以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図2に示す測定者Mは、軌道1に沿って歩行しながら軌道情報収集装置8を走行させる作業者である。図1〜図7に示す軌道1は、車両が走行する通路(線路)である。軌道1は、例えば、電車、気動車、機関車、客車又は貨車などの鉄道車両を1両又は複数両編成されて組成された列車を走行させる。軌道1は、レール2A,2Bと、まくらぎ3と、レール締結装置4と、道床5などを備えている。図1〜図7に示す軌道1は、鉄道線路に敷設される一般的な軌道構造であり、主としてレール2、まくらぎ3及び道床バラスト5aによって構成されているバラスト軌道である。
図3〜図7に示すレール2A,2Bは、車両の車輪を支持し案内してこの車両を走行させる部材である。レール2A,2Bは、図2〜図7に示すように、レール頭部2aと、レール底部(フランジ部)2bと、レール腹部(ウェブ部)2cなどを備えている。レール頭部2aは、車両の車輪と接触する部分である。レール頭部2aは、図3〜図7に示すように、車輪を直接支持する頭頂面(頭部上面)2dと、レール頭部2aの左右の側面部分を構成し頭頂面2dと連続する頭部側面2eと、頭頂面2dと頭部側面2eとの間に形成され急曲線通過時に車両の車輪のフランジ面と接触するゲージコーナ面2fなどを備えている。レール底部2bは、レール締結装置4によってまくらぎ3に支持されて取り付けられる部分である。レール底部2bは、レール締結装置4によって押さえ付けられる底部上面2gなどを備えている。レール腹部2cは、レール頭部2aとレール底部2bとを繋ぐ部分である。図3〜図7に示すレール2A,2Bは、通常25mの定尺レールを基地又は現地で複数本溶接することによって所定の長さに接合されており、一本の長さが200m以上のロングレール又は50〜200mの長尺レールである。
図2〜図7に示すまくらぎ3は、レール2A,2Bを支持する支持体(支承体)である。まくらぎ3は、左右のレール2A,2Bの間隔(軌間)を正確に保持するとともに、レール2A,2Bから伝達される列車荷重を道床5に分散させるために、レール2A,2Bと道床5との間に設置されている。まくらぎ3は、レール2A,2Bに対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)である。まくらぎ3は、例えば、緊張材として使用される鋼材によってプレストレスが与えられたプレストレストコンクリート製まくらぎ(PC(Prestressed concrete)まくらぎ)である。まくらぎ3は、図2に示すように、レール2A,2Bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール2A,2Bを離散的に支持している。
図4及び図5に示すに示すレール締結装置4は、レール2A,2Bをまくらぎ3に締結する装置である。レール締結装置4は、レール2A,2Bとまくらぎ3との間に挿入されて車両走行時に発生する衝撃を緩和する軌道パッド4aと、レール2A,2Bの底部上面2gを押さえ付けてまくらぎ3に締結する締結ばね4bなどを備えている。
図3〜図7に示す道床5は、まくらぎ3を支持する構造体である。道床5は、道床バラスト5aを積層したバラスト層によって構成されたバラスト道床である。道床バラスト5aは、まくらぎ3と路盤との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。
図1に示すレール軸力測定システム6は、軌道1のレール軸力を測定するシステムである。レール軸力測定システム6は、図2及び図4に示す走行装置7と、図1及び図8に示す軌道情報収集装置8と、図1及び図11に示す軌道情報処理装置24などを備えている。レール軸力測定システム6は、軌道1に沿って移動する軌道情報収集装置8にこの軌道1に関する種々の情報を収集させ、軌道情報収集装置8から軌道情報処理装置24にこの軌道1に関する種々の情報を送信し、この軌道1に関する種々の情報に基づいて軌道情報処理装置24がレール軸力を測定する。ここで、レール軸力とは、図3〜図7に示すレール2A,2B内に蓄積されるレール2A,2Bの長さ方向の力である。レール軸力は、夏季高温時には圧縮力としてレール2A,2Bに作用するため軌道座屈を引き起こす要因となり、冬季低温時には引張力としてレール2A,2Bに作用するため横裂の進展を促進する要因となる。レール軸力は、レール2A,2Bの両端部(伸縮区間)ではレール温度変化によってレール2A,2Bを伸縮させるように作用するが、レール2A,2Bの両端部以外の中間部(不動区間)ではレール2A,2Bの温度が変化してもレール2A,2Bを伸縮させるように作用しない。
図2及び図4に示す走行装置7は、軌道1上を走行する装置である。走行装置7は、軌道1上を走行する鉄道車両と同様に軌道1上を移動可能な機構を備えており、機械的な動力を必要とせずに測定者Mの人力によって走行する。走行装置7は、軌道情報収集車両として軌道情報収集装置8を機能させる。走行装置7は、例えば、可搬式の作業台車に近似した構造であり、図2に示すように測定者Mによって押し出されることによって軌道1に沿って移動可能である。走行装置7は、図2〜図7に示す搭載部7aと、図2及び図4に示す車輪7bと、軸受部7cと、図2に示す手動操作部7dなどを備えている。
図2〜図7に示す搭載部7aは、軌道情報収集装置8を搭載する部分である。搭載部7aは、軌道面に対して平行に配置される板状部材である。図2及び図4に示す車輪7bは、左右のレール2A,2Bとそれぞれ回転接触する部材である。車輪7bは、図4に示すように、鉄道車両の車輪と同様に、レール頭部2aの頭頂面2dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面と、脱輪を防止するために車輪7bの外周部に連続して形成されたフランジ面などを備えている。図2及び図4に示す軸受部7cは、車輪7bの車軸を回転自在に支持する部分である。軸受部7cは、車輪7bの車軸を支持した状態で搭載部7aに固定されている。図2に示す手動操作部7dは、軌道情報収集装置8を測定者Mが手動で手押し操作する部分である。手動操作部7dは、測定者Mが把持するハンドルであり、軌道情報収集装置8の進行方向後側の搭載部7aの端部に固定されている。
