JP6599665B2 - 気体取込通気シートを用いた防水工法 - Google Patents
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Description
該通気緩衝シートは、人の歩行等により加えられる力や、コンクリートの収縮・膨張により生じる応力等を緩衝する機能を有すると共に、水蒸気等の気体を横方向に通気させる機能を有する。
上記した通り、通気緩衝シートの上から塗膜防水材を塗布して防水層を形成する必要性から、該通気緩衝シートの上面には通気緩衝シート基材が用いられている。
また、通気緩衝シートの中には、コンクリート下地に接着される最下面に粘着層を有し、該粘着層には通気性がないので、該粘着層を下面全面ではなく一部にのみ形成し、粘着剤層が形成されていない部分と下地との間の空間を気体の通気路として確保した通気緩衝シートも知られている(例えば、特許文献2、3)。
しかしながら、10m四方(10m×10m)の正方形に1個設けるか、例えば2m×50mの長方形に1個設けるかで、その脱気能力は大きく異なることになり、上記規定通りに脱気筒が設けられていても脱気筒の設置個所によっては、局所的な浮き上がり(膨れ)が生じていた。
また、脱気筒は、その目的から屋上等の中程に、通常は複数個設けられるため、歩行の妨げになる上に場所的に外観を損ねるものであった。更に、雪の積もった屋上で子供が遊んでいて、脱気筒により怪我をする事故も起こっていた。
コンクリートの線膨張率は、約1.2×10−5[K−1]であることから、前記温度差(80℃)で、長さ1mに対して約1mm程度伸縮することになる。すなわち、押さえコンクリートの膨張と収縮によって、押さえコンクリートに例えば3mピッチに設けられた目地の幅は、夏場と冬場で±3mmの膨張と収縮を繰り返すことになる。
また、屋上等の特に改修時には、該目地を覆って防水性を確保するため、アルミ製金属板目地カバー等の覆いテープを用いることも知られている(例えば、特許文献4)。
そこで、コンクリートから放出される水蒸気等の脱気に充分に適応し、外観的にも機能的にも優れた防水工法の開発が望まれていた。
また、その課題は、下地コンクリートから放出される水蒸気等の気体を好適に大気中に逃し、防水層に局所的な浮き上がり(膨れ)を生じなくする改修時の防水工法を提供することにある。
更には、下地コンクリートが施されている屋上等では、一定の面積当たりに1個は必ず設置しなければならない脱気筒の設置位置に改良を加え、脱気筒についての「歩行や外観における問題点」をなくした防水工法、及び、該防水工法に用いられる材料を提供することにある。
また、一定面積に1個は必要とされ、従って、通常は屋上等の中程付近にも設けなくてはならなかった脱気筒の設置位置に関しても改善できることを見出して、本発明を完成するに至った。
該目地の上部に存在する覆いテープの一部のみに、覆いテープ通気孔又は覆いテープ隙間を設け、その部分の上に、気体取込通気シートを載せてから、通気緩衝シートを設けることを特徴とする防水工法を提供するものである。
その結果、歩行等に障害を与えず、防水層が破損して防水性を損なうことがなく、外観的にも問題を生じさせない、屋上等の防水工法、補修方法及び被防水面(床面)を提供することができる。
該目地には、通常は施工時(建築時)にクッションの役割を果たす目地材が充填されている。防水層の改修時には、前記した通り、既存の目地(の一部)を通常は除去した後、目地の上部を覆いテープで覆って、下地コンクリートの熱膨張・熱収縮に対応しつつ、目地部分の平滑性と防水性を確保する方法が用いられる。
本発明の防水工法によれば、上記覆いテープを必須のものとすることによって、上記のようにしてできた「目地と該覆いテープで囲まれた空間」を、コンクリート下地から発生した水蒸気等の気体の通路として利用できる。
なお、屋上等の壁面(上がり部)13に脱気筒を設ける方法は従来からあったが、脱気の効率が極めて悪いため、屋上等の壁面(立ち上がり部)に脱気筒を設ける方法が使用されることは少なかった。
すなわち、従来は、脱気の効率を良くするため、脱気筒が一定の面積(50m2〜100m2)当たり1個は必要とされていたところ、本発明の防水工法によれば、脱気の効率が良いので、脱気筒を壁面(立ち上がり部)13にだけ設ければよいので、歩行や外観における問題点がなくなると共に安全性が向上する。
本発明の防水工法は、下地コンクリート11の目地12の上部を覆いテープ21で覆った後、該下地コンクリート11と該覆いテープ21の上部に、少なくとも粘着層45と通気路47とを有する通気緩衝シート41を設け、その上から塗膜防水材を塗布する防水工法であって、
