以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〈紙幣処理装置の概略構成〉
図1は、紙幣処理装置100の外観図を示し、図2は、紙幣処理装置100の概略構成図を示す。紙幣処理装置100は、バラ状態の紙幣を取り込み、紙幣の計数を行うと共に、紙幣の種類や状態に応じて分類をし、集積する機能を有する紙幣整理機である。紙幣処理装置100は、紙幣を結束する機能も有する。
紙幣処理装置100は、例えば現金センター等において、各種の業務を行う際に利用される。紙幣処理装置100を利用して行う業務には、紙幣処理装置100が紙幣の正損を分類する正損分け業務、正券及び/又は損券の大束を作成するために、紙幣処理装置100が、紙幣の正損を分類しかつ、設定した枚数の正券又は損券を集積する大束正損分け業務、紙幣処理装置100が、カセットから回収した紙幣を計数しかつ、分類するカセット回収業務、紙幣処理装置100が、カセットに装填する紙幣として、設定した枚数の紙幣を集積するカセット装填業務、紙幣処理装置100が、ATMから回収した紙幣を計数しかつ、分類するATM回収業務、紙幣処理装置100が、ATMに装填する紙幣として、設定した枚数の紙幣を集積するATM装填業務、及び、紙幣処理装置100が、紙幣の記番号を読み取って記録する記番号記録業務が含まれる。カセット装填業務では、空のカセットに対して紙幣を装填する場合や、紙幣を収容しているカセットに対し紙幣を装填して満杯にする場合がある。従って、カセット装填業務では、装填枚数(つまり、バッチ枚数)を任意に設定することが可能である。これは、ATM装填業務においても同様である。
また、紙幣処理装置100は、例えば銀行のテラーカウンタに設置され、そこにおいて、各種の業務を行う際に利用される場合もある。テラーカウンタにおいて行う業務には、紙幣処理装置100が、預け入れをする紙幣を計数する預入業務、紙幣処理装置が、払い出す紙幣を計数する払出業務が含まれる。
紙幣処理装置100はさらに、前述した各業務の遂行に利用されるときには、処理を行った紙幣に関する情報(紙幣の情報)を出力用データファイルとして、上位端末140(図3参照)等に出力するように構成されている。
尚、この紙幣処理装置100は、各業務における処理の一部を行う際に利用されるものであり、この紙幣処理装置100によって、各業務の遂行に必要な全ての処理が可能になるのではない。
また、紙幣処理装置100が利用される業務は、前述した業務に限定されるのではなく、これらの業務以外の業務に利用される場合もある。また、これらの業務の一部にのみ利用される場合もある。
紙幣処理装置100は、紙幣が載置され、該紙幣を取り込むホッパ部2と、紙幣を識別する識別部3と、結束を行う紙幣を集積する、集積部の一つとしての結束スタッカ4と、結束を行わない紙幣を集積する、集積部の一つとしての非結束スタッカ5と、リジェクト紙幣を集積するリジェクトスタッカ6と、ホッパ部2から取り込まれた紙幣を、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5及びリジェクトスタッカ6に搬送する第1搬送部7と、結束スタッカ4に集積された紙幣を所定の位置まで搬送する第2搬送部8と、第2搬送部8により搬送された紙幣を結束する結束部9と、結束された紙幣(以下、「結束紙幣」という)を搬送する第3搬送部10と、結束紙幣を投出する投出部11と、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5、リジェクトスタッカ6、第1搬送部7、第2搬送部8、結束部9及び第3搬送部10を収容する箱状の筐体12とを備えている。
筐体12の内部は、紙幣の識別及び分類に関する処理を行う第1処理部126と、結束対象の紙幣の結束に関する処理を行う第2処理部127とに別れている。第2処理部127は、第1処理部126の上方に設けられている。第1処理部126には、ホッパ部2、識別部3、非結束スタッカ5及びリジェクトスタッカ6が含まれる。第2処理部127には、結束スタッカ4、第2搬送部8、結束部9及び第3搬送部10が含まれる。第1搬送部7の大部分は、第1処理部126に含まれている。
結束スタッカ4は、第1結束スタッカ4Aと第2結束スタッカ4Bとの2つのスタッカを含んでいる。第1結束スタッカ4Aと第2結束スタッカ4Bはともに、結束対象の紙幣を集積する。結束対象の紙幣として集積する紙幣は、適宜設定することができる。結束スタッカ4は、結束を行わない紙幣を集積することも可能である。
結束スタッカ4は、筐体12の側面に開口する第1取出口47を開閉する扉43(図1参照)を有している。扉43は、透明又は半透明な材料(例えば、ガラスや樹脂)で構成され、それによって、外部から内部を目視可能に構成されている。
詳細な図示は省略するが、扉43はロック機構44を有している。結束スタッカ4に紙幣を集積しているときには、扉43が開かないように、ロック機構44がロック状態になる。結束スタッカ4から、結束を行わない紙幣を取り出すときには、ロック機構44がアンロック状態になる。これにより、付勢手段によって付勢された扉43は自動的に開いて、第1取出口47を開放する。
