(第一実施形態)
図1は、本発明における立体表示形成体(1)(以下「形成体」という。)を示す平面図であり、一例として商品券とする。
形成体(1)は、基材(2)上に、店舗名、券種等の形成体(1)に関する情報が、プロセスインキであるシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの基本4色インキや、基本4色インキを除く特殊な色を有する特色インキを印刷することで付与される。形成体(1)は、基材(2)上の一部に、第一の画像(3)が配置される。
なお、基材(2)は、第一の画像(3)を形成することができれば、紙、プラスチックカード、金属等とすることができ、その材質は問わない。また、第一の画像(3)は、基材(2)上に収まる限り、大きさに制限はない。
第一の画像(3)は、可視光源下で正面から観察した場合、複数の細画線から成る彩紋模様として視認されるが、観察角度を変化させて観察した場合に、彩紋模様とは異なる形状の画像が、立体的に視認可能となる。以下、第一の画像(3)について、詳細に説明する。
図2は、第一の画像(3)及び第一の原画像(5G)を示す平面図であり、図2(a)は、第一の画像(3)を示す平面図である。第一の画像(3)は、光輝性材料で形成された同一の円弧状画線である第一の画線(4)が、規則的に複数配置されて成る。本発明において同一とは、形状及び大きさが同じことをいう。第一の画像(3)を形成する複数の第一の画線(4)については、第一の画線(4)の作製方法で詳細に説明する。
なお、第一の画線(4)の断面は、図2(b)に示すように、基材(2)に対して、垂直方向(Y1)に凹形状又は凸形状の断面ではあるものの、本発明における円弧状とは、第一の画線(4)の断面形状ではなく、図2(a)に示すように、画線形状を円弧とし、図2(b)に示すように、基材(2)の平面に対して水平方向(二次元方向)である第一の方向(X1)に円弧状の第一の画線(4)の後述する頂点(T1)が配置されるように形成されることである。画線形状を、水平方向である第一の方向(X1)に円弧として形成することで、角度変化により視認される立体画像が、両眼視差で視認可能となる。
図2(c)に示す第一の原画像(5G)は、観察角度の変化により、立体画像として視認可能となる、第一の画像(3)とは異なる形状の潜像模様であり、図2(a)に示す第一の立体画像(5)の原画像である。作製方法についての詳細は後述するが、図2(a)に示す全ての第一の画線(4)の同じ位置により、第一の原画像(5G)が形成されることで、光の反射により第一の立体画像(5)が立体的な画像として出現する形成体(1)である。
次に、第一の画像(3)について作製方法を交えながら、図3乃至図11を用いて説明する。
図3は、形成体(1)を作製するためのシステム(S)を示すブロック図である。システム(S)は、少なくとも入力部(101)、処理部(102)及び出力部(103)を備えている。
入力部(101)は、本実施の形態の形成体(1)の作製に必要なデータを入力し、処理部(102)に与える手段である。処理部(102)は、形成体(1)の作製に必要な演算処理及び画像処理を行い、得られた結果を出力部(103)に与える手段である。出力部(103)は、処理部(102)から与えられたデータを、外部の、例えば、図示されてないレーザ彫刻機、印刷機等に出力する手段である。なお、処理部(102)には、与えられたデータ及び作製したデータを記録する記憶部(104)を、さらに有していてもよい。
このようなシステム(S)を用いて、本実施の形態による形成体(1)を作製する方法について、図4に示す、形成体(1)の作製手順を示すフローチャートと、図5に示す、第一実施形態の形成体(1)の作製手順を示す模式図を用いて説明する。本発明の形成体(1)の作製方法は、図4に示すように、原画像設計工程(STEP1)と、軌跡設定工程(STEP2)と、画線作製工程(STEP3)と、画線位置設定工程(STEP4)と、画線データ作製工程(STEP5)と、画線形成工程(STEP6)から成る。
次に、各工程について詳細に説明する。まず初めに、原画像設計工程(STEP1)として、図5(a)に示すように、処理部(102)において、正反射光下で出現し、立体的な画像として視認される第一の立体画像(5)の原画像である第一の原画像(5G)を作製又は入力する。第一の原画像(5G)については、第一の画像(3)とは異なる形状であれば、文字、図柄、模様等、特に限定はなく、任意の画像とすることが可能である。
また、第一の原画像(5G)は、処理部(102)で直接作製してもよく、あらかじめ記憶部(104)に記憶されている複数の第一の原画像(5G)の中から任意に選んで、処理部(102)により決定してもよい。さらには、システム(S)とは異なる他のシステム、画像処理ソフト等で作製された第一の原画像(5G)を、入力部(101)から入力してもよい。本実施の形態では、図5(a)に示すように、第一の原画像(5G)として円形状の画像を一例として説明する。
なお、第一の原画像(5G)を作製又は決定すると同時に、第一の原画像(5G)に対応するデータを、入力部(101)から入力する。ここでいうデータとは、後述する第一の立体画像(5)を構成する円弧状の画線のピッチ等、第一の画像(3)を構成する第一の画線(4)の作製に必要なデータのことである。
次に、軌跡設定工程(STEP2)として、図5(b)に示すように、処理部(102)において、第一の立体画像(5)を、第一の画線(4)が光輝性を有して肉眼で視認される観察角度内で光源に対して異なる角度へと、連続的に変化させて観察した場合の動きの軌跡を設定する。
図6は、第一の画線(4)及び第一の軌跡(4D)を示す平面図であり、図6(a)は、図2(a)に示す第一の画像(3)を構成する第一の画線(4)を示す平面図であり、第一の画線(4)は、第一の始点(U1)、第一の頂点(T1)及び第一の終点(D1)を有する。
視認原理についての詳細は後述するが、第一の画線(4)を、光輝性を有する材料で円弧状画線として形成することで、入射光に対する反射光が、全ての第一の画線(4)の同じ位置が光って視認され、さらに観察角度の変化により、第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認される同じ位置が変化することで、図2に示す第一の立体画像(5)が、動的に視認される。
つまり、第一の立体画像(5)の動きである軌跡とは、第一の画線(4)の円弧形状と同一となる。よって、軌跡設定工程(STEP2)では、第一の立体画像(5)の動く方向(軌跡)であり、かつ、第一の画線(4)の円弧形状の基となる軌跡を設定する。
図6(b)に示すように、第一の立体画像(5)の軌跡である第一の軌跡(4D)は、第一の始点(U1)、第一の頂点(T1)及び第一の終点(D1)を有する。第一の軌跡(4D)は、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ直線を基準線(H1)とした場合、第一の始点(U1)において、基準線(H1)に対する円弧状の第一の画線(4)の接線である立ち上がり線(H2)が成す角度(θ1)(以下「始点角」という。)は、2〜90度の範囲内で、適宜設定する。
第一の軌跡(4D)を基に作製した第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第一の終点(D1)で入射光が異なる方向に反射することで、両眼視差により、第一の立体画像(5)が視認可能となる。始点角(θ1)が2度未満の場合、入射光が、ほぼ同じ方向に反射して両眼視差が不可能となり、好ましくない。反対に、始点角(θ1)が90度を超える場合、入射光は異なる方向に反射するが、両眼視差可能な範囲外となるため、好ましくない。
また、第一の終点(D1)における、基準線(H1)に対する第一の軌跡(4D)の接線である立ち下がり線(H3)が成す角度(θ2)(以下「終点角」という。)も、前述の第一の始点(U1)と同様の理由から、2〜90度の範囲内で、適宜設定することが可能である。
次に、画線作製工程(STEP3)として、図5(c)に示すように、処理部(102)で、第一の軌跡(4D)に対応した第一の画線(4)を作製する。
軌跡設定工程(STEP2)で、第一の画線(4)の基となる第一の軌跡(4D)を、第一の始点(U1)、第一の頂点(T1)及び第一の終点(D1)を用いて設定したが、第一の軌跡(4D)の長さとなる第一の画線(4)の長さについては、設定していない。なお、第一の画線(4)の長さとは、第一の始点(U1)及び第一の終点(D1)を結ぶ基準線(H1)のことである。つまり、処理部(102)で、軌跡に対応した第一の画線(4)を作製するとは、第一の軌跡(4D)に対し、基準線(H1)の長さを設定し、第一の画線(4)を作製することである。
基準線(H1)の長さは、第一の始点(U1)、第一の頂点(T1)及び第一の終点(D1)の関係が成り立つのであれば、肉眼で両眼視差により立体視が可能となる、人間の平均的な両目間の距離である65mm以下とすることが、好ましい。
なお、形成体(1)を、セキュリティ製品等に用いる場合、小さい方が改ざんしづらく、偽造防止効果が向上することから、基準線(H1)の長さは短い方が、好ましいが、ポスター、広告物等に用いる場合、形成体(1)が大きいことから、基準線(H1)は長くなる。よって、形成体(1)と観察者との距離により、基準線(H1)の長さは、適宜設定する。基準線(H1)の長さを設定した第一の軌跡(4D)は、第一の画線(4)となる。
次に、画線位置設定工程(STEP4)として、図5(d)に示すように、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)を抽出した後、輪郭部に作製した第一の画線(4)の配置位置を設定する。
図7は、画線位置設定工程(STEP4)の詳細を示す模式図である。まず、図7(a)に示すように、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)を抽出する。
次に、抽出した第一の輪郭部(5E)に、画線作製工程(STEP3)であらかじめ作製した第一の画線(4)の配置位置を設定する。配置位置を設定する方法には、直線を用いて設定する方法と、円形を用いて設定する方法があるが、初めに直線を用いる設定方法について説明する。
まず、図7(b)に示すように、処理部(102)で、第一の輪郭部(5E)上の任意の二点を基準点(O1、O2)として設定する。なお、二つの基準点(O1、O2)は、異なる位置に設定する。
次に、図7(c)に示すように、画線を配置する際の第一の輪郭部(5E)上の基準位置を示す配置基準線(L1)を設定する。配置基準線(L1)は、二点の基準点(O1、O2)を通る直線である。次に、配置基準線(L1)を、第一のピッチ(P1)で第一の方向(X1)に複数配置する。第一の輪郭部(5E)と、複数配置する配置基準線(L1)の交差する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)の配置位置となり、配置基準線(L1)は、第一の画線(4)の基準線(H1)の配置位置となる。
配置基準線(L1)を配置する第一のピッチ(P1)は、第一の画線(4)の形成方法、用いる基材(2)及び画線幅を考慮し、5〜1000μmの範囲内で適宜設定することが可能である。
第一のピッチ(P1)を5μm未満とした場合、基材(2)上に第一の画線(4)を形成しづらくなり、好ましくない。反対に、第一のピッチ(P1)が1000μmを超える場合、第一の立体画像(5)の視認性が低下し、好ましくない。
なお、図7(c)では、第一のピッチ(P1)を、全て同じ規則的なピッチである第一のピッチ(P1)で図示しているが、ランダムなピッチとすることも可能である。
図8は、配置基準線(L1)を第一の方向(X1)に配置した他の形態を示す平面図である。配置基準線(L1)は、第一の方向(X1)に、P1、P2に示すランダムなピッチで配置されている。
ランダムなピッチ(P1、P2)で配置する場合には、その一つ一つのピッチは、前述した第一のピッチ(P1)の範囲と同様に、5〜1000μmの範囲内で適宜設定することが可能であるが、立体視される画像の視認性を考慮すると、配置基準線(L1)のピッチは規則的な第一のピッチ(P1)で形成することが、好ましい。よって、以下、本実施の形態では、配置基準線(L1)は全て同じピッチである第一のピッチ(P1)で形成してあると仮定して説明する。
次に、円形を用いた第一の画線(4)の配置位置の設定方法について、図9を用いて説明する。
まず、図9(a)に示すように、前述した図7(a)と同様に、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)を抽出する。
次に、図9(b)に示すように、処理部(102)で、第一の輪郭部(5E)上に、所定の直径の配置基準円(R1)を、配置基準円(R1)の中心が第一の輪郭部(5E)上となり、かつ、隣接する配置基準円(R1)の中心間の距離が一定間隔となるように複数配置する。第一の輪郭部(5E)と、複数配置する配置基準円(R1)の中心が交差する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)の配置位置となる。配置基準円(R1)の中心間の距離が、第一の画線(4)を配置する第一のピッチ(P1)となる。なお、第一のピッチ(P1)は、前述した配置基準線(L1)と同様の範囲で設定する。
