JP6602934B1 - 糖カルボン酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化反応で副生する過酸化水素を速やかに分解するカタラーゼ製剤を用い、重合度2以上の澱粉分解酸化物或いは転移反応酸化物で糖カルボン酸を、工業的にかつ、高収率で、生産する方法を提供すること。【解決手段】還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法は、反応液総量が1L以上であり、糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、前記澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、炭酸塩、または炭酸水素塩を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加する方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンを製造する方法に関する。
グルコースの還元末端を酸化することで得られるアルドン酸の一つであるグルコン酸は、単糖でありながらビフィズス菌増殖選択性を持つ機能性等を有しているだけでなく、カルシウムなどの無機カチオンと安定な塩を形成する特徴を持つことから、ミネラル補強剤として利用されている。しかしながら溶液安定性が悪く、高濃度下で保存すると析出してしまう欠点があった。
これら欠点を補う素材として、グルコン酸の非還元末端側にグルコースが結合したマルトビオン酸などの糖カルボン酸が挙げられる。糖カルボン酸であるマルトビオン酸においても無機カチオンと安定な塩を形成するが、溶解性が良好であり、高濃度条件で保存しても析出しない特徴を有している。このように二糖類以上の糖質の還元末端を酸化することで、多くの機能性物質が得られることが期待される。
特許文献1及び2には、重合度2のマルトース、ラクトースやセロビオースなどを酸化する手法として、アシネトバクター属、ブルクホルデリア属、グルコノバクター属やアセトバクター属などの微生物を用いた方法が開示されている。また、重合度4以上の澱粉分解物を酸化する酵素的な手法として、Microdochium属に属する微生物由来の糖質酸化酵素製剤や、Acremonium属に属する微生物由来の糖質酸化酵素製剤を用いる手法が知られている。
特開2001−245657号公報 特開2007−028917号公報 特許第4417550号公報 特許第3310008号公報 国際公開WO2014/042237号パンフレット 特表2000−502904号公報
特許文献3〜5の糖質酸化酵素は、糖質を酸化する反応で副生成分として過酸化水素を生成する。過酸化水素は、殺菌や漂白剤として使用されるなど、タンパク質を変性させる力があり、糖質酸化時に副生する過酸化水素が、糖質酸化酵素を変性失活させてしまう。このため、糖質酸化酵素を用いて工業的に安定且つ効率的に重合度2以上の澱粉分解物および転移反応物を酸化するためには、過酸化水素の速やかな分解が必要となる。
特許文献6のグルコースオキシダーゼ製剤においても、グルコースをグルコン酸へ酸化する過程で過酸化水素が発生する。副生する過酸化水素を速やかに分解する生産技術としてカタラーゼ製剤を使用することが記載されている。
また、特許文献6には、グルコースをグルコン酸へ酸化する過程で、反応液のpHを連続的に一定の範囲に保つ技術が記載されている。
また、一般的に反応液のpHを一定に保つ技術として、pH緩衝液(バッファ)を添加して、反応液全体のpHを保持する手法が知られている。
重合度2以上の澱粉分解物や転移反応物を酸化する場合においても、糖質酸化酵素と一緒に、カタラーゼ製剤を添加すると、糖質酸化時に副生する過酸化水素を速やかに分解することが出来る。しかしながら、原因は不明ではあるが、重合度2以上の酸化物を高収率で安定して生産することができない。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、酸化反応で副生する過酸化水素を速やかに分解するカタラーゼ製剤を用い、かつ、高収率で、重合度2以上の澱粉分解酸化物或いは転移反応酸化物で糖カルボン酸を工業的に生産する方法を提供する。特に1L以上の大容量の反応液を用いて、工業的に高収率で生産する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、重合度2以上の澱粉分解物や転移反応物を原料とした酸化反応について、ビーカー、フラスコレベルの容器から、バッチ、大型反応釜レベルの容器まで、様々なスケールの容器を用いて検討を行ったところ、原料を含む1L以上の反応液を、大容量の容器の中で酸化反応を行うと収率が低下し、所望の収量を得るためには反応時間が長くかかる傾向にあることが分かった。その原因を検討したところ、大容量の容器内部に保持される反応液の内部は一様ではなく、表面付近と内部とでは反応の経過が異なることが原因であることが判明した。しかしながら、撹拌を行う、循環を行う、反応液のpHを一定に保つ、といった従来手法の採用により、収率はある程度改善がみられるものの、工業生産レベルに必要とされる収率、反応時間には依然不充分であることも判明した。
そして、本発明者は、工業生産レベルに必要とされる収率、反応時間を得るためには、反応液の内部を、化学的な均一状態、時間的な均一状態にするのではなく、むしろ所定の不均一な状態とすることが効果的であることを発見した。
また、カタラーゼ製剤中に含まれる夾雑酵素であるα−グルコシダーゼやグルコアミラーゼ等の澱粉分解酵素により加水分解されることが、重合度2以上の糖酸化物の生産を不安定化させる原因であることを発見するとともに、所定量の夾雑酵素量であれば、工業生産に用いることができることも発見した。
本発明者らは、これら発見に基づき、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1)還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、前記澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、炭酸塩、または炭酸水素塩を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法。
(2)
前記塩基性化合物の所定量添加は、
前記作用工程開始時に、炭酸塩、または炭酸水素塩である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上100%未満の相当質量で添加し、
前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、前記第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加するものである(1)記載の糖カルボン酸の製造方法。
(3)還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、前記澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、pKbが1.3超8以下である塩基性化合物を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法。
(4)
前記塩基性化合物の所定量添加は、
前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、pKbが1.3超8以下である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加し、
前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、前記第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加するものである(3)記載の糖カルボン酸の製造方法。
