以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係るエジェクタ10は、駆動流体の流れを利用して被駆動流体を吸引する流体ポンプとして機能するものである。エジェクタ10は、ケース100と、ノズル300と、第1吸引部210と、第2吸引部220と、を備えている。
ケース100は、内部に空間が形成された筒状の部材である。当該空間は直線状の流路として形成されている。図1では、ケース100の内部の空間において流体の流れる方向が点線の矢印DL1で示されている。ケース100は、流体の流れる方向に対して垂直な断面の形状が円形となっている。ただし、その直径(断面の内径及び外径)は、上記方向に沿った各部において異なっている。ケース100のうち上流側(図1では左側)の端部は、壁111により塞がれている。ケース100のうち下流側(図1では右側)の端部には、流体の出口である排出口131が形成されている。
ケース100は、本体部110と、混合部120と、ディフューザ部130と、を有しており、これらが一体となるように形成されている。本体部110は、ケース100のうち最も上流側の部分である。本体部110のうち混合部120側の部分はテーパー状に形成されており、下流側に行くほどその内径が小さくなっている。後に説明するように、本実施形態における本体部110は、第1吸引部210や第2吸引部220を通ってエジェクタ10に吸引された被駆動流体を受け入れる部分となっている。
混合部120は、ケース100のうち本体部110よりも下流側の部分であり、ディフューザ部130よりも上流側の部分である。混合部120は円筒形状となっており、その内径は位置に寄らず概ね一定である。後に説明するように、混合部120は、駆動流体と被駆動流体とが混合されながら流れる部分となっている。
ディフューザ部130は、ケース100のうち最も下流側の部分である。ディフューザ部130はテーパー状に形成されており、下流側に行くほどその内径が大きくなっている。後に説明するように、ディフューザ部130は、混合部120を通過した流体(駆動流体及び被駆動流体)が、引き続きその圧力を上昇させながら流れる部分となっている。ディフューザ部130の下流側端部には、既に述べたように排出口131が形成されている。
ノズル300は、ケース100の内部において駆動流体を噴射するための部材である。ノズル300は略円筒形状となっており、その内部には直線状の空間が形成されている。当該空間が、駆動流体の流れる流路となっている。ノズル300の中心軸はケース100の中心軸に一致している。ノズル300は、ケース100の壁111を垂直に貫いた状態で、ケース100に対して固定されている。
ノズル300のうち上流側の端部は、ケース100の外側に向けて突出している。当該端部には、駆動流体の入口である供給口310が形成されている。ノズル300のうち下流側の端部近傍の部分はテーパー状に形成されており、下流側に行くほどその内径が小さくなっている。ノズル300の下流側の端部には、駆動流体の出口である噴射口320が形成されている。供給口310からノズル300に供給された駆動流体は、その流速を高めながらノズル300の内部を流れた後、ケース100の内部において噴射口320から噴射される。駆動流体が流れて噴射される方向は、混合部120及びディフューザ部130を流体が流れる方向、すなわち図1の矢印DL1で示される方向と同一である。以下では、当該方向のことを「噴射方向」とも称する。
第1吸引部210は円筒形状の配管であって、その一端がケース100のうち本体部110の側壁112に接続されている。第1吸引部210の内部空間と、本体部110の内部空間とは繋がっている。第1吸引部210は、エジェクタ10に吸引される被駆動流体をケース100の内部に導くための部分となっている。第1吸引部210の中心軸は、ケース100の中心軸に対して垂直に交差している。本実施形態では、第1吸引部210はケース100と一体に形成されている。第1吸引部210の下流側端部、すなわち第1吸引部210と側壁112との接続部分には、被駆動流体の出口である第1吸引口211が形成されている。
第2吸引部220は円筒形状の配管であって、その一端がケース100のうち本体部110の側壁112に接続されている。第2吸引部220が側壁112に接続されている位置は、第1吸引部210が側壁112に接続されている位置よりも噴射方向における下流側となっている。
第2吸引部220の内部空間と、本体部110の内部空間とは繋がっている。第1吸引部210と同様に、第2吸引部220は、エジェクタ10に吸引される被駆動流体をケース100の内部に導くための部分となっている。第2吸引部220の中心軸は、ケース100の中心軸に対して垂直に交差している。本実施形態では、第2吸引部220はケース100と一体に形成されている。第2吸引部220の下流側端部、すなわち第2吸引部220と側壁112との接続部分には、被駆動流体の出口である第2吸引口221が形成されている。
尚、エジェクタ10を噴射方向に沿って見た場合において、第1吸引部210の中心軸と、第2吸引部220の中心軸とのなす角は、0度であってもよくそれ以外の角度であってもよい。