なお、第一の画線(4)の画線幅は、第一のピッチ(P1)を考慮し、5〜1000μmの範囲内で適宜設定される。
画線幅が5μm未満である場合には、基材(2)上に第一の画線(4)を形成しづらいため、好ましくない。反対に、画線幅を1000μm以上とした場合、画線幅に対応して第一の画像(3)の形状も大きくする必要があることから、第一の画像(3)を両眼視差により立体視しづらくなり、好ましくない。
以下、本実施形態における画線位置設定工程(STEP4)は、直線である配置基準線(L1)を用いた工程として説明する。
次に、画線データ作製工程(STEP5)として処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)において設定した配置位置に、画線作製工程(STEP3)で作製した第一の画線(4)を複数配置して画線データを作製する。
図10は、画線データ作製工程(STEP5)の詳細を示す模式図である。まず、初めに、図10(a)に示すように、第一の画線(4)の第一の始点(U1)及び第一の終点(D1)を結ぶ、基準線(H1)を設定する。
前述した図2に示す、第一の画像(3)は、第一の画線(4)の少なくとも第一の始点(U1)から成る第一の立体画像(5)を有する。よって、第一の立体画像(5)の基となる画像である第一の原画像(5G)の上に第一の画線(4)を配置する場合は、第一の輪郭部(5E)と、第一の画線(4)の第一の始点(U1)を同じ位置に配置し、さらに、複数の第一の画線(4)は、第一の原画像(5G)の上に、同一方向である第一の方向(X1)に配置する。
複数の第一の画線(4)を、第一の原画像(5G)の上に、同一方向に配置するために、複数の第一の画線(4)の基準線(H1)はほぼ平行となるように設定する。
最後に、画線形成工程(STEP6)として、画線データ作製工程(STEP5)で作製した画線データを基に、基材(2)上の一部に、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を有し、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の断面形状を有する複数の第一の画線(4)を形成する。
明暗フリップフロップ性とは、観察角度の変化により明度の変化が生じることであり、カラーフリップフロップ性とは、観察角度の変化により色相の変化が生じることである。
本発明の第一の画像(3)は、入射光と反射光のコントラストが大きいことで、肉眼で立体的かつ動的に画像を視認することが可能となる。そのため、第一の画像(3)は、入射した光に対して強い反射光を生じる材料である、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料を用いる必要がある。
明暗フリップフロップ性を有する具体的な材料としては、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄等の一般的な金属粉顔料等があり、また、カラーフリップフロップ性を有する材料としては、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料等の一般的なパール顔料や、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等の機能性顔料が存在する。
また、基材(2)に用いることが可能な、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有する材料は、アルミ、ステンレス等の一般的な金属材料や、フィルム、プラスチック等の樹脂材料の他に、パールインキ、平滑な表面を形成可能な塗料等が塗工された用紙があるが、第一の画線(4)が、明暗フリップフロップ性及び/又はカラーフリップフロップ性を有していれば、形成する材料に限定はない。以下、本実施の形態では、第一の画線(4)が光輝性を有するインキにより形成されたとして説明する。
次に、第一の画線(4)の形成方法について説明する。
第一の画線(4)は、基材(2)上に光輝性インキを用いて凸画線として形成する方法と、光輝性材料から成る基材(2)を凹形状又は凸形状に変形して形成する方法がある。
インキで盛りのある画線として形成する方法とは、基材(2)に対して公知の印刷方法に適した版面及び光輝性を有するインキを用いて印刷を行うことで形成する。第一の画線(4)を凹版印刷、スクリーン印刷又はフレキソ印刷より形成した場合には、形成された第一の画線(4)は、基材(2)に対して、盛りのある凸形状の画線として形成される。
第一の画線(4)を印刷により形成する場合、第一の画線(4)が交差している箇所はインキの付着量が多くなり、所望の形状とならない場合があるため、印刷版面を作製する際に、交差箇所の画線を細らせて設計することが、好ましい。
基材(2)を凹形状又は凸形状に変形させて形成する方法とは、光輝性を有する基材(2)をエンボス加工、レーザ加工等、基材(2)を変形することが可能な公知の加工機を用いて、第一の画線(4)の形状に合わせて加工することで形成される。
第一の画線(4)をレーザ加工で形成する場合、第一の画線(4)の交差箇所を重複して加工しないように設計することが、好ましい。
なお、光輝性を有さない基材(2)を用いた際においても、凹形状又は凸形状に変形させた後、基材(2)における変形箇所上に、光輝性を有するインキを印刷により付与することで第一の画線(4)を形成することが可能である。例えば、公知の抄紙機を用いてすき入れにより基材(2)を凹形状又は凸形状に変形させた後、変形箇所上に光輝性を有するインキをベタ印刷により付与することで、第一の画線(4)が形成される。
また、凹形状又は凸形状に変形させた部位の表面のみが平滑になるように、エンボス加工することも可能である。
次に、第一の画線(4)の断面形状について、図11を用いて説明する。図11(a)は、第一の画線(4)の平面図であり、図11(b)及び図11(c)は、図11(a)におけるA−A’断面図である。図11(b)及び図11(c)に示すように、第一の画線(4)は、基材(2)の垂直方向(Y1)に対して、凹形状又は凸形状の画線である。
第一の画線(4)を、基材(2)の垂直方向(Y1)に対して凹形状又は凸形状とし、基材(2)の水平方向である第一の方向(X1)に対して円弧状の画線で形成することで、入射光に対する反射光が、円弧状画線において一方向ではなく、多方向に反射する。それにより、観察者には、円弧状画線の同じ位置が光って視認される。例えば、第一の画線(4)における、第一の始点(U1)のみが光って視認される。それにより、複数の始点(U1)から成る第一の立体画像(5)が潜像として出現することから、第一の画線(4)は、凹形状又は凸形状の円弧状画線で形成する必要がある。
なお、スムーズな動的効果を奏するため、基材(2)の垂直方向(Y1)に対して第一の画線(4)の断面形状は、四角形、三角形等角を有する角張った形状ではなく、蒲鉾形状、半円形状又は半楕円形状等角を有さない滑らかな形状とする方が望ましい。第一の画線(4)の断面形状が、前述した形状を取ることにより、角度変化により視認される反射光の動きが、曲面に沿うことで滑らかとなる。
基材(2)の垂直方向(Y1)に対する第一の画線(4)の高さ又は深さは、5〜1000μmの範囲内で適宜設定することが可能である。基材(2)に対する第一の画線(4)の高さ又は深さが1000μm以上である場合には、基材(2)に対して、凹形状又は凸形状の画線として作製しづらくなり、好ましくない。
次に、形成体(1)の視認原理について説明する。
図12は、形成体(1)が付与された基材(2)を観察するための視点(E1、E2)を示す図である。なお、第一の画線(4)は、基材(2)上における第一の方向(X1)に配置されている。
本発明では、基材(2)、定位置の光源(Q)及び視点が図12(a)に示す位置関係にあるとき、第1の観察角度(E1)から観察したとし、図12(b)に示す位置関係にあるとき、第2の観察角度(E2)から観察したとする。
第1の観察角度(E1)とは、第一の画線(4)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、反射光が肉眼で光輝性を有して視認されない領域のことであり、図12(a)では、観察角度θ3の範囲内が、第1の観察角度(E1)となる。例えば、第一の画線(4)を、パールインキで形成した場合、パールインキは、拡散反射光領域では、光源(Q)からの入射光と反射光の干渉によるパール光沢を呈さない。よって、第一の画線(4)は、肉眼で光輝性を有さない画線として視認される。
第2の観察角度(E2)とは、第一の画線(4)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、反射光が肉眼で光輝性を有して視認される領域のことであり、図12(b)では、観察角度θ4の範囲内が、第2の観察角度(E2)となる。例えば、第一の画線(4)を、パールインキで形成した場合、パールインキは、正反射光領域では、光源(Q)からの入射光と反射光の干渉によるパール光沢を呈する。よって、第一の画線(4)は、肉眼で光輝性を有する画線として視認される。
なお、第1の観察角度(E1)及び第2の観察角度(E2)は、第一の画線(4)を形成する材料や第一の画線(4)の断面形状により、基材(2)、光源(Q)及び第一の始点(U1)の位置関係は変化し、更には、正反射光領域及び拡散反射光領域に限らない。前述のとおり、本発明における第1の観察角度(E1)とは、第一の画線(4)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、反射光が肉眼で光輝性を有して視認されない領域のことであり、第2の観察角度(E2)とは、第一の画線(4)が定位置の光源(Q)からの入射光に対して、反射光が肉眼で光輝性を有して視認される領域のことである。
図13は、第2の観察角度(E2)における第一の画線(4)の視認原理を示す模式図である。図13(a)に示すように、第2の観察角度(E2)において、第一の画線(4)を形成する、材料は、光源(Q)からの入射光を反射する。
前述のとおり、本発明の第一の画線(4)は、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の円弧状画線である。よって、光源(Q)からの反射光(V1、V2、V3、V4、V5)は、多方向に反射する。
観察者の左目(L)の視野角度は(θL)であることから、左目(L)には、視野角度(θL)の内にある反射光(V1、V2)は視認される。一方、反射光(V3、V4、V5)は、視野角度(θL)の外であることから、視認されない。よって、第一の画線(4)は、観察者の左目(L)には、図13(b)に示すように、視野角度(θL)の内となる第一の始点(U1)の点線部は、光輝性を有して視認されるが、視野角度(θL)の外となる第一の終点(D1)の実線部は、光輝性を有さない画線として視認される。
一方、観察者の右目(R)の視野角度はθRであることから、右目(R)には、視野角度(θR)の内にある反射光(V4、V5)が視認される。一方、反射光(V1、V2、V3)は、視野角度(θR)の外であることから、視認されない。よって、第一の画線(4)は、観察者の右目(R)には、図13(c)に示すように、視野角度(θR)の内となる第一の終点(D1)の点線部は光輝性を有して視認されるが、視野角度(θR)の外となる第一の始点(U1)の実線部は光輝性を有さない画線として視認される。
図13(b)に示す左目(L)で視認される第一の画線(4)の光輝性を有して視認される位置と、図13(c)に示す右目(R)で視認される第一の画線(4)の光輝性を有して視認される位置は、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ直線である基準線(H1)に対して、左右に位相差を持った画線として視認される。
よって、両眼視差により、観察者には図13(d)に示すように、第一の画線(4)は立体画線として視認される。なお、図13(d)で第一の画線(4)は、画線全体が立体効果を奏するのではなく、点線部のみが立体効果を奏する画線として視認されるが、以下、このような一部が立体効果を奏する画線となる効果も含めて、第一の画線(4)が立体画線として視認されるという。
次に、第一実施形態の形成体(1)を、各観察角度(E1、E2)から観察した際の、視認原理について説明する。
図14は、形成体(1)を、第1の観察角度(E1)から観察した際の平面図である。基材(2)に対して第1の観察角度(E1)から観察した場合、第一の画線(4)は、光輝性を有さない画線として視認される。よって、複数の第一の画線(4)から成る第一の画像(3)は、平面的な彩紋模様として視認される。
図15は、形成体(1)を、第2の観察角度(E2)から観察した際の平面図である。基材(2)に対して第2の観察角度(E2)から観察した場合、第一の画線(4)は、光輝性を有する画線として視認される。
