JP6600611B2 - 画像表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、画像表示装置に関する。
液晶表示装置に代表される表示装置は、輝度、解像度、色域等の性能が急速に進歩している。そして、これらの性能の進歩に比例して、携帯用情報端末等の屋外で使用される画像表示装置が増加している。
また、日差しの強い屋外等の環境では、眩しさを軽減するために偏光機能を備えたサングラス(以下、「偏光サングラス」と称する。)をかけた状態で画像表示装置を観察する場合がある。
ところが、通常、液晶表示装置のような画像表示装置には偏光板が備えられており、このような偏光板を含む画像表示装置の表示画面を、偏光サングラス越しに観察する際、偏光板の吸収軸と偏光サングラスの偏光の吸収軸とが一致すると、表示画面が暗くなり見えなくなる(以下、「ブラックアウト」と称する。)という問題があった。
なお、画像表示装置としては、液晶表示装置の他、有機エレクトロフミネッセンス(有機EL)表示装置もよく知られているが、有機EL表示装置も外光反射による表示画像のコントラスト(明所コントラスト)低下を防止するために、有機EL素子の視認側に偏光板(円偏光板)が配置されているため、ブラックアウトの問題が生じていた。
このようなブラックアウトの問題に対し、例えば、特許文献1には、連続的で幅広い発光スペクトルを有する光源として白色発光ダイオードと、液晶セルの視認側に偏光板が設けられ、該偏光板の視認側に3000〜3万nmのリタデーションを有する高分子フィルム(ポリエステルフィルム)とを配置し、該高分子フィルムの遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角を凡そ45度とした液晶表示装置が開示されている。このような高リタデーションの高分子フィルムを偏光板の視認側に設けることで、ブラックアウトの問題を解消し得る。また、特許文献1に記載の発明では、バックライト光源として白色発光ダイオード(白色LED)を用いた液晶表示装置において、高リタデーションの高分子フィルムを用いることで、該高分子フィルムのリタデーション値に特有の干渉色(ニジムラ)の発生も防止している。
ここで、特許文献1に記載のような連続的で幅広い発光スペクトルを有する光源を用いた画像表示装置においては、偏光板の視認側に配置する保護層として3000nm以上のリタデーションを有していれば良いのであり、その上限は存在しない。特許文献1に記載の発明において高分子フィルムのリタデーションの上限を3万としているのは、これ以上高いリタデーションとするには膜厚を大きくせざるを得ないため、取り扱いの観点から設定された上限値である。なお、図2に白色発光ダイオードの発光スペクトルを示した。
一方で、画像表示装置の光源が、CCFLのような特定波長にピークを有する不連続な発光スペクトルしか有していない光源である場合、ブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)の問題を解消するには、保護層として10万nmを超えるリタデーションを有する特殊な無機系素材を用いなければならなかった(例えば、特許文献2等参照)。なお、図3にCCFLの発光スペクトルを示した。
ここで、昨今の画像表示装置では、高い演色性(色域を広げること)が求められてきており、このような高い演色性を発揮させようとする場合、白色発光ダイオードから発光された連続的で幅広い発光スペクトルを有する光に比べ、より狭い発光スペクトル(特定波長にピークを有する発光スペクトルの光)が使用される。
このような白色発光ダイオードから発光された連続的で幅広い発光スペクトルを有する光に比べ、より狭い発光スペクトルを有する光を画像表示装置の光源として用いる場合、ブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)の発生を抑制するには、偏光板の保護層として10万nmを超える極めて高いリタデーションを有する特殊な素材を用いる必要があるが、高分子フィルムを用いてこのような高リタデーションを達成しようとすると、膜厚が厚くなり過ぎてしまい実用上問題があった。
また、スマートフォンに代表される画像表示装置は、手の中で様々な方向に動かして使用されることがあり、偏光サングラスをかけた状態で画像表示装置を観察したとき、偏光サングラスの吸収軸と、画像表示装置の偏光子吸収軸とがパラレルニコル状態となった場合と、クロスニコル状態となった場合との色味の変化、すなわち、色差が大きいことが問題となっていた。
特開2011−107198号公報 特開平10−10522号公報
本発明は、上記現状に鑑み、特殊な無機系素材を用いず、実用上問題ない厚みを有する光学フィルムを備え、高い演色性を有するとともに、狭い発光スペクトルを有する光源であっても、ブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)の発生を極めて高度に抑制させることができ、任意の位置から表示画面を観察したときであっても、色差の小さな表示画面が得られる画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序、上記光学フィルムが前記偏光子の視認側に配置された構成を有する画像表示装置であって、上記光学フィルムの遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度の範囲が30〜60°となるように、上記光学フィルムと上記偏光子とが設置されており、上記光学フィルムは、リタデーションが3000nm以上、4万nm以下のポリエステルフィルム厚みが10〜500μmであり、上記光学フィルムを通過した光は、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長透過率が20〜80%であり、上記光学フィルムに入射する光は、ITU−R BT.2020カバー率が50%以上であり、波長580nm以上780nm以下の赤色領域、波長480nm以上580nm未満の緑色領域、及び、波長380nm以上480nm未満の青色領域の各領域において、それぞれ発光スペクトルのピークを有し、上記赤色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が70nm以下であり、上記緑色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以下であり、上記青色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が40nm以下であり、上記光学フィルムは、上記偏光子側と反対側の面上に光学機能層が積層されて光学積層体を構成していることを特徴とする画像表示装置である。
