以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るバイパス通路付きチェック弁100について説明する。本実施形態では、バイパス通路付きチェック弁100を、建設機械や産業機械等に設けられるアクチュエータの作動速度を制限するスローリターンバルブとして用いた場合について説明する。
バイパス通路付きチェック弁100は、バルブブロック101に形成される非貫通の弁体収容部としての第1弁体収容孔106と、第1弁体収容孔106内へ進退自在に設けられる第1弁体110と、第1弁体110内に摺動自在に設けられる第2弁体120と、一端が第1弁体収容孔106の底面に開口し、他端がバルブブロック101の外面に開口して図示しない切換弁を通じてポンプまたはタンクに選択的に接続される第1ポート103と、一端が第1弁体収容孔106の側面に開口し、他端がバルブブロック101の外面に開口して図示しない配管等を通じてアクチュエータに接続される第2ポート104と、を有する。
スローリターンバルブとして用いられるバイパス通路付きチェック弁100では、作動流体として作動油が用いられる。作動流体は、作動油に限定されず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
第1弁体110は、第1弁体収容孔106に摺動自在に支持される摺動部110aと、第1弁体収容孔106の開口端に形成される雌ねじ部106bに螺合される雄ねじ部110dと、雄ねじ部110dとは反対側に設けられ、摺動部110aよりも外径が小さい小径部110bと、を有する円筒状部材である。
小径部110bの先端側には、第1ポート103の開口端に形成される円錐台状のシート部106aに着座可能な弁部110cが形成され、弁部110cとシート部106aとの間には、第2弁体120を迂回して第1ポート103と第2ポート104とを連通するバイパス通路108が画定される。
第1弁体110の雄ねじ部110dには、ロックナット140が螺合される。ロックナット140が締め付けられることによって第1弁体110は第1弁体収容孔106内に固定される。第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置は、ロックナット140を緩めて、第1弁体110を手動で何れかの方向へ回転させることによって、調整することができる。
ここで、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置が変更されると、弁部110cとシート部106aとの間の隙間の大きさ、すなわちバイパス通路108の開口面積が変更される。換言すれば、バイパス通路108を流通する作動油の流量は、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置によって制御される。バイパス通路108の開口面積は、任意の大きさに設定され、例えば、図2に示されるように、第1弁体110を第1弁体収容孔106に対して最も進入させると、弁部110cがシート部106aに当接し、バイパス通路108は閉塞される。このように、バイパス通路108の最小流路面積が設定されないため、バイパス通路108の流路面積を調整可能な範囲が広くなる。
このように、バイパス通路108の流路面積は、第1弁体110を第1弁体収容孔106内へ進退させることによって調整可能である。第1弁体110を第1弁体収容孔106内へ進退させる際に操作される雌ねじ部106b及び雄ねじ部110dが流路面積調整機構に該当する。なお、流路面積調整機構は、ねじ部106b,110dに限定されず、第1弁体収容孔106に対して第1弁体110の位置を調整することができる構造であればどのようなものであってもよい。例えば、ステッピングモータ等の電動機を用いて、第1弁体110を回転させてもよいし、ねじ部を設けることなく第1弁体110を第1弁体収容孔106に対して直接進退させてもよい。この場合、第1弁体110を変位させる電動機が流路面積調整機構に該当する。
第1弁体110は、雄ねじ部110d側の端面に開口し、第1弁体110の軸心に沿って形成される非貫通の第2弁体摺動孔111と、一端が第2弁体摺動孔111の底面に開口し他端が小径部110bの先端面に開口する第1連通孔112と、一端が第2弁体摺動孔111の側面に開口し他端が小径部110bの外周面に開口する第2連通孔114と、をさらに有する。
第2弁体摺動孔111内には、第2弁体120が摺動自在に収容され、第2弁体摺動孔111の開口端にはプラグ130が螺着される。第2弁体120とプラグ130との間にはスプリング室115が区画され、スプリング室115内には、第2弁体120を閉弁させる方向へ付勢するスプリング125が圧縮して収装される。
第2弁体120は、第1連通孔112の開口端に形成される円錐台状のシート部111aに着座する弁部120aと、スプリング室115と第2連通孔114とを常時連通させる連通孔120bと、を有する。