図1及び図8に示す軌道情報収集装置8は、軌道1に関する情報を収集する装置である。軌道情報収集装置8は、レール軸力を測定するために必要な軌道1に関する種々の情報を、軌道1上を走行しながら連続して取得するレール軸力の連続測定機である。軌道情報収集装置8は、例えば、図2に示すように、まくらぎ3の間隔、レール2Aの摩耗形状、レール2Aの温度及びレール2Aの固有振動数などの軌道情報を移動しながら連続して自動的に測定し収集する。軌道情報収集装置8は、軌道1の状態を検査する検測車のように軌道1に沿って走行する。軌道情報収集装置8は、例えば、0.5〜1.0m/s程度の速度で移動しながら、1mm程度の一定距離を進む毎に軌道1に関する情報を収集する。軌道情報収集装置8は、図2及び図3に示す加振装置9と、図1及び図8に示す加振条件設定装置10と、軌道状態測定装置11と、記憶装置20と、送受信装置21と、表示装置22と、制御装置23などを備えている。
図2及び図3に示す加振装置9は、レール2Aの頭部側面2eを加振する装置である。加振装置9は、図2、図3及び図9に示すように、左右一対のレール2A,2Bのうち一方のレール2Aを加振する。加振装置9は、図8に示す軌道状態測定装置11の中間点検出部15の検出結果に基づいて、図9に示すように支持点PS間の中間点PH のレール2Aの頭部側面2eを加振する。加振装置9は、中間点検出部15が検出した支持点PS間の中間点PHのうち、加振条件設定装置10によって設定された各加振点P1,…,PNでレール2Aの頭部側面2eを加振する。ここで、図9に示す支持点PSは、レール2Aを加振したときにこのレール2Aの振動の節となる位置である。加振点P1,…,PNは、レール2Aを加振したときにこのレール2Aの振動の腹となる位置であり、レール締結装置4間の中心となる支持点PS間の中間点PHである。加振装置9は、図3に示すように、インパルスハンマーのような加振器によってレール2Aの頭部側面2eを打撃して、この頭部側面2eに加振力(打撃荷重)を作用させるインパルス加振装置などである。加振装置9は、支持点PS間の中間点PHを通過する瞬間に、支持点検出部13が特定したレール締結装置4の位置に基づいて自動制御によって、レール頭部2aをインパルス加振する。加振装置9は、図3に示すような振り子式の加振器であり、図2、図3、図8及び図9に示すハンマー部9aと、図2、図3及び図8に示す駆動部9bなどを備えている。
図2、図3、図8及び図9に示すハンマー部9aは、レール2Aの頭部側面2eに衝突する部分である。ハンマー部9aは、支持点を支点として揺動自在に支持される金属製、合成樹脂製又は天然樹脂製の部材である。図2、図3及び図8に示す駆動部9bは、ハンマー部9aを駆動する手段である。駆動部9bは、図2及び図9において二点鎖線で示す待機位置でハンマー部9aを固定解除してレール2Aの頭部側面2eに衝突させ、衝突後のハンマー部9aを待機位置まで復帰させ、ハンマー部9aを待機位置で固定する。駆動部9bは、図9に示す各加振点P1,…,PNにハンマー部9aが到達したときに、待機位置でハンマー部9aを固定解除して駆動し、ハンマー部9aが衝突した後にこのハンマー部9aを待機位置まで逆方向に駆動する。
図1及び図8に示す加振条件設定装置10は、レール2Aの頭部側面2eを加振装置9によって加振する条件を設定する装置である。加振条件設定装置10は、レール2Aの頭部側面2eを加振装置9によって加振するタイミングを設定する。加振条件設定装置10は、レール2Aの伸縮区間であるレール2Aの両端部のレール軸力を測定するときには、このレール2Aの両端部における中間点PHが加振点P1,…,PNとなるような加振条件を設定する。加振条件設定装置10は、所定区間内のレール2Aの中間点PHを連続的に加振するときには、図9に示すようにこの所定区間内の全ての中間点PHが加振点P1,…,PNとなるような加振条件を設定する。加振条件設定装置10は、所定区間内のレール2Aの中間点PHを離散的に加振するときには、この所定区間内の任意の中間点PHが加振点P1,…,PNとなるような加振条件を設定する。加振条件設定装置10は、所定区間内のレール2Aの中間点PHを一定間隔で加振するときには、この所定区間内の一定間隔の中間点PHが加振点P1,…,PNとなるような加振条件を設定する。加振条件設定装置10は、例えば、測定者の手動操作によって加振条件を入力する入力装置又は補助入力装置などである。加振条件設定装置10は、設定後の加振条件を加振条件情報として制御装置23に出力する。
図1及び図8に示す軌道状態測定装置11は、軌道1のレール軸力を測定するために、この軌道1に沿って移動しながらこの軌道1の状態を測定する装置である。軌道状態測定装置11は、軌道1の状態を所定の間隔をあけて連続して測定する。軌道状態測定装置11は、例えば、加振装置9の移動距離を測定したり、レール2Aの支持点PSを検出したり、レール2Aの支持点PS間の間隔を測定したり、支持点PS間の中間点PHを検出したり、レール2Aから発生する音を測定したり、レール2Aの固有振動数を測定したり、レール2Aのレール頭部2aの摩耗形状を測定したり、レール2Aを支持する支持点PS付近の温度を測定したりする。軌道状態測定装置11は、図2,図4及び図8に示す移動距離測定部12と、図2、図5及び図8に示す支持点検出部13と、図8に示す間隔測定部14と、中間点検出部15と、図3及び図8に示す音測定部16と、図8に示す固有振動数測定部17と、図2、図6及び図8に示す摩耗形状測定部18と、図2、図7及び図8に示す温度測定部19などを備えている。
図2,図4及び図8に示す移動距離測定部12は、加振装置9の移動距離を測定する手段である。移動距離測定部12は、図2に示す車輪7bの1回転毎に所定数のパルス信号(距離パルス信号)を発生して回転数検出情報(回転数検出信号)として出力するエンコーダと、このパルス信号に基づいて加振装置9の移動距離(走行距離)を演算する演算部などを備えている。移動距離測定部12は、車輪7bの回転数に応じて出力される回転数検出信号に基づいて、起点(測定開始地点)からの加振装置9の移動距離を演算し、軌道情報収集装置8の移動距離を移動距離情報として制御装置23に出力する。