該目地12の上部に存在する覆いテープ21の一部のみに、覆いテープ通気孔25又は覆いテープ隙間27を設け、その部分の上に、気体取込通気シート31を載せてから、通気緩衝シート41を設けることを特徴とする。
該目地12には、通常は目地材が充填され、目地キャップで目地12がカバーされ、防水性を確保している。該目地材の上部は、夏は目地12の両脇のコンクリートに押され凸状になり、冬は目地12の両脇のコンクリートに引っ張られて凹状になる場合がある。
例えば、目地材としては、エラスタイト系目地材、「独立気泡型の発泡ポリプロピレン、ブチルゴム、合成ゴム(EPDM)、ステンレス、ガラス繊維、塩化ビニル等を組み合わせた目地材」(例えば、株式会社タイセイ社製、商品名「エキスパンタイ」)、発泡ポリエチレン系目地材等が知られているが、改修時には、目地キャップを取り除いた後、これらの目地材を取り除き(好ましくは、ほぼ全部を取り除き)、該目地12の上部に覆いテープ21を設けることが好ましい。
すなわち、本発明の防水工法を改修時に使用し、気体の流通が確保できれば既存の目地材を除去してもしなくてもよい。
本発明の防水工法を改修時に使用し、塩化ビニル等でできた目地キャップを撤去し、好ましくは目地12内に充填されている前記目地材を実質的に全て撤去して、気体の流通を確保することが、本発明の前記効果を発揮できる点から好ましい態様である。
本発明の防水工法においては、下地コンクリート11の目地12の上部を覆いテープ21で覆う。目地12に目地材等を充填してコンクリートの膨張・収縮を吸収すると共に防水性を確保することに代えて、目地12の上部を覆いテープ21で覆ってコンクリートの膨張・収縮を吸収すると共に防水性を確保する。そのことによって、目地12と覆いテープ21で囲まれた空間が気体の通路として機能し本発明が成立する。
その際、覆いテープ接着層22を離型テープPが保護している場合には、該離型テープPを剥離してから目地12の上から敷設する。
補修の場合で、既存の目地キャップがある場合には撤去する。また、覆いテープ21を施設する前に、下地をプライマー処理することが好ましい。該プライマー処理は公知の方法が好適に用いられる。
該横幅が短過ぎると、コンクリート等が伸縮した際に受ける歪みが大きくなったり、目地12を完全に覆えなくなったり、施工後に剥離したりする場合がある。逆に、長過ぎると、材料のコストアップになり無駄であったり、作業性が悪くなったりする場合がある。
すなわち、下から順に、少なくとも、覆いテープ接着層22、「複数の板状部材23又は複数の線状部材」が並列してなる部材列、及び、覆いテープ基材24を有し、「該板状部材23又は該線状部材」の最長軸が、該テープ状基材の長手方向に対して略垂直に、かつ、該板状部材23同士又は該線状部材同士が互いに接触することなく間隔を開けて、並列して該テープ状基材上に貼り付けられてなるもの(以下、この覆いテープ21を「覆いテープA」と略記する)が好適に使用できる。
また、株式会社秀カンパニーから、「メジキーパー」(登録商標)として市販されているものも好適に使用できる。
図2、3は、覆いテープ接着層22を、熱融着、溶液塗布等で付与した覆いテープ(図10(a)の覆いテープ)を用いた場合を示している。
図10(a)は、覆いテープ接着層22が覆いテープ基材24に接着剤等で付与された態様を示し、図10(b)は、覆いテープ接着層22を有する両面粘着テープRを付与することによって、覆いテープ接着層22が付与された態様を示す。該両面粘着テープRは、図10(b)に示したように、下から順に、覆いテープ接着層22、両面粘着テープ支持層28、両面粘着テープ板状部材側接着層29が積層されている。
覆いテープ接着層22の厚さが上記下限以上であると、下地への粘着力が向上し、柔らかい接着層の厚みによって、下地の動きに追従でき、熱収縮・熱膨張に伴う直線状隙間の幅の変化に追従できる。また、縦方向(覆いテープ21の長手方向)の熱収縮・熱膨張に伴う膨れや剥離を防止できる。
一方、覆いテープ接着層22の厚さが上記上限以下であると、覆いテープ21全体の厚さが抑えられ、全体の厚さによる段差が少なくなり、塗膜防水材の塗布が容易で、また最終的に防水塗膜に段差ができ難い。
該長さが短過ぎると、コンクリート等が伸縮した際に板状部材23が受ける歪みの割合が大きくなったり、覆いテープ接着層22の幅も短くした場合に目地12を完全に覆えなくなったりする場合がある。逆に、長過ぎると、材料のコストアップになり無駄であったり、覆いシート材自体の幅が大きくなり過ぎて作業性が悪くなったりする場合がある。
