ところで、近年、高血圧の治療のために夜間血圧を測定する重要性が注目されている。夜間血圧測定では、一般に被験者の睡眠期間中にタイマ設定によって自動的に血圧測定が行われるため、被験者は血圧測定時の自身の姿勢を意識的に正すことができない。このため、様々な姿勢での血圧値が記録され、その血圧値は姿勢によって影響されているかも知れない。
そこで、この発明の課題は、血圧測定時に寝ている被験者の姿勢を検出し、その姿勢に応じて血圧値を補正できる血圧計を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の血圧計は、
被験者の被測定部位としての腕に一体に装着される加速度センサと、
上記加速度センサの出力に基づいて、血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出する姿勢検出部とを備え、
上記姿勢検出部は、上記被験者の姿勢を、床面上に寝ている被験者を身長方向に沿って見た方向視での上記床面に対する体幹の角度と、上記体幹の角度に応じた腕の位置とによって特定し、
上記被験者の上記被測定部位の血圧値を測定する血圧測定部と、
上記姿勢検出部によって特定された姿勢に応じて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値を補正する血圧補正部とを備えたことを特徴とする。
本明細書で、「血圧測定時」とは、例えば夜間血圧測定などのために被測定部位に血圧測定用カフが装着されている期間全体を指すのではなく、例えばタイマ設定によって自動的に上記被験者の血圧値が実際に測定されるタイミングを指す。
「床面」とは、ベッド、布団の上面など、その上に被験者が寝ることができる面を広く指す。
「体幹の角度」とは、床面上に寝ているヒトを身長方向に沿って見た方向視で(例えば、頭から足へ向かって見て)、偏平な体幹が中心(概ね背骨と一致)の周りに回転する角度を意味する。
この発明の血圧計では、加速度センサが、被験者の被測定部位としての腕に一体に装着される。姿勢検出部は、上記加速度センサの出力に基づいて、血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出する。具体的には、上記姿勢検出部は、上記被験者の姿勢を、床面上に寝ている被験者を身長方向に沿って見た方向視での上記床面に対する体幹の角度と、上記体幹の角度に応じた腕の位置とによって特定する。血圧測定部は、上記被験者の上記被測定部位の血圧値を測定する。血圧補正部は、上記姿勢検出部によって特定された姿勢に応じて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値を補正する。したがって、この血圧計によれば、血圧測定時に寝ている被験者の姿勢に応じて血圧値を補正できる。
一実施形態の血圧計では、上記姿勢検出部は、上記体幹の角度を、上記床面に対して体幹の角度を可変したのに相当する複数の体幹パターンのうちの1つとして特定するとともに、上記腕の位置を、上記複数の体幹パターンに対して、それぞれ腕の位置を可変したのに相当する複数の腕パターンのうちの1つとして特定することを特徴とする。
この一実施形態の血圧計では、上記姿勢検出部によって、上記被験者の姿勢を簡単に検出できる。
一実施形態の血圧計では、
上記体幹パターンと上記腕パターンとの組み合わせに応じて、血圧値を補正するための予め定められた補正量を記憶している第1記憶部を備え、
上記血圧補正部は、上記予め定められた補正量を用いて、上記血圧測定部によって測定された血圧値を補正することを特徴とする。
この一実施形態の血圧計では、上記血圧測定部によって測定された血圧値を適切な補正量で補正できる。
一実施形態の血圧計では、上記血圧測定部によって測定された補正されていない血圧値と、上記血圧補正部によって補正された血圧値とを、互いに対応付けて記憶する第2記憶部を備えることを特徴とする。
この一実施形態の血圧計では、第2記憶部に記憶されたデータに基づいて、上記血圧測定部によって測定された補正されていない血圧値と、上記血圧補正部によって補正された血圧値とを、互いに対応付けて、ユーザ(被験者だけでなく、例えば医師、看護師などの医療従事者を含む。以下同様。)が事後的に用いることができる。
一実施形態の血圧計では、上記血圧補正部によって補正された血圧値を、表示画面上にグラフで表示する制御を行う表示制御部を備えたことを特徴とする。
この一実施形態の血圧計によれば、ユーザは、上記表示画面上のグラフを見ることによって、上記血圧補正部によって補正された血圧値を直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧計では、上記表示制御部は、上記血圧補正部によって補正された血圧値に併せて、上記血圧測定部によって測定された補正されていない血圧値を、上記表示画面上にグラフで表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧計によれば、ユーザは、上記表示画面上のグラフを見ることによって、補正前後の血圧値を直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧計では、上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の上記補正された血圧値と上記補正されていない血圧値とに併せて、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢をイラストレーションで表示する制御を行うことを特徴とする。
本明細書で、「イラストレーション」とは、模式的に表された図を意味する。
この一実施形態の血圧計によれば、ユーザは、上記表示画面上に表示された姿勢のイラストレーションと、補正前後の血圧値とを併せて見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢に応じて上記被験者の血圧値が適切に補正されているか否かを直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定部は、予め定められた期間内で複数の測定時刻における血圧値を測定し、
上記姿勢検出部は、上記期間内で各測定時刻毎に上記姿勢を検出し、
上記血圧補正部は、各血圧値について上記補正を行い、
上記表示制御部は、上記各測定時刻についての上記補正された血圧値と上記補正されていない血圧値と上記姿勢のイラストレーションとを併せて、上記表示画面上に時間経過に沿って並べて表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧計によれば、ユーザは、上記表示画面上に表示された姿勢のイラストレーションと、上記各測定時刻についての補正前後の血圧値とを併せて見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢に応じて上記被験者の血圧値が適切に補正されているか否かを直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定時に、上記被測定部位に巻き付けられた血圧測定用カフに対する外部圧迫が有ったか否かを検出する外部圧迫検出部を備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の上記補正された血圧値と併せて、上記外部圧迫検出部による検出結果を表す圧迫情報を表示する制御を行うことを備えたことを特徴とする。
本明細書で、「外部圧迫」とは、被測定部位を取り巻く血圧測定用カフの外周面の外側からの圧迫を指す。言い換えれば、血圧測定用カフが取り巻く被測定部位(カフの内周面側)からの圧迫は含まない。典型的には、外部圧迫は、夜間血圧測定の場合に、床面上に寝ている被験者が被測定部位に装着したカフを体幹の下に敷き込んでいる場合に起こる。
この一実施形態の血圧計では、外部圧迫検出部は、血圧測定時に上記カフに対する外部圧迫が有ったか否かを検出する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の上記補正された血圧値と併せて、上記外部圧迫検出部による検出結果を表す圧迫情報を表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示された圧迫情報を見ることによって、血圧測定時にカフに対する外部圧迫が有ったか否かを直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧計では、