ノズル300の噴射口320から駆動流体が噴射されると、駆動流体の流れに起因して、ケース100の内部における圧力は低下する。これにより、第1吸引部210及び第2吸引部220のそれぞれから被駆動流体が吸引され、本体部110の内部に流入する。吸引されたそれぞれの被駆動流体は、混合部120において駆動流体と合流し、駆動流体と混合されながら下流側に向かって流れる。その際、混合流体の圧力は、下流側に行くに従って次第に大きくなる。混合流体は、引き続き圧力を上昇させながらディフューザ部130を流れた後、排出口131から外部へと排出される。
図2を参照しながら、ケース100の内部における圧力の分布について説明する。図2の下部に示されたグラフには、ノズル300から駆動流体が噴射されているときの、ケース100の内部における圧力分布が示されている。図2の横軸は、駆動流体が流れる方向、すなわち点線DL1で示される噴射方向における座標を示している。当該座標のことを、以下では「x座標」とも表記することがある。
図2では、第1吸引口211のx座標がx1として示されており、第2吸引口221のx座標がx2として示されており、噴射口320のx座標がx3として示されている。このように、本実施形態における第1吸引口211及び第2吸引口221は、駆動流体が流れる方向における座標が互いに異なる位置にそれぞれ形成されている。また、図2では、混合部120の下流側端部におけるx座標がx4として示されており、排出口131のx座標がx5として示されている。
図2の線PL1は、ケース100の中心軸上における圧力分布を示すグラフである。従って、線PL1のうちx3よりも上流側(左側)の部分は、ノズル300の内部における駆動流体の圧力分布を示している。また、線PL1のうちx3よりも下流側(右側)の部分は、混合部120やディフューザ部130の内部における混合流体の圧力分布を示している。
図2の線PL2は、本体部110の内部のうち、ノズル300の周囲の空間における圧力分布を示している。
線PL1で示されるように、外部から駆動流体が供給されることに伴って、ノズル300の内部における圧力(P4)は比較的高くなっている。駆動流体の圧力は、噴射口320に近づくに従って次第に低くなって行き、噴射口320から噴射された直後の位置において最も低い圧力(P1)となる。
線PL2で示されるように、本体部110のうち上流側、すなわち壁111の近傍における圧力は、ノズル300内の圧力(P4)よりも低く、且つ、噴射口320の近傍における圧力(P1)よりも高い。ただし、噴射口320に近づくに従って、噴射される駆動流体の流れの影響により本体部110内の圧力は低くなって行く。線PL2と線PL1とは、x座標がx3の位置から下流側において互いに重なっている。
既に述べたように、x3よりも下流側の部分においては、駆動流体と被駆動流体との混合流体が、下流側に行くに従って昇圧されながら流れている。このため、ケース100の内部においては、噴射口320の位置(x3)において圧力が最も低くなっている。つまり、噴射口320から上流側又は下流側に向けて遠ざかるほど、ケース100内の圧力は高くなっている。
本実施形態では、駆動流体が流れる方向(矢印DL1の噴射方向)における噴射口320から第2吸引口221までの距離が、同方向における噴射口320から第1吸引口211までの距離よりも短くなっている。ノズル300から駆動流体が噴射されているときには、上記のような構成において図2のような圧力分布がケース100内で生じている。その結果、第2吸引口221の位置(x2)における圧力(P2)が、第1吸引口211の位置(x1)における圧力(P3)よりも低い状態となっている。換言すれば、第1吸引口211と第2吸引口221との間において圧力差が生じた状態となるように、第1吸引部210や第2吸引部220のそれぞれの位置が決定されている。このような圧力差を生じさせることの効果については、後に説明する。
エジェクタ10を用いた流体循環システムの一例について、図3を参照しながら説明する。図3には、例えば車両用空調装置に用いられる冷凍サイクル400の構成が模式的に示されている。冷凍サイクル400は、エジェクタ10の他に、圧縮機410と、凝縮器420と、第1蒸発器431と、第2蒸発器432と、気液分離器440と、を備えている。
圧縮機410は、冷媒を圧縮して凝縮器420側に送り出し、これにより冷凍サイクル400において冷媒を循環させるための装置である。圧縮機410は、外部から電力の供給を受けて動作する。従って、圧縮機410の動作負荷が大きくなるほど、圧縮機410では大きな電力(エネルギー)が消費されてしまうこととなる。冷凍サイクルの動作効率を向上させるためには、圧縮機410の動作負荷を可能な限り小さく抑えることが望ましい。
圧縮機410から送り出された冷媒は、配管401を通って凝縮器420に供給される。凝縮器420は、圧縮機410において高温となった冷媒と空気との間で熱交換を行わせ、冷媒を凝縮させるための熱交換器である。冷媒は、凝縮器420を通過する際において凝縮し、気相から液相へと変化する。その後、冷媒は配管402を通ってエジェクタ10の供給口310に供給される。つまり、本実施形態では、凝縮器420から排出された冷媒が、駆動流体としてノズル300から噴射される。その際、図2に示されるように、冷媒の圧力はP4からP1へと大きく低下する。冷凍サイクル400においては、エジェクタ10が所謂「膨張弁」として機能する。
