JP6599742B2 - 磁気共鳴装置 - Google Patents

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Description

本発明は、血液のスピンにラベリングを行う磁気共鳴装置に関する。
血流画像を取得する撮影法の1つとして、ASL(Arterial Spin Labeling)と呼ばれる撮影法が知られている。この撮影では、予め、被検体の血流の上流側においてスピン(spin)に磁気的なラベリングを行い、このラベリングされたスピンが関心領域に流入して発生する磁気共鳴信号を撮影に利用する。ASL法を用いて血流画像を得る方法として、
ラベリング有りの断層像であるラベル(label)画像と、ラベリング無しの断層像であるコントロール(control)画像との差分画像を求める方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−014399号公報
Eun-Kee Jeong, Seong-Eun Kim andDennis L. Parker. High-resolution diffusion-weighted 3D MRI, using diffusion-weighted driven-equilibrium (DW-DE) and multishot segmented 3D-SSFP without navigator echoes. Magn Reson Med. Volume 50, Issue 4, pages 821-829, October 2003.
また、ASL法は、灌流画像(perfusion画像)を取得する撮影にも応用されている。灌流画像を取得する撮影では、毛細血管などの細い血管を流れる血液はできるだけ高信号で描出し、太い血管を流れる血液はできるだけ低信号で描出することが要求される。しかし、通常のASL法では、太い血管を流れる血液の信号を十分に低減することができないことがあり、高品質な灌流画像を得ることが難しいという問題がある。そこで、灌流画像の生成時に不要となる太い血管の血流信号を低減するために、ASL法に、DWDE(diffusion-weighted driven-equilibrium)シーケンス(非特許文献1参照)を利用する方法が検討されている。
しかし、DWDEシーケンスを用いた方法では、B1不均一が原因で空間的に均一な血流抑制効果を得ることが難しく、高品質な灌流画像を得ることが難しいという問題がある。
このような理由から、血液のスピンのラベリングを行う撮影法を用いて灌流画像などの血流画像を得る場合において、高品質な血流画像を得ることができる技術が望まれている。
本発明の一観点は、血液を含む第1の領域の画像を取得するための磁気共鳴装置であって、
血液が前記第1の領域に流入する前に、前記血液のスピンのラベリングを行うための第2の領域を設定する設定手段と、
前記第1の領域の画像を取得するためのイメージングシーケンスを実行するスキャン手段であって、
前記第2の領域内の血液のスピンのラベリングを行う第1のシーケンスと、
前記第1のシーケンスの後に実行される第2のシーケンスであって、前記第1の領域を励起するための第1のRFパルスと、前記第1の領域を流れる第1の血液のスピンの位相が、前記第1の血液よりも遅い流速で前記第1の領域を流れる第2の血液のスピンの位相よりも分散するように、前記第1の領域内の血液のスピンの位相を分散させるための第1の勾配パルスとを含む第1のパルスセットを複数有する第2のシーケンスと、
前記第2のシーケンスが実行された後で前記第1の領域のデータを収集するための第3のシーケンスと、
を含む第1のシーケンスセグメント、および
前記第2の領域内の血液のスピンのラベリングを行わない第4のシーケンスと、
前記第4のシーケンスの後に実行される第5のシーケンスであって、前記第1の領域を励起するための第2のRFパルスと、前記第1の領域を流れる第3の血液のスピンの位相が、前記第3の血液よりも遅い流速で前記第1の領域を流れる第4の血液のスピンの位相よりも分散するように、前記第1の領域内の血液のスピンの位相を分散させるための第2の勾配パルスとを含む第2のパルスセットを複数有する第5のシーケンスと、
前記第5のシーケンスが実行された後で前記第1の領域のデータを収集するための第6のシーケンスと、
を含む第2のシーケンスセグメント、
を有するイメージングシーケンスを実行するスキャン手段と、
前記スキャン手段を制御する制御部と、
前記イメージングシーケンスを実行することにより得られたデータに基づいて、前記第1の領域の画像を生成する画像生成手段と、
を有し、
前記制御部は、
前記第1のシーケンスセグメントにおいて、前記第2のシーケンスが有する複数の第1のパルスセットの各々の前記第1のRFパルスのフリップ角が0°よりも大きく90°よりも小さい値を有し、
前記第2のシーケンスセグメントにおいて、前記第5のシーケンスが有する複数の第2のパルスセットの各々の前記第2のRFパルスのフリップ角が0°よりも大きく90°よりも小さい値を有するように、前記スキャン手段を制御する、磁気共鳴装置である。
フリップ角を90°よりも小さい値に設定しているので、RFパルスのB1不均一による血液の抑制効果のばらつきを低減することができる。したがって、高品質な血流画像を得ることができる。
本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。 処理装置9が実現する手段の説明図である。 本形態で実行されるスキャンの説明図である。 本形態におけるフローを示す図である。 ローカライザスキャンLSにより取得された画像LDの一例を概略的に示す図である。 イメージング領域SBを概略的に示す図である。 ラベリング領域SLを概略的に示す図である。 本スキャンMSの説明図である。 シーケンスセグメントA1〜Amの説明図である。 Pre SatシーケンスSQ1の説明図である。 ラベリングシーケンスSQ2の説明図である。 ラベリングシーケンスSQ2の作用の説明図である。 パルスセットInv1の説明図である。 シーケンスSQ3の説明図である。 φ=0°且つΔφ=0°の場合におけるRFパルスの位相を示す図である。 φ=0°且つΔφ=180°の場合におけるRFパルスの位相を示す図である。 φ=0°且つΔφ=45°の場合におけるRFパルスの位相を示す図である。 シーケンスSQ3の作用の説明図である。 シーケンスセグメントAiを実行することによりイメージング領域SBから得られる信号の説明図である。 シーケンスセグメントB1〜Bmの説明図である。 コントロールシーケンスSQ20の説明図である。 コントロールシーケンスSQ20の作用の説明図である。 シーケンスセグメントBiを実行することによりイメージング領域SBから得られる信号の説明図である。 ステップST4のフローの一例の説明図である。 本スキャンMSにより得られたイメージングデータを概略的に示す図である。 ステップST42の説明図である。 本形態のシーケンスセグメントAiと、比較例のシーケンスセグメントAiとを示す図である。 本形態のシーケンスセグメントBiと、比較例のシーケンスセグメントBiとを示す図である。 比較例の問題点の説明図である。 シーケンスSQ3をパルスセットInv2とデータ収集シーケンスDAQiとの間に設けた例を示す図である。 シーケンスセグメントAiおよびBiの各々に、2つのシーケンスSQ3が含まれている例を示す図である。
