JP6596230B2 - 鉛直変位計測装置 - Google Patents

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本発明は、構造物および地盤の鉛直変位を計測するための鉛直変位計測装置に関する。
従来より、構造物や地盤の沈下量を計測する手段として、例えば、特許文献1に開示されているような沈下計測装置が知られている。
特許文献1に開示されている沈下計測装置は、トンネル内の沈下量を把握すべく用いられているものであり、通気管を備えた密閉容器に納められて、水位を一定に保った基準水槽と、測定管と、基準水槽と測定管とを水面下で連通する連通管と、水面よりも上部において前記密閉容器と前記測定管とを連通するエアー管とを備えている。
そして、基準水槽を、地盤の高さ変動が生じないような堅固な場所に設置し基準水槽内の水面を基準水面として設定するとともに、測定管を、沈下量を把握したい任意の測定点に設置する。この状態にあって、測定管を設置した測定点に沈下が生じると、これに伴って測定管も高さが変化するため、測定点の沈下量に応じて測定管中の水位が変化する。この水位変化から、基準水面に対する測定点の沈下量を計測するものである。
特開2002−340549号公報
しかし、沈下計測装置は、基準水槽が基準水面を得る本水槽と予備水槽の2槽に分割されてなり、本水槽に対して揚水ポンプを介して予備水槽から絶えず水を供給し、本水槽を絶えずオーバーフローさせることで、基準水槽の基準水面を一定に保持する構成を有している。
このように、基準水槽が大掛かりな装置になるため、現場への搬出入が煩雑なだけでなく、トンネル内に沈下計測装置を設置しようとすると、基準水槽を設置するための場所をあらためて確保する必要が生じる。
また、このような構成の基準水槽は、一度設置するとその後の位置移動が困難であり、基準水面の高さ位置を微調整することも容易ではない。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、コンパクトな形状で設置場所を選ばず、取り扱いが容易な鉛直変位計測装置を提供することである。
かかる目的を達成するため本発明の鉛直変位計測装置は、基準水面に対する測定対象位置の鉛直変位を計測する鉛直変位計測装置であって、測定対象位置に配置され、水が充填される液室と空気室とを水圧検知部にて区画した鉛直変位計測部と、該鉛直変位計測部より上方に配置され、上半を満たす空気と下半を満たす水のみが収納されるとともに該水の水面が基準水面に設定される密閉した単一水槽よりなる基準水槽と、一端が前記基準水槽の底部に、他端が前記鉛直変位計測部の液室に連結されて、該液室と前記基準水槽とを連通するとともに、水が充填される連通水管と、一端が前記基準水槽の頂部に、他端が前記鉛直変位計測部の空気室に連結されて、該空気室と前記基準水槽とを連通させる大気圧調整管とを備え、前記大気圧調整管に、開閉バルブが設置されることを特徴とする。
上記の鉛直変位計測装置によれば、大気圧調整管に開閉バルブが設置されることから、開閉バルブを閉めることで、鉛直変位計測装置内に注入されている水を液室側に封じ込めることができ、空気室に流入させることがない。これにより、鉛直変位計測装置を搬送もしくは移動する場合に、鉛直変位計測装置の姿勢等を配慮することなく、自在な荷姿にて取り扱うことが可能となるとともに、測定対象位置の鉛直変位を計測する際に、鉛直変位計測装置の設置作業を容易に行うことが可能となる。
また、基準水槽に単一水槽を用いることから、従来の沈下計測装置のような水槽を二つ用いる場合と比較してその構造を簡略化でき、基準水槽を小型化して鉛直変位計測装置全体をコンパクト化することが可能となる。これにより、鉛直変位計測装置の設置に必要な場所を小さくでき、施工中の現場であっても施工機械や作業エリアと干渉することなく鉛直変位計測装置を設置し、測定対象位置の鉛直変位を計測することが可能となる。
本発明の鉛直変位計測装置は、前記基準水槽の頂部に、給排水口が備えられていることを特徴とする。
