図1には、一実施形態に係る光学検査装置100の概略構成が示されている。光学検査装置100は、一例として、生体の大脳皮質内の血液の濃度変化(血流濃度)を推定するのに用いられる。
光学検査装置100は、一例として、図1に示されるように、被検体の内部情報を計測するための光学センサ10、制御部、表示部、記録部などを備えている。
光学センサ10は、一例として、複数(例えば8つ)の光源モジュールLMを含む照射系と、複数(例えば8つ)の検出モジュールDMを含む検出系と、を備えている。複数の光源モジュールLMおよび複数の検出モジュールDMは、それぞれ制御部に対して電気配線を介して接続されている。本明細書中、光源モジュールおよび検出モジュールを、区別しない場合は、プローブとも呼ぶ。また、本実施形態では、適宜、被検体、生体、疑似生体等の文言を用いるが、生体、擬似生体が被検体の具体例であることに変わりはない。プローブは、被検体内の情報を計測する際に、該被検体に装着される。
制御部は、各光源モジュールLMにおける光源の発光タイミングや各検出モジュールDMでの検出タイミングを制御して、得られた検出結果を記録部に転送する。また、制御部は、記録部に記録されているデータを読み取り、その数値を利用した計算を行い、その計算結果を表示部に表示させる制御を行う。
図2に示されているように、8つの光源モジュールLMおよび8つの検出モジュールDMは、一例として、生体(不図示)に対して、互いに直交するX方向およびY方向のいずれに関しても光源モジュールLMと検出モジュールDMとが隣り合うようにX方向およびY方向に等ピッチaでマトリクス状(2次元格子状)に配置される。図2では、LMは四角印で示され、DMは丸印で示されている。
光源モジュールLMは、図3及び図4に示されるように、一例として、2つの面発光レーザアレイチップ1、2と、2つの面発光レーザアレイチップ1、2からの光の光路上に個別に配置されたレンズ1、2と、レンズ1、2を介した光の光路上に配置されたプリズムと、該プリズムを介した光の光路上に配置され被検体と接触する窓部材(透明樹脂部材)と、各面発光レーザアレイチップ及び制御部に接続されたアナログ電子回路と、これらを保持する筐体Aとを有している。なお、図4では、窓部材、筐体Aの図示が省略されている。
ところで、一般に光計測では、光源の出射光の波長として、生体組織を透過しやすい近赤外光(700〜900nm)が用いられる。さらに、波長が異なる複数の光で計測することでも、生体内の計測情報を増やすことができる。そこで、本実施形態では、一例として、2種類の波長(780nm、900nm)の光を用いる。
すなわち、2つの面発光レーザアレイチップ1、2の発振波長は、それぞれ780nm、900nmである。これらの発振波長は、血液内での濃度変化による吸収係数の変化が大きく、測定に適した波長であるため採用している。各面発光レーザアレイチップはセラミックパケージに実装されている。セラミックパケージは、形状が変わるフレキ基板の配線パターンに半田付けによって実装されている。フレキ基板上には、スイッチング、電流安定化用の半導体が配置されており、各面発光レーザアレイチップを制御することができる。面発光レーザアレイチップからの出射光の形状はほぼ円形であるため、形状が楕円形である端面発光レーザ(レーザダイオード)と異なり、回転方向の設置誤差は殆ど無い。このため、出射光の光路上に球面レンズを1つ設けるだけで平行光を作り出すことができる。
各面発光レーザアレイチップは、2次元配列された複数の発光部(面発光レーザ:VCSEL)を有しており、出射端近傍(+Z側近傍)に、対応するレンズが配置されている(図4参照)。ここでは、各面発光レーザアレイチップの出射方向(Z軸方向)と、対応するレンズの光軸は、略平行になっている。そこで、各面発光レーザチップからの複数の光は、対応するレンズで進行方向が変更され(但し、レンズの中心に入射した光は該レンズの光軸に沿って直進する)、プリズムで打ち分けられ、窓部材を介して被検体に向けて異なる角度で出射される(図4の光線1〜6参照)。このようにして、光源モジュールLMから非平行の複数の光を被検体の略同一位置に照射することができる。すなわち、光源モジュールLMによって、多出射角方式の光照射器が実現できる。
ここで、光源モジュールLMの大きさは、装着性を考慮して毛根間隔(約2mm)以下であることが望ましい。そうすることで、照射経路の途中に毛髪を介在させることなく生体に光を入射させることができる。ただし、出力一定で光源(レーザ)を小さくして行くとエネルギ密度が高くなり、該光源からの光が生体に害を及ぼすおそれがあるため、光源モジュールLMの大きさを決める際はレーザの安全基準を考慮する必要がある。
なお、光源モジュールLMでは、窓部材と被検体との間に透明ジェルを介在させることで窓部材と被検体との接触安定性を向上させることができる。