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)1は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、「受信コイル」と呼ぶ)4などを有している。
マグネット2は、被検体13が収容される収容空間21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、RFコイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、RFコイル24はRFパルスを印加する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
テーブル3は、被検体13を搬送するためのクレードル3aを有している。クレードル3aによって、被検体13は収容空間21に搬送される。
受信コイル4は、被検体13の頭部に取り付けられており、被検体13からの磁気共鳴信号を受信する。
MR装置1は、更に、制御部5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、処理装置9、記憶部10、操作部11、および表示部12などを有している。
制御部5は、処理装置9から、シーケンスで使用されるRFパルスおよび勾配パルスの波形情報や印加タイミングなどを含むデータを受け取る。そして、制御部5は、RFパルスのデータに基づいて送信器6を制御し、勾配パルスのデータに基づいて勾配磁場電源7を制御する。また、制御部5は、クレードル3aの移動の制御なども行う。尚、図1では、制御部5が、送信器6、勾配磁場電源7、クレードル3aなどの制御を行っているが、送信器6、勾配磁場電源7、クレードル3aなどの制御を複数の制御部で行ってもよい。例えば、送信器6および勾配磁場電源7を制御する制御部と、クレードル3aを制御する制御部とを別々に設けてもよい。
送信器6は、制御部5から受け取ったデータに基づいて、RFコイル24に電流を供給する。
勾配磁場電源7は、制御部5から受け取ったデータに基づいて、勾配コイル23に電流を供給する。
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号に対して、検波などの処理を行い、処理装置9に出力する。尚、マグネット2、受信コイル4、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8を合わせたものが、スキャン手段に相当する。
記憶部10には、処理装置9により実行されるプログラムなどが記憶されている。尚、記憶部10は、ハードディスク、CD−ROMなどの非一過性の記憶媒体であってもよい。処理装置9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行するプロセッサとして動作する。処理装置9は、プログラムに記述されている処理を実行することにより、種々の手段を実現する。図2は、処理装置9が実現する手段の説明図である。
画像生成手段91は、スキャンにより得られたデータに基づいて画像を生成する。
設定手段92は、撮影部位の画像を取得するためのイメージング領域を設定するとともに、イメージング領域の位置情報に基づいて、血液のスピンのラベリングを行うためのラベリング領域を設定する。イメージング領域は第1の領域に相当し、ラベリング領域は第2の領域に相当する。
MR装置1は、処理装置9を含むコンピュータを備えている。処理装置9は、記憶部10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、画像作成手段91および設定手段92などを実現する。尚、処理装置9は、一つのプロセッサで画像作成手段91および設定手段92を実現してもよいし、2つ以上のプロセッサで、画像作成手段91および設定手段92を実現してもよい。また、画像作成手段91および設定手段92のうちの一方の手段を、制御部5で実行できるようにしてもよい。また、処理装置9が実行するプログラムは、一つの記憶部に記憶させておいてもよいし、複数の記憶部に分けて記憶させておいてもよい。
図1に戻って説明を続ける。
操作部11は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置1は、上記のように構成されている。
図3は、本形態で実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、ローカライズスキャンLSおよび本スキャンMSなどが実行される。
ローカライザスキャンLSは、後述するイメージング領域SB(図6参照)を設定するために使用される画像LDを取得するためのスキャンである。本スキャンMSは、イメージング領域SBの灌流画像を取得するためのスキャンである。
以下、これらのスキャンを実行し、灌流画像を取得するためのフローについて、図4を参照しながら説明する。
図4は、本形態におけるフローを示す図である。
ステップST1では、ローカライザスキャンLSが実行される。画像生成手段91(図2参照)は、ローカライザスキャンLSにより得られたデータに基づいて、アキシャル画像、サジタル画像、およびコロナル画像を生成する。図5は、ローカライザスキャンLSにより取得された画像LDの一例を概略的に示す図である。図5には、サジタル画像が示されている。図5において、RL(Right-Left)方向は左右方向を表し、AP(Anterior-Posterior)方向は前後方向を表し、SI(Superior-Inferior)方向は頭尾方向を表している。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST2に進む。
ステップST2では、オペレータは、画像LDに基づいて、撮影部位の画像を取得するためのイメージング領域SBを設定する。オペレータは、操作部11を操作し、イメージング領域SBを設定するための情報を入力する。この情報が入力されると、設定手段92(図2参照)は、入力された情報に基づいて撮影部位にイメージング領域SBを設定する。図6に、設定されたイメージング領域SBを概略的に示す。本形態では、脳を流れる血液の灌流画像を取得することを考えているので、イメージング領域SBは脳を含むように設定される。イメージング領域SBを設定した後、ステップST3に進む。
ステップST3では、設定手段92が、イメージング領域SBの位置情報に基づいて、後述するラベリングシーケンスSQ2(図11参照)において血液のスピンのラベリングを行うためのラベリング領域SLを設定する。設定手段92は、イメージング領域SBのI側の端部の位置からI側に距離dだけ離れた位置に、ラベリング領域SLを設定する。図7に、設定されたラベリング領域SLを概略的に示す。dは、例えば、d=2cmである。また、ラベリング領域SLのSI方向の厚さ(スライス厚)は、例えば、数mmである。尚、オペレータが手動でラベリング領域SLを設定してもよい。
図7では、ラベリング領域SL内を流れる血液を符号「b0」で示し、イメージング領域SB内を流れる血液を符号「b1」および「b2」で示してある。イメージング領域SBの血液b1は、太い血管(例えば、内頸動脈)を流れる血液であり、イメージング領域SBの血液b2は細い血管(例えば、毛細血管)を流れる血液を表している。ラベリング領域SLを設定した後、ステップST4に進む。