上記加速度センサの出力に基づいて、上記血圧測定時に上記被験者の体動が有ったか否かを検出する体動検出部を備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の上記補正された血圧値と併せて、上記体動検出部による検出結果を表す体動情報を表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧計では、体動検出部が、上記加速度センサの出力に基づいて、上記血圧測定時に上記被験者の体動が有ったか否かを検出する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の上記補正された血圧値と併せて、上記体動検出部による検出結果を表す体動情報を表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示された体動情報を見ることによって、血圧測定時に上記被験者の体動があった否かを直感的に知ることができる。
別の局面では、この発明の血圧関連情報表示装置は、
被験者の血圧に関連する情報を表示画面に表示する血圧関連情報表示装置であって、
被験者の被測定部位を取り巻いて装着される血圧測定用カフと、
上記血圧測定用カフに一体に取り付けられた加速度センサと、
上記加速度センサの出力に基づいて、血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出する姿勢検出部と、
上記表示画面上に、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢をイラストレーションで表示する制御を行う表示制御部と
を備える。
本明細書で、「血圧に関連する情報」とは、血圧値自体、血圧測定時の被験者の姿勢、体動の有無、カフに対する外部圧迫の有無を表す情報を含む。
この発明の血圧関連情報表示装置では、血圧測定用カフは、加速度センサが一体に取り付けられた状態で、被験者の被測定部位を取り巻いて装着される。上記加速度センサの出力に基づいて、姿勢検出部が血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出する。表示制御部は、表示画面上に、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢をイラストレーションで表示する制御を行う。これにより、上記表示画面上に、被験者の血圧に関連する情報として、血圧測定時の上記被験者の姿勢がイラストレーションで表示される。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示されたイラストレーションを見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢を直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記姿勢検出部は、予め定められた期間内で、各血圧測定時毎に上記被験者の姿勢を検出し、
上記表示制御部は、上記各血圧測定時毎に上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢を、上記表示画面上に時間経過に沿って並べてイラストレーションで表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、上記姿勢検出部は、予め定められた期間内で、各血圧測定時毎に上記被験者の姿勢を検出する。上記表示制御部は、上記各血圧測定時毎に上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢を、上記表示画面上に時間経過に沿って並べてイラストレーションで表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示されたイラストレーションを見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢の時間経過を直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、上記姿勢検出部は、上記加速度センサに設定されたXYZ直交座標系に対する重力加速度ベクトルの向きに応じて、血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出することを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、上記姿勢検出部は、上記加速度センサに設定されたXYZ直交座標系に対する重力加速度ベクトルの向きに応じて、血圧測定時の上記被験者の姿勢を検出する。したがって、上記被験者の姿勢を簡単に検出できる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記イラストレーションを作成するための素材として、床面上に寝ているヒトを身長方向に沿って見た方向視で上記床面に対して体幹の角度を可変したのに相当する複数の体幹パターンが予め用意され、
上記表示制御部は、上記複数の体幹パターンのうち、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢に応じた体幹パターンを選択することを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、上記イラストレーションを作成するための素材として、床面上に寝ているヒトを身長方向に沿って見た方向視で上記床面に対して体幹の角度を可変したのに相当する複数の体幹パターンが予め用意されている。上記表示制御部は、上記複数の体幹パターンのうち、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢に応じた体幹パターンを選択する。この選択された体幹パターンを用いることによって、上記表示制御部は、上記被験者の姿勢を表すイラストレーションを含む画像データを、簡単な処理で迅速に作成することができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記複数の体幹パターンに対して、それぞれ腕の位置を可変したのに相当する複数の腕パターンが予め用意され、
上記表示制御部は、上記複数の体幹パターンと上記複数の腕パターンとの組み合わせのうち、上記被験者の姿勢に応じた組み合わせを選択することを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、上記複数の体幹パターンに対して、それぞれ腕の位置を可変したのに相当する複数の腕パターンが予め用意されている。上記表示制御部は、上記複数の体幹パターンと上記複数の腕パターンとの組み合わせのうち、上記被験者の姿勢に応じた組み合わせを選択する。この選択された体幹パターンと腕パターンとの組み合わせを用いることによって、上記表示制御部は、上記被験者の姿勢を表すイラストレーションを含む画像データを、簡単な処理で迅速に作成することができる。
なお、上記複数の体幹パターンと上記複数の腕パターンとを組み合わせた様々なイラストレーションのデータは、メモリのような記憶部に記憶されているのが望ましい。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記血圧測定用カフを用いて上記被験者の血圧値を測定する血圧測定部を備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値をグラフで表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、血圧測定部が上記血圧測定用カフを用いて上記被験者の血圧値を測定する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値をグラフで表示する制御を行う。したがって、ユーザ師は、そのグラフを見ることによって、上記被験者の血圧値の時間経過を直感的に知ることができる。また、ユーザは、上記表示画面上に表示された姿勢のイラストレーションと血圧値のグラフとを併せて見ることによって、上記被験者の血圧値に対する姿勢の影響を直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記血圧測定用カフを用いて上記被験者の血圧値を測定する血圧測定部と、
上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢に応じて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値を補正する血圧補正部とを備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記血圧補正部によって補正された上記被験者の血圧値をグラフで表示する制御を行うことを備えたことを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、血圧測定部が上記血圧測定用カフを用いて上記被験者の血圧値を測定する。血圧補正部は、上記姿勢検出部によって検出された上記被験者の姿勢に応じて、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値を補正する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記血圧補正部によって補正された上記被験者の血圧値をグラフで表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示された姿勢のイラストレーションと補正後の血圧値のグラフとを見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢に応じて上記被験者の血圧値が適切に補正されているか否かを直感的に知ることができる。
