以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置及び電源システムを説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、装置本体100と、モニタ200と、入力装置300とを有する。
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体100と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
入力装置300は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有する。入力装置300は、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
モニタ200は、超音波診断装置の操作者が入力装置300を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。図1に示す装置本体100は、2次元の反射波信号に基づいて2次元の超音波画像データを生成可能であり、3次元の反射波信号に基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。
装置本体100は、図1に例示するように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ生成部140と、画像メモリ150と、内部記憶部160と、制御部170と、直流電源部180とを有する。なお、装置本体100が有する構成要素のうち、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ生成部140と、画像メモリ150と、内部記憶部160と、制御部170とを総称して、「処理装置」と称する場合がある。
送受信部110は、後述する制御部170の指示に基づいて、超音波送受信を制御する。送受信部110は、パルス発生器、送信遅延回路、超音波パルス送信回路等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、超音波パルス送信回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。
すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。また、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、超音波送信の深さ方向における集束点(送信フォーカス)の位置を制御する。
なお、送受信部110は、後述する制御部170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、後述する直流電源部180において、瞬間的に設定値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器、直交検波回路等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行う。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。そして、直交検波回路は、加算器の出力信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(以下、IQ信号と記載する)を反射波データとして図示しないフレームバッファに格納する。なお、直交検波回路は、加算器の出力信号を、RF(Radio Frequency)信号に変換した上で、図示しないフレームバッファに格納してもよい。
送受信部110は、被検体P内の2次元領域を走査(2次元走査)する場合、超音波プローブ1から被検体P内の2次元領域に超音波を送信させる。そして、送受信部110は、超音波プローブ1が受信した2次元領域の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部110は、被検体P内の3次元領域を走査(3次元走査)する場合、超音波プローブ1から被検体P内の3次元領域に超音波を送信させる。そして、送受信部110は、超音波プローブ1が受信した3次元領域の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
Bモード処理部120及びドプラ処理部130は、送受信部110が反射波信号から生成した反射波データに対して、各種の信号処理を行なう信号処理部である。Bモード処理部120は、送受信部110から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データを周波数解析することでドプラシフトを検出し、その検出結果に基づいて生体内における移動体の情報(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や心壁等の組織、造影剤である。ドプラ処理部130は、例えば、生体内における単数又は複数の計測位置に対応するドプラシフトの検出結果に基づく波形画像を表示する機能(パルスドプラモード)と、生体内における所定領域内の複数の計測位置に対応するドプラシフトの検出結果に基づくカラー画像を表示する機能(カラードプラモード)とを備える。Bモード処理部120やドプラ処理部130は、上述したフレームバッファを介して反射波データを取得する。