結束スタッカ4には、その内部又は第1取出口47付近を照射する照明装置(例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)からなる照明部)46が取り付けられている(図2にのみ示す)。照明装置46は、結束スタッカ4から紙幣を取り出すときに、結束スタッカ4辺りを照らす。
結束スタッカ4は、結束スタッカ4内の紙幣を検知する集積センサ45を有している。集積センサ45は、光を送信する送信部と光を受信する受信部とを有し、送信部から出射されて受信部に到達する光が遮断されることによって紙幣を検知する。尚、後述する集積センサ52、紙幣センサ25、及び、通過センサ74も同様の構成をしている。集積センサ45は、結束スタッカ4内の紙幣により光が遮断されるように配置されている。つまり、集積センサ45は、光が遮断されることによって、結束スタッカ4内に紙幣が存在していることを検知することができる。集積センサ45は、結束スタッカ4から紙幣が取り出されたときには、そのことを検知することができる。
非結束スタッカ5は、第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bの2つのスタッカを含んでいる。第1及び第2非結束スタッカ5A,5Bは、第1処理部126内において実質的に水平方向に並んで配置されている。非結束スタッカ5は、筐体12の側面に開口する第2取出口53を有している。
非結束スタッカ5には、集積された紙幣を第2取出口53の方へ押し出すための押出機構54が設けられている。押出機構54は、非結束スタッカ5の奥側(第2取出口53と反対側)に設けられており、奥側から手前側(第2取出口53の側)に紙幣を押し出すように構成されている。これにより、図1に概念的に示すように、紙幣は、第2取出口53から突出するようになる。
非結束スタッカ5には、その内部又は第2取出口53付近を照射する照明装置(例えばLEDからなる照明部)55が取り付けられている。照明装置55は、非結束スタッカ5から紙幣を取り出すときに、非結束スタッカ5辺りを照らす。
非結束スタッカ5は、非結束スタッカ5内の紙幣を検知する集積センサ52を有している。集積センサ52は、集積センサ45と同様の構成をしている。集積センサ52は、非結束スタッカ5内に紙幣が存在することを検知することができる。また、集積センサ52は、非結束スタッカ5から紙幣が取り出されたときには、そのことを検知することができる。
ホッパ部2は、紙幣が載置される載置台21と、載置台21上に載置された紙幣を案内する2つのガイド部22,22と、取込ローラ23と、紙幣を取り込む取込口24と、載置台21上の紙幣を検知する紙幣センサ25とを有している。本実施形態では、紙幣の一長辺を先頭として(紙幣の短辺に平行な方向に)紙幣が取り込まれていくように、紙幣がホッパ部2に載置される。
紙幣センサ25は、取込口24の近傍に設けられている。紙幣センサ25は、集積センサ45と同様の構成をしている。紙幣センサ25は、載置台21上に載置された紙幣により光が遮断されるように配置されている。つまり、紙幣センサ25は、光が遮断されることによって、載置台21上に紙幣が載置されていることを検知することができる。
第1搬送部7は、搬送ベルト等で構成されている。第1搬送部7は、主搬送路71と、主搬送路71から分岐する第1〜第4分岐路72a〜72dと、主搬送路71からの分岐箇所に設けられた振り分け機構73と、紙幣の通過を検知する複数の通過センサ74とを有している。第1搬送部7は、紙幣の一長辺が先頭になるように(紙幣の短辺に平行な方向に)紙幣を搬送していく。
識別部3は、主搬送路71のうち第1分岐路72aよりも上流側に設けられている。識別部3は、搬送される紙幣の一枚一枚について、その金種、真偽及び正損を識別するように構成されている。具体的には、識別部3は、ラインセンサ31及び磁気センサ32を有し、紙幣の特徴を取得する。識別部3は、紙幣の特徴が、記憶している各種紙幣の特徴と一致するかを判定し、通貨、金種、発行年、新旧、真偽、及び正損を識別する。新旧は、紙幣の版(バージョン)を示す情報である。例えば100元札ならば、それが旧版(1980年第4版、1990年第4版改訂版)に該当するのか、新版(2005年第5版)に該当するのかを特定する情報である。
識別部3は、紙幣の正損を、ATM正券(ATM)、テラー正券(TLR)、及び損券(UNFIT)の3つのレベルに分類する。ATM正券は、ATMから出金する紙幣として使用できるレベルの正券であり、テラー正券は、ATMから出金する紙幣として使用できるレベルにないが、銀行のテラーカウンタで出金する紙幣としては使用できるレベルの正券である。尚、紙幣の正損を2つのレベルに分類してもよい。その場合、識別部3は、紙幣の正損を、ATM正券(ATM)及びテラー正券(TLR)を含む正券(FIT)、並びに、損券(UNFIT)の2つのレベルに分類する。尚、以下の説明では、正損のレベルを「正損レベル」と称する場合がある。
識別部3はまた、紙幣の識別の際に、紙幣のイメージデータを取得する。取得したイメージデータは、後述する記憶部131に記憶される。識別部3は、イメージデータとして、紙幣の全体画像を取得し、その全体画像から、記番号を含むエリアを切り出して、エリア画像を作成し、さらに、そのエリア画像に基づいて、一文字毎の二値化セグメント画像を作成する。識別部3は、二値化セグメント画像についてOCR処理を行い、記番号を読み取る。記憶部131には、全体画像、エリア画像、及び、二値化セグメント画像の少なくとも一つが記憶される。
