JP6598172B1 - 食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物及び食品の飲み込みやすさ改善方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような課題を改善した食品として嚥下困難者用食品が市販されている。
しかしながら、市販の嚥下困難者用食品では、種類も限られており、摂取者が飽きる場合もある。そのため、通常の食事を刻んだものやペースト化したものを嚥下困難者用食品として利用できれば、嚥下困難者も色々な食事を飽きることなく摂ることが出来る。
通常の食品を利用した上記処理物は、食事に飽きないものの、依然として飲み込みやすいとは言い難いものであり、そのため、食事の摂取量が減り、カロリー不足という課題が残っている。
食用油脂を添加混合する方法は、カロリー不足を解消するものの、添加混合後の食味が油っぽくなり、添加混合する前の食品の食味を低下するばかりでなく、依然として飲み込み難いという課題がある。
しかしながら、前記乳化栄養物を食品に添加混合すると、食品中の塩の影響か、乳化状態が一部壊れ油分離を生じる場合がある。そのため、前記乳化栄養物を添加した食品は、もとの食品の食味を損ない、飲み込みやすさも十分とは言い難いものであった。
(1) 食用油脂、親水性親油性バランス値(HLB値)が11以上の親水性非イオン界面活性剤又はリゾリン脂質の1種以上の親水性乳化剤及び糖アルコールを含有し、
1g当たり2Kcal以上である、
食品に添加混合して食品の飲み込みやすさを改善する食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物であって、
前記組成物に対し食用油脂を20質量%以上75質量%以下含有し、
親水性乳化剤が、食用油脂100質量部に対し0.5質量部以上10質量部以下、
糖アルコールが、前記組成物より食用油脂を除いた部分100質量部に対し30質量部以上75質量部以下、
前記組成物中の水分が、糖アルコール100質量部に対し40質量部以上150質量部以下である、食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物、
(2) 前記食品が嚥下困難者用食品である、(1)の食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物、
(3) (1)又は(2)記載の食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物を、食品に添加混合して食品の飲み込みやすさを改善する食品の飲み込みやすさ改善方法、
である。
本発明は、食用油脂の含有量、食用油脂に対する親水性乳化剤の割合、食用油脂以外の部分に対する糖アルコールの割合、糖アルコールに対する水分量の割合をそれぞれ特定範囲とすることにより、食用油脂を高濃度含有した高カロリー組成物でありながら、添加混合する食品の食味を損なうことなく食品の飲み込みやすさを改善する食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物及び食品の飲み込みやすさ改善方法を提供することに特徴を有する。
本発明の飲み込みやすさを改善する対象の食品は、特に、その形態において制限するものではないが、飲み込みが困難な方の食品である嚥下困難者用食品は、一般的に、食事を刻んだものやペースト化したもの等が多く利用されており、本発明も同様、刻み食品やペースト化食品等を対象食品として用いることができる。
本発明の組成物の対象食品への添加量は、本発明の効果であるカロリー付与及び飲み込みやすさが改善される量であれば、特に制限するものではない。具体的には、対象食品へ均一混合する混合しやすさ、及び混合後の全体の外観等を考慮し、対象食品100部に対し、5〜100部が好ましく、5〜80部がより好ましい。
本発明の組成物は、1g当たり2Kcal以上、好ましくは3Kcal以上である。1g当たりカロリーが2Kcalより少ないと、対象食品への添加量が増え、対象食品のカロリーを容易に増やすことができないばかりか、混合後の全体の外観を損なう場合がある。
本発明に用いる食用油脂としては、食用の油脂として一般的に用いるグリセロ骨格を有した脂肪酸エステルである脂肪酸トリグリセリドや脂肪酸ジグリセリド等を用いるとよい。