なお、上記光学フィルムを通過した光の波長透過率は、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序、上記光学フィルムが前記偏光子の視認側に配置された構成を有する画像表示装置の観測者側に他の偏光子を配置し、上記偏光子の吸収軸と上記他の偏光子の吸収軸とがパラレルニコルの状態で測定して得られた値、又は、下記式(B)により求められた値である。
I=I −I ・sin (π・N(λ)・Re/λ) (B)
(式中では、光学フィルムに入射する光の強度をI 、光学フィルムの波長590nmに対する位相差をRe、入射する光の振動方向と光学フィルムの遅相軸とのなす角度をθ、光学フィルムを構成する材料の可視光領域(波長380nm以上波長780nm以下)の波長の複屈折率(Δn(λ))を、光学フィルムを構成する材料の波長590nmの複屈折率(Δn(590nm))で割った値をN(λ)、光学フィルムを透過した光の強度をIとして示す。)
本発明の画像表示装置において、上記光学フィルムに入射する光は、青色発光ダイオードと、赤色蛍光体と、緑及び/又は黄色蛍光体とを用いて作られた光であり、上記赤色蛍光体は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体であることが好ましい。
また、上記光学フィルムに入射する光は、有機エレクトロルミネッセンス素子から発光された光であることが好ましい
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とが積層された構成を有する画像表示装置において、該光学フィルムのリタデーションと偏光子に対する配置角度とを所定の範囲にするとともに、光学フィルムに入射する光と該光学フィルムを透過した光を特定のものとすることにより、特殊な無機系材料を用いず、かつ、実用上問題ない厚みを有する光学フィルムを備え、高い演色性と優れたブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)防止性とを有し、表示画面を異なる方向から見たときの色差を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序で配置された構成を有する画像表示装置である。
なお、本発明の画像表示装置は、偏光子の光学フィルム側と反対側に、λ/4位相差フィルムが配置されていてもよい。このようなλ/4位相差フィルムとしては、延伸フィルムや、塗布型の液晶材料を用いてなるフィルム等公知のものを用いることができる。
上記偏光子は、例えば、上記λ/4位相差フィルムと、面内に複屈折率を有する光学フィルムとで挟持されており、特定の振動方向を持つ光のみを透過する機能を有する偏光子であれば特に限定されず、例えば、PVA系フィルム等を延伸し、ヨウ素や二色性染料等で染色したPVA系偏光子;PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系偏光子;コレステリック液晶を用いた反射型偏光子;薄膜結晶フィルム系偏光子等が挙げられ、なかでも、PVA系偏光子が好ましく用いられる。
上記PVA系偏光子としては、例えば、PVA系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。なかでも、PVA系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。
このような偏光子の厚さとしては特に制限されず、一般的に、1〜100μm程度である。
特に有機EL表示装置などに用いる場合、フレキシブル対応のために、これまでのようなヨウ素系だけでなく、リオトロピック液晶タイプや、2色性ゲスト−ホストなどの塗布型偏光子であってもよい。
上記面内に複屈折を有する光学フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリエステル等からなるフィルムが挙げられるが、なかでも、コスト及び機械的強度において有利なポリエステル基材であることが好適である。なお、以下の説明では、面内に複屈折率を有する光学フィルムをポリエステル基材として説明する。
上記ポリエステル基材は、3000nm以上のリタデーションを有する。リタデーションが3000nm未満であると、本発明の画像表示装置の表示画像にブラックアウトや色の異なるムラ(以下、「干渉色」ともいう)が生じてしまう。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、4万nm程度であることが好ましい。4万nmを超えると、上記ポリエステル基材の膜厚が相当に厚くなり、実用上問題となることがあるため好ましくない。
上記ポリエステル基材のリタデーションは、ブラックアウトや干渉色防止性及び薄膜化の観点から、5000〜25000nmであることが好ましい。より好ましい範囲は、7000〜2万nmである。
なお、上記リタデーションとは、ポリエステル基材の面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)と、ポリエステル基材の厚み(d)とにより、以下の式によって表わされるものである。
リタデーション(Re)=(nx−ny)×d
また、上記リタデーションは、例えば、王子計測機器社製「KOBRA−WR」、「PAM−UHR100」によって測定することができる。