ノズル300から噴射された冷媒は、第1蒸発器431等から吸引された冷媒と共にエジェクタ10の内部において昇圧され、排出口131から排出される。その後、冷媒は配管403を通って気液分離器440に供給される。
気液分離器440は、内部において気相の冷媒と液相の冷媒とを分離するために設けられた容器である。気液分離器440の上方側部分と圧縮機410との間は、配管404によって接続されている。このため、エジェクタ10から排出された冷媒のうち気相の冷媒のみが、圧縮機410に吸引され、再び凝縮器420に向かって流れる。
気液分離器440の下方側部分には配管405の一端が接続されている。配管405の他端側は、配管406と配管407とに分岐している。配管406は、気液分離器440から排出された液相の冷媒を、第1蒸発器431に供給するための配管である。配管407は、気液分離器440から排出された液相の冷媒を、第2蒸発器432に供給するための配管である。
第1蒸発器431は、気液分離器440を経由してエジェクタ10から供給される低圧の冷媒と、空気との間で熱交換を行わせ、冷媒を蒸発させるための熱交換器である。冷媒は、第1蒸発器431を通過する際において蒸発し、液相から気相へと変化する。その後、冷媒は配管408を通ってエジェクタ10の第1吸引部210に吸引される。つまり、本実施形態では、第1蒸発器431から排出された冷媒が、第1吸引部210において被駆動流体として吸引される。配管408は、被駆動流体が流れる「第1流路」に該当するものであって、その下流側端部が第1吸引部210に接続されている。
第1蒸発器431と同様に、第2蒸発器432も、気液分離器440を経由してエジェクタ10から供給される低圧の冷媒と、空気との間で熱交換を行わせ、冷媒を蒸発させるための熱交換器として構成されている。冷媒は、第2蒸発器432を通過する際において蒸発し、液相から気相へと変化する。その後、冷媒は配管409を通ってエジェクタ10の第2吸引部220に吸引される。つまり、本実施形態では、第2蒸発器432から排出された冷媒が、第2吸引部220において被駆動流体として吸引される。配管409は、被駆動流体が流れる「第2流路」に該当するものであって、その下流側端部が第2吸引部220に接続されている。
配管405の途中には絞り411が設けられている。また、配管407の途中には絞り412が設けられている。冷媒は、それぞれの絞りを通過する際においてその圧力を低下させる。このため、冷凍サイクル400が動作しているときには、第2蒸発器432の内部における冷媒の圧力は、第1蒸発器431の内部における冷媒の圧力よりも低くなっている。その結果として、第2蒸発器432の内部における冷媒の温度は、第1蒸発器431の内部における冷媒の温度よりも低くなっている。
このような構成により、第1蒸発器431を通過した空気の温度と、第2蒸発器432を通過した空気の温度とを異ならせることができる。このため、冷凍サイクル400を備えた空調装置は、複数の冷却対象空間のそれぞれにおける冷房を、異なる設定温度で同時に行うことが可能となっている。
絞り412が設けられていることにより、配管409の内部における冷媒の圧力は、配管408の内部における冷媒の圧力よりも低くなっている。本実施形態では、低圧側の配管408が、図2に示されるように低圧(P2)となっている第2吸引部220に接続されている。また、高圧側の配管409が、図2に示されるように高圧(P3)となっている第1吸引部210に接続されている。このため、配管408の途中に絞りが設けられていない構成でありながら、第1蒸発器431と第2蒸発器432との間における冷媒の圧力差が維持されている。
冷凍サイクル400が動作しているときの、各部における冷媒の状態について、図4を参照しながら説明する。図4は所謂モリエル線図であって、その横軸は冷媒の比エンタルピであり、その縦軸は冷媒の圧力である。また、臨界点CPよりも左側に描かれた点線L1は飽和液線であり、臨界点CPよりも右側に描かれた点線L2は飽和蒸気線である。以下では、それぞれ「飽和液線L1」及び「飽和蒸気線L2」と表記する。
図4では、冷凍サイクル400の各部における冷媒の状態を表す状態点が、状態点S01乃至S12として示されている。状態点S01は、圧縮機410から排出され、凝縮器420に流入する直前における冷媒の状態を表している。状態点S02は、凝縮器420から排出された直後における冷媒の状態を表している。状態点S01から状態点S02に移行する際には、冷媒が凝縮されることに伴ってその比エンタルピが減少する。
状態点S03は、ノズル300の内部のうち、噴射口320から噴射される直前における冷媒の状態を表している。状態点S02から状態点S03に移行する際には、冷媒の膨張エネルギーが運動エネルギーに変換されることに伴って、冷媒の圧力及び比エンタルピが減少する。
状態点S04は、混合部120における冷媒の状態を表している。当該冷媒は、噴射口320から噴射された冷媒(駆動流体)と、第1蒸発器431及び第2蒸発器432から排出された冷媒(被駆動流体)とが混合された直後の冷媒である。状態点S03から状態点S04への変化は、上記のような駆動流体と被駆動流体との混合によって生じるものである。