ここで、第2連通孔114は、一端が小径部110bの外周面に開口しているため、小径部110bと第1弁体収容孔106との間の隙間を通じて第2ポート104と連通している。このように、スプリング室115は、連通孔120b、第2連通孔114及び小径部110bと第1弁体収容孔106との間の隙間を通じて第2ポート104と常時連通するため、スプリング室115内の圧力は第2ポート104の圧力と同等となる。
このため、第2弁体120には、第1連通孔112を通じて第1ポート103の圧力が第2弁体120を開弁させる方向に作用し、スプリング室115内の圧力、すなわち第2ポート104の圧力とスプリング125の付勢力とが第2弁体120を閉弁させる方向へと作用する。
開弁方向への推力が閉弁方向への推力を上回ると第2弁体120は開弁し、第1ポート103と第2ポート104とは、第1連通孔112、シート部111aと弁部120aとの間の隙間、第2連通孔114及び小径部110bと第1弁体収容孔106との間の隙間を通じて連通される。一方、開弁方向への推力が閉弁方向への推力を下回ると第2弁体120は閉弁し、第1ポート103と第2ポート104との連通は遮断される。このように、第2弁体120は、第1ポート103から第2ポート104への作動油の流通のみを許容する逆止弁として機能する。
第1弁体110の摺動部110aの外周にはOリング116が配置される。第1弁体収容孔106と摺動部110aとの間で圧縮されるOリング116によって、第1弁体収容孔106内と外部との連通は遮断される。また、プラグ130の外周にはOリング132が配置される。第2弁体摺動孔111とプラグ130との間で圧縮されるOリング132によって、第2弁体摺動孔111内と外部との連通は遮断される。このため、第1弁体収容孔106及び第2弁体摺動孔111内の作動油が外部に漏れることが防止されるとともに、外部から水や粉塵等が第1弁体収容孔106及び第2弁体摺動孔111内に侵入することが防止される。内部と外部との連通を遮断する部材としては、Oリング116,132に限定されず、シールリングなどのように密封可能なシール部材であればどのようなものが用いられてもよい。
次に、スローリターンバルブとして機能するバイパス通路付きチェック弁100の動作について説明する。
アクチュエータを伸張させるために、第1ポート103がポンプに接続され、第1ポート103に加圧された作動油が供給されると、第2弁体120を開弁させる方向への推力が閉弁させる方向への推力を上回り、第2弁体120が開弁する。このため、ポンプから第1ポート103へ供給された作動油は、バイパス通路108と、第1連通孔112と、の二つの流路を通じて第2ポート104へ至り、アクチュエータへと供給される。このように、ポンプから供給される作動油は、流路面積が制限されていない流路を流通し、アクチュエータへと供給されるため、アクチュエータは速やかに伸張作動する。
一方、アクチュエータを収縮させるために、第1ポート103がタンクに接続されると、第1ポート103の圧力が第2ポート104の圧力よりも低くなるため、第2弁体120を閉弁させる方向への推力が開弁させる方向への推力を上回り、第2弁体120は閉弁する。このため、アクチュエータから排出される作動油は、流路面積が制限されたバイパス通路108のみを通じて第1ポート103へ至り、タンクへと排出される。このように、アクチュエータから排出される作動油の流量はバイパス通路108によって制限される。つまり、バイパス通路108は絞りとして機能し、バイパス通路108を流れる作動油に抵抗が付与される。この結果、アクチュエータから作動油が排出されにくくなり、アクチュエータの収縮作動速度は緩やかになる。
アクチュエータの収縮作動速度は、作動油の流量を制限するバイパス通路108の開口面積によって決まる。上述のように、バイパス通路108の開口面積は、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置を調整することによって変更することができる。このように、アクチュエータの収縮作動速度は、任意の設定速度となるように容易に調整される。
また、図2に示すように、第1弁体110を第1弁体収容孔106に対して最も進入させてバイパス通路108を閉塞させると、第2ポート104の圧力が第1ポート103の圧力よりも高い状態にある限り、第1ポート103と第2ポート104との連通は完全に遮断される。このように、バイパス通路付きチェック弁100は、アクチュエータが作動している状態でバイパス通路108が閉塞されることによって、アクチュエータからの作動油の流出を阻止することができるため、アクチュエータの作動状態を保持することもできる。
なお、バイパス通路付きチェック弁100は、アクチュエータの収縮作動速度緩やかにするものに限定されず、アクチュエータを伸張させるときの伸張作動速度を緩やかにするものに適用してもよい。この場合、第1ポート103がアクチュエータに接続され、第2ポート104がポンプまたはタンクに選択的に接続される。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