結束部9は、集積された紙幣を結束する。結束部9は、テープ輪Lを作成し、該テープ輪Lの中へ紙幣が搬送された後にテープを引き戻し、紙幣をテープで結束する。
第2搬送部8は、結束スタッカ4に集積された紙幣を把持して、該紙幣をテープ輪Lの中へ搬送する。第2搬送部8は、上アーム部81aと下アーム部81bとによって紙幣を把持する把持ユニット81と、把持ユニット81を水平方向であって且つ紙幣の一長辺が先頭となる(紙幣の短辺に平行となる)方向へ移動させる第1水平移動機構と、把持ユニット81を水平方向であって且つ紙幣の一短辺が先頭となる(紙幣の長辺に平行となる)方向へ移動させる第2水平移動機構と、把持ユニット81を上下方向へ移動させる上下移動機構とを有している。
結束部9は、図2に示すように、テープを供給するテープ供給部91と、テープでテープ輪Lを作成するテープ輪作成部92と、テープを紙幣に巻き付けた状態でテープ同士を接合するヒータ95と、テープを紙幣に巻き付けられていない位置で切断するカッタ96と、テープに印字する印字部97と、テープに押印する押印部98とを有している。
テープ供給部91は、テープがリールに巻き付けられたテープリール911と、テープリール911から引き出されるテープを搬送するテープ搬送部912と、を有している。テープ搬送部912は、テープを所定の搬送路に沿って搬送する。テープ搬送部912は、図示は省略するが、ガイドと複数のローラ対とを有している。
テープ輪作成部92は、図2に破線で示すように、テープでテープ輪Lを作成し、集積された紙幣が該テープ輪Lの中に配置された後に該テープを引き戻して該テープを該紙幣に巻き付ける。
第3搬送部10は、結束紙幣を投出部11まで搬送する。第3搬送部10は、上把持部101と、下把持部102と、上把持部101及び下把持部102を、水平方向であってかつ、紙幣の一長辺が先頭となる(紙幣の短辺に平行となる)方向へ移動させる水平移動機構とを有している。
筐体12の側面には、図1に示すように、紙幣処理装置100への情報を入力する操作部であり且つ紙幣処理装置100の情報を表示する表示部であるタッチパネル17が設けられている。タッチパネル17は、紙幣処理装置100を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分である。
また、筐体12の側面における第2取出口53の近傍には、2つの第2取出口53のそれぞれに対応するように、2つの表示部が設けられている。本実施形態では、表示部の一例として、セグメント型の液晶パネル18が設けられている。液晶パネル18は、後述のように、非結束スタッカ5に集積されている紙幣の金種及び版を表示する。さらに、筐体12の側面における第1取出口47の近傍に、2つの第1取出口47のそれぞれに対応するように、2つの表示部を設けてもよい。これらの表示部を、紙幣処理装置100が行う処理に関する情報を表示する表示部とすることもできる。
〈紙幣処理装置のシステム構成〉
図3に、紙幣処理装置100の概略構成を示すブロック図を示す。
紙幣処理装置100は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部120を備えている。制御部120には、前述したホッパ部2、識別部3、結束スタッカ4、非結束スタッカ5、リジェクトスタッカ6、第1搬送部7、第2搬送部8、結束部9、第3搬送部10、タッチパネル17及び液晶パネル18が、信号の送受信可能に接続されている。また、制御部120には、紙幣センサ25、集積センサ45、集積センサ52、通過センサ74が接続され、それらの検出信号が入力されるように構成されている。さらに、制御部120には、各種の情報を記憶する記憶部131、有線又は無線の通信線を介して上位端末(例えばサーバ)140に対し信号を入出力する通信部132、及び入出力部133がそれぞれ接続され、制御部120と、記憶部131、通信部132及び入出力部133との間で、各種の信号を入出力するように構成されている。入出力部133は、紙幣処理装置100の外部装置が接続される入出力ポートを構成する。紙幣処理装置100には、例えばプリンタ141、SDカード等の各種のメモリカード142、フラッシュメモリ等の記憶部を有する記憶ドライブ143、及び、バーコードや、二次元コードを読み取るコードリーダー144が、入出力部133を介して接続される。また、紙幣処理装置100には、オペレータが誤った操作等をおこなった際に、音によって警告を行う警告部としてのブザー145が設けられている。ブザー145は制御部120によって作動する。
制御部120は、タッチパネル17からの入力信号及び各種センサからの検知信号等に基づいて制御信号を生成し、ホッパ部2等へ該制御信号を出力する。ホッパ部2等は、制御部120からの制御信号に従って動作する。制御部120は、紙幣処理装置100において、バッチ処理を含む各種の処理を行う処理部を構成する。
〈紙幣処理装置の基本的な動作〉