状態点S05は、エジェクタ10の出口、すなわち排出口131における冷媒の状態を表している。状態点S04から状態点S05に移行する際には、エジェクタ10の内部で昇圧されることによって冷媒の圧力が上昇している。また、それに伴い冷媒の比エンタルピも増加している。
状態点S06は、圧縮機410に吸引される直前における冷媒の状態を表している。状態点S06で示される冷媒は、気液混合の状態から気液分離器440を通過した直後の気相冷媒である。従って、状態点S06は飽和蒸気線L2上の状態点となっている。冷媒が圧縮機410で圧縮されると、冷媒の状態は状態点S06から状態点S01に移行する。その際、圧縮されることに伴って、冷媒の圧力及び比エンタルピはいずれも増加する。
状態点S07は、気液分離器440と絞り411との間における冷媒の状態を表している。状態点S07で示される冷媒は、気液混合の状態から気液分離器440を通過した直後の液相冷媒である。従って、状態点S07は飽和液線L1上の状態点となっている。
状態点S08は、絞り411を通過した直後における冷媒の状態を表している。絞り411を通過する際における冷媒の位置エネルギー変化や運動エネルギー変化は無視することができる程度である。従って、状態点S07から状態点S08に移行する際には、冷媒の圧力のみが減少し、冷媒の比エンタルピは殆ど変化しない。
状態点S09は、絞り412を通過した直後における冷媒の状態を表している。絞り412を通過する際における冷媒の位置エネルギー変化や運動エネルギー変化は無視することができる程度である。従って、状態点S08から状態点S09に移行する際においても、冷媒の圧力のみが減少し、冷媒の比エンタルピは殆ど変化しない。
状態点S10は、第1蒸発器431から排出された直後における冷媒の状態を表している。状態点S08から状態点S10に移行する際には、冷媒が蒸発することに伴ってその比エンタルピが増加する。またその際には冷媒の圧力が僅かに減少する。第1蒸発器431から排出された冷媒は、第1吸引部210からエジェクタ10の内部に吸引される。その後、本体部110の内部を、高圧側の第1吸引口211から、低圧側の第2吸引口221に向かって移動する。状態点S12は、このように移動する冷媒が第2吸引口221の位置に到達した際における冷媒の状態を表している。状態点S10から状態点S12に移行する際には、冷媒の状態は等エントロピ線L3に沿って変化する。その際、冷媒の比エンタルピは減少する。
第1吸引口211から第2吸引口221に移動した冷媒は、駆動流体であるノズル300からの冷媒と合流する。その結果、冷媒の状態を示す状態点は、状態点S12から状態点S04に移行する。
状態点S11は、第2蒸発器432から排出された直後における冷媒の状態を表している。状態点S09から状態点S11に移行する際には、冷媒が蒸発することに伴ってその比エンタルピが増加する。またその際には冷媒の圧力が僅かに減少する。第2蒸発器432から排出された冷媒は、第2吸引部220からエジェクタ10の内部に吸引された後、駆動流体であるノズル300からの冷媒と合流する。その結果、冷媒の状態を示す状態点は状態点S11から状態点S04に移行する。
以上のように、本実施形態に係る冷凍サイクル400では、被駆動流体の流れる経路として、第1蒸発器431を通る第1の経路(配管406及び配管408)と、第2蒸発器432を通る第2の経路(配管407及び配管409)とを有している。これらのうち、第2の経路の内部における冷媒の圧力は、第1の経路の内部における冷媒の圧力よりも低くなっている。このような第2の経路の下流側端部が、低圧側の第2吸引部220に接続されている。また、第1の経路の下流側端部が、高圧側の第1吸引部210に接続されている。
このような構成とすることの効果を説明するために、比較例に係る冷凍サイクル400Dについて説明する。図9には、冷凍サイクル400Dの構成が示されている。冷凍サイクル400Dのうち、冷凍サイクル400と共通の構成要素には、図3に示されるものと同一の符号が付されている。
冷凍サイクル400Dが備えるエジェクタ10Dは、図1に示されるエジェクタ10から第1吸引部210を無くしたものである。つまり、エジェクタ10Dは、従来のエジェクタと同様に、被駆動流体を吸引するための部分(第2吸引部220)を1つだけ有する構成となっている。エジェクタ10Dのその他の構成については、エジェクタ10の構成と同一である。
冷凍サイクル400Dでは、配管408の下流側端部と配管409の下流側端部とが、配管409Dの一端に接続されている。配管409Dの他端側は、エジェクタ10Dの第2吸引部220に接続されている。このように、冷凍サイクル400Dでは、第1蒸発器431から排出された冷媒と、第2蒸発器432から排出された冷媒とが、予め合流した後にエジェクタ10Dに吸引される構成となっている。
尚、配管408の途中には絞り413が設けられている。これにより、第1蒸発器431の内部における冷媒と、第2蒸発器432の内部における冷媒と、の間における圧力差(及びその結果としての温度差)が維持されている。
