JP6578664B2 - ゴム栓の設計方法 - Google Patents

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Description

本発明は、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を設計するための方法に関する。
例えば、注射器に用いられる薬液を保管するために、薬液が充填される容器と、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓とが用いられている。ゴム栓に要求される性能としては、例えば、容器の内部を気密に保つ性能(気密性)が含まれる。
特許第3530832号公報
従来のゴム栓の設計方法では、試作されたゴム栓を容器の開口部に実際に嵌合させて、上記性能が評価されていた。しかしながら、ゴム栓の試作には、金型を製造する必要があるため、コストや時間が増大しやすい。このため、ゴム栓を効率良く設計することが難しいという問題があった。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、効率良く設計するための方法を提供することを主たる目的としている。
本発明に係るゴム栓の設計方法は、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、前記計算工程に先立ち、前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を無効にする工程と、前記容器モデルの前記開口部と前記ゴム栓モデルとを芯合わせして、前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとを重複させて配置する工程とが行われ、前記計算工程は、前記第1変形計算工程後、かつ、前記第2変形計算工程前に、前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を有効にする工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明は、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、前記容器及び前記ゴム栓の少なくとも一部を覆う凹部を含むキャップをさらに含み、前記コンピュータに、前記キャップを有限個の要素でモデル化したキャップモデルを入力する工程、並びに前記コンピュータが、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルに圧縮状態で取り付けられたときの前記キャップモデルの変形形状を計算するキャップモデル変形計算工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明に係る前記ゴム栓の設計方法において、前記キャップモデル変形計算工程は、前記キャップモデルを膨張させることにより、前記キャップモデルを変形させることなく、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルの少なくとも一部を、前記キャップモデルの凹部に配置する第3変形計算工程、並びに前記キャップモデルを収縮させることにより、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルの少なくとも一部に、前記キャップモデルを圧縮状態で取り付ける第4変形計算工程を含むのが望ましい。
本発明に係る前記ゴム栓の設計方法において、前記キャップモデル変形計算工程に先立ち、前記キャップモデルと前記容器モデルとの接触による変形、及び、前記キャップモデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を無効にする工程、並びに前記キャップモデルの凹部及び前記容器モデル、又は、前記キャップモデルの凹部及び前記ゴム栓モデルを芯合わせして、前記キャップモデルを、前記容器モデル又は前記ゴム栓モデルに重複させて配置する工程が行われ、前記キャップモデル変形計算工程は、前記第3変形計算工程後、かつ、前記第4変形計算工程前に、前記キャップモデルと前記容器モデルとの接触による変形、及び、前記キャップモデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を有効にする工程をさらに含むのが望ましい。
本発明は、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、前記コンピュータに、注射針を有限個の要素でモデル化した注射針モデルを入力する工程、及び前記コンピュータが、前記容器モデルに嵌合された前記ゴム栓モデルに、前記注射針モデルを押し込んで、前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明に係る前記ゴム栓の設計方法において、前記ゴム栓モデルは、前記容器モデルの開口部の上縁面に接する基部と、前記基部よりも前記ゴム栓モデルの軸芯側に形成され、かつ、前記注射針モデルが押し込まれる刺込部とを含み、前記刺込部の前記要素の大きさは、前記基部の前記要素の大きさよりも小であるのが望ましい。
本発明のゴム栓の設計方法は、コンピュータが、容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときのゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程を含んでいる。計算工程は、容器モデルを膨張させるか、又は、ゴム栓モデルを収縮させることにより、ゴム栓モデルを変形させることなく容器モデルの開口部に、配置する第1変形計算工程、及び容器モデルを収縮させるか、又は、ゴム栓モデルを膨張させることにより、ゴム栓モデルを容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含んでいる。
このように、本発明の設計方法では、ゴム栓を試作する必要がないため、金型を製造するためのコストや時間が増大することがない。従って、本発明の設計方法では、ゴム栓を効率良く設計することができる。