以下、紙幣処理装置100の動作について説明する。紙幣処理装置100は、基本的に、ホッパ部2に載置された紙幣について、識別部3が識別等を行うと共に、その識別結果と、予め設定した分類ルールとに従って、紙幣を、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに分けて集積することにより、紙幣を分類する動作を行う。分類ルールは、各スタッカ4、5に集積する紙幣を、通貨、金種、新旧の版、正損(ATM正券、テラー正券、正券、及び損券)等によって特定することにより設定される。
まず、オペレータは、処理対象の紙幣をホッパ部2へ載置する。続いて、オペレータは、タッチパネル17を操作して、紙幣の取込を開始する。尚、紙幣センサ25がホッパ部2への紙幣の載置を検知すると、紙幣処理装置100が自動的に紙幣の取込を開始するようにしてもよい。
ホッパ部2に載置された紙幣は、取込ローラ23が作動することにより1枚ずつ取込口24から、筐体12内へ取り込まれていく。取り込まれた紙幣は、第1搬送部7により搬送され、識別部3を通過する。識別部3は、通過する紙幣に関する情報(少なくとも金種、発行年数、新旧情報、正損情報、記番号を含む)を取得し、紙幣情報を制御部120へ通知する。
制御部120は、紙幣に関する情報と、予め設定されている分類ルールとに応じて、当該紙幣に対応する搬送先、つまり、第1結束スタッカ4A、第2結束スタッカ4B、第1非結束スタッカ5A、又は、第2非結束スタッカ5Bを決定する。第1搬送部7は、決定した搬送先に基づいて、紙幣を、第1結束スタッカ4A、第2結束スタッカ4B、第1非結束スタッカ5A、又は、第2非結束スタッカ5Bに搬送する。
尚、第1結束スタッカ4A、及び、第2結束スタッカ4Bが共に、同一種類の紙幣を集積する分類ルールであれば、2つの結束スタッカ4のうち一方の結束スタッカ4へ紙幣が搬送される。一方の結束スタッカ4に集積された紙幣の枚数が所定の枚数(例えば、100枚)に達すると、それ以降の紙幣は、他方の結束スタッカ4へ搬送される。第1非結束スタッカ5A、及び、第2非結束スタッカ5Bが共に、同一種類の紙幣を集積する分類ルールであるときも、同様である。尚、紙幣がリジェクト紙幣であるときには、制御部120は、搬送先をリジェクトスタッカ6とする。リジェクト紙幣は、指定外紙幣、異常紙幣、搬送異常紙幣、及び偽券を含む。指定外紙幣は、正常な紙幣であると判定されたものの、その紙幣の搬送先が、第1結束スタッカ4A、第2結束スタッカ4B、第1非結束スタッカ5A、又は、第2非結束スタッカ5Bのいずれにも設定されていない紙幣である。異常紙幣は、識別部3で取得した情報に基づいて、紙幣であることが判定できなかったものである。搬送異常紙幣は、斜行や連鎖などの搬送異常により、紙幣に関する情報を正常に取得できなかった紙幣である。偽券は、紙幣に関する情報と、予め記憶された偽券情報とを照合した結果、偽券である可能性があると判定された紙幣である。
紙幣処理装置100は、紙幣を分類しながら、結束スタッカ4、又は、非結束スタッカ5に、所定枚数(つまり、設定されたバッチ枚数)の紙幣を集積させるバッチ処理を行うことが可能である。バッチ処理時には、結束スタッカ4、又は、非結束スタッカ5において設定されたバッチ枚数の紙幣が集積されると、そのスタッカでは、新たな紙幣の集積が禁止される。結束スタッカ4に、バッチ枚数の紙幣が集積されると、ロック機構44がアンロック状態になって、扉43が開く。また、照明装置46が、紙幣を取り出すべき結束スタッカ4の内部又は第1取出口47付近を照らす。オペレータは、第1取出口47を通じて結束スタッカ4から紙幣を取り出すことができる。また、非結束スタッカ5に、バッチ枚数の紙幣が集積されると、押出機構54が紙幣を押し出す。また、照明装置55が、紙幣を取り出すべき非結束スタッカ5の内部又は第2取出口53付近を照らす。オペレータは、第2取出口53を通じて非結束スタッカ5から紙幣を取り出す。紙幣の取り出しが完了したことは、集積センサ45及び集積センサ52によって検知され、取り出し完了後は、自動で、又は、手動で、そのスタッカへの新たな紙幣の集積が再開する。
また、結束スタッカ4に集積した紙幣を結束する場合、結束スタッカ4に、設定された結束枚数の紙幣が集積されると、制御部120は、第2搬送部8を制御し、把持ユニット81により第1結束スタッカ4A内の紙幣を把持し、該紙幣を結束部9へ搬送する。その後、制御部120は、結束部9を制御して、紙幣をテープで結束する。結束紙幣は、第3搬送部10によって、投出部11から投出される。
〈紙幣処理装置を利用した業務〉
前述したように、この紙幣処理装置100は、預入業務、払出業務、正損分け業務、大束正損分け業務、カセット回収業務、カセット装填業務、ATM回収業務、ATM装填業務、記番号記録業務の各種の業務における一部の処理を行う際に利用される。この紙幣処理装置100は、様々な機能を有する汎用の紙幣整理機であり、前述の各業務に利用する場合、それらの機能を個別に設定することが必要となる。
紙幣処理装置100は具体的に、以下の各機能を、少なくとも有している。
(1)紙幣の結束を行う機能(結束機能)
(2)分類ルールに従って紙幣を所定の搬送先に搬送する機能(搬送カテゴリ設定機能)、
(3)正損レベル別に、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5の最大集積容量を超える枚数の紙幣を集積する特定バッチ処理機能(正損バッチ機能)、
