JP6601798B2 - 照明器具 - Google Patents

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Description

本発明は、LEDを光源とし、主として競技場に用いられる照明器具に関する。
従来、大型競技施設向けの高出力タイプの照明器具の光源には、一般的に高輝度放電灯が用いられてきた。高輝度放電灯は、アーク放電方式により発光する。このアーク方式による発光は、発光部の面積を理想的に小さくすることができるので、反射板を用いた配光制御が容易であり、狭い配光を実現することで、競技エリアを効率良く照明することができる。
近年では、大型競技施設向けの高出力タイプの照明器具の光源として、LEDが用いられている。LEDは、低電力で高輝度の発光が可能であり、しかも長寿命であることから、白熱灯や蛍光灯に代わる光源として普及が進んでいる。この種のLEDを光源とする照明器具として、矩形平板状のベースの一面にマトリクス状に配置された複数の光源ユニットを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−129859号公報
しかしながら、LEDは、高輝度放電灯と比べて、発光部の面積を小さくすることが構造的に難しい。そのため、上記特許文献1で開示されたようなLEDを光源とする照明器具では、反射板を用いた配光制御が容易でなく、配光を狭くすることができなかった。その結果、LEDを光源とする照明器具を大型競技施設で用いた場合、配光を理想的に絞りきれず、高輝度放電灯である場合に比べて、競技者が照明器具の眩しさを感じることがあった。例えば、視対象が光源の近くを通るときに、競技者が視対象物を見失ってしまうという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するものであって、LEDを光源とし、主として競技場に用いられたときに、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保することができ、且つ競技者が眩しさを感じ難い照明器具を提供することを目的とする。
本発明は、LED光源を備え、前記LED光源からの光が出射する発光面を有する照明器具であって、出射光が最大光度となる方向を光軸とし、該光軸と成す角度を鉛直角とし、前記発光面から出射される光の全光束が50,000lm以上であるとき、全光束に対する、鉛直角5°の範囲内の光束の比率が、15〜25%の範囲内であり、全光束に対する、鉛直角10°の範囲内の光束の比率が、50〜60%の範囲内であり、全光束に対する、鉛直角15°の範囲内の光束の比率が、65〜80%の範囲内であり、鉛直角15°を超える方向から見た際の前記発光面の輝度が、800,000cd/m以下であることを特徴とする。
本発明によれば、鉛直角15°の範囲内において、鉛直角毎に光束の比率を変化させることで、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保することができる。また、照明率への寄与が相対的に小さい、鉛直角15°を超える方向から見た際の発光面の輝度を、約800,000cd/m以下に抑えることで、競技者に眩しさを感じ難くすることができる。
(a)は本発明の一実施形態に係る照明器具を発光面側から見た斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図。 (a)は上記照明器具のLED光源と光学部材の構成を示す部分切断斜視図、(b)は断面図。 照明器具の全光束に対する、所定の鉛直角内の光束の比率と、競技エリアの照明率との関係を示す図。 照明器具の鉛直角条件の全光束に対する鉛直角内の光束の比率と、競技エリア照明率との相関係数を示す。 視対象が消失しないための輝度の制限値を導出するための制限輝度実験の環境を示す図。 図5に示した制限輝度実験に基づいて導出された、視対象物を見失わないための輝度の制限値を示す図。 上記実施形態で規定した要件を満たさない比較例及び実施例の配光を、規定項目別に分類した図。 上記比較例及び実施例における鉛直角毎の発光面の輝度を示す図。
本発明の一実施形態に係る照明器具について図1乃至図8を参照して説明する。以下の実施形態において、本照明器具は、陸上競技場やサッカー場、野球場といった大型競技施設で用いられる高出力タイプの投光器であるものとして説明する。
図1(a)乃至(c)に示すように、照明器具1は、LED光源2を内蔵した器具本体3と、器具本体3を保護するガード4と、光を出射する前面パネル5と、を備える。前面パネル5は、LED光源2が出射した光を出射することで、この出射面が照明器具1の発光面2Aとなる。器具本体3は、LED光源2と、LED光源2から出射された光の配光を制御する光学部材6と、を有する。また、器具本体3は、発光面2Aとは反対側の面に設けられた放熱部(アルミダイカスト)を有し、LED光源2の発光に伴って生じた熱を外部に放熱する。