バイパス通路付きチェック弁100では、逆止弁として機能する第2弁体120が第1弁体110内に設けられ、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置を調整することによりバイパス通路108の流路面積が変更される。このため、第2弁体120の作動特性に影響を及ぼすことなく、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置を変更するだけで、バイパス通路付きチェック弁100を流通する作動油に付与される抵抗を容易に変更ないし調整することができる。
<第2実施形態>
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係るバイパス通路付きチェック弁200について説明する。本実施形態では、バイパス通路付きチェック弁200をソレノイドバルブ10の開放機能付きチェック弁として用いた場合について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
図3に示されるソレノイドバルブ10は、建設機械や産業機械等に設けられ、図示しない流体圧力源からアクチュエータ(負荷)に供給される作動流体の流量やアクチュエータからタンク等へ排出される作動流体の流量を制御する。このソレノイドバルブ10は、メインポート82からサブポート83へ流れる作動流体の流量を制御する一方向流制御弁である。
ソレノイドバルブ10は、バルブブロック80に設けられる非貫通の挿入孔81に挿入固定される。バルブブロック80には、一端が挿入孔81の底面に開口し、他端がバルブブロック80の外面に開口して図示しない配管等を通じて流体圧力源であるポンプに接続されるメインポート82と、一端が挿入孔81の側面に開口し、他端がバルブブロック80の外面に開口して図示しない配管等を通じてアクチュエータに接続されるサブポート83と、を有する。
ソレノイドバルブ10では、作動流体として作動油が用いられる。作動流体は、作動油に限定されず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
ソレノイドバルブ10は、メインポート82とサブポート83との連通開度を変化させる主弁22と、挿入孔81内に固定され主弁22が摺動自在に挿入される中空円筒状のスリーブ12と、メインポート82またはサブポート83から作動油が導かれ、主弁22を閉弁方向に付勢する制御圧室42と、制御圧室42とサブポート83との連通開度を変化させる副弁27と、供給される電流に応じて副弁27を変位させるソレノイド部60と、を備える。
スリーブ12は、主弁22の外周面を摺動自在に支持する摺動支持部12aと、主弁22が着座するシート部13と、を有する。
シート部13の内周には、メインポート82側から順に、円孔状の第1シート部13aと、円錐台状の第2シート部13bと、の2つのシート部が形成される。第1シート部13aの中心軸と第2シート部13bの中心軸とは、スリーブ12の中心軸と一致している。
スリーブ12には、第2シート部13bと摺動支持部12aとの間に、スリーブ12内の空間とサブポート83とを連通するスリーブ連通孔12bが周方向に間隔をあけて複数形成される。
シート部13の外周と摺動支持部12aの外周とには、スリーブ連通孔12bを挟むようにして、それぞれOリング51,52が配置される。スリーブ連通孔12bとサブポート83との接続部は、スリーブ12と挿入孔81との間で圧縮されるこれら二つのOリング51,52によって封止される。特にシート部13の外周に設けられるOリング51によって、スリーブ12と挿入孔81との間の隙間を通じてメインポート82とサブポート83とが連通することが防止される。
主弁22は、円柱状部材であり、一端面22eがシート部13側に位置し、摺動部22cが摺動支持部12aに摺動支持されるようにスリーブ12内に配置される。主弁22の他端面22fは、主弁22と、スリーブ12と、ソレノイド部60と、により画定される制御圧室42に臨んでいる。
主弁22の一端面22e側には、第1シート部13aに摺動自在に挿入される円柱状のスプール弁22aが形成され、スプール弁22aと摺動部22cとの間には、第2シート部13bに着座する円錐台状のポペット弁22bが形成される。また、主弁22には、ポペット弁22bと摺動部22cとの間に、主弁22の軸方向に対して垂直な面を有する段部22hが形成される。段部22hにはスリーブ連通孔12bを通じてサブポート83の圧力が作用する。
主弁22の一端面22eには、メインポート82に連通する凹部22gがスプール弁22aと同軸上に形成される。スプール弁22aには、一端が第1シート部13aと摺動する面に開口し、他端が凹部22gの内周面に開口する貫通孔22dが周方向に間隔をあけて複数形成される。
第1シート部13aにより閉塞される各貫通孔22dは、ポペット弁22bと第2シート部13bとが離れる方向にスプール弁22aが移動するのに伴って、徐々に開口する。つまり、第1シート部13aから露出する各貫通孔22dの面積は、スプール弁22aの移動量に応じて変化する。このように、各貫通孔22dの開口面積を変化させることによって、メインポート82からサブポート83へ流れる作動油の流量を制御することができる。