ステップST4では、イメージング領域SBの画像を取得するための本スキャンMSが実行される。以下に、本スキャンMSについて説明する。
図8は、本スキャンMSの説明図である。
本スキャンMSでは、イメージング領域SBの画像を取得するためのイメージングシーケンスが実行される。イメージングシーケンスは、シーケンスセグメントA1〜AmおよびシーケンスセグメントB1〜Bmを有している。以下、シーケンスセグメントA1〜AmおよびB1〜Bmについて説明する。
図9は、シーケンスセグメントA1〜Amの説明図である。
図9では、i番目のシーケンスセグメントをAiで示してある。iは、i=1〜mの整数の値である。したがって、例えば、i=1の場合、シーケンスセグメントAiは、シーケンスセグメントA1を表しており、i=mの場合、シーケンスセグメントAiは、シーケンスセグメントAmを表している。
シーケンスセグメントAiは、Pre SatシーケンスSQ1、ラベリングシーケンスSQ2、パルスセットInv1、シーケンスSQ3、パルスセットInv2、およびデータ収集シーケンスDAQiを有している。以下、これらのシーケンスおよびパルスセットについて順に説明する。
図10は、Pre SatシーケンスSQ1の説明図である。
Pre SatシーケンスSQ1は、イメージング領域SB内の組織の磁化を小さくするためのシーケンスである。Pre SatシーケンスSQ1は複数のパルスセットPS1を有している。パルスセットPS1は、RFパルスP1と、スライス選択勾配パルスGs1と、クラッシャー勾配パルスGcとを含んでいる。Pre SatシーケンスSQ1では、パルスセットPS1が繰り返し実行される。
ここでは、RFパルスP1は90°パルスである。RFパルスP1およびスライス選択勾配パルスGs1により、イメージング領域SBが選択励起される。RFパルスP1によりイメージング領域SB内の組織の磁化ベクトルが90°倒れるので、イメージング領域SB内の各組織の縦磁化を小さくすることができる。また、クラッシャー勾配パルスGcを印加することにより、イメージング領域SB内を流れる血液b1およびb2の横磁化の位相を分散させることができる。したがって、パルスセットPS1を実行することにより、イメージング領域SB内の組織の磁化の大きさを小さくすることができる。Pre SatシーケンスSQ1の時間長は、数十msec(例えば、20msec)にすることができる。Pre SatシーケンスSQ1を実行した後、ラベリングシーケンスSQ2が実行される。
図11は、ラベリングシーケンスSQ2の説明図である。
ラベリングシーケンスSQ2(第1のシーケンスに相当する)は、ラベリング領域SLを流れる血液のスピンを磁気的にラベリングするためのシーケンスである。ラベリングシーケンスSQ2は、パルスセットE1を有している。ラベリングシーケンスSQ2では、パルセットE1が連続的に繰り返し実行される。
パルスセットE1は、RFパルスP21とスライス選択パルスGs2と補正勾配パルスGc2とを含んでいる。図11の下側には、RFパルスP21の位相φaを説明するための座標系(a)が示されている。z軸は静磁場方向を表している。本形態では、RFパルスP21の位相φaを表す軸(φa軸)は、xy面内に設定される。ここでは、φa軸は、x軸に設定されている。
また、RFパルスP21のフリップ角はβで表されている。したがって、RFパルスP21が印加されると、磁化ベクトルは、φa軸(x軸)を中心としてフリップ角βだけ回転する。例えば、β=12°の場合、磁化ベクトルは、φa軸を中心としてβ=12°回転する。
RFパルスP21およびスライス選択パルスGs2により、ラベリング領域SLが励起される。ラベリング領域SLの励起の直後に、スピンの位相ずれを戻すための補正勾配パルスGc2が印加される。ラベリングシーケンスSQ2では、パルスセットE1が繰り返し実行される。
図12は、ラベリングシーケンスSQ2の作用の説明図である。
図12には、ラベリングシーケンスSQ2の開始直前におけるラベリング領域SLの磁化ベクトルMを説明するための座標系(c)が概略的に示されている。ラベリングシーケンスSQ2の開始直前において、ラベリング領域SLの血液の磁化ベクトルMは、z軸方向を向いているとする。
パルスセットE1が実行されると、RFパルスP21により、ラベリング領域SL内の血液の磁化ベクトルMは、φa軸(x軸)を中心として、βだけフリップする(座標系(a)参照)。したがって、磁化ベクトルMは、z軸に対してβだけ傾く。パルスセットE1が実行された後、次のパルスセットE1が実行される。
次のパルスセットE1が実行されると、RFパルスP21により、磁化ベクトルMは、z軸に対して更にβだけ傾く(座標系(b)参照)。以下同様に、パルスセットE1が繰り返し実行される。したがって、パルスセットE1が実行されるたびに、ラベリング領域SLの血液の磁化ベクトルはβだけ傾くので、ラベリング領域SLの血液の縦磁化はパルスセットE1が実行されるたびに小さくなる。このため、ラベリングシーケンスSQ2を実行することにより、ラベリング領域SL内の血液のスピンは縦磁化が小さくなるようにラベリングされ、ラベリング領域SLから流出する。ラベリングシーケンスSQ2を実行した後、パルスセットInv1が実行される。
図13は、パルスセットInv1の説明図である。
パルスセットInv1は、ラベリング領域SLおよびイメージング領域SBを含む領域R1内の各組織の縦磁化を反転させるためのRFパルスPinと、領域R1を選択するための選択勾配パルスGinとを含んでいる。パルスセットInv1を実行することにより、領域R1が選択励起され、領域R1内の各組織の縦磁化を反転させることができる。パルスセットInv1を実行した後、シーケンスSQ3が実行される。
図14は、シーケンスSQ3の説明図である。
シーケンスSQ3(第2のシーケンスに相当する)は、ラベリング領域SLおよびイメージング領域SBを含む領域R2を流れる血液のうち、流速が遅い血液の磁化はできるだけ小さくせずに、流速が速い血液の磁化をできるだけ小さくするシーケンスである。図14において、血液b1は、比較的太い血管(例えば、内頸動脈)を流れる血液を表している。血液b1は、比較的太い血管を流れる血液であるので、流速が速い血液である。一方、血液b2は、毛細血管を流れる血液を表している。毛細血管は細い血管であるので、毛細血管を流れる血液b2は、流速が遅い血液である。したがって、シーケンスSQ3は、領域R2を流れる血液のうち、流速が遅い血液(例えば、血液b2)の磁化はできるだけ小さくせずに、流速が速い血液(例えば、血液b1)の磁化をできるだけ小さくするシーケンスである。
以下に、シーケンスSQ3について具体的に説明する。シーケンスSQ3は、RFパルスと勾配パルスとを含むパルスセットV〜Vを有している。
図14の下側には、i番目に実行されるパルスセットV(i=1〜n)が示されている。
パルスセットVは、RFパルスwと勾配パルスGzとを含んでいる。RFパルスwは、ラベリング領域SLおよびイメージング領域SBを含む領域R2内の組織を励起するための励起パルスである。パルスセットVの右下には、RFパルスwの位相φを説明するための座標系が示されている。位相φは、以下の式で表される。
φ=φ+(i−1)Δφ ・・・(1)