上記の鉛直変位計測装置によれば、鉛直変位を計測する際の基準水面となる基準水槽内の水面高さを、注排水口を利用して自在に調整することができるから、基準水槽を一旦設置した場合にも、基準水槽自身の高さ位置を変更することなく、基準水面の高さ位置を自在に微調整することが可能となる。
本発明の鉛直変位計測装置は、前記連通水管及び前記大気圧調整管がフレキシブル管により形成されるとともに、前記基準水槽の底部と前記鉛直変位計測部との間に、収納管が配置され、該収納管に、前記連通水管及び前記大気圧調整管が束ねられて収納されることを特徴とする。
上記の鉛直変位計測装置によれば、基準水槽、鉛直変位計測部、連通水管および大気圧調整管を連結して環状をなす鉛直変位計測装置を、一本の線状体にスリム化することができるため、鉛直変位計測装置の設置に場所をとることがなく、いずれの環境にも容易に配置することが可能となる。
本発明によれば、大気圧調整管に開閉バルブを設置することにより、鉛直変位計測装置内に注入されている水を液室側に封じ込めることができるため、鉛直変位計測装置を搬送もしくは移動する場合に、鉛直変位計測装置の姿勢等を配慮することなく自在に取り扱うことが可能になる。また、基準水槽に単一水槽を用いてその構造を簡略化することにより、鉛直変位計測装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
鉛直変位計測装置の概略を示す図である。 鉛直変位計測部の詳細を示す図である。 基準水槽の詳細を示す図である。 鉛直変位計測装置の使用状態を示す図である。 鉛直変位計測装置の荷姿を示す図である。 鉛直変位計測装置を、トンネルの盤膨れ測定に使用した場合の図である。
以下に、本発明の鉛直変位計測装置1を、図1〜図5を用いて説明する。
鉛直変位計測装置1は、測定対象位置より高所に任意の基準水面を設定し、この基準水面に対する測定対象位置の相対的な鉛直変位を計測するものであり、図1で示すように、測定対象位置には鉛直変位計測部2が、また、測定対象位置より高所であって地盤の高さ変動が生じないような堅固な場所には基準水面が設定される基準水槽4が、それぞれ配置されている。
図1で示すように、測定対象位置に配置される鉛直変位計測部2は、筒状の密閉容器よりなり、その内方が水圧検知部3を介して液室21と空気室22とに区画されている。一方、基準水槽4は、密閉容器よりなる単一水槽であり、側部は内部の水面位置が目視確認可能に形成されている。
そして、鉛直変位計測部2の液室21は、基準水槽4の底部と連通水管5を介して連通されており、基準水槽4内に水面が形成されるよう、液室21と連通水管5に水が充填されている。この基準水槽4内の水面が、鉛直変位計測装置1の基準水面となる。
また、鉛直変位計測部2の空気室22は、基準水槽4の頂部と大気圧調整管6を介して連通されており、基準水槽4に必要に応じて通気口を設けることで、空気室22内と基準水槽4内の両者の気圧が、常に大気圧に維持されている。
さらに、鉛直変位計測部2の水圧検知部3は、図示しないが、水位計等に広く用いられているベローズ管および差動トランスを備えている。そして、水圧検知部3は、図1で示すように、測定ケーブル8及びデータロガー9に外部接続されている。
このような構成の鉛直変位計測装置1は、測定対象位置が隆起して鉛直変位が生じると、鉛直変位計測部2の高さ位置が、基準水槽4内に設定された基準水面高さに対して変位する。これに伴う水頭圧の変化により、鉛直変位計測部2では液室21内の水圧が変化することから、この水圧の変化を水圧検知部3に備えたベローズ管および差動トランスにて電気信号に変換し、測定ケーブル8を介してデータロガー9に送信する。
すると、データロガー9にて、この電気信号を鉛直変位に換算し、鉛直変位量として記録する。このようにして、鉛直変位計測装置1は、基準水槽4にて設定された基準水面に対する測定対象点の相対的な鉛直変位を、鉛直変位量として計測することができるものである。
