JP6583814B2 - 垂直磁化膜構造およびその製造方法、それを用いた磁気抵抗素子およびその製造方法、ならびにこれらを用いたスピントロニクスデバイス - Google Patents

垂直磁化膜構造およびその製造方法、それを用いた磁気抵抗素子およびその製造方法、ならびにこれらを用いたスピントロニクスデバイス Download PDF

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本発明は、強磁性薄膜と酸化物薄膜積層膜からなる垂直磁化膜構造に関する。また、本発明は当該垂直磁化膜構造を用いた磁気抵抗素子に関する。
強磁性薄膜構造を用いた磁気ディスク装置(ハードディスク)や不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)に代表される磁気ストレージやメモリの高密度記録化、大容量化の進展に伴い、強磁性膜面の垂直方向に磁化する垂直磁化膜が利用されている。垂直磁化膜を用いたMRAMの記録ビットを構成するトンネル磁気抵抗素子(MTJ素子)の微細化による記録密度の向上のためには、垂直磁化膜の品質向上による高い磁気異方性エネルギー密度Kの達成が求められている。
垂直磁化膜を達成する方法として高い磁気異方性を有する合金を利用する方法と、強磁性薄膜と非磁性薄膜間にはたらく量子力学的な界面効果を用いる方法(界面誘起磁気異方性)がある。前者の例として、非特許文献1では、例えば極めて高いKを示すL1型鉄−白金(FePt)合金が示されている。後者の例として、バルク状では垂直磁化にならないコバルト−鉄−ホウ素(CoFeB)(非特許文献2)や鉄(Fe)などの軟磁性材料を例えば酸化マグネシウム(MgO)に接触させることで垂直磁化膜が得られることが知られている。特に、後者は高いトンネル磁気抵抗比(TMR比)を得やすいMTJ素子構造をも兼ねることから、MRAM用途のための垂直磁化膜を得る方法として優れている。これらの組み合わせの他に、CoFeAl合金層とMgO組み合わせ(非特許文献3)や、FeとMgAlの組み合わせ(非特許文献4)を用いて界面誘起磁気異方性を得る方法も知られている。さらに、本出願人の提案として、特許文献1〜3に開示されたトンネル磁気抵抗素子が知られている。
しかし、MgOとこれらの軟磁性材料との間には数%程度の格子不整合があり、また、いずれの層もナノメートル程度の超薄膜状として得ることが必要であるため、界面に生じる結晶歪みの影響による磁気異方性の低下が無視できない。また、界面における電子状態によって磁気異方性が大きく影響を受けるため、高い結晶性と制御された界面構造を実現する必要がある。また、このような垂直磁化膜を利用して高いTMR比を得るためには、限られた材料の組み合わせのみしか知られていないことから、界面誘起磁気異方性を用いた系においてより高いK特性を実現することが困難であった。
WO2010/119928 WO2010/134435 特開2013−175615
A.Perumal,Y.K.Takahashi,and K.Hono,"L10 FePt−C Nanogranular Perpendicular Anisotropy Films with Narrow Size Distribution",Applied Physics Express,vol.1,p.101301(2008). S.Ikeda et al.,"A perpendicular−anisotropy CoFeB−MgO magnetic tunnel junction",Nature Materials,vol.9,pp.721−724(2010). Z.C.Wen,H.Sukegawa,S.Mitani,and K.Inomata,"Perpendicular magnetization of Co2FeAl full−Heusler alloy films induced by MgO interface",Applied Physics Letters,vol.98,p.242507(2011). J.Koo,H.Sukegawa,and S.Mitani,"Interface perpendicular magnetic anisotropy in Fe/MgAl2O4 layered structures",physica status solidi−Rapid Research Letters,vol.8,pp.841−844(2014). Z.C.Wen,H.Sukegawa,T.Furubayashi,J.Koo,K.Inomata,S.Mitani,J.P.Hadorn,T.Ohkubo,and K.Hono"A 4−Fold−Symmetry Hexagonal Ruthenium for Magnetic Heterostructures Exhibiting enhanced Perpendicular Magnetic Anisotropy and Tunnel Magnetoresistance",Advanced Materials,vol.26,pp.6483−6490(2014).
