以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「左側」および「右側」は、車両に乗車した運転者から見た左右側をいう。また、「上流側」および「下流側」とは、吸気の流れ方向の上流側および下流側をいう。
図1は本発明の第1実施形態を示す自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、後半部を形成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1の前端にヘッドパイプ4が設けられ、このヘッドパイプ4にステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されている。フロントフォーク8の上端部に操向用のハンドル6が固定され、フロントフォーク8の下端部に前輪10が取り付けられている。
メインフレーム1の後端部に、スイングアームブラケット9が設けられている。このスイングアームブラケット9に取り付けたピボット軸16の回りに、スイングアーム12が上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端部に、後輪14が回転自在に支持されている。
メインフレーム1の下部でスイングアームブラケット9の前側に、エンジンEが取り付けられている。エンジンEの回転力が変速装置13により変速された後、ドライブチェーン11を介して後輪14に伝達され、後輪14を駆動する。エンジンEは、クランク軸26の軸線方向に複数気筒が並ぶ並列多気筒エンジンで、本実施形態では、4気筒4サイクルの多気筒エンジンである。ただし、エンジンEの形式はこれに限定されるものではない。
エンジンEは、エンジン回転軸であるクランク軸26を支持するクランクケース28と、クランクケース28の前部の上面から上方に突出したシリンダブロック30と、その上方のシリンダヘッド32とを有している。クランクケース28の後部は、変速装置13を収納するミッションケースを兼ねている。シリンダブロック30およびシリンダヘッド32は前方に傾斜し、エンジンEのシリンダユニットCYを構成している。つまり、エンジンEは、側面視でほぼL字形である。
シリンダヘッド32の前面の4つの排気ポート35に、4本の排気管36が接続されている。これら4本の排気管36が、エンジンEの下方で集合され、後輪14の右側に配置された排気マフラ38に接続されている。
メインフレーム1の上部に燃料タンク15が配置され、リヤフレーム2にライダー用シート18および同乗者用シート20が支持されている。また、車体前部に、樹脂製のカウリング22が装着されている。カウリング22は、前記ヘッドパイプ4の前方から車体前部の外側方にかけての部分を覆っている。カウリング22には、空気取入口24が形成されている。空気取入口24は、カウリング22の前端に位置し、外部からエンジンEへの吸気を取り入れる。
車体フレームFRの左側に、吸気ダクト50が配置されている。吸気ダクト50は、前端開口50aをカウリング22の空気取入口24に臨ませた配置でヘッドパイプ4に支持されている。つまり、吸気ダクト50の前端開口50aが空気取入口24に連通している。空気取入口24は、前方に開口しており、走行風を吸気Iとして取り入れる。これにより、吸気ダクト50の前端開口50aから導入された空気は、ラム効果により昇圧される。
シリンダブロック30の後方でクランクケース28の後部の上面に、エアクリーナ40および過給機42が、エアクリーナ40を外側にして車幅方向に並んで配置されている。吸気ダクト50は、エンジンEの前方からシリンダブロック30およびシリンダヘッド32の左外側方を通過して、エアクリーナ40を介して過給機42に吸気Iを導いている。過給機42は、エアクリーナ40で浄化された清浄空気を加圧してエンジンEに供給する。
過給機42とシリンダヘッド32の後部の吸気ポート54との間に、吸気チャンバ52が配置され、過給機42と吸気チャンバ52とが直接接続されている。吸気チャンバ52は、過給機42から供給された高圧の吸気Iを貯留する。吸気チャンバ52と吸気ポート54との間には、スロットルボディ44が配置されている。これら吸気ダクト50、エアクリーナ40、過給機42、吸気チャンバ52およびスロットルボディ44で、エンジンEに吸気Iを導入する吸気通路45を構成する。
スロットルボディ44の内部、つまり、吸気通路45における過給機42の下流側で、吸気チャンバ52の下流側にスロットル弁43が配置されている。スロットル弁43は、ライダーのスロットル操作に基づいて、エンジンEの吸気ポート54に供給する吸気量を制御する。本実施形態では、スロットル弁43として、電動スロットル弁が用いられている。スロットル弁43は、気筒ごとに設けられる。これにより、スロットル操作に対する応答性が向上する。
本実施形態のスロットル弁43は、電子制御可能なアクチュエータによって駆動される。これによってライダーのスロットル操作に加えて、他の運転状況に基づいて、気筒への吸気量が調整可能に構成される。他の運転状況として、エンジン回転数、車速、ギヤ比、スロットル操作の時間変化量、出力過剰条件140(後述)の満足時などが含まれる。
吸気チャンバ52は、過給機42およびスロットルボディ44の上方でシリンダヘッド32の後方に配置されている。エアクリーナ40は、側面視で、クランクケース28とその上方の吸気チャンバ52との間に配置されている。吸気チャンバ52およびスロットルボディ44の上方に、前記燃料タンク15が配置されている。
図2に示すように、過給機42はエアクリーナ40の右側に隣接して配置され、図示しないボルトによりクランクケース28の上面に固定されている。この過給機42は、図1のエンジンEのクランク軸26によって駆動される機械式過給機である。詳細には、過給機42の駆動力は、エンジンEから後輪14に至る伝達経路における変速装置13よりも上流側から取り出される。図2に示す過給機42は、車幅方向(左右方向)に延びる回転軸心AXを有する。クランクケース28の上方でエンジンEの車幅方向の中央部に、左向きに開口した過給機42の吸込口46と上向きに開口した吐出口48が位置している。
過給機42は、吸気を加圧する遠心式インペラ60と、インペラ60が固定された過給機回転軸62と、インペラ60を覆うインペラハウジング61と、エンジンEの動力をインペラ60に伝達する伝達機構63と、伝達機構63を覆う伝達機構ハウジング67とを有している。インペラハウジング61を挟んで車幅方向の一方にエアクリーナ40が配置され、車幅方向の他方に伝達機構63が配置されている。インペラハウジング61と伝達機構ハウジング67はボルト(図示せず)により連結され、過給機42のケーシング65を構成している。
過給機42のインペラ60の上流側に、インペラ60への吸気Iの流入量を調整する吸気制御ユニット70が配置されている。吸気制御ユニット70は、吸気制御弁69とこれを駆動するアクチュエータ68と、アクチュエータ68の駆動力を吸気制御弁69に伝達する可変機構98(後述)とを備えている。吸気制御弁69は、過給機42の入口である吸込口46に連結されている。吸気制御弁69は、インペラ60への吸気Iの流入量を調整するとともに、インペラ60に流入する吸気Iに後述する予旋回を与える。
吸気制御弁69およびアクチュエータ68は、過給機42のケーシング65に支持され、アクチュエータ68が過給機42の径方向外方、本実施形態では後方に配置されている。過給機42と吸気制御弁69とを含んでエンジン吸気システムが構成されている。吸気制御弁69は、後述の可変羽根80および固定羽根82からなる弁体と、弁体を覆う弁ケーシング71とを有している。弁ケーシング71内には円筒形の通路と、この通路の入口71aおよび出口71bが形成されている。弁ケーシング71内の通路の軸心VX、つまり吸気制御弁69の出口71bの軸心VXが、過給機42の回転軸心AXと一致している。