また、上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記血圧測定部によって測定された上記被験者の血圧値と上記血圧補正部によって補正された上記被験者の血圧値との両方をグラフで表示してもよい。その場合、ユーザは、上記表示画面上に表示された姿勢のイラストレーションと補正前後の血圧値のグラフとを見ることによって、血圧測定時の上記被験者の姿勢に応じて上記被験者の血圧値が適切に補正されているか否かをより直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記血圧測定時に上記カフに対する外部圧迫が有ったか否かを検出する外部圧迫検出部を備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記外部圧迫検出部による検出結果を表す圧迫情報を表示する制御を行うことを備えたことを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、外部圧迫検出部は、血圧測定時に上記カフに対する外部圧迫が有ったか否かを検出する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記外部圧迫検出部による検出結果を表す圧迫情報を表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示されたイラストレーションと圧迫情報を見ることによって、血圧測定時にカフに対する外部圧迫が有ったか否かを直感的に知ることができる。
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
上記加速度センサの出力に基づいて、上記血圧測定部による血圧測定中に上記被験者の体動が有ったか否かを検出する体動検出部を備え、
上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記体動検出部による検出結果を表す体動情報を表示する制御を行うことを特徴とする。
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、体動検出部が、上記加速度センサの出力に基づいて、上記血圧測定時に上記被験者の体動が有ったか否かを検出する。上記表示制御部は、上記表示画面上に、上記被験者の姿勢のイラストレーションと併せて、上記体動検出部による検出結果を表す体動情報を表示する制御を行う。したがって、ユーザは、上記表示画面上に表示されたイラストレーションと体動情報を見ることによって、血圧測定時に上記被験者の体動があった否かを直感的に知ることができる。
以上より明らかなように、この発明の血圧関連情報表示装置によれば、血圧測定時の被験者の姿勢をユーザが直感的に分かるように表示できる。
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の血圧関連情報表示装置を構成する血圧計(全体を符号1で示す。)の外観を示している。
この血圧計1は、大別して、被験者の被測定部位に巻き付けられるべき血圧測定用カフ20と、このカフ20に一体に取り付けられた本体10とを有している。
カフ20は、被測定部位を周方向に沿って取り巻くように細長い形状を有し、被測定部位に接すべき帯状の内布20aと、この内布20aに対向する外布20bとを備えている。これらの内布20aと外布20bとは、互いの周縁が縫い合わされて袋状に形成されている。このカフ20内には、被測定部位を圧迫するための流体袋22(図2参照)が内包されている。
内布20aの表面(被測定部位に接すべき内周面)には、面ファスナを構成するために、図示しない多数の微細なフックが設けられている。一方、外布20bの表面(外周面)には、上記フックと係合する図示しない多数の微細なループが形成されている。
本体10は、カフ20の長手方向(周方向)に関して、一端(装着時に内周端となる端部)20eと他端(装着時に外周端となる端部)20fとの間の部位に、一体に取り付けられている。
血圧計1を被測定部位としての左上腕90a(図4(A)参照)に装着する際には、図1中に矢印Aで示す向きに左上腕90aが配されて、左上腕90aの前面に、カフ20が本体10とともに配置される。続いて、被験者から見て、カフ20が左巻きの渦巻き状に巻かれる。そして、外布20bの本体10よりも内周端20eに近い部位に、対応する内布20aの表面が押し付けられて固定される。カフ20の長手方向(周方向)に関して他端20f近傍の余った部分は、本体10が隠れるのを防ぐように折り返される。
図2は、血圧計1のカフ20と本体10の概略的なブロック構成を示している。この血圧計1は、本体10に搭載された、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100、表示器50、操作部52、記憶部としてのメモリ51、通信部59、電源部53、ポンプ32、弁33、圧力センサ31、および加速度センサ34を含む。さらに、本体10は、この本体10に搭載された、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320、弁33を駆動する弁駆動回路330、加速度センサ34からの出力をAD(Analog to Digital)変換するAD変換器340を含む。
表示器50は、この例ではLCD(Liquid Cristal Display)からなり、CPU100からの制御信号に従って、血圧測定結果などの血圧に関連する情報を表示する。
操作部52は、本体10の電源をオン、オフするための電源スイッチ52Aと、血圧の測定開始の指示を受け付けるための測定開始スイッチ52Bと、メモリに記憶されている血圧測定結果を呼び出すためのメモリスイッチ52Cとを有する。これらのスイッチ52A,52B,52Cは、ユーザによる指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。
これらの表示器50および操作部52は、図1中に示すように、本体10の前面(図1では上面)または側面に設けられている。
図2中のメモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータ、および、後述のカフ20に対する外部圧迫の有無、被験者の体動の有無、被験者の姿勢を表すデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU100は、圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出する制御、および、カフ20に対する外部圧迫の有無を検出する制御を行う。さらに、CPU100は、加速度センサ34の出力に基づいて、被験者の体動の有無、および、被験者の姿勢を検出する制御を行う。これらの制御については、後に詳述する。
通信部59は、CPU100によって制御されて所定の情報を、ネットワーク900を介して外部の装置に送信したり、外部の装置からの情報を、ネットワーク900を介して受信してCPU100に受け渡したりする。このネットワーク900を介した通信は、無線、有線のいずれでも良い。この実施の形態において、ネットワーク900は、インターネットであるが、これに限定されず、病院内LAN(Local Area Network)のような他の種類のネットワークであってもよいし、USBケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。
電源部53は、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、加速度センサ34、表示器50、メモリ51、通信部59、発振回路310、ポンプ駆動回路320、弁駆動回路330、およびAD変換器340の各部に電力を供給する。