また、二枚の偏光板を用いて、ポリエステル基材の配向軸方向(主軸の方向)を求め、当該配向軸と配向軸方向に対して直交する軸の二つの軸の屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求める。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。光学フィルムの厚みdは、例えば、マイクロメーター(商品名:Digimatic Micrometer、ミツトヨ社製)により測定し、単位をnmに換算する。複屈折率(nx−ny)と、光学フィルムの厚みd(nm)との積より、リタデーションを計算することもできる。
なお、本発明では、上記nx−ny(以下、Δnとも表記する)は、0.05〜0.40であることが好ましい。上記Δnが0.05未満であると、充分なブラックアウトの抑制効果が得られないことがあり、また、上述したリタデーション値を得るために必要な膜厚が厚くなることがある。一方、上記Δnが0.40を超えると、ポリエステル基材として、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。
上記Δnのより好ましい下限は0.07、より好ましい上限は0.35である。なお、上記Δnが0.35を超えると、耐湿熱性試験でのポリエステル基材の耐久性が劣ることがある。耐湿熱性試験での耐久性が優れることから、上記Δnの更に好ましい上限は0.30である。
上記ポリエステル基材を構成する材料としては、上述したリタデーションを充足するものであれば特に限定されないが、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
また、ポリエステル基材に用いられるポリエステルは、これらの上記ポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。特に、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)からなることが好ましい。
PENは汎用性が高く、入手が容易であるからである。本発明においてはPENのような、汎用性が極めて高いフィルムであっても、表示品質の高い画像表示装置を作製することが可能な、光学フィルムを得ることができる。更に、PENは、透明性、熱又は機械的特性に優れ、延伸加工によりリタデーションの制御が可能であり、固有複屈折が大きく、膜厚が薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られる。
上記ポリエステル基材を得る方法としては、上述したリタデーションを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、材料の上記PEN等のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。
上記横延伸温度としては、80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0〜5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステル基材の透明性が低下しやすくなり、横延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られるポリエステル基材の複屈折が小さくなり、リタデーションを3000nm以上とできないことがある。
また、本発明においては、二軸延伸試験装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸ともいう)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。
また、上記熱処理時の処理温度としては、100〜250℃が好ましく、より好ましくは180〜245℃である。
上述した方法で作製したポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上に制御する方法としては、延伸倍率や延伸温度、作製するポリエステル基材の膜厚を適宜設定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、また、膜厚が厚いほど、高いリタデーションを得やすくなり、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、また、膜厚が薄いほど、低いリタデーションを得やすくなる。
上記ポリエステル基材の厚みとしては、実用上問題とならない厚みであることが必要であり、具体的には、10〜500μmの範囲内であることが好ましい。10μm未満であると、上記ポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上にできず、また、力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。一方、500μmを超えると、実用上問題となることがあり、また、ポリエステル基材が非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。上記ポリエステル基材の厚さのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は400μmであり、更により好ましい上限は300μmである。
また、上記ポリエステル基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
また、本発明において、上記ポリエステル基材には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
本発明の画像表示装置において、上記ポリエステル基材等の光学フィルムを配する際は、偏光子の吸収軸と上記光学フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45°となるようにする。これにより偏光サングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができ、ブラックアウトの問題が生じることがない。なお、上記角度は厳密に45°である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良い。上記角度の好ましい範囲は30〜60°、より好ましくは40〜50°である。