ところで、鉛直変位計測装置1は、基準水槽4に単一水槽を用いることから、従来技術のような二つの水槽を用いる場合と比較して、その構造を簡略化できる。このため、本実施の形態では、基準水槽4に、少なくとも連通水管5および大気圧調整管6が接続できる程度の直径を確保した細径の円筒管を採用し、鉛直変位計測装置1全体の小型化を図っている。
これにより、鉛直変位計測装置1を設置するために確保すべきスペースを小さくすることができ、施工中の現場であっても施工機械や作業エリアと干渉することなく、鉛直変位計測装置1を設置し、鉛直変位を計測することが可能となる。
また、基準水槽4には、頂部に給排水口41を設け、鉛直変位計測装置1内の水面高さを自在に変更することができる構成となっている。これにより、基準水槽4を一旦現場に設置した場合にも、基準水槽4自身の高さ位置を変更することなく、基準水槽4内に水面高さを調整するのみで、鉛直変位を計測する際の基準水面の高さ位置を自在に調整することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、大気圧調整管6に対して開閉バルブ7を設置している。これにより、開閉バルブ7を閉めると、例えば、基準水槽4の姿勢を傾けた場合にも、水が大気圧調整管6を介して鉛直変位計測部2の空気室22に入り込むことがない。したがって、鉛直変位計測装置1を搬送もしくは移動する場合に、鉛直変位計測装置1の姿勢を配慮することなく、自在な荷姿にて取り扱うことが可能となる。
また、鉛直変位計測装置1は、図1を見てもわかるように、鉛直変位計測部2、連通水管5、基準水槽4および大気圧調整管6が連続して閉合したループを形成しているが、本実施の形態では、鉛直変位計測装置1を線状材に成形し、その取り扱いをさらに容易にしている。
具体的には、図2及び図3で示すように、連通水管5、大気圧調整管6及び測定ケーブル8を束ね、これらを基準水槽4の底部近傍から鉛直変位計測部2の近傍に至る長さの収納管10にて覆う。こうすると、鉛直変位計測装置1を測定場所に設置するために必要なスペースを小さくすることができる。
さらに、本実施の形態では、収納管10の両端から露出している鉛直変位計測部2および基準水槽4について、図2に示すように、鉛直変位計測部2とこれに連結される連通水管5、大気圧調整管6、及び測定ケーブル8の端部を、鉛直変位計測部収納ケース11に収納する。また、図3に示すように、基準水槽4とこれに連結される連通水管5、大気圧調整管6及び測定ケーブル8の端部を基準水槽収納ケース12に収納する。
そして、図2で示すように、収納管10の鉛直変位計測部2側の端部と鉛直変位計測部収納ケース11とをスリーブ継手管13を介して連結するとともに、図3で示すように、収納管10の基準水槽4側の端部と基準水槽収納ケース12とをスリーブ継手管13を介して連結する。これにより、鉛直変位計測装置1全体を図4で示すように、収納管10、鉛直変位計測部収納ケース11及び基準水槽収納ケース12にて収納保護することができる。
また、連通水管5、大気圧調整管6及び収納管10にフレキシブル管を採用すれば、図5で示すようにこれらを巻き取るようにして、収納や搬送に適したコンパクトな荷姿とすることが可能となる。
したがって、図5で示すようなコンパクトな荷姿で搬送した鉛直変位計測装置1を、現場にて図4で示すように展開すれば、測定対象位置に鉛直変位計測部2を設置するとともに、測定対象位置より高所であって地盤の高さ変動が生じないような堅固な場所に基準水槽4を配置した後、開閉バルブ7を開くのみの作業で、沈下測定を開始することが可能となる。
以下に、吹付コンクリートによるインバート部14を構築し断面を仮閉合した状態のトンネル13に対して、盤膨れ測定を実施するべく、線状材に成形した鉛直変位計測装置1を採用する場合を例に挙げ、その設置方法を図6を用いて説明する。
まず、埋設保護管16を、トンネル13に構築したインバート部14上に沿うようにして、測定対象位置からトンネルの側壁部15を連結するように配置した後、これを埋戻してインバート部14の上方に作業床を構築する。