(4)前記正損バッチ処理が完了した際に、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5から紙幣を取り出した後、紙幣処理装置100の動作の再開を手動で行う機能(つまり、正損バッチ処理が完了したことを条件として紙幣の繰り出しを停止する繰出停止機能)、及び、
(5)紙幣処理装置100において処理を行った紙幣に関する情報が印刷されたラベルをプリンタ141によって印刷する機能(ラベル印刷機能)である。
尚、これら(1)〜(5)の機能以外にも、紙幣処理装置100は、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5に、最大集積容量以下の枚数の紙幣を集積する、通常のバッチ処理機能も有している。
紙幣処理装置100が有する機能は、前記の機能に限らず、これらの機能とは異なる機能を有していてもよい。また、紙幣処理装置100は、これらの機能の一部のみを有していてもよい。
ここで、正損バッチ機能及び繰出停止機能について、詳細に説明をする。前記の通り、正損バッチ機能は、バッチ枚数が結束スタッカ4の集積容量、又は、非結束スタッカ5の集積容量を超えるバッチ処理(特定バッチ処理)を行う機能である。例えば、大束正損分け業務において大束枚数が1000枚とされた場合、バッチ枚数は1000枚である。また、カセット装填業務では、カセットの最大収納枚数が2000枚とすると、空のカセットに紙幣を装填する場合は、バッチ枚数は、例えば2000枚である。結束スタッカ4及び非結束スタッカ5の集積容量は、500枚以下の枚数に設定されていることが多い。そのため、大束枚数やカセットの最大収納枚数は、結束スタッカ4や非結束スタッカ5の集積容量を超える場合がある。また、ATM装填業務において装填枚数が2500枚の場合、バッチ枚数は、例えば2500枚である。
大束正損分け業務では、結束スタッカ4や非結束スタッカ5の集積容量を超える特定バッチ処理を行うために、例えばバッチ枚数を100枚(尚、このバッチ枚数は、結束スタッカ4や非結束スタッカ5の集積容量以下である)とした通常のバッチ処理を、10回、繰り返す。具体的には、100枚の紙幣が、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5に集積されたときに、紙幣処理装置100は、オペレータが、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5から、100枚の紙幣を取り出すまで、そのスタッカへの新たな紙幣の集積を禁止する。オペレータがそのスタッカから紙幣を取り出した後に、紙幣処理装置100はそのスタッカへの新たな紙幣の集積を再開し、100枚の紙幣が、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5に再び集積されるようにする。そして、オペレータが紙幣を取り出すまで待機する。このように、正損バッチ機能を実行するときには、オペレータは、結束スタッカ4又は非結束スタッカ5に100枚の紙幣が集積される度に、そこから紙幣を取り出すことになる。
大束正損分け業務では、1000枚の正券が分類された(つまり、バッチが達成した)ときに、大束に貼付するためのラベルを印刷しかつ、そのラベルを大束に貼り付ける。カセット装填業務では、例えば2000枚のATM正券が分類されたときに、装填が完了したカセットを所定の位置に置き、次に装填するカセットを手元に準備する。
このように、大束正損分け業務、カセット装填業務、及びATM装填業務においては、紙幣の取り出しを繰り返し行うことになるが、そのどこかで、1000枚や2000枚の特定バッチ処理が完了することになる。大束を次々と作成する場合や、カセットの装填を次々に行う場合、オペレータは、いつ、特定バッチ処理が完了したのかがわかりにくい。また、特定バッチ達成時にオペレータは、ラベルの貼付やカセットの準備といった付帯作業を行わなければならない。これらのことが、オペレータのミスを招く虞がある。
そこで、この紙幣処理装置100では、繰出停止機能を設けている。繰出停止機能は、前述したように、大束正損分け業務、カセット装填業務、及びATM装填業務において、特定バッチ処理が完了したことを条件として紙幣処理装置100の繰出動作を停止する機能である。さらに、特定バッチ処理が完了した後に、オペレータが結束スタッカ4又は非結束スタッカ5から紙幣を取り出したとしても、紙幣処理装置100の繰出動作を停止させたままにすることが好ましい。こうすることで、オペレータは、一つの正損バッチ処理が完了したことを確実に認識することが可能になる。オペレータは、例えば付帯作業を行った後に、紙幣処理装置100において所定の操作(例えばタッチパネル17に設けられた再開ボタンの選択操作)を行うことによって、紙幣処理装置100の繰出動作を再開させることが可能である。これにより、ミスを未然に回避することが可能になる。繰出停止機能は、結束部9において作成した結束紙幣が、投出部11から投出される場合にも有効である。