(5)溶存酸素量が、1ppm以上となるよう、前記作用工程期間中に酸素を供給する(1)から(4)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(6)前記作用工程期間のうち、酸化率が0%から50%である期間、溶存酸素量が、1ppm以上となるよう、前記作用工程中に酸素を供給する(1)から(4)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(7)前記炭酸塩は、水に対する溶解度が、0超0.01mol/L以下である(1)、(2)から(6)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(8)前記炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、または卵殻カルシウムである(7)記載の糖カルボン酸の製造方法。
(9)前記pKbが1.3超8以下である塩基性化合物は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸水素アンモニウムである(3)から(6)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(10)前記作用工程の反応液総量が、50kg以上である(1)から(9)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(11)前記糖カルボン酸は、マルトビオン酸である(1)から(10)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(12)前記カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)に対する糖化活性(B)の含有比率(B/A)が0.00002以上0.005以下であり、
前記糖化活性が前記原料基質中の還元糖量に対して0.9u/g以下である量で存在する(1)から(11)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
(13)前記カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)に対する糖化活性(B)の含有比率(B/A)が0.005以下であり、かつ糖化活性(B)が0.1u/ml以上であり、
前記糖化活性が前記原料基質中の還元糖量に対して0.9u/g以下である量で存在する(1)から(11)のいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
本発明によれば、食品、医薬や工業分野等において、ミネラル成分を可溶させる素材等として有用である糖カルボン酸を収率よく製造することができる。特に工業生産に適した収率、収量を、簡便に得ることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の一実施形態は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、炭酸塩、または炭酸水素塩を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法である。
本発明の別の実施形態は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、炭酸塩、または炭酸水素塩である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上100%未満の相当質量で添加し、
前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法である。
本発明の別の実施形態は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、前記塩基性化合物として、pKbが1.3超8以下である塩基性化合物を、前記所定量の5%以上の相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法である。
本発明の別の実施形態は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加するとともに、
前記作用工程開始時に、pKbが1.3超8以下である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上100%未満の相当質量で添加し、
前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加する糖カルボン酸の製造方法である。
以下、本発明の構成について、順に説明する。本発明は、原料糖質を含む反応液をあらかじめ調製し、原料糖質に含まれる還元末端側のアルデヒド基を酸化させる作用工程によって、糖カルボン酸を得る製造方法である。
本発明の製造方法によって製造される糖カルボン酸は、以下のとおりである。
(糖カルボン酸)
本発明方法を使用して製造される糖カルボン酸は、重合度2以上、好ましくは重合度4以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100、好ましくは4〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトデキストリン酸化物、粉飴酸化物、水飴酸化物、マルトヘキサオン酸、マルトテトラオン酸、マルトトリオン酸、マルトビオン酸、イソマルトデキストリン酸化物、パノース酸化物、イソマルトトリオン酸、イソマルトビオン酸、ニゲロビオン酸、コージビオン酸などが挙げられる。これらのうち、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、ラクトンであってもよく、その塩類であってもよい。
糖カルボン酸の塩としては、特に限定されないが、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩等が挙げられる。
あらかじめ調製する原料糖質を含む反応液は、以下の構成からなる。
(原料糖質)
本発明において原料に用いる糖質は、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物或いは転移反応物であり、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトヘキサオース、パノース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、水飴、粉飴、デキストリン、分岐デキストリン、イソマルトデキストリン等が挙げられる。原料糖質は、単一の重合度である必要はなく、異なる重合度の糖質が混合された原料糖質としてもよい。
糖カルボン酸生産時の原料糖質の濃度は、精製工程での濃縮等を考慮すると10〜50(wt)%が好ましく、20〜40(wt)%がより好ましい。なお、本明細書において、「(wt)%」は、対象成分の含有量(質量)を意味し、ここでは、液体中における糖質の含有量を意味する。
(糖質酸化酵素製剤)
本発明で言う糖質酸化酵素製剤とは、還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の糖質を酸化し、副生成分として過酸化水素を発生するものをいう。Microdochium属に属する微生物由来の糖質酸化酵素製剤や、Acremonium属に属する微生物由来の糖質酸化酵素製剤などが挙げられ、具体的には、Acremonium chrysogenumに由来する糖質酸化酵素などが挙げられる。