本発明の画像表示装置において、上述した条件で上記光学フィルムを偏光子の視認側に配置する方法としては、偏光子の最外層に直接に光学フィルムを積層してもよく、従来公知の他の透明部材を介して配置してもよい。
また、本発明の画像表示装置の視認側最表面に光学フィルムを設置、貼り合わせてもよい。
上記光学フィルムを直接、又は、他の透明部材を介して配置する際は、粘着層を設けた光学フィルムを用いることも好ましい態様である。このとき、他の透明部材は、光学フィルムと偏光子との間であっても良いし、光学フィルムよりも観測者側に配置されていても良い。
上記光学フィルムは、上記偏光子側と反対側の面上に光学機能層が積層され、光学積層体を構成していることが好ましい。
上記光学機能層は、ハードコート性能を有するハードコート層や、低屈折率層等、光学的機能を発揮し得る層であれば特に限定されない。なお、上記ハードコート層や低屈折率層等としては特に限定されず、従来公知のものと同様の方法で形成することができる。
上記光学積層体は、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。
また、上記光学積層体は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。80%未満であると、有機EL表示装置に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、90%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
また、上記光学積層体は、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、所望の光学特性が得られず、上記光学積層体を画像表示装置に設置した際の視認性が低下する。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
本発明の画像表示装置は、上記光学フィルムに入射する光は、ITU−R BT.2020カバー率が50%以上である。このような光は、従来の白色発光ダイオードからの光と比較して狭い発光スペクトルを有するものであるため、本発明の画像表示装置は、高い演色性を有するものとなる。
ここで、RGB(赤、緑、青)の三色の混合によって再現できる色域は、CIE1931−xy色度図上の三角形で示される。上記三角形は、RGB各色の頂点座標を定め、各頂点を結ぶことにより形成される。このRGBの発光スペクトルがそれぞれシャープであると、CIE1931−xy色度図において、Rの頂点座標はxの値が大きくyの値が小さくなり、Gの頂点座標はxの値が小さくyの値が大きくなり、Bの頂点座標はxの値が小さくyの値が小さくなる。つまり、RGBの発光スペクトルがそれぞれシャープであると、CIE1931−xy色度図においてRGB各色の頂点座標を結んだ三角形の面積が大きくなり、再現できる色域の幅が広くなる。
本発明において、上記光学フィルムに入射する光は、ITU−R BT.2020カバー率が50%以上であるが、上記ITU−R BT.2020カバー率とは、CIE1931−xy色度図におけるITU−R BT.2020規定の三角形の面積に対して、光学フィルムに入射する光の色域の三角形の面積の重なり部分の面積の比率をいう。
上記光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率が50%未満であると、本発明の画像表示装置の演色性が不充分となる。上記ITU−R BT.2020カバー率の好ましい下限は60%、より好ましい下限は65%である。
なお、上記光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率の算出は、例えば、液晶表示装置や白色OLEDの場合は、光源からカラーフィルターを通して、また、例えば、RGB3色塗り分けOLEDのような場合は、カラーフィルターを通さずに、RGB各色の頂点座標を求め、ITU−R BT.2020規定の三角形の面積に対して、光学フィルムに入射する光の色域の三角形の面積の重なり部分の面積の比率より算出する。
本発明の画像表示装置の光学フィルムを通過した光は、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長透過率が20〜80%である。上記波長透過率が20%未満であると、本発明の画像表示装置に上述した所定のリタデーションを有する光学フィルムを偏光子に対して配置角度を限定して配置したとしても、干渉色が生じてしまい、80%を超えると、本発明の画像表示装置の表示画面を異なる方向から見たときに色差が大きくなってしまう。上記波長透過率の好ましい下限は40%であり、好ましい上限は60%である。
このような本発明の画像表示装置は、スマートフォンに代表されるように、自由に表示画面の方向を変更できるものであることが好ましい。
なお、上記光学フィルムを通過した光の上述した波長透過率の測定は、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序で配置された構成を有する画像表示装置の観測者側に他の偏光子を配置し、偏光子の吸収軸と他の偏光子の吸収軸とがパラレルニコルの状態で行う。
また、上記光学フィルムを通過した光の上述した波長透過率は、下記のようにシミュレーションによって求めてもよい。
すなわち、光学フィルムに入射する光の強度をI、光学フィルムの波長590nmに対する位相差をRe、入射する光の振動方向と光学フィルムの遅相軸とのなす角度をθ、光学フィルムを構成する材料の可視光領域(波長380nm以上波長780nm以下)の波長の複屈折率(Δn(λ))を、光学フィルムを構成する材料の波長590nmの複屈折率(Δn(590nm))で割った値をN(λ)とした場合、光学フィルムを透過した光の強度であるIは、以下の式(A)で表すことができる。なお、光学フィルムに入射する光は、光学フィルムより表示素子側に位置する偏光子を通過した直線偏光であることを前提としている。
I=I−I・sin(2θ)・sin(π・N(λ)・Re/λ) (A)
ここで、θは45°とするため、上記式(A)は、以下の式(B)で表される。