一方で、例えば複数のオペレータが協同して一つの業務を遂行している場合等では、特定バッチ処理が完了したことを受けて紙幣処理装置100の繰出動作を停止せずとも、正確に業務を遂行することが可能である。そのため、この紙幣処理装置100は、繰出停止機能を、オペレータが有効及び無効にすることが可能に構成されている。繰出停止機能をONにしたとき(有効にしたとき)には、前述したように、特定バッチが達成された時点で紙幣処理装置100の繰出動作を停止すると共に、紙幣を結束スタッカ4又は非結束スタッカ5から取り出したとしても、紙幣処理装置100の繰出動作が停止したままになる。紙幣処理装置100の動作の再開は、オペレータの操作による。一方、繰出停止機能をOFFにしたとき(無効にしたとき)には、特定バッチ処理が完了しても、その特定バッチ処理のために使用している結束スタッカ4又は非結束スタッカ5以外のスタッカに紙幣を集積できる場合には、紙幣処理装置100の繰出動作を停止しない。さらに、特定バッチ処理のために使用している結束スタッカ4又は非結束スタッカ5から紙幣を取り出した時に、集積センサ45、52がそのことを検知して、そのスタッカへの紙幣の集積動作を自動的に再開する。
尚、正損バッチ機能等の特定バッチ処理に限らず、通常のバッチ処理においても、繰出停止機能を有効にしてもよい。
ラベル印刷機能において印刷されるラベルには、例えば銀行情報、装置情報、紙幣情報、及び、それらの情報が格納された二次元コードが印刷される。これらの情報の以外の情報がラベルに印刷される場合もある。また、これらの情報の一部のみがラベルに印刷される場合もある。
〈紙幣処理装置の動作設定〉
(1)〜(5)の各機能は、前述した各業務の遂行に常に必要ではなく、業務によっては、不要な機能もある。例えば、正損分け業務においては、正損バッチ機能は不要であるが、大束正損分け機能においては、正損バッチ機能は必要である。従って、紙幣処理装置100を、各業務の遂行に利用しようとすれば、必要な機能については、それを有効にしかつ、不要な機能については、それを無効にする設定をしなければならない。
この紙幣処理装置100は、オペレータによる機能の設定を容易にするために、前述した業務の中から、これから行おうとする業務を選択可能に構成されている。オペレータが業務を選択したときに、前記(1)〜(5)の各機能の内、不要な機能は、自動的に無効となり、それ以外の機能についてのみ、オペレータは、有効・無効の設定、及び、機能を有効にする場合は、その機能の実行に係る詳細な設定が可能となるよう構成されている(つまり、第1モード)。
紙幣処理装置100はまた、前記第1モードでの動作の他に、(1)〜(5)の機能の一つ一つについて、有効にするか、無効にするかを設定すると共に、機能を有効にする場合に、その詳細な設定(例えば正損バッチ機能であれば、そのバッチ枚数等)を、手動で行うモード(つまり、第2モード)も有している。
図4は、紙幣処理装置100において選択可能な業務と、紙幣処理装置100の機能設定との対応を例示している。図4に示す対応関係は、紙幣処理装置100に記憶されており、制御部120は、この対応関係に従って、紙幣処理装置100を動作させる。
同図において「○」で示す機能は、業務の選択時に設定が可能に構成される機能である。「−」で示す機能は、業務の選択時に設定が不可に構成される機能である。つまり、業務の遂行に不要な機能は、オペレータが業務を選択することに伴い自動的に無効となる。
具体的に、結束機能は、預入業務、払出業務、正損分け業務、大束正損分け業務、カセット回収業務、カセット装填業務、ATM回収業務、ATM装填業務、及び記番号記録業務の全ての業務において設定可能である。また、搬送カテゴリ設定機能も、全ての業務において設定可能となる。
正損バッチ機能は、大束正損分け業務、カセット装填業務、及びATM装填業務においてのみ、設定可能であり、その他の業務では設定不可(つまり、無効)である。また、繰出停止機能も、正損バッチ機能と同様に、大束正損分け業務、カセット装填業務、及びATM装填業務においてのみ、設定可能であり、その他の業務では設定不可(つまり、無効)である。ラベル印刷機能は、大束正損分け業務においてのみ、設定可能である。カセット回収業務、カセット装填業務、ATM回収業務、ATM装填業務、記番号記録業務については、ここに示す例では、仕様として実施しない。つまり、カセット回収業務、カセット装填業務、ATM回収業務、ATM装填業務、及び、記番号記録業務の各業務において、ラベル印刷を行うようにしてもよい。尚、ここに示す例では、ラベル印刷機能は、預入業務、払出業務、及び正損分け業務においては、不要とされているため設定不可であるが、これらの業務においても設定可能として、ラベル印刷を行うようにしてもよい。
次に、業務選択時の機能設定について、紙幣処理装置100のタッチパネル17に表示される画面の例を参照しながら、具体的に説明をする。尚、以下の説明に用いる画面S1〜S9は一例であり、画面構成は適宜変更が可能である。
先ず、図5は、初期画面S1の例を示している。この初期画面S1は、紙幣処理装置100を起動し、ログイン処理を行った後に、タッチパネル17に表示される。初期画面S1には、各業務を選択するためのボタンが含まれる。初期画面S1は、業務選択部を構成する。初期画面S1には、預入業務選択ボタン、払出業務選択ボタン、正損分け業務選択ボタン、大束正損分け業務選択ボタン、カセット回収業務選択ボタン、カセット装填業務選択ボタン、ATM回収業務選択ボタン、ATM装填業務選択ボタン、及び記番号記録業務選択ボタンが含まれる。初期画面S1にはまた、第2モード選択ボタンが含まれている。第2モード選択ボタンは、前述したように、業務の選択を行うのではなく、各機能の有効・無効の設定、及び、有効にする場合の当該機能の詳細な設定を、オペレータが一つ一つ行うモードである。オペレータは、初期画面S1において、いずれかの業務選択ボタンを選択することによって、これから行おうとする業務を選択する。業務選択ボタンを選択したときには、紙幣処理装置100は、第1モードで動作することになる。また、第2モード選択ボタンを選択したときには、紙幣処理装置100は、第2モードで動作することになる。尚、初期画面S1に表示されるボタンは、当該紙幣処理装置100を利用する業務に応じて、適宜、削除及び追加することが可能である。