図15(a1)は、観察者の左目(L)に視認される第一の立体画像(5)を示す平面図であり、図15(a2)は、図15(a1)の一部を拡大した図である。図15(a2)に示すように、第2の観察角度(E2)で観察者の左目(L)には、全ての第一の画線(4)における第一の始点(U1)の第一の点線部(4D1)が光輝性を有して視認され、実線部は、光輝性を有さない画線として視認される。
前述のとおり、全ての第一の画線(4)は、同じ形状及び大きさであり、かつ、同じ方向に配置されている。よって、第2の観察角度(E2)から観察した場合、全ての第一の画線(4)の同じ位置が光輝性を有して視認される。
第一の立体画像(5)は、全ての第一の画線(4)の同じ位置から形成される。具体的には、全ての第一の画線(4)の始点からも、終点からも、頂点からも、どの位置からも第一の立体画像(5)が形成されているが、少なくとも始点により形成されている。それにより、図15(b2)に示すように、観察者の左目(L)には、全ての第一の画線(4)における、光輝性を有して視認される第一の始点(U1)の第一の点線部(4D1)から成る、第一の画像(3)とは異なる形状であり、かつ、第一の原画像(5G)と同一形状の画像である第一の立体画像(5)が視認される。
なお、第一の立体画像(5)は、点線部(4D1)という線から成る画像であることから、実際には第一の原画像(5G)より、太い画線から成る画像である。しかしながら、肉眼でその差を識別することはできないことから、本発明では、第一の立体画像(5)と第一の原画像(5G)は同じ形状及び大きさの画像として説明する。
図15(b1)は、観察者の右目(R)に視認される第一の立体画像(5)を示す平面図であり、図15(b2)は、図15(b1)の一部を拡大した図である。前述のとおり、左右の目で視認される画像には、位相差があることから、図15(a2)で示した、第一の画線(4)における、左目(L)で光輝性を有して視認される位置と、図15(b2)に示す、右目(R)で光輝性を有して視認される位置は、左右に位相差がある。
よって、第2の観察角度(E2)で観察者の右目(R)には、図15(a2)と比べて、第一の終点(D1)方向(J)の異なる位置であり、かつ、光輝性を有して視認される点線部(4D2)から成る、第一の立体画像(5)が視認される。
図15(c1)は、観察者の両目(L、R)に視認される第一の立体画像(5)を示す平面図であり、図15(c2)は、図15(c1)の一部を拡大した図である。前述したように、第2の観察角度(E2)で観察者の左目(L)には、図15(a1)に示す第一の立体画像(5)が視認され、右目(R)には、図15(b1)に示す第一の立体画像(5)が視認される。
前述のとおり、左右の目でそれぞれ視認される第一の画線(4)は、位相差を持った画線として視認されることから、左右それぞれの目で視認される第一の立体画像(5)も、同様に位相差を持った画像として視認される。よって、両眼視差により観察者には、第一の立体画像(5)が、立体的な画像として視認される。
なお、第一の立体画像(5)は、前述のとおり、複数の第一の画線(4)における同じ位置、例えば、第一の始点(U1)のみが、強い反射光を生じることで視認される。よって、第一の立体画像(5)は複数の点から成る画像であるが、光は光源から徐々に広がる性質を有するため、肉眼では、始点(U1)からの光が広がることで、実線から成る画像として第一の立体画像(5)が視認される。
さらに、第2の観察角度(E2)の範囲内で、基材(2)に対する観察角度を連続的に変化させた際に、角度変化に伴って、潜像である第一の立体画像(5)が、立体的かつ動的に視認される原理について説明する。
図16は、第2の観察角度(E2)における第一の立体画像(5)の視認状態を示す模式図である。図16(a)は、第2の観察角度(E2)の範囲内における観察角度の変化を示す模式図であり、図16(b1)及び図16(b2)は、図16(a)で視認される、第一の立体画像(5)を示す平面図及び模式図である。
図16(a)に示すように、第2の観察角度(E2)である、観察角度θ4の範囲内で、基材(2)に対する観察角度を、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、観察角度の変化に伴い、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと第一の画線(4)上を徐々に変化する。
前述のとおり、全ての第一の画線(4)の同じ位置で第一の立体画像(5)が形成されることから、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、全ての第一の画線(4)で同じように変化する。それにより、図16(b1)に示す出現した第一の立体画像(5)が、図16(b2)に示す矢印方向である第一の方向(X1)とは異なる方向である第二の方向(X2)に、立体的かつ動的に視認される。
例えば、観察角度を第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、第一の立体画像(5)は、第一の画線(4)上を第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へ、円弧状に動的に視認され、反対に、第2bの観察角度(E2b)から第2aの観察角度(E2a)へと連続的に変化させて観察した場合、第一の立体画像(5)は、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと動的に視認される。
このとき、立体的に視認される第一の立体画像(5)の動き量は、第一の画線(4)の光輝性を有して視認される位置の変化量と同一であることから、第一の画線(4)の長さと同一の範囲内で、観察角度の変化に伴い動く。なお、第一の画線(4)の長さとは、円弧の長さのことである。つまり、第一の画線(4)の長さや、円弧の形状となる始点角(θ1)、終点角(θ2)及び基準線(H1)の大きさを変化させることで、ユーザが所望する動き量及び動く方向を、第一の立体画像(5)に付与することが可能となる。
なお、第一の原画像(5G)は、前述した円形状に限らず、第一の画線(4)の第一の始点(U1)で形成可能な形状であれば、特に形状に限定はない。例えば、矩形状、文字形状等とすることが可能である。第一の原画像(5G)を任意の形状とした場合でも、前述した図2に示す第一の画像(3)と同様に第一の画像(3)は、複数の円弧状画線である第一の画線(4)から構成されることから、第1の観察角度(E1)では、複数の細画線から成る彩紋模様として第一の画像(3)が視認される。
以上、本発明の形成体(1)は、平面的な彩紋模様として視認される第一の画像(3)を傾けて観察することで、第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5)が、立体画像として視認され、かつ、観察角度の変化に伴い、潜像である第一の立体画像(5)が、連続的に動的に視認することが可能となる。
また、第一の立体画像(5)が立体的に視認される際の動き量は、第一の画線(4)の長さ及び形状を変化させることで、制御可能となる。
(第二実施形態)
次に、前述した第一の画像(3)の変形例である第二実施形態について説明する。図17は、第二実施形態の第一の画像(3)を示す模式図であり、図17(a)は、第二実施形態の第一の画像(3)を示す平面図である。
第二実施形態の第一の画像(3)は、観察角度を変化させて観察した場合、立体視可能な第一の立体画像(5)を、基材(2)の平面方向に対して、水平方向に円弧状の頂点の向きが異なる二つの円弧状画線を配置して成ることで、角度変化により動的に視認される第一の立体画像(5)が、前述した第二の方向(X2)に加え、第一の方向(X1)にも動的に視認することが可能となる。なお、前述した実施の形態と同様の点については、以下説明を省略する。
図17(b)は、図17(a)に示す領域(Z2)の拡大図である。第一の画像(3)は、第一実施形態と同様に複数の第一の画線(4)を有しているが、さらに、同一の円弧状画線である複数の第二の画線(6)を有して成る。なお、複数の第一の画線(4)の構成及び作製方法は、前述した第一実施形態と同一であることから、説明を省略する。
図17(b)に示す第二の画線(6)は、第二の始点(U2)、第二の頂点(T2)及び第二の終点(D2)を有する。前述した第一実施形態では、第一の画像(3)を、光輝性を有する材料から成る円弧状の第一の画線(4)で形成することで、入射光に対する反射光は、円弧状画線の同じ位置が光って視認され、さらに観察角度の変化により、第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認される同じ位置が変化することで、図2に示した第一の立体画像(5)が、円弧形状と同一の軌跡で動的に視認される技術であった。
本第二実施形態は、図17(b)に示すように、第一の画像(3)を、複数の第一の画線(4)及び第二の画線(6)で形成するとともに、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、基材(2)に対して水平方向である第一の方向(X)に対して異なる位置に配置される。さらに、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第二の画線(6)の第二の始点(U2)が、同じ位置にされることで、視認原理についての詳細は後述するが、入射光に対する反射光は、複数の第一の画線(4)の同じ位置が光って視認され、観察角度の変化により、第一の画線(4)の第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認された後、第二の画線(6)の第二の始点(U2)から第二の終点(D2)へと徐々に光る位置が変化する。また、その際に、複数の第二の画線(6)の同じ位置が光って視認される。それにより、図17(a)に示した第一の立体画像(5)が、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される技術である。
第一の立体画像(5)が、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される効果を奏するためには、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、第一の方向(X)に対して、異なる位置に配置されることを必須とする。
例えば、図17(b)においては、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)は、点対称に配置されて成る。
なお、本発明でいう点対称とは、図17(b)に示すように、第一の画線(4)の第一の始点(U1)に対して、ほぼ180度回転したことをいう。
第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、点対称に配置されて成ることで、第一の画線(4)は、上方(第一の方向)に膨らみを有する円弧状に形成され、第二の画線(6)は、第一の画線(4)と逆方向である下方(第一の方向とほぼ180度異なる方向)に膨らみを有する円弧状に形成されていることから、基材(2)の平面に対し、第一の画線(4)が手前に視認され、第二の画線(6)が奥に視認される。
よって、肉眼では、第一の立体画像(5)が角度変化により、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される効果に加え、複数の第一の画線(4)の同じ位置から成る第一の立体画像(5)は、基材(2)の平面に対して、手前に視認され、複数の第二の画線(6)の同じ位置から成る第一の立体画像(5)は、基材(2)の平面に対して、奥に視認される。このように、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、点対称に配置されて成ることで、角度変化により、手前に、奥にと、平面的な奥行き感を有して視認することが可能となる。
本発明において、平面的な奥行き感とは、図18(a)の正面図及び図18(b)の側面図に示すように、観察角度に応じて視認される第一の立体画像(5)自体は平面的であるが、観察角度の変化により、第一の立体画像(5)が基材(2)の平面に対して、手前に、あるいは、奥に見えることをいう。
図19は、第一の立体画像(5)が、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される効果を奏する第一の画線(4)及び第二の画線(6)の他の構成を示す模式図である。なお、第一の立体画像(5)が、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される効果を奏する構成とする場合には、前述のとおり、第一の画線(4)と第二の画線(6)の始点が同じ位置となることは必須であることから、説明を省略する。