図2、図5及び図8に示す支持点検出部13は、レール2Aを支持する支持点PSを検出する手段である。支持点検出部13は、まくらぎ3にレール2Aが締結される締結位置を支持点PSとして検出する。支持点検出部13は、レール締結装置4を検出する支持点検出用の変位計である。支持点検出部13は、図2及び図5に示すように、軌道1に向かってレーザ光を照射する照射部と、軌道1から反射する反射レーザ光を受光する受光部と、照射部が照射するレーザ光と受光部が受光する反射レーザ光との位相差に基づいてレーザ光の反射位置までの距離を演算する距離演算部などを備えている。支持点検出部13は、図2に示すように、隣接する2つの支持点PSを検出した後にこの2つの支持点PS間の中間点PHを加振装置9が加振するように、軌道情報収集装置8の進行方向に向かって加振装置9よりも前方側に配置されている。支持点検出部13は、まくらぎ3又は道床バラスト5aまでの距離と、レール締結装置4までの距離とが異なる点を利用して、レール締結装置4を検出する。支持点検出部13は、支持点PSを検出する毎に支持点検出情報(支持点検出信号)を制御装置23に出力する。
図8に示す間隔測定部14は、レール2Aを支持する支持点PS間の間隔を測定する手段である。間隔測定部14は、移動距離測定部12の測定結果と支持点検出部13の検出結果とに基づいて、レール2Aを支持する支持点PS間の間隔を測定する。間隔測定部14は、図2に示すように、支持点検出部13が支持点PSを検出してからこの支持点検出部13が次の支持点PSを検出するまでに、移動距離測定部12が測定する移動距離を支持点PS間の間隔として演算する。間隔測定部14は、図2及び図5に示すように、支持点検出部13がレール締結装置4にレーザ光を照射したときに、移動距離測定部12が測定する加振装置9の移動距離に対する支持点検出部13が出力する支持点検出信号の変位波形に基づいてレール締結装置4の位置を特定し、まくらぎ3の間隔に相当する支持点PS間の間隔を測定する。間隔測定部14は、測定後の支持点間の間隔を間隔情報として制御装置23に出力する。
図8に示す中間点検出部15は、レール2Aを支持する支持点PS間の中間点PHを検出する手段である。中間点検出部15は、移動距離測定部12の測定結果と、支持点検出部13の検出結果と、間隔測定部14の測定結果とに基づいて、レール2Aを支持する支持点PS間の中間点PHを測定する。中間点検出部15は、例えば、加振装置9が支持点PSを通過してから、支持点PS間の間隔の半分の距離までこの加振装置9が到達したときに、支持点PS間の中間点PHにこの加振装置9が位置していると検出する。中間点検出部15は、各中間点PHを検出したときに移動距離測定部12が出力する移動距離情報に基づいて、起点から各中間点PHまでの距離を中間点検出情報として出力する。中間点検出部15は、加振装置9が支持点PS間の中間点PHに到達したことを検出したときには、中間点検出情報を制御装置23に出力する。
図3及び図8に示す音測定部16は、レール2Aの頭部側面2eが加振されたときに発生する音を測定する手段である。音測定部16は、音響エネルギーを電気エネルギーに変換する音響電気変換部であり、音圧に応じた電気信号を出力するマイクロホンなどの集音装置である。音測定部16は、図3に示すように、レール2Aの頭部側面2eとの間に所定の隙間をあけて対向して配置されている。音測定部16は、図9に示すように、支持点PS間の中間点PHから発生する音を測定し、図3に示すようにレール2Aの頭部側面2eが加振されたときに発生する音を非接触で測定する。音測定部16は、レール2Aの頭部側面2eから発生する音を音情報として制御装置23に出力する。
図8に示す固有振動数測定部17は、音測定部16の測定結果に基づいてレール2Aの固有振動数を測定する手段である。固有振動数測定部17は、音測定部16が出力する音測定信号の固有振動数(共振周波数)を演算し、レール2Aが加振されたときのレール2Aの振動の固有振動数を特定する。固有振動数測定部17は、レール2Aが支持される支持点PSが節になり、この支持点PS間の中間点PHが腹となるレール2Aの水平方向及び/又は上下方向のpinned-pinnedモードの振動モードの固有振動数を測定する。固有振動数測定部17は、例えば、音測定部16が出力する音測定信号を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation(以下、FFTという))処理して、この音測定信号の共振周波数を演算する。固有振動数測定部17は、例えば、レール2Aの頭部側面2eを加振したときの加速度応答をFETアナライザによって周波数分析し、レール2Aの固有振動数を演算する。固有振動数測定部17は、音測定部16が出力する音測定信号のピークに対応する周波数をレール2Aの固有振動数として特定する。固有振動数測定部17は、測定後の固有振動数を固有振動数情報として制御装置23に出力する。
図2、図6及び図8に示す摩耗形状測定部18は、レール頭部2aの摩耗形状を測定する手段である。摩耗形状測定部18は、レール頭部2aの摩耗形状を測定するレール摩耗測定用の変位計である。摩耗形状測定部18は、図2及び図6に示すように、レール頭部2aに向かってレーザ光を照射する照射部と、レール頭部2aの表面から反射する反射レーザ光を受光する受光部と、照射部が照射するレーザ光と受光部が受光する反射レーザ光との位相差に基づいてレーザ光の反射位置までの距離を演算する距離演算部と、この距離演算部の演算結果に基づいてレール頭部2aの断面形状を演算する断面形状演算部などを備えている。摩耗形状測定部18は、図6に示すレール頭部2aの頭頂面2d、頭部側面2e及びゲージコーナ面2fを囲むように、これらの表面と所定の間隔をあけて帯状に配置されている。摩耗形状測定部18は、図2に示すように、加振装置9が加振する中間点PH付近のレール頭部2aの摩耗形状を測定可能なように、この加振装置9の近くに配置されており、レール頭部2aの摩耗形状を非接触で測定する。摩耗形状測定部18は、測定後のレール頭部2aの断面形状を摩耗形状情報として制御装置23に出力する。
図2、図7及び図8に示す温度測定部19は、レール2Aを支持する支持点PS付近の温度を測定する手段である。温度測定部19は、例えば、図7に示すように、支持点PS付近のレール底部2bの底部上面2gの温度を測定する。温度測定部19は、レール2Aの底部上面2gから放射される放射赤外線を測定する放射温度計である。温度測定部19は、レール2Aの支持点PS付近から放射される赤外線放射エネルギーを受光する受光部と、この受光部が出力する電気信号に基づいてこのレール2Aの支持点PS付近の表面温度を演算する表面温度演算部などを備えている。温度測定部19は、レール2Aと所定の間隔をあけて配置されており、レール2Aの温度を非接触で測定する。温度測定部19は、図2に示すように、加振装置9が加振する中間点PH付近のレール底部2bの底部上面2gの温度を測定可能なように、この加振装置9の近くに配置されている。温度測定部19は、測定後のレール2Aの支持点PS付近の温度を温度情報として制御装置23に出力する。