式(1)のΔφは、i−1番目に実行されるパルスセットVi−1に含まれるRFパルスwi−1の位相φi−1と、i番目に実行されるパルスセットVに含まれるRFパルスwの位相φとの位相差である。本形態では、x軸に対して位相φだけずれた位置における軸を、φ軸と呼ぶことにする。i=1、即ち、最初に実行されるパルスセットVでは、RFパルスwの位相はφである。i=2、即ち、2番目に実行されるパルスセットVでは、RFパルスwの位相はφ=φ+Δφである。以下同様に、iの値が1ずつ増加するたびに、RFパルスwの位相φはΔφずつ増加する。したがって、i=j、即ち、j番目に実行されるパルスセットVでは、RFパルスwの位相はφ=φ+(j−1)Δφである。そして、i=n、即ち、最後に実行されるパルスセットVでは、RFパルスwの位相はφ=φ+(n−1)Δφである。
また、RFパルスwのフリップ角はαで表されている。したがって、RFパルスwが印加されると、磁化ベクトルは、φ軸を中心として、フリップ角αだけ回転する。
例えば、φ=0°、Δφ=0°の場合、RFパルスの位相は、図15に示すように表される。つまり、RFパルスw〜wの位相φ〜φは同じ値(0°)に設定される。したがって、RFパルスwが印加されると、磁化ベクトルは、φ軸(x軸)を中心として、αだけ回転する。同様に、RFパルスw〜wの各々が印加されると、磁化ベクトルはx軸を中心としてα〜αだけ回転する。αは、0°<α<90°を満たすように設定されている。例えば、α=12°である。
また、図16には、φ=0°、Δφ=180°の場合におけるRFパルスの位相が示されている。図16では、RFパルスの位相を表すφ軸は、x軸および−x軸(x軸に対して180°ずれた軸)が交互に現れるように設定される。
更に、図17には、φ=0°、Δφ=45°の場合におけるRFパルスの位相が示されている。図17では、RFパルスの位相は45°ずつ増加するように設定される。
図18は、シーケンスSQ3の作用の説明図である。
シーケンスSQ3では、先ず、パルスセットVが実行される。パルスセットVでは、RFパルスwが印加される。RFパルスwが印加されることにより、磁化ベクトルは、φ軸(φ=0°)を中心にしてα(0°<α<90°)回転する。そして、RFパルスwが印加された後に、勾配パルスGzが印加される。勾配パルスGzが印加されることにより、磁化ベクトルの位相が分散する。
以下同様に、パルスセットV〜Vが順に実行される。したがって、シーケンスSQ3では、位相を分散させるための勾配パルスGzが繰り返し印加される。シーケンスSQ3が実行されている間、静止組織は動かないので、どのパルスセットが実行されても、静止組織に印加される勾配パルスGzの大きさは同じである。また、細い血管を流れる血液b2は流速が遅いので、シーケンスSQ3の実行中における血液b2の移動距離は短い。したがって、シーケンスSQ3が実行されている間、細い血管を流れる血液b2に印加される勾配パルスGzの大きさはあまり変化しない。一方、太い血管を流れる血液b1は流速が速いので、シーケンスSQ3の実行中における血液b1の移動距離は長い。したがって、シーケンスSQ3が実行されている間、太い血管を流れる血液b1に印加される勾配パルスGzの大きさは時間とともに大きく変化する。したがって、シーケンスSQ3を実行することにより、静止組織(例えば、白質や灰白質)や細い血管を流れる血液b2の位相はできるだけ分散させずに、太い血管を流れる血液b1の位相はできるだけ分散させることができる。これにより、流速の遅い血液b2は高信号にし、一方、流速の速い血液b1を低信号にすることが可能となる。
ただし、勾配パルスGzの面積が大きすぎると、流速の速い血液b1だけでなく、流速の遅い血液b2の位相も十分に分散するので、流速の速い血液b1と、流速の遅い血液b2の両方が低信号になる恐れがある。一方、勾配パルスGzの面積が小さすぎると、流速の速い血液b1の位相があまり分散しなくなるので、流速の遅い血液b2と流速の速い血液b1の両方が高信号になる恐れがある。したがって、勾配パルスGzの面積は、以下の条件(1)および(2)を満たすように設定されている。
(1)流速の遅い血液の位相はできるだけ分散しないようにする。
(2)流速の速い血液の位相はできるだけ分散させる。
上記の条件(1)および(2)を満たす勾配パルスGzの面積は、被検体を撮影する前に予め決定されている。勾配パルスGzの面積の決定方法としては、シーケンスSQ3の勾配パルスGzの面積を変更しながら、スキャンを繰り返し実行し、スキャンを繰り返し実行することにより得られた複数の画像を参考にする方法がある。これらの複数の画像を参考にすることにより、条件(1)および(2)の両方を満足するのに適した勾配パルスGzの面積を決定することができる。
シーケンスSQ3の時間長は、数百msec(例えば、200msec)にすることができる。シーケンスSQ3の一例としては、ダンテ(DANTE)シーケンスを用いることができる。シーケンスSQ3により位相分散を行った後、パルスセットInv2が実行される。パルスセットInv2は、パルスセットInv1と同じである。したがって、パルスセットInv2を実行することにより、パルスセットInv1と同様に、領域R1(図13参照)が選択励起され、領域R1内の各組織の縦磁化を反転させることができる。パルスセットInv2を印加した後、データ収集シーケンスDAQi(第3のシーケンスに相当する)を実行する。パルスセットInv2とデータ収集シーケンスDAQiとの間には、待ち時間が設けられている。この待ち時間は、背景組織の縦磁化ができるだけゼロに近い値を有するときにデータ収集シーケンスDAQiが開始されるように設定されている。データ収集シーケンスDAQiを実行することにより、イメージング領域からイメージングデータが収集される。
シーケンスセグメントAiは、上記のように構成されている。本形態では、本スキャンMSは、m個のシーケンスセグメントA1〜Amを含んでいる。したがって、本スキャンMSを実行することにより、m個のデータ収集セグメントDAQ1〜DAQmが実行される。データ収集セグメントDAQ1〜DAQmの各々は、k空間の一部のイメージングデータを収集する。本形態では、シーケンスセグメントA1〜Anにより、ラベリングが行われたときのイメージングデータが収集される。
図19は、シーケンスセグメントAiを実行することによりイメージング領域SBから得られる信号の説明図である。
シーケンスセグメントAiでは、ラベリングシーケンスSQ2は、ラベリング領域SL内の血液の縦磁化ができるだけ小さくなるように、血液のスピンのラベリングを行う。したがって、ラベリングシーケンスSQ2を実行することにより、ラベリング領域SLから、縦磁化の小さい血液b0が流出し、イメージング領域SBに流入する。また、シーケンスセグメントAiでは、ラベリングシーケンスSQ2を実行した後、データ収集シーケンスDAQiの前に、シーケンスSQ3が実行される。シーケンスSQ3は、領域R2内の流速の遅い血液(例えば、血液b2)の位相はあまり分散しないが、領域R2内の流速の速い血液(例えば、血液b1)の位相を十分に分散するように構成されている。したがって、データ収集シーケンスDAQiが実行される前に、太い血管を流れる血液b1の磁化を更に小さくすることができる。
また、シーケンスセグメントAiでは、背景組織(例えば、白質、灰白質)の信号を小さくするためのパルスセットInv1およびInv2が実行されるので、データ収集シーケンスDAQiが実行される前に、背景組織の縦磁化を小さくすることもできる。