I=I−I・sin(π・N(λ)・Re/λ) (B)
上記式(B)より、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長の透過率を計算でき、光学フィルムの設計値を決定することもできる。
本発明の画像表示装置は、上述した構成からなるため、暗所にて白表示とし、偏光サングラス吸収軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が0°(パラレルニコル)となるときと、90°(クロスニコル)となるときの正面色味の変化(色差)が抑制されたものとなる。
本発明の画像表示装置において、上記光学フィルムに入射する光は、青色発光ダイオードと、赤色蛍光体と、緑及び/又は黄色蛍光体とを用いて作られた光であり、上記赤色蛍光体は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体であることが好ましい。すなわち、上記青色発光ダイオードが青色光を発し、該青色光を上記緑及び/又は黄色蛍光体が波長変換して緑色光及び/又は黄色光を発し、上記青色光を上記赤色蛍光体が波長変換して赤色光を発することとなり、これら青色光と、緑色光及び/又は黄色光と、赤色光とが混色することで白色光となる。特に上記赤色蛍光体として、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体を用いることで、上述した波長透過率やITU−R BT.2020カバー率を満たす光を好適に作ることができる。
上記Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体としては、具体的には、KSF蛍光体であることが好ましい。
なお、上記KSF蛍光体とは、化学式KSiF:Mnの赤色蛍光体を意味する。図1に、上記赤色蛍光体としてKSF蛍光体を用いた光源の発光スペクトルを示したが、図1に示したように、上記赤色蛍光体がKSF蛍光体であることで、例えば、図2に示した白色発光ダイオードの発光スペクトルと比較して、赤色領域側の発光スペクトルがシャープ(半値幅が狭くなり)となり、色域を拡大できる。
また、本発明の画像表示装置において、上述した波長透過率やITU−R BT.2020カバー率を満たす光としては、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子から発光された光であることも好ましい。
本発明の画像表示装置が有機EL表示装置となり、有機EL表示装置は、自発色することにより視認性が高く、液晶表示装置と異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れ、応答速度が速く、また、温度変化による影響が少ない、更に、視野角が大きいなどの利点を有する。
また、上記有機EL表示装置は、上述した偏光板を備えるため、外光反射を防止できる。
上記有機EL素子としては特に限定されず、例えば、陽極/有機EL層/陰極の積層構造が挙げられ、上記有機EL層としては、発光層、電子とホール(正孔)の注入層及び輸送層からなる構成が挙げられる。
このような有機EL素子や有機EL層としては、従来公知のものが挙げられる。
また、本発明の画像表示装置において、上述した波長透過率やITU−R BT.2020カバー率を満たす光としては、シアン色LEDと赤色レーザーとを用いて作られた光であってもよい。このようなシアン色LEDと赤色レーザーとを用いて作られた光でも上述した波長透過率やITU−R BT.2020カバー率を満たし、干渉色を消すことができる。
上記シアン色LEDとしては、青色LEDと緑色蛍光体とを用いて得ることができる。また、上記赤色レーザーとしては特に限定されず、従来公知のレーザーが使用できる。
本発明の画像表示装置の光学フィルムに入射する光は、上述のように従来の白色発光ダイオードからの光と比較して、光の発光スペクトルがより狭いものであるが、具体的には、上記発光素子より発光された光は、波長580nm以上780nm以下の赤色領域、波長480nm以上580nm未満の緑色領域、及び、波長380nm以上480nm未満の青色領域の各領域において、それぞれ発光スペクトルのピークを有し、上記赤色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が70nm以下であり、上記緑色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以下であり、上記青色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が40nmであることが好ましい。
上記光学フィルムに入射する光の各色における発光スペクトルのピークの半値幅が上記範囲にあることで、本発明の画像表示装置は、高い演色性を有する。また、上述した波長透過率が20〜80%となるように設計することで、上述したKSF蛍光体を用いた光のようなシャープな発光スペクトルを有する光源であっても、干渉色を極めて高度に抑制させることができる。
上記赤色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以下であり、上記緑色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が50nm以下であり、上記青色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が30nmであることがより好ましい。
なお、上記各ピークの半値幅は、例えば、緑色領域(波長480nm以上580nm未満)のピーク強度の半分の強度となる波長(波長は、ピーク強度波長からみて、短波長側と長波長側にある)の波長を求め、長波長側と短波長側の波長の差とする。
本発明の画像表示装置は、特に、青色領域、緑色領域及び赤色領域の中で最も半値幅の狭い領域が赤色領域である発光スペクトルを有する光に対して有効な設計である。すなわち、本発明において、上記赤色領域における発光スペクトルの半値幅は、30nm以下であることが最も好ましい。このような発光スペクトルを有する光としては、特に上述したKSF蛍光体を用いた光源から発せられた光が特に好適である。