また、光源モジュールLMは、被検体に接触する先端に、窓部材に代えて、弾性体からなる突起構造を有していても良い。平面性の高い窓部材では、窓部材と頭皮との間に毛髪が入ると窓部材と頭皮との間に空気層が介在してしまう。空気層の屈折率を1、樹脂の屈折率を1.5、頭皮の屈折率を1.3とすると、窓部材と頭皮との間の界面での反射が大きく無視できなくなる。
そこで、窓部材に代えて、突起構造とすることで、光を出射する部分を選択的に(毛髪を介在させることなく)頭皮と接触させることが可能となる。
また、突起構造の先端を角錐とすることで、該先端を頭皮に対してより選択的に接触させることが可能となる。突起構造の先端の曲率半径が小さいと、頭皮を傷つけ、痛みを感じることになる。痛みを感じ無いようにするには、該曲率半径は0.25mm以上が適切である。
また、突起構造は、弾性を持つものであることが望ましい。例えば、シリコーンのように弾性率が1E5Pa以下になるような材料であれば、痛みを感じることがほとんどない。何故ならば、人間の皮膚の弾性率が約1E4Pa程度であり、それよりも小さいものであれば、皮膚の変形を生じる前に突起物が変形を起こすからである。逆に曲率半径が大きすぎると、突起構造を毛髪の上から頭皮に押し付けることになり、装着性が悪くなるため、曲率半径は1mm以下であることが望ましい。突起構造の曲率半径が1mmを超えてしまうと、人の毛髪の間隔が2mm程度であるため、突起構造が毛髪の上に重なる可能性が高くなるからである。
検出モジュールDMは、図5に示されるように、一例として、受光素子およびアナログ電子回路が実装され、配線により制御部に接続されたフレキ基板(不図示)、光学素子、被検体と接触する接触部材、これらを保持する筐体Bなどを有している。
詳述すると、検出モジュールDMは、図6に示されるように、一例として、黒い樹脂製の筐体B、該筐体Bの先端に取り付けられた弾性体からなる接触部材、光学素子としての半球レンズ、受光素子を含んで構成されている。筐体Bの先端および接触部材には、アパーチャ(開口)が形成されている。
受光素子としては、一例として、2次元配列された4つの受光部を有する4分割PD(フォトダイオード)が用いられる。図6では、4つの受光部のうち、2つの受光部1、2のみが図示されている。受光素子の各受光部は、配線を介してオペアンプに接続されている。検出される光量は非常に小さいため、オペアンプの倍率は高めの2段階で構成されている。例えば、前段で約5桁程度の倍率をかけ、後段では3桁程度の倍率をかける。なお、受光素子の受光部の数(分割数)は、4に限らず、適宜変更可能である。
接触部材としては、例えば遮光性を高めるために黒いゴム製のものを利用している。また、検出モジュールDMでも、透明ジェルを接触部材と被検体との間に介在させることで被検体との接触安定性を向上させることができる。
アパーチャは、筐体Bの先端および接触部材を貫通する例えば約1mm程度の円形の開口であり、被検体内を伝播して該被検体から出射される光の位置を限定する機能を有している。
半球レンズは、アパーチャ内に配置されるよう筐体Bに取り付けられている。なお、光学素子としては、半球レンズに限らず、要は、異なる方向から入射される光を打ち分けることができるレンズであれば良い。
以上のように構成される検出モジュールDMでは、図6及び図7(半球レンズと4分割PDの抜粋図)に示されるように、半球レンズを入射端に配備することで、被検体内の異なる方向から入射される光を異なる位置に集光させることできる。そして、受光素子は、半球レンズを介した光の光路上に配置されている。
そこで、光源モジュールLMから被検体の略同一位置に照射された非平行の複数の光は、該被験体内の異なる経路を通って半球レンズに入射し、該半球レンズで入射方向毎(入射角度毎)に異なる方向に屈折され、複数の受光部のいずれかに集光される。このようにして、検出モジュールDMによって、多入射角方式の光検出器が実現できる。
ここで、受光素子としては、上述したPD(Photo Diode)の他、APD(Avalanche Photo Diode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)等を用いることが可能である。APDやSPADは、PDに対して感度が高いため、検出精度の点で有利である。
ところで、検出モジュールDMの被検体に対する位置や姿勢のずれに起因して、検出モジュールDMの受光素子の各受光部の受光量に誤差が生じてしまう。この誤差によって被検体の内部特性の推定精度が低下してしまう。
このため、例えば、各検出モジュールDMの被検体に対する位置、姿勢を調整することや、検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正することや、光源モジュールLMの各発光部の発光量を調整することが望まれる。