なお、図1に例示するBモード処理部120及びドプラ処理部130は、2次元空間内の複数位置に対応する反射波データ及び3次元空間内の複数位置に対応する反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部120は、2次元空間内の複数位置に対応する反射波データから2次元空間内の複数位置に対応するBモードデータを生成し、3次元空間内の複数位置に対応する反射波データから3次元空間内の複数位置に対応するBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部130は、2次元空間内の複数位置に対応する反射波データから2次元空間内の複数位置に対応するドプラデータを生成し、3次元空間内の複数位置に対応する反射波データから3次元空間内の複数位置に対応するドプラデータを生成する。
画像データ生成部140は、Bモード処理部120及びドプラ処理部130が生成したデータから超音波画像データを生成する。画像データ生成部140は、Bモード処理部120が生成した2次元空間内の複数位置に対応するBモードデータから表示用の2次元Bモード画像データを生成する。また、画像データ生成部140は、ドプラ処理部130が生成した2次元空間内の複数位置に対応するドプラデータから表示用の2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像データ生成部140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像データ生成部140は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像データ生成部140は、スキャンコンバート以外に、種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像データ生成部140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像データ生成部140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像データ生成部140は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データから、表示用の2次元超音波画像データを生成する。
更に、画像データ生成部140は、Bモード処理部120が生成した3次元空間内の複数位置に対応するBモードデータに対して座標変換を行なうことで、表示用の3次元Bモード画像データを生成する。また、画像データ生成部140は、ドプラ処理部130が生成した3次元空間内の複数位置に対応するドプラデータに対して座標変換を行なうことで、表示用の3次元ドプラ画像データを生成する。なお、「3次元Bモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」と呼ぶ。
更に、画像データ生成部140は、ボリュームデータをモニタ200にて表示するための2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して各種レンダリング処理を行なう。画像データ生成部140が行なうレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planar Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像データ生成部140が行なうレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
画像メモリ150は、画像データ生成部140が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、Bモード処理部120やドプラ処理部130が生成したデータを記憶することも可能である。このドプラ処理部130が生成したデータには、血流情報が含まれる。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像データ生成部140を経由して表示用の超音波画像データとなる。
内部記憶部160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部160が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。また、内部記憶部160は、外部装置から図示しないインターフェースを経由して転送されたデータを記憶することも可能である。
制御部170は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部170は、入力装置300を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部160から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130及び画像データ生成部140の処理を制御する。また、制御部170は、画像メモリ150や内部記憶部160が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ200にて表示するように制御する。