図1及び図8に示す記憶装置20は、種々の情報を記憶する装置である。記憶装置20は、例えば、加振条件設定装置10の設定結果及び軌道状態測定装置11の測定結果などを記憶するメモリ又はハードディスクなどである。記憶装置20は、図8に示すように、軌道情報記憶部20aと、加振条件情報記憶部20bと、軌道情報収集プログラム記憶部20cなどを備えている。
図8に示す軌道情報記憶部20aは、軌道1に関する種々の情報を記憶する手段である。軌道情報記憶部20aは、軌道状態測定装置11の測定結果を記憶する。軌道情報記憶部20aは、例えば、図10に示すように、加振点P1,…,PN毎の固有振動数情報D11,…,D1Nと、加振点P1,…,PN毎の摩耗形状情報D21,…,D2Nと、加振点P1,…,PN毎の温度情報D31,…,D3Nと、起点から各加振点P1,…,PNまでの移動距離に相当する移動距離情報D41,…,D4Nなどを軌道情報として記憶する。
図8に示す加振条件情報記憶部20bは、加振条件設定装置10が設定した加振条件情報を記憶する手段である。加振条件情報記憶部20bは、加振条件設定装置10が出力する加振条件情報を記憶する。軌道情報収集プログラム記憶部20cは、軌道1に関する種々の情報を収集する軌道情報収集プログラムを記憶する手段である。軌道情報収集プログラム記憶部20cは、情報記録媒体から読み取った軌道情報収集プログラム、又は電気通信回線を通じて取り込まれた軌道情報収集プログラムなどを記憶する。
図1及び図8に示す送受信装置21は、軌道情報記憶部20aが記憶する軌道情報を送信する手段である。送受信装置21は、例えば、軌道情報処理装置24側の送受信装置25からの指令を受信して、軌道情報記憶部20aが記憶する軌道情報をこの軌道情報処理装置24側の送受信装置25に送信する。送受信装置21は、軌道情報処理装置24側の送受信装置25と有線又は無線によって相互に通信可能に接続されている。
図1及び図8に示す表示装置22は、軌道1に関する種々の情報を表示する装置である。表示装置22は、例えば、加振条件設定装置10が設定する加振条件情報を表示したり、軌道状態測定装置11が出力する軌道情報を表示したり、音測定部16が出力するレール2Aを加振したときの振動伝達量の波形を表示したり、固有振動数測定部17が測定する固有振動数を表示したり、軌道情報記憶部20aが記憶する軌道情報などを表示したりする。
図1及び図8に示す制御装置23は、軌道情報収集装置8に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御装置23は、例えば、加振条件設定装置10が出力する加振条件情報を加振条件情報記憶部20bに出力したり、軌道状態測定装置11が出力する軌道情報を軌道情報記憶部20aに出力したり、軌道情報記憶部20aに軌道情報の記憶を指令したり、加振条件情報記憶部20bに加振条件情報の記憶を指令したり、加振条件情報記憶部20bが記憶する加振条件情報と中間点検出部15が出力する中間点検出情報とに基づいて加振装置9の駆動部9bに加振動作を指令したり、軌道情報収集プログラム記憶部20cから軌道情報収集プログラムを読み出してこの軌道情報収集プログラムに従って所定の軌道情報収集処理を実行したり、記憶装置20から軌道情報を読み出して送受信装置21及び表示装置22に出力したり、送受信装置21に軌道情報の送信を指令したり、表示装置22に軌道情報の表示を指令したりなどする。制御装置23は、加振装置9、加振条件設定装置10、軌道状態測定装置11、記憶装置20、送受信装置21及び表示装置22などが相互に通信可能なように接続されている。
図1及び図11に示す軌道情報処理装置24は、軌道1に関する情報を処理する装置である。軌道情報処理装置24は、軌道情報収集装置8が収集した軌道情報について所定の処理を実行してこの軌道情報を解析する。軌道情報処理装置24は、例えば、軌道1上を移動しながら現場で軌道情報を収集する軌道情報収集装置8とは異なり地上側に設置されており、軌道情報収集装置8が収集した軌道情報を後処理によって解析する。軌道情報処理装置24は、図1及び図11に示すように、送受信装置25と、記憶装置26と、レール軸力測定装置27などを備えている。
図1及び図11に示す送受信装置25は、軌道情報記憶部20aが記憶する軌道情報を受信する手段である。送受信装置25は、例えば、軌道情報収集装置8側の軌道情報記憶部20aが記憶する軌道情報を、この軌道情報収集装置8側の送受信装置21から受信する。
記憶装置26は、種々の情報を記憶する装置である。記憶装置26は、例えば、軌道情報収集装置8側から送信される軌道情報、レール軸力測定装置27の測定結果、固有振動数−レール軸力の関係を表す相関関係情報、及び相関関係情報補正部28A,28Bによる補正後の相関関係情報などを記憶するメモリ又はハードディスクなどである。記憶装置26は、図11に示すように、相関関係情報記憶部26aと、軌道情報記憶部26bと、軸力情報記憶部26cと、レール軸力測定プログラム記憶部26dなどを備えている。
図11に示す相関関係情報記憶部26aは、レール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係を相関関係情報として記憶する手段である。相関関係情報記憶部26aは、相関関係情報補正部28A,28Bによって相関関係情報が補正されたときには、この補正後の相関関係情報も記憶する。相関関係情報記憶部26aは、例えば、図12に示すようなレール2Aの固有振動数とレール軸力との対応関係を記憶する。ここで、図12に示す縦軸はレール軸力(kN)であり、横軸は固有振動数(Hz)である。レール軸力は、引張が正であり圧縮が負である。相関関係情報記憶部26aは、図13に示すような軌道1の有限要素モデルによって演算される固有振動数とレール軸力との相関関係を記憶する。