薄過ぎると、強度が低下したり、施工後の歩行感が悪くなったりする場合がある。逆に、厚過ぎると、材料のコストアップにつながり無駄であり、施工後に目地12の両脇に凸部ができ、その膨らみや段差が目立つ場合がある。
該間隔が短過ぎると、はさみ、カッター等の切断工具が、該隙間に入らず覆いテープ21が切断できなくなったり、切断工具が接触することで板状部材23に傷がついたりする場合がある。また、覆いテープ21をロール状に巻くことが困難になったり、材料のコストアップになったりする場合がある。
逆に、該間隔が長過ぎると、間隔部分は切断可能程度に柔らかいので、強度的に十分でなくなり、その結果、防水性能の低下、施工後の歩行感の悪化等につながり、また、目地12が目立つ場合がある。
また、材質が不織布の場合は、15g/m2以上120g/m2以下が好ましく、20g/m2以上80g/m2以下がより好ましく、40g/m2以上70g/m2以下が特に好ましい。
また、材質が樹脂フィルムの場合は、8μm以上120μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下が特に好ましい。
一方、覆いテープ基材24の厚さが上記上限以下であると、該覆いテープ基材24の厚さによる段差が少なくなり、塗膜防水材の塗布が容易となり、また最終的に防水塗膜に段差ができ難い。
また、田島ルーフィング株式会社から、「メジパス」として市販されているものや、株式会社タイセイから、「メジフィット」(登録商標)として市販されているものも使用できる。
覆いテープ接着層22の厚さが上記範囲であると、前記した覆いテープAの場合と同様の効果を発揮する。
薄過ぎると、強度が低下したり、施工後の歩行感が悪くなったりする場合がある。逆に、厚過ぎると、材料のコストアップにつながり無駄であり、施工後に目地12の両脇に凸部ができ、その膨らみや段差が目立つ場合がある。
また、覆いテープBにおける金属層26の材質としては、鉄、ブリキ、トタン、アルミニウム等が、強度、コスト等の点から特に好ましい。
本発明の防水工法では、目地12の上部に存在する覆いテープ21の一部のみに、覆いテープ通気孔25又は覆いテープ隙間27を設け、その部分の上に、気体取込通気シート31を載せてから、通気緩衝シート41を設けることを特徴とする。
すなわち、覆いテープ21の所々に、覆いテープ通気孔25や、覆いテープ21のない覆いテープ隙間27を設け、それをカバーするように気体取込通気シート31を載せてから通気緩衝シート41を設ける。
覆いテープ21に覆いテープ通気孔25を開ける時期は、特に限定はないが、覆いテープ21で目地12を覆った後に覆いテープ通気孔25を開けることが作業性の点から好ましい。
覆いテープ通気孔25を設ける場合、覆いテープ21としては、前記した覆いテープAのような態様でも、覆いテープBのような態様でもよいが、金属層26に覆いテープ通気孔25を開けることは容易でなく、覆いテープ基材24に覆いテープ通気孔25を開けることは容易なので、覆いテープ通気孔25は、覆いテープAのような態様に適用することが好ましい(図2、3、6及び8(b))。
覆いテープ通気孔25の「覆いテープ幅方向の長さ」は、覆いテープ21の左右の縁から、0.5cm〜3cmだけ中に入ったところが好ましく、1cm〜2cmだけ中に入ったところが特に好ましい。具体的には、覆いテープ21の横幅にも依存するので特に限定はないが、2cm〜12cmが好ましく、4cm〜10cmがより好ましく、5cm〜8cmが特に好ましい。
一方、覆いテープ通気孔25の「覆いテープ幅方向の長さ」が、上記上限以下であると、覆いテープ通気孔25を設けることによる覆いテープ21の強度減少が認められない。
覆いテープ通気孔25の「覆いテープ長手方向の長さ」が、上記下限以上であると、十分に気体が覆いテープ通気孔25から目地12に流れ込む。
一方、覆いテープ通気孔25の「覆いテープ長手方向の長さ」が、上記上限以下であると、覆いテープ通気孔25を設けることによる、覆いテープ21の強度減少や防水性の劣化が認められない。
覆いテープ隙間27を設ける場合、覆いテープ21としては、前記した覆いテープAのような態様でも、覆いテープBのような態様でもよいが、覆いテープAでは、前記した覆いテープ通気孔25を設けることが好ましいので、覆いテープ隙間27は、覆いテープBのような態様の方に適用することが好ましい(図4、5)。
