JP6602685B2 - 蒸気タービン排気室冷却装置、蒸気タービン - Google Patents

蒸気タービン排気室冷却装置、蒸気タービン Download PDF

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Description

実施形態は、蒸気タービン排気室冷却装置、および、蒸気タービンに関する。
蒸気タービンにおいては、定格負荷よりも負荷が極めて低い極低負荷での運転、または、無負荷での運転が行われる。極低負荷または無負荷で蒸気タービンの運転が行われる際には、低圧タービンなどの蒸気タービンにおいて最終段のタービン段落を構成する翼の温度が、風損によって上昇する。
図8は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、最終段の動翼を流れた蒸気の温度Tと径方向における位置Hとの関係(温度分布)、および、最終段の動翼を流れる蒸気の流量FRと径方向における位置Hとの関係(流量分布)を示す図である。
図8において、横軸は、温度Tまたは流量FRを示している。縦軸は、径方向における位置H(翼高さ方向位置)を示している。縦軸において、下側に示す位置H1は、径方向の内側であって、動翼のルート側の位置に相当する。そして、縦軸において、上側に示す位置H2は、径方向の外側であって、動翼の先端側の位置に相当する。図8では、5%程度の極低負荷時の結果を示している。この負荷は、連続的な運転が許容される負荷のうち最も低い負荷(連続許容運転最低負荷)未満の負荷である。
図8に示す極低負荷運転または無負荷運転の際、最終段の動翼では、先端側(図8では上側)のみにプラスの流量FR(入口から出口に向かう流れ)が存在し、ルート側(図8では下側)の広い領域では、マイナスの流量FR(出口から入口に向かう逆流)が存在する。これに伴い、最終段の動翼周辺と排気室では、通常運転に比べて、温度上昇が生じることが知られている。特に、先端側を流れた蒸気の温度Tは、動翼の回転による遠心力により、ルート側よりも高くなる。つまり、最終段の動翼は、先端側において高温の蒸気が偏って流れる。その結果、最終段の動翼では、先端部の温度が著しく高くなる。
この対策のため、蒸気タービンには、蒸気タービン排気室冷却装置が設置されている。蒸気タービン排気室冷却装置は、ケーシングの内部に設けられたタービン排気室にスプレー水を噴霧して、冷却を行う。これにより、排気室および動翼の温度を下げて、動翼を保護する。
図9、図10、図11は、関連技術に係る蒸気タービンの要部を示す図である。
図9、図10、図11においては、ケーシング2の内部において、最終段のタービン段落を流れた蒸気が排気されるタービン排気室K2、および、蒸気タービン排気室冷却装置5が設けられた部分に関して示している。図9および図10では、蒸気タービン1において上半側の部分を示し、下半側の部分については図示を省略している。これに対して、図11では、上半側の部分および下半側の部分の両者について図示している。
具体的には、図9は、図11のうちZ1−Z2部分に相当する面の断面であって、回転軸AXに沿った水平方向(y方向)と鉛直方向(z方向)とによって規定される鉛直面(y−z面)について示している。図10は、図11のうちZ1a−Z2a部分に相当する面の断面であって、回転軸AXに沿った水平方向(y方向)と回転軸AXの径方向に沿った方向(rd方向)とによって規定される面について示している。図11は、図9および図10のうちY1−Y2部分に相当する面の断面であって、回転軸AXに沿った水平方向(y方向)に直交する他の水平方向(x方向)と、鉛直方向(z方向)とによって規定される鉛直面(x−z面)について示している。
なお、図10では、蒸気タービン排気室冷却装置5が供給するスプレー水S5について太い実線の矢印を用いて示している。また、図11では、タービンロータ3の回転方向Rについて、破線の矢印を用いて示している。
図9,図10に示すように、蒸気タービン1は、ケーシング2とタービンロータ3と蒸気タービン排気室冷却装置5とを有する。図示省略しているが、蒸気タービン1は、多段式の軸流タービンであって、複数のタービン段落がタービンロータ3の回転軸AXに沿って並んでいる。つまり、蒸気タービン1は、ケーシング2の内部において動翼翼列と静翼翼列とのそれぞれが回転軸AXに沿って交互に複数段配置されている。
蒸気タービン1においては、蒸気が作動流体としてケーシング2の入口(図示省略)から内部に流入する。蒸気タービン1は、たとえば、低圧タービンであって、高圧タービンと中圧タービンとを順次流れた蒸気が作動流体として流入する。そして、その流入した作動流体は、ケーシング2の内部において、回転軸AXに沿って並ぶ複数のタービン段落を順次流れる。作動流体は、初段のタービン段落から最終段のタービン段落のそれぞれにおいて膨張し、仕事を行う。これにより、ケーシング2の内部においてタービンロータ3が回転軸AXを中心にして回転する。そして、作動流体は、最終段のタービン段落を流出した後に、タービン排気室K2を介して、ケーシング2の出口(図示省略)から外部へ排出される。ケーシング2から排出された作動流体は、たとえば、蒸気タービン1の下方に設けられた復水器(図示省略)に流れる。
蒸気タービン1を構成する各部に関して、順次、説明する。
蒸気タービン1のうち、ケーシング2は、たとえば、二重構造であって、図9,図10に示すように、内部ケーシング21と外部ケーシング22とを有する。ケーシング2において、外部ケーシング22は、内部ケーシング21を内部に収容している。
上記の他に、ケーシング2においては、図9,図10,図11に示すように、外周フローガイド23と内周フローガイド24と仕切板25とが設置されている。
外周フローガイド23および内周フローガイド24は、図9,図10,図11に示すように、円錐状の管状体であって、管軸が回転軸AXに一致するように、タービン排気室K2の内部に設置されている。ここでは、外周フローガイド23は、内部ケーシング21に固定されている。内周フローガイド24は、外周フローガイド23の内部に配置されており、外部ケーシング22に固定されている。外周フローガイド23と内周フローガイド24との両者は、ディフューザを構成しており、回転軸AXの径方向において作動流体をスムースに膨張させる。