また、計算工程では、例えば、容器モデルの開口部にゴム栓モデルを押し込むことなく、容器モデルの開口部にゴム栓モデルを圧縮状態で嵌合させることができる。このため、ゴム栓モデルの局部的な大変形に起因する要素潰れを防ぐことができるため、ゴム栓モデルの嵌合状態を確実に計算することができる。従って、本発明のゴム栓の設計方法では、ゴム栓を効率良く設計することができる。
本実施形態のゴム栓の設計方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。 ゴム栓が嵌合された容器の部分拡大図である。 図2の分解図である。 ゴム栓の平面図である。 本実施形態の設計方法の具体的手順の一例を示すフローチャートである。 モデル入力工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 容器モデル、ゴム栓モデル及びキャップモデルを視覚化して示す図である。 ゴム栓モデルの斜視図である。 (a)は、重複して配置された容器モデル及びゴム栓モデルを示す断面図、(b)は、ゴム栓モデル及び膨張した容器モデルを示す断面図、(c)は、容器モデルの開口部に嵌合されたゴム栓モデルを示す断面図である。 本実施形態の計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 (a)は、重複して配置されたキャップモデル、容器モデル及びゴム栓モデルを示す断面図、(b)は、容器モデル、ゴム栓モデル及び膨張したキャップモデルを示す断面図、(c)は、容器モデル、ゴム栓モデル及び収縮したキャップモデルを示す断面図である。 本実施形態のキャップモデル変形計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 (a)、(b)は、注射針モデルが押し込まれたゴム栓モデルを示す断面図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のゴム栓の設計方法(以下、単に「設計方法」ということがある)は、容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法である。
図1は、本実施形態の設計方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含む。この本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2などが設けられる。なお、記憶装置には、本実施形態の設計方法を実行するための処理手順(プログラム)が予め記憶される。
図2は、ゴム栓が嵌合された容器の部分拡大図である。図3は、図2の分解図である。本実施形態の容器2は、注射器(図示省略)に用いられる薬液Mが充填されるバイアル瓶として構成されている。容器2は、例えば、耐薬品性に優れるガラスや、プラスチック等の樹脂等によって形成されている。本実施形態の容器2は、薬液Mが充填される収容部3と、収容部3の上方が開放された開口部4とを含んで構成されている。
収容部3は、上下にのびる軸芯CLを中心とした有底円筒状に形成された本体部3aと、本体部3aの上端から漸次縮径する縮径部3bとを含んで構成されている。開口部4は、軸芯CLを中心とした円筒状に形成されている。本実施形態の開口部4は、収容部3の縮径部3bの上端から上方にのびる筒部4aと、筒部4aの上端側でフランジ状にのびる鍔部4bとを含んで構成されている。
ゴム栓5は、容器2に充填された薬液Mを封止するためのものである。ゴム栓5は、例えば、ブチルゴム等の弾性体によって形成されている。図3に示されるように、本実施形態のゴム栓5は、基部6と、刺込部7と、栓部8とを含んで構成されている。図4は、ゴム栓5の平面図である。
図3及び図4に示されるように、基部6は、軸芯CLを中心とするリング状に形成されている。容器2に嵌合される前において、基部6の外径L2aは、容器2の鍔部4bの外径L1aよりも僅かに小に設定されている。基部6の下面は、容器2にゴム栓5が嵌合された状態において、容器2の開口部4の上縁面に接している。
基部6には、その上面から上方に突出する突起6tが設けられている。突起6tは、軸芯CL側から半径方向外側に向かって放射状にのびている。突起6tは、例えば、断面半球状に形成されている。このような突起6tは、後述するキャップ11とゴム栓5との間に隙間を形成する。このような隙間は、キャップ11を容器2及びゴム栓5から容易に取り外すのに役立つ。
刺込部7は、注射器の注射針(図示省略)が刺し込まれる部分である。刺込部7は、基部6よりも軸芯CL側に形成されている。注射針の刺し込み性を高めるために、刺込部7の厚さは、基部6の厚さよりも小に設定されている。
栓部8は、基部6から下方にのび、かつ、軸芯CLを中心とする円筒状に形成されている。ゴム栓5が容器2に嵌合される前において、栓部8の最外径L2bは、容器2の開口部4の内径L1bよりも大に設定されている。このような栓部8が容器2の開口部4に圧縮状態で嵌合されることにより、容器2に充填された薬液M(図2に示す)が気密に保持されうる。
本実施形態のゴム栓5には、基部6及び刺込部7の外面を覆うシート状の被覆部10が含まれている。被覆部10は、例えば、ビニール等の樹脂から形成されたフィルムによって形成されている。このような被覆部10は、容器2の内部を気密に保持するのに役立つ。
図2及び図3に示されるように、本実施形態では、容器2及びゴム栓5の少なくとも一部を覆うキャップ11が設けられている。キャップ11は、軸芯CLを中心とする円盤状に形成された基部12と、基部12の外端から下方にのびるフランジ13とを含み、断面コ字状に形成されている。このような基部12及びフランジ13により、容器2及びゴム栓5の少なくとも一部を覆う凹部14が形成される。また、キャップ11の軸芯CL側には、注射針(図示省略)を通過させるための孔部15が設けられている。
キャップ11が容器2及びゴム栓5に取り付けられる前において、キャップ11の凹部14の内径L3aは、容器2の鍔部4bの外径L1aと略同一に設定されている。また、キャップ11のフランジ13の高さH3aは、容器2の鍔部4bの高さH1aと、ゴム栓5の基部6の高さH2aとの和(H1a+H2a)よりも小に設定されている。