図13に示す解析モデルは、軌道1の有限要素モデルの1締結分の構造である。この解析モデルは、モデル境界部で生じる反射波の影響が十分に小さくなるように、200締結(延長120m)分の軌道のモデルである。図13に示すレール2Aは、ソリッド要素でモデル化された振動解析の対象となる解析レールである。レール2Bは、ビーム要素でモデル化された反対側レールである。レール2A,2Bは、いずれも60kgレールに相当する断面形状でモデル化した。まくらぎ3は、3号PCまくらぎに相当する断面形状でモデル化した。レール締結装置4は、レール2A、2Bとまくらぎ3とを結合するばね要素でモデル化した。道床5は、バラスト道床でありまくらぎ3の下に配置したばね要素でモデル化した。ここで、図13に示すkfは、レール締結装置4のばね係数である。ηfは、レール締結装置4の減衰係数である。keは、まくらぎ3の端部と道床5との間のばね係数である。ηeは、まくらぎ3の端部と道床5との間の減衰係数である。kcは、まくらぎ3の中央部と道床5との間のばね係数である。ηcは、まくらぎ3の中央部と道床5との間の減衰係数である。相関関係情報記憶部26aは、例えば、図12に示すように、実際の軌道1を有限要素モデル化して求めた固有振動数とレール軸力との相関関係を相関関係情報として記憶する。
図11に示す軌道情報記憶部26bは、軌道1に関する種々の情報を記憶する手段である。軌道情報記憶部26bは、軌道情報収集装置8側の軌道情報記憶部20aと同一構造であり、軌道情報記憶部20aが記憶する軌道1に関する種々の情報を軌道情報として記憶する。
軸力情報記憶部26cは、軌道1のレール軸力に関する情報を記憶する手段である。軸力情報記憶部26cは、軸力演算部29の演算結果を記憶する。軸力情報記憶部26cは、例えば、図14に示すように、加振点P1,…,PN毎の軸力情報D51,…,D5Nと、起点から各加振点P1,…,PNまでの移動距離に相当する移動距離情報D41,…,D4Nなどを軸力情報として記憶する。
図1及び図11に示すレール軸力測定装置27は、軌道1のレール軸力を測定する装置である。レール軸力測定装置27は、軌道情報収集装置8の軌道状態測定装置11が測定するレール2Aの固有振動数に基づいてレール軸力を測定する。レール軸力測定装置27は、図11に示すように、相関関係情報補正部28A,28Bと、軸力演算部29と、制御部30などを備えている。
図11に示す相関関係情報補正部28Aは、レール2Aのレール頭部2aの摩耗形状に基づいて相関関係情報を補正する手段である。相関関係情報補正部28Aは、図13に示すような実際の軌道1の有限要素モデルの解析レールであるレール2Aのソリッド要素の形状をレール頭部2aの断面形状に合わせて修正して、相関関係情報記憶部26aが記憶する固有振動数とレール軸力との相関関係を補正する。相関関係情報補正部28Aは、例えば、軌道1が直線及び曲線内軌である場合であって、レール2Aの頭頂面2dが摩耗している摩耗形状であるときには、この摩耗形状によって実際の軌道1を有限要素モデル化して求めた固有振動数とレール軸力との相関関係を生成する。相関関係情報補正部28Aは、例えば、軌道1が曲線外軌である場合であって、レール2Aのゲージコーナ面2fが摩耗している摩耗形状であるときには、この摩耗形状で実際の軌道1を有限要素モデル化して求めた固有振動数とレール軸力との相関関係を生成する。相関関係情報補正部28Aは、補正後の相関関係情報を制御部30に出力する。
図11に示す相関関係情報補正部28Bは、レール2Aを支持する支持点PS付近の温度に基づいて相関関係情報を補正する手段である。相関関係情報補正部28Bは、図13に示すような実際の軌道1の有限要素モデルのレール締結装置4のばね係数kfを支持点PSの温度に応じて修正し、相関関係情報記憶部26aが記憶する固有振動数とレール軸力との相関関係を補正する。相関関係情報補正部28Bは、例えば、レール2A及びまくらぎ3の平均温度の平均温度が下がるとレール締結装置4のばね係数kfが増加するときには、このレール締結装置4のばね係数kfで実際の軌道1を有限要素モデル化して求めた固有振動数とレール軸力との相関関係を生成する。相関関係情報補正部28Bは、補正後の相関関係情報を制御部30に出力する。
図11に示す軸力演算部29は、軌道1のレール軸力を演算する手段である。軸力演算部29は、図8に示す軌道情報収集装置8の軌道状態測定装置11が測定するレール2Aの固有振動数に基づいて、このレール2Aのレール軸力を演算する。軸力演算部29は、図11に示す相関関係情報記憶部26aが記憶する相関関係情報とレール2Aの固有振動数とに基づいてレール軸力を演算する。軸力演算部29は、図12に示す相関関係情報とレール2Aの固有振動数とを照合して、レール2Aの固有振動数fに対応するレール軸力Fを推定する。軸力演算部29は、相関関係情報補正部28A,28Bが相関関係情報を補正しているときには、この相関関係情報補正部28A,28Bが補正した補正後の相関関係情報とレール2Aの固有振動数とに基づいてレール軸力を演算する。軸力演算部29は、補正後の相関関係情報とレール2Aの固有振動数とを照合して、レール2Aの固有振動数に対応するレール軸力を推定する。軸力演算部29は、演算後のレール軸力を軸力情報として制御部30に出力する。
図11に示す制御部30は、レール軸力測定装置27に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部30は、例えば、軌道情報収集装置8側の送受信装置21からの軌道情報の送信を送受信装置25に指令したり、送受信装置25が出力する軌道情報を軌道情報記憶部26bに出力したり、軌道情報の記憶を軌道情報記憶部26bに指令したり、相関関係情報記憶部26aから相関関係情報を読み出して軸力演算部29に出力したり、相関関係情報記憶部26aから相関関係情報を読み出して相関関係情報補正部28A,28Bに出力したり、軌道情報記憶部26bから軌道情報を読み出して軸力演算部29に出力したり、レール軸力測定プログラム記憶部26dからレール軸力測定プログラムを読み出してこのレール軸力測定プログラムに従って所定のレール軸力測定処理を実行したり、相関関係情報記憶部26aから相関関係情報を読み出して相関関係情報補正部28A,28Bに出力したり、相関関係情報補正部28A,28Bに相関関係情報の補正を指令したり、相関関係情報補正部28A,28Bが出力する補正後の相関関係情報を相関関係情報記憶部26aに出力したり、補正後の相関関係情報の記憶を相関関係情報記憶部26aに指令したり、軸力演算部29にレール軸力の演算を指令したり、軸力演算部29が出力する軸力情報を軸力情報記憶部26cに出力したり、軸力情報記憶部26cに軸力情報の記憶を指令したり、軌道1に関する種々の情報の表示を表示装置31に指令したりする。制御部30は、送受信装置25、記憶装置26、相関関係情報補正部28A,28B、軸力演算部29及び表示装置31などが相互に通信可能なように接続されている。