弁ケーシング71は、吸気制御弁69に隣接するインペラハウジング61の入口である吸込口46に同軸に対向配置されている。ここで、「対向配置」とは、過給機42の回転軸心AX方向から見て、吸気制御弁69の一部が過給機の吸込口46に重なることをいい、好ましくは、弁ケーシング71の出口71bの一部が過給機の吸込口46に重なり、より好ましくは、吸気制御弁69の出口71bの軸心VXと、過給機の吸込口46の軸心(過給機回転軸心)AXが一致する。
弁ケーシング71とインペラハウジング61とは一体に形成しても、別体であってもよい。弁ケーシング71は、吸気制御弁69に隣接するインペラハウジング61の吸込口46に接して配置されている。弁ケーシング71は、吸気制御弁69を変位可能に支持する。吸気制御弁69は、弁軸部分と弁体部分とを有する。弁体部分は、弁軸方向から見た形状が非円形、具体的には、板状に形成される。弁軸部分は、弁軸部分の軸芯AY回りに吸気制御弁69を角変位可能に支持する。
吸気制御弁69の弁ケーシング71の入口71aにエアクリーナ40のクリーナ出口59が接続され、エアクリーナ40のクリーナ入口57に、前記吸気ダクト50の後端部50bがボルト(図示せず)により連結されている。さらに、吸気制御弁69の弁ケーシング71の出口71bに過給機42の吸込口46が直接接続されている。つまり、エアクリーナ40、吸気制御弁69および過給機42が、シリンダブロック30の後方でクランクケース28の上方において、エンジンEの両外側面の内側に車幅方向に並んで配置されている。これらのうちの車幅方向一側方、本実施形態では左側方に配置されたエアクリーナ40に車幅方向外方から吸気ダクト50が接続されている。
本実施形態では、弁ケーシング71は、後述するガイド体84を介してエアクリーナ40に接続されている。したがって弁ケーシング71は、流れ方向に関して、エアクリーナ40のクリーナ出口59と、インペラハウジング61の吸込口46との間に配置され、エアクリーナ40のクリーナ出口59、インペラハウジング61の吸込口46にそれぞれ隣接配置されている。弁ケーシング71の出口71bは、インペラハウジング61の吸込口46と同一外形に形成されている。これによって吸気抵抗を低減することができる。
吸気チャンバ52の前部に、吸気チャンバ52の空気圧力が上昇するのを抑制するリリーフ弁72が設けられている。リリーフ弁72に、リリーフ通路74を構成する逃がし配管76が接続されている。つまり、リリーフ弁72は、吸気チャンバ52の内部の圧力が所定値以上になると開弁し、リリーフ通路74と吸気チャンバ52とを連通させる。リリーフ通路74の出口は、吸気通路45における過給機42および吸気制御弁69の上流側、本実施形態では、エアクリーナ40のクリーン側に連通している。
図3に示すように、吸気制御弁69は、弁ケーシング71の軸心VX、すなわち過給機42の回転軸心AXに対して放射状に配列された複数の可変羽根80を有している。本実施形態では、可変羽根80は、過給機42の回転軸心AXの周方向に等間隔で8枚設けられている。可変羽根80は、根元部(径方向内側端部)80aと先端部(径方向外側端部)80bとが支持された状態で、径方向軸心AY周りの取付角度が調節可能に設定されている。
吸気制御弁69の可変羽根80の上流側に、過給機42の回転軸心AXに対して放射状に配列された複数の固定羽根82を備えたガイド体84が配置されている。本実施形態では、固定羽根82は、過給機42の回転軸心AXの周方向に等間隔で複数枚、本実施形態では4枚設けられている。8枚の可変羽根80のうちの4枚は、4枚の固定羽根82と同一の周方向位置に配置され、残りの4枚の可変羽根80は、固定羽根82の中間の周方向位置に配置されている。
ガイド体84は、径方向中心部である中心部84aと、径方向外側の環状部84bとを有しており、各固定羽根82の径方向内側端部である根元部82aが中心部84aに連結され、径方向外側端部である先端部82bが環状部84bに連結されている。このように、固定翼82は、根元部82aと先端部82bの両端で支持されるので、支持が安定する。
図4に示すように、ガイド体84は、締結部材の一種であるボルト96によってインペラハウジング61に締結されている。ボルト96は、周方向に等間隔で複数、本実施形態では4つ配置されている。ガイド体84の中心部84aの内側には、ボルト85によって有底の筒形状のホルダ86が締結されている。
ホルダ86の端面86aは、過給機回転軸62の先端部62aに螺合されたナット部材87の端面87aに相対回転可能に当接している。ホルダ86とガイド体84の連結部の外周面に、径方向内方に凹んだ凹所88が形成され、この凹所88に、滑り軸受90を介して可変羽根80の根元部80aが回動自在に支持されている。つまり、可変羽根80の根元部80aは、ガイド体84により支持されている。
過給機42の吸込口46は、吸気通路45の一部を形成しており、下流のインペラ60に向かって流路断面積が次第に小さくなっている。可変羽根80の弁体部80cは、過給機42の吸込口46の吸気通路45内に位置しており、その内径部80caは回転軸心AXとほぼ平行に延び、その外径面80cbは、吸込口46の形状に沿うように、下流側に向かって径方向内側に傾斜している。
可変羽根80の先端部80bには、径方向外側に突出する軸支部材92が設けられ、この軸支部材92が軸受部材94に回動自在に支持されている。軸支部材92は可変羽根80の弁軸部分を構成する。軸受部材94は、例えば、樹脂製の滑り軸受けである。ただし、軸受部材94の構造、材質はこれに限定されない。軸受部材94は、インペラハウジング61とガイド体84との合わせ面上に形成された段付きの装着孔95に装着されている。軸受部材94は、前述のボルト96により、ガイド体84の環状部84bとインペラハウジング61との間に挟持されている。軸受部材94とガイド体84の環状部84bとにより前記弁ケーシング71が構成されている。この軸支部材92の先端には雄ねじ部93が形成されており、この雄ねじ部93に、後述するように、ナット126によって可変羽根80の取付角度を調節する可変機構98が連結されている。
可変機構98は、可変羽根80の軸支部材92に基端部100bが連結固定されたアーム100と、アーム100の先端部100aに連結された回転リング102とを有している。回転リング102は、ガイド体84の外周部に、回転軸心AXと同心状に配置されている。詳細には、回転リング102の内径面と、ガイド体84の環状部84bの外径面とは、低摩擦部材104を介して相対回転自在に接している。低摩擦部材104は、ボルト109によりガイド体84に取り付けられたカバー107により、軸方向外側から押圧されて、ガイド体84からの脱落が防止されている。ボルト109は、例えば、周方向に等間隔で複数(本実施形態では4つ)配置されている。低摩擦部材104に代えて、回転リング102の内径面とガイド体84の環状部84bの外径面との間に、例えば、ころ軸受を配置してもよい。この場合、回転リング102とガイド体84との接触抵抗摩擦を一層低減できる。回転リング102が角変位することにより、アーム100を介して可変羽根80が回動する。
回転リング102は、前記アクチュエータ68(図2)の駆動力で回転する。詳細には、図3に示すように、回転リング102の外周面に設けられた取付片106に、リンクロッド108の一端部108aが連結され、リンクロッド108の他端部108bにリンクレバー110の一端部110aが連結されている。リンクレバー110の他端部110bには、アクチュエータ68の出力軸68aが接続されている。アクチュエータ68は、ブラケット112を介して過給機42のケーシング65のインペラハウジング61にボルト115で固定されている。
回転リング102の外周面に設けられた取付片106は、回転リング本体から径方向外方に突出している。この取付片106は、側面視でインペラハウジング61の吐出口48側の部分に重なる位置に配置されることが好ましい。すなわち、全開位置と全閉位置との両方にわたって、インペラハウジング61の吐出口48側の部分に重なることで、取付片106をインペラハウジング61の吐出口48の部分で保護しやすく、他部材との干渉を防ぐことができる。換言すれば、回転リング102の回転角度は、インペラハウジング61の吐出口48側の部分の周方向両端の角度よりも小さく形成されることが好ましい。