本発明は、このような実情に鑑み、強磁性層と酸化物層間の界面固相反応を利用することで従来の問題点を解消し、高い界面誘起磁気異方性を示す垂直磁化膜構造とその製造法を提供することを目的とする。また、本発明は当該垂直磁化膜構造を用いて形成した垂直MTJ素子とその製造法を提供することを目的とする。さらにこの方法で作製した垂直MTJ素子をもとに構成したスピントロニクスデバイスを提供することも目的とする。
本発明者らはMTJ素子用トンネルバリア酸化物MgAlを用いた積成膜を作製する過程で、コバルト−鉄−アルミニウム(合金組成:CoFeAl)合金薄膜上にMg−Al合金膜を成長させた後にこの層を酸化処理することにより、結晶質のMgAl膜が(001)方位をもって形成し、積層膜構造が垂直磁化膜となることを見出した。以後CoFeAlをCFA、MgAlをMg−Al−Oと略して表す。同時に、この垂直磁化膜はMg−Al−Oを既存材料であるMgOの代わりに用いたことで有意に高い垂直磁気異方性を示すこと、さらには、CFAとMg−Al−Oの界面に格子不整合欠陥がほぼ存在せず非常に高い結晶品質が実現することにより高い垂直磁気異方性が得られることを見出した。また、この高い垂直磁気異方性はCFAからAl原子がMg−Al−O層へ拡散する固相拡散反応によって実現されることも新たに見出したことで本発明に至った。
すなわち本発明の垂直磁化膜構造は、例えば図1に示すように、(001)面方位の立方晶系単結晶または(001)面方位をもって成長した立方晶系配向膜を有する基板(2)と、基板2の上に形成された金属からなる下地層(3)と、下地層3の上に位置するとともに組成材料としてAlを含むCo基フルホイスラー合金もしくはCo基フルホイスラー合金からの生成物層からなり(001)面方位をもって成長した立方晶材料よりなる垂直磁化層(4)と、垂直磁化層4の上に位置するとともにスピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物であり、(001)方位を有
する非磁性層(5)を有することを特徴とする。
本発明の上記垂直磁化膜構造においては、好ましくは、前記立方晶系単結晶基板または立方晶系配向膜の少なくとも一方は、酸化マグネシウムまたはマグネシウム−チタン酸化物である。また、好ましくは、前記下地層はクロム(Cr)、銀(Ag)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、これらの合金、もしくはNiAl(ニッケル−アルミニウム)である。また、好ましくは、前記非磁性層はMgとAlを含む酸化物であり、そのMg−Al組成としてMg1−xAl(0<x≦1)であるとよい。
本発明の垂直MTJ素子膜(トンネル磁気抵抗素子膜)は、例えば図2に示すように、(001)面方位の立方晶系単結晶または(001)面方位をもって成長した立方晶系配向膜を有する基板(7)と、基板7に形成された金属薄膜からなる下地層(8)と、下地層8の上に位置すると共に、組成材料としてAlを含むCo基フルホイスラー合金もしくはCo基フルホイスラー合金からの生成物層からなる(001)面方位をもって成長した立方晶材料よりなる垂直磁化層(9)と、垂直磁化層9の上に位置するとともにスピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物であり、(001)方位をもって成長し、トンネルバリアとしての役割ももつ非磁性層(10)と、非磁性層10の上に位置すると共に、組成材料としてCo基フルホイスラー合金、コバルト−鉄(CoFe)合金、コバルト−鉄−ホウ素(CoFeB)合金、L1系合金XY(X=Fe、Co、Y=Pt、Pd)、マンガン−ガリウム(Mn−Ga)合金、およびマンガン−ゲルマニウム(Mn−Ge)合金からなる群より選ばれた(001)方位に成長した強磁性材料よりなる第2の垂直磁化層(11)とを有することを特徴とする。好ましくは、上記の垂直MTJ素子膜において第2の垂直磁化層11の上に位置すると共に、組成材料としてTa、Ag、Au,Ru,Reの少なくとも一つを含む上部電極(12)を有するとよい。
本発明の垂直磁化膜構造の製造方法は、(001)面方位の立方晶系単結晶または(001)面方位をもって成長した立方晶系配向膜を有する基板2を提供する工程と、基板2に前記金属下地層3を形成する工程と、前記金属下地層3の上にAlを含むCo基フルホイスラー合金層の成膜を行う工程と、スピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物を構成する金属元素からなる合金膜の成膜を行う工程と、前記合金膜へ酸化処理を行うことによって酸化物層を形成するとともに前記Co基フルホイスラー合金層からAlを前記酸化物層へ固相拡散処理を促進する工程により、前記垂直磁化層4を形成する工程と、垂直磁化層4の上に位置するとともに前記非磁性層5を形成する工程とを有することを特徴とする。
本発明の垂直MTJ素子膜の製造方法は、垂直磁化膜構造の製造工程と同一の方法で製造された前記基板7を提供する工程と、前記下地層8を形成する工程と、前記垂直磁化層9を形成する工程と、前記非磁性層10をトンネルバリア層として形成する工程と、非磁性層10の上に位置すると共に、組成材料としてCo基フルホイスラー合金、コバルト−鉄(CoFe)合金、コバルト−鉄−ホウ素(CoFeB)合金、L1系合金XY(X=Fe、Co、Y=Pt、Pd)、マンガン−ガリウム(Mn−Ga)合金、およびマンガン−ゲルマニウム(Mn−Ge)合金からなる群より選ばれた(001)方位に成長した強磁性材料よりなる第2の垂直磁化層11を形成する工程とを有することを特徴とする。