仕切板25は、図9,図11に示すように、板状体であって、外部ケーシング22の内部に設置されている。ここでは、仕切板25は、外部ケーシング22の上半側において、タービン排気室K2の内部に設けられている。仕切板25は、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直方向(z方向)に面が沿うように設置されている。
蒸気タービン1のうち、タービンロータ3は、図9,図10,図11に示すように、動翼31が設けられている。図示を省略しているが、動翼31は、タービンロータ3の回転方向Rに沿って、複数が間を隔てて配置されている。
蒸気タービン1のうち、蒸気タービン排気室冷却装置5は、図10に示すように、ケーシング2の内部に設置されている。ここでは、蒸気タービン排気室冷却装置5は、外周フローガイド23の外周面(図10では上面)に設置されている。蒸気タービン排気室冷却装置5は、タービン排気室K2にスプレー水S5(水滴)を供給することによって冷却を行う。蒸気タービン排気室冷却装置5は、たとえば、タービン負荷が最大負荷(100%)に対して20%未満である運転を行う際に、スプレー水S5(水滴)の供給を行う。
蒸気タービン排気室冷却装置5は、図10,図11に示すように、スプレーノズル51と接続パイプ52とを有する。
図10に示すように、スプレーノズル51は、接続パイプ52の先端に設置されている。スプレーノズル51は、噴射口から外周フローガイド23の内側へ向かってスプレー水S5を噴霧する。スプレーノズル51は、タービンロータ3の回転軸AXに直交する面に対して噴射口の中心線J5を傾斜させることにより、スプレー水S5が動翼31に衝突することを防止している。なお、接続パイプ52は、スプレーノズル51の噴射口と同軸である。
図11に示すように、スプレーノズル51は複数であって、その複数のスプレーノズル51は、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直方向(z方向)を対称軸として噴射口が対称に配置されている。たとえば、4つのスプレーノズル51がタービンロータ3の回転方向Rにおいて並ぶように配置されている。4つのスプレーノズル51は、鉛直方向(z方向)に沿った子午面を軸にして対称であって、上半側に2つのスプレーノズル51(51A,51B)が設置され、下半側に2つのスプレーノズル51が設置されている。スプレーノズル51は、スプレー水が円錐状に放射されるように、スプレー水を噴射する。
具体的には、上半側においては、第1スプレーノズル51Aと第2スプレーノズル51Bとの両者が、仕切板25を介して隣り合うように設置されている。
第1スプレーノズル51Aは、タービンロータ3よりも上方に位置している。そして、第1スプレーノズル51Aは、タービンロータ3の回転方向Rにおいてタービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面よりも前方に噴射口が位置するように設置されている。つまり、第1スプレーノズル51Aの噴射口は、タービンロータ3の回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に配置されている。
第2スプレーノズル51Bは、第1スプレーノズル51Aと同様に、タービンロータ3よりも上方に位置している。第2スプレーノズル51Bは、第1スプレーノズル51Aと異なり、タービンロータ3の回転方向Rにおいて、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面よりも後方に噴射口が位置するように、設置されている。つまり、第2スプレーノズル51Bの噴射口は、タービンロータ3の回転方向Rにおいて仕切板25よりも後方に配置されている。
タービンロータ3の回転方向Rにおいて、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面から第1スプレーノズル51Aの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ1と、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面から第2スプレーノズル51Bの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ2との両者は、互いに同じである。第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1と第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2とのそれぞれは、たとえば、45°である(θ1=θ2=45°)。つまり、第1スプレーノズル51Aの噴射口と仕切板25との間の距離、および、第2スプレーノズル51Bの噴射口と仕切板25との間の距離は、互いに同じである。
第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、噴射口の中心線J5がタービンロータ3の径方向に沿うように、設置されている。
図示を省略しているが、複数のスプレーノズル51のそれぞれは、水供給系統(図示省略)から接続パイプ52を介して供給された冷却水をスプレー水S5として噴霧する。
スプレーノズル51は、スプレー水S5が円錐状に放射されるように噴霧を行う。スプレー水S5の広がり角度β(スプレー角度)は、スプレーノズル51が微粒化ノズルであるときには、70°以下であって、たとえば、60°(中心線J5に対して30°ずつ)の広がり角度βでスプレー水S5が放射される。
ところで、極低負荷または無負荷で蒸気タービンを運転した際には、最終段のタービン段落を構成する動翼において逆流域が発生することが知られている。これと共に、最終段の動翼の出口においては、スワール角度が大きくなり、タービンロータ3の回転方向Rに高速な旋回流が生ずる。