各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接するときであっても、第1シート部13aによって完全に閉塞されないように配置される。つまり、各貫通孔22dの開口面積は、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接する閉弁位置において最小値となり、ポペット弁22bが開弁方向に変位するにつれて漸次増大する。
なお、各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bからある程度離れるまで第1シート部13aによって閉塞されるように配置されてもよい。この場合、主弁22がある程度変位するまで作動油の流量をほぼゼロに設定することができる。
バルブブロック80には、メインポート82と制御圧室42とを接続するメインポート連通路としてのメインポート連通孔84と、サブポート83と制御圧室42とを接続するサブポート連通路としての第1サブポート連通孔85及び第2サブポート連通孔86と、が形成される。メインポート連通孔84及び第2サブポート連通孔86は、スリーブ12とバルブブロック80との間に形成される環状空間40と、スリーブ12に形成されオリフィスとして機能する導入孔41と、を通じて制御圧室42に連通する。
メインポート連通孔84には、メインポート82から制御圧室42への作動油の流れのみを許容する逆止弁71が設けられる。第1サブポート連通孔85と第2サブポート連通孔86との接続部には、サブポート83から制御圧室42への作動油の流れのみを許容する機能と、サブポート83と制御圧室42とを連通させる機能と、を有するバイパス通路付きチェック弁200が設けられる。
バイパス通路付きチェック弁200は、図1及び図2に示されるバイパス通路付きチェック弁100と同じ構成であるため、バイパス通路付きチェック弁200の構成の説明は省略する。
バイパス通路付きチェック弁200の第1ポート103は、サブポート83と連通する第1サブポート連通孔85に接続され、第2ポート104は、制御圧室42と連通する第2サブポート連通孔86に接続される。
ここで、バイパス通路付きチェック弁200のスプリング室115は、連通孔120b、第2連通孔114及び小径部110bと第1弁体収容孔106との間の隙間を通じて第2ポート104と常時連通するため、スプリング室115内の圧力は制御圧室42の圧力と同等となる。このため、バイパス通路付きチェック弁200の第2弁体120には、第1連通孔112を通じてサブポート83の圧力が第2弁体120を開弁させる方向に作用し、スプリング室115内の圧力、すなわち制御圧室42の圧力とスプリング125の付勢力とが第2弁体120を閉弁させる方向へと作用する。
また、バイパス通路付きチェック弁200の第1弁体110は、通常、図2に示されるように、バイパス通路108を閉塞した状態で第1弁体収容孔106に固定される。
このため、メインポート82の圧力がサブポート83の圧力よりも高い場合には、メインポート82の作動油がメインポート連通孔84、逆止弁71、環状空間40及び導入孔41を通じて制御圧室42へと導かれる。このとき、制御圧室42からサブポート83への作動油の流れは、バイパス通路108が第1弁体110により閉塞されることと第2弁体120が閉弁することによって遮断される。
一方、サブポート83の圧力がメインポート82の圧力よりも高い場合には、サブポート83の作動油が第1サブポート連通孔85、第2弁体120、第2サブポート連通孔86、環状空間40及び導入孔41を通じて制御圧室42へと導かれる。このとき、制御圧室42からメインポート82への流れは逆止弁71によって遮断される。なお、バイパス通路108は、第1弁体110によって閉塞されているため、作動油がバイパス通路108を流通することはない。
主弁22の一端面22eが臨む制御圧室42内には、主弁22とソレノイド部60との間に、メインリターンスプリング24が圧縮して設けられる。
メインリターンスプリング24の付勢力は、主弁22を閉弁させる方向に作用する。また、メインポート82の圧力は、主弁22の第2シート部13bにおける断面に相当する開弁受圧面A1に作用し、主弁22を開弁させる方向に作用する。また、制御圧室42内の圧力は、摺動部22cにおける断面に相当する閉弁受圧面A2に作用し、主弁22を閉弁させる方向に作用する。このため、主弁22は、開弁受圧面A1に作用するメインポート82の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を上回ると開弁方向に変位し、下回ると閉弁方向に変位する。
主弁22には、さらに、制御圧室42とサブポート83とを連通する第1連通路23a及び第2連通路23bと、制御圧室42とサブポート83との連通状態を調節することによって制御圧室42内の圧力を制御するパイロット圧制御弁25が設けられる。