第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)は、第一の方向(X1)に対して、水平方向に異なる位置であれば、図17(b)に示すように、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)は、点対称に配置されて成る構成に限らず、図19(a)に示すように、同じ方向、例えば、上方である第一の方向(X1)にいずれも膨らみを有する円弧状に形成することも可能である。あわせて、複数の第一の画線(4)が同一であり、かつ、複数の第二の画線(6)が同一であれば、第一の画線(4)と第二の画線(6)を異なる形状とすることも可能である。
図19(a)に示す画線構成とした場合、第一の立体画像(5)は、図17を用いて説明したような、平面的な奥行き感を有して視認することはできないが、第二の方向(X2)に加えて第一の方向(X1)にも動的に視認される効果は奏する。
また、図17(b)においては、第一の画線(4)の第一の終点(D1)と第二の画線(6)の第二の終点(D2)を異なる位置としていたが、前述のとおり、第一の画線(4)と第二の画線(6)の始点が同じ位置であるならば、図19(b)に示すように、第一の画線(4)の第一の終点(D1)と第二の画線(6)の第二の終点(D2)を同じ位置とすることも可能である。図19(b)において、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)を、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ線に対して線対称に配置される。
なお、本発明でいう線対称とは、図19(b)に示すように、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ線に対して、ほぼ180度反転したことをいう。
図17において第一の立体画像(5)は、角度変化に伴い、下方向である第一の方向(X1)とは、基材(2)に対して、水平方向にほぼ180度異なる方向に動的効果を奏して視認されたのち、上方向である第一の方向(X1)に動的効果を奏して視認されたが、図19(b)に示す画線構成とした場合、第一の立体画像(5)は、角度変化に伴い、下方向である第一の方向(X1)とはほぼ180度異なる方向に動的効果を奏する画像と、上方向である第一の方向(X1)に動的効果を奏する画像が同時に視認される。このように、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、線対称に配置されて成ることで、角度変化により、上下方向に動的効果を奏して視認することが可能となる。
次に、複数の第二の画線(6)の作製方法について、図20乃至図26を用いて説明する。
図20は、第二実施形態の形成体(1)の作製手順を示す模式図である。第二実施形態は、軌跡設定工程(STEP2)において、前述した第一の立体画像(5)の動きの軌跡に加えて、さらに、図20(a)に示すように、処理部(102)で、第一の立体画像(5)を、第二の画線(6)が光輝性を有して肉眼で視認される観察角度内において、光源(Q)に対して異なる角度へと、連続的に変化させて観察した場合の動きの軌跡を設定する。
視認原理についての詳細は後述するが、第一の方向(X1)に対して異なる位置に頂点を有する第一の画線(4)と第二の画線(6)を、光輝性を有する材料で円弧状画線として形成することで、入射光に対する反射光が、第一の画線(4)及び第二の画線(6)における同じ位置が光って視認され、さらに観察角度の変化により、第一の画線(4)から第二の画線(6)へと徐々に光って視認される位置が変化することで、図17(a)に示す第一の立体画像(5)が、第二の方向(X2)に加えて、第一の方向(X1)に平面的な奥行き感を奏して動的に視認される。
つまり、第二実施形態において第一の立体画像(5)の動きである軌跡とは、第一の画線(4)の円弧形状と、第二の画線(6)の円弧形状という二つの円弧形状を足した形状と同一となる。第一の画線(4)の軌跡については、第一実施形態で設定したことから、第二実施形態における軌跡設定工程(STEP2)は、第一の立体画像(5)の動く方向(軌跡)であり、かつ、第二の画線(6)の円弧形状の基となる軌跡を設定する。
図18(a)を用いて前述したように、第二実施形態において第一の立体画像(5)が、第一の方向(X1)にも動的効果を奏して視認されるためには、軌跡設定工程(STEP2)において、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第一の方向(X1)に対して異なる位置に第二の頂点(T2)を有する、円弧形状の第二の軌跡(6D)を設定する。それにより、第一の軌跡(4D)及び第二の軌跡(6D)を基に作製される第一の画線(4)及び第二の画線(6)の第一の頂点(T1)と第二の軌跡(6D)の第二の頂点(T2)の位置が、第一の方向(X1)に対して異なることから、第一の立体画像(5)が第一の方向(X1)にも動的に視認される効果を奏することが可能となる。
図21は、第一の軌跡(4D)と第二の軌跡(6D)を示す平面図である。図21(a)に示すように、第一の立体画像(5)の軌跡の一部である第二の軌跡(6D)は、第二の始点(U2)、第二の頂点(T2)及び第二の終点(D2)を有する。第二の軌跡(6D)は、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)を結ぶ直線を基準線(H4)とした場合、第二の始点(U2)における始点角(θ1)と、第二の終点(D2)における、終点角(θ2)は、前述した第一の軌跡(4D)と同様の範囲内で、適宜設定する。
第二実施形態の第一の画像(3)を作製する場合、図21(a)に示すように、第二の軌跡(6D)は、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第一の方向(X1)に異なる位置に第二の頂点(T2)を有して設定する。
例えば、前述した図17(b)に示すように、第一の方向(X1)に対し、第一の立体画像(5)をS字状に動的効果を奏して視認させたい場合、図21(a)及び図21(b)に示すように、軌跡設定工程(STEP2)において、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第二の軌跡(6D)の第二の頂点(T2)を、点対称の位置に設定する。
また、前述した図18(a)に示すように、第一の方向(X1)に対し、第一の立体画像(5)をM字状に動的効果を奏して視認させたい場合、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第二の軌跡(6D)の第二の頂点(T2)を、第一の方向(X1)に対して異なる位置に設定する。
さらに、前述した図18(b)に示すように、角度変化により二つの第一の立体画像(5)を出現させ、かつ、第一の方向(X1)に対し、動的効果を奏して視認させたい場合、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第二の軌跡(6D)の第二の頂点(T2)を、線対称の位置に設定する。
第一の軌跡(4D)と第二の軌跡(6D)の頂点(T1、T2)の向きを、点対称又は線対称とする理由については、前述した図17及び図18を用いて説明した、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の頂点(T1、T2)の向きを、点対称又は線対称とする理由と同様であることから、説明を省略する。以下、第二実施形態では、第一の軌跡(4D)の第一の頂点(T1)と第二の軌跡(6D)の第二の頂点(T2)が、点対称の位置に設置したとして説明する。
次に、画線作製工程(STEP3)として処理部(102)で、前述した第一の画線(4)の作製に加え、図20(b)に示すように、第二の軌跡(6D)に対応した第二の画線(6)を作製する。
画線作製工程(STEP3)では、処理部(102)で前述した第一の軌跡(4D)から第一の画線(4)を作製した方法と同様に、軌跡の長さとなる第二の画線(6)における、第二の始点(U2)及び第二の終点(D2)を結ぶ基準線(H4)の長さを設定し、第二の画線(6)を作製することである。なお、基準線(H4)の長さについては、前述した第一の画線(4)と同様の範囲内で設定する。
次に、画線位置設定工程(STEP4)として、処理部(102)で、第一の輪郭部(5E)を抽出した後、第一の輪郭部(5E)に作製した第二の画線(6)の配置方向を設定する。第二実施形態では、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第二の画線(6)の第二の始点(U2)は同じ位置で配置することから、第二の画線(6)の配置方向のみを設定する。
第二の画線(6)の配置方向は、まず、図20(c)に示すように、画線を配置する際の第一の輪郭部(5E)上の基準位置を示す配置基準線(L1)を設定する。配置基準線(L1)は、前述した第一の画線(4)の第一の始点(U1)の配置位置である基準点(O1、O2)を通る任意の直線であれば、特に限定はない。
図22は、第一の画線(4)と第二の画線(6)を示す平面図である。第二の画線(6)は、図22(a)に示すように、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)を結ぶ線を基準線(H4)とした場合、基準線(H4)に対する第二の頂点(T2)の位置が、第一の画線(4)とは異なる方向となるように配置する。
例えば、図22(a)において、第二の画線(6)は基準線(H4)に対して第二の頂点(T2)が下方向に配置しているが、図22(b)では、第一の画線(4)は基準線(H1)に対して第一の頂点(T1)が上方向の第二の画線(6)とは180度異なる方向に配置している。
第一の画線(4)と第二の画線(6)の頂点(T1、T2)の向きは、1〜180度の範囲内で異なる事が可能であるが、ほぼ180度であることが、好ましい。ほぼ180度とすることで、第一の立体画像(5)が立体的かつ動的に視認する際に、第一の画線(4)と第二の画線(6)から成る二つの第一の画像(3)が、第二の方向(X2)に加えて、第一の方向(X1)に動的効果を奏するとともに、平面的な奥行き感を奏して視認することが可能となる。なお、動的効果の視認原理についての詳細は後述する。以下、第二実施形態では、第一の画線(4)と第二の画線(6)が、180度異なる方向に配置しているとして説明する。
なお、円弧状画線である第二の画線(6)の画線幅は、前述した第一の画線(4)と同様に5〜1000μmの範囲内で適宜設定されるが、第一の画線(4)と異なる画線幅とすることも可能である。
次に、画線データ作製工程(STEP5)として処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)において設定した配置位置に、画線作製工程(STEP3)で作製した第一の画線(4)に加え、第二の画線(6)を複数配置して画線データを作製する。
図23は、画線データ作製工程(STEP5)の詳細を示す模式図である。まず、初めに、図23(a)に示すように、第二の画線(6)の第二の始点(U2)及び第二の終点(D2)を結ぶ、基準線(H4)として設定する。基準線(H4)は、複数の第二の画線(6)を、第一の輪郭部(5E)上に同じ方向に配置するための、基準となる線である。
次に、図23(b)に示すように、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と第二の画線(6)の第二の始点(U2)を同じ位置に配置するために、処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)で設定した配置位置に、画線作製工程(STEP3)で作製した上で作製した第二の画線(6)を複数配置する。
本発明の形成体(1)は、観察角度の変化により、複数配置した円弧状画線の同じ位置が反射して視認されることで、第一の立体画像(5)を視認することが可能となる。よって、同じ角度からの入射光に対して、円弧状画線の同じ位置を反射して視認するために、複数配置する第二の画線(6)は、同一方向に配置する。
複数の第二の画線(6)を、同一方向に配置するために、複数の配置する第二の画線(6)の基準線(H4)は図23(b)に示すように、全てほぼ平行に設定する。なお、図23(b)では、第二の画線(6)の配置を詳細に示すために、第一の画線(4)が記載されていないが、実際は第一の画線(4)が配置されている。
最後に、画線形成工程(STEP6)として、画線データ作製工程(STEP5)で作製した画線データを基に、基材(2)上の一部に、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を有し、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の断面形状を有する複数の第一の画線(4)及び第二の画線(6)を形成する。
第二の画線(6)を形成する材料、形成方法、画線の断面形状、高さ及び深さについては、前述した第一の画線(4)と同様とすることから、説明を省略する。
次に、第二実施形態における形成体(1)の視認原理について説明する。
図24は、第2の観察角度(E2)における、第二の画線(6)の視認原理の詳細を示す模式図である。図24(a)に示すように、第2の観察角度(E2)において、第二の画線(6)は、反射光が肉眼で光輝性を有して視認される。