アクチュエータ68が、軸心68b周り一方A1に回動すると、リンクレバー110が矢印A2で示す方向に回動する。これに伴い、リンクロッド108が、矢印A3で示す方向に進退動作し、回転リング102が矢印A4で示す方向に回動する。つまり、アクチュエータ68により、可変機構98が動作する。
上述するように吸気制御弁69は、複数の可変羽根80を有する。本実施形態では、各可変羽根80の弁軸部分の軸心AYは、過給機回転軸62の径方向に延びて、過給機回転軸62の周方向に等間隔にそれぞれ並んで、弁ケーシング71に支持されている。本実施形態では、弁軸部分は、軸受部材94を介して、角変位可能に支持されている。弁ケーシング71は、各可変羽根80の、回転軸心AXに対する径方向外側端に形成される軸部分を角変位可能に支持する。複数の可変羽根80が弁軸部分の軸心AY回りに角変位することで、弁ケーシング71の開口をふさぐ弁体面積が変化する。弁ケーシング71の開口をふさぐ弁体面積が増加することで、インペラハウジング61に導かれる吸気が減少する。また弁ケーシング71の開口をふさぐ弁体面積が減少することで、インペラハウジング61に導かれる吸気が増大する。
可変羽根80の弁体部80cは、弁軸部分に対して、上流側部分よりも下流側部分のほうが流れ方向に関して大形に形成されている。これによって可変羽根80と固定羽根82とを近接配置しつつ、可変羽根80全体を大形化して、可変羽根80の個数を減らすことができる。また可変羽根80および弁軸部分をインペラ60に近づけて配置することができ、インペラ60と吸気制御弁69との間の空間を小さくすることができる。本実施形態では、可変羽根80の弁体部80cは、過給機回転軸62の先端面よりも、流れ方向下流側に延長配置される。また、弁体部80cを大形化することで、可変羽根80の個数を抑えつつ、吸気量を抑制しやすく、燃料消費の低減効果を高めることができる。同様に弁体部80cの、過給機回転軸62に対する径方向外側縁は、インペラハウジング61の内面に沿って延びる。これによって弁体部80cの大形化を図ることができる。
本実施形態では、ガイド体84はインペラハウジング61にボルト締結されているが、ガイド体84は、インペラハウジング61と一体に構成されてもよい。ガイド体84は、吸気制御弁69よりも上流側に配置されている。ガイド体84は、吸気制御弁69よりも上流側で吸気を案内する複数の固定羽根82と、各固定羽根82の径方向外側端を支持する環状部84bと、各固定羽根82の径方向内側端を支持する中心部84aとを有している。本実施形態では、各固定羽根82と環状部84bと中心部84aとは、一体成形によって形成される。各固定羽根82は、過給機回転軸62の径方向に延びて、過給機回転軸62の周方向に等間隔に並んで配置されている。本実施形態では、各固定羽根82は、過給機回転軸62に沿って平行に延びる板状に形成される。固定羽根82によって吸気が案内されることで、吸気制御弁69に達する吸気が整いやすい。
環状部84bは、固定羽根82を径方向外側から覆い、過給機回転軸62に同軸の筒状に形成されている。環状部84bには、各固定羽根82の径方向外側部分が連結されている。環状部84bは、固定羽根82の径方向外側部分の軸方向全域にわたって、固定羽根82に連結される。環状部84bは、固定羽根82の径方向外側で、インペラハウジング61に、ボルト96によって締結固定される。環状部84bは、後述する可変機構98を支持する。ボルト締結位置は、可変羽根80の配置位置に対して、径方向にずれた位置に設定される。
中心部84aは、固定羽根82の径方向内側に配置され、過給機回転軸62に同軸の軸状に形成される。中心部84aは、各固定羽根82の径方向内側部分が連結される。中心部84aは、固定羽根82の径方向内側部分の軸方向全域にわたって、固定羽根82に連結されている。中心部84aは、流れ方向上流に向かって外径が縮径する錘状に形成されている。中心部84aは、インペラ60における流れ方向上流側端の外径と同寸法に形成されている。これにより、固定羽根82の支持剛性を高めつつ、インペラ60への吸気抵抗を抑えることができる。
中心部84aは、固定羽根82の連結部分から流れ方向下流に延長形成されている。本実施形態では、中心部84aは、各可変羽根80の、回転軸心AXに対する径方向内側端に形成される軸部分を角変位可能に支持する。このように、可変羽根80における回転軸心AXに対する径方向両端がそれぞれ支持されている。これによって自動二輪車として、路面からの振動を受けたり、車体姿勢が変化したりして過給機42が振動しても、可変羽根80が周辺部材に接触するのを防いで、可変羽根80の損傷を防ぐことができる。
可変羽根80は、回転軸心AXに対する径方向内側の軸部分が、径方向外側の軸部分に比べて径方向寸法が小さく形成されている。これによって、支持部分が小さくても、両端支持を可能としやすい。さらに中心部84aが、インペラ60の流れ方向上流側端部に対向する対向部分を構成している。対向部分は、インペラ60の流れ方向上流側端の外径と同寸法に形成されている。これにより、吸気の乱れを減らすとともに、インペラ60と吸気制御弁69との間の空間の体積を減らすことができる。可変羽根80の弁体部80cの、過給機回転軸62に対する径方向内側縁は、中心部84aの外径に沿って延びる。これによって、弁体部80cの大形化を図ることができる。
複数の可変羽根80の弁軸部分の少なくとも1つと、複数の固定羽根82の形成位置とが、過給機回転軸62の周方向に一致する。本実施形態では、すべての可変羽根80の弁軸部分と、対応する複数の固定羽根82の形成位置とが、過給機回転軸62の周方向に一致する。可変羽根80の個数は、固定羽根82の個数の公倍数に形成されることが好ましい。これによってすべての固定羽根82に、可変羽根80の弁軸部分を重ねることができる。
可変羽根80の弁軸部分は、インペラハウジング61外に突出する部分が形成されている。軸受部材94は、装着孔95に圧入嵌合されている。装着孔95は段つき孔で形成されており、軸受部材94も対応する段付部分が形成されている。これら段付部分同士が当接することで、軸受部材94の挿入位置が規定される。
つぎに、可変機構98の構造を説明する。図4に示すように、アーム100の基端部100bは、先端部100aに比べて径方向に厚肉に形成されている。図5に示すように、アーム100の先端部100aに、先端から延びる貫通溝からなる第1スリット114が形成され、アーム100の基端部100bに、他端から延びる貫通溝からなる第2スリット116が形成されている。第1および第2スリット114,116は、径方向に貫通した溝である。アーム100の基端部100bに軸挿通孔118が形成されている。軸挿通孔118は、第2スリット116に連なる貫通孔である。
さらに、アーム100の基端部100bに、軸挿通孔118の軸心と直交する軸心を有する第1ボルト挿通孔120が形成されている。第1ボルト挿通孔120は、アーム100における第2スリット116により分断された2つの部位に跨って形成されている。
図4に示すように、回転リング102は、回転軸心AXを含む断面の形状が、軸心方向(車幅方向)内側を向いたU字形状であり、径方向外側の外側壁102aと、径方向内側の内側壁102bと、外側壁102aと内側壁102bとを連結する連結壁102cとを有している。内側壁102bは、外側壁102aよりも厚肉に形成されている。外側壁102aに径方向を向いた第2ボルト挿通孔122が形成されている。内側壁102bにおける第2ボルト挿通孔122に対応する位置に、第1ねじ孔124が形成されている。