図2に示されるように、キャップ11は、凹部14内に配置された容器2及びゴム栓5に、圧縮状態で取り付けられる。本実施形態のキャップ11は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。
図5は、本実施形態の設計方法の具体的手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の設計方法では、先ず、コンピュータ1に、設計方法で用いられるシミュレーションモデルが入力される(モデル入力工程S1)。図6は、モデル入力工程S1の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のモデル入力工程S1では、先ず、容器2(図2に示す)を有限個の要素でモデル化した容器モデルが入力される(工程S11)。
図7は、容器モデル22、ゴム栓モデル25及びキャップモデル31を視覚化して示す図である。本実施形態の容器モデル22は、図2に示した容器2の開口部4の一部のみがモデル化されている。即ち、容器モデル22は、開口部4の一部を、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素41でモデル化(離散化)した開口部24を有する三次元モデルとして設定される。本実施形態の開口部24は、筒部4a(図2に示す)をモデル化した筒部24aと、鍔部4b(図2に示す)をモデル化した鍔部24bとを含んでいる。容器モデル22の筒部24a及び鍔部24bの各寸法は、容器2の筒部4a及び鍔部4bの各寸法に基づいて設定されている。数値解析法として、本実施形態では有限要素法が採用される。
本実施形態の要素41としては、ソリッド要素(六面体要素)が用いられている。なお、このような六面体要素に限定されるわけではなく、これ以外にも、例えば、複雑な形状を表現するのに適した四面体要素などが用いられても良い。また、各要素41には、要素番号、節点41sの番号、節点41sの座標値、及び、容器2(図2に示す)の材料特性(例えば密度、ヤング率、ポアソン比、又は、熱膨張率等)などの数値データが定義される。これらの数値データは、コンピュータ1に記憶される。
熱膨張率は、物体の長さ及び体積が、温度の上昇によって膨張する割合を示したものである。本実施形態の熱膨張率としては、容器モデル22が三次元モデルとして設定されるため、体膨張率が定義される。このような熱膨張率に基づいて、容器モデル22の体積は、下記式(1)で定義されうる。
V=V0(1+αt)…(1)
ここで、各変数及び定数は、次のとおりである。
V:容器のt℃での体積
V0:容器の基準温度(0℃)での体積
α:容器の熱膨張率(体膨張率)
t:基準温度(0℃)からの温度変化
上記式(1)では、温度変化tを増減させることにより、容器モデル22の体積Vを、X軸、Y軸及びZ軸の比率を維持しつつ、リニアに増減させることができる。また、容器モデル22は、数値データであるため、例えば、温度変化tに非常に大きな数値を代入して、現実では不可能な大きさに膨張させることができる。なお、熱膨張率αとしては、例えば、一般的な容器2の材料(本実施形態では、ガラス)の熱膨張率(例えば、1×10−5〜10×10−5(1/℃)程度)に設定されるのが望ましい。
図8は、ゴム栓モデル25の斜視図である。次に、本実施形態のモデル入力工程S1では、コンピュータ1に、ゴム栓5(図2に示す)を有限個の要素42でモデル化したゴム栓モデル25が入力される(工程S12)。本実施形態のゴム栓モデル25は、容器モデル22と同様に、三次元モデルとして設定される。
ゴム栓モデル25は、ゴム栓5の基部6(図3に示す)をモデル化した基部26、刺込部7(図3に示す)をモデル化した刺込部27、栓部8(図3に示す)をモデル化した栓部28、及び、被覆部10(図3に示す)をモデル化した被覆部30を含んでいる。基部26には、基部6の突起6t(図3に示す)をモデル化した複数の突起26tが設けられている。栓部28は、ゴム栓5の栓部8のうち、容器2に接する領域T1(図3に示す)のみがモデル化されている。これにより、計算対象を小さくすることができ、計算時間を短縮しうる。被覆部30には、突起26tに沿って突出する突起部30tが設けられている。
図7に示されるように、ゴム栓モデル25の基部26、刺込部27、栓部28、及び、被覆部30の各寸法は、図3に示したゴム栓5の基部6、刺込部7、栓部8、及び、被覆部10の各寸法に基づいて設定されている。このため、ゴム栓モデル25の栓部28の最外径L2bは、容器モデル22の開口部24の内径L1bよりも大に設定されている。
図8に示されるように、本実施形態の要素42は、基部26、刺込部27及び栓部28を構成する第1要素42aと、被覆部30を構成する第2要素42bとを含んで構成されている。第1要素42aとしては、図7に示した容器モデル22の要素41と同様に、ソリッド要素(六面体要素)が用いられている。第2要素42bとしては、シェル要素(四角形要素)が用いられている。各要素42a、42bは、要素番号、節点42sの番号、節点42sの座標値、及び、ゴム栓5(図2に示す)の材料特性(例えば密度、ヤング率、ポアソン比、降伏応力、又は、熱膨張率等)などの数値データが定義される。
ソリッド要素として構成される第1要素42aの熱膨張率は、体膨張率が設定される。第1要素42aの熱膨張率は、例えば、一般的なゴム栓5の材料の熱膨張率(例えば、10×10−5〜30×10−5(1/℃)程度)に設定されるのが望ましい。シェル要素として構成される第2要素42bの熱膨張率は、面膨張率が設定される。第2要素42bの熱膨張率は、例えば、一般的な被覆部10の材料の熱膨張率(例えば、5×10−5〜20×10−5(1/℃)程度)に設定されるのが望ましい。このような熱膨張率が設定されることにより、上記式(1)と同様に、ゴム栓モデル25の体積を、X軸、Y軸及びZ軸の比率を維持しつつ、リニアに増減させることができる。