CoFeAlに代表されるAlを含むCo基フルホイスラー合金膜にMg、Alを主体とする金属合金膜を形成した後に酸化処理を行うことで形成させたMg−Al−O層を用いることで、Co基フルホイスラー合金からAl原子がMg−Al−O層へ拡散する界面固相反応が引き起こさせることを利用し、強い界面誘起垂直磁気異方性を発生させることによって垂直磁化膜を実現するとともに,それを用いた垂直磁化型垂直MTJ素子、さらにはスピントロニクスデバイスの提供ができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る垂直磁化膜構造の基本構造を示す断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気抵抗効果素子構造の基本構造を示す断面図である。 図3(A)はCFA膜厚tCFA=1nm、MgAl膜厚tMgAl=0.65nm、プラズマ酸化を用いて作製した垂直磁化膜構造の磁気特性を示すグラフである(アニール温度Tex=200℃)。図3(B)は外部磁場を膜面内方向へ印加して測定した磁化曲線のアニール温度Tex依存性を示すグラフである。 図4はMgAl膜厚tMgAl=0.65nm、プラズマ酸化を用いて作製した垂直磁化膜構造の単位面積あたりの磁化の大きさをCFA膜厚tCFAに対して示すグラフである。線形フィッティングの結果も示している。 図5(A)はMgAl膜厚tMgAl=0.65nm、アニール温度Tex=200℃、プラズマ酸化を用いて作製した試料の垂直磁気異方性KとCFA膜厚tCFAの積をtCFAに対してプロットしたグラフである。図5(B)は界面磁気異方性K、体積磁気異方性Kのアニール温度Texの関係を示すグラフである。 図6(A)はCFA膜厚tCFA=1nm、アニール温度Tex=275℃としプラズマ酸化を用いて作製した素子について、外部磁場を膜面内方向へ印加して測定した磁化曲線のMgAl膜厚tMgAl依存性を示すグラフである。図6(B)は垂直磁気異方性KのtMgAl依存性を示すグラフ。 図7(A)はMg−Al−O(MAO)層を用いた垂直磁化膜素子断面の高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡像(HAADF−STEM像)を示したものである。図7(B)は図7(A)に示した像の高速フーリエ変換(FFT)フィルター像である。 図8(A)はMg−Al酸化物層の代わりにMgO層を用いた垂直磁化膜素子断面のHAADF−STEM像を示したものである。図8(B)は図8(A)に示した像のFFTフィルター像である。 図9はMg−Al−O(MAO)層を用いた垂直磁化膜構造断面のエネルギー分散形X線分光(EDS)による元素分布を示した像である。図9(A)は観察範囲を示した像である。図9(B)はCr、図9(C)はCo、図9(D)はFe、図9(E)はAl、図9(F)はMg、図9(G)はO、図9(H)はRuのそれぞれの元素分布を示した像である。 図10(A)は図9に示した垂直磁化膜構造断面のEDSによる元素分布の深さ方向プロファイルを示したグラフである。各元素に示してある数字はCo原子の重心位置を2nmとした場合の各元素の重心位置を示す。図10(B)は図10(A)に対応するHAADF−STEM像を示したものである。 図11はCFA膜厚tCFA=1nm、アニール温度Tex=250℃とし自然酸化法を用いて作製した素子について、外部磁場を膜面内方向へ印加して測定した磁化曲線のMgAl膜厚tMgAl依存性を示すグラフである。図11(A)は膜面内方向へ外部磁場を印加した場合を示したグラフである。図11(B)は膜面垂直方向に外部磁場を印加した場合を示したグラフである。 図12はCFA膜厚tCFA=1nm、アニール温度Tex=275℃とし自然酸化法を用いて作製した素子の垂直磁気異方性KのMgAl膜厚tMgAl依存性を示すグラフである。 図13はCFA膜厚tCFA=1nm、MgAl膜厚tMgAl=0.65nmとし、酸化処理を行っていない素子の磁化曲線の依存性を示すグラフである。
(A)基本構造
以下、図1および図2を参照しながら、本発明の各実施形態に係る垂直磁化膜構造1、垂直型磁気抵抗素子(垂直MTJ素子膜6)について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態である垂直磁化膜構造1は、基板2、下地層3、垂直磁化層4、非磁性層5からなる。基板2は岩塩構造を有し、(001)面方位に成長したMgOの単結晶もしくは(001)面方位に優先配向した構造を有する配向膜である。さらに、基板2の材料としてマグネシウム−アルミニウムスピネル(MgAl)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、マグネシウム−チタン酸化物(MgTiO)を用いてもよい。
下地層3は導電性のある金属もしくは合金からなり、好ましくはCr、Ag、Au、Ru、Re、これらの合金、もしくはB2型の結晶構造を持つNiAl合金である。
垂直磁化層4は、組成材料としてAlを含むCo基フルホイスラー合金もしくはCo基フルホイスラー合金からの生成物からなる層であり、(001)面方位をもって成長した立方晶系の強磁性材料より構成される。Co基フルホイスラー合金とはL2型の結晶構造を持ち、CoYZ(Yは主に遷移金属、Zは主に典型元素)の化学組成を持ち、Y、Z原子サイトは例えば、Y=Fe、Cr、Mn及びその合金、Z=Al、Si、Ge、Ga、Sn及びその合金である。Co基フルホイスラー合金の形態としてL2構造以外に、YとZ原子サイトが不規則化した構造であるB2構造でも良い。本発明の垂直磁化層4としてCo基フルホイスラー合金のうちAlを含むものが該当し、Alの代わりにAl−Si等の合金でも良い。好ましくはCoFeAlである。垂直磁化層4の膜厚は0.5〜2nm程度の超薄膜状である。