冷凍サイクル400Dが動作しているときの、各部における冷媒の状態について、図10を参照しながら説明する。図10は、図4と同様に描かれたモリエル線図である。図10に示される「S01」等の符号が意味するところは、図4に示される各符号が意味するところと概ね同じである。例えば、図10における状態点S01は、冷凍サイクル400Dの圧縮機410から排出され、凝縮器420に流入する直前における冷媒の状態を表している。ただし、互いに同一の符号が付された状態点であっても、それぞれの状態点で示される冷媒の圧力や比エンタルピの大きさが互いに異なっている場合がある。以下では、図4と異なる部分についてのみ説明し、図4と共通する部分については適宜説明を省略する。
冷凍サイクル400Dでは、第1蒸発器431を通った直後における冷媒(状態点S10)は、絞り413を通ることによって更にその圧力を低下させた後にエジェクタ10Dに吸引される。冷媒が絞り413を通る際において、冷媒の状態は状態点S10から状態点S12へと変化する。
このとき、例えば状態点S07から状態点S08に移行する場合と同様に、冷媒の比エンタルピはほとんど変化しない。その結果、(図4のように)冷媒の状態が等エントロピ線に沿って変化する場合に比べると、エジェクタ10Dに吸引される直前における冷媒の比エンタルピは大きくなっている。つまり、図10の状態点S12で表される冷媒の比エンタルピは、図4の状態点S12で表される冷媒の比エンタルピよりも大きい。これは、絞り413を通過した直後において冷媒の流れが乱れることにより、一部の運動エネルギーが熱エネルギーに変化したためである。換言すれば、冷凍サイクル400Dにおいては、絞り413を通過する際における冷媒の膨張仕事(上記のような比エンタルピの差)が、無駄に捨てられてしまうこととなる。
その結果、図10では、状態点S04で示される比エンタルピが図4の場合よりも大きくなっている。これにより、エジェクタ10Dの内部における昇圧量が、エジェクタ10の内部における昇圧量よりも小さくなっている。従って、図10の状態点S05で示される冷媒の圧力は、図4の状態点S05で示される冷媒の圧力よりも低い。
図4に示されている例と同じ様に冷凍サイクル400Dを機能させるためには、エジェクタ10Dから排出された冷媒(状態点S05)を、状態点S01で示される圧力となるまで圧縮機410によって圧縮しなければならない。尚、図10の状態点S01で示される圧力は、図4の状態点S01で示される圧力と同一である。
冷媒を圧縮し、状態点S05から状態点S01に移行させるために必要な動力は、図4の例よりも図10の例の方が大きくなる。つまり、冷凍サイクル400Dにおいては、第1蒸発器431と第2蒸発器432との間で圧力差を維持するために絞り413が設けられた結果として、圧縮機410の動作負荷が大きくなってしまっている。
これに対し、図3及び図4に示される冷凍サイクル400では、配管408の途中に絞り413が設けられていない構成でありながら、第1蒸発器431と第2蒸発器432との間における冷媒の圧力差が維持されている。図2乃至図4を参照しながら説明したように、上記圧力差は、エジェクタ10の内部で生じている既存の圧力分布を利用することによって実現されている。
また、冷凍サイクル400では、図2に示される構成のエジェクタ10を用いることにより、第1蒸発器431の下流側で無駄に捨てられてしまう膨張仕事が生じない構成となっている。圧縮機410の動作負荷が軽減されるので、図9に示される構成の冷凍サイクル400Dと比較した場合において、冷凍サイクル400の動作効率が向上している。
尚、冷凍サイクル400では、被駆動流体の流れる経路が2つ存在している。このような態様に替えて、被駆動流体の流れる経路が3つ以上存在しているような態様であってもよい。その場合には、被駆動流体の流れる経路の数と同数の吸引部(第1吸引部210や第2吸引部220に相当するもの)が、エジェクタ10に備えられることとなる。また、被駆動流体の流れる経路のそれぞれのおける圧力の大きさと、エジェクタ10の内部における圧力分布とに応じて、エジェクタ10に対する各経路の接続先(吸引部)が決定されることとなる。
本発明の第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。第2実施形態に係るエジェクタ10Aは、第1吸引部210が設けられている位置、及び第2吸引部220が設けられている位置において、第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
本実施形態においては、第1吸引部210及び第2吸引部220が本体部110の側壁112に接続されているのではなく、いずれも混合部120に接続されている。図5においては、第1吸引口211のx座標がx11として示されており、第2吸引口221のx座標がx12として示されている。x11及びx12はいずれも、噴射口320のx座標(x3)よりも排出口131側の座標となっている。
第1実施形態に係るエジェクタ10においては、駆動流体が流れる方向(噴射方向)おいて噴射口320よりも上流側となる位置に、第1吸引口211及び第2吸引口221のいずれもが形成されていた。これに対し、第2実施形態に係るエジェクタ10Aにおいては、駆動流体が流れる方向おいて噴射口320よりも下流側となる位置に、第1吸引口211及び第2吸引口221のいずれもが形成されている。