基部26及び刺込部27と、被覆部30との間には、相対移動不能の固定条件が設定されている。これにより、図7に示されるように、基部26、刺込部27、栓部28、及び、被覆部30は、一体として変形計算されうる。また、ゴム栓モデル25の外面25oと、容器モデル22の開口部24の内面24iとの間には、モデルのすり抜けを防ぐ接触条件が設定される。これらの情報は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル入力工程S1では、コンピュータ1に、キャップ11(図2に示す)を有限個の要素43でモデル化したキャップモデル31が入力される(工程S13)。本実施形態のキャップモデル31は、容器モデル22やゴム栓モデル25と同様に、三次元モデルとして設定される。本実施形態のキャップモデル31は、キャップ11の基部12(図2に示す)をモデル化した基部32と、フランジ13(図2に示す)をモデル化したフランジ33とを含んで構成されている。これらの基部32及びフランジ33により、キャップモデル31には、凹部34が形成されている。また、基部32には、キャップ11の孔部15(図3に示す)に基づいて設定された孔部35が設けられている。
キャップモデル31の基部32及びフランジ33の各寸法は、図3に示したキャップ11の基部12及びフランジ13の各寸法に基づいて設定されている。このため、キャップモデル31の凹部34の内径L3aは、容器モデル22の鍔部24bの外径L1aと略同一に設定されている。さらに、キャップモデル31のフランジ33の高さH3aは、容器モデル22の鍔部24bの高さH1aと、ゴム栓モデル25の基部26の高さH2aとの和(H1a+H2a)よりも小に設定されている。
本実施形態の要素43としては、容器モデル22の要素41と同様に、ソリッド要素(六面体要素)が用いられている。また、要素43は、要素番号、節点43sの番号、節点43sの座標値、及び、キャップ11(図2に示す)の材料特性(例えば密度、ヤング率、ポアソン比、又は、熱膨張率等)などの数値データが定義される。
ソリッド要素として構成される要素43の熱膨張率は、体膨張率が設定される。要素43の熱膨張率は、例えば、一般的なキャップ11の材料の熱膨張率(例えば、1×10−5〜3×10−5(1/℃)程度)に設定されるのが望ましい。このような熱膨張率が設定されることにより、上記式(1)と同様に、キャップモデル31の体積を、X軸、Y軸及びZ軸の比率を維持しつつ、リニアに増減させることができる。
また、キャップモデル31の内面31iと、容器モデル22の外面22oとの間には、モデルのすり抜けを防ぐ接触条件が設定される。さらに、キャップモデル31の内面31iと、ゴム栓モデル25の外面25oとの間には、モデルのすり抜けを防ぐ接触条件が設定される。これらの情報は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のモデル入力工程S1では、コンピュータ1に、注射針(図示省略)を有限個の要素44でモデル化した注射針モデルが入力される(工程S14)。本実施形態の注射針モデル36は、図7に示した容器モデル22、ゴム栓モデル25及びキャップモデル31と同様に、三次元モデルとして設定されている。また、注射針モデル36は、その外径L4が上方側から下方側に向かって漸減している。
本実施形態の要素44としては、容器モデル22の要素41(図7に示す)と同様に、ソリッド要素(六面体要素)が用いられている。また、要素44は、要素番号、節点44sの番号、節点44sの座標値、及び、注射針(図示省略)の材料特性(例えば密度、ヤング率、ポアソン比、又は、減衰係数等)などの数値データが定義される。
次に、本実施形態の設計方法では、後述する計算工程S4に先立ち、容器モデル22とゴム栓モデル25との接触による変形を無効にする工程S2、及び、容器モデル22の開口部24とゴム栓モデル25とを芯合わせして、容器モデル22とゴム栓モデル25とを重複させて配置する工程S3とが行われる。
図7に示されるように、工程S2では、容器モデル22の開口部24の内面24iと、ゴム栓モデル25の外面25oとの間の接触条件が無効に設定される。これにより、容器モデル22とゴム栓モデル25とが互いにすり抜け可能に定義される。
図9(a)は、重複して配置された容器モデル22及びゴム栓モデル25を示す断面図である。工程S3では、軸芯CLを基準として、容器モデル22の開口部24とゴム栓モデル25とが芯合わせされる。図7に示したように、ゴム栓モデル25の栓部28の最外径L2bは、容器モデル22の開口部24の内径L1bよりも大に設定されている。しかも、工程S2において、ゴム栓モデル25の外面25oとの間の接触条件が無効に設定されている。このため、容器モデル22の鍔部24bとゴム栓モデル25の栓部28との一部が重複して配置される。容器モデル22及びゴム栓モデル25の各座標値が、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、コンピュータ1が、容器モデル22に圧縮状態で嵌合されたときのゴム栓モデル25の変形形状を計算する(計算工程S4)。図10は、本実施形態の計算工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の計算工程S4は、先ず、容器モデル22を膨張させるか、又は、ゴム栓モデル25を収縮させることにより、ゴム栓モデル25を容器モデル22の開口部24に配置する(第1変形計算工程S41)。本実施形態では、ゴム栓モデル25を収縮させずに、容器モデル22を膨張させている。図9(b)は、ゴム栓モデル25及び膨張した容器モデル22を示す断面図である。
容器モデル22の膨張は、上記式(1)及び容器モデル22の熱膨張率に基づいて、温度変化tを初期値(例えば、20℃)から徐々に大きくすることによって計算される。容器モデル22の膨張は、容器モデル22の開口部24の内径L1bが、ゴム栓モデル25の栓部28の最外径L2bよりも大きくなるまで(即ち、容器モデル22とゴム栓モデル25とが重複しなくなるまで)行われる。これにより、容器モデル22にゴム栓モデル25を当接させて変形させることなく、容器モデル22の開口部24にゴム栓モデル25の栓部28を配置することができる。なお、容器モデル22の膨張により、開口部24の上縁面と、ゴム栓モデル25の基部26の下面が当接する場合は、容器モデル22の膨張とともに、上下方向に徐々に離間させるのが望ましい。