マルトビオン酸等の糖カルボン酸製造にあたり糖質酸化酵素は、原料基質中の還元糖量(wt%)に対して1u/g以上30u/g以下が好ましく、より好ましくは、2u/g以上20u/g以下で作用させる。本発明では、カタラーゼ製剤による過酸化水素の分解が十分になされるので、副生される過酸化水素の増加にかかわらず、糖質酸化反応を十分な速度で行うことができる。また、糖化活性による原料となる重合度2以上の澱粉分解物や転移反応物の分解が抑制され、ある程度の時間をかけて糖質酸化反応を行っても収率低下を招きにくいので、過剰な量の糖質酸化酵素を必要としない。
本発明の糖質酸化酵素の酵素活性は、次のようにして測定する。
0.15%(w/v)フェノール及び0.15%(w/v)トリトンX−100を含む0.1Mリン酸一カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.0)2ml、10%マルトース一水和物溶液0.5ml、25U/mlペルオキシダーゼ溶液0.5ml、及び0.4%(w/v)4−アミノアンチピリン溶液0.1mlを混合し、37℃で10分保温後、酵素溶液0.1mlを添加し、反応を開始した。酵素反応進行と共に、波長500nmにおける吸光度の増加を測定することにより糖質酸化活性を測定した。なお、ブンランクには0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を使用し、1分間に1μmolのマルトース一水和物を酸化するのに必要な酵素量を1単位とし、以下の計算式より活性を算出する。
マルトース酸化活性 (U/ml)
={(A5−A2)−(Ab5−Ab2)}× 2.218 ×n
A2, A5 : 反応開始後、2分後および5 分後の吸光度 (検体)
Ab2, Ab5 : 反応開始後、2 分後および5 分後の吸光度 (ブランク)
n:酵素液の希釈倍率
(カタラーゼ製剤)
本発明で言うカタラーゼ製剤とは、Aspergillus属や、Micrococcus属などの微生物由来のカタラーゼ製剤などが挙げられ、具体的には、Aspergillus nigr又はMicrococcus lysodeikticus由来のカタラーゼ製剤が挙げられる。また、副活性としてカタラーゼ活性を有する市販のグルコースオキシダーゼ製剤を選択して用いることも含まれる。
カタラーゼ製剤には、グルコアミラーゼやα‐グルコシダーゼなどの糖化活性を持つ夾雑酵素が混在することが多い。これら夾雑酵素が多く混在していると、糖カルボン酸の原料、すなわち還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物や、これら原料を酸化した反応生成物である糖カルボン酸が分解されてしまい、安定的な品質の糖カルボン酸の製造が不可能となる。従って、一般的には、純度の高いカタラーゼ製剤が望まれる。
例えば、遺伝子組換えにより純度を上げて製造された組換えカタラーゼ製剤や、試薬として流通している精製カタラーゼ製剤といった、夾雑酵素をほとんど含まないカタラーゼ製剤を、用いることができる。
しかしながら、中和剤を、後述する所定の方法で反応液に添加することにより、全体の収率が向上するので、夾雑酵素をある範囲で含んだカタラーゼ製剤でも問題なく用いることができるようになる。その結果、工業生産上、コストメリットも生まれる。この夾雑酵素を所定範囲量で含んだカタラーゼ製剤については、後述する。
(中和剤)
本発明で言う中和剤とは、反応液中のpHを調整するために用いられるものであり、作用工程中に添加される。中和剤の一例としては、塩基性化合物を用いることができる。
塩基性化合物は、一例として、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化塩を用いることができる。
そして、炭酸塩は、一例として、25℃における水に対する溶解度が、0超0.01mol/L以下のものである。例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、卵殻カルシウムなどを用いることができる。
また、炭酸水素塩は、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどを用いることができる。
また、水酸化塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを用いることができる。
また、塩基性化合物の別の一例としては、25℃における水を溶媒としたpKbが、0以上8以下である塩基性化合物を用いることができる。pKbが8超である塩基性化合物は、中和機能に乏しく、工業生産における使用には適さないものである。
また、pKbの典型的な例としては、25℃における水を溶媒としたpKbは、0以上、0超、0.5以上、1以上、1超、1.3以上、1.3超、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、または4.5以上であり、1以下、1未満、1.5以下、2以下、3以下、4以下、4.5以下、5以下、5.5以下、6以下、6.5以下、7以下、または8以下である。
pKbが0以上8以下である塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアなどを例示することができる。
なお作用工程中(作用工程開始時を含む)に加える中和剤の総量は、原料となる糖質中の還元糖を、中和するのに必要な中和剤の量として計算できる。
例えば、中和剤が2価のイオンであれば、原料となる糖質中の還元糖と中和剤のモル比が2:1となるようにして、中和に必要なモル数が算出される。また、中和剤が1価のイオンであれば、モル比が1:1となるようにして、中和に必要なモル数が算出される。
本明細書において、中和剤の「所定量」とは、原料となる糖質中の還元糖の中和に必要な中和剤の総モル数を100%とする量である。
そして、中和に使用する際の中和剤の質量(本明細書において、相当質量ということがある)は、中和に必要なモル数と、中和剤の分子量とから、常法に従って計算することができる。
中和剤を複数種類使用する場合でも、上記所定量を按分して、各々の中和剤の分子量を用いて、各々の中和剤の添加質量を計算することができる。
一例として、複数種類の中和剤を使用する際、ある中和剤Xを所定量のY%の分について作用させようとする場合には、その添加する中和剤Xの質量は、(糖原料固形分)[g]÷(糖原料平均分子量)×(中和剤Xの分子量)÷(中和剤Xのイオン価数)×(Y/100)、によって計算することができる。中和剤のイオン価数は、例えば中和剤が2価のイオンを生成するものである場合には、上記式に2を代入し、中和剤が1価のイオンを生成するものである場合には、上記式に1を代入して計算される。
ところで、糖カルボン酸を生成する作用工程期間中、反応液のpHは次第に低下し、中性から酸性に変化する傾向にある。ここでpHが4未満となると、糖質酸化酵素の活性が大幅に低下することが分かっているため、一般的には反応液の状態を、pHセンサーで常時モニタリングすることが行われている。そして、pHが4〜7の間に任意の目標pHの値を設定し、pHがその目標値で一定に保たれるように、中和剤を作用工程開始時から逐次添加することが一般的に行われている(リアルタイムフィードバック制御型の逐次添加法)。
しかしながら、本発明者は、反応液総量が1L以上である反応系においては、リアルタイムフィードバック制御型の逐次添加法を行っても、90%以上の高い収率を得ることはできなかった。そして、中和剤の添加方法について、様々な方法を検討としたところ、作用工程期間中に低下するpHを見越して、作用工程開始時に、中和剤をあらかじめ過剰に添加することで、90%以上の高い収率を得ることができた。
すなわち、作用工程の開始時において、中和剤をある程度の量、加えるものであり、一例としては、反応の全期間を通じて必要な中和剤の総モル数(すなわち所定量)の5%以上の量を、作用工程開始時に反応液に加えることが挙げられる。具体的に、添加する中和剤の質量は、必要なモル数と、使用する中和剤の分子量とから、常法により、計算することができる。