このように、シーケンスセグメントAiでは、ラベリングシーケンスSQ2が実行される。ラベリングシーケンスSQ2は、ラベリング領域SL内の血液の縦磁化が十分に小さくなるように、血液のスピンのラベリングを行う。したがって、イメージング領域SBには、縦磁化の小さい血液が流入する。そして、データ収集シーケンスDAQiの実行前に、シーケンスSQ3が実行される。シーケンスSQ3により、太い血管を流れる血液b1の位相が十分に分散される。また、パルスセットInv1およびInv2により、背景組織の信号を低減することができる。したがって、シーケンスセグメントAiを実行することにより、細い血管を流れる血液b2の信号値が比較的小さく、背景組織および太い血管を流れる血液b1の信号値が更に小さいイメージングデータが得られる。
次に、シーケンスセグメントB1〜Bmについて説明する。
図20は、シーケンスセグメントB1〜Bmの説明図である。
図20では、i番目のシーケンスセグメントをBiで示してある。iは、i=1〜mの整数の値である。したがって、例えば、i=1の場合、シーケンスセグメントBiは、シーケンスセグメントB1を表しており、i=mの場合、シーケンスセグメントBiは、シーケンスセグメントBmを表している。
シーケンスセグメントBiは、Pre SatシーケンスSQ1、コントロールシーケンスSQ20、パルスセットInv1、シーケンスSQ3、パルスセットInv2、およびデータ収集シーケンスDAQiを有している。以下、これらのシーケンスおよびパルスセットについて順に説明する。
尚、シーケンスセグメントBiは、シーケンスセグメントAiと比較すると、ラベリングシーケンスSQ2の代わりに、コントロールシーケンスSQ20を備えている点が異なっているが、その他のシーケンスおよびパルスセットは、シーケンスセグメントAiと同じである。したがって、シーケンスセグメントBiの説明に当たっては、コントロールシーケンスSQ20について主に説明する。
図21は、コントロールシーケンスSQ20の説明図である。
コントロールシーケンスSQ20(第4のシーケンスに相当する)は、ラベリング領域SLを流れる血液b0のスピンに磁気的なラベリングを行わないシーケンスである。コントロールシーケンスSQ20は、パルスセットE1およびE2を有している。パルスセットE1とパルスセットE2は交互に実行される。パルスセットE1は、ラベリングシーケンスSQ2のパルスセットE1(図11参照)と同じである。したがって、パルスセットE1の説明は省略し、パルスセットE2について説明する。
パルスセットE2は、RFパルスP22とスライス選択パルスGs2と補正勾配パルスGc2とを含んでいる。図21の下側には、RFパルスP22の位相φbを説明するための座標系(b)が示されている。z軸は静磁場方向を表している。ここでは、RFパルスP22の位相φbを表す軸(φb軸)は、−x軸(x軸に対して180°ずれた軸)に設定されている。
また、RFパルスP22は、RFパルスP21と同じフリップ角βを有している。したがって、RFパルスP22が印加されると、磁化ベクトルは、φb軸(−x軸)を中心としてフリップ角βだけ回転する。例えば、β=12°の場合、磁化ベクトルMは、φb軸の軸を中心としてβ=12°回転する。
RFパルスP22およびスライス選択パルスGs2により、ラベリング領域SLが励起される。ラベリング領域SLの励起の直後に、スピンの位相ずれを戻すための補正勾配パルスGc2が印加される。
パルスセットE2を実行することにより、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルをフリップ角βだけフリップさせることができる。
図22は、コントロールシーケンスSQ20の作用の説明図である。
図22には、コントロールシーケンスSQ20の開始直前におけるラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMを説明するための座標系(c)が概略的に示されている。コントロールシーケンスSQ20の開始直前において、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMは、z軸方向を向いているとする。
パルスセットE1が実行されると、RFパルスP21により、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMは、軸φaを中心としてβだけフリップする(座標系(a)参照)。したがって、磁化ベクトルMは、z軸に対してβだけ傾く。パルスセットE1が実行された後、次のパルスセットE2が実行される。
パルスセットE2が実行されると、RFパルスP22により、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMは、軸φbを中心としてβだけフリップする(座標系(b)参照)。したがって、磁化ベクトルMは、z軸に対してβだけ傾いた位置から、z軸上の位置に戻る。
以下同様に、パルスセットE1およびE2が交互に実行される。したがって、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMは、パルスセットE1のRFパルスP21によりz軸に対してβだけ傾くが、パルスセットE2のRFパルスP22により、z軸上の位置に戻る。
このように、コントロールシーケンスSQ20では、パルスセットE1とE2とが交互に実行されるので、ラベリング領域SL内の血液b0の磁化ベクトルMは、z軸に対してβだけ傾いても、直ぐにz軸上の位置に戻る。したがって、コントロールシーケンスSQ20を実行することにより、ラベリング領域SL内の血液b0のスピンはラベリングされず、十分な大きさの縦磁化を有する血液b0がラベリング領域SLから流出する。コントロールシーケンスSQ20の時間長は、数秒(例えば、2秒)にすることができる。コントロールシーケンスSQ20を実行した後、シーケンスセグメントAiと同様に、パルスセットInv1、シーケンスSQ3(第5のシーケンスに相当する)、パルスセットInv2、およびデータ収集シーケンスDAQi(第6のシーケンスに相当する)が順に実行される。
シーケンスセグメントBiは、上記のように構成されている。本形態では、本スキャンMSは、m個のシーケンスセグメントB1〜Bmを含んでいる。シーケンスセグメントB1〜Bmにより、ラベリングが行われないときのイメージングデータが収集される。
図23は、シーケンスセグメントBiを実行することによりイメージング領域SBから得られる信号の説明図である。
シーケンスセグメントBiでは、コントロールシーケンスSQ20は、ラベリング領域SL内の血液のスピンのラベリングを行っておらず、縦磁化ができるだけ小さくならないようにしている。したがって、コントロールシーケンスSQ20を実行することにより、ラベリング領域SLから、縦磁化の大きい血液b0が流出し、イメージング領域SBに流入する。また、シーケンスセグメントBiでは、コントロールシーケンスSQ20を実行した後、データ収集シーケンスDAQiの前に、シーケンスSQ3が実行される。シーケンスSQ3は、領域R2内の流速の遅い血液(例えば、血液b2)の位相はあまり分散しないが、領域R2内の流速の速い血液(例えば、血液b1)の位相を十分に分散するように構成されている。したがって、データ収集シーケンスDAQiが実行される前に、細い血管を流れる血液b2の磁化を、太い血管を流れる血液b1の磁化に対して十分に大きくすることができる。