この垂直磁化膜層4に含まれるAl原子の一部もしくは大部分が非磁性層5に移動していることを特徴とする。このAl原子の非磁性層5への移動は非磁性層形成時の酸化処理に基づいて引き起こされる固相拡散反応を示すことによる。垂直磁化層4に含まれるAl原子は実質上すべて非磁性層5へ移動していても垂直磁化膜となっていればよい。
非磁性層5は垂直磁化層4の上に形成され、スピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物であり(001)方位をもって成長した層から構成される。この層は垂直磁化層4に垂直磁気異方性を付与する役割を持つ。構成材料として、好ましくはMg−Al酸化物であり、Mg−Al組成としてMg1−xAl(0<x≦1)であればよい。Mg−Al酸化物は立方晶系に属するスピネル構造(AB)、もしくは立方晶であればスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を有しても良い。また非磁性層5の構成元素として、スピネル構造を取り得る元素である、リチウム(Li)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)等を含んでもよ
い。非磁性層5は垂直磁化層4からAl原子を一部もしくは大部分を吸収することで元々含まれるAlの組成よりも多くなっていることを特徴とする。非磁性層5の膜厚は典型的には0.5〜4nm程度である。非磁性層5の上に保護層として別の非磁性層、Ruや金(Au)などの金属層を形成してもよい。
垂直磁化膜4から非磁性層5へAl原子の移動が起きていても両方の層が(001)面方位およびそれに等価な面方位に成長していることが好ましい。また、両者の間の格子不整合が小さいことが好ましい。このときの格子不整合として好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
次に本発明の一実施形態である垂直MTJ素子膜6について説明する。例えば図2に示すように、垂直MTJ素子膜6は、基板7、下地層8、第一の垂直磁化層9、非磁性層10、第二の垂直磁化層11、及び上部電極12を含んでいる。ここで、基板7、下地層8、第一の垂直磁化層9、非磁性層10はそれぞれ垂直磁化膜構造1の基板2、下地層3、垂直磁化層4、非磁性層5と同一である。第二の垂直磁化層11は非磁性層10と直接接しており、第一の垂直磁化層9と同じ構造、材料を用いることができる。またこの層にはコバルト−鉄(CoFe)合金、コバルト−鉄−ボロン(Co−FeB)合金、L1系合金XY(X=Fe、Co、Y=Pt、Pd)、マンガン−ガリウム(Mn−Ga)合金、マンガン−ゲルマニウム(Mn−Ge)合金からなる群より選ばれた(001)方位に成長した垂直磁化膜を含むことができる。さらに、アモルファス構造を有する垂直磁化膜、たとえばテルビウム−コバルト−鉄(Tb−Co−Fe)合金膜を含んでも良い。この層の膜厚として1nm〜10nm程度である。この層は、例えば垂直磁化膜/Ru(0.5〜1.2nm)/垂直磁化膜の3層構造であってもよい。
非磁性層10は垂直磁気異方性を付与する目的だけではなく、MTJ素子ではトンネルバリアとしての役割を有する。この層は、(001)面およびそれに等価な面方位に成長していることが好ましい。これによって、第一の垂直磁化層9と第二の垂直磁化層11を含め(001)面方位のMTJ素子として機能するため高いTMR比が実現される。
上部電極12は第二の垂直磁化層11の上に設けられ、表面保護層として機能する。タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、Au等の金属層およびこれらの積層構造を有する。金属各層の厚さは例えば2〜20nmである。
(B)製造方法
以下、図1および図2を用いて本発明の実施形態である垂直磁化膜構造1、および垂直MTJ素子膜6の製造方法について記述する。以下垂直磁化層4および第一の垂直磁化層9に用いるCo基ホイスラー合金としてCoFeAl(CFA)を、非磁性層5および11に用いる酸化物としてMg−Al−Oを例として説明する。
まず、下地層3および8の作製方法としては、基板2および7を(001)面方位をもつMgOとし、超高真空マグネトロンスパッタ装置(到達真空度6×10−7Pa程度)を用い、例えば、Cr薄膜を直流(DC)マグネトロンスパッタにより成膜を室温にて行う。スパッタ用プロセスガスとして例えばアルゴン(Ar)を用いることができる。Cr膜厚は例えば40nmであるが平坦膜状になればより薄くてもよい。その後500〜900℃で真空中ポスト加熱処理を行うことでより平坦にする。Crの場合はMgO上に(001)面方位を持って成長する。
次に、CFA層は下地層の上に形成される。この層は垂直磁化層4および第一の垂直磁化層9のもとになる。CFAは高いスピン偏極率を有する材料として知られており、MTJ素子の強磁性層として用いることで極めて大きなTMR比を得ることができる。また、Alを除いた組成であるCo0.67Fe0.33であっても、非磁性層10として(001)面方位を持って成長したMg−Al−Oを同時に用いることで、大きなTMRを得ることができることが知られている。CFA層はCo−Fe−Al合金ターゲット(溶融ターゲット、代表的な組成として50:25:25 原子%)からのスパッタ成膜によって形成できる。CFA層の膜厚として、垂直磁化が得るのに適した超薄膜状である0.5〜1.5nm程度である。このCFA層形成には真空中電子線蒸着法や複数ターゲットを用いた同時スパッタ成膜法などが利用可能である。成長時の温度は室温でよく、平坦膜状として得ることができればより高い温度での形成も可能である。CFA層はその後100〜200℃程度での真空中ポスト加熱処理により結晶品位を向上できる。