アーム100の基端部100bの軸挿通孔118に、軸支部材92の先端部92aを挿通し、軸支部材92の雄ねじ部93にナット126を螺合する。さらに、図5に示すアーム100の基端部100bの第1ボルト挿通孔120に、ボルト128が挿通され、ナット130によって締め付けられている。これにより、図4の可変羽根80とアーム100とが相対回転不能に連結される。
アーム100の先端部100aの第1スリット114は、相対向する2つの内面が部分球面状に凹入して球面座が形成されており、この球面座114にピロボールのような球体132が嵌め込まれている。詳細には、球体132は、アーム100の第1スリット114に、弁軸部分の軸心AY方向に摺動自在に支持されている。球体132に代えて、楕円体を用いてもよい。アーム100は、過給機回転軸AXに垂直な断面において、球体132を軸心AY周りに角変位可能に支持する。
球体132および球面座114からなる摺動部分は、回転リング102の外側壁102aで覆われている。これによって、異物が摺動部分に侵入することを防ぐことができ、摺動を維持しやすくできる。また、サイドスタンド配置側に回転リング102を配置すれば、雨滴が回転リング102にかかることを防ぎやすい。
球体132には径方向に貫通する第3ボルト挿通孔132aが形成されている。アーム100の先端部100aは、この球体132を介して回転リング102に連結されている。詳細には、図4に示すように、ピン部材であるボルト134が径方向外側から、回転リング102の外側壁102aの第2ボルト挿通孔122および球体132の第3ボルト挿通孔132aの順に挿通され、回転リング102の内側壁102bの第1ねじ孔124に締結されている。詳細には、ボルト134は、球体132にボルト134の軸方向に摺動自在に支持される。これにより、回転リング102とアーム100の先端部100aが連結される。
この状態で、図5の回転リング102が矢印A4方向に回動すると、アーム100が矢印A5の向きに回動する。つまり、図3に示す矢印A4に方向に回転リング102が回動すると、アーム100を介して可変羽根80が矢印A6の向きに回動する。詳細には、可変羽根80は、吸気制御弁69の径方向に延びる軸線AYを中心に回転する。これにより、可変羽根80の過給機回転軸心AX(吸気制御弁出口の軸心VX)に対する取付角度θが調整可能となる。軸線AYは、軸支部材92の軸心と一致している。図3は、吸気制御弁69が全開の状態を示している。
回転リング102は半径が比較的小さいので、全開位置から全閉位置まで角変位することで、アーム100に対する径方向位置が大きく変化する。本実施形態では、球体132とボルト134とがボルト134の軸方向(径方向)に摺動可能に構成されているので、このような径方向位置の変化を吸収することができる。
また、回転リング102は半径が比較的小さいので、全開位置から全閉位置まで角変位することで、ボルト134の軸方向に対するアーム100の平面の角度が大きく変化する。本実施形態では、球体132がアーム100の軸心AY周りに角変位可能に構成されているので、ボルト134の軸線に追従して球体132がアーム100に対して角変位できる。これにより、ボルト134の軸方向に対するアーム平面の傾きを吸収することができる。球体132および球面座114を介して回転リング102とアーム100を連結することで、回転リング102とアーム100との相対位置が変動しても、この変動が球体132で吸収されるので、回転リング102およびアーム100が円滑に摺動する。
本実施形態では、全開位置と全閉位置のちょうど中間の位置で、アーム100と回転リング102との径方向距離が最大となる。これにより、ボルト134の第1スリット114に沿った摺動域が大きくなるのを防ぐことができ、アーム100と回転リング102との径方向間隔を短縮できる。また、本実施形態では、全開位置と全閉位置のちょうど中間の位置で、アーム100の平面とボルト134の軸心とが垂直になる。これにより、球体132の角変位範囲がボルト134の軸心からずれる量が小さくなる。
回転リング102は、ガイド体84の外周部に形成される円環状に形成されている。ガイド体84が、回転リング102を角変位可能に支持する支持部材を兼ねることで部品点数を削減することができる。また、ガイド体84の外周部に回転リング102が設けられることで、アーム100に近接して回転リング102を配置することができ、回転リング102の小形化を図ることができる。回転リング102は、インペラハウジング61の吸込口46よりも大きい内径を有するとともに、インペラハウジング61の外径よりも小さい外径に形成されている。これによって、吸気制御ユニット70の径方向寸法が大形化するのを防ぐことができる。
図6〜8はそれぞれ、回転軸心AXに沿った縦断面図であり、図6は吸気制御弁69の全開状態を示し、図7は中間開度状態を示し、図8は全閉状態を示す。全開状態では、可変羽根80の前縁と後縁を直線で結んだ翼弦線CHと回転軸心AXとがなす取付角度θは小さくなっている。翼弦線CHと回転軸心AXは同一面上にないので、取付角度θは、径方向から見た投影面上における翼弦線CHと回転軸心AXとがなす角度である。この回動位置にある可変羽根80と固定羽根82とにより吸気Iがほぼ回転軸心AX方向に案内され、過給機42のインペラ60に円滑に導かれる。この時、可変羽根80と固定羽根82が軸方向視で重合する。取付角度θがゼロである基準線は、回転軸線AXに限らず、任意に設定できる。
本実施形態では、可変羽根80は、弁軸の軸方向に垂直な断面形状が翼形状に形成されている。全開状態では、弁ケーシング71の出口71bをふさぐ可変羽根80部分が最小となる状態である。全開状態では、可変羽根80における過給機回転軸62の周方向側面は、過給機回転軸62に平行または最も平行に近い状態となる。
中間開度状態では、取付角度θが大きい回動位置に設定され、吸気Iは、固定羽根82により回転軸心AX方向に案内されたのち、可変羽根80により回転軸心AXに対して傾斜する方向に案内されるとともに、予旋回が与えられる。これにより、過給機42のインペラ60に流入する吸気の量が制限される。このように、可変羽根80は、開度の調整に加え、吸気Iに予旋回を与える機能も有する。予旋回SFは、回転軸心AXと同心状に回転しながら流れる。
中間開度状態では、可変羽根80における過給機回転軸62の周方向側面は、過給機回転軸62に対して傾斜した状態となる。全開状態から可変羽根80の角変位量が大きくなるにつれて、傾斜状態が大きくなって、弁ケーシング71の出口71bが可変羽根80でふさがれる面積が大きくなる。本実施形態では、可変羽根80は、流れ方向下流に向かって、インペラ60の回転方向に対して反対方向に向けて周方向に案内するように傾斜する。本実施形態では、入口側から見て、時計と反対回りにインペラ60が回転する場合には、中間開度では、可変羽根80は、流れ方向に向かって吸気が時計回りに向かうように案内される。これによって可変羽根80で案内した吸気を、インペラ60の羽根部分に向けることができる。これにり、インペラ60によって遠心案内する吸気を増やすことができ、インペラ60による圧送量を増やすことができる。
全閉状態では、吸気Iは、可変羽根80により、過給機42のインペラ60にほとんど流入しない。全閉状態は、弁ケーシング71の出口71bをふさぐ可変羽根部分が最大となる状態である。このように、可変羽根80は、軸回りに角変位することで、全開状態と全閉状態との間で吸気量を変化可能に構成されている。
全閉状態では、可変羽根80における過給機回転軸62の周方向側面は、過給機回転軸62に対する傾斜が最大となる。これによって弁ケーシング71の吸気抵抗が最大となり、吸気制御弁69を通過する吸気量が大きく抑制される。なお、全閉状態であっても、弁ケーシング71の出口71bが完全にふさがれるものではなく、少量ではあるが吸気の通過が許容される。また、全閉状態において、可変羽根80は、隣接する可変羽根80と部分的に重なるように構成されることが好ましい。これによって、吸気制限効果を高めることができる。この場合、重なる部分同士の干渉を防ぐために、一方の可変羽根80が他方の可変羽根80に対して、吸気の流れ方向に凹んで形成されることが好ましい。