本実施形態では、照明器具1として、器具本体3が、高さ方向Hよりも幅方向Wに長く、2つの器具本体3が所定の隙間を開けて上下に配され、それらが、ガード4により保持された構成を示す。なお、照明器具1は、発光面2Aの法線方向において、出射光が最大光度となる。以下、この出射光が最大光度となる方向を光軸Lとする。また、照明器具1が、幅方向Wが水平となるように配置されたとき、光軸Lは水平方向となり、光軸Lと成す角度を鉛直角θとする。この鉛直角θは、照明器具1のビーム開き角の1/2に相当する。
また、照明器具1は、ガード4の幅方向Wにおける両端部を介してガード4を軸支するアーム41と、照明器具1の光出射方向を調節するためのハンドル42と、LED光源2に給電するための電源ユニット7と、を更に備える。アーム41は、ガード4の両端部を結ぶ線を回動軸Ax(図1(b)参照)として、ガード4が回動可能となるようにガード4を支持している。そして、ハンドル42を操作することで、回動軸Axを中心として、ガード4及び器具本体3を所定の向きに回動させることができる。電源ユニット7は、各器具本体3の隙間を塞ぐように配置され、各々のLED光源2とケーブル(不図示)を介して電気的に接続されている。電源ユニット7は、商用電源(不図示)に接続され、その商用電源からLED光源2への給電を制御する点灯回路(不図示)を内蔵している。
前面パネル5は、ポリカードネート等の透光性樹脂から形成され、光学部材6を保護し、光学部材6から出射された光を透過して出射する。図例では、各器具本体3に個別に前面パネル5が設けられた構成を示すが、両器具本体3の発光面2Aを一括して覆う構成であってもよい。
図2(a)に示すように、LED光源2は、複数のLED21と、発光面2A側に設けられ複数のLED21が実装される基板22と、を有する。複数のLED21が、所定間隔で、例えば、ハニカム状に配置され(図1(a)参照)、1つの器具本体3あたりでは、高さ方向Hよりも幅方向Wの方がLEDチップの個数が多くなるように配置されている。LED21は、例えば、青色光を出射する青色LEDチップと、この青色LEDチップを封止する封止材と、この封止材中に分散され青色光を黄色光に変換する蛍光体と、を有し、青色光と黄色光とを互いに混色させることで白色光を出射する。
光学部材6は、複数のLED21に夫々対応する位置に設けられた第1部材6Aと、各第1部材6Aを連結する第2部材6Bと、を有する。光学部材6は、LED21から出射された白色光を透過させる透光性材料、例えば、透明アクリル樹脂、又は透明ガラス等により構成される。
第1部材6Aは、基本的にはハイブリッドレンズが用いられ、基板22の法線(光軸L)を軸とした大底面61と小底面62とを有する回転体の外郭面63を成して、小底面62に設けられた凹面64がLED21から出射される光の入射面となり、この光を屈折させて所定方向へ放射させる。第1部材6Aは、基板22に対して、近接又はその上部に搭載されるように設置され、基板22上に固定されている複数のLED21の各々を凹面64が覆うように設置される。
大底面61の形状は、図2(b)では平面を示しているが、凸面等であってもよく、後述する配光を実現するために決定される。また、大底面61には、照射面における照射ムラを回避するため、拡散処理(例えば、サンドブラスト処理等)が施されていてもよい。小底面62のうち、凹面64は、LED21に対面する入射前面65と、基板22に対して立設された入射円錐面66と、を有する。入射前面65は、LED21から放射された光を、直接的に大底面61へ導く。また、入射前面65の形状は、平面、又は凹面等であり、大底面61と同様に、後述する配光を実現するために決定される。入射円錐面66は、LED21から放射された光を、屈折により全反射させた後に大底面61へ導く。LED21から放射され、入射前面65又は入射円錐面66から第1部材6A内に入射して大底面61へ導かれる光を図2(b)の実線矢印L1及び点線矢印L2に示している。
第2部材6Bは、複数の第1部材6Aの各々を架橋して連結させるものであり、基板22上に所定間隔で配列された複数のLED21の配置に合わせて、それらの上方に、第1部材6Aが近接又は搭載させられるように、その位置を決定し、支持する。第2部材6Bは、第1部材6Aの大底面61の外周辺の内方から、レンズ中心より外方へ延出するように形成されている。また、第2部材6Bは、凹部67を有し、凹部67の大底面61へ臨む内周面68が、円錐面形状となっている。内周面68は、LED21の中心から照射され、第2部材6Bの内周面68と大底面61との稜線69を通過する光と略平行となるよう形成されていることが好ましい。
図3は、出射光が最大光度となる方向を光軸とし、該光軸と成す角度を鉛直角θ(図1(a)参照)としたとき、全光束に対する、所定の鉛直角θ内の光束の比率を、照明器具配光から計算し、競技エリアの照明率と対比した配光試験の結果を示す。なお、照明率は、照明器具1内の全LED光源2から出射される光束のうち、被照面に達する光束の割合を言う。この配光試験は、サッカー場、及びトラックとフィールドを含む陸上競技場において、鉛直角5°,10°,15°,20°,25°における各光束の比率が計算された。