そして、作用工程開始時における添加量が所定量の100%未満である場合には、作用工程開始時以外の作用工程の期間中に、上記作用工程開始時に加えた中和剤(所定量の5%以上の量)の残量、すなわち所定量の95%以下の量が添加される。
ここで、作用工程開始時以外に添加される中和剤は、上述した塩基性物質から選ばれ、作用工程開始時の中和剤と、同じであっても異なっていてもよい。
具体的に、残量として添加する中和剤の質量(本明細書において、残量相当質量ということがある)は、残りの中和に必要なモル数と、残量として添加する中和剤の分子量を用いて、常法により、計算することができる。
なお、残量を添加する回数に制限はなく、1回でも、複数回の添加(分割添加)であってもよい。
重要なのは、反応初期に相当する作用工程開始時には、中和剤を5%以上添加するという条件が、反応液総量が1L以上の生産において収率90%を得るために必要であるということである。ここで、作用工程開始時に用いる中和剤には、後述する特定の塩基性化合物を用いることができる。
一方、作用工程開始時を除く作用工程期間中については、製造工程に比較的柔軟性があり、中和剤に上述した塩基性化合物から選択して用いることができる。また添加方法についても特に制限はない。その添加方法は、例えば、一定時間おきに一定量ずつ添加する方法でよいし、pHが一定となる必要量を適宜追加する方法であってもよい。
作用工程開始時に加える中和剤の量の典型的な例としては、所定量の5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、または50%以上であり、または、100%以下、100%未満、90%以下、80%以下、または70%以下の相当質量である。
(作用工程開始時に添加する中和剤)
作用工程開始時に添加する中和剤には、特定の塩基性化合物を用いることができる(第一の塩基性化合物ということがある)。
塩基性化合物としては、一例として、炭酸塩、炭酸水素塩を用いることができる。
そして、炭酸塩は、一例として、25℃における水に対する溶解度が、0超0.01mol/L以下のものである。例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、卵殻カルシウムなどを用いることができる。
また、炭酸水素塩は、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどを用いることができる。
また、塩基性化合物の別の一例としては、25℃における水を溶媒としたpKbが、1.3超8以下である化合物を用いることができる。pKbが、1.3以下の化合物を用いた場合は、糖質酸化酵素が添加直後に失活してしまい、糖質酸化機能が回復しないため、使用できないものである。pKbが8超である塩基性化合物は、中和機能に乏しく、工業生産における使用には適さないものである。
また、pKbの典型的な例としては、25℃における水を溶媒としたpKbは、1.3超、1.5以上、2以上、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、または4.5以上であり、1以下、1未満、1.5以下、2以下、3以下、4以下、4.5以下、5以下、5.5以下、6以下、6.5以下、7以下、または8以下である。
pKbが1.3超8以下である塩基性化合物としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアなどを例示することができる。
以上述べたように、作用工程開始時に添加する中和剤には、特定の塩基性化合物を用いることができる。
(作用工程開始時以外の作用工程期間中に添加する中和剤)
一方、作用工程開始時以外の作用工程期間中に添加する中和剤(第二の塩基性物質ということがある)は、上記した特定の塩基性物質(第一の塩基性物質)に限らず、上述した塩基性化合物から広く選択することができる。
すなわち作用工程開始時以外の作用工程期間中に添加する中和剤(第二の塩基性物質)は、作用工程開始時に添加する中和剤(第一の塩基性物質)と同じ塩基性化合物であっても、異なる塩基性化合物であってもよい。
そして、作用工程開始時における添加量が所定量の100%未満である場合には、作用工程開始時以外の作用工程の期間中に、上記作用工程開始時に加えた中和剤(所定量の5%以上の量)の残量、すなわち所定量の95%以下の量、が添加される。
具体的に、残量として添加する中和剤の質量(本明細書において、残量相当質量ということがある)は、残りの中和に必要なモル数と、残量として添加する中和剤の分子量を用いて、常法により、計算することができる。
なお、残量を添加する回数に制限はなく、1回でも、複数回の添加(分割添加)であってもよい。
作用工程開始時に中和剤をあらかじめ過剰に加える方法が、作用工程開始時から逐次添加する方法よりも、高収率が得られる原因については、充分に解明が進んでいない。しかし、反応液総量が1L以上である反応系の場合、反応の初期には、反応液の内部に反応中間物質の濃度勾配、反応生成物/副生成物の濃度勾配、添加した中和剤の濃度勾配等が生じやすいことが一因であると考えられる。
また、反応系が、複数の中間体を経る高度な反応系である可能性も考えられる。
ところで、中和剤を作用工程の開始時に過剰に添加することは、作用工程開始時のpHが高くなることを意味する。ここで、反応液が強アルカリ性を示すと、糖質酸化酵素が直ちに失活してしまい、糖質酸化機能が回復しない。しかしながら、本発明の作用工程開始時に用いる特定の中和剤を用いた場合には、中和剤を作用工程の開始時に添加しても、糖質酸化酵素が失活することなく使用できる。
また、反応液総量が1L以上である反応系で生ずる濃度勾配は、反応液総量が多くなるほど勾配が強くなる傾向にあることが分かっている。すなわち、反応液の量が多くなり、反応容器のサイズが大きくなるほど、収率は低下する傾向にある。従って、本発明の製造方法は、反応液の量が多い系であるほど、収率向上効果を発揮するものである。例えば、反応液の総量が50kg以上である反応系であっても、適用することができる。さらには、100kg以上である反応系、500kg以上である反応系、1ton以上である反応系、10ton以上である反応系、50ton以上である反応系にも適用することができ、100ton以上である反応系、500ton以上である反応系、でも好適に用いることができる。
なお、反応液調製段階と、作用工程段階開始時は連続するものであるので、中和剤を作用工程段階の開始時に加えることと、中和剤を反応液調製段階に加えることとは、事実上同一であり、本発明には、中和剤を反応液調製段階に加えることも含まれる。
また、中和剤の形態(液体、固体等)や添加方法(滴下、散布等)にもよるが、中和剤の添加には、ある程度の有限の時間を要することから、中和剤の添加を、反応液調製段階から作用工程段階開始時にかけて、連続して行うことも、本発明には含まれる。
一方、中和剤を作用工程開始時に所定量の5%以上の量で反応液に加えた後、その残量(所定量の95%以下の量)を作用工程期間中に反応液に追加する場合、最初の中和剤を所定量の5%以上で添加した後、次の中和剤を添加するまでの時間間隔は、ある所定時間として必要である。
その所定時間は、典型的には0.25時間以上、0.5時間以上、または1時間以上である。この所定時間は、反応液調製段階直後の反応液の全体撹拌がある程度進行する時間として必要な時間として考えられる。
また、上記所要時間は、典型的には、8時間以下、7時間以下、6時間以下、5時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、または1時間以下である。この所定時間は、作用工程開始時に添加した中和剤の添加量に依存し、作用工程開始時に、所定量に対して充分な量の中和剤が添加された場合には、相対的に長い時間でよく、作用工程開始時に、所定量に対して相対的に少ない量の中和剤が添加された場合には、相対的に短い時間となる。これは作用工程開始時に添加する中和剤が、作用工程期間中に、中和のために消費されることによるものである。