そこで、光学センサ10は、図8に示されるように、各検出モジュールDMの受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更するための駆動装置を備えている。この駆動装置は、検出モジュールDM毎に配備されている。ここでは、各駆動装置は、実質的に同一の構成及び機能を有している。
駆動装置は、受光素子を内部に保持する筐体Bを被検体に沿って移動させるための移動用アクチュエータと、受光素子を筐体B内でチルト回転させるためのチルト回転用アクチュエータと、を有する。
各アクチュエータとしては、例えばマイクロモータを用いる。具体的には、移動用アクチュエータとして、2つのマイクロリニアモータを用い、チルト回転用アクチュエータとして、パルス制御で回転角度を調整できるマイクロパルスモータ(マイクロステッピングモータ)を用いる。
詳述すると、移動用アクチュエータは、図9に示されるように、互いに直交する2方向(例えばX方向、Y方向)を駆動方向とする2つのマイクロリニアモータを有している。この場合、2つのマイクロリニアモータの少なくとも一方を駆動することで、受光素子を筐体Bと共に被検体上において1次元又は2次元移動させる(位置を変更する)ことができる。各マイクロリニアモータは、可動子が筐体Bに固定され、固定子が被検体に直接又は間接的に(例えば後述する固定部材を介して)固定される。
また、図8に示されるように、チルト回転用アクチュエータとしてのマイクロパルスモータの回転軸に受光素子が取り付けられている。この場合、マイクロパルスモータを駆動することで、受光素子を筐体Bに対してチルト回転させ、筐体Bに対する傾き角(姿勢)を変更することができる。
ここでは、各駆動装置の各マイクロリニアモータ、マイクロパルスモータの制御は、各光源モジュールLM、各検出モジュールDMと共に制御部で一括して行われる。
以下に、生体の大脳皮質内の血流濃度(被検体の内部特性)を推定する方法(被検体内部特性推定方法)を説明する。
先ず、プローブ(光源モジュールLM、検出モジュールDM)を生体の頭部にセッティング(装着)する。この際、頭部と各プローブとの間に透明ジェルを塗布し、透明ジェルに気泡が入らないように、固定部材によって決められた位置にセッティングする。
プローブは、一例として、光源モジュールLMが8個、検出モジュールDMが8個の計16個であり、光源モジュールLMと検出モジュールDMを交互に格子状に等ピッチで配置する(図2参照)。格子のピッチa(格子点間隔)が30mmであり、光源モジュールLMと検出モジュールDMとの間隔が30mmとなる。
そこで、光源モジュールLMの全発光部を同時に発光させて頭部に光を照射する。この照射は、各光源モジュールLM毎に順に行う。本実施形態では、発光部の発光強度が生体に害を及ぼさない程度の大きさ(例えば4mW)になるように電流値を設定している。各光源モジュールLMでの発光時間は、例えば10msec〜20msec程度としている。発光中は、全て(8個)の検出モジュールDMの受光素子で光を検出して値を読み取り、1msecの発光および計測、データ格納を繰り返す。一の光源モジュールLMを用いた測定を終えた段階で、別の光源モジュールLMでも同様の測定を順に実行して行き、全て(8個)の光源モジュールLMについて測定データ(光強度データ)を得る。
以上のようにして得られた光強度データから、大脳皮質内の血流濃度を推定するが、その際、事前情報として頭部モデル、および該頭部モデルの情報から得られる感度分布を用いて、図10のフローチャートに従って推定を行う。このフローチャートは、制御部によって実行される処理アルゴリズムに対応している。
最初のステップS301では、補正データを取得する。具体的には、各光源モジュールLM及び駆動装置を制御して、各検出モジュールDMの4つの受光部の受光量を取得し、該検出モジュールDMの被検体に対する適正な位置及び姿勢の探索を行う。「適正な位置及び姿勢」とは、各検出モジュールDMの被検体に対する位置や姿勢に起因する、該検出モジュールDMの複数の受光部の受光量の誤差が極力小さくなる位置及び姿勢を意味する。
ここで、複数の光源モジュールLMから被検体に同時に光を照射させると、検出モジュールDMで被検体からの光の入射方向毎(入射角度毎)の光量を正確に計測することができない。
そこで、上述の如く、光源モジュールLM毎に異なるタイミングで被検体に光を照射させ、照射毎に(光源モジュールLM毎に)各検出モジュールDMの4つの受光部の受光量を取得する。なお、各光源モジュールLMの各発光部からの光は、いずれかの検出モジュールDMの4つの受光部のいずれかに入射する。
全て(8個)の光源モジュールLMによる照射によって、検出モジュールDM毎に8照射分の32個の受光量を取得できる。すなわち、各検出モジュールDMは、照射毎に4つの入射角度範囲の光を検出し、8照射で32個の入射角度範囲の光を検出する。
次いで、各検出モジュールDMの32個の受光量の比を記録部に記録する。