次に、計算工程S4では、第1変形計算工程S41後、かつ、後述する第2変形計算工程S43前に、容器モデル22とゴム栓モデル25との接触による変形が有効にされる(工程S42)。工程S42は、容器モデル22の開口部24の内面24iと、ゴム栓モデル25の外面25oとの間の接触条件が有効に設定される。これにより、容器モデル22とゴム栓モデル25とが互いにすり抜け不能に定義される。
次に、計算工程S4では、容器モデル22を収縮させるか、又は、ゴム栓モデル25を膨張させることにより、ゴム栓モデル25を容器モデル22に嵌合させる(第2変形計算工程S43)。本実施形態では、第1変形計算工程S41で膨張させた容器モデル22を収縮させている。図9(c)は、容器モデル22に嵌合されたゴム栓モデル25を示す断面図である。
容器モデル22の収縮は、上記式(1)及び容器モデル22の熱膨張率に基づいて、温度変化tを初期値(例えば、20℃)に徐々に戻すことによって計算される。これにより、容器モデル22を元の体積に収縮される。なお、第1変形計算工程S41において、容器モデル22とゴム栓モデル25とを上下方向に離間させた場合には、容器モデル22の収縮とともに、徐々に接近させるのが望ましい。
容器モデル22の収縮により、容器モデル22の開口部24が、ゴム栓モデル25の栓部28及び基部26に当接する。そして、容器モデル22がさらに収縮されることにより、容器モデル22の開口部24の輪郭に沿って、ゴム栓モデル25が圧縮変形される。これにより、第2変形計算工程S43では、容器モデル22にゴム栓モデル25を圧縮状態で嵌合させた状態が計算される。また、第2変形計算工程S43では、ゴム栓モデル25と容器モデル22の開口部24との隙間の体積についても計算されるのが望ましい。これらの計算結果は、コンピュータ1に記憶される。
このような容器モデル22及びゴム栓モデル25の変形計算は、図7に示した要素41、図8に示した要素42a及び要素42bの形状及び材料特性等に基づいて、各要素41、42a及び42bの質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらのマトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、コンピュータ1が、各種の条件を当てはめて運動方程式を作成して、これらを単位時間Tx(x=0、1、…)ごと(例えば、1μ秒ごと)に、容器モデル22及びゴム栓モデル25の変形計算を行う。このような変形計算は、例えば、JSOL 社製の LS-DYNA などの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算することができる。なお、後述するキャップモデル31(図7に示す)及び注射針モデル36(図8に示す)を用いた変形計算も、同様の手順で計算される。
このように、本実施形態の計算工程S4は、例えば、容器モデル22の開口部24に、開口部24よりも大きなゴム栓モデル25を押し込む実際の工程を再現することなく、容器モデル22の開口部24にゴム栓モデル25を圧縮状態で嵌合させることができる。このため、ゴム栓モデル25の局部的な大変形に起因する要素潰れを防ぐことができるため、ゴム栓モデル25の嵌合状態を確実に計算することができる。従って、本実施形態の設計方法では、ゴム栓5を効率良く設計することができる。
しかも、本実施形態の設計方法では、ゴム栓5(図2に示す)を試作する必要がない。このため、金型を製造するためのコストや時間が増大することがない。従って、本実施形態の設計方法では、ゴム栓5を効率良く設計することができる。なお、本実施形態では、容器モデル22の膨張及び収縮が、熱膨張率に基づいて計算される態様が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、X軸、Y軸及びZ軸の比率を維持しつつ、容器モデル22の体積をリニアに増減させることができれば、熱膨張率に基づいて計算する必要はない。
本実施形態の計算工程S4では、容器モデル22を膨張させた後に(第1変形計算工程S41)、容器モデル22を収縮させて、ゴム栓モデル25を容器モデル22に嵌合させる(第2変形計算工程S43)態様が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、ゴム栓モデル25を収縮させた後に(第1変形計算工程S41)、ゴム栓モデル25を膨張させて、ゴム栓モデル25を容器モデル22に嵌合させてもよい(第2変形計算工程S43)。このような計算工程S4においても、ゴム栓モデル25を容器モデル22に嵌合させることができる。
また、第1変形計算工程S41では、容器モデル22を膨張させるとともに、ゴム栓モデル25を収縮させてもよい。さらに、第2変形計算工程S43では、容器モデル22を収縮させるとともに、ゴム栓モデル25が膨張させてもよい。これにより、ゴム栓モデル25を容器モデル22に早期に嵌合させることができる。
また、これまでの実施形態では、第1変形計算工程S41において、容器モデル22を膨張させるか、又は、ゴム栓モデル25を収縮させる態様が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、ゴム栓モデル25を容器モデル22の開口部24に配置できるように、モデル入力工程S1において、膨張させた容器モデル22、又は、収縮させたゴム栓モデル25が予め設定されてもよい。これにより、計算工程S4において、第1変形計算工程S41を実質的に省略することができるため、計算時間を短縮することができる。
次に、本実施形態の設計方法では、後述するキャップモデル変形計算工程S7に先立ち、工程S5及び工程S6が行われる。工程S5では、キャップモデル31と容器モデル22との接触による変形、及び、キャップモデル31とゴム栓モデル25との接触による変形が無効に設定される。また、工程S6では、キャップモデル31の凹部34及び容器モデル22、又は、キャップモデル31の凹部34及びゴム栓モデル25を重複して配置させている。
本実施形態の工程S5では、図7に示されるように、キャップモデル31の内面31iと、容器モデル22の外面22oとの間の接触条件が無効に設定される。これにより、キャップモデル31と容器モデル22とが互いにすり抜け可能に定義される。さらに、キャップモデル31の内面31iと、ゴム栓モデル25の外面25oとの間の接触条件が無効に設定される。これにより、キャップモデル31とゴム栓モデル25とが互いにすり抜け可能に定義される。