次に、作製したCFA層上に非磁性層5および10を0.5〜4nm程度の範囲の膜厚で形成させる。そのために、まず、Mg−Al合金膜を0.3〜2nmの厚さで例えば高周波(RF)スパッタなどを用いて形成させる。Mg−Alの組成として、例えばMg0.2Al0.8であるが、Mg1−xAl(0<x≦1)の範囲の組成であれば、酸化後にスピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物として得ることができるため、すべて用いることができる。Mg−Al層の成膜前に0.1〜0.6nm程度の膜厚の純Mg層を挿入することができる。このMg挿入層は非磁性層界面近傍の結晶構造の改善に寄与する。Mg−Al層形成後に真空チャンバー内に酸素ガスを0.1〜10Pa導入し、Mg−Al層を酸素雰囲気中に曝すことによって結晶質のMgAlが形成する。この手法を自然酸化法と呼ぶ。また、Mg−Al層の酸化には酸素ガス雰囲気中でスパッタカソードと基板間に酸素プラズマを制御させて形成させることによって酸化物を得る方法を用いることができる。この手法をプラズマ酸化法と呼ぶ。酸化時間として自然酸化法では数分〜1時間程度、プラズマ酸化では1秒〜数分である。
MgAl層は、もとになるMg−Al組成とCFA層から拡散するAl量に依存して組成が変動し、必ずしもMg:Al:O=1:2:4原子比とはならないことから、この層は以後Mg−Al−O層と一般的に記述する。Mg−Al−O層は立方晶のスピネル構造か、スピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ立方晶の構造をとり、CFA(001)上にMg−Al−O(001)として成長させることができる。CFAとMg−Al−Oとの格子不整合は高々1%であるため、これらの積層膜の結晶格子整合性は極めて良好なものとなる。
Mg−Al−O層は、自然酸化法、プラズマ酸化法のいずれを用いた場合でも、もととなるMg−Al層膜厚およびMg−Al組成に応じて酸化力を適切に調整することで、高品質な膜状として形成できる。このとき、Mg−Al層の酸化中にCFA層に含まれるAlの一部の移動が起こる。したがって、CFA層からAl濃度が減少し、代わりにMg−Al−O層はもとのMg−Al層よりもAl濃度が増加する。Alの移動が起こる理由はAlがCoやFeに比べ酸素との化学親和力が高く、より酸化されやすいためである。また、CFA層が極薄のためAl拡散が比較的容易であるためでもある。Al不足組成CFA層とMg−Al−O層との界面において量子力学的効果により強い垂直磁化が誘起される。CFA層はAl不足組成となり実質的にCo−Fe合金層となった場合でもMg−Al−Oとの高い格子整合性が保持される。
Mg−Al−O層はMgAlなどの酸化物ターゲットからの高周波(RF)スパッタ成膜による方法を用いることができる。また、Mg−Al酸化法としては、酸素ラジカルを用いるラジカル酸化法や、基板加熱の利用による酸化の促進などの手法ももちろん利用可能である。Mg−Al−O層の形成後に100−600℃程度のポスト加熱処理を行うことで結晶品質が向上でき、(001)配向性が向上することでより強い垂直磁気異方性や高いTMR比が得られるようになる。
その次に第二の垂直磁化層11として例えば1nm程度の膜厚のCo−Fe−B層をスパッタ成膜により形成することができる。その上に上部電極12として、例えば5nm膜厚のTaと、例えば10nm膜厚のRu層を同様にスパッタ成膜により形成することで上部電極とすることができる。
(C)特性
次に図3ないし図13を参照して、本実施形態の垂直磁化膜について以下の実施例として説明する。
垂直磁化膜構造として、MgO基板/Cr(40nm)/CFA(tCFA)/Mg(0.2nm)/Mg−Al(tMgAl)−プラズマ酸化/Ru(2nm)の構造を持つ多層膜をスパッタ成膜とプラズマ酸化により形成した例を示す。ここでtCFAはCFA層膜厚、tMgAlはMgAl膜厚を示す。もととなるCFA組成としてCo0.5Fe0.25Al0.25、もととなるMg−Al組成としてMg0.19Al0.81を用いた。多層膜は特性改善のため、Tex=200〜350℃の温度範囲で真空中アニール処理をおこなった。プラズマ酸化の条件として、酸素5PaとAr1Paを混合したガスを用い、2インチ径ターゲットにRF電力7Wを印加してターゲットと基板間に酸素プラズマを形成させた。プラズマ酸化時間は15sに固定した。
図3(A)にtCFA=1nm、tMgAl=0.65nmとし、プラズマ酸化を用いて作製した垂直磁化膜構造の磁化曲線を示す。アニール温度Texは200℃である。磁化曲線は外部磁場を膜面内方向(In−plane)および膜面直方向(Out−of−plane)に印加して測定している。また、磁化の大きさ(M)を飽和磁化の値(M)で規格化してある。膜面直方向に外部磁場を印加したときに、容易に磁化が反転し小さい磁界で磁化が飽和する様子が見られる。一方で、磁場が膜面内である場合は磁化させることが困難であり、この方向が磁化困難軸となっている。したがって、この多層膜構造は、膜面直方向に磁化容易軸方向を持つ垂直磁化膜であることを示している。垂直磁気異方性の大きさを示す垂直磁気異方性エネルギー密度(K)は膜面直方向と膜面内方向の2つの曲線が囲む面積とMの積に対応する。例えば、図3(A)の試料におけるKの値は2.8×10erg/cmであった。