第1連通路23aは、主弁22の他端面22fから主弁22の軸心に沿って形成される非貫通孔であり、第2連通路23bは、一端が第1連通路23aに開口し、他端が主弁22の外周面に開口する貫通孔である。主弁22の外周面に開口する第2連通路23bの開口端は、主弁22が軸方向に変位する範囲において、スリーブ連通孔12bと常に連通するように設けられる。
パイロット圧制御弁25は、サブシート部26dが形成される中空円筒状の圧力補償スリーブ26と、サブシート部26dに着座するサブポペット弁27aが一端に設けられる円柱状の副弁27と、を有する。
圧力補償スリーブ26は、第1連通路23a内に摺動自在に挿入される摺動部26aと、制御圧室42に臨むように配置され、摺動部26aよりも外径が大きい鍔部26bと、鍔部26bから摺動部26aにかけて軸方向に貫通して形成されるスリーブ貫通孔26cと、を有する。サブシート部26dは、鍔部26bに開口するスリーブ貫通孔26cの開口端に形成される。このため、第1連通路23aと制御圧室42とは、サブシート部26dとスリーブ貫通孔26cとを通じて連通する。
鍔部26bと主弁22の他端面22fとの間には、複数の皿バネからなる圧力補償スプリング28が介装される。圧力補償スリーブ26は、圧力補償スプリング28によって主弁22から離れる方向へと付勢される。
サブポペット弁27aとサブシート部26dとが当接すると、制御圧室42と第1連通路23aとの連通は遮断された状態となる。一方、サブポペット弁27aがサブシート部26dから離れ、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成されると、制御圧室42と第1連通路23aとが連通される。このため、制御圧室42内の作動油は、第1連通路23a、第2連通路23b及びスリーブ連通孔12bを通じてサブポート83へと排出される。制御圧室42には、メインポート連通孔84を通じて作動油が導かれるが、導入孔41によって制御圧室42への作動油の流入が制限されるため、結果として、制御圧室42内の圧力は低下する。
サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間の隙間の大きさは、圧力補償スリーブ26に対する副弁27の軸方向における位置を変更することによって調節される。副弁27の軸方向の位置はソレノイド部60によって制御されるので、この隙間の大きさはソレノイド部60によって制御されることとなる。
ソレノイド部60は、電流が供給されることにより磁気吸引力を生じるコイル62と、コイル62が外周に設けられる有底筒状のソレノイドチューブ14と、ソレノイドチューブ14とスリーブ12とを連結する連結部材16と、を有する。
ソレノイドチューブ14内には、軸心に副弁27が固定され、コイル62が生じる磁気吸引力に吸引される円筒状のプランジャ33と、軸方向に移動自在な円柱状のリテーナ34と、プランジャ33とリテーナ34との間に圧縮して介装されるサブリターンスプリング35と、が設けられる。プランジャ33は、サブリターンスプリング35によって、副弁27の先端に形成されるサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座する方向へと付勢される。
プランジャ33には、軸方向に貫通する複数の貫通孔33aが形成されており、サブリターンスプリング35が配置されるスプリング室44は貫通孔33aを通じて制御圧室42と連通する。このため、スプリング室44内の圧力は、制御圧室42内の圧力と同等となり、サブリターンスプリング35の付勢力とスプリング室44内の圧力とは、サブポペット弁27aをサブシート部26dへ押圧する方向へと作用する。
ソレノイドチューブ14の端部14aには、調節ネジ36が軸方向に貫通して螺着される。調節ネジ36の一端は、スプリング室44内のリテーナ34に当接しており、調節ネジ36が回転されるとリテーナ34の軸方向における位置が変更され、サブリターンスプリング35の付勢力が変化する。このように、調節ネジ36を回転することによって、プランジャ33に作用するサブリターンスプリング35の初期荷重を変更することができる。ソレノイドチューブ14から突出する調節ネジ36の他端は、ソレノイドチューブ14に取り付けられるカバー63によって覆われる。
連結部材16は、バルブブロック80の挿入孔81内に挿入される挿入部16aと、ソレノイドバルブ10をバルブブロック80に対して固定するためのフランジ部16bと、を有する。連結部材16は、フランジ部16bの内周面にソレノイドチューブ14が螺合され、挿入部16aにスリーブ12が螺合されることでスリーブ12とソレノイドチューブ14とを連結する。
挿入部16aの外周には、シール部材としてのOリング53が配置される。連結部材16と挿入孔81との間で圧縮されるOリング53によって、挿入孔81内と外部との連通は遮断される。このため、挿入孔81内の作動油が外部に漏れることが防止されるとともに、外部から水や粉塵等が挿入孔81内に侵入することが防止される。
フランジ部16bにはボルト15が挿通する図示しないボルト孔が複数形成されており、フランジ部16bは、ボルト15を介してバルブブロック80に締結される。連結部材16がバルブブロック80に締結されることによって、ソレノイドバルブ10は、バルブブロック80に対して固定される。