図11(a)は、重複して配置されたキャップモデル31、容器モデル22及びゴム栓モデル25を示す断面図である。本実施形態の工程S6では、軸芯CLを基準として、キャップモデル31の凹部34、容器モデル22及びゴム栓モデル25が芯合わせされる。図7に示したように、キャップモデル31のフランジ33の高さH3aは、容器モデル22の鍔部24bの高さH1aと、ゴム栓モデル25の基部26の高さH2aとの和(H1a+H2a)よりも小に設定されている。しかも、工程S5において、キャップモデル31、容器モデル22及びゴム栓モデル25の接触条件が無効にされている。このため、キャップモデル31とゴム栓モデル25とが重複して配置される。キャップモデル31、容器モデル22及びゴム栓モデル25の各座標値が、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、コンピュータ1が、容器モデル22及びゴム栓モデル25に圧縮状態で取り付けられたときのキャップモデル31の変形形状を計算する(キャップモデル変形計算工程S7)。図12は、本実施形態のキャップモデル変形計算工程S7の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のキャップモデル変形計算工程S7は、先ず、キャップモデル31を膨張させることにより、容器モデル22及びゴム栓モデル25の少なくとも一部を、キャップモデル31の凹部34に配置する(第3変形計算工程S71)。図11(b)は、容器モデル22、ゴム栓モデル25及び膨張したキャップモデル31を示す断面図である。
キャップモデル31の膨張は、上記式(1)及びキャップモデル31の熱膨張率に基づいて、温度変化tを初期値(例えば、20℃)から徐々に大きくすることによって計算される。キャップモデル31の膨張は、キャップモデル31のフランジ33の高さH3aが、容器モデル22の鍔部24bの高さH1aと、ゴム栓モデル25の基部26の高さH2aとの和(H1a+H2a)よりも大きくなるまで行われる。さらに、キャップモデル31の膨張は、キャップモデル31の凹部34の内径L3a(図7に示す)が、容器モデル22の鍔部24bの外径L1a(図7に示す)よりも大きくなるまで行われる。これにより、第3変形計算工程S71では、容器モデル22及びゴム栓モデル25に、キャップモデル31を当接させて変形させることなく、キャップモデル31の凹部34に、容器モデル22の開口部24及びゴム栓モデル25の基部26を配置することができる。
次に、キャップモデル変形計算工程S7では、第3変形計算工程S71後、かつ、後述する第4変形計算工程S73前に、キャップモデル31と容器モデル22との接触による変形、及び、キャップモデル31とゴム栓モデル25との接触による変形が有効に設定される(工程S72)。本実施形態の工程S72では、先ず、キャップモデル31の内面31iと、容器モデル22の外面22oとの間の接触条件が有効に設定される。これにより、キャップモデル31と容器モデル22とが互いにすり抜け不能に定義される。さらに、キャップモデル31の内面31iと、ゴム栓モデル25の外面25oとの間の接触条件が有効に設定される。これにより、キャップモデル31とゴム栓モデル25とが互いにすり抜け不能に定義される。
次に、キャップモデル変形計算工程S7では、キャップモデル31を収縮させることにより、容器モデル22及びゴム栓モデル25の少なくとも一部に、キャップモデル31を圧縮状態で取り付ける(第4変形計算工程S73)。図11(c)は、容器モデル22、ゴム栓モデル25及び収縮したキャップモデル31を示す断面図である。
キャップモデル31の収縮は、上記式(1)及びキャップモデル31の熱膨張率に基づいて、温度変化tを初期値(例えば、20℃)に徐々に戻すことによって計算される。これにより、キャップモデル31を元の体積に収縮される。
キャップモデル31の収縮により、キャップモデル31の凹部34が、容器モデル22の鍔部24b及びゴム栓モデル25の基部26に当接する。そして、キャップモデル31がさらに収縮されることにより、キャップモデル31よりも剛性が小さいゴム栓モデル25が、キャップモデル31の凹部34の輪郭に沿って圧縮変形される。これにより、第4変形計算工程S73は、容器モデル22の鍔部24b及びゴム栓モデル25の基部26に、キャップモデル31を圧縮状態で取り付けた状態が計算される。また、第4変形計算工程S73では、キャップモデル31と容器モデル22の鍔部24bとの隙間の体積、及び、キャップモデル31とゴム栓モデル25の基部26との隙間の体積についても計算されるのが望ましい。これらの計算結果は、コンピュータ1に記憶される。
このように、本実施形態のキャップモデル変形計算工程S7は、例えば、キャップモデル31の凹部34に、凹部34よりも大きなゴム栓モデル25や容器モデル22を押し込む実際の工程を再現することなく、容器モデル22の鍔部24b及びゴム栓モデル25の基部26に、キャップモデル31を圧縮状態で取り付けることができる。このため、キャップモデル31やゴム栓モデル25の局部的な大変形に起因する要素潰れを防ぐことができるため、ゴム栓5を効率良く設計することができる。
なお、本実施形態では、キャップモデル31の膨張及び収縮が、熱膨張率に基づいて計算される態様が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、X軸、Y軸及びZ軸の比率を維持しつつ、キャップモデル31の体積をリニアに増減させることができれば、熱膨張率に基づいて計算する必要はない。
本実施形態のキャップモデル変形計算工程S7では、キャップモデル31を膨張させた後に(第3変形計算工程S71)、キャップモデル31を収縮させて、容器モデル22及びゴム栓モデル25に、キャップモデル31を取り付ける(第4変形計算工程S73)態様が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、容器モデル22及びゴム栓モデル25を収縮させて、容器モデル22及びゴム栓モデル25をキャップモデル31の凹部34に配置した後に、容器モデル22及びゴム栓モデル25を膨張させてもよい。このようなキャップモデル変形計算工程S7においても、容器モデル22及びゴム栓モデル25に、キャップモデル31を取り付けることができる。