前述のとおり、本発明の第二の画線(6)は、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の円弧状画線であることから、光源(Q)からの反射光(V1、V2、V3、V4、V5)は、一方向ではなく、多方向に反射する。
観察者の左目(L)の視野角度はθLであることから、左目(L)には、反射光(V4、V5)が視認される。一方、反射光(V1、V2、V3)は、視野角度θLの範囲外であることから、視認されない。よって、第二の画線(6)は、観察者の左目(L)には、図24(b1)に示すように、第二の終点(D2)の実線部は光輝性を有さない画線として視認されるが、光輝性を有して視認されるが、第二の始点(U2)の点線部は光輝性を有して視認される。
一方、観察者の右目(R)の視野角度はθRであることから、右目(R)には、反射光(V1、V2)が視認される。一方、反射光(V3、V4、V5)は、視野角度θRの範囲外であることから、視認されない。よって、第二の画線(6)は、観察者の右目(R)には、図24(c1)に示すように、第二の終点(D2)の点線部は光輝性を有して視認されるが、第二の始点(U2)の実線部は光輝性を有さない画線として視認される。
図24(b1)に示す左目(L)で視認される第二の画線(6)の光輝性を有して視認される位置と、図24(c1)に示す右目で視認される第二の画線(6)の光輝性を有して視認される位置は、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)を結ぶ直線である基準線(H4)に対して、位相差を持った画線として視認される。よって、両眼視差により、観察者には図24(d1)に示すように、第二の画線(6)は立体的な画線として視認される。
図24(b2)、図24(c2)及び図24(d2)は、図17に示した第二実施形態の第一の画像(3)を形成する第一の画線(4)を第2の観察角度(E2)から視認した際の模式図である。図24(b2)は、観察者の左目(L)で視認される第一の画線(4)であり、図24(c2)は、観察者の右目(R)で視認される第一の画線(4)であり、図24(d2)は、観察者の左右の目(L、R)で視認される第一の画線(4)である。
第二の画線(6)は、前述した第一の画線(4)とほぼ180度異なる方向に配列されている。よって、第2の観察角度(E2)では、観察者に視認される各画線(4、6)の点線部に示す光輝性を有して視認される位置が、観察者の左右の目(L、R)で逆の部分が視認される。
例えば、図24(b1)及び図24(b2)は、それぞれ観察者の左目(L)で視認される各画線(4、6)であるが、図24(b1)においては、第二の画線(6)の第二の始点(U2)が光輝性を有して視認される。一方、図24(b2)では、第一の画線(4)の第一の始点(U1)が光輝性を有して視認されることから、第一の画線(4)と第二の画線(6)が、観察者の左右の目(L、R)で逆の部分が光輝性を有するように視認されることから、第一の方向(X1)に対して左右に位相差を有する画線として視認される。
よって、図25に示すように、観察者には、複数の第一の画線(4)の光輝性を有して視認される領域から形成される第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5−1)と、複数の第二の画線(6)の光輝性を有する領域から形成される第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5−2)の二つの第一の立体画像(5)が視認されるが、この二つの第一の立体画像(5−1、5−2)は、複数の第一の画線(4)と複数の第二の画線(6)が、前述のとおり、観察者の左右の目(L、R)で逆の部分が光輝性を有するように視認されることから、第一の方向(X1)に対して左右に位相差を有する画像として視認される。
その際、図24で前述したように、二つの第一の立体画像(5−1、5−2)を形成する第一の画線(4)及び第二の画線(6)は、基準線(H1、H4)に対して、円弧状画線である第一の画線(4)が、第一の方向(X1)である上方に膨らみを有して形成され、円弧状画線である第二の画線(6)が、第一の方向(X1)と逆方向である下方に膨らみを有して形成されていることから、基材(2)の平面に対して、第一の画線(4)が手前に視認され、第二の画線(6)が奥に視認される。
よって、図25に示すように、基材(2)の平面に対して、複数の第一の画線(4)から成る第一の立体画像(5−1)が、手前に視認され、複数の第二の画線(6)から成る第一の立体画像(5−2)が奥に視認される。
また、基材(2)を徐々に傾けて観察した際に、この二つの第一の立体画像(5−1、5−2)は、それぞれ第一の画線(4)、第二の画線(6)に沿って逆方向に動くように視認されることから、二つの画像の平面的な奥行き感が助長されて視認される。
図26は、第2の観察角度(E2)における第一の立体画像(5)の視認状態を示す模式図である。図26(a)は、第2の観察角度(E2)の範囲内における観察角度の変化を示す模式図であり、図26(b1)及び図26(b2)は、図26(a)で視認される、第一の立体画像(5−1、5−2)を示す平面図及び模式図である。
図26(a)に示すように、第2の観察角度(E2)である、観察角度θ4の範囲内で、基材(2)に対する観察角度を、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、観察角度の変化に伴い、第一の画線(4)及び第二の画線(6)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の画線(4)及び第二の画線(6)のうち、一方の画線の終点から始点へと一方の画線上を徐々に変化するのと同時に、他方の画線の始点から終点へと他方の画線上を徐々に変化する。
それにより、図26(b1)に示すように、二つの第一の立体画像(5−1、5−2)が、第一の方向(X1)及び第二の方向(X2)という二方向に動いているように視認されるとともに、平面的な奥行き感を持って視認される。さらに、図26(b2)に示す、円弧に沿って逆方向に動的に視認される。
例えば、観察角度を第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に繰り返し変化させて観察した場合、第一の画線(4)から成る第一の立体画像(5−1)が、第一の画線(4)上を第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へ、円弧状に動的に視認されるのと同時に、第二の画線(6)から成る第一の立体画像(5−2)が、第二の画線(6)上を第二の始点(U2)から終点(D2)へ、円弧状に動的に視認される。
このとき、第一の画線(4)の第一の始点(U1)と、第二の画線(6)の第二の始点(U2)は同じ位置に配置されていることから、平面的な奥行き感の異なる二つの第一の立体画像(5−1、5−2)が、矢印方向に、第一の立体画像(5−2)は、5−3、5−2−2、5−2−1、5−2−2、5−3の位置へ連続的に動的に視認され、第一の立体画像(5−1)は5−3、5−1−2、5−1−1、5−1−2、5−3の位置へ連続的に動的に視認される。
このように、第一の画像(3)を形成する各画線(4、6)の頂点(T1、T2)の向きを異なる方向とし、かつ、各画線(4、6)の始点(U1、U2)が同じ位置に配置されることで、第一の立体画像(5)は、動的効果に加えて、平面的な奥行き感を奏する立体画像として視認される。よって、前述した一つの画像を一種類の円弧画線と形成した場合と比べて、より動的効果が高い形成体(1)となる。
(第三実施形態)
次に、前述した第一実施形態の第一の画像(3)の変形例である第三実施形態について説明する。図27は、第三実施形態の第一の画像(3)を示す平面図である。第三実施形態の第一の画像(3)は、複数配置した円弧状画線の幅を異ならせることで、角度変化により、第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5)から、第一の画像(3)及び第一の立体画像(5)とは異なる形状の画像である第二の立体画像(7)へと連続的に変化して視認することが可能となる。なお、前述した実施の形態と同様の点については、以下説明を省略する。
第一の画像(3)は、前述の第一実施形態と同様に複数の第一の画線(4)から成るが、全ての第一の画線(4)の第一の終点(D1)により、第一の画像(3)及び第一の立体画像(5)とは異なる形状の第二の立体画像(7)が形成される。
前述した第一実施形態は、第一の画像(3)を、全て同一の円弧状画線である第一の画線(4)で形成することで、入射光に対する反射光は、円弧状画線の同じ位置が光って視認され、さらに観察角度の変化により、第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認される同じ位置が変化することで、図2に示した第一の立体画像(5)が、円弧形状と同一の軌跡で動的に視認される技術であった。
本第三実施形態では、複数の第一の画線(4)を相似形とし、複数の第一の画線(4)の長さが異なることで、入射光に対する反射光が、観察角度の変化により第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認される位置が、第一の画線(4)上で変化することで、図27に示した第一の立体画像(5)から第二の立体画像(7)へ徐々に変化しているように視認される技術である。
本発明において、相似形とは、複数の第一の画線(4)の始点角(θ1)が、全て同一であり、複数の第一の画線(4)の終点角(θ2)が、全て同一であり、さらに、隣り合う二つの第一の画線(4)において、基準線(H1)が異なる長さであることをいう。
次に、第三実施形態の第一の画像(3)の作製方法について、図28乃至図29を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態の第一の画像(3)の作製方法と同様の手段については、説明を省略する。
図28は、第三実施形態の形成体(1)の作製手順を示す模式図である。第三実施形態は、原画像設計工程(STEP1)において、前述した第一の原画像(5G)の決定に加えて、さらに、図28(a)に示すように、処理部(102)で、正反射光下で第一の立体画像(5)からチェンジ効果を奏して視認可能となる第二の立体画像(7)の基となる画像である第二の原画像(7G)を、前述した第一の原画像(5G)とともに作製又は決定する。
第二の原画像(7G)は、第一の原画像(5G)と形状及び/又は大きさが異なる画像であれば、特に限定はない。本実施の形態では、図28(a)に示すように、第二の原画像(7G)としてダイヤ形状の画像を一例として説明する。
次に、原画像設計工程(STEP1)で、新たに原画像位置設定工程として、図28(b)に示すように、処理部(102)で、第一の原画像(5G)と第二の原画像(7G)の配置位置を設定する。
第一の原画像(5G)と第二の原画像(7G)の配置位置は、二つの原画像(5G、7G)の中心の距離が、肉眼で両眼視差により立体視が可能となる、人間の平均的な両目間の距離である65mm以下とすることが、好ましい。
なお、形成体(1)を、セキュリティ製品等に用いる場合、小さい方が改ざんしづらく、偽造防止効果が向上することから、二つの原画像(5G、7G)の中心の距離は短い方が、好ましいが、ポスター、広告物等に用いる場合、形成体(1)が大きいことから、二つの原画像(5G、7G)の中心の距離は長くなる。よって、形成体(1)と観察者との距離により、第一の原画像(5G)と第二の原画像(7G)の配置位置は、適宜設定する。
次に、画線作製工程(STEP3)として、処理部(102)で、軌跡に対応した第一の画線(4)を作製する。なお、第三実施形態についての詳細は後述するが図27に示すように、チェンジ効果を奏する二つの立体画像(5、7)の形状に合わせて、第一の画線(4)の基準線(H1)の長さを伸縮する必要がある。第一の画線(4)の基準線(H1)の長さを伸縮することで、複数の第一の画線(4)は、全て相似形となる。よって、画線作製工程(STEP3)では、基準線(H1)の長さを伸縮する際の基準となる第一の画線(4)を作製する。
次に、画線位置設定工程(STEP4)として、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)と、第二の原画像(7G)の輪郭である第二の輪郭部(7E)を抽出した後、各輪郭部(5E、7E)上に作製した第一の画線(4)の配置位置を設定する。なお、第二の輪郭部(7E)の抽出方法については、前述した第一実施形態の作製方法における第一の輪郭部(5E)同様であることから説明を省略する。
次に、画線データ作製工程(STEP5)として、図28(c)に示すように、処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)において設定した配置位置に、画線作製工程(STEP3)で作製した上で作製した第一の画線(4)を複数配置して画線データを作製する。