そして、記録部に記録された上記32個の受光量の比を、例えば事前に行った被検体モデルのシミュレーションによる光量比基準と比較する。比較対象となる光量比基準は、事前に測った安静時の被検体計測データ、複数の検出モジュールDMで被検体を計測した値(総受光量)の平均値、検出モジュールDMの受光素子をチルト回転前後で等価な位置に来たときの計測値などを用いても良い。
上記一連の作業(工程)を行った後、各検出モジュールDMに対して、駆動装置を制御して受光素子を微小量だけ2次元移動および/またはチルト回転させて上記一連の作業を行うことを少なくとも1回行う。すなわち、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方が異なる複数の状態それぞれで上記一連の作業を行う。そして、各状態において得られた上記受光量の比の光量比基準に対する誤差を、記録部に記録する。
次のステップS302では、駆動装置を制御して、前のステップS301で得られた上記受光量の比のうち光量比基準に対する誤差が最小の状態の2次元位置、チルト回転位置に受光素子を移動、回転させる。そして、移動、回転後において、上記一連の作業を再び行い、受光量の計測値とシミュレーション値との最小2乗誤差を与える補正係数を該受光素子の受光部毎、発光部毎に求める。そして、得られた補正係数を各受光部の受光量、各発光部の発光量に掛けることで、該受光部の受光量、該発光部の発光量の補正値を得ることができる。なお、受光部の受光量のみを求めて該受光量の補正値のみを得ることでも受光部毎の受光量の補正効果は得られるが、更に発光部の発光量を求めて該発光量の補正値を得ることで、発光部毎(受光素子への入射方向毎)の受光量の補正効果を得ることができ、補正精度を向上させることができる。
そこで、受光部の受光量のみの補正係数を求めて該受光量の補正値のみを得るようにしても良い。
図11には、実際に計測して得られた補正係数が示されている。ここでは、受光量の補正係数のグラフの横軸は、4つの検出モジュールDMそれぞれの4つの受光部(計16個の受光部)を表している。発光量の補正係数の横軸は、検出モジュールDMの4位置×5方位の計20個の組み合わせの補正係数を表している。
次のステップS303では、推定に必要な光強度データを取得する。具体的には、安静時、脳活動時それぞれで上述のような光強度測定を行い、それらのデータから複数の波長毎およびプローブセット(光源モジュールLMと検出モジュールDMの組み合わせ)毎に光強度変化情報を取得する。光強度変化情報は、例えば光強度の変化率、光強度の変化率の対数をとった値、光強度の変化量等である。
次のステップS304では、推定に必要な初期値を読み出す。本実施形態の場合、初期値として推定に必要なのは大脳皮質の各ボクセルにおける正則化に関するガンマ分布のシェイプパラメータγα0i、大脳皮質の各ボクセルにおけるガンマ分布の平均値α0i ̄( ̄はαの真上に配置)、頭皮の各ボクセルにおける正則化に関するガンマ分布のシェイプパラメータγβ0および頭皮の各ボクセルにおけるガンマ分布の平均値β0 ̄( ̄はβの真上に配置)である。
次のステップS305では、初期値を基に、後述する変分ベイズ法と呼ばれる方法を用いて逆問題の推定を行う。
次のステップS306では、推定結果が収束したか否かを判断する。ここでの判断が肯定された場合(収束した場合)は、ステップS307に移行し、否定された場合は、ステップS305に戻り、再推定する。
ステップS307では、推定結果を処理し、得られた結果を可視化する。
以下では、ステップS305で用いられる変分ベイズ法について、図12のフローチャートを用いて説明する。
変分ベイズ法の計算では、2つのステップにより、血流内のオキシヘモグロビン・デオキシヘモグロビンの濃度変化を推定する。
最初のステップS401は、「X,σ最大化ステップ」と呼ばれる。このステップでは次のステップS402で必要な量を計算している。ここで、Xはヘモグロビンの濃度変化、σは脳活動時の分散共分散行列の安静時に比べての割合の逆数である。図12に記載されているΣは、次の(1)式で定義される。
上記(1)式において、Σyは安静時の観測値Yの分散共分散行列である。Gは感度行列であり、右上の添字で、大脳皮質(cortex)か頭皮(scalp)かを、右下の添字で酸素を含むヘモグロビン(Oxy Hb)か、酸素を含まないヘモグロビン(Deoxy Hb)かを示している。Wはスムージングフィルタで、右上のTがある行列は転置行列であることを示している。
次のステップS402は、「Α、β最大化ステップ」と呼ばれ、大脳皮質の各ボクセルにおける正則化に関するガンマ分布のシェイプパラメータγαi、大脳皮質の各ボクセルにおけるガンマ分布の平均値αi ̄( ̄はαの真上に配置)、頭皮の各ボクセルにおける正則化に関するガンマ分布のシェイプパラメータγβ、および頭皮の各ボクセルにおけるガンマ分布の平均値β ̄( ̄はβの真上に配置)を計算する。これら4つの値が収束する(n回目と(n−1)回目の値との差が指定した範囲内である)ならば(ステップS403においてYes)、計算の最後に再度X、σを計算した後に終了する。一方、これら4つの値が収束しないならば(ステップS403においてNo)、ステップS401に戻る。ここで、Αはそれぞれのボクセルにおける、正則化に関するパラメータを対角成分に持つ行列、βは頭皮における正則化に関するパラメータである。