なお、赤色領域における発光スペクトルに着目する理由は以下の通りである。
図1は、赤色蛍光体としてKSF蛍光体を用いた光源の発光スペクトルであり、図2は、白色発光ダイオードの発光スペクトルであり、図4は、式(A)を用いて、θを45°とし、N(λ)をポリエチレンテレフタレートの可視光領域(波長380nm以上波長780nm以下)の波長の複屈折率を、波長590nmの複屈折率で割った値とし、光学フィルムの波長590nmに対する位相差Reを10000nmとした時の透過率を計算したグラフであり、図5は、図1と図4とを掛け合わせたグラフと、図1のグラフとを重ねたグラフであり、図6は、図2と図4とを掛け合わせたグラフと、図2のグラフとを重ねたグラフである。
図4より、光学フィルムのリタデーション値と、複屈折率の波長依存性との影響により、発光スペクトル変化の周期が波長の増大に合わせて大きくなる。そして、図5及び図6に示したように、光源の発光スペクトルと光学フィルムの透過率とを重ね合わせた際、特に赤色領域に、発光スペクトルが入りにくくなるため、赤色領域における発光スペクトルに着目するのである。
上述した面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序で配置された構成を有する本発明の画像表示装置は、上述した光を発する光源上に上記偏光子と光学フィルムとを公知の方法で配置することで製造することができる。
本発明の画像表示装置は、上述した構成を有するため、特殊な無機系素材を用いず、実用上問題ない厚みを有する光学フィルムを備え、高い演色性を有するとともに、狭い発光スペクトルを有する光源であっても、ブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)が極めて高度に抑制されたものとなり、任意の位置から表示画面を観察したときであっても、色差の小さな表示画面が得られる。
このため、本発明の画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置(LCD)に好適に使用することができる。
赤色蛍光体としてKSF蛍光体を用いた光源の発光スペクトルを示す図 白色発光ダイオードの発光スペクトルを示す図 CCFLの発光スペクトルを示す図 式(A)を用いて、θを45°とし、N(λ)をポリエチレンテレフタレートの可視光領域(波長380nm以上波長780nm以下)の波長の複屈折率を、波長590nmの複屈折率で割った値とし、光学フィルムの波長590nmに対する位相差Reを10000nmとした時の透過率を計算したグラフ 図1と図4とを掛け合わせたグラフと、図1のグラフを重ねたグラフ 図2と図4とを掛け合わせたグラフと、図2のグラフを重ねたグラフ iMac Retina4KのRGBそれぞれのスペクトルを重ねたグラフ iPhone 6 PlusのRGBそれぞれのスペクトルを重ねたグラフ
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
実施例、比較例及び参考例で作製した光透過性基材等のリタデーションは、以下のようにして測定した。
(リタデーションの測定)
リタデーション値が20000nm未満の光学フィルムのリタデーションは、王子計測機器社製PAM−UHR100を用いて測定した。
リタデーション値が20000nmを超える光学フィルムのリタデーションは、次のようにして測定した。
まず、延伸後の光学フィルムを、二枚の偏光板を用いて、光学フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の波長590nmに対する屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求めた。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。光学フィルムの厚みd(nm)は、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定し、単位をnmに換算した。複屈折率(nx−ny)と、フィルムの厚みd(nm)の積より、リタデーションを計算した。
(光学フィルムに入射する光の発光スペクトル測定)
発光スペクトルは、分光光度計を用いて測定することができる。測定の際、画像表示装置を白表示させ、分光光度計の受光器は表示装置の光出射面に対して垂直となるように設置し、視野角は1°とする。測定装置としては、コニカミノルタ社製分光放射輝度計CS−2000やトプコン社製分光放射計SR−LEDW−5N、SR−UL2を用いることができる。
(光学フィルムに入射する光の色域測定)
光学フィルムに入射する光の色域は、RGBの三色の混合によって再現でき、CIE1931−xy色度図上の三角形で示される。上記三角形は、RGB各色の頂点座標を定め、各頂点を結ぶことにより形成される。RGB各色の頂点座標は、分光光度計を用いて測定することができる。測定の際、画像表示装置のRGBをそれぞれ表示させ、分光光度計の受光器は画像表示装置の光出射面に対して垂直となるように設置し、視野角は1°とする。測定装置としては、コニカミノルタ社製分光放射輝度計CS−2000やトプコン社製分光放射計SR−LEDW−5N、SR−UL2を用いることができる。
なお、表1に、BT.2020規定のRGBのxyデータと、KSF蛍光体を用いた光源としてiMac Retina4Kの光のRGBのxyデータと、白色LEDを用いた光源としてiPhone 6 Plusの光のRGBのxyデータとを示した。
(BT.2020カバー率)
色域のカバー率は、CIE1931−xy色度図におけるBT.2020規定の三角形の面積に対して、光学フィルムに入射する光の色域の三角形の面積の重なり部分の面積の比率を算出し、表1に結果を示した。
Figure 0006600611
(半値幅算出)
KSF蛍光体を用いた光源としてiMac Retina4Kにて、RGBをそれぞれ表示させ、光学フィルムに入射する光の色域測定と同様の方法にて、各領域の発光スペクトルを測定した。白色LEDを用いた光源としてiPhone 6 Plusも同様に測定を行った。