また、覆いテープBでは、長手方向の熱膨張・収縮を吸収するため、また作業性の点から、通常、敷設時に覆いテープ21をある長さで切断し、所々に膨張緩衝隙間を設けるが、それを覆いテープ隙間27として利用できる。その点から、覆いテープ隙間27は、覆いテープBのような態様に適用することが好ましい(図4、5)。
また、目地に沿っているか否かや目地に平行か否かとは関係なく、テープ通気孔から最も近いテープ通気孔までの直線距離(テープ通気孔間の最短直線距離)を、好ましくは1m〜20mの範囲、より好ましくは1.3m〜16mの範囲、特に好ましくは2m〜12mの範囲、更に好ましくは4m〜10mの範囲になるように設定し、テープ通気孔25や気体取込通気シート31を設けることが望ましい。
また、テープ通気孔の下地の面積当たりの存在頻度は、(3m×3m=)9m2の押さえコンクリート4個分を一辺とした正方形(面積12m×12m=144m2)に、1個〜4個が好ましく、1.3個〜3個がより好ましく、1.5個〜2.3個が特に好ましく、図12(b)に示したように2個が最も好ましい。
図11では、目地で囲まれた1個の区画9m2に、それぞれ1/2だけが占めるテープ通気孔(気体取込通気シート)が4個あるので、9m2当たりに、テープ通気孔(気体取込通気シート)が、((1/2)×4=)2個あることになる。
図12(a)は、一辺3mの押さえコンクリート3個分を一辺とした正方形の中に、その1/2が含まれるテープ通気孔が4個あるので、テープ通気孔25(気体取込通気シート31)の頻度は、81m2当たり(1/2)×4=2個である。
また、テープ通気孔25(気体取込通気シート31)間の「目地に平行な直線上の最短距離」は9mであり、「目地とは関係のない最短直線距離」は、4.5m×21/2=6.3mである。
また、テープ通気孔25(気体取込通気シート31)間の「目地に平行な直線上の最短距離」は12mであり、「目地とは関係のない最短直線距離」は、6m×21/2=8.5mである。
本発明の防水工法では、上記したテープ通気孔(25又は27)の部分の上に、気体取込通気シート31を載せてから、通気緩衝シート41を設けることを特徴とする。
気体取込通気シート31は、上記したテープ通気孔の全部をカバーするように載せることが、テープ通気孔の全部を、コンクリートから出る気体の通気に有効活用できる点から好ましい。
気体取込通気シート31がないと、上記したテープ通気孔の面積しか、気体の取り込みに役立たない場合がある。
テープ通気孔の部分のちょうど上部に、通気緩衝シート41の通気路47が偶然通過(接する)とは限らない(その可能性は低い)。しかし、その場合でも、気体取込通気シート31があると、気体取込通気シート31の上の何処かに、通気緩衝シート41の通気路47が通過して(接して)いさえすれば、コンクリートから出る気体は、テープ通気孔を介して目地12に流れ、該気体による圧力を逃すことができる。
具体的には、テープ通気孔の大きさにもより、特に限定はないが、何れかの差し渡し長さが、7cm〜25cmが好ましく、8cm〜20cmがより好ましく、9cm〜13cmが特に好ましい。
何れかの差し渡し長さが、上記下限以上であると、気体取込通気シート31が十分に通気路47からの気体を取り込んで、該気体をテープ通気孔から目地12に流れ込ませることができる。
一方、上記上限以下であると、通気緩衝シート41が、覆いテープ21や下地に強く密着する。
また、気体取込通気シート31の大きさは、通気緩衝シート41の通気路47のピッチ(周期)や幅や存在具合を見てから決めることも好ましい。
図7に、気体取込通気シート31の大きさと通気路47との関係を模式的に示した。なお、図7(a)と図7(b)(c)の縮尺は、円形の気体取込通気シート31の大きさを統一して描いたもので、同一ではない(同一とは限らない)。使用する通気緩衝シート41の通気路47の態様を見て気体取込通気シート31の大きさを決めることが好ましい。
図7(b)に示したように、通気路47が気体取込通気シート31の上部を横切っていない場合は、本発明の効果を奏し難い。また、図7(c)に示したように、通気路47が気体取込通気シート31の上部をたまたま横切っている個所があったとしても、通気緩衝シート41の配置の仕方によっては、図7(b)に示したように、通気路47が気体取込通気シート31の上部を横切っていない箇所ができるので、その箇所は本発明の効果を奏し難い。
従って、気体取込通気シート31の大きさは、通気路47のピッチより大きいことが、上記点から好ましい。言い換えると、幅Lの通気路47を間隔Dで平行に有する通気緩衝シート41を設ける場合、上記気体取込通気シート31の差し渡し長さを、(L+D)以上に設定することが、上記点から好ましい。