表示装置31は、軌道1に関する種々の情報を表示する装置である。表示装置31は、例えば、相関関係情報記憶部26aが記憶する相関関係情報を表示したり、軌道情報記憶部26bが記憶する軌道情報を表示したり、軸力情報記憶部26cが記憶する軸力情報を表示したりする。
次に、この発明の実施形態に係る軌道情報収集装置の動作を説明する。
以下では、図8に示す制御装置23の動作を中心に説明する。
図15に示すステップ(以下、Sという)100において、軌道情報収集プログラム記憶部20cから軌道情報収集プログラムを制御装置23が読み込む。図2に示すように、軌道情報収集装置8を現場に搬送し、走行装置7の車輪7bを軌道1のレール2A,2B上に設置すると、軌道1に沿って軌道情報収集装置8が移動可能な状態になる。図8に示す軌道情報収集装置8の電源を測定者がON操作すると、軌道情報収集プログラム記憶部20cから軌道情報収集プログラムを制御装置23が読み込み、軌道御情報収集処理を制御装置23が実行する。
S110において、加振条件情報記憶部20bから加振条件情報を制御装置23が読み込む。加振条件設定装置10を測定者が操作して加振条件を設定するとこの加振条件が加振条件情報記憶部20bに記憶される。例えば、図9に示すレール2A,2Bがロングレールである場合には、このロングレールの両端部から30〜40mまでの区間内でレール軸力を連続して測定したいときには、この区間内の全ての中間点PHが加振点P1,…,PNとして設定される。この場合には、加振条件情報記憶部20bから加振条件情報を制御装置23が読み出して、ロングレールの両端部から所定区間内でレール軸力を連続して測定すると制御装置23が認識する。
S120において、支持点PS間の中間点PHが検出されたか否かを制御装置23が判定する。例えば、図2に示すように、レール2A,2Bがロングレールである場合に、このロングレールの一方の端部から他方の端部に向かって軌道情報収集装置8が軌道1上で移動を開始すると、図2及び図4に示す移動距離測定部12が加振装置9の移動距離の測定を開始するとともに、図2及び図5に示す支持点検出部13が支持点PSの検出を開始する。軌道情報収集装置8が軌道1上を移動して支持点PS上を通過する度に、支持点検出部13が間隔測定部14に支持点検出信号を出力する。支持点検出部13が支持点検出信号を出力してから次の支持点検出信号を出力するまでの間に、移動距離測定部12が間隔測定部14に出力する移動距離情報に基づいて、支持点PS間の間隔を間隔測定部14が測定する。間隔測定部14が間隔情報を中間点検出部15に出力すると、図9に示す支持点PSから中間点PHまでの中間距離(支持点PS間の間隔の半分の距離)を中間点検出部が演算する。図8に示す支持点検出部13が中間点検出部15に支持点検出信号を出力してから加振装置9が移動する移動距離の計測を、移動距離測定部12が中間点検出部15に出力する移動距離情報に基づいて中間点検出部15が演算する。加振装置9の移動距離が中間距離に達したと中間点検出部15が判断したときには、中間点検出部15が中間点検出情報を制御装置23に出力する。中間点検出部15から中間点検出情報が入力したと制御装置23が判断したときにはS130に進む。一方、中間点検出部15から中間点検出情報が入力していないと制御装置23が判断したときには、S120の判断を制御装置23が繰り返す。
S130において、加振装置9によって加振点P1,…,PNでレール2Aを加振するか否かを制御装置23が判断する。図8に示す中間点検出部15から制御装置23に中間点検出情報が入力すると、加振条件情報記憶部20bから読み出した加振条件情報とこの中間点検出情報とを制御装置23が照合する。その結果、中間点検出部15が検出した中間点PHと、加振条件設定装置10が設定した加振条件(加振点P1,…,PN)とが一致するか否かを制御装置23が判断する。中間点PHと加振点P1,…,PNとが一致すると制御装置23が判断したときにはS140に進む。一方、中間点PHと加振点P1,…,PNとが一致しないと制御装置23が判断したときにはS120に戻り、S120以降の判断を制御装置23が繰り返す。
S140において、制御装置23が加振装置9に加振動作を指令する。図9に示すように、加振装置9が加振点P1,…,PNに到達すると、支持点PS間の中間点PHでレール2Aを加振装置9が加振するように、加振装置9の駆動部9bを制御装置23が制御する。その結果、図2、図3及び図9に示すように、加振装置9のハンマー部9aを駆動部9bが固定解除し、図3及び図9に二点鎖線で示す待機位置からハンマー部9aを落下させて、図9に示す加振点P1,…,PNでレール2Aの頭部側面2eにハンマー部9aが衝突する。その結果、レール2Aの支持点PSが節になり、この支持点PS間の中間点PHが腹となって、レール2Aが振動する。衝突後にはハンマー部9aを駆動部9bが二点鎖線で示す待機位置まで駆動し、待機位置でハンマー部9aを駆動部9bが固定する。図2、図3及び図9に示すように、レール2Aの頭部側面2eにハンマー部9aが衝突すると、この頭部側面2eから放射される音を音測定部16が検出する。図8に示す音測定部16がプリトリガで音の測定を開始し、音測定部16が音情報を固有振動数測定部17に出力すると、固有振動数測定部17が支持点PS間毎に固有振動数を測定する。レール2Aの固有振動数を固有振動数測定部17が測定し、固有振動数測定部17が固有振動数情報を制御装置23に出力する。
S150において、制御装置23が摩耗形状測定部18に測定動作を指令する。図9に示すように、加振装置9が加振点P1,…,PNに到達すると、図2及び図6に示す摩耗形状測定部18がレール2Aの摩耗形状を測定するように、摩耗形状測定部18を制御装置23が制御する。その結果、摩耗形状測定部18がレール頭部2aの表面の摩耗形状を測定し、摩耗形状測定部18が摩耗形状情報を制御装置23に出力する。
S160において、制御装置23が温度測定部19に測定動作を指令する。加振装置9が加振点P1,…,PNに到達すると、図2及び図7に示す温度測定部19が支持点PS付近の温度を測定するように、温度測定部19を制御装置23が制御する。その結果、温度測定部19が支持点PS付近のレール底部2bの底部上面2gの温度を測定し、温度測定部19が温度情報を制御装置23に出力する。