以上のようにして、ヘモグロビンの濃度変化Xが推定される。変分ベイズ法の詳細に関しては、特許文献2に譲る。
ここで、変分ベイズ法による推定の例を示すために、生体と光学的性質の等しい液体を擬似的な生体とみなす(以下、この液体を擬似生体と呼ぶ)。擬似生体を水槽に満たし、光源モジュールLM、検出モジュールDMを水槽面に装着し、水槽内に光を吸収する物質(吸光体)を配置する。吸光体が光源モジュールLM、検出モジュールDMが装着されている面に近い場合と該面の反対側の面に近い(吸光体なしと見做せる場所にある)場合とでそれぞれ光を互いに異なる5方向(水槽面に対して垂直+Z及び±X、±Yの向きにそれぞれ45度)から水槽内に照射し(図13参照)、各検出モジュールDMの4つの受光部の受光量の比を求め、変分ベイズ推定法を用いて水槽内の状況を三次元的に推定する。
図13には、擬似生体に光を照射、検出するための疑似生体実験系のモデルが示されている。ここでは、光源モジュールLMが装着されている部分の水槽面は光を透過する材料で作られており、この部分に複数方向から光を打ち分けて、水槽内の擬似生体を経て再び同じ水槽面に戻ってくる光を検出モジュールDMで計測する。
先に説明した補正係数を用いない場合、用いた場合の推定結果が、図14に示されるベイズ推定(補正前)、ベイズ推定(補正後)である。真の位置に対してどちらもほぼ正しい位置を示しているが、補正後の方がよりノイズの少ない推定が行えていることがわかる。
以上説明した本実施形態の光学センサ10は、被検体に装着され、該被検体に光を照射する光源モジュールLMと、被検体に装着され、光源モジュールLMから被検体に照射され該被検体内を伝播した光を受光する、複数(例えば4つ)の受光部を有する受光素子を含む検出モジュールDMと、各受光部の受光量を補正する補正手段と、を備えている。そして、補正手段は、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更するための駆動装置及び該駆動装置を制御する制御部を含む。
この場合、被検体に対する検出モジュールDMの位置及び姿勢の少なくとも一方に起因する各受光部の受光量の誤差を補正できる。
この結果、被検体内を伝播した光の光量を精度良く計測できる。
一方、例えば、特許文献1には、圧力センサを用いて、事前に計測した校正データとの比較により雑音成分を除去して接触圧力による検出光量の誤差を減らす方法が開示されている。しかしながら、光学センサ(特に多出射角方式、多入射角方式の光学センサ)では、接触圧を調整しても光検出器の位置がずれていたり、図15に示されているように被検体に対して光検出器が傾いていると入射方向毎(入射角度毎)の光量を精度良く計測することは困難である。
また、制御部は、光源モジュールLMを制御可能であり、かつ各受光部の受光量を取得可能である。
この場合、被検体内を伝播した光の光量を自動的に精度良く計測できる。
また、制御部は、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方が異なる複数の状態において光照射器から被検体に光を照射させ、状態毎に得られた複数の受光部の受光量に基づいて、受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を複数の状態のうち一の状態に置くとともに該一の状態における各受光部の受光量の補正係数を算出する。
この場合、一の状態、すなわち被検体に対する受光素子の位置及び姿勢を検出光量の誤差が少ない状態に受光素子を置くことができ、かつ該状態における各受光部の受光量の誤差を補正できる。
この結果、被検体内を伝播した光の光量の計測精度を更に向上できる。
また、光源モジュールLMは複数あり、制御部は、複数の状態それぞれにおいて複数の光源モジュールLMから互いに異なるタイミングで被検体に光を照射させ、照射毎かつ状態毎に得られた複数の受光部の受光量に基づいて、各受光部の受光量の補正係数を算出する。
この場合、検出モジュールDMへの光の入射方向毎の光量の計測精度を向上できる。
また、複数の光源モジュールLMそれぞれは、複数の発光部を有し、制御部は、照射毎に得られた複数の受光部の受光量に基づいて、複数の発光部の発光量を調整する(発光量の補正係数を算出する)ため、検出モジュールDMへの光の入射方向毎の光量の計測精度を更に向上できる。
光源モジュールLMは、非平行な複数の光を被検体に照射し、受光素子は、被検体からの入射方向が異なる複数の光を受光する複数の受光部を含む。