ポンプ32、弁33および圧力センサ31は、配管系としての共通のエア配管39を介して、カフ20に内包されている流体袋22に接続されている。ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して流体袋22に空気を供給する。弁33は、通電によって開閉が制御される電磁弁であり、流体袋22の空気をエア配管39を通して排出し、または封入してカフ圧を制御するために用いられる。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU100から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通してカフ20(流体袋22)の圧力、この例では大気圧を基準(ゼロ)とした圧力を検出して時系列のカフ圧信号Pcとして出力する。発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。
この例では、圧力センサ31の出力は、オシロメトリック法によって、被験者90の血圧値(収縮期血圧(Systolic Blood Pressure)と拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure)とを含む。以下同様。)を算出するのに用いられる。これとともに、圧力センサ31の出力は、カフコンプライアンス(カフ圧を単位圧力1mmHgだけ変化させるのに必要な空気量)を算出することによって、カフ20に対する外部圧迫の有無を判定するのに用いられる。典型的には、外部圧迫は、夜間血圧測定の場合に、被測定部位としての左上腕90aとともにカフ20が、寝ている被験者の体幹に敷き込まれて、体幹と床面から圧迫される場合に起こる。
加速度センサ34は、本体10内に一体に内蔵された3軸加速度センサからなる。この加速度センサ34は、本体10の、したがって本体10と一体に取り付けられたカフ20の、互いに直交する3方向の加速度を表す加速度信号を、AD変換器340を介して、CPU100に出力する。
この例では、図4(A)に示すように、本体10内の加速度センサ34の位置を原点として、XYZ直交座標系が設定されている。Z軸は、本体10の前面に対して垂直に外へ向かって設定されている。Y軸は、血圧計1が既述のように被測定部位としての左上腕90aに装着された状態で、被験者90の左上腕90aに沿って肘から肩へ向かう向きに設定されている。また、X軸は、Y軸とZ軸に対して垂直に設定されている(被験者90の姿勢にも依るが、被験者90から見て概ね左側方へ向かっている。)。なお、図4(A)では、被験者90は床面99上に仰臥した姿勢(仰臥位)をとっているが、実際には、特に夜間血圧測定の場合は、被験者90は様々な姿勢をとり得る。例えば、図4(B)に示すように、被験者は、床面99に対して体幹の角度θを変えた姿勢をとり得る。
この例では、加速度センサ34の出力は、被験者90の体動の有無を検出するのに用いられる。これとともに、加速度センサ34の出力は、上記XYZ直交座標系に対する重力加速度ベクトルGの向き(例えば、図4(A)と図4(B)とでは、XYZ直交座標系に対する重力加速度ベクトルGの向きが異なる。)に応じて、被験者90の姿勢を検出するのに用いられる。
(外部圧迫の検出の仕方)
図6Aは、カフ20に対する外部圧迫が無い場合における、血圧測定時(加圧過程)のカフ圧信号Pc、脈波信号SM、ポンプ駆動信号Vout、カフコンプライアンスCLを示している。一方、図6Bは、カフ20に対する外部圧迫が有る場合(ここでは、カフ20が被験者90の体幹の下に敷き込まれている場合)における、血圧測定時(加圧過程)のカフ圧信号Pc、脈波信号SM、ポンプ駆動信号Vout、カフコンプライアンスCLを示している。カフ圧信号Pcは、圧力センサ31によってエア配管39、発振回路310を介して検出されたカフ20(流体袋22)の圧力を表している。脈波信号SMは、カフ圧信号Pcの変動成分としてフィルタ(図示せず)を通して抽出された信号を表している(オシロメトリック法によって血圧値を算出するために用いられる)。ポンプ駆動信号Voutは、カフ20を加圧するためにCPU100からポンプ駆動回路320へ出力される矩形波の信号(パルス幅変調信号)を表している。カフコンプライアンスCLは、ポンプ駆動信号Voutのデューティを時間で積分して得られる値(予め定められた圧力区間毎に算出される)CMa,CMb,CMc,CMd,…として求められる。理解の容易のために、図6A,図6Bでは、それぞれ、カフコンプライアンスCLの値CMa,CMb,CMc,CMd,…の列に包絡線EVが付されている。
図6Aから分かるように、カフ20に対する外部圧迫が無い場合、カフ20に空気が供給されて低圧域(0mmHg〜40mmHg未満)から高圧域(120mmHg超)まで加圧されるのに伴って、カフコンプライアンスCLは徐々に減少し、飽和している。その理由は、カフ20に対する外部圧迫が無い場合、低圧域(0mmHg〜40mmHg未満)ではカフ20の容積が容易に増大するので、カフ圧を上昇させるのに多くの空気量を要するが、カフ圧が或る程度上昇してカフ20の張力が高まると、カフ20の容積が実質的に増大しなくなるからである。一方、図6Bから分かるように、カフ20に対する外部圧迫が有る場合、加圧過程でカフコンプライアンスCLが極大値を示している。この場合、低圧域(0mmHg〜40mmHg未満)では、カフ20が被験者90の体幹を押し戻すことによって、カフ20の容積が増大する。したがって、カフコンプライアンスCLは、概ね、低い値(被測定部位に対するカフの巻き付け張力の影響によってばらつき有り)から徐々に高い値へ変化する。一方、高圧域(120mmHg超)では、カフ20の膨張によってカフ20の上から体幹が押しのけられてしまうので、図6A(外部圧迫が無い場合)におけるのと同様に、カフコンプライアンスCLは徐々に減少し、飽和する。この結果、中圧域(40mmHg以上、120mmHg以下)では、カフ圧の上昇に伴って、カフコンプライアンスCLが極大値を示す。
したがって、カフ20に対する外部圧迫の有無を、加圧過程の中圧域(40mmHg以上、120mmHg以下)でカフコンプライアンスCLが極大値を示すか否かに応じて検出できる。
(体動の検出の仕方)
図7は、血圧測定時の加速度センサ34の出力(加速度信号)を例示している。血圧測定時、特に夜間血圧測定時には、被験者90は基本的に静止状態にあるので、加速度センサ34のX軸方向の出力αx、Y軸方向の出力αy、Z軸方向の出力αzは、概ね一定の値を示す。ただし、被験者90が寝返りなどで一時的に動いた場合、αx1、αy1、αz1で示すように、出力αx,αy,αzが変化する。
この例では、CPU100が体動検出部として働いて、血圧測定中において、単位期間(例えば1秒間または数秒間)毎に、加速度センサ34の出力αx,αy,αzの平均値<αx>,<αy>,<αz>を求める。さらに、単位期間中の各時刻の加速度出力αx,αy,αzがそれぞれ平均値<αx>,<αy>,<αz>に対して変動した変動量(αx−<αx>)、(αy−<αy>)、(αz−<αz>)を求める。そして、それらの変動量の2乗和平方根
{(αx−<αx>)2+(αy−<αy>)2+(αz−<αz>)2}1/2
が予め定められた閾値(Δαとする。)を超えたとき、「体動」が有ったと判定する。一方、上記2乗和平方根が閾値Δα以下であれば、「体動」が無かったと判定する。
したがって、被験者90の体動の有無を、加速度センサ34の出力の変化に基づいて検出できる。
(姿勢の検出の仕方)
図8A〜図8Hは、血圧測定時の被験者90の姿勢(体幹の角度と腕の位置)と加速度センサ34の正規化された出力(XZ座標とXY座標)との対応関係を示している。
具体的には、図8A〜図8Hでは、第1段(最上段)に、体幹パターンとしての8種類の「体幹の角度」が示されている。この「体幹の角度」は、床面上に寝ているヒトを身長方向に沿って見た方向視で(この例では、頭から足へ向かって見て)、偏平な体幹90bが中心(概ね背骨と一致)の周りに回転する角度(図4(B)中に符号θで示す。)を意味する。図8Aでは、体幹90bは仰臥位にあり、体幹の角度は0度になっている。図8Bでは、体幹90bは仰臥位と右側臥位との中間にあり、体幹の角度は20度になっている。図8Cでは、体幹90bは右側臥位にあり、体幹の角度は90度になっている。図8Dでは、体幹90bは右側臥位と伏臥位との中間にあり、体幹の角度は160度になっている。図8Eでは、体幹90bは伏臥位にあり、体幹の角度は180度になっている。図8Fでは、体幹90bは伏臥位と左側臥位との中間にあり、体幹の角度は200度になっている。図8Gでは、体幹90bは左側臥位にあり、体幹の角度は270度になっている。図8Hでは、体幹90bは左側臥位と仰臥位との中間にあり、体幹の角度は340度になっている。