また、気体取込通気シート31の厚さの上限は、施工に支障をきたさず段差(膨らみ)が目立たなければ特に限定はないが、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以下であり、更に好ましくは1.2mm以下であり、最も好ましくは0.9mm以下である。
下限が上記以上であると、通気路47を通ってくる気体を好適に吸収し、テープ通気孔を介して、目地12に好適に流せる。一方、上限が上記以下であると、気体取込通気シート31の材料が無駄にならず、また、塗膜防水層51に膨らみ・凸部・段差ができ難い。
すなわち、気体取込通気シート31は、気体取込通気シート孔32を有し、該気体取込通気シート孔32が目地12の上に位置するように該気体取込通気シート31を載せることが好ましい。
気体取込通気シート31に取り込まれた(流れ込んだ)気体は、その下に位置するテープ通気孔を介して目地12に流れ込むが、気体取込通気シート31の下面から直接目地12に流れ込んだり、気体取込通気シート孔32から目地12に流れ込んだり、気体取込通気シート孔32の内側面である気体取込通気シート断面33から出て目地12に流れ込んだりする。
気体取込通気シート31を構成する繊維としては、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維;それらの複合繊維等の有機質繊維;ガラス、金属、カーボン等の無機質繊維;等が好ましい。
また、通気性、強度、柔軟性、コスト等の点から、(好ましくはポリエステルからなる)ラッセル織の織物も特に好ましい。
本発明の防水工法では、目地12の上部を覆いテープ21で覆った後、下地コンクリート11と該覆いテープ21の上部に、通気緩衝シート41を設け、その上から塗膜防水材を塗布する。
該通気緩衝シート41は、少なくとも粘着層45と通気路47とを有するものであり、人の歩行等により加えられる力や、コンクリートの収縮・膨張により生じる応力等を緩衝する機能を有すると共に、コンクリート等から発生する水蒸気等の気体を横方向に通気させる機能を有する。
ただ、図1(a)(b)に示したような、下から、粘着層45と「粘着層45の合間の通気路47」、通気層44、補強層43、通気緩衝シート基材42を有する通気緩衝シート(以下、「通気緩衝シートE」と略記する)が特に好ましいものとして挙げられる。
また、図1(c)に示したような、下から、粘着層45と「粘着層45がない部分があってそこを気体が通過するようになっている通気路47」、緩衝層46、補強層43、通気緩衝シート基材42を有する通気緩衝シート(以下、「通気緩衝シートF」と略記する)も特に好ましいものとして挙げられる。
粘着層45は、幅方向に間隔をおいて形成された複数の帯状部分からなっていて、該間隔部分が通気路47となっていてもよく(図1)、特許文献2に記載のように、粘着層45が入り組んで配置されていて、同じく入り組んで配置された「該粘着層45がない部分」が、通気緩衝シート41の端から端まで繋がっていて通気路47となっていてもよい(図示せず)。
粘着層45の厚さは、特に限定はないが、具体的には、0.1mm〜2mmが好ましく、0.2mm〜1.5mmがより好ましく、0.3mm〜1mmが特に好ましい。
粘着層45の厚さが厚過ぎると、通気緩衝シート41の表面に凹凸が生じる場合があり、粘着層45の厚さが薄過ぎると、通気路47の断面積が十分に確保されず通気性が確保できない場合がある。
特に前記通気緩衝シートEの場合は、通気路47の幅は、1mm〜15mmが好ましく、2mm〜12mmがより好ましく、3mm〜8mmが特に好ましい。
また、特に前記通気緩衝シートFの場合は、通気層44がなく通気路47だけで通気性を確保する必要性から、通気路47の幅は、5mm〜40mmが好ましく、7mm〜33mmがより好ましく、10mm〜25mmが特に好ましい。
通気路47のピッチが粗過ぎると、通気性を十分に確保できない箇所が生じる場合や、前記した気体取込通気シート31の上を通過するように通気緩衝シート41を設けられずに気体取込通気シート31に気体を取り込ませられない場合がある。一方、通気路47のピッチが細か過ぎると、製造コストが高くなり過ぎる場合や、粘着層45が細切れで粘着層45の幅を十分に確保できないために接着性が十分でない場合がある。
通気緩衝シート基材42の厚さは、10μm〜100μmが好ましく、20μm〜70μmが特に好ましい。通気緩衝シート基材42によって、防水性を高めたり、塗膜防水材の塗布性を向上させたりできる。