直流電源部180は、複数のスイッチング電源を備え、交流を直流に変換する。そして、直流電源部180は、装置本体100の送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像データ生成部140と、画像メモリ150と、内部記憶部160と、制御部170とに、直流を供給する。なお、スイッチング電源において、交流入力側のことを「1次側」と称し、直流出力側のことを「2次側」と称す。
このような構成にされる超音波診断装置では、例えば、Bモード、パルスドプラモード、カラードプラモード、連続波ドプラモードなどの撮像モードで超音波画像データが生成される。
ここで、連続波ドプラモードは、ノイズ感受性が高い撮像モードである。このため、連続波ドプラモードでは、ノイズを抑えるために、各スイッチング電源それぞれでスイッチングパルス(「駆動パルス」とも言う)の周波数を連続波ドプラモードの送受信周波数の整数分の1(例えば連続波ドプラモードの送受信周波数が2MHzのときに250KHz)に揃えることでノイズの抑制が見込まれる。さらに各スイッチング電源のオン・オフのタイミングは一致させない。すなわち、スイッチングパルスの位相をずらすことより更なるノイズの抑制が見込まれる。
一方、連続波ドプラモード以外の撮像モードでも、各スイッチング電源のオン・オフのタイミングを分散させることによりノイズの抑制が見込まれる。例えば、スイッチング電源それぞれでスイッチングパルスの周波数やスイッチングパルスの位相をずらすことでノイズの抑制が見込まれる。このようなことから、スイッチング電源では、スイッチングパルスの周波数やスイッチング開始位相を高い精度で制御することが望まれる。
ところで、A/Dコンバータを内蔵したDSP(Digital Signal Processor)を用いて、スイッチングパルスのパルス幅変調(PWM:pulse width modulation)制御を行う電源が実用化されつつある。
DSPは、デジタル化されたスイッチング電源内部の出力電圧値と出力電流値とに基づいて、スイッチングパルス幅を導出し、スイッチングパルスを出力するまでのフィルタ特性を任意に設計可能である。このため、DSPは、負荷が急変した際の電源出力の応答特性を改善可能であると考えられている。更に、DSPは、同期整流のための整流素子の開閉をDSP内部クロックの精度(基準クロックの数倍)で制御できることから、この開閉タイミングを最適化することにより、電源の変換効率を改善可能であると考えられている。
更に、このようなDSPを用いたスイッチング電源を複数用いた場合、各スイッチング電源のスイッチング開始位相を高い精度で制御することが可能である。このことから、DSPは、スイッチングパルスのタイミングを正確にずらし、同一のタイミングでのスイッチングを避けることにより、直流電源部180で生み出すスイッチングパルスの周波数及びスイッチングパルスの高調波帯域のスイッチングノイズを低減することが可能であると期待される。また、これにより、DSPは、超音波画像の虚像を防止するのみならず、超音波診断装置から空中への不要な輻射などの低減を高い精度で実現可能であると期待される。
そこで、第1の実施形態に係る直流電源部180は、交流を直流に変換するコンバータに供給する駆動パルスのパルス幅を制御する駆動パルス制御部としてのDSPを備える。そして、第1の実施形態に係る直流電源部180では、DSPに制御信号を供給する演算処理部としてのマイコンと、DSPとが同一の基準電位上に配置される。そして、第1の実施形態に係る直流電源部180は、DSPと、当該DSPが制御対象とするコンバータとの間に設けられ、駆動パルスの周波数と、当該駆動パルスの高調波帯域とを電気的に分離する分離部を備える。
次に、図2を用いて直流電源部180について説明する。図2は、第1の実施形態に係る直流電源部180の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、直流電源部180は、力率改善回路401と、絶縁コンバータ402〜404と、DSP405〜408と、マイコン409と、非絶縁コンバータ410と、リニアレギュレータ411と、分離部412〜414と、絶縁部415とを備える。この直流電源部180は、装置本体100が有する各部(処理装置500)に直流を供給する。なお、図2にでは、処理装置500が有する各部のうち送受信部110のみ図示している。また、図2では、送受信部110が有する構成部のうち超音波パルス送信回路のみ図示している。また、図2では、直流電源部180が有する機能のうち、送受信部110に直流を供給する構成のみを図示している。なお、直流電源部180が有する絶縁コンバータ及びDSPの数は、図2に示す数に限定されるものではない。また、処理装置500のうち、送受信部110以外の各部には、一般的に、各部ごとに配置された絶縁コンバータ1つ及びDSP1つが直流を各部に供給する。
力率改善回路401は、電源の力率を1に近づける回路であり、入力された交流電源の力率を改善して、絶縁コンバータ402〜404に交流を供給する。