図6は、初期画面S1において、正損分け業務選択ボタンを選択した場合に、タッチパネル17に表示される機能設定画面S2を例示している。この機能設定画面S2には、その左側に、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣を設定する項目(つまり、搬送カテゴリを設定する項目)を含んでいる。図4に示すように、正損分け業務において搬送カテゴリ設定機能は有効であるため、当該機能設定画面S2において、その設定が可能に構成されている。図6に示す機能設定画面S2では、紙幣処理装置100における第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bの配置に対応するように、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣を設定する項目が配置されている。図6の例では、第1及び第2結束スタッカ4A、4Bに、ATM正券(ATM)を集積し、第1非結束スタッカ5Aに、損券(UNFIT)を集積し、第2非結束スタッカ5Bに、テラー正券(TLR)を集積する設定となっている。
機能設定画面S2にはまた、その右側に、結束機能の有効・無効を設定する項目、正損バッチ機能におけるバッチ枚数を設定する項目、繰出停止機能を設定する項目、及びラベル印刷機能を設定する項目が含まれている。これらの項目の内、正損分け業務においては、結束機能は設定可能であるが、正損バッチ機能、繰出停止機能、及びラベル印刷機能はそれぞれ設定不可である(図4参照)。このため、当該機能設定画面S2では、バッチ枚数を設定する項目、繰出停止機能を設定する項目、及びラベル印刷機能を設定する項目が全て設定不可に構成されている(図例では、斜線が引かれている)。
オペレータは、機能設定画面S2において、設定可能に構成された項目について設定を行う。その後、適用(APPLY)ボタンを選択することによって、選択した業務(ここでは、正損分け業務)についての機能設定が完了する。
また、機能設定画面S2の画面右上には、ログインしたオペレータのIDが表示されている。
図7は、初期画面S1において、大束正損分け業務選択ボタンを選択した場合に、タッチパネル17に表示される機能設定画面S3を例示している。この機能設定画面S3も、図6に示す機能設定画面S2と構成は同じである。大束正損分け業務においても、搬送カテゴリ設定機能、及び、結束機能は有効であるため、それらの設定が可能である。
また、大束正損分け業務においては、正損分け業務とは異なり、正損バッチ機能、繰出停止機能、及びラベル印刷機能がそれぞれ有効である(図4参照)。従って、機能設定画面S3では、これらの各項目の設定が可能である。
図7に示す例では、紙幣の正損は3つのレベルに分類される。よって、バッチ枚数を設定する項目は、ATM正券(ATM)、テラー正券(TLR)、及び損券(UNFIT)のそれぞれについて、バッチ枚数を設定することが可能である。図7の例では、ATM正券について、バッチ枚数が1000枚に設定され、テラー正券、及び損券についてはバッチ枚数が設定されていない(つまり、0枚)。尚、紙幣の正損を2つのレベルに分類する場合は、バッチ枚数を設定する項目は、正券(FIT)及び損券(UNFIT)のそれぞれについて、バッチ枚数を設定する。
ここで、機能設定画面S3においては、バッチ枚数の設定に際し、図8に示すようにプルダウンメニューが表示されるように構成されている。オペレータは、プルダウンメニューの中から、所望のバッチ枚数を選択することで、バッチ枚数を設定することが可能である。プルダウンメニューによって、オペレータのバッチ枚数の設定の手間を省くことが可能になる。尚、プルダウンメニューを採用する代わりに、図9に示すように、バッチ枚数の候補を含む枚数選択画面S4を、タッチパネル17に表示するよう構成してもよい。この構成でも、オペレータのバッチ枚数の設定の手間を省くことが可能になる。尚、プルダウンメニューや枚数選択画面S4の表示内容は、オペレータがカスタマイズすることができるようになっている。例えば、プルダウンメニュー中の選択項目や、枚数選択画面S4に表示されるバッチ枚数の候補を追加したり、削除したり、内容を修正したりすることができる。尚、プルダウンメニューや枚数選択画面S4の表示に代えて、または、これらの表示に加えて、「100」や「1000」といった数字を、オペレータが手入力することにより、バッチ枚数の設定を可能に構成してもよい。