図12A,図12Bは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、逆流域を説明するための図である。
図12Aでは、最終段のタービン段落を構成する静翼310と動翼31とを模式的に示す。動翼31のチップ部に高温高圧の蒸気が動翼の遠心力により移動する結果、チップ部が高圧になり、ルート部が低圧になるので、チップ部から排気室に抜けた蒸気がルート部に圧力差により戻るために、動翼31のルート部で逆流CFが生ずる様子を図12Aに示している。これに対して、図12Bは、タービン負荷と、最終段の動翼において逆流域が発生する位置との関係を示す図である。図12Bにおいて、横軸は、タービン負荷L(%)を示しており、縦軸は、径方向の位置H(図12A参照)を示している。具体的には、縦軸においては、下側が動翼のルート側であって、上側が動翼の先端側である。図12Bでは、ハッチングを付した部分が、逆流CFが発生する領域(図12A中の領域Hrに相当)を示している。
図12A,図12Bから判るように、タービン負荷Lの低下に伴って、最終段の動翼31においては、蒸気がルート側よりも先端側に偏って流れるために、逆流域が生ずる領域が広がる(図8参照)。
図13A,図13Bは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、翼出口に生じる旋回流(スワール)を説明するための図である。
図13Aは、スワール角度SKを説明するための図であって、動翼31について回転方向Rで切断した断面を示している。図13Aにおいて、横方向は、回転軸AX(図11参照)に沿った水平方向(y方向)であり、縦方向は、回転方向Rである。図13Aでは、作動流体である蒸気が左側から右側へ流れる場合について示している。また、図13Bは、タービン負荷とスワール角度との関係を示す図であって、横軸は、タービン負荷L(%)を示しており、縦軸は、スワール角度SK(°)を示している。
図13A,図13Bから判るように、スワール(旋回流)は、タービン負荷L(%)が低くなるに伴って、回転軸AXに沿った方向から回転方向Rに沿った方向に近づく。このため、タービン負荷L(%)が低いときには、最終段落の翼出口では、タービンロータ3の回転方向Rに高速な旋回流が生ずる。
図13Bに示すように、タービン負荷Lが、たとえば、0〜17%の範囲Ls(スプレー水投入負荷)である場合に、スプレー水S5(水滴)の供給が行われる。
蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の一部は、上述した逆流域の発生によって、タービン排気室K2において逆流する。このため、その逆流したスプレー水S5の一部が、最終段の動翼(特にルート部)に衝突し、エロージョンが発生する。この対策のため、スプレー水S5を微粒子化すること等が提案されている。
たとえば、スプレーノズル51の噴射口の径を小さくすることによって、スプレー水S5の微粒子化を行う。スプレー水S5の水滴径が小さい場合には、スプレー水S5の比表面積(=表面積/体積)が水滴径に反比例して大きくなるので、冷却効率(熱交換効率)を向上させることができる。
図14は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、スプレーノズル51に供給する水の圧力(供給水圧)とスプレーノズル51の出口部分の圧力(出口圧力)との間の差である圧力差P(kg/cm)と、スプレーノズル51から噴射されたスプレー水S5の水滴径Rd(μm)との関係を示す図である。
図14では、水滴径Rd(μm)は、数学的平均水滴径である。また、図14において、線L1は、噴射口の径が大きい場合であり、線L2は、線L1の場合よりも噴射口の径が小さい場合を示している。
図14に示すように、噴射口の径が小さい場合(線L2)には、噴射口の径が大きい場合(線L1)よりも、水滴径Rdを小さくすることができる。具体的には、噴射口の径が大きい場合(線L1)には、上記の圧力差P(kg/cm)が、2.5〜4.5kg/cmであるときに、水滴径Rd(μm)は、350μm以上になる。これに対して、噴射口の径が小さい場合(線L2)には、上記の圧力差P(kg/cm)が、4.5〜9.0kg/cmであるときに、水滴径Rd(μm)は、200μm以下になる。なお、水滴の初速度は、噴射口の径が大きい場合(線L1)には、10m/s程度であるが、噴射口の径が小さい場合(線L2)には、20m/s程度になる。
図15は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、径方向における動翼の位置Hとスプレー水S5の水滴径Rdとの関係、および、径方向における動翼の位置Hと熱交換率ηとの関係を示す図である。縦軸において、下側は、動翼のルート側であって、上側は、動翼の先端側である(図12Aと同様)。ここでは、スプレーノズル51から噴射されたスプレー水S5の水滴は、径方向の初速度を保持したまま、ノズル51の出口から移動すると考えている。また、熱交換率ηについては、水滴の体積変化で表している。
図15から判るように、翼先端部では蒸気温度が高いので熱交換量が大きく、水滴径の減少が速い(水滴径が減少する割合が大きい)。これに対して、翼ルート部に近づくに伴って蒸気温度が低くなるので、熱交換量が減少し、水滴径の減少は遅くなる(水滴径が減少する割合が小さい)。
具体的には、スプレーノズル51から噴出された水滴は、水滴径が、たとえば、190μmである。しかし、翼高さの中央では、水滴径は150μmに減少する。そして、翼ルート部に到達する時点では、水滴径は40μmまで小さくなる。50μm以下の小さい径になった水滴は、翼に衝突しても、ほとんどエロージョンをもたらさない。
また、熱交換率は、翼高さ中央では50%程度である。しかし、翼ルート部から10%高さで、熱交換率が95%になり、翼ルートに到達する時点では、熱交換率がほぼ100%になる。このことから、スプレーノズル51から噴出した水滴が内周フローガイドに24到達すれば、十分な熱交換がなされていると共にエロージョンがほぼ生じないということは明らかである。