絶縁コンバータ402は、スイッチング電源であり、駆動回路402aと、絶縁部402b〜402cと、平滑回路402dと、制御回路402eと、1次側制御電源生成回路402fとを有する。絶縁コンバータ402において、絶縁部402bは、1次側と2次側とを絶縁する。この絶縁部402bは、例えばトランスである。なお、絶縁コンバータ402のことを「制御用コンバータ」とも言う。
この絶縁コンバータ402は、力率改善回路401から供給された交流を直流に変換して、マイコン409と、DSP406〜408とに直流を2次側制御用電源として供給する。例えば、絶縁コンバータ402において、スイッチング素子を有する駆動回路402aは、制御回路402eが出力する駆動パルスに応じてスイッチング素子のオンとオフとを切り替える。続いて、絶縁部402bは、絶縁された状態で交流を平滑回路402dに伝達する。そして、平滑回路402dは、伝達された交流を平滑化して2次側制御用電源を生成する。平滑回路402dにより生成された2次側制御用電源は、分離部412でノイズ分離されて、マイコン409と、DSP406〜408とに供給される。なお、分離部412は、例えばコイルである。また、分離部412のことを「ノイズ分離部」とも言う。
また、絶縁コンバータ402は、DSP405に1次側制御用電源を供給する。例えば、1次側制御電源生成回路402fは、絶縁部402bの1次側の補助巻線出力を入力とし、1次側制御電源を生成する。1次側制御電源生成回路402fは、制御回路402e及びDSP405に、生成した1次側制御電源を供給する。
平滑回路402dの出力電圧信号は、絶縁部402cを介して制御回路402eに帰還する。絶縁部402cは、例えばフォトカプラである。制御回路402eは、帰還された平滑回路402dの出力電圧信号により、平滑回路402dの出力電圧を一定に保つように駆動パルスのPWMを制御する。なお、絶縁コンバータ402の入力は、力率改善回路401の非動作時には比較的低い入力電圧となる。
DSP405は、1次側に配置したDSPであり、絶縁コンバータ402から供給される1次側制御用電源により作動する。DSP405は、力率改善回路401に供給する駆動パルスのPWMを制御する。例えば、DSP405は、図示しないA/Dコンバータを内蔵し、交流入力の波形を取り込むための入力電圧検出信号と出力電圧検出信号とを入力とする。そして、DSP405は、出力電圧を一定、かつ、入力電流波形が交流入力の波形と相似となるように駆動パルスのPWMを制御する。
また、DSP405は、駆動回路などの保護を行う。例えば、DSP405は、力率改善回路401、後述する絶縁コンバータ403の1次側の駆動回路403a、及び後述する絶縁コンバータ404の1次側の駆動回路404aの電流検出信号を監視する。なお、DSP405による駆動回路などの保護については後述する。また、DSP405のことを「監視制御部」とも言う。
このように、DSP405が力率改善回路401の制御、絶縁コンバータ403の駆動回路403a、及び絶縁コンバータ404の駆動回路404aの監視と保護とを兼ねることにより、直流電源部180は、使用するDSPの総量を減らすことができる。
なお、DSP405は、超音波診断装置の超音波パルスの送受信回路との間に絶縁コンバータ403及び絶縁コンバータ404を介して配置される。これによりDSP405のノイズは、超音波画像の虚像の原因にはなり難い。このため、DSP405は、自身で生成するクロックで動作する構成とされる。
絶縁コンバータ403は、スイッチング電源であり、駆動回路403aと、絶縁部403b〜403cと、平滑回路403dと、分離部403e〜403gと、AND回路403hとを有する。絶縁コンバータ403において、絶縁部403bは、1次側と2次側とを絶縁する。この絶縁部403bは、例えばトランスである。
この絶縁コンバータ403は、力率改善回路401から供給された交流を直流に変換して、送受信部110に直流を供給する。例えば、絶縁コンバータ403において、スイッチング素子を有する駆動回路403aは、DSP406が出力する駆動パルスに応じてスイッチング素子のオンとオフとを切り替える。続いて、絶縁部403bは、絶縁された状態で交流を平滑回路403dに伝達する。そして、平滑回路403dは、伝達された交流を平滑化する。平滑回路403dにより生成された直流は、分離部403gでノイズ分離されて、送受信部110に供給される。なお、分離部403gは、例えばコイルである。
また、平滑回路403dの出力電圧信号は、分離部403fを介して、スイッチングノイズを電気的に分離した状態で、DSP406に帰還する。この分離部403fは、例えば差動バッファである。
また、駆動回路403aのスイッチング素子を流れる電流は、電流検出信号として、DSP405に入力される。これにより、DSP405は、内蔵コンパレータ(もしくはA/D変換出力)の値に基づき、電流検出信号が予め設定された異常値を超えるか否かを判定する。DSP405は、電流検出信号が異常値を超えると判定した場合には、駆動パルスを停止するとともに、通信手段Cを介してマイコン409へ動作が異常状態であることを伝達する。なお、マイコン409は、異常状態であることが伝達された場合には、全電源システムの停止など、定められた異常状態の処理をおこなう。また、通信手段Cは、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)である。