更に、シーケンスセグメントBiでは、背景組織(例えば、白質、灰白質)の信号を小さくするためのパルスセットInv1およびInv2が実行されるので、データ収集シーケンスDAQiが実行される前に、背景組織の縦磁化を小さくすることもできる。
このように、シーケンスセグメントBiでは、コントロールシーケンスSQ20が実行される。コントロールシーケンスSQ20は、ラベリング領域SL内の血液の縦磁化ができるだけ小さくならないようにしている。したがって、イメージング領域SBには、縦磁化の大きい血液が流入する。そして、データ収集シーケンスDAQiの実行前に、シーケンスSQ3が実行される。シーケンスSQ3により、太い血管を流れる血液b1の位相が十分に分散される。また、パルスセットInv1およびInv2により、背景組織の信号を低減することができる。したがって、シーケンスセグメントBiを実行することにより、細い血管を流れる血液b2の信号値が、背景組織および太い血管を流れる血液b1の信号値よりも大きいイメージングデータが得られる。
したがって、本形態では、本スキャンMSを実行することにより、シーケンスセグメントAiによるイメージングデータと、シーケンスセグメントBiによるイメージングデータとを得ることができる。上記のように、シーケンスセグメントAiで得られるイメージングデータでは、背景組織および太い血管を流れる血液b1の信号値だけでなく、細い血管を流れる血液b2の信号値も小さい(図19参照)。一方、シーケンスセグメントBiで得られるイメージングデータでは、細い血管を流れる血液b2の信号値は、背景組織および太い血管を流れる血液b1の信号値よりも十分に大きい(図23参照)。したがって、シーケンスセグメントAiおよびBiのイメージングデータを差分することにより、血液b2の信号はキャンセルされないが、背景組織の信号値をキャンセルすることができ、更に、太い血管を流れる血液b1の信号値もキャンセルすることができる。このため、背景組織および太い血管を流れる血液b1に対して、細い血管を流れる血液b1の信号が十分に大きい高品質の灌流画像を得ることが可能となる。
以下に、ステップST4において灌流画像を生成するために実行されるフローの一例について説明する。
図24は、ステップST4のフローの一例の説明図である。
ステップST41では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSを実行する場合、制御部5(図1参照)は、シーケンスセグメントA1〜AmおよびB1〜BmのRFパルスのデータ(フリップ角の情報(0°<α<90°)などを含むデータ)を送信器6に送り、シーケンスセグメントA1〜AmおよびB1〜Bmの勾配パルスのデータ(勾配パルスの面積の情報などを含むデータ)を勾配磁場電源7に送る。送信器6は、制御部5から受け取ったデータに基づいてRFコイル24に電流を供給し、勾配磁場電源7は、制御部5から受け取ったデータに基づいて勾配コイル23に電流を供給する。したがって、RFコイル24はRFパルスを印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加する。本スキャンMSが実行されることにより、イメージング領域SBから、MR信号が発生する。MR信号は受信コイル4(図1参照)で受信される。受信コイル4は、MR信号を受信し、MR信号の情報を含むアナログ信号を出力する。受信器8は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を行い、信号処理により得られたデータを処理装置9に出力する。
したがって、シーケンスセグメントA1〜AmおよびB1〜Bmの各々に対して、画像を再構成するためのイメージングデータを得ることができる。図25に、本スキャンMSにより得られたイメージングデータを概略的に示す。図25では、シーケンスセグメントAiにより得られたイメージングデータがDAi(i=1〜m)で示されており、一方、シーケンスセグメントBiにより得られたイメージングデータがDBi(i=1〜m)で示されている。本スキャンMSを実行した後、ステップST42に進む。
図26は、ステップST42の説明図である。
ステップST42では、画像生成手段91が、イメージングデータDAiとイメージングデータDBiとを差分し、差分データDIiをフーリエ変換する。これにより、イメージング領域SBの灌流画像を得ることができる。
以上説明したように、本形態では、シーケンスSQ3が用いられている。シーケンスSQ3を用いることにより、高品質な灌流画像を得ることができるという効果がある。以下に、シーケンスSQ3を用いることにより、高品質な灌流画像が得られる理由について説明する。尚、この理由を説明するため、以下では、シーケンスSQ3を用いていないセグメントの例(以下、「比較例」と呼ぶ)について説明し、比較例と本形態との相違点を明確にすることにより、シーケンスSQ3の効果について説明する。
図27は、本形態のシーケンスセグメントAiと、比較例のシーケンスセグメントAiとを示す図であり、図28は、本形態のシーケンスセグメントBiと、比較例のシーケンスセグメントBiとを示す図である。先ず、図27について説明する。
図27を参照すると、比較例のシーケンスセグメントAiは、シーケンスSQ3を備えておらず、シーケンスSQ3の代わりに、Inf SatシーケンスSQ31を有している。また、データ収集シーケンスDAQiの直前に、DWDE(diffusion-weighted driven-equilibrium)シーケンスSQ35が備えられている。
Inf SatシーケンスSQ31は、ラベリング領域SLとイメージング領域SBとで挟まれた領域R3を流れる血液の縦磁化を小さくするためのシーケンスである。DWDEシーケンスSQ35は、RFパルス(90°パルスおよび180°パルス)と勾配パルス(G1、G2、およびG3)とを有している。DWDEシーケンスSQ35は、流速の遅い血液の磁化はできるだけ小さくならないが、流速の速い血液の磁化はできるだけ小さくなるように構成されたシーケンスである。
次に、図28について説明する。図28は、本形態のシーケンスセグメントBiと、比較例のシーケンスセグメントBiとを示す図である。
図28を参照すると、比較例のシーケンスセグメントBiは、シーケンスSQ3を備えておらず、シーケンスSQ3の代わりに、Inf SatシーケンスSQ31を有している。また、データ収集シーケンスDAQiの直前に、DWDEシーケンスSQ35が備えられている。
本形態におけるシーケンスセグメントAiおよびBiの代わりに、比較例のシーケンスセグメントAiおよびBiを実行しても、イメージングデータDAiおよびDBi(図25参照)を得ることができる。したがって、イメージングデータDAiおよびDBiの差分データを求め、差分データをフーリエ変換することにより、背景組織および太い血管を流れる血液b2に対して、細い血管を流れる血液b1の信号が大きい灌流画像を得ることができる。しかし、比較例のシーケンスセグメントAiおよびBiを用いた場合、以下のような問題がある。
図29は、比較例の問題点の説明図である。