従来は、極低負荷運転または無負荷運転を長時間続けることが無かった。このため、翼に生じるエロージョンよりも、確実に排気室の温度を低下させることを重視して、スプレー水量を設定してきた。すなわち、スプレー水による蒸気の冷却効率を低く見込んで、スプレー水量を冷却に必要な水量よりも多く設定してきた。その結果、スプレー水量の多くの部分は、蒸気の温度冷却に有効に使用されず、翼のエロージョンを促進する。この設定法で極低負荷運転または無負荷運転を長時間続ける場合は、翼に著しいエロージョンを生じる。具体的には、上記した逆流現象(すなわち、出口から入口へ向かう逆流)によって、スプレー水の一部が最終段落の翼のルート部出口に衝突してエロージョンが生ずる。また、スプレー水の一部は、翼先端入口部にも衝突して、当該部にエロージョンが生じる。そして、当該運転を長時間続けて、大量のスプレー水が翼に衝突すると、翼のエロージョンが著しく進行するため、翼の寿命が短縮される。したがって、極低負荷運転または無負荷運転を長時間続けるためには、冷却効率を高めて冷却水量を減らす必要がある。
実開昭63−132804号公報 特開平6−137111号公報 特開平6−193408号公報 特開平5−202702号公報
図16は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。
図16では、図11と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)について示している。ただし、図16では、スプレーノズル51として、第1スプレーノズル51A,第2スプレーノズル51B,第3スプレーノズル51Cについて図示している。また、図16では、スプレー水S5の流れについて、実線の矢印を用いて示している。ここでは、スプレーノズル51から円錐状に拡散するスプレー水S5のうち、スプレーノズル51の中心線J5に沿って噴射された水滴S5aの他に、中心線J5に沿った方向よりも回転方向Rの前方側に噴射された水滴S5b、および、後方側に噴射された水滴S5cに関して示している。第1スプレーノズル51Aに関しては、水滴S5aと水滴S5bとの間に噴射された水滴S5d(太い一点鎖線)を併記している。
図16に示すように、スプレー水S5は、最終段のタービン段落の出口で生ずる高速な旋回流によって、回転方向Rの前方側(図16では左側)に偏向して流れる。たとえば、スプレー水S5のうち、スプレーノズル51の中心線J5に沿って噴射された水滴S5aは、中心線J5よりも回転方向Rの前方側に流れる。
第2スプレーノズル51Bから噴出された水滴のうち、水滴S5bは、仕切り板25に衝突する。仕切り板25において衝突する位置は、翼高さ方向(径方向)の中央付近である。図15に示したように、たとえば、噴出時点での水滴径が190μmであるときには、衝突時点の水滴径は、150μmであり、水滴と蒸気との間の熱交換率は、50%になる。すなわち、水滴S5bは、50%が熱交換に寄与せずに、仕切り板25に捕獲されて、復水器(図示省略)へ排出される。これから判るように、第2スプレーノズル51Bから噴出される水滴のうち、水滴S5aと水滴S5bの間を移動する水滴(図示省略)は、内周フローガイド24に到達せず、熱交換効率が低い。
第1スプレーノズル51Aから噴出された水滴S5bは、内周フローガイド24に到達しない。しかし、第2スプレーノズル51Bの場合と異なり、第1スプレーノズル51Aから噴出された水滴S5bの進路には、仕切り板25がない。このため、第1スプレーノズル51Aから噴出された水滴S5bは、ほぼ直進状態で移動した後に、外周フローガイド23に衝突し、復水器(図示省略)に排除されるので、熱交換効率が低い。第1スプレーノズル51Aから噴出された水滴のうち、水滴S5aと水滴S5bの間にある水滴(たとえば、水滴S5d)は、第1スプレーノズル51Aに隣接する第3スプレーノズル51Cから噴出された水滴S5cに衝突して合体する(図中のD部)。これにより、第3スプレーノズル51Cから噴出された水滴S5cは、水滴径が大きくなるため、熱交換効率が減少する。すなわち、熱交換効率を高めるには、スプレーノズル51から噴射された水滴が、隣接する他のスプレーノズル51から噴射された水滴や、仕切り板25に衝突することなく、内周フローガイド24に到達することが必要である。
図16において破線で囲った領域Rfa,Rfbには、スプレー水S5が存在しないが、領域Rfbは、第2スプレーノズル51Bから噴出されたスプレー水S5により冷却された蒸気の旋回流によって、冷却される。一方で、領域Rfaは、上記の旋回流の多くが、仕切り板25で堰き止められるため、冷却されない。このように、スプレー水S5が存在しない部分を最小限に抑えることで、熱交換効率の向上を実現可能である。
冷却効率(熱交換効率)が低いと、スプレー水S5の供給量を増加させることが必要になり、エロージョンの発生を十分に抑制することが困難になる。そして、極低負荷運転または無負荷運転を、長時間、行うことが困難になる。
スプレーノズルの噴射方向が、タービンロータの回転方向の逆であって、ロータの径方向に直交する接線方向に沿うように、スプレーノズルを設置する技術が提案されている(たとえば、特許文献1)。しかし、本技術では、上記課題を十分に解決することが容易でない。
本発明が解決しようとする課題は、冷却効率(熱交換効率)の向上が可能であって、スプレー水の供給量の低下と、それに伴うエロージョンの発生抑制を可能にし、また、翼に衝突する水滴の径を小さく抑えることによりエロージョンの発生抑制を可能にする、蒸気タービン排気室冷却装置、および、蒸気タービンを提供することである。