可変機構98は、可変羽根80の弁軸部分をその軸回りに角変位させる機構であって、複数の可変羽根80を連動して角変位させる。本実施形態では、カム機構を利用して、可変羽根80を連動角変位させる。具体的には、可変羽根80の弁軸部分に連結固定されるアーム100を、弁軸の軸まわりに変位させる変位体である回転リング102が設けられている。回転リング102は、可変羽根80ごとに設けられるアーム100に当接する当接部が形成され、当接部を連動動作させることで、各可変羽根80を連動角変位させることができる。回転リング102は、前記アクチュエータ68によって駆動力が与えられる。本実施形態では、回転リング102の外側壁102aがボルト134を介して各アーム100に嵌合された球体132に当接している。
アクチュエータ68がリンク機構を介して、すなわち、てこの原理を利用して、回転リング102を角変位させている。したがって、回転リング102を直接回転させる場合に比べて、出力の小さいアクチュエータ68を用いることができる。また、リンク機構を介してアクチュエータ68からの動力を回転リング102に伝達することで、アクチュエータ68を回転リング102から離して配置することができる。本実施形態では、アクチュエータ68の本体が、可変羽根80よりも回転軸心AX方向のインペラ60寄りに配置されている。
なお、アクチュエータ68に代えて、運転者からの操作を伝達して、回転リング102を角変位駆動させてもよい。具体的には、運転者が操作するレバーと、回転リング102とをワイヤによって接続させてもよい。
図1のエンジンEが始動し、自動二輪車が走行すると、走行風が吸気ダクト50に取り込まれる。吸気ダクト50を通過した走行風はエアクリーナ40で浄化されたのち、図2の吸気制御弁69で過給機42への流入量が制御され、過給機42に供給される。
吸気は、さらに、過給機42で加圧されたのち、吸気チャンバ52に供給される。図1の吸気チャンバ52に貯留された吸気は、スロットルボディ44のスロットル弁43で流量を調整されて、エンジンEに供給される。また、スロットル弁43の急閉等によって吸気チャンバ52内の圧力が所定値よりも高くなると、図2のリリーフ弁72が開いて、吸気チャンバ52内の吸気の一部がリリーフ通路74を通ってエアクリーナ40のクリーン側に戻される。
つぎに、吸気制御弁69の制御を説明する。図9は、吸気制御弁69の制御を示す。吸気制御弁69の制御は、吸気量制御装置136により行われる。吸気量制御装置136は、例えば、予め定められるプログラムを実行する演算装置で構成されている。本実施形態の吸気量制御装置136は、車両またはエンジンの制御装置に含まれているが、専用に設けてもよい。吸気量制御装置136は、運転状態に応じた旋回位置に可変羽根80が位置するように前記吸気制御弁を制御する。これら吸気量制御装置136と吸気制御ユニット70により、過給機の制御システム138が構成されている。
吸気量制御装置136は、可変羽根80の角変位量(吸気抑制量)を決定するための情報が入力される入力部と、角変位量を決定するためのプログラムが記憶される記憶部と、入力部に入力される情報と、記憶部に記憶されるプログラムとに基づいて角変位量を演算する演算部と、演算結果を出力する出力部とを有する。また、吸気量制御装置136は、可変羽根80の角変位量を決定するためのマップまたは演算式を記憶部に予め記憶する。本実施形態では、出力部は、決定した角変位量に対応する駆動指令をアクチュエータ68に駆動指令を与える。吸気量制御装置136から与えられる駆動指令によってアクチュエータ68が動作することで、回転リング102が対応した角変位量分だけ角変位して、可変羽根80が決定した角変位位置に移動する。
本実施形態では、吸気量制御装置136は、自動二輪車に搭載される各種センサの出力値を用いて運転状態を判断し、予め定めるプログラムに従って、運転状態に応じた可変羽根80の角変位量を決定する。吸気量制御装置136は、各種センサの出力値に基づいて、要求する出力が小さい状態(燃費を優先する状態)であると判断すると、吸気量を減少するよう、可変羽根80の角変位量を決定する(図10の流量抑制モード)。また、吸気量制御装置136は、各種センサの出力値に基づいて、要求する出力が大きい状態(出力向上を優先する状態)であると判断すると、吸気量を増大するよう、可変羽根の角変位量を決定する(図10の通常モード)。なお、運転状態は、運転者の運転操作および車両状態のいずれかを含むものとする。
吸気量制御装置136は、予め定めた出力過剰条件140を満足したときに、全開状態に対して吸気量を減少させるように吸気制御弁69を制御する。吸気量制御装置136は、車両状態の時間変化に基づいて、出力過剰条件140を判断する。
運転者の運転操作の一例として、運転者によるスロットル操作が含まれる。つまり、運転者がスロットル操作をしてエンジンEに供給される吸気量を調整すると、その情報が吸気量制御装置136に入力される。吸気量制御装置136は、この情報、つまりスロットルの作動量に基づいて吸気制御弁69を制御する。例えば、エンジンEに供給される吸気量を減らすようにスロットル操作がされた場合、吸気量制御装置136は、出力過剰条件140が満たされたと判断して吸気制御弁69を閉動作させる。一方、吸気量を増やすようにスロットル操作がされた場合、吸気量制御装置136は、吸気制御弁69を開動作させる。
上記「車両状態の時間変化」とは、例えば、エンジンEの回転速度または走行速度の時間変化を含む。つまり、吸気量制御装置136には、エンジンEの回転速度、車両走行速度等の信号が入力されており、吸気量制御装置136は、これらの信号に基づいて吸気制御弁69を制御する。一例として、吸気量制御装置136は、車両が非加速状態であると判定したときに出力過剰条件140を満足したと判断する。「非加速状態」とは、例えば、車両の定速状態、減速状態、エンジンブレーキ状態(下り坂の走行状態)である。
本実施形態の過給機42の動力は、エンジンEのクランク軸26(図1)から取り出されているので、例えば、加速時に、エンジンEの高負荷領域と過給機42の仕事量が多い領域とをマッチングさせることができる。一方で、エンジンの高速回転時であっても、低負荷領域では、過給機42の供給される吸気が過多となることがある。この状態の例が、上記非加速状態である。非加速状態の判定は、吸気量制御装置136に入力されるエンジンの回転速度、車両走行速度等の信号から判断される。非加速状態であるときに出力過剰条件140が満足されたと判断して、吸気制御弁69を閉動作させることで、過給機42を常に高効率の状態で稼働させることができる。
吸気量制御装置136は、さらに、リリーフ弁72が開状態であることを出力過剰条件140と判断してもよい。リリーフ弁72が開くのは、吸気チャンバ52の圧力が所定値よりも高くなっている状態であり、過給機42の出力、つまり吐出量が過剰となっていると判断される。具体的には、リリーフ弁72の開閉状態の信号が吸気量制御装置136に入力されており、吸気量制御装置136はリリーフ弁72の開状態を示す信号が入力されたときに、吸気制御弁69を閉動作させる。これにより、過給機42の吐出量が抑制される。
加速開始指令または加速開始域を判断すると、吸気量抑制を抑えるようにしてもよい。これによって、加速時の出力向上効果を高めることができる。また加速操作終了または加速終了域を判断すると、吸気量抑制を強めるようにしてもよい。
吸気量制御装置136は、運転者による運転操作に基づいて、運転者によって要求される出力が、過給機42を用いて得られる出力よりも、小さいと判断すると、出力過剰と判断して吸気量を抑制するようアクチュエータ68を制御してもよい。具体的には、加速操作に変化がない状態(すなわち定速走行操作状態)、加速操作の変化が小さい状態(出力増加要求が小さい状態)を判断すると、吸気量を減少させてもよい。そのほか、ブレーキ操作や加速操作の解除による減速操作を判断すると、吸気量を減少させてもよい。また、吸気量減少状態において、加速操作の変化が大きい状態、減速操作の終了状態を判断すると、吸気量を増大させてもよい。