比較例では、データ収集シーケンスDAQiの前に、DWDEシーケンスSQ35が実行される。DWDEシーケンスSQ35は、90°パルスおよび180°パルスを有している。したがって、DWDEシーケンスSQ35の90°パルスが印加された場合、イメージング領域SB内のどの部分であっても、理想的には、血液のスピンは90°だけフリップするはずである。しかし、実際には、B1不均一により、イメージング領域SB内では、血液のスピンは必ずしも90°フリップするわけではなく、90°よりも小さい角度(例えば、80°)だけフリップするものもあれば、90°よりも大きい角度(例えば、100°)だけフリップするものも存在する。例えば、図29の下側に示すように、90°パルスを印加したが、領域r1、r2、r3、およびr4において、実際のフリップ角が、それぞれ90°、80°、100°、および100°になることがある。
また、DWDEシーケンスSQ35の180°パルスが印加された場合、イメージング領域SB内のどの部分であっても、理想的には、血液のスピンは180°だけフリップするはずである。しかし、実際には、B1不均一により、イメージング領域SB内では、血液のスピンは必ずしも180°フリップするわけではなく、180°よりも小さい角度(例えば、160°)だけフリップするものもあれば、180°よりも大きい角度(例えば、200°)だけフリップするものも存在する。例えば、図29の下側に示すように、180°パルスを印加したが、領域r1、r2、r3、およびr4において、実際のフリップ角が、それぞれ180°、160°、200°、および200°になることがある。したがって、イメージング領域SB内において、B1不均一により実際のフリップ角のばらつきが大きくなり、イメージング領域SB内において、血液b1の信号の均一な抑制効果を得ることが難しいという問題がある。
これに対し、本形態では、DWDEシーケンスSQ35は使われておらず、シーケンスSQ3が使用されている。シーケンスSQ3では、RFパルスのフリップ角αは0°<α<90°を満たすように設定されている。例えば、α=12°である。したがって、シーケンスSQ3のRFパルスのフリップ角αは、DWDEシーケンスSQ35のRFパルスのフリップ角(90°および180°)よりも小さい値に設定されている。このため、本形態では、B1不均一によるイメージング領域SB内のフリップ角のばらつきを小さくすることができるので、イメージング領域SB内において、血液b1の信号をできるだけ均一に抑制することができる。
また、シーケンスSQ3の勾配パルスGzの面積は、流速の遅い血液b2の位相はできるだけ分散せず、流速の速い血液b1の位相はできるだけ分散するように設定されている。したがって、シーケンスセグメントBiを実行する場合、流速の遅い血液b2を流速の速い血液b1よりも十分に高信号にすることができる。このため、シーケンスセグメントAiにより得られたイメージングデータDAiと、シーケンスセグメントBiにより得られたイメージングデータDBiとを差分し、差分データをフーリエ変換することにより、高品質な灌流画像を得ることができる。
また、本形態では、シーケンスSQ3のRFパルスwの位相は、式(1)を満たすように設定されている。したがって、RFパルスwの位相は、Δφずつ増加する。RFパルスwの位相をΔφずつ増加させることにより、灌流画像に現れるアーチファクトを低減することができる。尚、シーケンスSQ3のRFパルスwの位相をΔφずつ増加させずに、RFパルスwの位相がランダムに変更するようにしてもよい。ただし、RFパルスwをランダムに変更した場合、灌流画像に現れるアーチファクトを低減することが難しい場合があるので、RFパルスwの位相は式(1)を満たすように設定することが望ましい。
尚、本形態では、シーケンスSQ3は、パルスセットInv1とInv2との間に設けられている。しかし、シーケンスSQ3は、必ずしもパルスセットInv1とInv2との間に設ける必要はない。図30は、シーケンスSQ3を、パルスセットInv1とInv2との間に設けるのではなく、パルスセットInv2とデータ収集シーケンスDAQiとの間に設けた例を示す図である。尚、図30では、シーケンスセグメントAiにおいて、パルスセットInv1とInv2との間には、Inf SatシーケンスSQ31(第7のシーケンスに相当する)が設けられており、シーケンスセグメントBiにおいて、パルスセットInv1とInv2との間には、Inf SatシーケンスSQ31(第8のシーケンスに相当する)が設けられている。図30でも、シーケンスSQ3が用いられているので、血流の抑制効果のばらつきが低減された灌流画像を得ることができる。
また、本形態では、シーケンスセグメントAiおよびBiの各々は、1つのシーケンスSQ3を有している。しかし、シーケンスセグメントAiおよびBiの各々に、2つ以上のシーケンスSQ3が含まれていてもよい。図31は、シーケンスセグメントAiおよびBiの各々に、2つのシーケンスSQ3が含まれている例が示されている。シーケンスセグメントAiおよびBiの各々に、複数のシーケンスSQ3を設けることにより、より高品質な灌流画像を得ることが可能となる。
本形態では、パルスセットInv1およびInv2は、領域R1を選択的に励起するために勾配パルスGinを有している(図13参照)。しかし、勾配パルスGinを備えずに、RFパルスPinのみを用いて、領域R1を非選択的に励起してもよい。また、本形態では、RFパルスPinは、90°パルスであるが、背景組織の信号を低減できるのであれば、90°パルスとは異なるRFパルス(例えば、85°パルス)を用いてもよい。更に、十分な品質の灌流画像を得ることができるのであれば、パルスセットInv1およびInv2の両方又は一方を備えなくてもよい。
本形態では、シーケンスセグメントAiにより得られたイメージングデータDAiと、シーケンスセグメントBiにより得られたイメージングデータDBiとを差分し、差分データをフーリエ変換することにより、灌流画像を得ている。しかし、シーケンスセグメントAiにより得られたイメージングデータDAiをフーリエ変換することにより画像aを生成するとともに、シーケンスセグメントBiにより得られたイメージングデータDBiをフーリエ変換することにより画像bを生成し、画像aと画像bとを差分することにより、灌流画像を得てもよい。
本形態のシーケンスSQ3で使用されているRFパルスのフリップ角α〜α(図14参照)は、0°<α<90°の条件を満たすのであれば、同じ値に設定されてもよいし、異なる値に設定されてもよい。しかし、より高品質な灌流画像を得るためには、フリップ角α〜αは同じ値であることが望ましい。αは、例えば、7°〜12°の間の角度に設定することができる。また、より高品質な灌流画像を得るためには、シーケンスセグメントAiのシーケンスSQ3のRFパルスのフリップ角αは、シーケンスセグメントBiのシーケンスSQ3のRFパルスのフリップ角αと同じ値に設定することが望ましい。ただし、十分な品質の灌流画像が得られるのであれば、シーケンスセグメントAiのシーケンスSQ3のRFパルスのフリップ角αは、必ずしも、シーケンスセグメントBiのシーケンスSQ3のRFパルスのフリップ角αと同じ値でなくてもよい。
本形態では、シーケンスセグメントAiとシーケンスセグメントBiとが交互に現れるように本スキャンMSが実行されている。しかし、シーケンスセグメントAiとシーケンスセグメントBiの順序は、シーケンスセグメントAiとシーケンスセグメントBiとが交互に現れる順序に限定されることはなく、任意の順序が可能である。例えば、シーケンスセグメントA1〜Amを実行した後に、シーケンスセグメントB1〜Bmを実行してもよい。