図3(B)には図3(A)の試料のTexを変化させた場合の、膜面内方向に磁場印加した場合の磁化曲線を示した。Tex=200−325℃ではいずれも垂直磁化膜であるため、面内方向が磁化困難軸である。一方、Tex=400℃では面内方向が磁化容易軸となり、面内磁化膜となることがわかる。磁化困難軸方向において、磁化が飽和する磁場(H)の大きさはほぼKに比例するため、最もHが大きくなるTex=275℃においてKが最大となる。このときのKは4.2×10erg/cmであった。この値は、Mg−Al−Oの代わりにMgOを用いた垂直磁化膜構造であるCr/CFA(1nm)/MgO構造における報告値0.8×10erg/cm(非特許文献3)およびRu/CFA(1nm)/MgO構造における報告値3.1×10erg/cm(非特許文献5)と比較しても有意に大きい。
図4はtMgAl=0.65nmとし、プラズマ酸化を用いて作製した垂直磁化膜構造の単位面積あたりの飽和磁化の大きさ(M/A)をCFA膜厚tCFA(0.6−1.8nm)に対して示している。Tex=200℃および275℃の結果を示している。線形フィッティング直線がほぼ原点を通ることから、このCFA膜厚領域ではCr下地/CFA界面およびCFA/Mg−Al−O層界面には構造の乱れによる磁化が低下した磁気的不感層(Magnetic dead layer)がほとんど存在していないことを示している。フィッティング直線の傾きからMが得られ、Tex=200℃および275℃ではそれぞれ1030emu/cmおよび1118emu/cmと求められた。この値はCFAのバルクにおけるMs〜1000emu/cmよりも有意に大きく、AlがCFA層から一部抜け出していることを間接的に示している。なおtCFAはAlが拡散後においても実効的な膜厚が変化しないと仮定している。実際に透過電子顕微鏡を用いた解析からは設計tCFAと実際の垂直磁化層の膜厚はほとんど差がないことがわかっている。
次に垂直磁気異方性の起源がMg−Al−O界面にあることを確認するために磁気異方性とtCFAとの依存性を測定した。図5(A)はtMgAl=0.65nm、Tex=200℃とし、プラズマ酸化を用いて作製した試料のKとtCFAの積をtCFAに対してプロットしたグラフを示す。KとtCFAの積が正の領域では垂直磁化膜であり、負の領域では面内磁化膜であることを表している。実線は以下の式を用いたフィッティング(CGS単位系を採用した場合)によって得られた直線である。
ここで、Mは飽和磁化(単位:emu/cm)、Kは結晶磁気異方性エネルギー密度(単位:erg/cm)、KはCFA/Mg−Al−O界面の界面異方性エネルギー密度(単位:erg/cm)を示す。フィッティングからKの値は負であることがわかり、CFA膜自体は面内磁化となろうとするように振る舞う。一方、Kはフィッティングの直線の切片に対応することから、正の値であることがわかり、図5(A)の例では垂直磁化が誘起されている。したがって、tCFAが小さい場合に垂直磁化膜が得られる理由は、面内に磁化しようと働く結晶磁気異方性(K<0)と形状異方性(−2πM <0)の和よりも、CFA/Mg−Al−O界面に誘起された垂直磁気異方性(K>0)の寄与が大きくなることによって垂直磁化を保つことが可能になるためである。この特徴はCFA/MgO界面に誘起される垂直磁気異方性と同一のメカニズムに起因するものと示唆される。
図5(B)はフィッティングによって得られたK、K、形状異方性(−2πM )および傾き(Slope=K−2πM )のアニール温度Tex依存性を示している。KはTex=275℃で最大となっており、この温度で最大のKが得られる。また、Kの値は負であるもののその絶対値はいずれのTexにおいても5Merg/cm程度である。この挙動は、KのTex依存性が大きく、最大で9Merg/cmにも達するCFA/MgO構造(非特許文献5)とは異なっている。これはKがCFAよりもMgOの結晶格子が大きく、CFA層が、面内方向にひずむことに起因して面内磁化膜になろうとするように働くためである。一方、格子整合性が良好なCFA/Mg−Al−O界面ではこの効果は抑制されるため、より垂直磁化膜になりやすくなるためMgOを用いる場合よりも大きなKが得られる。
次に、Mg−Al層の酸化強度による垂直磁気異方性への影響を確認するため、酸化プロセスを固定したままtMgAlを変化させた。tMgAlが大きくなると酸化不足条件となり、一方tMgAlが小さい場合は酸化過多条件となる。図6(A)は、tCFA=1nm、Tex=275℃とし、プラズマ酸化を用いて作製した試料について、外部磁場を膜面内方向へ印加して測定した磁化曲線のtMgAl依存性を示している。tMgAl=0.4nmでは垂直磁化であるもののHが小さい。tMgAlが0.65nmでHが最大となり、さらにtMgAlを増やして0.8nmに達すると面内磁化膜となることがわかる。したがって、酸化強度と垂直磁気異方性に強い相関が認められる。図6(B)はKのtMgAl依存性を示している。Kが正となるtMgAl<0.8nmでは垂直磁化膜であるが大きなtMgAl依存性がある。Hが最大となったtMgAl=0.65nmでKは最大4.2×10erg/cmを示すことからこの条件が垂直磁化膜を得る最適なMg−Al酸化条件である。本発明形態の垂直磁化膜は、酸化強度の調整が可能であることから、垂直磁気異方性を最大化することが容易であることがわかる。