なお、表2に、それぞれの光源からの光のRGBそれぞれのスペクトルのピーク波長(nm)及びその半値幅(nm)を示し、図7にiMac Retina4KのRGBそれぞれのスペクトルを重ねたグラフを示し、図8にiPhone 6 PlusのRGBそれぞれのスペクトルを重ねたグラフを示した。
Figure 0006600611
(光学フィルムの作製)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。
この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、nx=1.70、ny=1.60、膜厚15μmの光学フィルムを得た。波長590nmにおけるリタデーションは、1500nmであった。
上記方法にて、膜厚を変更し、リタデーション=2000nm、3000nm、4100nm、6000nm、8200nm、9000nm、10000nm、11500nm、12980nm、25200nm、33000nm、101000nmの光学フィルムを作製した。
(実施例1〜5)
KSF蛍光体を使用したiMac Retina4K(Apple社製)の観測者側に近い偏光子よりも観測者側にある部材を取り外し、光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率を計算したところ、73%であった。偏光子よりも観測者側に、粘着を介してリタデーションが3000nm、6000nm、8200nm、12980nm、25200nmの各光学フィルムを接着し、画像表示装置を製造した。偏光子の吸収軸と、光学フィルムの遅相軸とのなす角度は45°とした。
(比較例1〜15)
リタデーションが1500nm(比較例1)、2000nm(比較例2)の光学フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして画像表示装置を製造した。
また、白色LEDを光源に使用したiPhone 6 Plus(Apple社製)の観測者側に近い偏光子よりも観測者側にある部材を取り外し、光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率を計算したところ、49%であった。偏光子よりも観測者側に、粘着を介して表3に示したリタデーション値の各光学フィルムを接着し、比較例3〜15に係る画像表示装置を製造した。偏光子の吸収軸と、光学フィルムの遅相軸とのなす角度は45°とした。
(比較例16〜20、参考例1)
リタデーションが4100nm(比較例16)、9000nm(比較例17)、10000nm(比較例18)、11500nm(比較例19)、33000nm(比較例20)及び101000nm(参考例1)の光学フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして画像表示装置を製造した。
(色味評価)
実施例、比較例、参考例で作製した画像表示装置を用いて以下の色味評価を行った。
暗所にて、画像表示装置を白表示とし、偏光サングラス吸収軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が0°(パラレルニコル)となるときと、90°(クロスニコル)となるときの正面色味を、同時に10人で観察を行い、下記の基準に従い評価した。
最多数の評価を観察結果とした。
×:干渉色が強い
△:干渉色はあるが、実用上問題ないレベル
○:干渉色がうっすら見える
◎:干渉色が見えない
(光学フィルムを通過した光の透過率測定方法)
実施例、比較例、参考例にて製造した画像表示装置における、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長の強度Aを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)にて測定する。次に、各画像表示装置の観測者側に他の偏光子を配置し、偏光子の吸収軸と他の偏光子の吸収軸とがパラレルニコルの状態で強度Bを測定し、(強度B/強度A)×100を計算し、透過率を求めた。なお、KSF蛍光体を含む光源を用いた場合は、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長として、波長630nmの透過率を測定し、白色LEDを用いた場合は、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長として、波長605nmの透過率を測定した。
なお、偏光子の吸収軸と他の偏光子の吸収軸とがクロスニコル状態の場合も同様に、まずは強度Aを測定し、ついで、偏光子の吸収軸と他の偏光子の吸収軸とがクロスニコルの状態で強度Cを測定し、(強度C/強度A)×100を計算し、透過率を求めた。
(演色性評価)
同じリタデーション値の光学フィルムを貼りあわせた、各光源を用いた画像表示装置をカラー表示させ、15人の人に、どちらの画像表示装置の演色性が高いか評価した。
○:演色性が高いと答えた人が8人以上
×:演色性が高いと答えた人が8人未満
(色差判定)
実施例、比較例、参考例で作製した画像表示装置を用いて以下の色差評価を行った。
暗所にて、画像表示装置を白表示とし、偏光サングラス吸収軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が0°(パラレルニコル)となるときと、90°(クロスニコル)となるときの正面色味を、同時に10人で観察を行い、下記の基準に従い評価した。
最多数の評価を観察結果とした。
◎:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差がない。
○:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差が少しある。
△:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差があるが、実使用上問題ない。
×:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差が多く、使用できない。
Figure 0006600611