通気層44を構成する繊維としては、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維;それらの複合繊維等の有機質繊維;ガラス、金属、カーボン等の無機質繊維;等が好ましい。
これらの中でも、耐候性、機械的強度、粘着層45との接着性等の点から、ポリエステルからなる不織布が特に好ましい。
通気層44は、薄過ぎれば通気量が低下するため、その厚さは0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。また、厚過ぎると通気緩衝シート41の厚さが大きくなり、施工がし難くなる場合がるので、通気層44の厚さは3mm以下が好ましい。
本発明は、下地コンクリート11の目地12の上部を覆いテープ21で覆った後、前記した所定の場所に、気体取込通気シート31を載せてから、該下地コンクリート11と該覆いテープ21の上部に通気緩衝シート41を設け、その上から塗膜防水材を塗布する防水工法及び防水層の改修方法である。
また、塗膜防水材を塗布する方法についても特に限定はなく公知の方法が用いられる。
前記した通り、塗膜防水層51の浮き上がり(膨れ)を防止するため、気体を縦に(大気中に)排出するために、脱気筒53を塗膜防水層51の上の所々に設置することが義務付けられている。例えば日本では、「建築工事標準仕様書JASS 8 防止工事」によって、100m2に1〜2個設置することが義務付けられている。該脱気筒53は、通常数十cmの高さを有している。
しかしながら、その設置(配置)場所によって脱気能力が大きく異なり、脱気筒53の設置個所によっては、局所的な浮き上がり(膨れ)が生じていた。
また、脱気筒53は、屋上等の中程に複数個設けられるため、歩行の妨げになる、外観を損ねる、安全性に問題がある(特に雪の積もった屋上では脱気筒53により怪我をする)等の問題もあった。
本発明では、脱気筒53を、従来通り上記のように、例えば屋上等の中程に(例えば、100m2に2個)設置してもよい。その場合、従来法より、更に、脱気の効果、すなわち浮き上がり(膨れ)防止効果が上がる。
技術的には、目地が連続的に繋がっていれば、100m2〜500m2の範囲の面積当たり1個でも、更には200m2〜1000m2の範囲の面積当たり1個でも、十分に脱気の効果(浮き上がり(膨れ)防止効果)を奏することができる。本発明によれば、現在、日本における前記規定より脱気筒の設置個数(頻度、密度)を下げることが技術的には可能である。
図13(a)も図13(b)も、JASS 8の基準に合うように、100m2に1〜2個の脱気筒53が設置されている。ただ、従来工法では、十分に脱気の効果(浮き上がり(膨れ)防止効果)を得るためには、細くなった部分14を有する床面の場合、左右それぞれに1個ずつ、計2個の脱気筒53を設置する必要があった(図13(b))。
しかしながら、本発明の防水工法の場合、細くなった部分14に存在する目地12を通って気体が自由に(圧がかからず)通過するので、一方のみに脱気筒53を設置すれば、十分に脱気の効果(浮き上がり(膨れ)防止効果)を得ることができる(図13(a))。
このように、本発明の防止工法によれば、脱気筒53の設置数を減らせるので、歩行や外観における問題点がなくなると共に安全性が向上する。
通気緩衝シート41の通気路47や通気層44に比べれば圧倒的に体積が大きい目地12内に流れ込んだ気体は、好ましくは「目地12の末端である壁面近傍」等の立ち上がり部13に設けられた脱気筒53から大気中に放出される。
本発明の別の態様は、上記の防水工法に用いられるものであり、厚さが0.3mm以上5mm以下の不織布でできたものであることを特徴とする気体取込通気シート31である。
気体取込通気シート31は、使用する所定の大きさに切断して提供してもよいし、ロール状、シート状等で提供し、施工現場で適宜切断して使用してもよい。
図8に示した加速実験装置で、浮き上がり(膨れ)の抑制を確認する実験を行った。
図8(a)に示したように、長さ49cm、幅14cm、高さ3cmの直方体の箱4個を、2cmの目地が直角に交差して形成されるように配置した。
1個の(図8では右下の)箱の上面に、直径5mmの穴をほぼ等距離に10個開けた。更に、1個の(図8では右下の)箱の中には、コンクリートから発生する水蒸気等の気体に模した空気が導入されるようにホースを導入した。
次いで、図8では一番奥の目地の末端(立ち上がり部)13に、導気テープと脱気筒53を設置した。
また、この覆いテープ通気孔25の大きさは、長辺7.5cm、短辺1.5cmの長方形であった。
ここで使用した覆いテープ21は、前記した覆いテープAのタイプのものであり、詳しくは以下の通りのものである。