また、これらの垂直磁化特性から、Mg−Al−O層をトンネルバリアとし、上部強磁性体を一般的な方法で作製することで、(001)方位に結晶化した垂直磁化型MTJ素子が形成することは、当業者にとって自明である。
(D)微細構造
次に図7ないし図10を参照して、本形態の垂直磁化膜構造の結晶構造について説明する。
図7(A)はtCFA=1nm、MgAl膜厚tMgAl=0.65nm、Tex=275℃とし、プラズマ酸化を用いて作製した垂直磁化膜構造素子断面の高角散乱環状暗視野走査電子透過顕微鏡像(HAADF−STEM像)を示したものである。図7(B)は縦方向の結晶格子を強調するために図7(A)の像について高速フーリエ変換(FFT)を用いて得たフィルター像を示す。Cr下地、CFA層、Mg−Al−O(図ではMAOと表記)層ははっきりと層状構造を持ち、さらに、(001)面方位に成長していることがわかる。また、図7(B)から観察領域には面内方向に全く格子不整合が存在せず、完全に格子整合構造が得られていることがわかる。特にCFA/Mg−Al−O界面は非常に平坦であることがわかる。
さらに、電子線回折像の解析からMg−Al−O層の結晶構造は特許文献1〜3に記述されたスピネル構造(MgAl型)を有する領域と、スピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造(陽イオン不規則化スピネル構造)を有する両方の場合が認められた。いずれの構造においても垂直磁気異方性が得られる。したがって、平坦膜であり、(001)面方位に成長していれば、Mg−Al−O層はスピネル構造もしくは陽イオン不規則化スピネル構造のいずれかを有すればよい。
比較例として、図8(A)にMg−Al−Oの代わりにMgOを用いて作製した垂直磁化膜素子断面のHAADF−STEM像を示した。また、図8(B)は図8(A)のFFTフィルター像を示した。図8(A)から、この垂直磁化膜もCr下地、CFA層、MgO各層が層状構造として得られていること、(001)面方位に成長していることがわかる。しかし、図8(B)からは面内格子不整合に起因するミスフィット転位(⊥記号)がみられていることから、格子整合という点からMg−Al−O層を用いたものと比べて劣っていることがわかる。
図9には、図7で示したCr/CFA/Mg−Al−O構造の垂直磁化膜構造についてエネルギー分散形X線分光(EDS)を用いて得られた元素分布を示している。図9(A)は観察範囲を示した像である。図9(B)−(F)にはそれぞれ(B)Cr、(C)Co、(D)Fe、(E)Al、(F)Mg、(G)O、(H)Ruの分布を示した像である。この図では明るい部分がより各元素の濃度が高いことを示している。図9(C)、(D)、(E)の比較からCoとFeはほぼ同一の場所に存在している一方で、AlがこのCo、Feの領域にはほとんど存在していないことを示している。したがってAlがCFA層からMg−Al−O層へ大部分が抜け出していることを示唆している。図9(E)、(F)、(G)からAl、Mg、O元素がほぼ同一の場所に存在することから、均質なMg−Al−O層を形成していることもわかる。
この原子拡散状態をより詳細に確認するために、図10(A)にEDSによる元素分布の深さ方向プロファイルを示した。この図では、Co原子の重心位置を2nmと固定している。元素ごとに示してある縦破線は各元素の重心位置を示す。また図10(B)は対応する位置の高分解能HAADF−STEM像である。これらの図から、CFA層中のAl濃度はかなり低くなっており、Al原子の大部分はMg−Al−O層へ拡散移動していることが示唆される。したがって、実質的にCFA層は主としてCoとFeからなる層へと変化していることを示している。この変化は界面における固相拡散反応を制御性高く引き起こすことが可能であることを示しており、Mg−Al層への酸化プロセスが大きな影響を与えている。その一方で、図10(B)の像からわかるとおり各層の結晶品位は非常に高く、界面における格子不整合も存在しないことから、垂直磁化膜として高いKおよびKが実現される。また、これらの分析結果は、CFA層のMが有意にバルクにおける値よりも大きいという事実と矛盾しない。
したがって、本発明の垂直磁化膜製造方法である、Mg−Al層の酸化処理はCFAの構成元素であるAlを有効的にMg−Al−O層に移動させることで、界面の結晶性を損なわずに強い界面誘起磁気異方性を付与することができる手法といえる。この手法は、Alを含む立方晶強磁性体に対して一般的に期待できる上、酸化条件を制御することによって界面固相反応を精密に調整できることを意味している。
次に、Mg−Al層の酸化にプラズマ酸化法の代わりに自然酸化法を用いた場合の実施例を示す。自然酸化法の条件として、室温において6Paの純酸素ガスを用いて10分間酸化を行った試料について示す。
図11(A)および(B)は、tCFA=1nm、Tex=250℃とし自然酸化法を用いて作製した素子について、それぞれ膜面内磁場、膜面直磁場を用いて測定した磁化曲線を示した。ここではtMgAlを変化させている。これらの図から、自然酸化法で形成したMg−Al−O層を用いてもプラズマ酸化による方法と同様に垂直磁化膜が得られることを示している。プラズマ酸化よりも自然酸化では酸化力が低いため、垂直磁化となるtMgAl膜厚領域がより小さいことがわかる。また、垂直磁気異方性はプラズマ酸化の場合と同様にTex=275℃で最大となった。