この場合、被検体の内部情報を高精度かつ高分解能で計測可能な多出射角方式の光源モジュールLM、多入射角方式の検出モジュールDMを含む光学センサ10を実現できる。
また、光学センサ10を備える光学検査装置100は、該光学センサ10を用いて被検体の内部特性を推定するため、推定精度を向上することができる。
また、本実施形態の被検体内部特性推定方法では、光学センサ10を用いて被検体の内部特性を推定するため、推定精度を向上することができる。
また、本実施形態の被検体内部情報計測方法は、被検体に装着された光源モジュールLMから被検体に非平行な複数の光を照射し、被検体内を伝播し該被検体から異なる方向に出射された複数の光を、被検体に装着された、複数の受光部を有する受光素子を含む検出モジュールDMで検出する第1検出工程と、該第1検出工程の後に、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更する工程と、該変更する工程の後に、光源モジュールLMから被検体に非平行な複数の光を照射し、被検体内を伝播し該被検体から異なる方向に出射される複数の光を、検出モジュールDMで検出する第2検出工程と、を含む一連のサイクルを少なくとも1回行う計測工程と、該計測工程で得られた複数の受光部の受光量に基づいて、受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する工程と、を含む。
この場合、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢を所望の状態、すなわち各受光部の受光量の誤差が少ない状態に受光素子を置くことができる。
また、本実施形態の被検体内部情報計測方法は、第1及び第2検出工程における複数の受光部の受光量に基づいて、該複数の受光部の補正係数を算出する。
この場合、所望の状態における各受光部の受光量の誤差を補正できる。
また、光照射器は複数あり、第1及び第2検出工程それぞれでは、複数の光照射器から互いに異なるタイミングで被検体に光を照射させ、算出する工程では、第1及び第2検出工程それぞれで得られた複数の受光部の受光量に基づいて、各受光部の受光量の補正係数を算出する。
この場合、検出モジュールDMへの光の入射方向毎(各光源モジュールLMの発光部毎)の光量の計測精度を向上できる。
また、本実施形態の被検体内部情報計測方法では、複数の光源モジュールLMそれぞれは複数の発光部を有し、第1及び第2検出工程それぞれで得られた複数の受光部の受光量に基づいて、複数の発光部の発光量を調整する工程を更に含む。
この場合、検出モジュールDMへの光の入射方向毎(各光源モジュールLMの発光部毎)の光量の計測精度を更に向上できる。
また、駆動装置は、検出モジュールDMの筐体Bを被検体に沿って移動可能であり、かつ受光素子を筐体Bに対してチルト回転可能であるため、受光素子の被検体に対する位置及び姿勢を独立に調整できる。なお、受光素子を筐体Bに対してチルト方向に回転可能とするのに加えて又は代えて、チルト方向に直交する方向(例えばパン方向)に回転可能としても良い。
なお、上記実施形態では、光学センサ10は、受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整し、かつ検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正しているが、これに限られない。
例えば、変形例1の光学センサは、各検出モジュールDMの受光素子の位置及姿勢の少なくとも一方の調整を行わない。すなわち、変形例1の光学センサは、各検出モジュールDMの各受光部の受光量の補正のみを行う。
具体的には、変形例1の光学センサは、複数の光源モジュールLMから被検体に異なるタイミングで光を照射させ、照射毎に得られた各検出モジュールDMの複数(例えば4つ)の受光部の受光量に基づいて、該複数の受光量それぞれの補正係数を算出しても良い。例えば、各検出モジュールDMの複数の受光部の受光量の比と光量比基準との誤差(例えば最小2乗誤差)が小さくなるように(好ましくは最小になるように)、各受光量の補正係数を算出しても良い。
この場合、上記実施形態に比べて精度が若干劣るものの、各検出モジュールDMの各受光部の受光量の補正効果が得られる。
また、例えば、変形例2の光学センサは、各検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正しない。すなわち、変形例2の光学センサは、各検出モジュールDMの受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方の調整のみを行う。
この場合、上記実施形態に比べて若干効果が劣るものの、各検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正するのと同様の効果が得られる。