次に、ソレノイドバルブ10の動作について説明する。
コイル62に電流が供給されていないときには、サブリターンスプリング35の付勢力によって、プランジャ33が押圧され、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座し、制御圧室42は閉塞された状態となる。この状態において、メインポート82の圧力が制御圧室42内の圧力よりも高いと、制御圧室42内にはメインポート82の作動油が導かれ、制御圧室42内の圧力はメインポート82の圧力と同等となる。この結果、閉弁受圧面A2には、メインポート82の圧力と同等の圧力が作用する。
ここで、閉弁受圧面A2の面積は、開弁受圧面A1の面積よりも大きく設定されるので、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力が、開弁受圧面A1に作用するメインポート82の圧力による推力を上回り、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。このように、コイル62が非通電状態にあるときには、メインポート82からサブポート83への作動油の流れが遮断される。
一方、コイル62に電流が供給されると、ソレノイド部60が発生する推力によってプランジャ33がサブリターンスプリング35の付勢力に打ち勝ってコイル62側へと吸引される。そして、プランジャ33とともに副弁27が変位することで、サブポペット弁27aはサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成される。制御圧室42内の作動油は、この隙間を通じて、サブポート83へと排出される。
メインポート82から制御圧室42への作動油の流入は、導入孔41によって制限されるため、制御圧室42内の圧力は、制御圧室42とサブポート83とが第1連通路23a及び第2連通路23bを通じて連通することによって低下する。そして、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力と、開弁受圧面A1に作用するメインポート82の圧力による推力と、がバランスするまで主弁22はシート部13を開放する方向へと変位する。この結果、作動油は、貫通孔22dと第1シート部13aとの間、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間及びスリーブ連通孔12bを通じて、メインポート82からサブポート83へと流れる。
コイル62に供給される電流が増加されると、サブポペット弁27aはサブシート部26dからさらに離れる。この結果、制御圧室42からサブポート83へと排出される作動油の量が増加し、制御圧室42内の圧力はさらに低下する。そして、制御圧室42内の圧力の低下に応じて主弁22がシート部13を開放する方向へとさらに移動し、スプール弁22aの貫通孔22dが第1シート部13aから露出される面積が大きくなる。この結果、メインポート82からサブポート83へと流れる作動油の流量が増加する。
このように、コイル62に供給される電流を増減し、主弁22の変位量を制御することによって、メインポート82からサブポート83へと流れる作動油の流量が制御される。
そして、コイル62への通電が停止されると、プランジャ33を吸引する推力が消失するため、プランジャ33は、サブリターンスプリング35の付勢力によってサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座する方向へと押圧される。そして、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座すると、制御圧室42内には導入孔41を通じてメインポート82の作動油が導かれ、制御圧室42内の圧力は、メインポート82の圧力と同等となるまで上昇する。
制御圧室42内の圧力がメインポート82の圧力と同等になると、上述のように、開弁受圧面A1に作用するメインポート82の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を下回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。この結果、主弁22は、シート部13を閉塞する方向へと変位し、メインポート82からサブポート83への作動油の流れが遮断される。
続いて、サブポート83の圧力がメインポート82の圧力よりも上昇する場合について説明する。
コイル62への通電が停止され、アクチュエータへの作動油の供給が停止された後に、外部からアクチュエータに作用する負荷が増大するなどして、アクチュエータ内の圧力が上昇すると、アクチュエータと連通するサブポート83の圧力も上昇する。ここで、サブポート83の圧力は、図3に示されるように、主弁22の段部22hに主弁22を開弁させる方向へと作用している。このため、サブポート83の圧力が制御圧室42内の圧力よりも上昇すると、開弁受圧面A1に作用するメインポート82の圧力による推力と段部22hに作用するサブポート83の圧力による推力との合力が、閉弁受圧面A2に作用する制御圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を上回って主弁22が開弁し、作動油がサブポート83からメインポート82へと流出するおそれがある。