クラッチ操作に基づいて、吸気量制御装置136が動作するようにしてもよい(図11の(a))。具体的には、加速のためのシフト変化時には、吸気量増加するようにしてもよい。また、変速段のうち高い減速比でのシフトアップ時には、吸気量の抑制を抑えることで、加速性能の低下を抑えることができる。減速のためのシフト変化時には、吸気量を減少するようにしてもよい。
また、出力優先モード(通常モード)と、燃費優先モード(流量抑制モード)とを運転者が選択するための選択スイッチを設けてもよい。この場合、出力優先モードが選択されると、吸気量を抑制する割合を小さくしてもよい。具体的には、出力優先モード選択前に比べて、吸気量を抑制開始しにくくしたり、吸気量の抑制量を小さくしたりしてもよい。燃費優先モードが選択されると、吸気量を抑制する割合を大きくしてもよい。具体的には、燃費優先モード選択前に比べて、吸気量を抑制開始しやすくくしたり、吸気量の抑制量を大きくしたりしてもよい。
変速比、エンジン回転数および加速操作量(スロットル操作量)に基づいて、吸気制御弁の制御量を決定してもよい(図11の(b))。具体的には、エンジン回転数とスロットル操作量とで表される2次元マップに基づいて、吸気量の抑制量を決定してもよい。エンジン回転数が低い領域では、エンジン回転数が高い領域に比べて、吸気量の抑制量を減少させることで、低回転域でのトルクを高めることができ、加速要求に対応しやすくできる。加えて、減速比が大きい場合や発進時には、加速要求が大きいことから、吸気量の抑制量を減速させてもよい。また、エンジン回転数が高い領域では、エンジン回転数が低い領域に比べて、吸気量の抑制量を増大させることで、高回転域での過剰なトルクを抑えることができ、燃費向上を図りやすくできる。上記傾向に加えて、スロットル操作量が大きいまたはスロットル操作量を大きくする時間変化が大きい場合、すなわち加速要求が大きい場合には、吸気量を抑制する割合を小さくすることで、運転者の意図を反映しやすい。
また、走行速度に応じて、吸気制御弁69を制御してもよい(図11の(c))。例えば、走行速度が大きくなるにつれて吸気量抑制を高めるようにしてもよい。本実施形態では、走行風が過給機42の吸込口46に導かれることから、車速(走行風圧)が大きいほど出力が高くなる。走行速度が高い状態で、出力不要な場合には、吸気制御弁69により吸気量を制限することで、過給機の仕事量を低減できる。運転者による出力増加指令に応じて、吸気制御弁69による抑制制御を解消することで、出力増加を図ることができる。これによって、非加速域での過給機の仕事量を抑えることができ、出力を高めつつ、燃費向上を達成できる。また、走行風圧が過剰となる車速域では、吸気量の抑制を大きくして、過剰なラム圧増加による過給機42の仕事を低減してもよい。
インペラ回転数に応じて、吸気効率の適した取付角度θが予め設定されてもよい。吸気量制御装置136は、インペラ回転数ごとに設定される取付角度θとなるように可変羽根80を角変位するようアクチュエータ68を制御してもよい。これによって効率を向上することができる。本実施形態では、予旋回と吸気量制御とを一種類の可変羽根80で実現することで部品点数を減らすとともに、吸気効率の向上による燃料消費の低減を図ることができる。なお、予旋回用と吸気量制御用の2種類の可変羽根を設けてもよい。予旋回について出力重視で、インペラ回転数に応じた取付角度θを設定してもよいし、燃料消費を考慮して効率重視の取付角度θを補正した補正角度となるように制御してもよい。
吸気制御弁69は、運転状態のうちで過給機42にサージングが生じやすい条件(たとえばエンジンの低回転域)において、サージングを抑えるべく、吸気量を制限するようにしてもよい。運転条件ごとにサージング発生条件が異なる場合には、運転条件に応じて吸気量を制限してもよい。これによってサージングを抑えつつ、出力向上を図ることができる。
予旋回が得られて、所定量の燃料消費を低減できる中間開度で標準設定されてもよい。この場合、出力が要求される状態を判断すると、標準設定される開度に対して、開度を大きくするように制御してもよい。また定速走行など、出力が過剰となる状態を判断すると、標準設定される開度に対して、開度を小さくするように制御してもよい。
スリップ抑制、ウィリー抑制、回転数リミッタ制御時、速度リミッタ制御時、エンジンブレーキ抑制、発進制御など、他の要因にて、エンジンの出力抑制条件が生じている場合には、連動して吸気量抑制制御を実行してもよい。具体的には、図9に示すように、スロットル弁43、燃料噴射弁、点火プラグなどによるエンジン本体自体の出力抑制を実行する場合に合わせて、吸気量制御装置による吸気量制御弁69の抑制量を大きくしてもよい。
また、前後輪10,14の回転速度差などからスリップしやすい状態を判定したり、発進走行判断時のような吸気量が過剰となることを防止するために、運転状態ごとに吸気量の制御量を設定してもよい。例えば、出力が過剰となる傾向が小さくなるにつれて、吸気量の抑制を小さくするようにしてもよい。出力が過剰となる傾向については、上記出力過剰条件140に加えて、変速比、エンジン回転数、加速操作量などから求められてもよい。
スロットル弁43も吸気量制御装置136で制御してもよい。スロットル弁43の制御と連動して吸気制御弁69を制御してもよい。吸気制御弁69は、スロットル弁43の動作に比べて遅れを持たせるようにしてもよい。これによって応答性と、燃料消費の低減との両立を図りやすい。また、加速操作時には、スロットル弁43と同時に吸気量増量制御してもよい。これによって応答性を向上できる。
また、スロットル操作に応じて吸気制御弁69を制御するとき、応答性の向上が望まれるケースでは、スロットル操作の時間変化が大きい場合、スロットル操作に対する吸気制御弁69の応答を早めてもよい。また、出力急変によるショック低下が望まれるケースでは、スロットル操作の時間変化が大きい場合、スロットル操作に対する吸気制御弁の応答を緩やかに設定してもよい。運転者によって吸気制御弁の応答性を設定可能に形成されてもよく、運転状態から得られる閾値を用いて、スロットル操作に対する吸気制御弁の反応、例えば、応答性、感度(ゲイン)、遅れ時間等を変更するようにしてもよい。
さらに、走行停止、アイドル状態を判断すると、燃費優先モードの場合には、吸気制御弁全閉制御してもよい。走行停止状態は、例えば、車速センサの出力、サイドスタンドのスイッチにより判断できる。アイドル状態は、エンジン回転数センサの出力により判断できる。
上記構成によれば、吸気制御弁69により過給機42のインペラ60への吸気の流入量が調整されるので、例えば、エンジンEの低負荷領域において、吸気制御弁69を絞って吸気Iの流入量を減らすことで、過給機42の仕事量を減らして燃料消費を低減させるとともに、吸気Iが過多となるのを防ぐことができる。上記実施形態では、過給機42の動力はエンジンEのクランク軸26(図1)から取り出されているが、過給機の仕事量が低減するので、自動二輪車の燃費が向上する。
図2のインペラハウジング61は、インペラ60よりも流れ方向上流部分が筒状に形成されており、インペラハウジング61は、流れ方向上流に向けて開放する吸込口46が形成されている。インペラ60の回転によって、吸気は、インペラハウジング61の吸込口46から吸引される。インペラハウジング61は、インペラ60の径方向外側部に位置して、流れ方向下流に向けて開放する吐出口48が形成されている。インペラハウジング61の内部に吸引された吸気は、回転するインペラ60によって遠心力で、過給機回転軸62に対する径方向に向かう力が与えられる。インペラハウジング61の内部の吸気は、インペラ60の回転によって吐出口48から流れ方向下流側に押し出され、吸気チャンバ52に案内される。