また、変形例2の光学センサでも、制御部は、光源モジュールLM及び駆動装置を制御可能であり、かつ受光素子の複数の受光部の受光量を取得可能であることが好ましい。
この場合、被検体内を伝播した光の光量を自動的に精度良く計測できる。
また、変形例2の光学センサでも、制御部は、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方が異なる複数の状態それぞれにおいて光源モジュールLMから被検体に光を照射させ、状態毎に得られた受光量に基づいて受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することが好ましい。
更に、変形例2の光学センサでも、制御部は、上記複数の状態それぞれにおいて複数の光源モジュールLMから互いに異なるタイミングで被検体に光を照射させ、照射毎かつ状態毎に得られた複数の受光部の受光量に基づいて受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することが好ましい。
この場合、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を該受光素子の各受光部の受光量の誤差が少ない状態(好ましくは最小の状態)に置くことができる。この状態で、各光源モジュールLMからの光を受光素子で受光すれば、該光を誤差が少ない状態で計測できる。
また、例えば、変形例3の光学センサは、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方の調整及び各受光部の受光量の補正を行わず、各発光部の発光量の調整のみを行う。例えば、上記受光量の比と光量比基準との誤差(例えば最小2乗誤差)が少なくなるよう各発光部の発光量の補正係数を算出する。
この場合、上記実施形態に比べて若干効果が劣るものの、各検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正するのと同様の効果が得られる。
また、変形例3の光学センサでも、制御部は、光源モジュールLM及び駆動装置を制御可能であり、かつ受光素子の複数の受光部の受光量を取得可能であることが好ましい。
この場合、被検体内を伝播した光の光量を自動的に精度良く計測できる。
なお、上記実施形態の光学センサ10では、被検体に対する検出モジュールDMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整可能としているが、これに代えて又は加えて、変形例4の光学センサのように、被検体に対する光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整可能としても良い。光源モジュールLMの位置の調整は、検出モジュールDMと同様に移動用アクチュエータによって行うことができる。また、光源モジュールLMの姿勢の調整は、例えば被検体に接触する窓部材の少なくとも1箇所と被検体との間のクリアランスを変更可能なアクチュエータ(例えば少なくとも1つの送りねじ機構と駆動源の組み合わせ)によって行うことができる。
この場合、各検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正するのと同様の効果が得られる。
また、変形例4の光学センサでも、制御部は、光源モジュールLM及び駆動装置を制御可能であり、かつ受光素子の複数の受光部の受光量を取得可能であることが好ましい。
この場合、被検体内を伝播した光の光量を自動的に精度良く計測できる。
また、変形例4の光学センサでは、制御部は、被検体に対する光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方が異なる複数の状態それぞれにおいて光源モジュールLMから被検体に光を照射させ、状態毎に得られた受光素子の複数の受光部の受光量に基づいて該受光素子又は光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することが好ましい。
更に、変形例4の光学センサでは、制御部は、上記複数の状態それぞれにおいて複数の光源モジュールLMから互いに異なるタイミングで被検体に光を照射させ、照射毎かつ状態毎に得られた受光素子の複数の受光部の受光量に基づいて該受光素子又は光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することが好ましい。
この場合、被検体に対する受光素子又は光源モジュールLMの位置及び姿勢を受光量の誤差が少ない状態(好ましくは最小の状態)に置くことができる。この状態で、各光源モジュールLMからの光を受光素子で受光すれば、該光を誤差が少ない状態で計測できる。
更に、変形例4では、検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正しても良いし、光源モジュールLMの各発光部の発光量を調整しても良い。