また、本発明に用いる食用油脂には、前記脂肪酸エステルの他、一部に加水分解により生じた遊離脂肪酸含んだものも含まれる。
前記食用油脂としては、具体的には例えば、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヤシ油、コーン油、綿実油、米油、シソ油、エゴマ油、オリーブ油、アーモンド油、ココナッツ油、亜麻仁油、ブドウ種子油等の植物油、卵黄油、魚油、鯨油、肝油等の動物油、又は藻類や微生物培養で得られた油脂、又はこれらの精製油(サラダ油)等が挙げられる。特に、植物油は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を多く含有していることから、好ましい。
本発明は、前記組成物に対し食用油脂の含有量が20%以上75%以下であり、好ましくは30%以上75%以下である。
食用油脂の含有量が前記範囲より少なと、本発明の組成物を1g当たり2Kcal以上と高カロリーとすることが難しく、本発明の効果である食品の飲み込みやすさを改善することが出来ない。一方、食用油脂の含有量が前記範囲より多いと、対象である食品の食味を損なう、あるいは飲み込みやすさが十分に改善されない場合がある。
本発明で用いる親水性乳化剤としては、清水、あるいは加温した清水に容易に分散又は溶解する、HLB値が11以上、好ましくは12以上の親水性非イオン界面活性剤又はリゾリン脂質の1種以上を用いる必要がある。このような親水性乳化剤を用いないと、本発明の効果である対象食品の食味を損なうことなく飲み込みやすさを改善することができない。
前記親水性非イオン界面活性剤としては、食品用乳化剤として用いることが出来るものであれば、いずれのものを用いてもよい。具体的には例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、前記リゾリン脂質とは、グリセロ骨格を有したジアシルグリセロリン脂質であるリン脂質の1位又は2位が加水分解したモノアシルグリセロリン脂質である。本発明は、前記リゾリン脂質としては、他の油脂成分(例えば、脂肪酸トリグリセリド、遊離脂肪酸等)を含有したリゾレシチン、酵素処理卵黄油等を用いてもよい。その場合は、例えば、リゾレシチン中に含まれるリゾリン脂質部分が、本発明のリゾリン脂質に相当する。
前記リゾリン脂質の由来は、例えば、卵黄等の動物由来、あるいは大豆、ひまわり、米、菜種等の植物由来、藻類、微生物等の微生物由来等、特に限定するものでない。
本発明で用いる糖アルコールとしては、例えば、澱粉を分解した澱粉糖化物であるデキストリンを還元処理した還元澱粉糖化物、又はマルチトール、ラクチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノール等、食用として用いられているものであれば、いずれのものを用いてもよい。
また、前記還元澱粉糖化物としては、還元水あめが広く流通しており、本発明においても、これを用いることが出来る。還元水あめやソルビトール等には、水分を一部含んだものがあり、その場合は、本発明の糖アルコールとは、水分を除いた部分を意味する。
本発明において、必須成分である親水性乳化剤、糖アルコール及び水分の各割合は、以下のとおりである。
前記親水性乳化剤の割合は、食用油脂100部に対し0.5部以上であり、好ましくは、0.8部以上である。
前記糖アルコールの割合は、前記組成物より前記食用油脂を除いた部分100部に対し30部以上75部以下、好ましくは、30部以上65部以下である。
前記組成物中の水分の割合は、糖アルコール100部に対し40部以上150部以下、好ましくは、下限値が55部以上、上限値が140以下である。
本発明は、前記各必須成分の割合が、前記割合の範囲をすべて満たしたときに、はじめて、対象食品の食味を損なうことなく、飲み込みやすさが改善される。
したがって、前記各必須成分の割合が、前記割合の範囲を一部又は全部を満たさない場合は、対象食品の食味を損なうことなく、飲み込みやすさが改善された組成物とはならない。
なお、前記親水性乳化剤の割合において、上限値は特に規定していないが、配合割合を増やしても本発明の効果の発現がさほど向上せず、経済的でないので、本発明において、前記親水性乳化剤の上限の割合は、10部以下である。