S170において、軌道情報の記録を軌道情報記憶部20aに制御装置23が指令する。固有振動数情報、摩耗形状測定情報、温度情報及び移動距離情報の記憶を軌道情報記憶部20aに制御装置23が指令する。その結果、図10に示すように、加振点P1,…,PN毎の固有振動数情報D11,…,D1N、摩耗形状情報D21,…,D2N及び温度情報D31,…,D3Nと、起点から各加振点P1,…,PNまでの移動距離情報D41,…,D4Nとを対応させて、これらの情報を軌道情報として軌道情報記憶部20aが記憶する。
S180において、軌道情報集処理を終了するか否かを制御装置23が判断する。加振条件情報記憶部20bから読み出した加振条件情報を制御装置23が参照して、軌道情報集処理を終了するか否かを制御装置23が判断する。全ての加振点P1,…,PNにおいて軌道情報の収集を完了したと制御装置23が判断したときには、制御装置23が一連の軌道情報収集処理を終了する。一方、全ての加振点P1,…,PNにおいて軌道情報の収集を完了していないと制御装置23が判断したときにはS120に戻り、S120以降の処理を制御装置23が繰り返す。
次に、この発明の実施形態に係るレール軸力測定装置の動作を説明する。
以下では、図11に示す制御部30の動作を中心に説明する。
図16に示すS200において、レール軸力測定プログラム記憶部26dからレール軸力測定プログラムを制御部30が読み込む。図11に示す軌道情報処理装置24の電源を測定者がON操作すると、レール軸力測定プログラム記憶部26dからレール軸力測定プログラムを制御部30が読み込み、レール軸力測定処理を制御部30が実行する。
S210において、軌道情報の送信を送受信装置25に制御部30が指令する。図1に示す軌道情報処理装置24側の送受信装置25から軌道情報収集装置8側の送受信装置21に軌道情報の送信が指令されると、図8に示す軌道情報収集装置8の制御装置23が軌道情報記憶部20aから軌道情報を読み出す。その結果、図1に示す制御装置23が送受信装置21に軌道情報を出力し、軌道情報収集装置8側の送受信装置21から軌道情報処理装置24側の送受信装置25にこの軌道情報が送信される。
S220において、軌道情報を受信したか否かを制御部30が判断する。図11に示す送受信装置25から制御部30に軌道情報が入力したと制御部30が判断したときにはS230に進み、送受信装置25から制御部30に軌道情報が入力していないと制御部30が判断したときには一連のレール軸力測定処理を終了する。
S230において、軌道情報の記録を軌道情報記憶部26bに制御部30が指令する。軌道情報収集装置8から受信した軌道情報を軌道情報記憶部26bに制御部30が出力すると、軌道情報記憶部26bがこの軌道情報を記憶する。
S240において、相関関係情報記憶部26aから相関関係情報を制御部30が読み込む。相関関係情報記憶部26aから相関関係情報を制御部30が読み出して、相関関係情報補正部28A,28B及び軸力演算部29この相関関係情報を制御部30が出力する。
S250において、相関関係情報を補正するか否かについて制御部30が判断する。制御部30が軌道情報を参照して、図10に示す摩耗形状情報D21,…,D2N及び温度情報D31,…,D3Nがこの軌道情報に含まれているか否かを制御部30が判断する。摩耗形状情報D21,…,D2N及び温度情報D31,…,D3Nが軌道情報に含まれていると制御部30が判断したときにはS260に進む。一方、摩耗形状情報D21,…,D2N及び温度情報D31,…,D3Nが軌道情報に含まれていないと制御部30が判断したときにはS270に進む。
S260において、相関関係情報の補正を相関関係情報補正部28A,28Bに制御部30が指令する。例えば、摩耗形状情報D21,…,D2Nに基づいて相関関係情報を補正するときには、図13に示すレール2Aのレール頭部2aのソリッド要素の形状をレール摩耗形状に合わせて修正した有限要素モデルによって求めた相関関係を補正後の相関関係情報として生成する。また、例えば、温度情報D31,…,D3Nに基づいて相関関係情報を補正するときには、図13に示すレール締結装置4のばね係数kfを温度に応じて修正した有限要素モデルによって求めた相関関係を補正後の相関関係情報として生成する。補正後の相関関係情報を相関関係情報補正部28A,28Bが制御部30に出力すると、この補正後の相関関係情報を相関関係情報記憶部26a及び軸力演算部29に制御部30が出力し、この補正後の相関関係情報を相関関係情報記憶部26aが記憶する。
S270において、レール軸力の演算を軸力演算部29に制御部30が指令する。軌道情報記憶部20aから軌道情報を制御部30が読み出して、この軌道情報を軸力演算部29に制御部30が出力する。その結果、図12に示す固有振動数−レール軸力の関係を表す相関関係情報と、図10に示す固有振動数情報D11,…,D1Nとを軸力演算部29が照合して、加振点P1,…,PN毎にレール軸力を軸力演算部29が演算し、軸力演算部29が制御部30に軸力情報を出力する。
S280において、軸力情報補記憶を軸力情報記憶部26cに制御部30が指令する。軸力演算部29から軸力情報が制御部30に入力すると、この軸力情報を軸力情報記憶部26cに制御部30に出力する。その結果、図14に示すように、加振点P1,…,PN毎のレール軸力情報D51,…,D5Nと、起点から各加振点P1,…,PNまでの移動距離情報D41,…,D4Nとを対応させて、これらの情報を軌道情報として軌道情報記憶部20aが記憶する。
この発明の実施形態に係る軌道情報収集装置及びレール軸力演算装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、軌道1のレール軸力を測定するために、この軌道1に沿って移動しながらこの軌道1の状態を軌道状態測定装置11が測定し、この軌道1のレール2Aの固有振動数を軌道状態測定装置11が測定する。通常、レール軸力が増加するとレール2Aの固有振動数が高くなり、レール軸力が低下するとレール2Aの固有振動数が低くなる。この実施形態では、軌道1上を移動しながらレール2Aの固有振動数を測定することによって、軌道1のレール軸力を短時間で連続して測定することができる。