このソレノイドバルブ10では、サブポート83から制御圧室42への作動油の流通のみを許容する第2弁体120が設けられることにより、このような現象を抑制することができる。
具体的には、サブポート83の圧力がメインポート82の圧力及び制御圧室42内の圧力よりも高くなると、上述のように第2弁体120が開弁する。そして、制御圧室42内には、サブポート83の作動油が導かれ、制御圧室42内の圧力はサブポート83の圧力と同等となる。
このように制御圧室42内の圧力はサブポート83の圧力と同等となるので、サブポート83の圧力が上昇したとしても、主弁22を閉弁させる方向に作用する力は、主弁22を開弁させる方向に作用する力を常に上回る。この結果、主弁22は閉じられた状態に維持され、作動油がサブポート83からメインポート82へと流出することが防止される。
このように、バイパス通路付きチェック弁200を設けることによって、アクチュエータに作用する負荷が増加するなどしてサブポート83の圧力が制御圧室42の圧力よりも高くなったとしても、アクチュエータの作動状態を保持することが可能となる。
次に、バイパス通路付きチェック弁200によってサブポート83と制御圧室42とを連通させる際の操作について説明する。
バイパス通路付きチェック弁200は、コイル62への通電を行わずにアクチュエータへ作動油を供給し、アクチュエータを駆動させる場合やソレノイド部60の故障によりコイル62へ通電しても主弁22が開弁しない場合などに操作される。
具体的には、メインポート82にポンプから作動油が供給され、メインポート82から制御圧室42へ導かれる作動油の圧力によって主弁22が閉じられている状態においてバイパス通路付きチェック弁200の第1弁体110の開弁操作が行われる。
第1弁体110の開弁は、ロックナット140を緩め、弁部110cがシート部106aから離座するように第1弁体110を手動で回転させることによって行われる。弁部110cとシート部106aとの間にバイパス通路108が形成されると、このバイパス通路108を通じて第1サブポート連通孔85と第2サブポート連通孔86とは、常に連通された状態となる。
この結果、制御圧室42とサブポート83とは、導入孔41、第2サブポート連通孔86、バイパス通路108及び第1サブポート連通孔85を通じて連通され、制御圧室42内の作動油は、これらの通路を通じてサブポート83へと排出される。制御圧室42の圧力が低下すると、主弁22はメインポート82の圧力に押圧されて開弁し、作動油はメインポート82及びサブポート83を通じてアクチュエータへと供給される。
このように、第1弁体110内に設けられる第2弁体120の開閉動作に関わらず、第1弁体110を手動で開弁することによって、作動油をアクチュエータへ供給することができる。
なお、第2実施形態におけるソレノイドバルブ10は、メインポート82からサブポート83へ流れる作動油の流量を制御する一方向流制御弁であるが、メインポート82からサブポート83へ流れる作動油の流量と、サブポート83からメインポート82へ流れる作動油の流量と、の双方を制御することが可能な双方向流制御弁であってもよい。この場合、メインポート82と制御圧室42とを連通させる通路と、サブポート83と制御圧室42とを連通させる通路と、の両方に開放機能付きチェック弁として機能するバイパス通路付きチェック弁200を設けることによって、コイル62へ通電を行わなくとも双方向へ作動油を供給することが可能となる。なお、ソレノイドバルブ10を双方向流制御弁とする場合には、作動油が流れる方向に応じて制御圧室42から排出される作動油の排出先をメインポート82またはサブポート83に切り換え可能な公知の切換弁がさらに設けられる。
以上の第2実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
ソレノイドバルブ10では、メインポート連通孔84とサブポート連通孔85,86との何れか一方または両方に設けられるバイパス通路付きチェック弁200は、開放弁として機能する第1弁体110と、第1弁体110内に設けられ、逆止弁として機能する第2弁体120とを有する。このように、第1弁体110が設けられる通路と、第2弁体120が設けられる通路と、を別々に設ける必要がないため、ソレノイドバルブ10をコンパクト化することができる。また、スローリターンバルブとしても機能するバイパス通路付きチェック弁200を、ソレノイドバルブ10の開放機能付きチェック弁として流用することができるため、ソレノイドバルブ10の製造コストを低減することができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