つまり、インペラ60が回転することで、インペラ60に案内された吸気を遠心力によって径方向外側に送る。インペラハウジング61によって吸気は案内されて吸気チャンバ52に導かれる。インペラ60の回転速度が大きいほど、またはインペラ60の上流側の吸気の圧力が大きいほど、一回転あたりに圧送する空気量(仕事量)が大きくなって、チャンバ内の圧力が大きくなり、出力が増大する。
本実施形態の過給機42は、走行駆動力に用いられるエンジン出力の一部によって駆動されている。したがって、過給による出力増加が不要な状況には、エンジン出力によるインペラ60の回転駆動が機械損失(メカロス)として燃費低下の原因となる場合がある。本実施形態では、吸気制御弁69を用いて過給機42の上流側へ導かれる吸気を抑制することで、インペラ60一回転あたりに圧送する空気量(仕事量)を低減することができる。吸気制御弁69による吸気量を状況に応じて可変とすることで、過給機69による出力向上を図りつつ、出力向上が不要な状況での過給機46によるメカロス低減、つまり仕事量の低減を図ることができる。すなわち、出力向上と燃費向上との両立を図りやすい。
さらに、吸気通路45における過給機42の下流側に、スロットル弁43が配置されている。つまり、吸気量制御装置136がスロットル弁43の作動量に基づいて吸気制御弁69を制御する。このように、スロットル弁43とは別に吸気制御弁69を設けることで、スロットル弁43でエンジンEに供給される吸気量を調整しつつ、吸気制御弁69で燃料消費を低減できる。
吸気制御弁69は、スロットル操作またはスロットル弁43の操作量のいずれかに連動して動作してもよい。ここで、「スロットル弁43の操作量」とは、スロットル弁43自体の駆動量(弁通過流量)をいい、「スロットル操作」とは、スロットルグリップの操作量をいう。これら2つの連動は、何らかの影響を受けて動作する関連動作すればよく、傾向を変えたり操作量を変えたりしてもよい。スロットル弁43は、電動スロのほか、サブスロやワイヤー式のスロットル弁であってもよい。
本実施形態のスロットル弁43は電スロであるから、運転者のスロットル操作とは別の要因で吸気制御弁69が動作する場合には、吸気制御弁69の操作量が一定に維持されると、スロットル弁43が出力変化してしまい、運転者のフィーリングに影響を与える可能性がある。このことを防ぐために、エンジンEによる出力変化が望まれない場合、例えば、定速走行状態では、吸気制御弁69による吸気量減少制御に対応して、スロットル弁43による吸気量増量制御を実行してもよい。このようにスロットル弁43を制御することによって、吸気制御弁69の制御に起因するエンジンEの出力変化を抑えることができる。その結果、運転者のフィーリング低下を防ぐことができる。
これに対し、スロットル操作による要因で吸気制御弁69が動作する場合には、スロットル弁43の動作傾向に追従する方向に吸気制御弁69を制御することが好ましい。これによって、運転者の出力変化指令に対する出力変化に対して、吸気制御弁69の制御も寄与させることができ、応答性が向上する。
図6に示すように、吸気制御弁69は、インペラ60に流入する吸気Iに、インペラ60の回転方向と反対方向の予旋回SFを与えている。つまり、図7に示す吸気量制御装置136が、運転状態に応じた回動位置に可変羽根80がくるように吸気制御弁69を制御する。これにより、インペラ60の回転によって吸気が圧縮される前に適切な予旋回を吸気に与えることによる断熱効率の向上と、吸気Iの流入量の調整による燃費向上の2通りの使い方ができる。
吸気ダクト50により走行風が過給機42に導入されている。したがって、ラム圧により昇圧された空気が過給機42に供給されるので、過給機42の出力が向上する。一方、高速走行時であっても一定速度で走行している場合、吸気がラム圧で昇圧される結果、過給機42に供給される吸気が過剰となることがある。上記構成では、吸気制御弁69を絞ることで、走行風圧が高い場合に、吸気ダクト50内の圧力を抑制して、過給機42の仕事量を減らして燃料消費を低減できる。
リリーフ弁72が開状態の時に、吸気量制御装置136は吸気制御弁69を閉方向に制御する。このように、リリーフ弁72が開状態の時、つまり、吸気チャンバ52の内部の圧力が高い時に吸気制御弁69を閉じることで、過給機42への吸気の流入量を減らして過給機42の吐出量を抑制できる。
具体的には、リリーフ弁72も動作時に過給機42の上流側の圧力が大きくなるが、吸気制御弁69により吸気量を制限することで、過給機42の入口側が高圧になることを防ぐことができ、過給機の仕事量を低減できる。すなわち、リリーフ弁72の動作に伴って吸気制御弁69による吸気量抑制することで、好適に仕事量の低減を図ることができる。また、リリーフ弁72の動作の前段階として、吸気制御弁69による吸気量抑制制御を実行してもよい。例えば、所定のリリーフ圧よりも低い設定圧に達すると、吸気制御弁69による吸気量抑制制御を実行してもよい。これによって、リリーフ弁72の動作を抑えることができる。また、リリーフ弁72の動作と同時期に吸気制御弁69による吸気量抑制制御を開始してもよい。
また、吸気チャンバ52内の圧力が所定値に達するまでは、吸気制御弁69を全開設定としてもよい。これによって過給による出力効果が見込める吸気チャンバ52内の圧力に速やかに到達させることができる。また、吸気チャンバ52内の圧力が所定値に達すると、予め定める圧力範囲を維持するように、吸気制御弁69を制御してもよい。詳細には、圧力範囲よりも圧力が減少すると吸気量を増量させ、圧力範囲よりも圧力が増大すると吸気量を減少させてもよい。これによって、過給効果を得つつ、過給機の仕事量の制限を図ることができる。上述する予め定める圧力範囲についても、運転状態に応じて可変に設定することで、出力向上と燃料消費の低減効果を図りやすい。
図3に示すように、吸気制御弁69は放射状に配列された複数の可変羽根80を有し、各可変羽根80が径方向軸線周りの取付角度が調節可能に設定されている。したがって、バタフライ弁のような1枚の弁体を有する吸気制御弁に比べて、吸気システムを小形化できる。
図1に示す過給機42の駆動力は、動力伝達経路における変速装置13よりも上流側から取り出されている。これにより、変速装置13の作動と無関係に、エンジンEから安定して過給機42の駆動力が得られる。
図7に示す吸気量制御装置136は、予め定めた出力過剰条件140を満足したときに、吸気量を減少するように吸気制御弁69を制御する。したがって、過給機42に供給される吸気が過多となるのを防ぐことができる。その結果、過給機42の仕事量が減って、燃料消費が低減する。
予め定めた出力過剰条件140を満足しない場合には、過給により得られる出力を維持する。また、出力過剰条件を満足すると、過給による出力増加を抑制して、出力過剰状態を抑えて燃費向上を図ることができる。このようにして、必要な場面での出力を維持しつつ、出力不要な場面での燃費向上を図ることができるので、出力向上と燃費向上との両立を図ることができる。
吸気量制御装置136は、運転者の運転操作に基づいて出力過剰条件140を判断する。これにより、運転者の意図を反映してエンジン出力の過不足を防ぐことができる。運転者操作に基づくことで、運転者の意図を反映して弁制御することができる。これによって不所望に出力抑制したり、過剰に出力維持したりすることを防ぐことができる。
また、吸気量制御装置136は、車両状態の時間変化に基づいて出力過剰条件140を判断する。このように、時間変化に基づいた弁制御を実現することで、過給機42の仕事量を減らして燃料消費を低減できる。車両状態に基づくことで、出力過剰の有無を判断しやすい。また、運転者操作または車両状態の時間変化に基づくことで、状態の今後を推定しやすく、推定した今後状態に基づいて、出力過剰の有無を判定しやすい。例えば、時間変化が大きい場合に、弁制御の応答を早めることで応答性が向上する。
さらに、運転状態ごとに吸気量を可変制御可能に構成されることで、全開閉の制御のほかに段階的または連続的な制御を行うことができる。これによって、運転状態ごとに適切な吸気量が設定される場合、例えばサージング減少の防止のために運転状態ごとに適切な吸気量が設定される場合、適切な吸気量を目標に吸気量を制御しやすい。