また、変形例5の光学センサのように、制御部は、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方が異なる複数の状態それぞれにおいて光源モジュールLMから被検体に光を照射させ、状態毎に得られた受光素子の複数の受光部の受光量に基づいて光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整するようにしても良い。
更に、変形例5の光学センサでは、制御部は、上記複数の状態それぞれにおいて複数の光源モジュールLMから互いに異なるタイミングで被検体に光を照射させ、照射毎かつ状態毎に得られた受光素子の複数の受光部の受光量に基づいて光源モジュールLMの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整することが好ましい。
この場合、被検体に対する受光素子又は光源モジュールLMの位置及び姿勢を該受光素子の各受光部の受光量の誤差が少ない状態(好ましくは最小の状態)に置くことができる。この状態で、各光源モジュールLMからの光を受光素子で受光すれば、該光を誤差が少ない状態で計測できる。
更に、変形例5では、検出モジュールDMの各受光部の受光量を補正しても良いし、光源モジュールLMの各発光部の発光量を調整しても良い。
また、上記実施形態では、光源モジュールLMの全発光部を同時に発光させているが、順次(異なるタイミングで)発光させても良い。この場合、制御がやや煩雑化するが、より高精度な計測が可能となる。
また、上記実施形態では、各検出モジュールDMの複数の受光部の受光量の比を求め、該受光量の比を光量比基準と比較し、その比較結果に基づいて複数の受光部の受光量の補正係数を算出しているが、これに加えて又は代えて、各検出モジュールDMの照射毎(光源モジュールLM毎)の総受光量の比を求め、該総受光量の比を該総受光量に関する光量比基準と比較し、その比較結果に基づいて複数の受光部の受光量の補正係数を一括して算出しても良い。この場合、上記実施形態に比べて補正効果は劣るものの、記録部に記録するデータ量の低減化及び補正処理の迅速化を図ることができる。
また、駆動装置は、上記実施形態で説明したものに限らず、要は、被検体に対する受光素子の位置及び姿勢の少なくとも一方を変更可能なものであれば良い。具体的には、駆動装置は、受光素子を被検体に沿って1次元もしくは2次元移動可能な移動用アクチュエータ、及び受光素子を少なくともチルト回転可能な回転用アクチュエータの少なくとも一方を有していることが好ましい。
移動用アクチュエータは、リニアモータに代えて、例えば送りねじ機構やラック&ピニオン機構と、駆動源の組み合わせ、ソレノイドアクチュエータ、ピエゾアクチュエータ等であっても良い。
チルト回転用アクチュエータは、パルスモータに代えて、例えばDCモータ等の他のアクチュエータであっても良い。
また、上記実施形態では、検出モジュールDMにおいて筐体に対する受光素子の姿勢を変更可能としているが、上記変形例4の光源モジュールLMの場合と同様に検出モジュールDM全体(受光素子を保持する筐体)の姿勢を変更可能としても良い。
また、上記実施形態において、照射系の光源モジュールLMの数、及び検出系の検出モジュールの数は、適宜変更可能である。要は、照射系は、光源モジュールLMを少なくとも1つ有していれば良い。検出系は、検出モジュールDMを少なくとも1つ有していれば良い。
また、上記実施形態において、光源モジュールLM(光照射器)の構成は、適宜変更可能である。例えば、レンズの種類、形状、大きさ、個数等も適宜変更可能である。また、プリズムに代えて、複数の反射面を有する反射部材や複数の反射部材を有していても良い。
また、光源モジュールLMの光源として、面発光レーザ(VCSEL)が用いられているが、例えば、端面発光レーザ(LD)、半導体レーザ以外のレーザ、発光ダイオード(LED)、有機EL素子などを用いても良い。
また、光源モジュールLMの面発光レーザアレイチップ(発光素子)の数や、面発光レーザアレイチップ(発光素子)の発光部の数は、複数に限らず、1つであっても良い。
また、受光素子は、複数の受光部が一体の構成に限らず、複数の受光部が別体の構成であっても良い。
また、検出モジュールDM(光検出器)の構成は、適宜変更可能である。例えば、アパーチャ(開口)は、必ずしも設けられていなくても良い。例えば、接触部材の少なくとも一部を光透過性を有する材料で構成しても良い。また、アパーチャに透明部材が設けられても良い。この場合、半球レンズは、透明部材上に配置されても良い。また、例えば、半球レンズは、必ずしも設けられていなくても良い。
以上の説明における各部材や部分の形状、大きさ、材質、数、寸法、数値は、一例であって、適宜変更可能であることは言うまでもない。