実施例に係る画像表示装置は、光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率が50%以上であったため、演色性に優れていた。また、光学フィルムのリタデーションが3000nm以上であり、該光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が凡そ45°となるよう配置しているため、ブラックアウトの問題も生じなかった。また、表3に示したように、光学フィルムを透過した波長630nmの光の透過率が20〜80%であったため、干渉色の発生も抑制でき、更に、色差の評価にも優れたものであった。
なお、表3に示したように、比較例16〜20に係る画像表示装置は、演色性に優れており、また、ブラックアウトの問題も生じなかったが、光学フィルムを透過した波長630nmの光の透過率が20〜80%を外れるため、干渉色及び色差が問題となっていた。
実施例及び比較例16〜20の結果から、光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率が50%以上であると、演色性が優れ、光学フィルムのリタデーションを3000nm以上とし、該光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が凡そ45°となるよう配置することで、ブラックアウトの問題が解決できることが確認できたが、赤色領域における発光スペクトルの半値幅が狭いKSF蛍光体を用いた光源を用いた場合、干渉色の問題を確実に解決するには光学フィルムを透過した波長630nmの光の透過率を20〜80%とする必要があった。
また、参考例1に係る画像表示装置は、演色性、ブラックアウト、干渉色及び色差の結果は優れていたが、光学フィルムの膜厚が1010μmと極めて厚く、実用上問題となるものであった。なお、表4に、光学フィルムの複屈折率と膜厚との関係を示した。
一方、比較例に係る画像表示装置は、光学フィルムのリタデーションが3000nm未満であると、干渉色が問題となり(比較例1、2、3、4)、比較例5〜15に係る画像表示装置は、光学フィルムに入射する光の赤色領域における発光スペクトルの半値幅が広いことから、光学フィルムのリタデーションが3000nm以上であり、該光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が凡そ45°となるよう配置することで、波長605nmの光の透過率が20〜80%を外れても、干渉色、ブラックアウト及び色差を防止できたが、光学フィルムに入射する光のITU−R BT.2020カバー率が50%未満であったため、演色性に劣っていた。
Figure 0006600611
本発明は、上記構成を有するため、特殊な無機系素材を用いず、実用上問題ない厚みを有する光学フィルムを備え、高い演色性を有するとともに、狭い発光スペクトルを有する光源であっても、ブラックアウト及び干渉色(ニジムラ)の発生を極めて高度に抑制されたものとなり、任意の位置から表示画面を観察したときであっても、色差の小さな表示画面が得られる画像表示装置として好適である。

Claims (3)

  1. 面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序で、前記光学フィルムが前記偏光子の視認側に配置された構成を有する画像表示装置であって、
    前記光学フィルムの遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度の範囲が30〜60°となるように、前記光学フィルムと前記偏光子とが設置されており、
    前記光学フィルムは、リタデーションが3000nm以上、4万nm以下のポリエステルフィルム厚みが10〜500μmであり、
    前記光学フィルムを通過した光は、波長580〜780nmの間で最もピーク強度の高い波長透過率が20〜80%であり、
    前記光学フィルムに入射する光は、ITU−R BT.2020カバー率が50%以上であり、波長580nm以上780nm以下の赤色領域、波長480nm以上580nm未満の緑色領域、及び、波長380nm以上480nm未満の青色領域の各領域において、それぞれ発光スペクトルのピークを有し、前記赤色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が70nm以下であり、前記緑色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以下であり、前記青色領域における発光スペクトルのピークの半値幅が40nm以下であり、
    前記光学フィルムは、前記偏光子側と反対側の面上に光学機能層が積層されて光学積層体を構成している
    ことを特徴とする画像表示装置。
    なお、前記光学フィルムを通過した光の波長透過率は、面内に複屈折率を有する光学フィルムと偏光子とがこの順序、前記光学フィルムが前記偏光子の視認側に配置された構成を有する画像表示装置の観測者側に他の偏光子を配置し、前記偏光子の吸収軸と前記他の偏光子の吸収軸とがパラレルニコルの状態で測定して得られた値、又は、下記式(B)により求められた値である。
    I=I −I ・sin (π・N(λ)・Re/λ) (B)
    (式中では、光学フィルムに入射する光の強度をI 、光学フィルムの波長590nmに対する位相差をRe、入射する光の振動方向と光学フィルムの遅相軸とのなす角度をθ、光学フィルムを構成する材料の可視光領域(波長380nm以上波長780nm以下)の波長の複屈折率(Δn(λ))を、光学フィルムを構成する材料の波長590nmの複屈折率(Δn(590nm))で割った値をN(λ)、光学フィルムを透過した光の強度をIとして示す。)
  2. 光学フィルムに入射する光は、青色発光ダイオードと、赤色蛍光体と、緑及び/又は黄色蛍光体とを用いて作られた光であり、
    前記赤色蛍光体は、Mn4+付活フッ化物錯体蛍光体である請求項1記載の画像表示装置。
  3. 光学フィルムに入射する光は、有機エレクトロルミネッセンス素子から発光された光である請求項1記載の画像表示装置。
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