さらに、吸気量制御装置136は、車両が非加速状態であると判定されたときに、出力過剰条件140を満足したと判断する。これにより、上述のように、過給機42の仕事量を減らして、自動二輪車の燃費が向上する。
図2に示すように、過給機42の吸込口46に吸気制御弁69が接続され、図4に示す吸気制御弁69の可変羽根80は、根元部80aと先端部80bとが支持された状態で、径方向軸線周りの取付角度が調節可能に設定されている。これにより、可変羽根80の支持が安定する。
このように両端支持することで、路面からの振動、車体姿勢の変化(ローリング、ピッチング等)を受けても、可変羽根80の変位を防ぐことができ、その結果、可変羽根80の他部品との衝突を防ぐことができる。例えば、可変羽根80の外力に対する変位を防ぐことで、可変羽根80とインペラハウジング61との隙間(クリアランス)を小さくすることができる。これによって、可変羽根80による案内効果が向上するうえに、可変羽根80の大形化による流量制限効果が向上する。
さらに、吸気制御弁69の上流側に、図3に示す4枚の固定羽根82が放射状に配置されたガイド体84が配置されており、各固定羽根82が可変羽根80と同一の周方向位置に配置されている。これにより、固定羽根と可変羽根とにより吸気を円滑にガイドできる。しかも、図4に示すガイド体84により、可変羽根80の根元部80aが支持されているので、各可変羽根80の根元部80aを支持しやすい。
例えば、固定羽根82よりも上流側から旋回したり、流れ方向に傾斜して流れたりする吸気が存在する場合に、固定羽根82で吸気を整えることができる。これによって、整えられた吸気が可変羽根80で案内されるので、吸気の案内効果を高めることができる。本実施形態では、エンジンEの車幅方向側方に吸気ダクト50が配置されているので、吸気ダクト50によって、吸気が過給機42の上流側で約90°屈曲して案内される。したがって、過給機42に流入する吸気が乱れやすいので、固定羽根82を設ける効果が大きい。
図6に示すように、吸気制御弁69の全開時に、可変羽根80と固定羽根82とが軸方向視で重合している。これにより、全開時の吸気制御弁69の抵抗が低減する。
可変羽根80の周方向位置は、インペラハウジング61とガイド体84とを固定するボルト96の周方向位置とはずれた位置に配置される。これによって、ボルト96の着脱作業を行う際に、可変羽根80に干渉しないから、作業性が低下しない。
図4に示す可変羽根80の可変機構98は、可変羽根80に連結されたアーム100と、アーム100の先端部100aに連結された回転リング102とを有し、回転リング102を回転させることによりアーム100を介して可変羽根80を回動させる。カム機構を用いて、複数のアーム100に当接する部分に固定される部分を角変位することで、1つのアクチュエータ68で複数の可変羽根80を連動動作させている。このように連動動作させることで、可変羽根80ごとにアクチュエータ68を配置する場合に比べてコンパクトに構成することができる。さらにアーム100が、回転軸心AXに平行に延びるとともに、回転軸心AXの周方向に間隔をあけて並んで配置されているので、アーム100の配置により、吸気制御ユニット70が径方向に大形化するのを防ぐことができる。
回転リング102はガイド体84の外周部に配置されている。したがって、ガイド体84と回転リング102とが径方向にオーバーラップするので、吸気制御弁69が軸方向に大形化するのを防ぐことができる。
図3に示すように、吸気制御弁69およびアクチュエータ68が、過給機42のケーシング65に支持されている。これにより、吸気制御弁69およびアクチュエータ68を過給機42のケーシング65に組み付けてサブアッシを構成することができる。その後、過給機42をエンジンEに組み付けることで、吸気制御弁69およびアクチュエータ68もエンジンEに取り付けられるので、組立性が向上する。
図2に示すように、アクチュエータ68が過給機42の後方に配置されている。シリンダユニットCYの後方は様々な部品が配置されることが多いが、アクチュエータ68を過給機42の後方に配置することで、アクチュエータ68が他部品と干渉するのを防ぐことができる。
なお、設置スペースや他部品との干渉を回避できる場合は、アクチュエータ68を過給機42の前方に配置してもよい。これによれば、アクチュエータ68がクランクケース28の後端から後方に突出しないので、エンジンEの前後方向寸法を小さくできる。
アーム100と可変羽根80の弁体部80cとが着脱可能に固定されているので、組付性が向上する。本実施形態では、アーム100と可変羽根80の弁軸部分とが着脱可能に固定されている。また、アクチュエータ68へ走行風を導く通路を設けることが好ましい。これにより、アクチュエータ68の温度上昇を抑えることができる。アクチュエータ68のケースに、熱こもり防止用の貫通口を設けることで、アクチュエータ68の温度上昇をさらに抑えることができる。アクチュエータ68をインペラハウジング61と伝達機構ハウジング67とを連結するためのボルトで共締めすることで、部品点数の削減を図ることができる。
上記実施形態の可変羽根80は、流量調整機能に加えて、予旋回を与える機能も有していたが、予旋回を与える機能はなくてもよい。予旋回の方向を、上記実施形態とは反対方向に設定してもよい。例えば、中間開度において、仕事量の低下が望まれるような場合、インペラ60の回転方向に向くように、吸気を案内してもよい。また、固定羽根82はなくてもよい。この場合でも、可変羽根80の両端が支持される構造に形成されることが好ましい。
回転リング102を角変位させる機構は、上記実施形態に限定されない。例えば、リンク機構に代えて、ラックアンドピニオン機構によって、アクチュエータ68の出力軸68aの回転を回転リング102の角変位力に変換してもよい。また、回転リング102の外周部にギヤを形成し、ギヤにかみ合う歯車をアクチュエータ68によって回転させてもよい。さらに、直動式アクチュエータを用いて回転リング102を角変位させてもよい。また、超音波モータ等を用いて、可変機構98を介することなく、回転リング102を直接角変位させてもよい。
可変機構98の構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、カム機構に代えて、ラックアンドピニオン機構によって実現されてもよい。具体的には、弁軸部分に円板状または円弧状に形成されて外周面に歯が形成されるピニオン部を設け、回転リング102に該ピニオンの歯が噛み合うラック部を設けてもよい。この場合であっても、回転リング102の角変位に伴って、ラック部に対するピニオン部の噛み合い位置が切り替ることで、弁軸部分が角変位する。これ以外の構造を適用して、弁軸部分を連動角変位させることもできる。
中間開度状態において、固定羽根82のうち、回転軸心AXに対する周方向一方の面となる側面と、対応する可変羽根80のうち、回転軸心AXに対する周方向一方の面となる案内面の流れ方向上流側部分とが同一平面状に位置するように配置されてもよい。これによって、固定羽根82で案内された吸気を円滑に可変羽根80に導くことができ、予旋回の効果を高めることができる。具体的には、あらかじめ定める中間開度として、予旋回の効果を高めることが必要な開度に設定することによって、効果的に予旋回を与えることができる。例えば、予旋回の効果を高める開度が標準位置として設定され、標準位置に対して出力増加を判断すると全開方向に可変羽根80を動作させ、標準位置に対して出力低下を判断すると全閉方向に可変羽根80を動作させてもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、吸気制御弁69はバタフライ弁であってもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。