また、図8A〜図8Hでは、第2段に、ヒトの体幹に対して腕の位置を可変したのに相当する腕パターンとしての4種類または3種類の代表的な「腕の位置」が示されている。図8Aにおいて、第1欄(最左欄)では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第2欄では体幹90bから側方へ左上腕90aが離間した「体側離間」の位置にあり、第3欄では体幹90bに対して左上腕90aが載った「胸の上」の位置にあり、第4欄(最右欄)では頭側へ左上腕90aが挙げられた「バンザイ」の位置にある。図8B、図8C、図8Dにおいて、それぞれ、第1欄(最左欄)では体幹90bの後側に左上腕90aが回された「背中側」の位置にあり、第2欄では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第3欄では体幹90bの前側に左上腕90aが回された「胸側」の位置にあり、第4欄(最右欄)では頭側へ左上腕90aが挙げられた「バンザイ」の位置にある。図8Eにおいて、第1欄(最左欄)では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第2欄では体幹90bから側方へ左上腕90aが離間した「体側離間」の位置にあり、第3欄(最右欄)では頭側へ左上腕90aが挙げられた「バンザイ」の位置にある。図8Fにおいて、第1欄(最左欄)では体幹90bの後側に左上腕90aが回された「背中側」の位置にあり、第2欄では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第3欄(最右欄)では体幹90bの前側に左上腕90aが回された「胸側」の位置にある。図8Gにおいて、第1欄(最左欄)では体幹90bから前方へ左上腕90aが離間した「胸前離間」の位置にあり、第2欄では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第3欄(最右欄)では頭側へ左上腕90aが挙げられた「バンザイ」の位置にある。また、図8Hにおいて、第1欄(最左欄)では体幹90bから胸前へ左上腕90aが回された「胸前」の位置にあり、第2欄では体幹90bの横に左上腕90aが沿った「体側横」の位置にあり、第3欄(最右欄)では頭側へ左上腕90aが挙げられた「バンザイ」の位置にある。
図8A〜図8Hにおける、第1段(最上段)の「体幹の角度」と、それに対応する第2段の「腕の位置」との組み合わせによって、血圧測定時(特に夜間血圧測定時)の被験者90の姿勢がそれぞれ特定される。
図8A〜図8Hにおける、第3段、第4段(最下段)には、被験者90が第1段の「体幹の角度」と第2段の「腕の位置」との組み合わせによって特定された姿勢をとった場合の、加速度センサ34の正規化(1に正規化)された出力がそれぞれXZ座標面内、XY座標面内で表されている。ここでは、被験者90は実質的に静止状態にあり、加速度センサ34の出力(既述の平均値<αx>,<αy>,<αz>)は、本体10に設定されたXYZ直交座標系に対する重力加速度ベクトルGの向きに応じている。
例えば、被験者90が図8A、第1欄(最左欄)の「体幹の角度」が0度、「腕の位置」が「体側横」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内ではX=0、Z=1の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内ではX=0、Y=0の点axyとして検出される。また、被験者90が図8A、第2欄の「体幹の角度」が0度、「腕の位置」が「体側離間」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内では−1<X<0、0<Z<1(第2象限)の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内では−1<X<0、Y=0の点axyとして検出される。被験者90が図8A、第3欄の「体幹の角度」が0度、「腕の位置」が「胸の上」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内では0<X<1、0<Z<1(第1象限)の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内では0<X<1、−1<Y<0(第4象限)の点axyとして検出される。被験者90が図8A、第4欄(最右欄)の「体幹の角度」が0度、「腕の位置」が「バンザイ」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内では−1<X<0、−1<Z<0(第3象限)の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内では−1<X<0、−1<Y<0(第3象限)の点axyとして検出される。
また、例えば、被験者90が図8G、第1欄(最左欄)の「体幹の角度」が270度、「腕の位置」が「胸前離間」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内ではX=−1、Z=0の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内ではX=−1、Y=0の点axyとして検出される。また、被験者90が図8G、第2欄の「体幹の角度」が270度、「腕の位置」が「体側横」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内ではX=−1、Z=0の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内ではX=−1、Y=0の点axyとして検出される。被験者90が図8G、第3欄(最右欄)の「体幹の角度」が270度、「腕の位置」が「バンザイ」の組み合わせで特定される姿勢をとった場合、加速度センサ34の正規化された出力は、第3段のXZ座標面内では0<X<1、0<Z<1(第1象限)の点axzとして検出され、第4段のXY座標面内では0<X<1、Y=0の点axyとして検出される。
上の例から分かるように、図8A〜図8Hにおいて、被験者90が第1段の「体幹の角度」と第2段の「腕の位置」との組み合わせによって特定された姿勢をとった場合、その姿勢と加速度センサ34の正規化された出力(XZ座標とXY座標との組み合わせ)とは、1対1に対応している。したがって、加速度センサ34の正規化された出力(XZ座標とXY座標との組み合わせ)が特定されれば、被験者90の姿勢、すなわち「体幹の角度」と「腕の位置」との組み合わせが特定される。つまり、被験者90の姿勢が判定される。この例では、CPU100が姿勢検出部として働いて、加速度センサ34の出力(既述の平均値<αx>,<αy>,<αz>が望ましい。)に基づいて、被験者90の姿勢を判定する。これにより、被験者の姿勢を簡単に検出できる。
この血圧計1では、加速度センサ34の出力に基づいて特定された被験者90の姿勢を表すために、図8Aの第1段に示されたイラストレーションA−1〜A−4、図8Bの第1段に示されたイラストレーションB−1〜B−4、図8Cの第1段に示されたイラストレーションC−1〜C−4、図8Dの第1段に示されたイラストレーションD−1〜D−4、図8Eの第1段に示されたイラストレーションE−1〜E−3、図8Fの第1段に示されたイラストレーションF−1〜F−3、図8Gの第1段に示されたイラストレーションG−1〜G−3、図8Hの第1段に示されたイラストレーションH−1〜H−3がそれぞれ予め用意されている。これらのイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3は、体幹パターンと腕パターンとを素材として組み合わせたものに相当する。
これらのイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3では、被験者90の体幹90bが長円で表されている。その体幹90bを表す長円の長軸方向に関して略中央に、短軸方向に関して少しずれて重なる態様で、被験者90の頭90hが円と鼻に相当する小さな3角形とで表されている。また、体幹90bを表す長円の左側に、カフ20が巻かれた左上腕90aが円で表されている。カフ20に一体に取り付けられた本体10は、長方形で表されている。
例えば、図8A中のイラストレーションA−1では、体幹90bを表す長円は、体幹の角度が0度(仰臥位)であることを表すように、水平方向に延在している。被験者90の頭90hを表す円は、体幹90bを表す長円の上方にずれて重なっている(なお、この段落における上下左右は、図8A中の上下左右を指す。)。左上腕90aを表す円は、「体側横」を表すように、体幹90bを表す長円の左に隣接している。本体10を表す長方形は、本体10が左上腕90aの前面にあることを表すように、左上腕90aを表す円の上部に位置している。イラストレーションA−2では、左上腕90aを表す円は、「体側離間」を表すように、体幹90bを表す長円から離間している。イラストレーションA−3では、左上腕90aを表す円は、「胸の上」を表すように、体幹90bを表す長円の斜め左上に位置している。イラストレーションA−4では、左上腕90aを表す円は、「バンザイ」を表すように、体幹90bを表す長円の斜め左上に位置しており、それとともに、本体10を表す長方形は、左上腕90aを表す円の下部に位置している。イラストレーションA−2〜A−4の他の部分は、イラストレーションA−1のものと同じに描かれている。