この配光試験から、競技エリアの照明率と、照明器具配光から計算される全光束に対する、鉛直角内の光束の比率には、一定の相関関係があり、照明率を高くするには、いずれの鉛直角θにおいても、鉛直角内の光束の比率を高くする必要があることが示された。なお、サッカー場は、陸上競技場に比べて、競技エリアが狭いので、照明率が低くなる傾向がある。
図4は、照明器具1の配光から計算される鉛直角条件別の全光束に対する鉛直角θ内の光束の比率と、競技エリア照明率との相関係数を示す。同図から、競技エリアの照明率と、照明器具配光から計算される全光束に対する鉛直角内の光束の比率の相関係数Rは、鉛直角15°にピークがあることが示される。すなわち、鉛直角15°(ビームの開き角30°)までの光束を高めることが、競技エリアに必要とされる照度を確保する上で、最も重要であることが分かる。従って、鉛直角15°内の光度を下げると、必要な照度を確保することが困難になる。
また、下記表1は、上記相関係数Rを鉛直角毎に列記したものである。
例えば、サッカー場では、鉛直角15°で、相関係数Rが0.97と、最大値になった。また、陸上競技場でも、鉛直角15°で、相関係数Rが0.88と、最大値になった。これらの結果から、鉛直角15°の範囲内では、競技エリアに必要とされる照度を確保するために、積極的には光度を下げず、その一方で、鉛直角15°を超える範囲では、照明率への寄与が減少するので、輝度に制限を設けることが好ましいことが示された。
また、図3に示した結果より、鉛直角15°の範囲内では、競技エリアに必要とされる照度を確保するには、発光面2Aから出射される光の全光束が50,000lm以上であるとき、全光束に対する、鉛直角5°の範囲内の光束の比率が、15〜25%の範囲内であり、全光束に対する、鉛直角10°の範囲内の光束の比率が、50〜60%の範囲内であり、全光束に対する、鉛直角15°の範囲内の光束の比率が、65〜80%の範囲内であることが好ましい。このように、鉛直角15°の範囲内においても、鉛直角毎に光束の比率を変化させることで、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保することができる。
図5は、視対象が消失しないための輝度の制限値を導出するための制限輝度実験の環境を示す。なお、照明器具の残像が生じると、視対象物が消失する輝度の制限値を設けることができない。そこで、この制限輝度実験では、残像の影響を取り除くために、2°ほど視野を外した上で最も直視の条件に近い視野角3°の位置に、光源11を設置し、視対象物12が消失しないための光源輝度の制限値を導出した。
背景輝度13は、夜間を想定して0.5cd/mとした。また、光源11の前方に、Φ50及びΦ200の穴が開いた光源制限板14を設け、光源11の発光面の大きさが異なる2条件で実験を行った。周囲環境の照度は、公式競技が開催できるレベルを想定して、500〜600lxとなるよう、照度計15により測定した。また、視対象物12は、ボールを想定して、反射率85%の球体とした。以上の条件において、被験者16が、視距離13mで、視対象物12を見た際に、ライトコントローラ17で光源11の輝度レベルを調節しながら、視対象物12を見失う瞬間の輝度を記録した。被験者14名の評価に基づき、各個々人が評価した視対象物12を見失う輝度値の平均値を、輝度の制限値とした。
図6は、上記の制限輝度実験に基づいて導出された、視対象物12を見失わないようにするための、輝度の制限値を示す。なお、同図では、上記2条件の光源11のサイズから夫々光源立体角(str)を算出し、各光源立体角の輝度の制限値をプロットすると共に、輝度の制限値をグラフ化した。同図から、光源11の輝度が高くなるほど、また、光源立体角が大きくなる(光源11のサイズが大きくなる)ほど、被験者16は視対象物12を見失い易くなることが示される。
大型競技施設を想定した場合、安全を考慮して光源との視距離が50m近く接近する状況から光源立体角を試算すると、0.000114strとなる。この立体角条件を、上記輝度の制限値のグラフに当てはめると、視対象物12が消失しないための輝度の制限値は、約800,000cd/mとなる。上記の通り、鉛直角0〜15°までの光度は、照明率への寄与が大きいことから、一定の値を確保する必要がある。その一方で、照明率への寄与が相対的に小さい、鉛直角15°を超える方向から見た際の発光面2Aの輝度を、約800,000cd/m以下に抑えることで、競技者に眩しさを感じ難くすることができる。これにより、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保しながらも、競技者が眩しさを感じ難くすることができる。