実施形態の蒸気タービン排気室冷却装置は、タービンロータを収容しているケーシングの内部においてタービン段落から蒸気が排気されるタービン排気室にスプレー水を供給する。蒸気タービン排気室冷却装置は、複数のスプレーノズルを有し、複数のスプレーノズルはタービンロータの回転方向に対して逆の方向にスプレー水を噴射口からタービン排気室に噴射するように、噴射口の中心線がタービンロータの径方向に対して傾斜している。タービンロータの径方向に対して噴射口の中心線が回転方向の前方側へ傾斜する傾斜角度αは、下記式(A)に示す関係にある。複数のスプレーノズルは、タービンロータよりも上方に位置すると共に、タービンロータの回転軸を通る鉛直面に沿って設置された仕切板よりもタービンロータの回転方向において前方に設置された第1スプレーノズルと、タービンロータよりも上方に位置すると共に、タービンロータの回転方向において仕切板よりも後方に設置された第2スプレーノズルとを含み、タービンロータの回転方向において、タービンロータの回転軸を通る鉛直面から第1スプレーノズルの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ1、および、タービンロータの回転軸を通る鉛直面から第2スプレーノズルの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ2は、下記式(B)に示す関係にある。
25°≦α≦45° ・・・(A)
θ1<θ2 ・・・(B)
図1は、第1実施形態に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図2は、第1実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。 図3は、第1実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。 図4は、第1実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。 図5は、第2実施形態に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図6は、第2実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。 図7は、第2実施形態の変形例に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図8は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、最終段の動翼を流れた蒸気の温度Tと径方向における位置Hとの関係(温度分布)、および、最終段の動翼を流れる蒸気の流量FRと径方向における位置Hとの関係(流量分布)を示す図である。 図9は、関連技術に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図10は、関連技術に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図11は、関連技術に係る蒸気タービンの要部を示す図である。 図12Aは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、逆流域を説明するための図である。 図12Bは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、逆流域を説明するための図である。 図13Aは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、旋回流(スワール)を説明するための図である。 図13Bは、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、旋回流(スワール)を説明するための図である。 。図14は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、スプレーノズル51に供給する水の圧力(供給水圧)とスプレーノズル51の出口部分の圧力(出口圧力)との間の差である圧力差P(供給水圧)と、スプレーノズル51から噴射されたスプレー水S5の水滴径Rdとの関係を示す図である。 図15は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、径方向における動翼の位置Hとスプレー水S5の水滴径Rdとの関係、および、径方向における動翼の位置Hと熱交換率ηとの関係を示す図である。 図16は、関連技術に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。
実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る蒸気タービンの要部を示す図である。
図1では、図11と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)の断面について示しており、タービンロータ3の回転方向Rについて、破線の矢印を用いて示している。ただし、図1では、上半側に設置された2つのスプレーノズル51(第1スプレーノズル51A,第2スプレーノズル51B)について図示している。
図示を省略しているが、本実施形態に係る蒸気タービン1は、上述した関連技術の場合(図9,図10参照)と同様に、ケーシング2とタービンロータ3と蒸気タービン排気室冷却装置5とを有する。しかし、本実施形態では、図1に示すように、蒸気タービン排気室冷却装置5を構成するスプレーノズル51(第1スプレーノズル51A,第2スプレーノズル51B)の配置が、上述した関連技術(図11参照)の場合と異なる。本実施形態は、上記の点、及び、関連する点を除き、上記の関連技術の場合と同様である。このため、本実施形態において、上述した関連技術と重複する個所については、適宜、記載を省略する。
本実施形態において、スプレーノズル51は、図1に示すように、関連技術の場合(図11参照)と同様に、接続パイプ52の先端に設置されている。ここでは、スプレーノズル51は、たとえば、水滴径が200μm以下である微小な水滴を噴霧するように構成されている。接続パイプ52は、スプレーノズル51の噴射口と同軸である。