また、例えば、図8G中のイラストレーションG−1では、体幹90bを表す長円は、体幹の角度が270度(左側臥位)であることを表すように、鉛直方向に延在している。被験者90の頭90hを表す円は、体幹90bを表す長円の左方にずれて重なっている(なお、この段落における上下左右は、図8G中の上下左右を指す。)。左上腕90aを表す円は、「胸前離間」を表すように、体幹90bを表す長円から離間している。本体10を表す長方形は、本体10が左上腕90aの前面にあることを表すように、左上腕90aを表す円の左部に位置している。イラストレーションG−2では、左上腕90aを表す円は、「体側横」を表すように、体幹90bを表す長円の下に隣接している。イラストレーションG−3では、左上腕90aを表す円は、「バンザイ」を表すように、体幹90bを表す長円の斜め左下に位置しており、それとともに、本体10を表す長方形は、左上腕90aを表す円の右部に位置している。イラストレーションG−2〜G−3の他の部分は、イラストレーションG−1のものと同じに描かれている。
このようにして、被験者90の姿勢を、イラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3によって、すなわち「体幹の角度」を表す体幹パターンと「腕の位置」を表す腕パターンとの組み合わせとして、模式的に表すことができる。
この血圧計1では、メモリ51に、図8A〜図8Hにおける第3段、第4段の加速度センサ34の正規化された出力(XZ座標、XY座標)と、第1段のイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3とが、1対1に対応付けて、姿勢テーブルとして記憶されている。このように、被験者90の姿勢を表す様々なイラストレーションを予め用意しておくことによって、後述の表示処理(図5のステップST110)の際に、被験者90の姿勢のイラストレーションを含む画像データを、簡単な処理で迅速に作成することができる。
(全体的な動作)
図5は、血圧計1の全体的な動作フローを例示している。
電源スイッチ52Aがオンされた状態で、測定開始スイッチ52Bが押されるか、または、夜間血圧測定の場合は予め定められた測定タイミングになると、血圧計1は血圧測定を開始する。血圧測定開始に際して、CPU100は、処理用メモリ領域を初期化し、弁駆動回路330に制御信号を出力する。弁駆動回路330は、制御信号に基づいて、弁33を開放してカフ20の流体袋22内の空気を排気する。続いて、圧力センサ31の0mmHgの調整を行う制御を行う。
血圧測定を開始すると、まず、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を閉鎖し、その後、圧力センサ31(およびエア配管39、発振回路310)によってカフ圧信号Pcをモニタしながら、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、流体袋22に空気を送る制御を行う。これにより、流体袋22を膨張させるとともにカフ圧を徐々に加圧していく(ステップST101)。
この加圧過程で、CPU100は、カフ20に対する外部圧迫の有無を検出するために、ポンプ駆動回路320に対するポンプ駆動信号Voutを積分して、図6A,図6B中に例示したようなカフコンプライアンスCLを表すデータを取得する(ステップST102)。
また、この加圧過程で、CPU100は、被験者90の体動の有無、および、被験者90の姿勢を検出するために、加速度センサ34の出力を取得する(ステップST103)。
また、この例では、この加圧過程で、CPU100は、血圧値を算出するために、カフ圧信号Pcからフィルタ(図示せず)を通して、変動成分としての脈波信号SMを取得する(ステップST104)。
次に、CPU100は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SMに基づいて、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)および脈拍の算出を試みる(ステップST105)。
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップST105でNO)、カフ圧が上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り(ステップST106でNO)、ステップST101〜ST105の処理を繰り返す。
このようにして血圧値および脈拍の算出ができたら(ステップST105でYES)、ステップST107に進んで、カフ20に対する外部圧迫の有無、被験者90の体動の有無、および、被験者90の姿勢を検出する。
ここで、カフ20に対する外部圧迫の有無は、CPU100が外部圧迫検出部として働いて、上記加圧過程でカフコンプライアンスCLが極大値を示したか否かに基づいて検出する。すなわち、上記加圧過程で図6A中に例示したようにカフコンプライアンスCLが単調減少を示したときは、外部圧迫無しと判定する。一方、この加圧過程で図6B中に例示したようにカフコンプライアンスCLが極大値を示したときは、外部圧迫有りと判定する。
また、被験者90の体動の有無は、CPU100が体動検出部として働いて、加速度センサ34の出力の変化に基づいて検出する。すなわち、上記加圧過程で単位期間(例えば1秒間または数秒間)毎に、図7中に例示したような加速度センサ34の出力αx,αy,αzの平均値<αx>,<αy>,<αz>を求める。そして、単位期間中の加速度出力αx,αy,αzの変動量の2乗和平方根
{(αx−<αx>)2+(αy−<αy>)2+(αz−<αz>)2}1/2
が予め定められた閾値Δαを超えたとき、「体動」が有ったと判定する。一方、上記2乗和平方根が閾値Δα以下であれば、「体動」が無かったと判定する。
また、被験者90の姿勢は、CPU100が姿勢検出部として働いて、上記加圧過程での加速度センサ34の出力(既述の平均値<αx>,<αy>,<αz>)に基づいて検出する。すなわち、CPU100は、メモリ51内の姿勢テーブルに記憶された、図8A〜図8Hにおける第3段、第4段の加速度センサ34の正規化された出力(XZ座標、XY座標)と、第1段のイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3との対応関係に基づいて、被験者90の姿勢が図8A〜図8Hにおける第1段(最上段)のいずれのイラストレーションの姿勢に対応するか否かを判定する。
次に、図5中のステップST108で、CPU100は、測定番号、測定時刻、測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)、脈拍、カフ20に対する「外部圧迫」の有無、被験者90の「体動」の有無、および、被験者90の「姿勢」を、互いに対応付けて、メモリ51に記憶させる。
ここで、メモリ51に記憶されるデータは、例えば次のデータテーブル(表1)に示すように、血圧の測定毎に蓄積されてゆく。この例では、夜間血圧測定が30分間毎に行われている。
(表1)データテーブル
ここで、「外部圧迫」欄では、「1」は外部圧迫有り、「0」は外部圧迫無しをそれぞれ表している。「体動」欄では、「1」は体動有り、「0」は体動無しをそれぞれ表している。「姿勢」欄では、被験者90の姿勢を、図8A〜図8Hにおける第1段(最上段)中のイラストレーションを特定する符号で表している。なお、「姿勢」欄における符号「K−1」は、被験者90が座位にあり、被測定部位としての左上腕90aを自然に下方へ向けて垂らされている姿勢(例えば、後述の図11中の最初のイラストレーションK−1に対応する。)を表している。この姿勢K−1は、図8A〜図8Hの第3段、第4段では図示が省略されているが、XZ座標面内ではX=0、Z=0の点として検出され、XY座標面内ではX=0、Y=1の点として検出される。「高度差による補正」欄については、次に述べる。
次に、図5中のステップST109で、CPU100は血圧補正部として働いて、求められた被験者90の姿勢に応じて、測定された血圧値を補正する。
知られているように、被験者90の心臓と被測定部位(この例では左上腕90a)との高度差に応じて、測定された血圧値は本来の値(心臓と被測定部位とが同じ高さレベルにある場合の値)からずれる。そこで、データテーブル(表1)の「高度差による補正」の第1の記憶部をなす「補正量」欄に示すように、求められた被験者90の姿勢に応じて、経験的に適切であると考えられる補正量を予め設定しておく。例えば、姿勢「A−1」では、被験者90の心臓と左上腕90aとが同じ高さレベルにあるから、補正量は0[mmHg]に設定されている。姿勢「C−2」では、被験者90の心臓よりも左上腕90aが高いレベルにあるから、補正量は16[mmHg]に設定されている。また、姿勢「B−2」では、被験者90の心臓と左上腕90aとの高度差は、姿勢「A−1」と姿勢「B−2」との中間のレベルにあるから、補正量は8[mmHg]に設定されている。