次いで、覆いテープ接着層22として、幅100mm、厚さ0.35mmのブチルゴム系粘着剤をその上から貼り付けて、図2に概略断面を示したような覆いテープ21を作製した。
更に、その上から、100mm幅の離型フィルムを貼り付け、それをロール状に巻き取って覆いシート材ロールとした。そこから、49cmだけ切り出して使用した。
ここで使用した気体取込通気シート31は、材質ポリエステルで構成された、厚さ0.5mmの不織布であって、片面に粘着剤が付与されているものである。
ここで使用した通気緩衝シート41は、前記した通気緩衝シートEのタイプのものであり、(株)ダイフレックス社製の商品名「マットSB」である。
使用した通気緩衝シートは、全体の厚さ約1.2mm、通気路の幅3mm、通気路の幅(粘着層の厚さ)約0.5mm、通気層の厚さ約0.3mmであった。
この流量は、通常コンクリートから発生する水蒸気等の気体の発生速度の、約1万倍以上であり、この試験面積と実際の施工面の面積の相違を加味しても、本発明の防水工法が有効であることが示された。
また、試験中、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)は全く見られなかった。
実施例1で使用した覆いテープ21を市販の覆いテープ(株式会社秀カンパニー製の「メジキーパー」(登録商標))に代えた以外は実施例1と同様にして試験をしたところ、実施例1と同様の結果が得られた。
すなわち、導入した空気は、抵抗なく(圧力の上昇もなく)目地12を通って脱気筒53から大気中に放出され、試験中、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)は見られなかった。
実施例1で使用した覆いテープ21を、株式会社タイセイ社製、「メジフィット」(登録商標)に代え、覆いテープ通気孔25を開ける代わりに、1.5cm幅の覆いテープ隙間27を1か所設けた以外は実施例1と同様にして試験をしたところ、実施例1と同様の結果が得られた。
すなわち、導入した空気は、抵抗なく(圧力の上昇もなく)目地12を通って脱気筒53から大気中に放出され、試験中、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)は見られなかった。
実施例1で使用した通気緩衝シート41を、前記した通気緩衝シートFのタイプの日本特殊塗料(株)社製の商品名「タックシートS」に代えた以外は実施例1と同様にして試験をしたところ、実施例1と同様の結果が得られた。
すなわち、導入した空気は、抵抗なく(圧力の上昇もなく)目地12を通って脱気筒53から大気中に放出され、試験中、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)は見られなかった。
実施例1で使用した気体取込通気シート31を、気体取込通気シート孔32のないものに変更した以外は、実施例1と同様に試験をした。
導入した空気は、実施例1に比べると若干の抵抗の上昇はあったが、殆ど抵抗なく(圧力の上昇もなく)目地12を通って脱気筒53から大気中に放出され、本発明の防水工法が有効であることが示された。
また、試験中、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)は全く見られなかった。
覆いテープ通気孔25を設けず、従って気体取込通気シート31も設けず、それ以外は実施例1と同様にして試験をしたところ、送り込んだ空気は、抵抗があって(圧力の上昇があって)、右下の箱内に流入しなかった。空気は全く目地12を通って脱気筒53から大気中に放出されなかった。
無理に空気を送り込んだところ、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)が見られた。
覆いテープ通気孔25は設けたが、その上に気体取込通気シート31を設けなかった以外は実施例1と同様にして試験をしたところ、比較例1よりは良かったが、送り込んだ空気は、抵抗があって(圧力の上昇があって)、右下の箱内に流入しなかった。空気の殆どは、目地12を通って脱気筒53から大気中に放出されなかった。
無理に空気を送り込んだところ、塗膜防水層51に浮き上がり(膨れ)が見られた。
従って、長期の防水性に優れ、作業能率の向上も図れるため、屋上等の新規塗膜防水工事や防水塗膜の改修工事等に広く利用されるものである。
12 目地
13 壁面(立ち上がり部)
14 細くなった部分
21 覆いテープ
22 覆いテープ接着層
23 板状部材
24 覆いテープ基材