本実施形態でも、駆動流体が流れる方向(矢印DL1の噴射方向)における噴射口320から第2吸引口221までの距離が、同方向における噴射口320から第1吸引口211までの距離よりも短くなっている。このため、図2の下方に示されたグラフを見ると明らかなように、ノズル300から駆動流体が噴射されているときには、第2吸引口221の位置(x12)における圧力が、第1吸引口211の位置(x11)における圧力よりも低い状態となる。従って、図3の冷凍サイクル400において、エジェクタ10をエジェクタ10Aに置き換えた場合であっても、これまでに説明したものと同一の効果を奏する。
本発明の第3実施形態について、図6を参照しながら説明する。第3実施形態に係るエジェクタ10Bは、第1吸引部210が設けられている位置、及び第2吸引部220が設けられている位置において、第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
本実施形態においては、第2吸引部220が本体部110の側壁112ではなく混合部120に接続されている。第1吸引部210は、本実施形態においても本体部110の側壁112に接続されている。ただし、第2吸引部220の接続位置が上記のように変更されたことに伴って、第1吸引部210の接続位置は、図2に示される第1吸引部210の位置よりも僅かに排出口131側寄りの位置となっている。
図6においては、第1吸引口211のx座標がx21として示されており、第2吸引口221のx座標がx22として示されている。x21は噴射口320のx座標(x3)よりも壁111側の座標となっている。x22は噴射口320のx座標(x3)よりも排出口131側の座標となっている。
つまり、第3実施形態に係るエジェクタ10Bにおいては、駆動流体が流れる方向(矢印DL1の噴射方向)において噴射口320よりも上流側となる位置に第1吸引口211が形成されており、噴射口320よりも下流側となる位置に第2吸引口221が形成されている。また、駆動流体が流れる方向における噴射口320から第2吸引口221までの距離が、同方向における噴射口320から第1吸引口211までの距離よりも短くなっている。このため、図2の下方に示されたグラフを見ると明らかなように、ノズル300から駆動流体が噴射されているときには、第2吸引口221の位置(x22)における圧力が、第1吸引口211の位置(x21)における圧力よりも低い状態となる。従って、図3の冷凍サイクル400において、エジェクタ10をエジェクタ10Bに置き換えた場合であっても、これまでに説明したものと同一の効果を奏する。
尚、駆動流体が流れる方向における噴射口320から第2吸引口221までの距離が、同方向における噴射口320から第1吸引口211までの距離よりも長くなっているような態様であってもよい。この場合、第1吸引部210の機能と、第2吸引部220の機能とが互いに入れ替わることとなる。つまり、第1吸引部210には第2蒸発器432からの配管409が接続され、第2吸引部220には第1蒸発器431からの配管408が接続されることとなる。
本発明の第4実施形態について、図7を参照しながら説明する。第4実施形態に係るエジェクタ10Cは、第1吸引部210及び第2吸引部220のそれぞれの構成において、第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
本実施形態においては、第1吸引部210が円筒形状の部材として形成されており、本体部110の壁111を貫いた状態でケース100に固定されている。第1吸引部210の中心軸は、ケース100の中心軸と平行である。このため、第1吸引部210を被駆動流体が流れる方向(矢印AR1で示される第1方向)は、ノズル300から駆動流体が噴射される方向と同一の方向となっている。
第2吸引部220についても同様である。第2吸引部220は円筒形状の部材として形成されており、本体部110の壁111を貫いた状態でケース100に固定されている。第2吸引部220の中心軸は、ケース100の中心軸と平行である。このため、第2吸引部220を被駆動流体が流れる方向(矢印AR2で示される第2方向)は、ノズル300から駆動流体が噴射される方向と同一の方向となっている。
第1吸引部210と第2吸引部220とは、本体部110の内側に配置された部分の長さにおいて互いに異なっている。図7においては、第1吸引口211のx座標がx31として示されており、第2吸引口221のx座標がx32として示されている。x31及びx32はいずれも、噴射口320のx座標(x3)よりも壁111側の座標となっている。
本実施形態では、第2吸引部220の方が、第1吸引部210よりも更に下流側(排出口131側)に向かって伸びている。このため、駆動流体が流れる方向(矢印DL1の噴射方向)における噴射口320から第2吸引口221までの距離は、同方向における噴射口320から第1吸引口211までの距離よりも短くなっている。
このため、図2の下方に示されたグラフを見ると明らかなように、ノズル300から駆動流体が噴射されているときには、第2吸引口221の位置(x32)における圧力が、第1吸引口211の位置(x31)における圧力よりも低い状態となる。従って、図3の冷凍サイクル400において、エジェクタ10をエジェクタ10Cに置き換えた場合であっても、これまでに説明したものと同一の効果を奏する。