そして、CPU100は、求められた被験者90の姿勢に応じて、測定された血圧値に予め設定された補正量を加算する。例えば、求められた姿勢が「C−2」であれば、例えば測定された血圧値が、収縮期血圧SBP=107[mmHg]、拡張期血圧DBP=71[mmHg]であるとき、それぞれ補正量として16[mmHg]を加算する。この結果、補正された血圧値は、収縮期血圧SBP′=123[mmHg]、拡張期血圧DBP′=87[mmHg]となる。また、求められた姿勢が「B−2」であれば、例えば測定された血圧値が、収縮期血圧SBP=103[mmHg]、拡張期血圧DBP=65[mmHg]であるとき、それぞれ補正量として8[mmHg]を加算する。この結果、補正された血圧値は、収縮期血圧SBP′=111[mmHg]、拡張期血圧DBP′=73[mmHg]となる。なお、求められた姿勢が「A−1」であれば、補正量は0[mmHg]であるから、データテーブル(表1)の第2の記憶部をなす「収縮期血圧SBP′」欄、「拡張期血圧DBP′」欄には、それぞれ収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPと同じ値が入ることになる。
この例では、CPU100は、メモリ51内のデータテーブル(表1)に、測定番号、測定時刻、測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)、脈拍、カフ20に対する「外部圧迫」の有無、被験者90の「体動」の有無、および、被験者90の「姿勢」に対応付けて、その姿勢に応じた補正量、補正された血圧値(収縮期血圧SBP′、拡張期血圧DBP′)を追加して記憶させる。
次に、図5中のステップST110で、CPU100はメモリ51内のデータテーブル(表1)を参照して、表示制御部として働いて、表示器50の表示画面上に、今回の測定で測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)、脈拍、カフ20に対する「外部圧迫」の有無、被験者90の「体動」の有無、および、被験者90の「姿勢」を表示する。
最後に、図5中のステップST111で、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を開放し、カフ20の流体袋22内の空気を排気する制御を行う。
なお、図5のフローでは、カフ20の加圧過程で、カフコンプライアンスデータの取得、加速度センサの出力の取得、脈波信号の取得、血圧値の算出を行ったが、これに限られるものではない。加速度センサの出力の取得、脈波信号の取得、血圧値の算出は、減圧過程で行ってもよい。
(血圧計本体での表示例)
図9(A),(B)〜図10(A),(B)に示すように、表示器50の表示画面には、測定された収縮期血圧SBPを数値で表示するための「最高血圧」領域50aと、測定された拡張期血圧DBPを数値で表示するための「最低血圧」領域50bと、脈拍を数値で表示するための「脈拍」領域50cと、被験者90の「体動」の有無を体動情報としてイラストレーションで表示するための「体動」領域50dと、カフ20に対する「外部圧迫」の有無を圧迫情報としてイラストレーションで表示するための「圧迫」領域50eと、被験者90の「姿勢」をイラストレーションで表示するための姿勢領域50fとが設定されている。体動有りを表すイラストレーションJ−1は、被験者90の頭を表す円m1と、被験者90の体幹を表す角丸長方形(角が丸い長方形)m2と、体の揺れを表す波形マークm3とからなっている。また、外部圧迫有りを表すイラストレーションJ−2は、概ねイラストレーションG−2に、床面を表す波形マークm4が追加されたものである。これらのイラストレーションJ−1、J−2は、予めメモリ51に記憶されている。なお、体動無しのときは「体動」領域50dが、また、外部圧迫無しのときは「圧迫」領域50eが、それぞれブランク(空白)となる。姿勢領域50fには、図8A〜図8Hにおける第1段(最上段)の複数のイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3の中から、データテーブル(表1)の「姿勢」欄の内容(イラストレーションを特定する符号)に応じたイラストレーションが選択されて、表示される。これにより、被験者90の姿勢を表すイラストレーションを含む画像データを、簡単な処理で迅速に作成することができる。
図9(A)の例では、「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50b、「脈拍」領域50cに、今回の測定で測定された収縮期血圧(最高血圧)SBPが115mmHg、拡張期血圧(最低血圧)DBPが87mmHg、脈拍が70BPMであったことがそれぞれ数値で表示されている。また、「体動」領域50dに、「体動」が有ったことがイラストレーションJ−1で表示されている。「圧迫」領域50eに、「外部圧迫」が有ったことがイラストレーションJ−2で表示されている。さらに、姿勢領域50fに、被験者90の「姿勢」がイラストレーションG−2で表示されている。
図9(B)の例では、上の例と同様に、「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50b、「脈拍」領域50cに、今回の測定で測定された収縮期血圧(最高血圧)SBPが117mmHg、拡張期血圧(最低血圧)DBPが81mmHg、脈拍が70BPMであったことがそれぞれ数値で表示されている。また、「体動」領域50dに、「体動」が無かったことがブランクで表示されている。「圧迫」領域50eに、「外部圧迫」が無かったことがブランクで表示されている。さらに、姿勢領域50fに、被験者90の「姿勢」がイラストレーションA−1で表示されている。
図10(A)の例では、上の例と同様に、「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50b、「脈拍」領域50cに、今回の測定で測定された収縮期血圧(最高血圧)SBPが111mmHg、拡張期血圧(最低血圧)DBPが68mmHg、脈拍が70BPMであったことがそれぞれ数値で表示されている。また、「体動」領域50dに、「体動」が無かったことがブランクで表示されている。「圧迫」領域50eに、「外部圧迫」が有ったことがイラストレーションJ−2で表示されている。さらに、姿勢領域50fに、被験者90の「姿勢」がイラストレーションG−2で表示されている。
図10(B)の例では、上の例と同様に、「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50b、「脈拍」領域50cに、今回の測定で測定された収縮期血圧(最高血圧)SBPが131mmHg、拡張期血圧(最低血圧)DBPが85mmHg、脈拍が70BPMであったことがそれぞれ数値で表示されている。また、「体動」領域50dに、「体動」が有ったことがイラストレーションJ−1で表示されている。「圧迫」領域50eに、「外部圧迫」が無かったことがブランクで表示されている。さらに、姿勢領域50fに、被験者90の「姿勢」がイラストレーションA−1で表示されている。
したがって、ユーザは、表示器50の表示画面の「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50b、「脈拍」領域50cの数値を見ることによって、今回の測定で測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)、脈拍の値を知ることができる。これとともに、ユーザは、「体動」領域50d、「圧迫」領域50e、姿勢領域50fのイラストレーションを見ることによって、血圧測定時の被験者90の体動の有無、カフ20に対する外部圧迫の有無、被験者90の姿勢を直感的に知ることができる。
なお、図5中に示した加圧過程で、血圧値が算出できないままカフ圧が上限圧力に達した場合(ステップST106でYES)は、エラーがあったことを、測定時刻と対応付けて、メモリ51に記憶させる(ステップST112)。この例では、メモリ51内のデータテーブル(表1)の測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)欄に、それぞれ「Error」と記録する。このエラーがあった場合においても、可能な限り、データテーブル(表1)の「外部圧迫」欄、「体動」欄、「姿勢」欄には、それぞれ、検出結果を記録するのが望ましい。その理由は、そのエラーの原因が「外部圧迫」、「体動」、「姿勢」による可能性があるからである。そして、図5中のステップST110で、表示器50の表示画面の「最高血圧」領域50a、「最低血圧」領域50bに、この例ではそれぞれ「Error」を文字列として表示するとともに、「体動」領域50d、「圧迫」領域50e、姿勢領域50fに、それぞれ検出結果を表すイラストレーションを表示する。このようにした場合、ユーザは、「体動」領域50d、「圧迫」領域50e、姿勢領域50fのイラストレーションを見ることによって、そのエラーの原因を推定することができる。