また、容器モデル22及びゴム栓モデル25を、キャップモデル31の凹部34に配置できるように、モデル入力工程S1において、膨張させたキャップモデル31が予め設定されてもよい。これにより、キャップモデル変形計算工程S7において、第3変形計算工程S71を実質的に省略することができるため、計算時間を短縮することができる。
次に、本実施形態の設計方法では、コンピュータ1が、容器モデル22に嵌合されたゴム栓モデル25に、注射針モデル36を押し込んで、ゴム栓モデル25の変形形状を計算する(工程S8)。工程S8では、図3に示したゴム栓5の刺込部7への注射針(図示省略)を刺し込みが再現される。図13(a)、(b)は、注射針モデル36が押し込まれたゴム栓モデル25を示す断面図である。
図13(a)に示されるように、本実施形態の工程S8では、キャップモデル31の孔部35から容器モデル22の筒部24aに向かって、注射針モデル36が軸芯CLに沿って移動される。注射針モデル36の移動速度Vaは、例えば、5mm/S〜20mm/S程度に設定される。注射針モデル36に設定される荷重Fは、例えば、15N〜25N程度に設定される。
注射針モデル36の剛性は、ゴム栓モデル25の剛性よりも大きい。このため、図13(b)に示されるように、注射針モデル36の移動とともに、ゴム栓モデル25の刺込部27の変形が計算される。また、工程S8では、注射針モデル36に作用するゴム栓モデル25からの応力や、押し込み量等が計算される。このような刺込部27の圧縮変形により、ゴム栓5の刺込部7への注射針(図示省略)を刺し込みが再現されうる。従って、本実施形態の設計方法では、注射針の刺し込み性に優れたゴム栓5を効率良く設計することができる。これらの計算結果は、コンピュータ1に記憶される。
工程S8において、注射針モデル36が押し込まれる刺込部27の変形は、容器モデル22の開口部24の上縁面に接する基部26の変形に比べて大きくなる。このため、刺込部27の要素42aの大きさは、基部26の要素42aの大きさよりも小に設定されるのが望ましい。これにより、注射針モデル36の移動に伴って、刺込部27を柔軟に変形させることができるため、局部的な大変形に起因する要素潰れを防ぐことができる。なお、刺込部27の要素42aの大きさは、基部26の要素42aの大きさの1/4〜1/2程度が望ましい。
次に、本実施形態の設計方法では、コンピュータ1が、ゴム栓モデル25と容器モデル22との嵌合状態が良好か否かを判断する(工程S9)。ゴム栓モデル25と容器モデル22との嵌合状態は、例えば、ゴム栓モデル25と容器モデル22の開口部24との隙間の体積や接触圧力、及び、ゴム栓モデル25の形状等に基づいて判断される。
ゴム栓モデル25と容器モデル22との嵌合状態が良好であると判断された場合(工程S9で、「Y」)には、ゴム栓モデル25に基づいて、ゴム栓5が製造される(工程S10)。他方、ゴム栓モデル25と容器モデル22との嵌合状態が良好でないと判断された場合(工程S9で、「N」)には、ゴム栓5(図2に示す)の形状等が変更されて(工程S21)、工程S1〜工程S9が再度実施される。
このように、本実施形態の設計方法では、ゴム栓5(図2に示す)を試作することなく、コンピュータ1を用いて、ゴム栓5と容器2の開口部4との嵌合状態を評価することができる。従って、ゴム栓5の金型を製造するためのコストや時間が増大することがないため、ゴム栓5を効率良く設計することができる。
本実施形態の工程S9は、ゴム栓モデル25と容器モデル22との嵌合状態だけでなく、キャップモデル31の取り付け状態が良好か否かについても判断されるのが望ましい。キャップモデル31の取り付け状態は、例えば、キャップモデル31と容器モデル22の鍔部24bとの隙間の体積や接触圧力、及び、キャップモデル31とゴム栓モデル25の基部26との隙間の体積や接触圧力に基づいて判断される。これにより、キャップ11の取り付け状態が優れるゴム栓5を効率良く設計することができる。
さらに、本実施形態の工程S9は、例えば、注射針モデル36に作用するゴム栓モデル25の応力に基づいて、注射針モデル36の刺し込み性が判断されるのが望ましい。これにより、注射針(図示省略)の刺し込み性に優れるゴム栓5を設計することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図5、図6及び図10に示した処理手順に従って、容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときのゴム栓モデルの変形形状が計算された(実施例)。実施例では、容器モデルを膨張させることにより、ゴム栓モデルを変形させることなく容器モデルの開口部に配置するとともに(第1変形計算工程)、容器モデルを収縮させることにより、ゴム栓モデルを容器モデルに嵌合させた(第2変形計算工程)。
さらに、実施例では、図12に示した処理手順に従って、容器モデル及びゴム栓モデルに圧縮状態で取り付けられたときのキャップモデルの変形形状や、注射針モデルが押し込まれたときのゴム栓モデルの変形形状についても計算された。
比較のために、容器モデルを膨張、又は、ゴム栓モデルを収縮させることなく、ゴム栓モデルを容器モデルに嵌合させた(比較例)。なお、共通仕様は、次のとおりである。ゴム栓モデルの材料定数は、ゴムの引張試験のS−Sカーブから同定された。
容器モデル、キャップモデル、注射針モデル:
要素の材料特性:
密度:7.8×10−9(ton/mm3
ヤング率:20.5×10(MPa)
ポアソン比:0.3
熱膨張率:1×10−5(1/℃)
ゴム栓モデル:
基部、刺込部及び栓部の要素
密度:1.0×10−9(ton/mm3
ポアソン比:0.498
材料定数:3.78(N/mm2
被覆部の要素
密度:1.0×10−9(ton/mm3
ヤング率:460MPa
ポアソン比:0.46
降伏応力:23MPa
降伏後の塑性硬化係数:43
熱膨張率:10×10−5(1/℃)
実施例:
刺込部の要素の大きさ/基部の要素の大きさ:1/4