図29は、画線データ作製工程(STEP5)の詳細を示す模式図である。まず、初めに、図29(a)に示すように、第一実施形態と同様に、第一の画線(4)の第一の始点(U1)及び第一の終点(D1)を結ぶ、基準線(H1)として設定した後、第一の原画像(5G)上に第一の画線(4)を配置する。
第三実施形態において第一の画像(3)は、第一の原画像(5G)が、第一の画線(4)の少なくとも第一の始点(U1)から成り、かつ、第二の原画像(7G)が、第一の画線(4)の少なくとも第一の終点(D1)から成る。よって、次に、第二の輪郭部(7E)と、第一の画線(4)の第一の終点(D1)を同じ位置に設定する。
第二の輪郭部(7E)と、第一の画線(4)の第一の終点(D1)を同じ位置に設定するために、図29(b)に示すように、処理部(102)で基準線(H1)を伸縮させる。第二の輪郭部(7E)と、基準線(H1)が交差する位置が、第一の画線(4)の第一の終点(D1)の配置位置となる。なお、複数配置された第一の画線(4)では、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ基準線(H1)は同じ方向とし、始点角(θ1)と、終点角(θ2)は、同一とする。よって、図29(b)に示すように、始点角(θ1)及び終点角(θ2)を同一角度に保ちながら、基準線(H1)を伸縮することで、複数の第一の画線(4)は、全て相似形となる。あわせて、隣り合う第一の画線(4)は、基準線(H1)が異なる長さとなる。
次に、第三実施形態における形成体(1)の視認原理について説明する。
図30は、第2の観察角度(E2)の範囲内における観察角度の変化に対する、第三実施形態の第一の画像(3)の視認状態を示す模式図である。なお、第2の観察角度(E2)は、図12(b)で前述した範囲と同様である。観察角度θ4の範囲内で、基材(2)に対する観察角度を、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、観察角度の変化に伴い、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと画線上を徐々に変化する。
例えば、第一の画線(4)の第一の始点(U1)が光輝性を有して視認される観察角度では、図30(a)に示すように、全ての第一の画線(4)の第一の始点(U1)により形成された、第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5)が視認される。
次に、観察角度を第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと画線上を徐々に変化することで、図30(b)、図30(c)及び図30(d)と順に示すように、第一の立体画像(5)が、第一の画線(4)上を第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へ、円弧状に動的に、かつ、第一の立体画像(5)から、第一の画像(3)及び第一の立体画像(5)とは異なる形状の第二の立体画像(7)へ徐々に変形しながら視認される。
最後に、第一の画線(4)の第一の終点(D1)が光輝性を有して視認される観察角度では、図30(d)に示すように、全ての第一の画線(4)の第一の終点(D1)により形成された第二の立体画像(7)が視認される。
(第四実施形態)
次に、前述した第一実施形態の第一の画像(3)の変形例である第四実施形態について説明する。
図31(a)は、第四実施形態の第一の画像(3)を示す平面図である。第四実施形態の第一の画像(3)は、複数配置した第一の画線(4)において、隣り合う第一の画線(4)同士を相似形に形成することで、角度変化により、第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(図示せず)が、立体的な奥行き感を奏して視認することが可能となり、具体的には、図31(a)の第一の画像(3)は、角度変化により、立方体が視認可能となる。なお、前述した実施の形態と同様の点については、以下説明を省略する。
本発明において、立体的な奥行き感とは、図32(a)の正面図及び図32(b)の側面図に示すように、観察角度に応じて視認される第一の立体画像(5)自体が、立体物を視認している時と同じように形状が変化することで立体物として認識でき、更に、観察画像の位置が変化することで基材(2)の平面に対して、手前に、あるいは、奥に見えることをいう。よって、図18を用いて説明した平面的な奥行き感とは、異なる効果のことである。
図31(b)は、図31(a)に示す領域(Z3)の拡大図であり、図31(d)は、図31(a)に示す領域(Z4)の拡大図である。図31(b)に示すように、第一の画像(3)は、複数の第一の画線(4)と、図31(d)に示すように、複数の第二の画線(6)を有しており、隣り合う第一の画線(4)同士及び隣り合う第二の画線(4)同士が相似形に形成される。なお、複数の第一の画線(4)及び複数の第二の画線(6)の構成及び作製方法は、前述した第一実施形態及び第二実施形態と同一であることから、説明を省略する。
前述した第三実施形態においても、複数の第一の画線(4)は相似形であったが、第四実施形態においては、更に、隣り合う二つの第一の画線(4)において、基準線(H1)が最も近似した、異なる長さであることを特徴とする。
詳細な視認原理については後述するが、第一の画像(3)において、複数の第一の画線(4)から成る領域は、基材(2)の平面に対して、手前に視認され、複数の第二の画線(6)から成る領域は、基材(2)の平面に対して、奥に視認される。
図31(c)は、図31(b)に示す、基材(2)の平面に対して、手前に視認される、複数の第一の画線(4)のうち、隣り合う二つの第一の画線(4)を拡大した図であり、図31(e)は、図31(d)に示す、基材(2)の平面に対して、奥に視認される、複数の第二の画線(6)のうち、隣り合う二つの第二の画線(6)を拡大した図である。
第一の画像(3)が、第一の画線(4)及び第二の画線(6)から構成されているときは、第四実施形態においては、第二の画線(6)も、相似形であり、具体的には、複数の第二の画線(6)の始点角(θ1)が、全て同一であり、複数の第二の画線(6)の終点角(θ2)が、全て同一であり、更に、隣り合う二つの第二の画線(6)において、基準線(H4)が最も近似した、異なる長さであることをいう。また、始点角(θ1)と終点角(θ2)は、同じでも異なっていてもよい。以下、第四実施形態においては、第一の画像(3)が、第一の画線(4)及び第二の画線(6)から成り、複数の第一の画線(4)が相似形であり、複数の第二の画線(6)においても、相似形であるとする。
次に、第一の画線(4)及び第二の画線(6)を、隣り合う二つの第一の画線(4)又は二つの第二の画線(6)において、基準線(H1、H4)が最も近似した、異なる長さの相似形とする、二点の理由について、説明する。
一点目の理由は、第一の立体画像(5)に、立体的な奥行き感を付与するためである。 図31(b)に示した複数の第一の画線(4)は、いずれも、角度変化により、第一の始点(U1)から、第一の終点(D1)まで、円弧形状上を、光輝性を有して視認される箇所(輝点)が変化して視認されるが、基準線(H1)の短い、小さい円弧状の第一の画線(4)は、基準線(H1)の長い、大きな円弧状の第一の画線(4)よりも、奥行き感が小さく視認される。
基準線(H1)の長さで、奥行き感が異なる理由であるが、第一の立体画像(5)は、両眼視差の原理により視認されるが、両眼視差においては、一つの基準線(H1)を奥行き感の基準とすると、その基準線(H1)よりも、手前又は奥に視認されるためには、両眼視差が大きく作用する必要がある。
例えば、複数の第一の画線(4)において、基準線(H1)が同じ長さの第一の画線(4)を配置した場合、右目と左目には、それぞれ同じ大きさの第一の画線(4)が、異なる位置で視認されるため、肉眼では、第一の画線(4)が、奥行き感を有さずに視認される。よって、奥行き感を奏して視認されるためには、右目と左目に異なる画像が視認されるために、複数の第一の画線(4)において、基準線(H1)が異なる長さの、第一の画線(4)を配置する必要がある。
基準線(H1)の短い、小さい円弧状の第一の画線(4)と比べて、基準線(H1)の長い、大きな円弧状の第一の画線(4)は輝点の移動量は大きい。移動量が大きいと、移動量の小さい構成と比べ、始点側である第一の始点(U1)と、終点側である第一の終点(D1)において両眼視差が大きく作用する。
よって、両眼視差で視認した場合、基準線(H1)の短い、小さい円弧状の第一の画線(4)よりも、基準線(H1)の長い、大きい円弧状の第一の画線(4)の方が、奥行き感が大きく視認されるとともに、基準線(H1)の長さの異なる第一の画線(4)を配置することで、第一の立体画像(5)が、奥行き感を奏する。なお、奥行き感が大きいとは、一つの第一の画線(4)を基準としたときに、その第一の画線(4)よりも、より奥に、又は手前に第一の立体画像(5)が視認されることをいう。
以上、隣り合う第一の画線(4)同士及び第二の画線(6)同士を相似形とし、隣り合う二つの第一の画線(4)又は二つの第二の画線(6)において、基準線(H1、H4)が最も近似した、異なる長さとすることで、一つの画像が、徐々に手前、又は、奥に視認されることで、角度変化により視認される第一の立体画像(5)が、立体的な奥行き感を奏して視認することが可能となる。
二点目の理由は、観察角度により視認される第一の立体画像(5)を、滑らかに移動して視認させるためである。第一の画線(4)及び第二の画線(6)は、基準線(H1)に対する始点角(θ1)と終点角(θ2)が同一となる。同一でない場合、角度変化により視認される第一の立体画像(5)が、観察角度に応じて滑らかに移動して視認されず、立体像として認識される際に違和感を伴ってしまう。よって、滑らかに移動して視認させるためには、相似形とする必要がある。以上の理由から、第一の画線(4)及び第二の画線(6)は、相似形とする。
第四実施形態において、第一の立体画像(5)は、全ての第一の画線(4)上に配置された、第一の画像構成点(W1)と、全ての第二の画線(6)上に配置された、第二の画像構成点(W2)から成る。なお、第一の画像(3)が、複数の第一の画線(4)のみから成る場合、第一の立体画像(5)は、第一の画像構成点(W1)のみから成り、第一の画像(3)が、複数の第二の画線(6)のみから成る場合、第一の立体画像(5)は、第二の画像構成点(W2)のみから成る。
第一の画像構成点(W1)とは、複数配置された全ての第一の画線(4)において、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)からの距離の比率が同じ一点のことである。また、第二の画像構成点(W2)とは、複数配置された全ての第二の画線(6)において、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)からの距離の比率が同じ一点である。
図31(c)に示すように、第一の画像構成点(W1)は、第一の画線(4)の長さに対し、第一の始点(U1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y1)と、第一の終点(D1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y2)の比率が、全ての第一の画線(4)において、同一となることである。なお、第四実施形態において第一の画線(4)及び第二の画線(3)の長さとは、基準線(H1、H4)の長さではなく、円弧の長さのことである。 また、図31(e)に示すように、第二の画像構成点(W2)は、第二の画線(6)の長さに対し、第二の始点(U2)から第二の画像構成点(W2)までの距離(Y3)と、第二の終点(D2)から第二の画像構成点(W2)までの距離(Y4)の比率が、全ての第二の画線(6)において、同一となることである。
第一の立体画像(5)が、第一の画像構成点(W1)及び第二の画像構成点(W2)という二つの画像構成点から成る場合は、第二の画線(6)の長さに対し、第二の画線(6)上の第二の始点(U2)から第二の画像構成点(W2)までの距離(Y1)と、第二の終点(D2)から第二の画像構成点(W2)までの距離(Y2)の比率が、全ての第二の画線(6)で同一に形成されるとともに、第一の画線(4)の比率と同一とする。
例えば、図31(c)では、第一の画線(4−1)の長さを10mmとした場合、第一の始点(U1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y1)が4mmで、第一の終点(D1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y2)が6mmであり、第一の画線(4−1)の長さに対し、Y1:Y2は、2:3となる。