なお、中和剤の消費に伴なって不足した中和剤を追加添加する方法として、上記した時間で管理する方法以外に、反応液のpHで管理する方法もある。例えば、作用工程進行中の反応液のpHをモニターし、pH6.0超の状態から、pH6.0以下の状態に移行するタイミングで、次の中和剤を添加することで、安定した反応が実現できる。
(作用工程における反応温度)
糖質酸化酵素とカタラーゼの反応工程での反応温度は、例えば20〜60℃程度の条件下で行うのが好ましく、より好ましくは、25〜40℃の範囲である。
(作用工程における酸素の供給)
本発明の酸化反応では、反応系に酸素が必要となるため、空気や酸素を通気することが好ましい。また、反応の結果、酸素は消費されるため、反応液中の酸素が欠乏した領域に対して、酸素をより多く含む領域の反応液を供給する必要があるから、常時撹拌することが好ましい。従って、空気や酸素を所定量通気しながら、所定量の速度で撹拌することが最も望ましい。
そして、反応液中の酸素量は、いわゆる溶存酸素量として、溶存酸素センサー等により計測することができる。従って、作用期間中に、溶存酸素量が所定量以上となるように、通気量を調整することや、撹拌速度を調整することが可能である。
後述する実施例に示すように、例えば作用工程の全期間にわたって、溶存酸素量を1ppm以上とすることにより、90%以上の収率を得ることができる。その方法は、例えば、酸素ボンベから酸素を通気しながら攪拌することで達成される。または、エアーコンプレッサーから散気装置を通すことで微細な空気を通気しながら、反応液をバブリングすることでも達成される。また反応容器の形状にもよるが、スクリュー型攪拌機、プロペラ型攪拌機のような供給される空気を高速撹拌することで微細な空気へせん断供給する方法でも達成される。
なおここで、溶存酸素量は、単に通気によって反応液に溶け込んだ酸素だけではなく、カタラーゼ製剤が反応中に生成する酸素等をも含んだ、合計の溶存酸素量である。
また、溶存酸素センサーを用いた反応液中の溶存酸素量の計測は、比較的簡単にできるため、工業生産として必要な製造コストに見合った製造方法を設計することも可能である。具体的には、作用期間中の反応速度は必ずしも一定ではなく、多くの場合、作用工程の前半では反応速度が速く、後半では反応速度が遅い傾向にある。そしてより多くの酸素を必要するのは反応速度の速い前半であるから、作用期間の前半では、溶存酸素量が1ppm以上となるように、酸素ボンベから酸素を通気しながら攪拌し、作用期間の後半では、通気量を減らすことが可能である。また、別の例としては、反応の酸化率をモニターし、酸化率が0〜50%の作用期間に、溶存酸素量が1ppm以上となるように、空気を通気しながら攪拌し、酸化率が51%以上の作用期間では、通気量を減らすことも可能である。このように酸化率が0〜50%の作用期間のみを溶存酸素量が1ppm以上とすることにより、酸素使用量を減らし、コスト削減ができるとともに、工程管理面での負担も軽減される。
なお、糖カルボン酸への酸化反応は、還元糖量の減少から確認することができるから、例えばネルソン・ソモギ法による比色定量法を用いることによって、酸化率(%)を測定することが出来る。この場合、ネルソン・ソモギ法による還元糖量を定量することによって、反応系全体の酸化率(%)を算出することもできる。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
また、HPLCにより原料糖質や糖カルボン酸を分析することで確認することも可能である。例えば、マルトースを原料に酸化反応を行った後、HPAED−PAD法(パルスドアンペロメトリー検出器、CarboPac PA1カラム)により、溶出:35℃、1.0ml/min、水酸化ナトリウム濃度:100mM、酢酸ナトリウム濃度:0分−0mM、2分−0mM、20分−20mMの条件で測定すれば、マルトース、マルトビオン酸を定量することが可能である。
(夾雑酵素を所定範囲で含むカタラーゼ製剤)
本発明では、夾雑酵素を所定範囲で含むカタラーゼ製剤を用いることもできる。具体的には、カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)に対する糖化活性の含有比率(B/A)が0.005以下であるカタラーゼ製剤を用いる。好ましくは、B/Aは、0.0045以下、0.003以下、0.002以下、0.0015以下、0.001以下、0.0005以下、0.0004以下である。
また、B/Aは0.00002以上であることが好ましく、具体的には0.0001以上、0.0002以上、0.0003以上、0.0004以上であってよい。カタラーゼ製剤がこの程度の比率で糖化活性を有していても、糖化反応に比べて糖質酸化の主反応が速やかに進むため、収率低下につながりにくい。
また、本発明においては、カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)に対する糖化活性(B)の含有比率(B/A)が0.005以下であっても、原料糖質に対してカタラーゼ製剤を多めに添加すると、カタラーゼ製剤中の夾雑酵素が原料基質を加水分解し、マルトビオン酸等の糖カルボン酸が想定している組成のものが得られない場合がある。このためカタラーゼ製剤中の糖化活性が、原料基質中の還元糖量(固形分当たりwt%)に対して0.9u/g以下(好ましくは、0.8u/g以下、0.7u/g以下、0.65u/g以下)となるようにカタラーゼ製剤を作用させる必要がある。
カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)は、5000u/ml以上であることが好ましく、具体的には10000u/ml以上、15000u/ml以上、20000u/ml以上、22500u/ml以上であってよい。高いカタラーゼ活性を有すると、糖化活性がある程度高くても、収率に与える影響を小さくとどめやすい。
カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性(A)は、500000u/ml以下であることが好ましく、具体的には、2500000u/ml以下、150000u/ml以下、100000u/ml以下、75000u/ml以下であってよい。本発明で用いられるカタラーゼ製剤は糖化活性が低いので、過大なカタラーゼ活性を有しなくても、収率に与える影響を小さくとどめやすい。
カタラーゼ製剤中の糖化活性(B)は、250u/ml以下であることが好ましく、具体的には、100u/ml以下、50u/ml以下、30u/ml以下、25u/ml以下であってよい。
他方、カタラーゼ製剤中の糖化活性(B)は、許容範囲内で有してよく、0.1u/ml以上であることが好ましく、具体的には0.5u/ml以上、1.0u/ml以上、1.5u/ml以上、2.0u/ml以上であってよい。この程度の糖化活性が存在しても、糖化反応に比べて糖質酸化の主反応が速やかに進むため、収率低下につながりにくい。
カタラーゼ製剤中の糖化活性は、許容範囲内で有してよく、具体的には原料基質中の還元糖量(固形分当たりwt%)に対して、0.00008u/g以上、好ましくは0.0005u/g以上、0.001u/g以上、0.0015u/g以上であってよい。この程度の糖化活性が存在しても、糖化反応に比べて糖質酸化の主反応が速やかに進むため、収率低下につながりにくい。