25 覆いテープ通気孔
26 金属層
27 覆いテープ隙間(覆いテープ膨張緩衝隙間)
28 両面粘着テープ支持層
29 両面粘着テープ板状部材側接着層
31 気体取込通気シート
32 気体取込通気シート孔
33 気体取込通気シート断面
41 通気緩衝シート
42 通気緩衝シート基材
43 補強層
44 通気層
45 粘着層
46 緩衝層
47 通気路
51 塗膜防水層
53 脱気筒
P 離型テープ
R 両面粘着テープ
G 気体の流れ
Claims (12)
- 下地コンクリートの目地の上部を覆いテープで覆った後、該下地コンクリートと該覆いテープの上部に、少なくとも粘着層と通気路とを有する通気緩衝シートを設け、その上から塗膜防水材を塗布する防水工法であって、
該目地の上部に存在する覆いテープの一部のみに覆いテープ通気孔、又は、覆いテープのない覆いテープ隙間を設け、該覆いテープ通気孔又は該覆いテープ隙間をカバーするように、該覆いテープの上に気体取込通気シートを載せてから、通気緩衝シートを設けることを特徴とする防水工法。 - 上記気体取込通気シートの大きさを、該気体取込通気シートに上から接している通気緩衝シートの部分に、上記通気路が常に存在する大きさに設定する請求項1に記載の防水工法。
- 幅Lの通気路を間隔Dで平行に有する通気緩衝シートを設ける場合、上記気体取込通気シートの差し渡し長さを、(L+D)以上に設定する請求項1又は請求項2に記載の防水工法。
- 上記気体取込通気シートが気体取込通気シート孔を有し、該気体取込通気シート孔が目地の上に位置するように該気体取込通気シートを載せる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の防水工法。
- 脱気筒を、上記目地の末端である壁面近傍に設置する請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の防水工法。
- 上記覆いテープが、下から順に、少なくとも、覆いテープ接着層、複数の板状部材又は複数の線状部材が並列してなる部材列、及び、覆いテープ基材を有し、
該板状部材又は該線状部材の最長軸が、該テープ状基材の長手方向に対して略垂直に、かつ、該板状部材同士又は該線状部材同士が互いに接触することなく間隔を開けて、並列して該テープ状基材上に貼り付けられてなるものである請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の防水工法。 - 上記覆いテープが、下から順に、少なくとも、覆いテープ接着層及び金属層を有してなるものである請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の防水工法。
- 上記気体取込通気シートの厚さを、0.1mm以上3mm以下にする請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の防水工法。
- 上記気体取込通気シートの材質を不織布にする請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の防水工法。
- 上記下地コンクリートが押さえコンクリートであり、既存の押さえコンクリートに対し、請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の防水工法を使用することを特徴とする防水層の改修方法。
- 請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の防水工法に用いられるものであり、厚さが0.1mm以上3mm以下の不織布でできたものであって、
下に存在する上記覆いテープ通気孔をカバーできるだけの大きさを有し、かつ、上から接している上記通気緩衝シートの通気路が上に存在するように、該通気路のピッチより大きいことを特徴とする気体取込通気シートと覆いテープと通気緩衝シートとからなるセット。 - 請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の防水工法、又は、請求項10に記載の防水層の改修方法、を使用して得られたものであって、
目地の上部に存在する上記覆いテープ、該覆いテープに設けられた上記通気孔又は上記覆いテープ隙間をカバーするように該覆いテープの上に載せてある上記気体取込通気シート、上記通気緩衝シート、及び、塗膜防水材からなる塗膜防水層を有することを特徴とする防水層。
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