また、第一の画線(4−2)の長さを12mmとした場合、第一の始点(U1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y1)が4.8mmで、第一の終点(D1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y2)が7.2mmであり、第一の画線(4−2)の長さに対し、Y1:Y2は、2:3となる。よって、全ての第一の始点(U1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y1)と、第一の終点(D1)から第一の画像構成点(W1)までの距離(Y2)の比率は、第1の画線(3)の長さに対し、Y1:Y2が2:3となる。
同様に、例えば、第一の立体画像(5)が、第一の画像構成点(W1)と第二の画像構成点(W2)から成り、図31(e)に示す、第二の画線(6)の長さを8mmとした場合、第二の始点(U2)から第二の画像構成点(W2)の距離(Y1)が3.2mmで、第二の終点(D2)から第二の画像構成点(W2)の距離(Y2)が4.8mmである。よって、第二の画線(6)の長さに対し、Y1:Y2は、2:3となる。
前述した第一実施形態は、第一の画像(3)を、全て同一の円弧状画線である第一の画線(4)で形成することで、入射光に対する反射光は、円弧状画線の同じ位置が光って視認され、さらに観察角度の変化により、第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと徐々に光って視認される同じ位置が変化することで、図2に示した第一の立体画像(5)が、円弧形状と同一の軌跡で動的に視認される技術であった。
第四実施形態では、複数の第一の画線(4)及び複数の第二の画線(6)において、隣り合う第一の画線(4)同士及び隣り合う第二の画線(6)同士が相似形に形成され、更に、第一の画線(4)上の第一の画像構成点(W1)と、第二の画線(6)上の第二の画像構成点(W2)により、第一の画像(3)と異なる形状の第一の立体画像(5)を構成することで、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の、各始点(U1、U2)からの距離(Y1)と、各終点(D1、D2)からの距離(Y2)が変わっても、入射光に対して、第一の画像構成点(W1)及び第二の画像構成点(W2)が、光輝性を有して視認されることから、複数の第一の画線(4)及び第二の画線(6)において、第一の画像構成点(W1)及び第二の画像構成点(W2)から成る、第一の立体画像(5)を観察することが可能となる。
さらに、複数の第一の画線(4)及び第二の画線(6)を相似形とすることで、観察角度の変化により、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の長さが小さい場合、観察者に視認される第一の画線(4)及び第二の画線(6)上の正反射領域の観察角度に応じた移動量が小さく、反対に、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の長さが大きい場合、観察者に視認される、第一の画線(4)及び第二の画線(6)上の正反射領域の観察角度に応じた移動量が大きくなる。この観察角度に応じた移動量の大小は観察者には両眼視差の大小、つまり立体的な奥行きとして認識されることから、第一の立体画像(5)が、立体感を奏して視認することが可能となる。
なお、図31に示した、第一の画像(3)は、観察角度の変化により、基材(2)の平面に対して、手前に視認される複数の第一の画線(4)から成る領域と、基材(2)の平面に対して、奥に視認される複数の第二の画線(6)から成る領域で構成されていたが、これに限らず、隣り合う画線同士が相似形に形成されていれば、一方の画線のみで構成しても、立体的な、奥行き感を奏して視認することが可能となる。
例えば、第一の画像(3)を、隣り合う画線同士が相似形の第一の画線(4)のみで構成した場合、観察角度の変化により、基材(2)の平面に対して、手前のみに奥行き感を奏して視認することが可能となる。また、第一の画像(3)を、隣り合う画線同士が相似形の第二の画線(6)のみで構成した場合、観察角度の変化により、基材(2)の平面に対して、奥のみに奥行き感を奏して視認することが可能となる。
次に、第四実施形態の第一の画像(3)の作製方法について、図33乃至図39を用いて説明する。なお、前述した第一実施形態の第一の画像(3)の作製方法と同様の手段については、説明を省略する。
図33は、第四実施形態の形成体(1)の作製手順を示すフローチャートである。第四実施形態の作製手順では、第一実施形態と異なる点が二点あり、一点目が、画線位置設定工程(STEP4)における配置位置であり、二点目が、第四実施形態の特徴点である、角度変化により視認される画像の奥行き感を設定するための奥行き設定工程(STEP7)を、更に設ける点である。
第四実施形態における画像位置設定工程(STEP4)について、図34に示す、画線位置設定工程(STEP4)の詳細を示す模式図を用いて説明する。
まず、図34(a)に示すように、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)を抽出する。
次に、抽出した第一の輪郭部(5E)に、画線作製工程(STEP3)であらかじめ作製した第一の画線(4)の第一の画像構成点(W1)と、第二の画線(6)の第二の画像構成点(W2)の配置位置を設定する。なお、配置位置を設定する方法は、前述した第一実施形態の作製方法における第一の輪郭部(5E)と同様に、直線を用いて設定する。
まず、図34(b)に示すように、処理部(102)で、第一の輪郭部(5E)上の任意の二点を基準点(O1、O2)として設定する。なお、二つの基準点(O1、O2)は、異なる位置に設定する。
次に、図34(c)に示すように、画線を配置する際の第一の輪郭部(5E)上の基準位置を示す配置基準線(L1)を設定する。配置基準線(L1)は、二点の基準点(O1、O2)を通る直線である。次に、配置基準線(L1)を、第一のピッチ(P1)で第一の方向(X1)に複数配置する。
なお、配置基準線(L1)を配置する第一のピッチ(P1)は、前述した第一実施形態と同一であることから、説明を省略する。
第四実施形態では、第一の輪郭部(5E)と、複数配置する配置基準線(L1)の交差する位置が、全ての第一の画線(4)及び第二の画線(6)において、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)からの距離の比率と、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)からの距離の比率が同じ一点である、第一の画像構成点(W1)及び第二の画像構成点(W2)の配置位置となる。
詳細には、観察時の照明光の位置を固定位置とした場合、基材(2)と基材(2)に対する観察角度の角度差と、第一の画線(4)の基準線(H1)と第一の画線(4)に対する接線の角度差が等しい角度となる位置を、第一の画像構成点(W1)及び第二の画像構成点(W2)の配置位置に設定する。
例えば、図35(a)に示すように、観察時の照明光(Q)の位置を、基材(1)の真上の固定位置とし、基材(2)に対する観察角度が角度(A)とした場合を説明する。なお、基材(2)に対し、観察角度(A)は、垂直(90度)であるが、第四実施形態では、図35(b)に示すように、第一の画線(6)の基準線(H1)と、第一の画線(4)の頂点(T1)から、第一の画線(6)基準線(H1)に対して垂直に交わる垂線(HL1)との成す角度を基準の角度(0度)と設定する。よって、図35(a)は、基材(2)と基材(2)に対する観察角度(A)の角度差が0度となる。よって、図35(b)に示すように、第一の画線(4)の基準線(H1)と、第一の画線(4)に対する接線(HW1)の角度差が0度となる位置に、第一の画像構成点(W1)を配置する。
また、他の例としては、図36(a)に示すように、基材(2)に対する観察角度(B)を45度とした場合、図35(b)で前述した、第一の画線(4)の基準線(H1)と垂線(HL1)との成す基準の角度(0度)に対し、第一の画線(4)に対する接線(HW2)からの垂線(HL2)の角度差が45度となる第一の画線(4)上の位置に、第一の画像構成点(W1)を配置する。
次に、第一実施形態と異なる点であり、第四実施形態の特徴点である、角度変化により視認される画像の奥行き感を設定するための奥行き設定工程(STEP7)について、図37及び図38に示す、奥行き設定工程(STEP7)の詳細を示す模式図を用いて説明する。
まず、立体位置設定工程(STEP7−1)として、処理部(102)で、ユーザが、角度変化により第一の原画像(5G)のどの位置を立体的な奥行き感を奏して視認可能とするのか、設定する。
図37は、立体位置設定工程(STEP7−1)を示す模式図である。前述した、図34(a)に示した、第一の原画像(5G)は、図37に示すように、立方体(5R)を、観察角度Cから視認した斜視図である。例えば、観察角度の変化により、立方体(5R)の上面である第一の四角形(5G−1)と、立方体(5R)の下面である第二の四角形(5G−2)が、基材(2)の平面よりも第一の四角形(5G−1)が手前に視認でき、第二の四角形(5G−2)が奥に視認でき、立方体(5R)の高さである四本の高さ線(5L)は、第一の四角形(5G−1)と接する箇所(5LP−1)から、第二の四角形(5G−2)と接する箇所(5LP−2)へと、基材(2)の平面の手前から奥へ延びた、基材(2)の手前と奥に視認可能な立体形状の立方体(5R)と設定する。
次に、画線選択工程(STEP7−2)として、処理部(102)で、立体位置設定工程(STEP7−1)において設定した、奥行き感を奏するために、画像位置設定工程(STEP4)で抽出した第一の輪郭部(5E)上に、第一の画線(4)と第二の画線(6)のどちらを配置するか設定する。
第二実施形態において前述したとおり、第一の画線(4)の第一の頂点(T1)と第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、点対称に配置されて成ることで、第一の画線(4)は、上方である第一の方向(X1)に膨らみを有する円弧状に形成され、第二の画線(6)は、第一の画線(4)と逆方向である下方に膨らみを有する円弧状に形成されていることから、基材(2)の平面に対し、第一の画線(4)が手前に視認され、第二の画線(6)が奥に視認される。よって、観察時に視認される立体像である第一の立体画像(7)において、基材(2)の平面に対し、手前に視認させる箇所は、第一の画線(4)を配置するように設定し、奥に視認させる箇所は、第二の画線(6)を配置するように設定する。
なお、立体位置設定工程(STEP7−1)において、第一の原画像(5G)を、基材(2)の平面に対して、手前のみに奥行き感を有すると設定した場合、画線選択工程(STEP7−2)において、第一の画線(4)のみを配置するように設定する。また、立体位置設定工程(STEP7−1)において、第一の原画像(5G)を、基材(2)の平面に対して、奥のみに奥行き感を有すると設定した場合、画線選択工程(STEP7−2)において、第二の画線(6)のみを配置するように設定する。
次に、平面位置設定工程(STEP7−3)として、処理部(102)で、次に、基材(2)の平面位置を設定する。
図38は、平面位置設定工程(STEP7−3)及び後述する画線大きさ設定工程(STEP7−4)を示す模式図である。図38における立方体側面図(T)は、図37に示した、第一の原画像(5G)である、立方体(5R)を観察角度Dから視認した側面図である。基材(2)の平面位置は、第一の原画像(5G)が基材(2)に対して、手前又は奥に視認するための基準となる位置である。例えば、図38では、立方体側面図(T)に対し、高さ線(5L)の中間点(5LP)を、基材(2)の平面位置として設定する。
次に、画線大きさ設定工程(STEP7−4)として、処理部(102)で、第一の輪郭部(5E)上に配置する、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の大きさを設定する。
まず、第一の原画像(5G)である立方体(5R)を構成する上面である、第一の四角形(5G−1)を構成する、第一の画線(4)の大きさを設定したのち、第二の四角形(5G−2)を構成する第二の画線(6)の大きさを設定する。なお、二つの四角形(5G−1、5G−2)を構成する第一の画線(4)及び第二の画線(6)の大きさは、高さ線(5L)と同様に特に制限はないが、前述した、高さ線(5L)を構成する第一の画線(4)及び第二の画線(6)と同様の理由から、図38に示すように、中間点(5LP)を通る中間線(5LR)を中心として対向して配置した、第一の画線(4)と第二の画線(6)を、同一とすることが、好ましい。
なお、注意点としては、図38に示すように、第一の四角形(5G−1)と、高さ線(5L)との接点(5LP−1)上に配置する第一の画線(4−1)は、第一の四角形(5G−1)を構成する画線と、高さ線(5L)を構成する画線の両方を兼ね備える必要がある。よって、第一の画線(4−1)と隣り合う、高さ線(5L)を構成する第一の画線(4−2)と、相似形となるように、大きさを適宜設定する。同様に、第二の四角形(5G−2)と、高さ線(5L)との接点(5LP−2)上に配置する第二の画線(6−1)は、第二の四角形(5G−2)を構成する画線と、高さ線(5L)を構成する画線の両方を兼ね備える必要があることから、第二の画線(6)と隣り合う、高さ線(5L)を構成する第二の画線(6−2)と、相似形となるように、大きさを適宜設定する。