DSP406(「駆動パルス制御部」とも言う)は、絶縁コンバータ403を制御するDSPである。DSP406と、絶縁コンバータ403との間では、分離部403e及び分離部403fによりスイッチングノイズが電気的に分離される。
例えば、DSP406は、絶縁コンバータ403から帰還した出力電圧信号に基づいて、絶縁コンバータ403に供給する駆動パルスのPWMを制御することで、絶縁コンバータ403の出力電圧が予め設定された値になるように制御する。ここで、DSP406は、帰還した出力電圧信号をA/D変換し、位相補償を施して、平滑回路403dの出力電圧が予め設定された値になるようにPWMを制御して駆動パルスを生成する。そして、DSP406は、絶縁部403cを介して駆動回路403aに生成した駆動パルスを伝達する。この絶縁部403cは、例えばフォトカプラである。
絶縁コンバータ404は、スイッチング電源であり、駆動回路404aと、絶縁部404b〜404cと、平滑回路404dと、分離部404e〜404gと、AND回路404hとを有する。絶縁コンバータ404において、絶縁部404bは、1次側と2次側とを絶縁する。この絶縁部404bは、例えばトランスである。
この絶縁コンバータ404は、力率改善回路401から供給された交流を直流に変換して、非絶縁コンバータ410と送受信部110とに直流を供給する。例えば、絶縁コンバータ404において、スイッチング素子を有する駆動回路404aは、DSP407が出力する駆動パルスに応じてスイッチング素子のオンとオフとを切り替える。続いて、絶縁部404bは、絶縁された状態で交流を平滑回路404dに伝達する。そして、平滑回路404dは、伝達された交流を平滑化する。平滑回路404dにより生成された直流は、分離部404gでノイズ分離されて、送受信部110に供給される。なお、分離部404gは、例えばコイルである。また、平滑回路404dは、非絶縁コンバータ410に直流を供給する。
また、平滑回路404dの出力電圧信号は、分離部404fを介して、スイッチングノイズを電気的に分離した状態で、DSP407に帰還する。この分離部404fは、例えば差動バッファである。
また、駆動回路404aのスイッチング素子を流れる電流は、電流検出信号として、DSP405に入力される。これにより、DSP405は、内蔵コンパレータ(もしくはA/D変換出力)の値に基づき、電流検出信号が予め設定された異常値を超えるか否かを判定する。DSP405は、電流検出信号が異常値を超えると判定した場合には、駆動パルスを停止するとともに、通信手段Cを介してマイコン409へ動作が異常状態であることを伝達する。なお、マイコン409は、異常状態であることが伝達された場合には、全電源システムの停止など、定められた異常状態の処理をおこなう。
DSP407(「駆動パルス制御部」とも言う)は、絶縁コンバータ404を制御するDSPである。DSP407と、絶縁コンバータ404との間では、分離部404e及び分離部404fによりスイッチングノイズが電気的に分離される。
例えば、DSP407は、絶縁コンバータ404から帰還した出力電圧信号に基づいて、絶縁コンバータ404に供給する駆動パルスのPWMを制御することで、絶縁コンバータ404の出力電圧が予め設定された値になるように制御する。ここで、DSP407は、帰還した出力電圧信号をA/D変換し、位相補償を施して、平滑回路404dの出力電圧が予め設定された値になるようにPWMを制御して駆動パルスを生成する。そして、DSP407は、絶縁部404cを介して駆動回路404aに生成した駆動パルスを伝達する。この絶縁部404cは、例えばフォトカプラである。
非絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411は、リニアアンプ型の発信回路であり、送受信部110の超音波パルス送信回路に直流を供給する。ここで、超音波パルス送信回路では電圧を変えて走査することから、非絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411は、超音波パルス送信回路に供給する電圧を可変制御する。なお、非絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411の出力電圧設定値は、通信手段A及び通信手段Bを介して、送受信部110から設定される。なお、通信手段A及び通信手段Bは、UARTである。なお、非絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411のことを、「可変電圧コンバータ」とも言う。
非絶縁コンバータ410は、駆動回路410aと、平滑回路410bと、分離部410c〜410fとを有する。この非絶縁コンバータ410は、絶縁コンバータ404から供給された直流を入力とし、リニアレギュレータ411に出力する。
例えば、非絶縁コンバータ410において、スイッチング素子を有する駆動回路410aは、駆動パルスに応じて、絶縁コンバータ404から供給されたスイッチング素子のオンとオフとを切り替える。続いて、平滑回路410bは、直流を平滑化する。平滑回路410bにより平滑化された直流は、分離部410fでノイズ分離されて、リニアレギュレータ411に出力される。なお、分離部410fは、例えばコイルである。
