度分布が規定の条件を満足し、かつ、捨水量が最小の捨水計画を最適捨水計画として抽出する、
    水質管理システム。
  2. 前記管網末端は、水質計と排水弁を備える排水設備を備え、
    前記排水設備を制御することにより、
    前記排水弁により前記管網末端の水を全て排水し、その後排水を停止し、指定時間後または前記水質計において所定の水質が検知された時点で排水を開始し、排水を開始すると共に排水された水の水質を前記水質計で測定することにより、前記排水運用情報を取得する、
    請求項1記載の水質管理システム。
  3. さらに演算結果表示操作部を備え、
    前記捨水計画策定部は、
    前記配水管網が備える複数の管網末端の其々について最適捨水計画を抽出し、抽出した最適捨水計画の捨水量を合算し、
    前記演算結果表示操作部は、
    前記塩素注入計画の其々について、前記塩素注入設備の塩素注入量に対応させて、前記合算した捨水量を、操作画面として表示する、
    請求項2記載の水質管理システム。
  4. 前記演算結果表示操作部は、
    前記操作画面の表示に応答して選択された前記塩素注入計画を認識し、
    前記配水管網が備える複数の管網末端の其々について、選択された前記塩素注入計画の前記合算した捨水量を実現する、前記最適捨水計画の実行を指示し、前記排水弁を動作させる、
    請求項3記載の水質管理システム。
  5. 前記管網末端モデルは、
    適用対象である管網末端を特定する管網末端IDと、前記管網末端における水質の経時的変化を表現するための経過時間幅を含み、水質の経時的変化は管網末端の場所に対応して規定されている、
    請求項1記載の水質管理システム。
  6. 前記管網末端は、水質計と排水弁を備える排水設備と各需要家に対応したスマートメータを備え、
    前記スマートメータにより、
    各需要家の水の使用時間と使用量を取得し、
    前記排水設備を制御することにより、
    前記排水弁により前記管網末端の水を全て排水し、その後排水を停止し、指定時間後または前記水質計において所定の水質が検知された時点で排水を開始し、排水を開始すると共に排水された水の水質を前記水質計で測定することにより、前記排水運用情報を取得する、
    請求項1記載の水質管理システム。
  7. 水供給源と、前記水供給源において水に塩素を注入する塩素注入設備と、前記水供給源から水を配水する本管と、前記本管に接続される管網末端と、前記管網末端に接続される水質計および排水設備を備え、消費者に水の供給を行う配水管網において、前記水質計および排水設備と交信可能な情報処理装置である水質管理装置による水質管理方法であって、
    前記水質管理装置は、前記配水管網の残留塩素濃度分布をシミュレートするためのデータベースをアクセス可能であり、
    前記塩素注入設備の塩素注入量が異なる複数の塩素注入計画について、前記データベースに基づいて前記配水管網の残留塩素濃度分布を算出し、
    前記管網末端における排水の量とタイミングの組み合わせを複数の捨水計画として生成し、
    前記塩素注入計画の其々について、前記複数の捨水計画を適用し、前記データベースに基づいて、前記管網末端の残留塩素濃度分布を算出し、
    前記塩素注入計画の其々について適用した前記複数の捨水計画のなかから、前記管網末端の残留塩素濃度分布が規定の条件を満足し、かつ、捨水量が規定の条件を満たす捨水計画を最適捨水計画として抽出する、
    水質管理方法。
JP2016193480A 2016-09-30 2016-09-30 水質管理システムおよび方法 Active JP6603191B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016193480A JP6603191B2 (ja) 2016-09-30 2016-09-30 水質管理システムおよび方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016193480A JP6603191B2 (ja) 2016-09-30 2016-09-30 水質管理システムおよび方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018053638A JP2018053638A (ja) 2018-04-05
JP6603191B2 true JP6603191B2 (ja) 2019-11-06

Family

ID=61834090

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016193480A Active JP6603191B2 (ja) 2016-09-30 2016-09-30 水質管理システムおよび方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6603191B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111626629A (zh) * 2020-06-01 2020-09-04 水雯琦 一种智能处理城市用环境污染管理系统及其方法