また、マルトビオン酸等の糖カルボン酸製造にあたり、前記カタラーゼ製剤は、原料基質中の還元糖量(固形分当たり)に対して40u/g以上1000u/g以下で存在するのが好ましく、より好ましくは、60u/g以上500u/g以下で存在する。本発明では、カタラーゼ製剤中の糖化活性が低く抑えられているため、過酸化水素による糖質酸化酵素の分解を抑制するのに十分な量のカタラーゼ製剤を使っても収率低下を招きにくい。また、糖化活性による原料となる重合度2以上の澱粉分解物や転移反応物の分解が抑制され、ある程度の時間をかけて糖質酸化反応を行っても収率低下を招きにくいので、過剰なカタラーゼ活性を必要としない。
なお、カタラーゼ製剤中のカタラーゼ活性は、次のようにして測定する。
酵素反応後の残存過酸化水素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する方法に従う(小崎道雄監修「酵素利用ハンドブック」、地人書館昭和60年版、p404〜410)。すなわち、市販の30重量%過酸化水素を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で800倍に希釈した基質溶液5mlを容器にとり、30℃の恒温水槽に15分入れ恒温とする。これに30℃に保温した検体酵素液1mlを加え、正確に5分後に0.5N硫酸2mlを加えよく振り混ぜ酵素作用を止める。これに10重量%ヨウ化カリウム溶液1mlと1%モリブデン酸アンモニウム1滴及び指示薬として0.5%デンプン試薬5滴を加え、この溶液を撹拌しながら、0.005Nチオ硫酸ナトリウム溶液(定量用)で滴定し、ブランクは試料の代わりに水1mlを添加し、ブランクの値から検体の値を差し引いてカタラーゼ作用によって分解された過酸化水素の量を算出し、標準曲線から検体酵素液のカタラーゼ活性を求める。なお、1Uは1分間に1μmolの過酸化水素を分解する活性を示している。
カタラーゼ活性(U/ml)=A×n
n:希釈倍率
A:標準曲線のグラフよりy=(T0−TS)×24.18/T0×2.5×fのx軸の値Aを求める
f:0.005Nチオ硫酸ナトリウムのファクター
0:ブランクの滴定値(ml)
S:サンプルの滴定値(ml)
24.18/T0:初発基質濃度による活性測定変化に対する補正値
2.5:0.005Nチオ硫酸ナトリウム溶液1mlは過酸化水素2.5μmolに相当
本発明で定義する糖化活性とは、グルコアミラーゼ活性とα−グルコシダーゼ活性により澱粉分解物が加水分解されグルコースを遊離する力であり、本発明の糖化活性は、基質の4−ニトロフェニルβ−マルトシド(G2−β−PNP)より、1分間に1μmolのPNPを遊離する活性を1Uと定義することができる。
カタラーゼ製剤中の糖化活性は、カタラーゼ製剤を4−ニトロフェニルβ−マルトシドと反応させて4−ニトロフェニルβ−グルコシドを生成させ、それをβ-グルコシダーゼによって分解して4−ニトロフェノールを生成させ、4−ニトロフェノールを定量することにより測定される。具体的には、キッコーマン社製の糖化力測定キット或いは糖化力分別定量キットなどを利用して、カタラーゼ製剤中の糖化活性を測定する。
(キッコーマン社製の糖化力測定キットを使用した糖化力活性の測定)
キッコーマン社製の糖化力測定キットを使用する場合、4−ニトロフェニルβ−マルトシドを含有する基質溶液0.5mlにβ−グルコシダーゼを含有する酵素溶液0.5mlを混ぜ、37℃で5分間予備加温を行った後、測定試料0.1mlを加え、混合して37℃で10分間反応させる。反応停止は、炭酸ナトリウムを含有する酵素停止液2mlを加え混合する。反応終了後の液を波長400nmで定量することにより糖化力を測定し、以下の計算式より活性を算出する。
糖化力活性 (U/ml)=(Es−Eb)× 0.171×n
Es:測定試料の吸光度
Eb:ブランクの吸光度
n:酵素液の希釈倍率
本発明方法を使用して調製した糖カルボン酸は、飲食物や化粧品、医薬品、化成品等へ使用することが可能である。
実施例1、4、5、8〜10は参考例と読み替えるものとする。
試験例1 炭酸塩中和剤添加方法の比較(作用工程開始時の添加量、及び作用工程期間中の添加方法の検討)
(実施例1〜3、及び比較例1)
<実施例1>
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)800gに蒸留水1200gを加え、30wt%となるように溶解させた後、炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)78g(所定量の100%に相当する量)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)4.0ml(1200u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.56ml(84000U、140u/g基質)を加え、35℃、500rpm、空気通気1L/分で通気攪拌(孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気)を行った。反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤4.0ml(1200u、2u/g基質)を追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の炭酸カルシウムの添加量78gは、所定量100%に相当する質量である。また、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
<実施例2>
実施例2として、原料糖質や酵素量、反応温度や空気通気条件は、実施例1と同様の条件で酸化反応を行い、炭酸カルシウム78g(所定量の100%に相当する量)を3分割(作用工程開始時に所定量の50%、8時間後に所定量の40%、22時間後に所定量の10%)で添加しながら、酸化反応を行った。
<実施例3>
実施例3として、原料糖質や酵素量、反応温度や空気通気条件は、実施例1と同様の条件で酸化反応を行い、所定量の10%に相当する質量の炭酸カルシウム(7.8g)を、作用工程開始時に添加した後、反応開始1時間後から、pHを6.0となるように、残量90%に相当する質量の炭酸カルシウム(70.2g)を15%wt溶液として逐次添加しながら、酸化反応を行った。ここで、逐次添加は、pHをリアルタイムで計測し、マイクロポンプを用いて中和剤を添加するものである。
<比較例1>
比較例1として、原料糖質や酵素量、反応温度や空気通気条件は、実施例1と同様の条件で酸化反応を行い、酸化反応により低下するpHを6.0となるように、15%wt炭酸カルシウムを、作用工程開始時から作用工程期間中にわたって、逐次添加しながら、酸化反応を行った。
なお比較例1における作用工程開始時の炭酸カルシウムの添加量は、マイクロポンプの記録データより、所定量の1%に相当する質量であることが計算された。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
なお、上記実施例1〜3において、作用工程期間中における溶存酸素量は、常時1ppm以上であることを確認している。
Figure 0006602934
以上のとおり、作用工程開始時に所定量の5%以上に相当する量の炭酸カルシウムを添加した実施例1〜3について、実施例1では反応28時間、実施例2では反応31時間で100%酸化され、実施例3では反応31時間で95%が酸化されたのに対して、比較例1の炭酸カルシウムの作用工程開始時に所定量の1%に相当する量の炭酸カルシウムを添加し、以降逐次添加によって連続してpH調整した場合では、反応31時間で酸化率90%未満に留まり、反応効率が大きく異なる結果となった。
試験例2 炭酸塩中和剤を用いる第4の実施例
(実施例4)