また、平滑回路410bの出力電圧信号は、分離部410cを介して、スイッチングノイズを電気的に分離した状態で、DSP408に帰還する。この分離部410cは、例えば差動バッファである。
また、駆動回路410aのスイッチング素子を流れる電流は、電流検出信号として、分離部410dを介してDSP408に入力される。なお、分離部410dは、例えば差動バッファである。これにより、DSP408は、内蔵コンパレータ(もしくはA/D変換出力)の値に基づき、電流検出信号が予め設定された異常値を超えるか否かを判定する。DSP408は、電流検出信号が異常値を超えると判定した場合には、駆動パルスを停止するとともに、通信手段Bを介してマイコン409へ動作が異常状態であることを伝達する。なお、マイコン409は、異常状態であることが伝達された場合には、全電源システムの停止など、定められた異常状態の処理をおこなう。
リニアレギュレータ411は、変換回路411aと、D/Aコンバータ411bと、分離部411c〜411eとを有する。このリニアレギュレータ411は、非絶縁コンバータ410から入力された電圧を、予め設定された電圧に変換して超音波パルス送信回路に供給する。
例えば、変換回路411aは、DSP408から出力される指示電圧信号に相関する直流出力をおこなう。ここで、DSP408からデジタル信号として出力される指示電圧信号は、分離部411eを介してノイズが分離され、D/Aコンバータ411bでデジタル信号からアナログ信号に変換されて変換回路411aに入力される。変換回路411aは、分離部を介することなく超音波パルス送信回路に直流を供給する。なお、分離部411eは、例えばフォトカプラである。また、分離部411eを差動バッファとした場合は、D/Aコンバータを介さなくてもよい。
リニアレギュレータ411の電流検出信号は、分離部411cを介してDSP408に入力され、出力電圧信号は、分離部411dを介してDSP408に入力される。これにより、DSP408は、内蔵するA/Dコンバータの値に基づき、電流検出信号が予め設定された異常値を超える場合には、駆動パルスを停止するとともに、通信手段Bを介してマイコン409へ動作が異常状態であることを伝達する。これにより、マイコン409は、全電源システムの停止など、定められた異常状態の処理をおこなう。なお、分離部411c及び分離部411dは、例えば差動バッファである。
DSP408は、非絶縁コンバータ410から帰還した出力電圧信号に基づいて、非絶縁コンバータ410に供給する駆動パルスのPWMを制御することで、非絶縁コンバータ410の出力電圧が予め設定された値になるように制御する。ここで、DSP408は、帰還した出力電圧信号をA/D変換し、位相補償を施して、平滑回路410bの出力電圧が予め設定された値になるようにPWMを制御して駆動パルスを生成する。そして、DSP408は、分離部410eを介して駆動回路410aに生成した駆動パルスを伝達する。この分離部410eは、例えばフォトカプラである。
また、DSP408は、リニアレギュレータ411の出力電圧が予め設定された値になるように指示電圧信号を出力する。なお、DSP408のことを、「可変電圧コンバータ制御用駆動パルス制御部」とも言う。
マイコン409(「演算処理部」とも言う)は、2次側制御電源が供給されると、DSP406〜408に動作のための共通の基準クロックを与える。ここで、マイコン409とDSP406〜408とが同一の基準電位(グランド)上に配置されているので、基準クロックの遅延は最小限に留められる。なお、図2中において、マイコン409とDSP406〜408とを囲む領域は、同一の基準電位(グランド)上に配置されていることを示す。
またマイコン409は、DSP406とDSP407とDSP408それぞれに位相トリガパルスを与え、通信手段Bを介して位相トリガパルスに対するスイッチング駆動パルスの遅延量を、DSP406とDSP407とDSP408のスイッチング駆動パルスの動作タイミングが同時にならないように設定する。これにより、同時にスイッチングノイズが発生しないので、超音波画像の虚像の発生を抑制できる。更に、マイコン409とDSP406〜408とが同一の基準電位(グランド)上に配置されているので、位相トリガパルスの遅延は最小限に留められる。この結果、DSP406とDSP407とDSP408とのスイッチング駆動パルスの動作タイミングを正確にずらすことが可能になる。
図3は、第1の実施形態に係る駆動パルスの動作タイミングの一例を示す図である。図3では、DSP406、DSP407及びDSP408により生成される駆動パルスについて説明する。図3に示すように、例えば、マイコン409は、時間td1でDSP406に駆動パルスを出力させた後、2クロック分遅延した時間td2でDSP407に駆動パルスを出力させる。なお、時間td2から1クロック分遅延した時間tf1で、DSP406は、駆動パルスを一時停止させる。
また、例えば、マイコン409は、時間td2でDSP407に駆動パルスを出力させた後、2クロック分遅延した時間td3でDSP408に駆動パルスを出力させる。なお、時間td3から1クロック分遅延した時間tf2で、DSP407は、駆動パルスを一時停止させる。このように、マイコン409は、DSP406とDSP407とDSP408とのスイッチング駆動パルスの動作タイミングを正確にずらすことが可能になる。