また、エジェクタ10Cにおいては、駆動流体の流れる方向と、被駆動流体の流れる方向とが概ね平行となる。駆動流体と被駆動流体との衝突が生じにくいので、流体の流れが乱れて一部の運動エネルギーが熱エネルギーに変化してしまう現象が抑制される。その結果、エジェクタ10Cにおける流体の昇圧を効率よく生じさせることができる。
尚、第1吸引部210及び第2吸引部220のうち一方のみの中心軸が、ケース100の中心軸と平行となっているような態様であってもよい。つまり、第1吸引部210及び第2吸引部220のうち一方のみを図7に示されるような構成とし、他方については図1等に示されるような構成としてもよい。
エジェクタ10等は、図3に示される冷凍サイクル以外の流体循環システムにも用いることができる。図8には、エジェクタ10を用いた流体循環システムの他の例として、燃料電池システム500が示されている。燃料電池システム500は、エジェクタ10の他に、セルスタック510と、燃焼器530と、改質器520と、を備えている。
セルスタック510は、複数の単セル(不図示)の集合体である。それぞれの単セルは、固体酸化物形の燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であって、平板状の固体電解質の一方側の面に燃料極(アノード)が形成され、他方側の面に空気極(カソード)が形成された構成となっている。これら燃料極及び空気極は、いずれも導電性のセラミックスで形成された多孔質体である。
セルスタック510には、配管556と、配管564とが接続されている。配管556は、後述の改質器520において生成された水素含有ガス(以下、「燃料ガス」とも称する)をセルスタック510に供給するための配管である。配管556を通ってセルスタック510に供給された燃料ガスは、それぞれの単セルの燃料極に到達し、発電に供される。
配管564は、後述の空気ブロア562から送り込まれた発電用の空気(酸化剤)をセルスタック510に供給するための配管である。配管564を通ってセルスタック510に供給された空気は、それぞれの単セルの空気極に到達し、発電に供される。
燃焼器530は、発電に寄与することなくセルスタック510から排出された残余の燃料ガスを燃焼させるためのバーナーである。燃焼器530には、配管557と、配管565と、配管591とがそれぞれ接続されている。
配管557は、セルスタック510から排出された残余の燃料ガスを燃焼器530に供給するための配管である。配管557は、一端がセルスタック510に接続されており、他端が燃焼器530に接続されている。
配管565は、発電に寄与することなくセルスタック510から排出された残余の空気を、燃焼器530に供給するための配管である。配管565は、一端がセルスタック510に接続されており、他端が燃焼器530に接続されている。
燃焼器530では、配管557を通った残余の燃料ガスと、配管565を通った残余の空気との混合気体が燃焼し、高温の燃焼排ガスが生じる。配管591は、このように生じた燃焼排ガスを外部に排出するための配管である。配管591は、その一端が燃焼器530に接続されている。また、配管591の他端側は2つの配管(配管592、配管595)に分岐している。
配管592は、配管591の下流側端部と後述の熱交換器580とを繋ぐ配管である。配管592を通って熱交換器580に供給された燃焼排ガスは、熱交換器580における熱交換に供された後、配管594を通って外部に排出される。
配管595は、配管591の下流側端部と後述の熱交換器570とを繋ぐ配管である。配管595を通って熱交換器570に供給された燃焼排ガスは、熱交換器570における熱交換に供された後、配管596を通って外部に排出される。
改質器520は、原燃料ガス(都市ガス)及び水蒸気の供給を受けて水蒸気改質を行い、これにより燃料ガスを生成するものである。改質器520には、配管556の上流側端部が接続されている。また、改質器520には、配管555の下流側端部も接続されている。配管555は、改質器520に原燃料ガス及び水蒸気等を供給するための配管である。配管555の上流側端部は、エジェクタ10の排出口131に接続されている。
改質器520の内部には、アルミナの球体表面にニッケル等の触媒金属を担持させてなる改質触媒(不図示)が多数充填されている。配管555を通った原燃料ガス及び水蒸気が改質器520に供給されると、これらが改質触媒に触れることによって水蒸気改質反応が生じ、燃料ガスが生成される。既に述べたように、燃料ガスは、配管556を通ってセルスタック510に供給される。
尚、改質器520において水蒸気改質反応が生じるためには、改質器520及び内部の改質触媒が高温(約700℃)となっている必要がある。また、水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、反応を維持するためには、外部から改質器520に対して継続的に熱が加えられる必要がある。本実施形態では、燃焼排ガスが通る配管592の一部が改質器520の近傍に配置されている。具体的には、配管592の一部が改質器520の外壁面に接しており、配管592を通る燃焼排ガスの熱が改質器520に伝達されるような構成となっている。燃焼排ガスの熱によって、改質器520の内部における水蒸気改質反応が維持される。