テストの結果、実施例では、要素潰れによる計算落ちが発生することなく、容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときのゴム栓モデルの変形形状が計算された。さらに、実施例では、容器モデル及びゴム栓モデルに圧縮状態で取り付けられたときのキャップモデルの変形形状や、注射針モデルが押し込まれたときのゴム栓モデルの変形形状についても、安定して計算された。従って、実施例では、ゴム栓を効率良く設計することができた。
他方、比較例では、容器モデルにゴム栓モデルが強く押し付けられ、ゴム栓モデルの要素の体積が負となる要素潰れが生じた。この要素潰れにより、計算落ちが発生したため、ゴム栓を効率良く設計することができなかった。
2 容器
4 開口部
5 ゴム栓
22 容器モデル
24 開口部
25 ゴム栓モデル

Claims (6)

  1. 容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、
    前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び
    前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、
    前記計算工程に先立ち、
    前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を無効にする工程と、
    前記容器モデルの前記開口部と前記ゴム栓モデルとを芯合わせして、前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとを重複させて配置する工程とが行われ、
    前記計算工程は、前記第1変形計算工程後、かつ、前記第2変形計算工程前に、前記容器モデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を有効にする工程をさらに含むことを特徴とするゴム栓の設計方法。
  2. 容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、
    前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び
    前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、
    前記容器及び前記ゴム栓の少なくとも一部を覆う凹部を含むキャップをさらに含み、
    前記コンピュータに、前記キャップを有限個の要素でモデル化したキャップモデルを入力する工程、並びに
    前記コンピュータが、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルに圧縮状態で取り付けられたときの前記キャップモデルの変形形状を計算するキャップモデル変形計算工程をさらに含むことを特徴とするゴム栓の設計方法。
  3. 前記キャップモデル変形計算工程は、前記キャップモデルを膨張させることにより、前記キャップモデルを変形させることなく、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルの少なくとも一部を、前記キャップモデルの凹部に配置する第3変形計算工程、並びに
    前記キャップモデルを収縮させることにより、前記容器モデル及び前記ゴム栓モデルの少なくとも一部に、前記キャップモデルを圧縮状態で取り付ける第4変形計算工程を含む請求項2記載のゴム栓の設計方法。
  4. 前記キャップモデル変形計算工程に先立ち、
    前記キャップモデルと前記容器モデルとの接触による変形、及び、前記キャップモデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を無効にする工程、並びに
    前記キャップモデルの凹部及び前記容器モデル、又は、前記キャップモデルの凹部及び前記ゴム栓モデルを芯合わせして、前記キャップモデルを、前記容器モデル又は前記ゴム栓モデルに重複させて配置する工程が行われ、
    前記キャップモデル変形計算工程は、前記第3変形計算工程後、かつ、前記第4変形計算工程前に、前記キャップモデルと前記容器モデルとの接触による変形、及び、前記キャップモデルと前記ゴム栓モデルとの接触による変形を有効にする工程をさらに含む請求項3記載のゴム栓の設計方法。
  5. 容器の開口部に圧縮状態で嵌合されるゴム栓を、コンピュータを用いて設計するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記容器を有限個の要素でモデル化した容器モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータに、前記ゴム栓を有限個の要素でモデル化したゴム栓モデルを入力する工程と、
    前記コンピュータが、前記容器モデルに圧縮状態で嵌合されたときの前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する計算工程とを含み、
    前記計算工程は、前記容器モデルを膨張させるか、又は、前記ゴム栓モデルを収縮させることにより、前記ゴム栓モデルを変形させることなく前記容器モデルの前記開口部に配置する第1変形計算工程、及び
    前記容器モデルを収縮させるか、又は、前記ゴム栓モデルを膨張させることにより、前記ゴム栓モデルを前記容器モデルに嵌合させる第2変形計算工程を含み、
    前記コンピュータに、注射針を有限個の要素でモデル化した注射針モデルを入力する工程、及び
    前記コンピュータが、前記容器モデルに嵌合された前記ゴム栓モデルに、前記注射針モデルを押し込んで、前記ゴム栓モデルの変形形状を計算する工程をさらに含むことを特徴とするゴム栓の設計方法。
  6. 前記ゴム栓モデルは、前記容器モデルの開口部の上縁面に接する基部と、
    前記基部よりも前記ゴム栓モデルの軸芯側に形成され、かつ、前記注射針モデルが押し込まれる刺込部とを含み、
    前記刺込部の前記要素の大きさは、前記基部の前記要素の大きさよりも小である請求項5記載のゴム栓の設計方法。
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