本形態では、シーケンスSQ3のパルスセットVのRFパルスwは非選択パルスであり、非選択パルスのRFパルスwを用いて領域R2(図14参照)を励起している。しかし、RFパルスwは、領域R2を選択励起するための選択パルスであってもよい。また、十分な品質の灌流画像を得ることができるのであれば、イメージング領域SBは励起するが、ラベリング領域SLは励起しないように、RFパルスwを構成することも可能である。
1 MR装置
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 制御部
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 処理装置
10 記憶部
11 操作部
12 表示部
13 被検体
21 収容空間
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 RFコイル
91 画像生成手段
92 設定手段

Claims (9)

  1. 血液を含む第1の領域の画像を取得するための磁気共鳴装置であって、
    血液が前記第1の領域に流入する前に、前記血液のスピンのラベリングを行うための第2の領域を設定する設定手段と、
    前記第1の領域の画像を取得するためのイメージングシーケンスを実行するスキャン手段であって、
    前記第2の領域内の血液のスピンのラベリングを行う第1のシーケンスと、
    前記第1のシーケンスの後に実行される第2のシーケンスであって、前記第1の領域を励起するための第1のRFパルスと、前記第1の領域を流れる第1の血液のスピンの位相が、前記第1の血液よりも遅い流速で前記第1の領域を流れる第2の血液のスピンの位相よりも分散するように、前記第1の領域内の血液のスピンの位相を分散させるための第1の勾配パルスとを含む第1のパルスセットを複数有する第2のシーケンスと、
    前記第2のシーケンスが実行された後で前記第1の領域のデータを収集するための第3のシーケンスと、
    を含む第1のシーケンスセグメント、および
    前記第2の領域内の血液のスピンのラベリングを行わない第4のシーケンスと、
    前記第4のシーケンスの後に実行される第5のシーケンスであって、前記第1の領域を励起するための第2のRFパルスと、前記第1の領域を流れる第3の血液のスピンの位相が、前記第3の血液よりも遅い流速で前記第1の領域を流れる第4の血液のスピンの位相よりも分散するように、前記第1の領域内の血液のスピンの位相を分散させるための第2の勾配パルスとを含む第2のパルスセットを複数有する第5のシーケンスと、
    前記第5のシーケンスが実行された後で前記第1の領域のデータを収集するための第6のシーケンスと、
    を含む第2のシーケンスセグメント、
    を有するイメージングシーケンスを実行するスキャン手段と、
    前記スキャン手段を制御する制御部と、
    前記イメージングシーケンスを実行することにより得られたデータに基づいて、前記第1の領域の画像を生成する画像生成手段と、
    を有し、
    前記制御部は、
    前記第1のシーケンスセグメントにおいて、前記第2のシーケンスが有する複数の第1のパルスセットの各々の前記第1のRFパルスのフリップ角が0°よりも大きく90°よりも小さい値を有し、
    前記第2のシーケンスセグメントにおいて、前記第5のシーケンスが有する複数の第2のパルスセットの各々の前記第2のRFパルスのフリップ角が0°よりも大きく90°よりも小さい値を有するように、前記スキャン手段を制御する、磁気共鳴装置。
  2. 前記制御部は、
    前記複数の第1のパルスセットの前記第1のRFパルスが同じフリップ角を有するとともに、前記複数の第2のパルスセットの前記第2のRFパルスが同じフリップ角を有するように、前記スキャン手段を制御する、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
  3. 前記制御部は、
    前記第1のRFパルスのフリップ角と、前記第2のRFパルスのフリップ角が同じ角度になるように、前記スキャン手段を制御する、請求項2に記載の磁気共鳴装置。
  4. 前記制御部は、
    前記複数の第1のパルスセットのうち、i番目に実行される第1のパルスセットに含まれる前記第1のRFパルスの位相φが、以下の式で表される値を有するように、前記スキャン手段を制御する、請求項3に記載の磁気共鳴装置。

    φ=φ+(i−1)Δφ
    ここで、φ:1番目に実行される第1のパルスセットに含まれる前記第1のRFパルスの位相
    Δφ:i−1番目に実行される第1のパルスセットに含まれる前記第1のRFパルスの位相と、i番目に実行される第1のパルスセットに含まれる前記第1のRFパルスの位相との位相差
  5. 前記制御部は、
    前記複数の第2のパルスセットのうち、i番目に実行される第2のパルスセットに含まれる前記第2のRFパルスの位相φが、以下の式で表される値を有するように、前記スキャン手段を制御する、請求項4に記載の磁気共鳴装置。

    φ=φ+(i−1)Δφ
    ここで、φ:1番目に実行される第2のパルスセットに含まれる前記第2のRFパルスの位相
    Δφ:i−1番目に実行される第2のパルスセットに含まれる前記第2のRFパルスの位相と、i番目に実行される第2のパルスセットに含まれる前記第2のRFパルスの位相との位相差
  6. 前記制御部は、
    前記第1のシーケンスと前記第2のシーケンスとの間に、前記第1の領域の背景組織の縦磁化を小さくするためのRFパルスが印加されるとともに、
    前記第4のシーケンスと前記第5のシーケンスとの間に、前記第1の領域の背景組織の縦磁化を小さくするためのRFパルスが印加されるように、前記スキャン手段を制御する、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  7. 前記制御部は、
    前記第2のシーケンスと前記第3のシーケンスとの間に、前記第1の領域の背景組織の縦磁化を小さくするためのRFパルスが印加されるとともに、
    前記第5のシーケンスと前記第6のシーケンスとの間に、前記第1の領域の背景組織の縦磁化を小さくするためのRFパルスが印加されるように、前記スキャン手段を制御する、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  8. 前記制御部は、
    前記第1のシーケンスと前記第2のシーケンスとの間に、前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域を流れる血液の縦磁化を小さくするための第7のシーケンスが実行され、
    前記第4のシーケンスと前記第5のシーケンスとの間に、前記第3の領域を流れる血液の縦磁化を小さくするための第8のシーケンスが実行されるように、前記スキャン手段を制御する、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
  9. 前記第1のRFパルスおよび前記第2のRFパルスは、前記第1の領域と前記第2の領域とを含む領域を励起する、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。


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