また、照明器具1では、発光面2Aから出射される光の最大光度は、6,500〜20,000cd/klmの範囲であることが好ましい。この範囲とすることで、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保しながらも、競技者が過度に眩しさを感じることを抑制することができる。
また、照明器具1では、鉛直角0°〜5°にかけての光度の落差が、0〜2,000cd/klmの範囲内であり、鉛直角5〜10°にかけての光度の落差が、3,000〜5,000cd/klmの範囲内であり、鉛直角10°〜15°にかけての光度の落差が、2,000〜4,000cd/klmの範囲内であることが望ましい。すなわち、発光面2Aの真正面である鉛直角0°の光度を下げ、鉛直角0°〜5°にかけての光度の落差を小さくすることで、競技者がグレアを感じることを抑制することができる(後述する図8も参照)。
また、照明率への寄与が大きい鉛直角0°〜5°では、照度確保に優位性を持たせるために、光度の落差を小さくして、その範囲全体での光度を高める。一方、鉛直角5〜10°、及び鉛直角5〜10°の範囲で、段階的に光度を下げることで、鉛直角15°における発光面2Aの輝度を、上記の800,000cd/m以下まで低下させる。これにより、競技エリアに必要とされる照度を効果的に確保しながらも、競技者が眩しさを感じ難くする配光バランスを得ることができる。
図7は、本実施形態で規定した要件を満たさない比較例1〜3(照明器具A〜C)の配光と、実施形態で規定した要件を満たす実施例1、2(照明器具D、E)の配光を、規定項目別に分類した表である。また、図8は、これら比較例1〜3及び実施例1、2における鉛直角θ毎の発光面2Aの輝度を示す。
図7及び図8から明らかなように、比較例の配光については、鉛直角15°における輝度が800,000cd/mを超えており、競技者が視対象物を見失うグレアを発生させ易い。一方、実施例の配光については、鉛直角15°以上の方向から見た際の輝度が、800,000cd/mを下回っており、競技者が視対象物を見失うグレアの発生を抑制することができる。
また、図8に示すように、実施例1、2では、鉛直角15°を超える範囲の輝度が、比較例1,2に比べて、低く維持されている。すなわち、照明率への寄与が少ない鉛直角15°を超える範囲の輝度を抑制することで、競技エリアの照度を効率的に高くすることができる。
なお、本発明に係る照明器具は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、光学部材6として、複数のLED21に夫々対応する単レンズである第1部材6Aが複数設けられた構成を示したが、一の光学部材6が複数のLED21に対して設けられてもよい。この場合、例えば、照明器具1の幅方向Wに沿って列状に配された一列のLED21を、一つの光学部材6が設けられてもよい。この場合、上述した凹面64と外郭面63は、列状のLED21に沿って直線的に設けられ、照明器具1の高さ方向Hの配光を制御することができる。また、大底面61の形状を適宜に制御することで、照明器具1の幅方向Wの配光も制御することができる。また、上述した配光を光学部材6により得ることを想定しているが、複数のLED21の配置や発光強度、光軸の向き等を制御することで、上述した配光を実現してもよい。また、上記実施形態の照明器具1は、大型競技施設用の投光器を想定しているが、グレア対策が必要とされる道路照明や空港照明等にも用いられ得る。
1 照明器具
2 LED光源
2A 発光面
L 光軸
θ 鉛直角

Claims (3)

  1. LED光源を備え、前記LED光源からの光が出射する発光面を有する照明器具であって、
    出射光が最大光度となる方向を光軸とし、該光軸と成す角度を鉛直角とし、前記発光面から出射される光の全光束が50,000lm以上であるとき、
    全光束に対する、鉛直角5°の範囲内の光束の比率が、15〜25%の範囲内であり、
    全光束に対する、鉛直角10°の範囲内の光束の比率が、50〜60%の範囲内であり、
    全光束に対する、鉛直角15°の範囲内の光束の比率が、65〜80%の範囲内であり、
    鉛直角15°を超える方向から見た際の前記発光面の輝度が、800,000cd/m以下であることを特徴とする照明器具。
  2. 前記最大光度が、6,500〜20,000cd/klmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
  3. 鉛直角0°〜5°にかけての光度の落差が、0〜2,000cd/klmの範囲内であり、
    鉛直角5〜10°にかけての光度の落差が、3,000〜5,000cd/klmの範囲内であり、
    鉛直角10°〜15°にかけての光度の落差が、2,000〜4,000cd/klmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明器具。
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