次に、第一の原画像(5G)のうち、高さ線(5L)を構成する、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の大きさを設定する。
立方体(5R)の高さである、四本の高さ線(5L)を、第一の四角形(5G−1)との接点(5LP−1)から、第二の四角形(5G−2)との接点(5LP−2)へと、基材(2)の平面の手前から奥へ延びているように視認させるためには、高さ線(5L)に対して中間点(5LP)より上方(5LU)に、立方体(5R)の上面である第一の四角形(5G−1)に向かい、複数の第一の画線(4)の第一の頂点(T1)が、第一の方向(X1)となるように、第一の画線(4)の大きさを、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)の距離を、線形に徐々に大きく又は小さく設定する。線形に大きく又は小さく設定することで、隣り合う前記第一の画線(4)同士が相似形に設定する。
線形に徐々に大きく又は小さく設定するとは、高さ線(5L)において、基材(2)の平面位置となる中間点(5LP)から最も離れた箇所に配置する第一の画線(4)及び第二の画線(6)が、複数の第一の画線(4)及び複数の第二の画線(6)において、最も大きく又は最も小さく、基材(2)の平面位置となる中間点(5LP)に最も近い箇所に配置する第一の画線(4)及び第二の画線(6)が、最も小さく又は最も大きくなるように、上方(5LU)から下方(5LD)に配置する第一の画線(4)及び第二の画線(6)の大きさを相対的に変えて設定することをいう。
例えば、図38では、基材(2)の平面位置となる中間点(5LP)から最も離れた箇所である第一の四角形(5G−1)と、高さ線(5L)との接点(5LP−1)上に配置する第一の画線(4−1)と、第二の四角形(5G−2)と、高さ線(5L)との接点(5LP−2)上に配置する第二の画線(6−1)を、5mmの長さとし、基材(2)の平面位置となる中間点(5LP)に最も近い箇所に配置する、第一の画線(4−7)及び第二の画線(6−7)を1mmの長さとした場合、立方体(5R)の高さ線(5L)には、第一の四角形(5G−1)との接点(5LP−1)から中間点(5LP)に向かって、また、第二の四角形(5G−2)との接点(5LP−2)から中間点(5LP)に向かって、5mmの円弧を線形に徐々に小さくして1mmの円弧となるように配置する。
高さ線(5L)に対して中間点(5LP)より下方(5LD)には、立方体(5R)の下面である第二の四角形(5G−2)に向かい、複数の第二の画線(6)の第二の頂点(T2)が、第一の頂点(T1)と点対称、かつ、第二の頂点(T2)同士が同一方向となるように、第二の画線(6)の大きさを、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)の距離を、線形に徐々に大きく設定する。
なお、第一の画線(4)と第二の画線(6)の大きさに特に制限はないが、中間点(5LP)を通る中間線(5LR)を中心として対向して配置した、第一の画線(4)と第二の画線(6)を、図39に示すように、同一に設定することが、好ましい。同一とすることで、観察角度の変化により視認される第一の立体画像(5)を構成する第一の四角形(5G−1)と第二の四角形(5G−2)の、立体的な奥行き感が、基材(2)の平面から同程度離れて視認されることで、角度変化により視認される立体画像が、ゆがむことなく視認することが可能となる。
次に、画線データ作製工程(STEP5)として、処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)において設定した配置位置に、奥行き設定工程(STEP7)において奥行きを設定した第一の画線(4)を複数配置して画線データを作製する。
図39は、第四実施形態の画線データ作製工程(STEP5)の詳細を示す模式図である。
まず、図39(a)を用いて、第一の輪郭部(5E)における第一の四角形(5G−1)に対する、第一の画線(4)の配置方法を説明する。なお、前述のとおり、第一の輪郭部(5E)は、画線位置設定工程(STEP4)で抽出した、第一の原画像(5G)の輪郭であることから、同一形状の立方体である。第一の四角形(5G−1)の全体が、基材(2)よりも手前に見えるために、第一の四角形(5G−1)は、画線位置設定工程(STEP4)において設定した画線位置に、奥行き設定工程(STEP7)において奥行きを設定した第一の画線(4)を配置する。第一の画線(4)における第一の始点(U1)と第一の終点(D1)からの距離の比率が同じ一点である第一の画像構成点(W1)に、第一の頂点(T1)の方向を、全て第一の方向(X1)とし、第一の画線(4)を配置する。
次に、図39(b)を用いて、第一の輪郭部(5E)である立方体を構成する下面である第二の四角形(5G−2)に対する、第二の画線(6)の配置方法を説明する。第二の四角形(5G−2)は、画線位置設定工程(STEP4)において設定した画線位置に、奥行き設定工程(STEP7)において奥行きを設定した第二の画線(6)を配置する。第二の四角形(5G−2)の全体が、基材(2)よりも奥に見えるために、同一の第二の画線(6)を、第一の頂点(T1)と第二の頂点(T2)が、点対称となるように、配置する。
最後に、図39(c)を用いて、第一の輪郭部(5E)である立方体を構成する高さ線(5L)に対する、第一の画線(4)及び第二の画線(6)の配置方法を説明する。高さ線(5L)には、画線位置設定工程(STEP4)において設定した画線位置に、奥行き設定工程(STEP7)において奥行きを設定した第一の画線(4)及び第二の画線(6)を配置する。
なお、中間点(5LP)より、上方(5LU)には、第一の輪郭部(5E)である立方体を構成する上面である第一の四角形(5G−1)に向かい、複数の第一の画線(4)の第一の頂点(T1)が、第一の方向(X1)となるように、第一の画線(4)の大きさを、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)の距離が、徐々に大きくなるように、かつ、隣り合う前記第一の画線(4)同士を相似形で配置する。
同様に、中間点(5LP)より、下方(5LD)には、立方体を構成する下面である第二の四角形(5G−2)に向かい、複数の第二の画線(4)の第二の頂点(T2)が、第一の方向(X1)と点対称のほぼ180度異なるように、第二の画線(6)の大きさを、第二の始点(U2)と第二の終点(D2)の距離が、徐々に大きくなるように、かつ、隣り合う第二の画線(6)同士を相似形で配置する。
なお、複数配置された第一の画線(4)は、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ基準線(H1)を同じ方向とし、複数の第一の画線(4)における始点角(θ1)は、同一に設定する。また、複数の第一の画線(4)における終点角(θ2)も、同一に設定するが、始点角(θ1)と終点角(θ2)は同じでも異なっていてもよい。
次に、第四実施形態における形成体(1)の視認原理について説明する。
図40は、第2の観察角度(E2)の範囲内における観察角度の変化に対する、第四実施形態の第一の画像(3)の視認状態を示す模式図である。なお、第2の観察角度(E2)は、図12(b)で前述した範囲と同様である。観察角度(θ4)の範囲内で、基材(2)に対する観察角度を、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、観察角度の変化に伴い、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと画線上を徐々に変化する。
例えば、第一の画線(4)の第一の始点(U1)が光輝性を有して視認される観察角度では、図40(a)に示すように、全ての第一の画線(4)の第一の始点(U1)により形成された、第一の画像(3)とは異なる形状の第一の立体画像(5)が視認される。
次に、観察角度を第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化させて観察した場合、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が、第一の画線(4)の第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へと画線上を徐々に変化することで、図40(a)、図40(b)及び図40(c)と順に示すように、第一の立体画像(5)を形成する。第一の立体画像(5)は、第一の画線(4)上を第一の始点(U1)から第一の終点(D1)へ、徐々に形状を変えて視認される。
その際、隣り合う第一の画線(4)同士及び隣り合う第二の画線(6)同士を相似形に形成することで、第一の立体画像(5)の形状変化が、立体物を観察した場合と同様の両眼視差を伴うことから、第一の立体画像(5)が、立体的な奥行き感を奏して視認される。
以下、前述の発明を実施するための最良の形態にしたがって、具体的に作製した立体視可能な印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
以下、実施例1を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。実施例1として図1に示した形成体(1)を、図3のシステム(S)を用いて作製した。
まず、原画像設計工程(STEP1)として、処理部(102)で、第一の原画像(5G)を作製した。第一の原画像(5G)は、高さ13.8mmの円形状の画像データとした。
次に、軌跡設定工程(STEP2)として、処理部(102)で、第一の軌跡(4D)を設定した。第一の軌跡(4D)は、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ直線である基準線(H1)とし、第一の始点(U1)における、始点角(θ1)を45度に設定し、第一の終点(D1)における、終点角(θ2)を45度に設定した。
次に、画線作製工程(STEP3)として、処理部(102)で、第一の軌跡(4D)に対応した第一の画線(4)を作製した。第一の軌跡(4D)に対し、基準線(H1)の長さは5mmに設定した。
次に、画線位置設定工程(STEP4)として、処理部(102)で、第一の原画像(5G)の輪郭である第一の輪郭部(5E)を抽出した後、輪郭部に作製した第一の画線(4)の配置位置を設定した。配置位置は、図9に示したように、円形を用いて設定した。
配置基準円(R1)の直径は、600μmに設定し、第一の画線(4)の画線幅は200μmに設定した。
次に、画線データ作製工程(STEP5)として処理部(102)で、画線位置設定工程(STEP4)において設定した配置位置に、画線作製工程(STEP3)で作製した第一の画線(4)を複数配置して画線データを作製した。
最後に、画線形成工程(STEP6)として、画線データ作製工程(STEP5)で作製した画線データを基に、基材(2)上の一部に、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の特性を有し、基材(2)に対して凹形状又は凸形状の断面形状を有する複数の第一の画線(4)を形成することで、第一の画像(3)を有する形成体(1)を作製した。
第一の画線(4)を形成する材料は、表1に示すパールインキとし、スクリーン印刷機を用いて基材(2)上にスクリーン印刷により印刷することで、第一の画像(3)を形成した。なお、基材(2)はコート紙とし、第一の画線(4)を印刷する際には、公知の製版方法により作製した、スクリーン印刷版面を用いた。
実施例1にて作製した形成体(1)を、第1の観察角度(E1)から観察したところ、第一の画線(4)は光輝性を有さない画線として視認できた。よって、複数の第一の画線(4)で形成された第一の画像(3)は、平面的な彩紋模様として視認できた。
次に、形成体(1)を、第2の観察角度(E2)から観察したところ、第一の画線(4)は光輝性を有する画線として視認できた。左目(L)で視認できる第一の画線(4)と、右目で視認できる第一の画線(4)は、第一の始点(U1)と第一の終点(D1)を結ぶ直線である基準線(H1)に対して、位相差を持った画線として視認できることから、第2の観察角度(E2)では、第一の画像(3)とは異なる形状の円形状の第一の立体画像(5)が潜像として出現した。また、第一の立体画像(5)は両眼視差により、立体的な画像として視認できた。
さらに、第一の画線(4)が光輝性を有する画線として視認される領域(θ4)内において、基材(2)に対する観察角度を、図12(b)に示した、第2aの観察角度(E2a)から第2bの観察角度(E2b)へと連続的に変化して観察した場合、観察角度の変化に伴い、第一の画線(4)における光源(Q)からの入射光を反射する位置が始点から終点へと徐々に異なり、第一の立体画像(5)が、立体的かつ第一の画線(4)の円弧形状に沿って、連続的に動的に視認できた。