(病院端末での表示例)
図3は、血圧計1とネットワーク900を介して通信可能な病院端末200のブロック構成を示している。この病院端末200は、市販のパーソナルコンピュータからなり、本体200Mと、この本体200Mに搭載された、CPUからなる制御部210と、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含むメモリ220と、キーボードおよびマウスを含む操作部230と、LCDからなる表示器240と、ネットワーク900を介して通信を行うための通信部290とを含んでいる。
図11〜図13は、病院端末200が通信部290を介して血圧計1から受信した画像データに基づいて、表示器240の表示画面に表示される画像を例示している。
例えば図11に示すように、表示器240の表示画面には、血圧測定時の被験者90の姿勢を表す「測定姿勢」領域240aと、被験者90の体動または圧迫の有無を表す「体動・圧迫」領域240bと、測定された血圧値又は補正された血圧値を表す血圧・脈拍領域240cと、この血圧・脈拍領域240cに表示される記号の凡例を表す凡例領域240dとが設定されている。
「測定姿勢」領域240aには、既述のデータテーブル(表1)の「姿勢」欄に記録された符号「K−1」、「A−1」、「C−2」、…に対応したイラストレーションK−1、A−1、C−2、…が、時間経過(血圧・脈拍領域240c中の横軸に示す測定時刻)に沿って並べて表示されている。ユーザとしての医師は、この「測定姿勢」領域240aに表示された姿勢のイラストレーションを見ることによって、血圧測定時の被験者90の姿勢の時間経過を直感的に知ることができる。図11の例では、測定時刻23:00から6:00までの間に、被験者90の姿勢はK−1、A−1、A−1、C−2、C−2、B−2、B−2、G−2、A−1、A−3、A−1、B−2、C−2、C−2、B−2というように変化したことが直感的に分かる。
「体動・圧迫」領域240bには、データテーブル(表1)の「体動」欄に記録された体動有りを表す体動情報が、横軸方向に関して体動が有った測定時刻に対応する位置に、マークM−1で表示されている。それとともに、データテーブル(表1)の「外部圧迫」欄に記録された外部圧迫有りを表す圧迫情報が、横軸方向に関して外部圧迫が有った測定時刻に対応する位置に、マークM−2で表示されている。マークM−1は、角丸長方形内に「体動」の文字を入れて構成されている。マークM−2は、角丸長方形内に「圧迫」の文字を入れて構成されている。ユーザとしての医師は、「体動・圧迫」領域240bに表示されたマークM−1,M−2を見ることによって、特定の血圧測定時に被験者90の体動が有ったこと、カフ20に対する外部圧迫が有ったことを直感的に知ることができる。図11の例では、時刻1:00、3:00の血圧測定時に体動が有ったこと、時刻2:30の血圧測定時に外部圧迫が有ったことが直感的に分かる。
血圧・脈拍領域240cには、データテーブル(表1)中の測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)、および、「脈拍」欄に記録された脈拍値PRが、この例ではそれぞれ折線グラフで表示されている。ユーザは、これらの折線グラフを見ることによって、被験者90の血圧値、脈拍の時間経過を直感的に知ることができる。また、ユーザは、「測定姿勢」領域240aに表示された姿勢のイラストレーションと血圧・脈拍領域240cに表示された血圧値の折線グラフとを併せて見ることによって、被験者90の血圧値に対する姿勢、体動、および、外部圧迫の影響を直感的に知ることができる。
それにより、例えば、ユーザとしての医師は、被験者90の健康状態を診断する場合に、被験者90の血圧値に対する姿勢、体動、および、外部圧迫の影響を考慮して診断することができる。具体的には、例えば、被験者90の血圧値に対する姿勢の影響が大きい場合、被験者90が特定の姿勢(例えばA−1)をとった時に測定された血圧値のみに基づいて診断することができる。また、被験者90の血圧値に対する体動または外部圧迫の影響が大きい場合、体動が有った時に測定された血圧値または外部圧迫が有った時に測定された血圧値を無視して、体動が無くかつ外部圧迫が無かった時に測定された血圧値のみに基づいて診断することができる。
図12に示すように、血圧・脈拍領域240cには、データテーブル(表1)中の測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)に代えて、データテーブル(表1)中の補正された血圧値(収縮期血圧SBP′と拡張期血圧DBP′)を折線グラフで表示してもよい。これにより、ユーザとしての医師は、「測定姿勢」領域240aに表示された姿勢のイラストレーションと血圧・脈拍領域240cに表示された補正後の血圧値の折線グラフとを併せて見ることによって、血圧測定時の被験者90の姿勢に応じて被験者90の血圧値が適切に補正されているか否かを直感的に知ることができる。
また、図13に示すように、血圧・脈拍領域240cには、データテーブル(表1)中の測定された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)に併せて、データテーブル(表1)中の補正された血圧値(収縮期血圧SBP′と拡張期血圧DBP′)を折線グラフで表示してもよい。これにより、ユーザとしての医師は、「測定姿勢」領域240aに表示された姿勢のイラストレーションと血圧・脈拍領域240cに表示された補正前後の血圧値の折線グラフとを併せて見ることによって、血圧測定時の被験者90の姿勢に応じて被験者90の血圧値が適切に補正されているか否かをより直感的に知ることができる。
(変形例)
上の例では、図8A〜図8Hに示したように、被験者90の姿勢を、8種類の「体幹の角度」と4種類または3種類の「腕の位置」との組み合わせとして検出した。さらに、それに対応して、被験者90の姿勢を、8種類の体幹パターンと4種類または3種類の腕パターンとを組み合わせたイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3で表した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば「体幹の角度」を0度(仰臥位)、90度(右側臥位)、180度(伏臥位)、270度(左側臥位)の4種類として粗く検出し、それに対応して、4種類の体幹パターンとして表してもよい。
また、被験者90の「腕の位置」は、図8A〜図8H中の4種類または3種類の代表的な「腕の位置」以外の特殊な腕の位置をとり得るかも知れない。その場合、その特殊な腕の位置について、図8A〜図8Hの第3段のXZ座標面内、第4段のXY座標面内で検出されるべき点を規定するとともに、その特殊な腕の位置を表す腕パターンを用意するのが望ましい。例えば図13中の測定時刻3:30には、「測定姿勢」領域240a中に示すように、被験者90の体幹の角度は0度(仰臥位)にある。この場合、被験者90の体幹90bに対して左上腕90aが前方へ離間した(略鉛直上方へ延ばされた)腕の位置をとっている。それに応じて、図8Aの第3段のXZ座標面内、第4段のXY座標面内で検出されるべき点を規定するとともに、その腕の位置を表す腕パターン(この例ではイラストレーションA−3′)を用意するのが望ましい。
また、上の例では、被験者90の姿勢を、図8A〜図8Hの第1段(最上段)のイラストレーションA−1〜A−4、B−1〜B−4、C−1〜C−4、D−1〜D−4、E−1〜E−3、F−1〜F−3、G−1〜G−3、H−1〜H−3で表した。しかしながら、これに限られるものではなく、被験者90の姿勢を、別のタイプのイラストレーション、例えば図8A〜図8Hの第2段のイラストレーションで表してもよい。図8A〜図8Hの第2段のイラストレーションは、被験者90の姿勢を鉛直上方から見たところを模式化して表している。第2段のイラストレーションでは、被験者90の頭90hは楕円で表され、体幹90bは半楕円で表され、左上腕90aが角丸長方形で表されている。このようなイラストレーションによっても、ユーザは、血圧測定時の被験者90の姿勢の時間経過を直感的に知ることができる。
また、この血圧計1では、カフ20と本体10とが一体に構成されたが、これに限られるものではない。それに代えて、カフ20と本体10とが別体として構成され、エア配管39に相当する細長いチューブを介して接続されてもよい。その場合、加速度センサ34は、被験者90の姿勢を検出できるように、カフ20に搭載(内蔵)されるのが望ましい。
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。