絶縁コンバータ403と絶縁コンバータ404と非絶縁コンバータ410との起動により送受信部110が動作を開始した場合、マイコン409には、分離部414を介してシステムクロックが供給される。マイコン409は、システムクロックの入力を検知すると、基準クロックをシステムクロックに同期させる。なお、分離部414は、例えば差動バッファである。
また、マイコン409と送受信部110とは、分離部413を介した通信手段Aにより相互に通信する。マイコン409は、送受信部110から、高調波が超音波パルスの送受信周波数に同期するスイッチング駆動パルス周波数の情報など高速の通信信号を受け取り、通信手段Bで接続されるDSP406とDSP407とDSP408に受け取った高速の通信信号を伝達する。これにより、絶縁コンバータ403と絶縁コンバータ404と非絶縁コンバータ410は、高調波が超音波パルスの送受信周波数に同期するスイッチング駆動パルス周波数で動作することができ、連続波ドプラモードでの超音波画像の虚像を避けることができる。なお、マイコン409とDSP406〜408とが同一の基準電位(グランド)上に配置されているので、高速の通信信号の遅延は最小限に留められる。また、分離部413は、例えばフォトカプラである。
また、マイコン409は、通信手段Bで接続されるDSP406、DSP407、及びDSP408と、絶縁部415の絶縁を介して通信手段Cで接続されるDSP405と相互に通信する。そして、マイコン409は、超音波診断装置の起動・停止スイッチを監視して、通信手段B及び通信手段Cを介して、絶縁コンバータ403と絶縁コンバータ404と非絶縁コンバータ410と、力率改善回路401と、絶縁コンバータ403の1次側の駆動回路403a及び絶縁コンバータ404の1次側の駆動回路404aの監視の起動・停止を制御する。なお、絶縁部415は、例えばフォトカプラである。
上述したように、第1の実施形態によれば、以下に説明するように、スイッチング電源の電源変換効率を安価に向上させることができる。例えば、直流電源部180では、マイコン409とDSP406〜408とが同一の基準電位(グランド)上に配置されている。これにより、DSP406〜408それぞれを同一のスイッチング周波数で動作させるための共通クロックや位相基準クロックなどの信号を直接相互に接続して少ない遅延時間とばらつきで伝達することができる。すなわち、直流電源部180では、マイコン409からの高速な信号をやりとり可能である。なお、1次側にDSP406〜408を配置した場合には、1次側と2次側との間に絶縁が必要であり、高速な信号をやり取り可能にするためには絶縁部に高価な部品を使用することになる。第1の実施形態によれば、2次側にDSP406〜408を配置することで、安価にマイコン409からの高速な信号をやりとり可能である。
また、直流電源部180では、絶縁コンバータ403と、DSP406との間に分離部403e及び分離部403fを配置する。これにより、絶縁コンバータ403とDSP406との間で、駆動パルスの周波数と駆動パルスの高調波帯域とを電気的に分離することが可能となる。また、同様に、直流電源部180では、絶縁コンバータ404と、DSP407との間に分離部404e及び分離部404fを配置する。これにより、絶縁コンバータ404とDSP407との間で、駆動パルスの周波数と駆動パルスの高調波帯域とを電気的に分離することが可能となる。また、同様に、直流電源部180では、非絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411と、DSP408との間に分離部410c、分離部410e、分離部411c、分離部411d及び分離部411eを配置する。これにより、絶縁コンバータ410及びリニアレギュレータ411とDSP408との間で、駆動パルスの周波数と駆動パルスの高調波帯域とを電気的に分離することが可能となる。
このように、第1の実施形態によれば、コモンチョーク等の分離部を設けることで超音波画面へのノイズを防止するとともに、各コンバータの駆動タイミングを分散させるための高速な位相制御を両立することができる。
また、直流電源部180では、1次側にDSP405を配置する。このDSP405は、力率改善回路401を制御するとともに、DSP403の駆動回路403aからの電流検出信号と、DSP404の駆動回路404aからの電流検出信号とを監視する。これにより、直流電源部180では、1次側に配置するDSPの数量を少なくすることができる。
(その他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、超音波プローブ1は、2次元上に配列された複数の圧電振動子を有するプローブ(2Dアレイプローブ)であってもよく、或いは、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであってもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、スイッチング電源の電源変換効率を安価に向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。