(2) この実施形態では、レール2Aの頭部側面2eを加振装置9が加振し、レール2Aの頭部側面2eが加振されたときに発生する音を音測定部16が測定し、この音測定部16の測定結果に基づいてレール2Aの固有振動数を固有振動数測定部17が測定する。このため、軌道1に沿って移動しながらレール2Aの固有振動数を連続して測定することができる。また、レール2Aを加振したときに比較的音圧の高い音を放射する頭部側面2eを加振することによって、レール2Aの加振時に発生する音を高精度に測定することができる。
(3) この実施形態では、レール2Aを支持する支持点PS間の中間点PHを中間点検出部15が検出し、中間点検出部15の検出結果に基づいてこの中間点PHでレール2Aの頭部側面2eを加振装置9が加振し、この中間点PHから発生する音を音測定部16が測定する。このため、まくらぎ3や道床バラスト5aの影響を受けず、最も容易に振動するレール2Aの支持点PS間の中間点PHを加振することによって、レール2Aの固有振動数を高精度に測定することができる。また、まくらぎ3間の間隔が異なる場合であっても支持点PS間の中間点PHを加振装置9によって正確に加振することができる。
(4) この実施形態では、レール2Aの頭部側面2eが加振されたときに発生する音を音測定部16が非接触で測定する。このため、軌道情報収集装置8を軌道1に沿って移動させながらレール2Aから放射する音をマイクロホンのような安価な集音装置によって簡単に測定することができる。
(5) この実施形態では、レール2Aのレール頭部2aの摩耗形状を摩耗形状測定部18が測定する。このため、レール軸力の測定に必要なレール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係をレール頭部2aの摩耗形状に応じて最適な相関関係に修正することができ、レール軸力を高精度に測定することができる。
(6) この実施形態では、レール2Aを支持する支持点PS付近の温度を温度測定部19が測定する。このため、レール軸力の測定に必要なレール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係を支持点PS近傍の表面温度に応じて最適な相関関係に修正することができ、レール軸力を高精度に測定することができる。
(7) この実施形態では、軌道情報収集装置8の軌道状態測定装置11が測定する軌道1のレール2Aの固有振動数に基づいて、軸力演算部29がレール軸力を演算する。このため、レール軸力を短時間で連続して自動的に測定することができる。例えば、レール2A,2Bがロングレールである場合には、このロングレールの軸力を管理することができる。
(8) この実施形態では、レール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係を相関関係情報として相関関係情報記憶部26aが記憶し、固有振動数測定部17が測定するレール2Aの固有振動数と、相関関係情報記憶部26aが記憶する相関関係情報とに基づいて、軸力演算部29がレール軸力を演算する。このため、例えば、軌道1を有限要素モデル化することによって、レール2Aと固有振動数とレール軸力との相関関係を簡単に生成することができる。また、レール2Aの固有振動数を測定して固有振動数と相関関係情報とを照合するだけでレール軸力を短時間で簡単に測定することができる。
(9) この実施形態では、レール頭部2aの摩耗形状に基づいて相関関係情報を相関関係情報補正部28Aが補正し、この相関関係情報補正部28Aが補正した補正後の相関関係情報とレール2Aの固有振動数とに基づいて、軸力演算部29がレール軸力を演算する。このため、レール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係をレール頭部2aの摩耗形状に応じて最適な相関関係に修正することによって、レール軸力を高精度に測定することができる。また、レール頭部2aの摩耗の影響によってレール2Aの固有振動数がずれた場合であっても、レール軸力を高精度に測定することができる。
(10) この実施形態では、レール2Aを支持する支持点PS付近の温度に基づいて相関関係情報を相関関係情報補正部28Bが補正し、相関関係情報補正部28Bが補正した補正後の相関関係情報とレール2Aの固有振動数とに基づいて、軸力演算部29がレール軸力を演算する。このため、レール2Aの固有振動数とレール軸力との相関関係を支持点PS近傍の表面温度に応じて最適な相関関係に修正することによって、レール軸力を高精度に測定することができる。また、支持点PS近傍の温度変化の影響によってレール2Aの固有振動数がずれた場合であっても、レール軸力を高精度に測定することができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、軌道情報収集装置8を測定者Mの人力によって走行させる場合を例に挙げて説明したが、軌道情報収集装置8を機械的な動力によって走行させることもできる。また、この実施形態では、軌道1上を走行する軌道情報収集装置8と地上に固定されている軌道情報処理装置24とに分離されている場合を例に挙げて説明したが、軌道情報収集装置8と軌道情報処理装置24とを一体化して軌道1上を走行させることもできる。さらに、この実施形態では、レール2Aを加振してレール2Aのレール軸力を測定する場合を例に挙げて説明したが、レール2A,2Bをそれぞれ加振してレール2A,2Bのレール軸力をそれぞれ測定することもできる。
(2) この実施形態では、支持点検出部13によってレール締結装置4を検出し、間隔測定部14によってレール締結装置4間の間隔を測定する場合を例に挙げて説明したが、支持点検出部13によってまくらぎ3を検出し、間隔測定部14によってまくらぎ3間の間隔を測定することもできる。また、この実施形態では、支持点PS付近のレール底部2bの底部上面2gの温度を温度測定部19によって測定する場合を例に挙げて説明したが、測定箇所を底部上面2gに限定するものではない。例えば、支持点PS付近のまくらぎ3の表面の温度を測定したり、支持点PS付近のレール底部2bの底部上面2gの温度とまくらぎ3の表面の温度との平均値を測定したりすることもできる。さらに、この実施形態では、レール2Aの支持点PS間の中間点PHを加振装置9によって加振する場合を例に挙げて説明したが、支持点PS間の中間点PHからわずかに離れた位置を加振装置9によって加振することもできる。