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)800gに蒸留水1200gを加え、30wt%となるように溶解させた後、炭酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)63g(所定量の100%に相当する量)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)4.0ml(1200u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.56ml(84000U、140u/g基質)を加え、35℃、300rpm、空気通気2L/分(孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気)で通気攪拌を行った。また、反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤4.0ml(1200u、2u/g基質)を追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
(酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
中和剤として、炭酸マグネシウムを作用工程開始時に所定量の100%に相当する量を添加した実施例4は、反応中のpHは7.5付近を推移しながら酸化反応が進み、28時間後には100%酸化された。
なお、上記実施例4において、作用工程期間中における溶存酸素量は、常時1ppm以上であることを確認している。
試験例3 炭酸水素塩中和剤を用いる実施例、及び比較例
(実施例5、及び比較例2)
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)534gに蒸留水1466gを加え、20wt%となるように溶解させた後、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)50g(所定量の100%に相当する量)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)2.67ml(800u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.04ml(56000U、140u/g基質)を加え、35℃、300rpm、空気通気2L/分(孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気)で通気攪拌を行った。反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤2.67ml(800u、2u/g基質)を追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
また、比較例2として、原料糖質や酵素量、反応温度や空気通気条件は、実施例5と同様の条件で酸化反応を行い、酸化反応により低下するpHを9.5となるように、25%wt水酸化ナトリウムを、作用工程開始時から作用工程期間中にわたって、逐次添加しながら、酸化反応を行った。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
中和剤に炭酸水素ナトリウムを、作用工程開始時に所定量の100%に相当する量を添加した実施例5は、反応中のpHは9.8付近を推移しながら酸化反応が進み、28時間後には100%酸化された。
一方、pKbが1未満の塩基性化合物である水酸化ナトリウムで逐次添加した比較例2では、実施例5よりも反応開始時、及び反応期間中のいずれでもpHが低いにも関わらず、28時間で酸化率60%未満に留まり、酸化率、すなわち工業生産における収率において、著しく低い数値となった。
すなわち、塩基性化合物であっても、作用工程の開始時に加える塩基性化合物として、pKbが1未満である塩基性化合物は、工業生産には適さないことが分かる。
なお、上記実施例5において、作用工程期間中における溶存酸素量は、常時1ppm以上であることを確認している。
試験例4 炭酸塩中和剤と塩基性化合物中和剤の併用(I)
(実施例6)
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)800gに蒸留水1200gを加え、30wt%となるように溶解させた後、所定量の50%に相当する量の炭酸カルシウム39g(和光純薬工業株式会社製)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)4.0ml(1200u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.56ml(84000U、140u/g基質)を加え、35℃、300rpm、空気通気1L/分で通気攪拌(孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気)を行った。反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤4.0ml(1200u、2u/g基質)を追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
また、反応8時間後よりpH7.0となるように25%水酸化カルシウム溶液を、所定量の残量50%に相当する量を、逐次添加しながら、酸化反応を行った。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
作用工程開始時に、所定量の50%相当の量の炭酸カルシウムを添加した後、反応8時間以降より水酸化カルシウムの逐次添加へ切り替えても、反応は効率良く進み、28時間後には、95%以上が酸化された。
なお、上記実施例6において、作用工程期間中における溶存酸素量は、常時1ppm以上であることを確認している。
試験例5 炭酸水素塩中和剤と塩基性化合物中和剤の併用(II)
(実施例7)
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)800gに蒸留水1200gを加え、30wt%となるように溶解させた後、所定量の50%相当の量の炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)37g、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)4.0ml(1200u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.56ml(84000U、140u/g基質)を加え、35℃、300rpm、空気通気1L/分で通気攪拌(孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気)を行った。反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤4.0ml(1200u、2u/g基質)を追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
また、反応8時間後より、pH7.0となるように25%水酸化ナトリウム溶液を、残量50%に相当する量を、逐次添加しながら、酸化反応を行った。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
作用工程開始時に、所定量の50%に相当する量の炭酸水素ナトリウムを添加した後、反応8時間以降より水酸化ナトリウムの逐次添加へ切り替えても、反応は効率良く進み、32時間後には、95%以上が酸化された。
なお、上記実施例7において、作用工程期間中における溶存酸素量は、常時1ppm以上であることを確認している。
試験例6 撹拌及び通気方法の違いによる溶存酸素量と収率の比較
(実施例8、実施例9、比較例3)