また、スプレーノズル51は複数であって、その複数のスプレーノズル51は、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直方向(z方向)を対称軸として噴射口が対称に配置されている。具体的には、上半側では、関連技術の場合(図11参照)と同様に、第1スプレーノズル51Aと第2スプレーノズル51Bとが設置されている。第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1と、第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2は、互いに同じであって、たとえば、45°である(θ1=θ2=45°)。
しかしながら、本実施形態では、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、関連技術の場合(図11参照)と異なり、噴射口の中心線J5がタービンロータ3の径方向に沿うように設置されていない。換言すると、本実施形態では、噴射口の中心線J5を延長した延長線が回転軸AX(回転中心)に交差しない。
本実施形態では、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、回転方向Rに対して逆の方向にスプレー水S5(図1では図示省略)を噴射するように、噴射口の中心線J5がタービンロータ3の径方向に対して傾斜している。つまり、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、噴射口の中心線J5が、タービンロータ3の径方向に対して回転方向Rの前方側へ傾斜している。
具体的には、タービンロータ3の径方向に対して噴射口の中心線J5が回転方向Rの前方側へ傾斜する傾斜角度αは、関連技術の場合(図11参照)には0°であるのに対して(α=0)、本実施形態では、関連技術の場合と異なる。本実施形態では、その傾斜角度αは、第1スプレーノズル51Aと第2スプレーノズル51Bとにおいて互いに同じであって、最小値が25°であり(α=25°)、最大値が45°である(α=45°)。つまり、傾斜角度αは、下記式(A)に示す関係にある。
25°≦α≦45° ・・・(A)
なお、傾斜角度αは、第1スプレーノズル51Aと第2スプレーノズル51Bとにおいて同じであっても、異なっていてもよい。
本実施形態に係る蒸気タービン排気室冷却装置5の作用および効果について説明する。
図2,図3,図4は、第1実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。
図2から図4では、図1と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)について示している。図2から図4においては、スプレー水S5の流れについて、実線の矢印を用いて示している。図2では、蒸気タービン1の運転が停止され、作動流体である蒸気が流れていない場合に、スプレーノズル51が噴射したスプレー水S5の様子を示している。これに対して、図3および図4では、蒸気タービン1において極低負荷(たとえば、定格負荷100%に対して5%の負荷)または無負荷で運転が行われている場合に、スプレーノズル51が噴射したスプレー水S5の様子を示している。図3は、傾斜角度αが最小値の25°である場合を示しており、図4は、傾斜角度αが最大値の45°である場合を示している。なお、図2では、縦方向は、図3と異なり、鉛直方向でなく、径方向であり、スプレーノズル51の設置部分を拡大して示している。
図2に示すように、スプレーノズル51は、スプレー水S5が円錐状に拡散するように噴霧を行う。スプレーノズル51は、たとえば、60°のスプレー角度βでスプレー水S5の噴射を行う。具体的には、蒸気タービン1の運転が停止された状態では、スプレーノズル51の噴射口の中心線J5に沿って水滴S5aが噴射される。この他に、噴射口の中心線J5に沿った方向よりも回転方向Rの前方側に水滴S5bが噴射されると共に、回転方向Rの後方側に水滴S5cが噴射される。本実施形態では、噴射口の中心線J5に沿って噴射される水滴S5aは、回転軸AXの径方向に対して、回転方向Rの前方側へ傾斜した方向へ向かって進む。
図3および図4に示すように、蒸気タービン1において極低負荷または無負荷で運転が行われた状態では、スプレー水S5は、関連技術の場合(図16参照)と同様に、最終段のタービン段落の出口で生ずる高速な旋回流によって、回転方向Rの前方側(図3では左側)に偏向して流れる。たとえば、スプレー水S5のうち、スプレーノズル51の噴射口の中心線J5に沿って噴射された水滴S5aは、中心線J5よりも回転方向Rの前方側に流れる。
しかしながら、本実施形態では、関連技術の場合(図16参照)と異なり、第1スプレーノズル51Aおよび第2スプレーノズル51Bは、上述のように傾いて設けられている。このため、これらから噴射されたスプレー水S5(水滴S5a,S5b,S5c)は、すべてが内周フローガイド24に到達し、翼ルートの近傍を冷却する。
したがって、本実施形態では、十分に冷却が行われるので、冷却効率(熱交換効率)を向上させることができる。そして、これに伴って、スプレー水S5の供給量を低下させることが可能になる。つまり、冷却水量を低減可能である。これに伴い、動翼31に衝突する水滴が減るので、エロージョンの発生を効果的に抑制することができる。その結果、本実施形態では、動翼31の長寿命化が実現可能であって、極低負荷運転または無負荷運転を長時間行うことができる。なお、傾斜角度αが上記最小値(25°)よりも小さい場合には、図3の水滴S5bに示すように、ロータ回転方向前側のスプレー水S5が内周フローガイド24に到達しなくなり、熱交換量が低減するという問題が生ずる。また、傾斜角度αが上記最大値(45°)よりも大きい場合には、図4の水滴S5cに示すように、ロータ回転方向後側のスプレー水が内周フローガイド24に到達しなくなり、熱交換量が低減するという問題が生ずる。
なお、本実施形態では、上半側に2つのスプレーノズル51を設置する場合について説明したが、これに限らない。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る蒸気タービンの要部を示す図である。