次に、鉛直変位計測装置1を、鉛直変位計測部収納ケース11側から埋設保護管16の内方に挿入し、鉛直変位計測部2を測定対象位置に配置する。一方。基準水槽保護ケース12は、埋設保護管16から臨ませて、基準水面を設定したい高さに位置する側壁部15に配置する。
この後、基準水槽収納ケース12の上部を開放して大気圧調整管6の開閉バルブ7を開く。なお、鉛直変位計測装置1にあらかじめ注入されている水により形成された基準水槽4の水面高さが、基準水面を設定したい高さと合致しない場合には、基準水槽4の給排水口41より注排水を行い、基準水槽4の水面高さが、基準水面を設定したい高さ位置と合致するように微調整を行う。
これにより、盤膨れ測定の測定対象位置に鉛直変位計測部2が配置される一方、測定対象位置より高所であって地盤の高さ変動が生じないような堅固な場所に基準水槽4が配置されるとともに、所望の高さ位置に基準水面が設置され、盤膨れ測定を開始することができるものである。
本発明によれば、鉛直変位計測装置1の大気圧調整管6に開閉バルブ7を設置することにより、鉛直変位計測装置1内に注入されている水を液室21側に封じ込めることができるので、鉛直変位計測装置1を搬送もしくは移動する場合に、空気室22に水が浸入するのを防止しつつ、鉛直変位計測装置1の姿勢を配慮することなく、自在な荷姿にて取り扱うことが可能となる。また、基準水槽4に単一水槽を用いることにより、その構造を簡略化することができ、鉛直変位計測装置1全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
なお、本発明の鉛直変位計測装置1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、水圧検知部3とデータロガー9を測定ケーブル8にて有線接続したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、無線接続するものであってもよい。また、データロガー9に、鉛直変位量が所定値を超えた場合に音や光で警告を発する警告機能を備えるものを採用してもよい。
1 鉛直変位計測装置
2 鉛直変位計測部
21 液室
22 空気室
3 水圧検知部
4 基準水槽
41 通気口
5 連通水管
6 大気圧調整管
7 開閉バルブ
8 測定ケーブル
9 データロガー
10 収納管
11 鉛直変位計測部収納ケース
12 基準水槽収納ケース
13 トンネル
14 インバート部
15 側壁部
16 埋設保護管

Claims (3)

  1. 基準水面に対する測定対象位置の鉛直変位を計測する鉛直変位計測装置であって、
    測定対象位置に配置され、水が充填される液室と空気室とを水圧検知部にて区画した鉛直変位計測部と、
    該鉛直変位計測部より上方に配置され、上半を満たす空気と下半を満たす水のみが収納されるとともに該水の水面が基準水面に設定される密閉した単一水槽よりなる基準水槽と、
    一端が前記基準水槽の底部に、他端が前記鉛直変位計測部の液室に連結されて、該液室と前記基準水槽とを連通するとともに、水が充填される連通水管と、
    一端が前記基準水槽の頂部に、他端が前記鉛直変位計測部の空気室に連結されて、該空気室と前記基準水槽とを連通させる大気圧調整管とを備え、
    前記大気圧調整管に、開閉バルブが設置されることを特徴とする鉛直変位計測装置。
  2. 請求項1に記載の鉛直変位計測装置において、
    前記基準水槽に、給排水口が備えられていることを特徴とする鉛直変位計測装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鉛直変位計測装置において、
    前記連通水管及び前記大気圧調整管がフレキシブル管により形成されるとともに、
    前記基準水槽の底部と前記鉛直変位計測部との間に、収納管が配置され、
    該収納管に、前記連通水管及び前記大気圧調整管が束ねられて収納されることを特徴とする鉛直変位計測装置。
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