ジャーファメンター(容量4L、エイブル株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.75%、サンエイ糖化株式会社製)800gに蒸留水1200gを加え、30wt%となるように溶解させた後、炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)78g(所定量の100%に相当する量)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性300u/ml)4.0ml(1200u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤E(カタラーゼ活性53800u/ml、糖化活性2.2u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004)1.56ml(84000U、140u/g基質)を加え、35℃で孔径10μmの焼結フィルターを装着した配管より連続的に通気と攪拌機による攪拌することで酸化反応を行った。また、反応開始から4時間後に、糖質酸化酵素剤4.0ml(1200u、2u/g基質)を追加添加した。通気攪拌条件を変えることで溶存酸素による影響を評価した。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.00004(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.013u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
試験の結果、実施例8と9のように、反応10時間までの段階で溶存酸素量が1ppm以上であると反応26時間後には95%以上酸化されているのに対して、比較例3では、溶存酸素量が1ppm以下で推移したことにより、反応28時間後の段階で酸化率が43%程度に留まった。
試験例7 大容量反応槽を用い、反応液総量50kg以上における応用例
(実施例10)
横型2.2kWのプロペラ翼式撹拌機(株式会社竹内製作所製)を装着したジャケット付きSUS型反応槽(容量10000L、八洲化工機株式会社製)に対し、マルトース70.3wt%に加えて、グルコース1.2wt%、マルトトリオース15.0wt%及びマルトテトラオース(重合度4)以上のマルトオリゴ糖13.5wt%を含むハイマルトース水飴(Bx.70%、サンエイ糖化株式会社製)3.3tに水道水4.4tを加え、30wt%となるように溶解させた後、炭酸カルシウム(三共精粉株式会社製)300kg(所定量の100%に相当する量)、Acremonium chrysogenum由来糖質酸化酵素製剤(糖質酸化活性315u/ml)14.6L(4599945u、2u/g基質)と、Aspergillus属由来のカタラーゼ製剤F(カタラーゼ活性68250u/ml、糖化活性23.6u/ml、糖化活性/カタラーゼ活性比=0.000035)3.385L(231000000U、100u/g基質)を加え、35℃、200rpm、空気通気800L/分(微細気泡発生装置より連続的に通気)で通気攪拌をおこなった。反応開始から12時間後と24時間後に、糖質酸化酵素剤3.651L(1150065u、0.5u/g基質)とカタラーゼ製剤0.677L(46200000u、20u/g基質)をそれぞれ追加添加し、酸化反応を行った。
なお、この時の糖化活性/カタラーゼ活性比=0.000346(すなわち0.005以下)であり、且つ糖化活性が原料基質の還元糖あたり0.11u/g(すなわち0.9u/g以下)であった。
酸化反応の推移は、反応液の還元糖量をネルソン・ソモギ法で定量し、次式により変換率を算出した。
(反応開始前還元糖量−反応液還元糖量)/反応開始前還元糖量×100=酸化率(%)
Figure 0006602934
実施例10について、表7に酸化反応開始時から42時間までの経過時における酸化率と溶存酸素を示す。表7に示すとおり、8ton程度の反応液総量においても、中和剤として炭酸カルシウムを予め添加し、溶存酸素が1ppm以上となるように通気することで中和反応が効果的に行われ、反応42時間後には98.6%まで酸化が進んだ。工業生産レベルの反応系でも、本発明の効果を確認することができた。

Claims (7)

  1. 還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
    糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、前記澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
    前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
    塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加し、
    前記所定量は、原料となる糖質中の還元糖の中和に必要な前記塩基性化合物の総モル数を100%とする量であり、
    前記塩基性化合物の所定量添加は、
    前記作用工程開始時に、炭酸塩、または炭酸水素塩である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上100%未満の相当質量で添加し、
    前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、前記第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加するものであり、
    前記作用工程期間のうち、酸化率が0%から50%である期間、溶存酸素量が、1ppm以上7.25ppm以下となるよう、前記作用工程中に酸素を供給する糖カルボン酸の製造方法。
  2. 還元末端にグルコース残基を有する重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の製造方法であって、
    糖質酸化時に過酸化水素を副生する糖質酸化酵素剤を、カタラーゼ製剤の存在下、前記澱粉分解物或いは転移反応物を含む原料基質に作用させる工程を含み、
    前記作用工程の反応液総量が、1L以上であり、
    塩基性化合物を、前記作用工程中に所定量添加し、
    前記所定量は、原料となる糖質中の還元糖の中和に必要な前記塩基性化合物の総モル数を100%とする量であり、
    前記塩基性化合物の所定量添加は、
    前記作用工程開始時に、pKbが1.3超8以下である第一の塩基性化合物を、前記所定量の5%以上100%未満の相当質量で添加し、
    前記作用工程における前記作用工程開始時以外の時に、前記第一の塩基性化合物と同一または異なる第二の塩基性化合物を、前記作用工程開始時添加分を除いた残量相当質量で添加するものであり、
    前記作用工程期間のうち、酸化率が0%から50%である期間、溶存酸素量が、1ppm以上7.25ppm以下となるよう、前記作用工程中に酸素を供給する糖カルボン酸の製造方法。
  3. 前記炭酸塩は、水に対する溶解度が、0超0.01mol/L以下である請求項に記載の糖カルボン酸の製造方法。
  4. 前記炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、または卵殻カルシウムである請求項記載の糖カルボン酸の製造方法。
  5. 前記pKbが1.3超8以下である化合物は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸水素アンモニウムである請求項に記載の糖カルボン酸の製造方法。
  6. 前記作用工程の反応液総量が、50kg以上である請求項1からのいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
  7. 前記糖カルボン酸は、マルトビオン酸である請求項1からのいずれかに記載の糖カルボン酸の製造方法。
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