図5では、図1と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)の断面について示しており、タービンロータ3の回転方向Rについて、破線の矢印を用いて示している。図5では、図1と同様に、上半側に設置された2つのスプレーノズル51(第1スプレーノズル51A,第2スプレーノズル51B)について図示している。
本実施形態では、図5に示すように、蒸気タービン排気室冷却装置5を構成するスプレーノズル51(第1スプレーノズル51A,第2スプレーノズル51B)の配置が、上述した第1実施形態の場合と異なる。本実施形態は、上記の点、及び、関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、上述した関連技術と重複する個所については、適宜、記載を省略する。
本実施形態において、スプレーノズル51は、図5に示すように、第1実施形態の場合と同様に、接続パイプ52の先端に設置されている。ここでは、スプレーノズル51は、たとえば、水滴径が200μm以下である微小な水滴を噴霧するように構成されている。接続パイプ52は、スプレーノズル51の噴射口と同軸である。
また、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、複数のスプレーノズル51が外周フローガイド23に設置されている。具体的には、上半側においては、タービンロータ3の回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に、第1スプレーノズル51Aが設置されている。これと共に、タービンロータ3の回転方向Rにおいて仕切板25よりも後方には、第2スプレーノズル51Bが設置されている。
第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、第1実施形態の場合と同様に、噴射口の中心線J5がタービンロータ3の径方向に沿うように設置されていない。本実施形態では、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、回転方向Rに対して逆の方向にスプレー水S5(図5では図示省略)を噴射するように、噴射口の中心線J5がタービンロータ3の径方向に対して傾斜している。つまり、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bのそれぞれは、噴射口の中心線J5が、タービンロータ3の径方向に対して回転方向Rの前方側へ傾斜している。図5では、傾斜角度αが最小値の25°である場合を示しているが、傾斜角度αは、上述した式(A)に示したように、最小値が25°であって、最大値が45°の範囲であればよい。
しかしながら、本実施形態では、第1スプレーノズル51A、および、第2スプレーノズル51Bは、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直方向(z方向)を対称軸として噴射口が対称に配置されていない。
具体的には、タービンロータ3の回転方向Rにおいて、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面から第1スプレーノズル51Aの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ1、および、タービンロータ3の回転軸AXを通る鉛直面から第2スプレーノズル51Bの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ2は、互いに異なっている(θ1≠θ2)。ここでは、第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1と、第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2とは、下記式(B)に示す関係にある。すなわち、第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1は、第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2よりも小さい。
θ1<θ2 ・・・(B)
換言すると、第1スプレーノズル51Aの噴射口と仕切板25との間の距離は、第2スプレーノズル51Bの噴射口と仕切板25との間の距離よりも短い。図5では、第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1が20°であって、第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2が45°である場合を示している。
本実施形態に係る蒸気タービン排気室冷却装置5の作用および効果について説明する。
図6は、第2実施形態に係る蒸気タービンにおいて、蒸気タービン排気室冷却装置5がタービン排気室K2に供給したスプレー水S5の流れを示す図である。
図6では、図5と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)について示している。図6においては、スプレー水S5の流れについて、実線の矢印を用いて示している。ここでは、スプレーノズル51から円錐状に拡散するスプレー水S5のうち、スプレーノズル51の中心線J5に沿って噴射された水滴S5aの他に、中心線J5に沿った方向よりも回転方向Rの前方側に噴射された水滴S5b、および、後方側に噴射された水滴S5cに関して示している。
図6に示すように、スプレー水S5は、第1実施形態の場合と同様に、最終段のタービン段落の出口で生ずる高速な旋回流によって、回転方向Rの前方側に偏向して流れる。たとえば、スプレー水S5のうち、スプレーノズル51の中心線J5に沿って噴射された水滴S5aは、中心線J5よりも回転方向Rの前方側に流れる。
しかしながら、本実施形態では、回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に位置する第1スプレーノズル51Aは、第1実施形態の場合よりも仕切板25に近い。第1スプレーノズル51Aから噴射されたスプレー水S5は、仕切板25に衝突せずに、第1実施形態の場合よりも多い水滴(水滴S5aから水滴S5cの範囲)が、内周フローガイド24に到達し、冷却に寄与する。