本発明の組成物の製造方法は、配合原料である食用油脂が分離することなく、組成物全体が均一なものが得られる方法であれば、特に、制限するものではない。
本発明の組成物には、前記必須成分以外のものを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択し、配合することができる。
具体的には例えば、砂糖、グラニュー糖、食塩、醤油、畜肉・魚介・野菜等のだし汁又はエキス等の各種調味料、加工澱粉、キサンタガム、グアーガム、ペクチン等の各種増粘剤、鉄、亜鉛、カルシウム、銅、マグネシウム等のミネラル類、各種アミノ酸、各種ビタミン、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤、香辛料、色素等が挙げられる。
なお、本発明の組成物は、対象食品の食味に影響しないように、食塩含量を5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
下記に示す配合原料のうち食用油脂である菜種油以外のソルビトール、水あめ及び清水を40℃に加温しながら食塩、砂糖及び卵黄リゾリン脂質を溶解するまで十分に混合した。得られた混合液に食用油脂である菜種油を徐々に注加し後、さらに5分間仕上げ攪拌し食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物を製した。
なお、評価結果は、後述の試験例に示す。
食用油脂
・菜種油 50%
糖アルコール
・ソルビトール(水分40質量%) 25%
水あめ(水分25質量%) 15%
食塩 1.5%
砂糖 1%
親水性乳化剤
・卵黄リゾリン脂質 0.5%
清水で 100%
本発明の効果である食品の飲み込みやすさ及び食品の食味への影響を調べた。
詳しくは、本発明の食品用高カロリー飲み込みやすさ改善組成物において、食用油脂の配合量、食用油脂の割合に対する親水性乳化剤の割合、前記組成物より食用油脂を除いた部分の割合に対する糖アルコールの割合、及び糖アルコールの割合に対する水分の割合、について影響を調べた。
また、各組成物を添加混合する対象食品としては、白がゆを製した後、水分を加熱により蒸発させて製した軟飯を、さらにミキサー処理したものを用いた。
なお、表1中の糖アルコールの配合量は、水分を含めた値を記載している。また、実施例1は、表1中に記載の原料のみの配合量を記載している。
評価基準及び評価結果は、下記のとおりである。
◎:食味を損なっておらず、飲み込みやすさが十分に改善されていた。
〇:食味を損なっておらず、飲み込みやすさが改善されていた。
△:食味をやや損なっているが問題とならない程度であり、
飲み込みやすさが少し改善されていた。
×:食味を損なっている、および/または、飲み込みやすさがほとんど改善されていない。
また、実施例4、実施例7及び前記乳化剤を増やした実施例6を比較したところ、親水性乳化剤としてリゾリン脂質を用いた実施例4が、食味への影響及び飲み込みやすさの改善が優れていた。
Claims (3)
- 食用油脂、親水性親油性バランス値(HLB値)が11以上の親水性非イオン界面活性剤又はリゾリン脂質の1種以上の親水性乳化剤及び糖アルコールを含有し、
1g当たり2Kcal以上である、
食品に添加混合して食品の飲み込みやすさを改善する食品用の高カロリー飲み込みやすさ改善用組成物であって、
前記組成物に対し食用油脂を20〜75質量%含有し、
親水性乳化剤が、食用油脂100質量部に対し0.5〜10質量部、
糖アルコールが、前記組成物より食用油脂を除いた部分100質量部に対し30〜75質量部、
前記組成物中の水分が、糖アルコール100部に対し40〜150質量部である、
ことを特徴とする食品用の高カロリー飲み込みやすさ改善用組成物。 - 前記食品が嚥下困難者用食品である、
ことを特徴とする請求項1記載の食品用の高カロリー飲み込みやすさ改善用組成物。 - 請求項1又は2記載の食品用の高カロリー飲み込みやすさ改善用組成物を食品に添加混合して食品の飲み込みやすさを改善する、
ことを特徴とする食品の飲み込みやすさ改善方法。
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