バイパス通路付きチェック弁100,200は、第1ポート103と第2ポート104とを有する第1弁体収容孔106と、第1弁体収容孔106内へ進退自在に設けられる第1弁体110と、第1弁体110内に設けられ、第1ポート103から第2ポート104への作動油の流通のみを許容する第2弁体120と、第2弁体120を迂回して第1ポート103と第2ポート104とを連通するバイパス通路108と、第1弁体110を第1弁体収容孔106内へ進退させることによりバイパス通路108の流路面積を調整自在なねじ部106b,110dと、を備えることを特徴とする。
この構成では、逆止弁として機能する第2弁体120が内部に設けられる第1弁体110の位置を第1弁体収容孔106に対して調整することによりバイパス通路108の流路面積が変更される。このため、第2弁体120の作動特性に影響を及ぼすことなく、第1弁体収容孔106に対する第1弁体110の位置を変更するだけで、バイパス通路付きチェック弁100,200を流通する作動油に付与される抵抗を容易に変更ないし調整することができる。また、第2弁体120が第1弁体110内に設けられているため、第1弁体110が設けられる通路と、第2弁体120が設けられる通路と、を別々に設ける必要がない。この結果、バイパス通路付きチェック弁100,200をコンパクト化することができる。
また、バイパス通路108は、第1弁体110が第1弁体収容孔106内へ最も進入したときに閉塞されることを特徴とする。
この構成では、第1弁体110を第1弁体収容孔106内へ最も進入させるとバイパス通路108が閉塞される。このように、バイパス通路108の最小流路面積が設定されないため、バイパス通路108の流路面積の調整自由度を向上させることができる。この結果、バイパス通路108の流路面積を、要求されるアクチュエータの作動速度等に応じた任意の大きさに設定することができる。また、バイパス通路108が閉塞されるため、スローリターンバルブとしても機能するバイパス通路付きチェック弁100,200を、ソレノイドバルブ10の開放機能付きチェック弁として流用することができる。この結果、ソレノイドバルブ10の製造コストを低減することができる。
また、第1弁体110は、第1ポート103の開口端に形成されるシート部106aに着座可能な弁部110cを有し、バイパス通路108は、弁部110cとシート部106aとにより画定されることを特徴とする。
この構成では、弁部110cとシート部106aとの間に形成される隙間がバイパス通路108とされる。このように、弁部110cとシート部106aという簡素な構成で流路面積が調整可能なバイパス通路108を画定することができる。
また、第1ポート103の圧力が第2ポート104の圧力よりも高いとき、作動油は、バイパス通路108及び第2弁体120を通じて第1ポート103から第2ポート104へ流通し、第2ポート104の圧力が第1ポート103の圧力よりも高いとき、作動油は、バイパス通路108のみを通じて第2ポート104から第1ポート103へ流通することを特徴とする。
この構成では、作動油は、第1ポート103から第2ポート104へは、バイパス通路108及び第2弁体120を通じて流通し、第2ポート104から第1ポート103へは、バイパス通路108のみを通じて流通する。このように、バイパス通路付きチェック弁100,200は、流路面積が変更可能なバイパス通路108によって、一方の方向に流れる作動油に任意の抵抗を付与することができる。
また、メインポート82とサブポート83との間を流れる作動油の流量を制御するソレノイドバルブ10は、メインポート82とサブポート83との連通開度を変化させる主弁22と、主弁22を閉弁方向に付勢する制御圧室42と、メインポート82と制御圧室42とを連通させるメインポート連通孔84と、サブポート83と制御圧室42とを連通させるサブポート連通孔85,86と、制御圧室42の圧力を制御するソレノイド部60と、を備え、メインポート連通孔84とサブポート連通孔85,86との何れか一方または両方には、上述のバイパス通路付きチェック弁100,200が設けられ、バイパス通路付きチェック弁100,200は、第1ポート103がメインポート82またはサブポート83に接続され、第2ポート104が制御圧室42に接続されることを特徴とする。
この構成では、メインポート連通孔84とサブポート連通孔85,86との何れか一方または両方に設けられるバイパス通路付きチェック弁100,200は、開放弁として機能する第1弁体110と、第1弁体110内に設けられ、逆止弁として機能する第2弁体120とを有する。このように、第1弁体110が設けられる通路と、第2弁体120が設けられる通路と、を別々に設ける必要がないため、ソレノイドバルブ10をコンパクト化することができる。また、スローリターンバルブとしても機能するバイパス通路付きチェック弁100,200を、ソレノイドバルブ10の開放機能付きチェック弁として流用することができるため、ソレノイドバルブ10の製造コストを低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。