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110204021B (zh) * 2019-06-06 2020-12-01 清华大学 一种基于用户反馈的龙头水水质保障方法
CN110342592A (zh) * 2019-07-15 2019-10-18 智恒科技股份有限公司 一种用水数据采集上传装置
KR102494144B1 (ko) * 2021-10-28 2023-02-06 주식회사 피에스글로벌 빅데이터 기반 지능형 상수관망 의사결정지원 시스템
CN114693191B (zh) * 2022-06-01 2022-09-02 湖南长理尚洋科技有限公司 基于生态监测的智慧水利工程管理方法及系统
CN115619189B (zh) * 2022-11-09 2023-11-14 中国南方电网有限责任公司 考虑梯级水电弃水流量限制的弃水调度方法及装置

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3451959B2 (ja) * 1998-09-17 2003-09-29 株式会社日立製作所 水道水質管理システム
US20080109175A1 (en) * 2006-08-30 2008-05-08 Sensicore, Inc. Systems and methods for dynamic monitoring of fluid movement in a fluid distribution network using controlled concentration pulses of additives
JP4850195B2 (ja) * 2008-02-06 2012-01-11 メタウォーター株式会社 残留塩素濃度管理方法
JP5529803B2 (ja) * 2011-05-12 2014-06-25 住重環境エンジニアリング株式会社 水質制御装置、水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法。

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111626629A (zh) * 2020-06-01 2020-09-04 水雯琦 一种智能处理城市用环境污染管理系统及其方法
CN111626629B (zh) * 2020-06-01 2021-12-03 上海领路人照明工程有限公司 一种智能处理城市用环境污染管理系统及其方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018053638A (ja) 2018-04-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6603191B2 (ja) 水質管理システムおよび方法
US10969261B2 (en) Devices and system for channeling and automatic monitoring of fluid flow in fluid distribution systems
US11674863B2 (en) Methods to measure water usage from energy consumption data using machine learning
Nguyen et al. Re-engineering traditional urban water management practices with smart metering and informatics
US10663933B2 (en) Systems and methods for subnetwork hydraulic modeling
Loureiro et al. Water distribution systems flow monitoring and anomalous event detection: A practical approach
US10676901B2 (en) Interactive water monitoring system
JP6273125B2 (ja) 漏水調査計画立案装置、漏水調査計画立案システム、及び漏水調査計画立案方法
US11656640B2 (en) Utility water sensing for sprinkler systems
US6963808B1 (en) Methods and apparatus for using water use signatures in improving water use efficiency
US7289923B2 (en) System and method for fluid distribution
US20220027538A1 (en) Hydraulic fracturing job plan real-time revisions utilizing detected response feature data
CN109716090B (zh) 一种用于估计配水管网的子网边界处的水流量的改进系统
US20200141775A1 (en) Systems for and methods of monitoring water consumption
JP2017122572A (ja) 居住者の在宅不在の判定方法、判定装置、及び判定プログラム、並びに、不在期間の確定方法
JP5574769B2 (ja) 不明水監視装置及び不明水監視方法
KR20130089111A (ko) 지역난방 공동주택 2차측 배관의 열손실 평가 방법
Zolfagharipoor et al. Market-based groundwater resources allocation mechanism: An inter-sectoral water exchanges programming analysis
Morrison et al. A critical review of methods used to obtain flow patterns and volumes of individual domestic water using appliances
Maglionico et al. Water consumption in a public swimming pool
Delisle et al. Minimizing water residence time in Quebec City's main distribution network using hybrid discrete dynamically dimensioned search (HD-DDS): Part II
Meyer Household water end-use identification in the presence of rudimentary data
KR101925382B1 (ko) 상수관망 운영 db 자료 기반 물 수요 예측 장치 및 방법
Alvisi et al. Application of Water Consumption Smart Metering for Water Loss Assessment: A Case Study:(069)
Kanta et al. Evaluating Outdoor Water Use Demand under Changing Climatic and Demographic Conditions: An Agent-based Modeling Approach

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190910

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190917

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191010

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6603191

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150