また、本実施形態では、第1スプレーノズル51Aから噴射されたスプレー水S5の作用によって、図16に示した領域Rfa(図6では図示省略)が小さくなる。つまり、仕切板25よりも回転方向Rの前方に位置し、スプレー水S5などの冷却媒体が供給されないデッドゾーンが狭くなる。
さらに、本実施形態では、スプレー水S5が仕切板25に衝突して捕獲されないため、冷却効率を向上可能である。また、本実施形態では、スプレーノズル51から噴出された水滴が、隣接する他のスプレーノズル51から噴出された水滴に衝突して粗大化しないので、冷却効率を向上可能である。
したがって、本実施形態では、十分に冷却が行われるので、冷却効率(熱交換効率)を向上させることができる。そして、これに伴って、スプレー水S5の供給量を低減可能である。そして、動翼31に衝突する水滴が減ることと、衝突する水滴の径が十分に小さくなることにより、エロージョンの発生を効果的に抑制することができる。その結果、本実施形態では、動翼31の長寿命化が実現可能であって、極低負荷運転または無負荷運転を長時間行うことができる。
なお、本実施形態では、上半側に2つのスプレーノズル51を設置する場合について説明したが、これに限らない。たとえば、回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に設置するスプレーノズルの数と、後方に設置するスプレーノズルの数とが、互いに異なっていてもよい。つまり、回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に設置するスプレーノズルの数が、後方に設置するスプレーノズルの数よりも多くてもよい。また、回転方向Rにおいて仕切板25よりも前方に設置するスプレーノズルの数が、後方に設置するスプレーノズルの数よりも少なくてもよい。
また、上記した実施形態では、第1スプレーノズル51Aの傾斜角度αと第2スプレーノズル51Bの傾斜角度αとが互いに同じである場合について説明したが、これに限らない。傾斜角度αは、第1スプレーノズル51Aと第2スプレーノズル51Bとの間において互いに異なっていてもよい。
図7は、第2実施形態の変形例に係る蒸気タービンの要部を示す図である。図7では、図6と同様に、回転軸AXに対して直交する鉛直面(x−z面)について示している。
本変形例では、第1スプレーノズル51Aの取付角度θ1が20°であって、第2スプレーノズル51Bの取付角度θ2が25°である場合を示している。また、本変形例では、第1スプレーノズル51Aの傾斜角度α1と、第2スプレーノズル51Bの傾斜角度α2との両者は、互いに異なっている。ここでは、第1スプレーノズル51Aの傾斜角度α1は、25°であり、第2スプレーノズル51Bの傾斜角度α2は、45°である。
本変形例では、上記した第2実施形態と同様に、第1スプレーノズル51Aから噴射されたスプレー水S5の作用によって、図16に示した領域Rfa(図6では図示省略)が小さくなる。つまり、仕切板25よりも回転方向Rの前方に位置し、スプレー水S5などの冷却媒体が供給されないデッドゾーンが狭くなる。
さらに、本変形例では、上記した第3実施形態と同様に、スプレー水S5が仕切板25に衝突して捕獲されないため、冷却効率を向上可能である。また、本変形例では、スプレーノズル51から噴出された水滴が、隣接する他のスプレーノズル51から噴出された水滴に衝突して粗大化しないので、冷却効率を向上可能である。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…蒸気タービン、2…ケーシング、3…タービンロータ、5…蒸気タービン排気室冷却装置、21…内部ケーシング、22…外部ケーシング、23…外周フローガイド、24…内周フローガイド、25…仕切板、30…ロータディスク、31…動翼、32…シュラウドリング、51…スプレーノズル、51A…第1スプレーノズル、51B…第2スプレーノズル、AX…回転軸、F…作動流体、J5…中心線、K2…タービン排気室、R…回転方向、S5…スプレー水、S5a…水滴、S5b…水滴、S5c…水滴

Claims (2)

  1. タービンロータを収容しているケーシングの内部においてタービン段落から蒸気が排気されるタービン排気室にスプレー水を供給する蒸気タービン排気室冷却装置であって、
    前記タービンロータの回転方向に対して逆の方向に前記スプレー水を噴射口から前記タービン排気室に噴射するように、前記噴射口の中心線が前記タービンロータの径方向に対して傾斜していると共に、前記タービンロータの径方向に対して前記噴射口の中心線が前記回転方向の前方側へ傾斜する傾斜角度αが、下記式(A)に示す関係にある複数のスプレーノズル
    を有し、
    前記複数のスプレーノズルは、
    前記タービンロータよりも上方に位置すると共に、前記タービンロータの回転軸を通る鉛直面に沿って設置された仕切板よりも前記タービンロータの回転方向において前方に設置された第1スプレーノズルと、
    前記タービンロータよりも上方に位置すると共に、前記タービンロータの回転方向において前記仕切板よりも後方に設置された第2スプレーノズルと
    を含み、
    前記タービンロータの回転方向において、前記タービンロータの回転軸を通る鉛直面から前記第1スプレーノズルの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ1、および、前記タービンロータの回転軸を通る鉛直面から前記第2スプレーノズルの噴射口が取付けられた位置までの間の取付角度θ2は、下記式(B)に示す関係にある、
    蒸気タービン排気室冷却装置。
    25°≦α≦45° ・・・(A)
    θ1<θ2 ・・・(B)
  2. 請求項1に記載の蒸気タービン排気室冷却装置を備える、
    蒸気タービン。
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