セルスタック510に供給される空気の流れについて説明する。空気は、空気供給源560から配管561を通って燃料電池システム500に供給され、空気ブロア562によってセルスタック510に送り込まれる。配管561は、空気供給源560と空気ブロア562とを繋ぐ配管である。本実施形態においては、空気供給源560は大気である。
空気ブロア562とセルスタック510との間には、熱交換器580が設けられている。空気ブロア562と熱交換器580との間は配管563で繋がれており、熱交換器580とセルスタック510との間は配管564で繋がれている。熱交換器580は、配管592を通る高温の燃焼排ガスと、配管563を通る空気との間で熱交換を行わせることにより、空気を加熱するための熱交換器である。空気は、熱交換器580において加熱されその温度を上昇させた後に、配管564を通ってセルスタック510に供給される。
改質器520に供給される水蒸気の流れについて説明する。水蒸気の原料となる液体の水は、水供給源550から配管551を通って燃料電池システム500に供給され、水供給ポンプ552によって改質器520側に送り込まれる。ただし、水供給ポンプ552と改質器520との間は直結されておらず、両者の間には熱交換器570とエジェクタ10とが配置されている。本実施形態では、水供給源550は給水タンクである。
水供給ポンプ552と熱交換器570との間は配管553で繋がれており、熱交換器570とエジェクタ10との間は配管554で繋がれている。配管554の下流側端部は、エジェクタ10のうち供給口310に接続されている。
熱交換器570は、配管595を通る高温の燃焼排ガスと、配管553を通る水との間で熱交換を行わせることにより、水を加熱して水蒸気を生成するための熱交換器である。水は、熱交換器570において加熱され水蒸気となった後に、配管554を通ってエジェクタ10の供給口310に供給される。これにより、エジェクタ10の内部では、ノズル300の噴射口320から水蒸気が噴射される。つまり、本実施形態では、熱交換器570において生成された水蒸気が、駆動流体としてノズル300から噴射される。
改質器520に供給される原燃料ガスの流れについて説明する。原燃料ガスである都市ガスは、原燃料供給源540から配管541を通って燃料電池システム500に供給され、ガスブロア542によって改質器520側に送り込まれる。ただし、ガスブロア542と改質器520との間は直結されておらず、両者の間にはエジェクタ10が配置されている。本実施形態では、原燃料供給源540はガスメータである。
ガスブロア542とエジェクタ10との間は配管543で繋がれている。配管543の下流側端部は、エジェクタ10のうち第1吸引部210に接続されている。本実施形態では、ガスブロア542から送り込まれた原燃料ガスが、第1吸引部210において被駆動流体として吸引される。配管543は、被駆動流体が流れる「第1流路」に該当するものである。第1吸引部210において吸引された原燃料ガスは、エジェクタ10の内部において水蒸気等と混合され、配管555を通って改質器520に供給される。
セルスタック510と燃焼器530とを繋ぐ配管557は途中で分岐しており、分岐した配管558の下流側端部がエジェクタ10の第2吸引部220に接続されている。本実施形態では、配管557を流れる残余の燃料ガスの一部が、配管558をエジェクタ10に向かって流れた後、第2吸引部220において被駆動流体として吸引される。配管558は、被駆動流体が流れる「第2流路」に該当するものである。第2吸引部220において吸引された残余の燃料ガスは、エジェクタ10の内部において水蒸気及び原燃料ガスと混合され、配管555を通って改質器520に供給される。このような構成により、残余の燃料ガスに含まれる水蒸気や水素が、水蒸気改質や発電のために再利用される。
本実施形態では、液体の水が水供給ポンプ552によって加圧され、その後に水蒸気となって駆動用流体として用いられる。このため、気体がポンプによって加圧され、当該気体が駆動用流体として用いられるような態様と比べると、加圧に要するエネルギーが非常に小さくなっている。水供給ポンプ552の動作のために必要なエネルギーが小さいので、燃料電池システム500の動作効率が高くなっている。
本実施形態では、配管558の内部における残余の燃料ガスの圧力よりも、配管543の内部における原燃料ガスの圧力の方が高くなるように、ガスブロア542の動作が制御されている。尚、配管558の内部における残余の燃料ガスの圧力よりも、配管543の内部における原燃料ガスの圧力の方が低い場合には、配管543が第2吸引部220に接続され、配管558が第1吸引部210に接続された方が望ましい。
尚、エジェクタ10に替えて、エジェクタ10A、10B、10Cのいずれかが燃料電池システム500に用いられるような態様であってもよい。
また、エジェクタ10等は、冷凍サイクル400や燃料電池システム500の他にも、様々な種類の流体循環システムにおいて用いることができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。