図12にtCFA=1nm、Tex=275℃のKのtMgAl依存性を示した。プラズマ酸化で作製した試料(図6(B))と同様に、あるtMgAlで最大値をとり、膜厚が増加し酸化不足条件において面内磁化に転ずることがわかる。また、tMgAl=0.4nmにおいて、K=4.4×10erg/cmと最大となった。したがって、自然酸化法においても強い垂直磁化膜を作製することが可能であり、より薄いMg−Al−O層を有する低抵抗なMTJ素子用の垂直磁化膜構造に適している。
[比較例1]
次に、本特許の実施形態であるMg−Al層の酸化処理の必要性を示すために、比較例としてMg−Al層の酸化を全く行わないで作製したMgO基板/Cr(40nm)/CFA(1nm)/Mg−Al(0.65nm)/Ru保護膜(2nm)の構造を持つ多層膜の磁化特性を図13に示す。この図から明確に面内磁化膜であり、Mg−Al層の酸化を行わない場合、全く垂直磁化膜は得られないことがわかる。また、この膜のMは約800emu/cmと小さく、酸化によるMg−Al(−O)層へのAl原子拡散の促進が重要であることを示している。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、当業者にとって自明範囲で種々の変形実施例が含まれることは、言うまでもない。
本発明による垂直磁化膜はスピントロニクスデバイス、例えば、高密度STT−MRAM用垂直MTJ素子用強磁性電極に利用できる。また、高精度で超小型な磁気センサーとしての利用が可能である。
1 下地構造、
2、7 基板、
3、8 下地層、
4 垂直磁化層、
5、10 非磁性層、
6 垂直MTJ素子膜、
9 第一の垂直磁化層、
11 第二の垂直磁化層、
12 上部電極

Claims (6)

  1. (001)面方位の立方晶系単結晶または(001)面方位をもって成長した立方晶系配向膜を有する基板と、
    当該基板の上に位置するとともに金属からなる下地層と、
    当該下地層の上に位置するとともに、組成材料としてアルミニウムを含むコバルト基フルホイスラー合金もしくはコバルト基フルホイスラー合金の生成物層からなり(001)面方位をもって成長した立方晶材料よりなる垂直磁化層と、
    当該垂直磁化層の上に位置するとともにスピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物であり、(001)方位を有する非磁性層と、
    を備える垂直磁化膜構造において、
    前記垂直磁化層の膜厚は0.5〜2nmの範囲にあり、
    前記非磁性層の膜厚は0.5〜4nmの範囲にあると共に、前記垂直磁化層と前記非磁性層の格子不整合は2%以下であり、
    前記垂直磁化層と前記非磁性層の膜厚は、面内に磁化しようと働く結晶磁気異方性エネルギー(K<0)と形状異方性(−2πMs<0)の和よりも、垂直磁化層/非磁性層界面に誘起された垂直磁気異方性エネルギー(Ks>0)の寄与が大きくなることによって垂直磁化を保つように定められることを特徴とする垂直磁化型トンネル磁気抵抗素子。
  2. 請求項1に記載の前記垂直磁化膜構造と、
    前記垂直磁化層の上に直接位置するとともに、組成材料としてコバルト基フルホイスラー合金、コバルト−鉄合金、コバルト−鉄−ホウ素合金、L10系合金XY(X=Fe、Co、Y=Pt、Pd)、マンガン−ガリウム合金、およびマンガン−ゲルマニウム合金からなる群より選ばれた(001)方位に成長した強磁性材料よりなる第2の垂直磁化層を備えることを特徴とする垂直磁化型トンネル磁気抵抗素子。
  3. 請求項2に記載の垂直磁化型トンネル磁気抵抗素子を有することを特徴とするスピントロニクスデバイス。
  4. (001)面方位の立方晶系単結晶または(001)面方位をもって成長した立方晶系配向膜を有する基板を提供する工程と、
    当該基板の上に、金属からなる下地層を形成する工程と、
    当該下地層の上に、アルミニウムを含むコバルト基フルホイスラー合金層の成膜を行う工程であって、前記コバルト基フルホイスラー合金層の膜厚は0.5〜1.5nmの範囲にあり、
    当該コバルト基フルホイスラー合金層の上に、スピネル構造もしくはスピネル構造の陽イオンサイトが不規則化した構造を持つ酸化物を構成する金属元素からなる合金膜の成膜を行う工程であって、前記合金膜の膜厚は0.3〜2nmの範囲にあり、
    前記合金膜へ酸化処理を行うことによって酸化物層を形成するとともに、前記コバルト基フルホイスラー合金層からアルミニウムを前記酸化物層へ固相拡散処理を促進して、垂直磁化層を形成する工程と、
    当該垂直磁化層の上に位置するとともに、(001)方位を有する非磁性層を形成する工程とを有すると共に、
    アニール温度が200〜350℃の範囲にあることを特徴とする垂直磁化膜構造の製造方法。
  5. 請求項に記載の垂直磁化膜構造の製造方法を用いて、基板、下地層、垂直磁化層、並びに非磁性層を形成する工程と、
    前記非磁性層の上に位置するとともに、組成材料としてコバルト基フルホイスラー合金、コバルト−鉄合金、コバルト−鉄−ホウ素合金、L10系合金XY(X=Fe、Co、Y=Pt、Pd)、マンガン−ガリウム合金、およびマンガン−ゲルマニウム合金からなる群より選ばれた(001)方位に成長した強磁性材料よりなる第2の垂直磁化層を形成する工程を有することを特徴とする垂直磁化型トンネル磁気抵抗素子の製造方法。
  6. 請求項5に記載の垂直磁化型トンネル磁気抵抗素子の製造方法を含むことを特徴とするスピントロニクスデバイスの製造方法。
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