図7の例では、繰出停止機能について、ATM正券はONに設定され(つまり、ATM正券の特定バッチ達成後、紙幣処理装置100の繰出動作を停止する。さらに、結束スタッカ4、又は、非結束スタッカ5から紙幣を取り出した後、オペレータが再開操作(例えば、タッチパネル17上に用意されたボタンの選択)を行うまで、紙幣処理装置100の繰出動作を再開しない)、それ以外はOFFに設定されている。具体的には、第1及び第2結束スタッカ4A、4Bに集積されたATM正券の累積枚数が1000枚になった時点で、紙幣処理装置100の繰出動作が停止される。繰出停止機能は、正損バッチ処理を行うことを前提とした機能であるため、機能設定画面S3においては、バッチ枚数が設定されない間は、繰出停止機能の設定が不可となり(つまり、OFFのままになる)、バッチ枚数が設定されると、繰出停止機能の設定が可能となるように構成してもよい。
さらに、図7の例では、ラベル印刷機能について、ATM正券はONに設定され、それ以外はOFFに設定されている。
オペレータは、機能設定画面S3において、設定可能に構成された項目について設定を行う。その後、適用(APPLY)ボタンを選択することによって、選択した業務(ここでは、大束正損分け業務)についての機能設定が完了する。
このように、初期画面S1において、いずれかの業務選択ボタンを選択したときには、紙幣処理装置100は第1モードとなり、制御部120は、図6又は図7に例示するような、選択した業務に対応する機能設定画面S2、S3をタッチパネル17に表示する。オペレータは、この機能設定画面S2、S3において、設定可能な項目についてのみ、設定を行うことによって、紙幣処理装置100の設定が、選択した業務において利用可能な設定となり、紙幣処理装置100は、選択した業務に利用可能に動作する。機能設定画面S2、S3は、前述の通り、選択した業務に応じて、当該業務に必要となり得る機能の設定のみが可能となり、業務に不要な機能の設定が不可となるため、オペレータによる設定の手間を省くことが可能になり、業務効率が向上する。
一方、初期画面S1において、第2モード選択ボタンを選択したときには、紙幣処理装置100は第2モードとなり、紙幣処理装置100が有する全ての機能に対し、設定を行う機能設定画面が、タッチパネル17に表示される(図示省略)。オペレータは、この設定画面において、機能の一つ一つについて、有効・無効の設定、及び、有効時には、その機能の詳細を設定することになる。第2モードにおいても、必要な設定を行えば、紙幣処理装置100を、前述した各業務に利用することが可能になる。
第1モード及び第2モードのいずれにおいても、機能設定画面において、適用ボタンを選択すれば、紙幣処理装置100は、動作が可能なスタンバイ状態に移行する。前述したように、ホッパ部2に紙幣を載置し、動作中にタッチパネル17に表示される画面内の開始ボタンを選択すれば、設定された内容に従って、紙幣処理装置100が動作をする。
尚、前記の構成では、第1モードでは、機能設定画面S3、S4において、業務に必要な機能の設定をオペレータが行うように構成している。これとは異なり、各業務に対応するデフォルトの機能設定を予め設けておき、初期画面S1において、いずれかの業務を選択したときには、機能設定画面S2、S3を表示することなく、デフォルトの機能が自動的に設定され(つまり、業務に必要な機能は有効に、不要な機能は無効にされ)、紙幣処理装置100がスタンバイ状態に移行するように構成してもよい。こうすることで、ユーザの設定の手間を大幅に省くことが可能になる。尚、デフォルトの機能設定を設ける構成においては、オペレータが、必要に応じて機能設定を変更可能に構成してもよい。
〈出力用データファイルの説明〉
紙幣処理装置100は、前述した業務に利用されるときに、識別部3が読み取った紙幣情報を含む出力用データファイルを作成すると共に、作成した出力用データファイルを、外部に出力する機能を有する。出力用データファイルの作成は、制御部120が行う。制御部120は、ファイル作成部を構成する。出力用データファイルには、紙幣の追跡等が可能になるように、現物紙幣に紐付けられる紐付けデータ(紐付け情報)が含まれる。例えば紙幣の記番号を検索キーとして、出力用データファイルから紙幣を特定したときに、紐付けデータに基づいて、当該紙幣に係る顧客や、紙幣が装填されたカセット、又は、紙幣が装填されたATM等を追跡することが可能になる。
図10は、前述した各業務における現物紙幣の管理単位を示している。紙幣処理装置100が作成する出力用データファイルは、現物紙幣の管理単位と対応する。以下、各業務の管理単位、及び、作成される出力用データファイルについて、並びに、出力用データファイルに含まれる紐付けデータについて説明をする。
先ず、預入業務、及び、払出業務は共に、取引が現物紙幣の管理単位である。預入業務、及び、払出業務において作成する出力用データファイルの作成単位も、取引である。つまり、預入業務、及び、払出業務では、一つの取引において、紙幣処理装置100が処理を行った現物紙幣をまとめて管理すると共に、その一つの取引において、紙幣処理装置100が処理を行った紙幣全ての情報を、一つの出力用データファイルにまとめる。また、預入業務及び払出業務について、現物紙幣の紐付けの対象は当該取引に係る顧客であり、出力用データファイルに含める紐付けデータは、当該顧客を特定するID(ユーザID)である。
正損分け業務では、現物紙幣の管理単位の規定がない。正損分け業務において作成する出力用データファイルの作成単位は、正損カテゴリである。つまり、正損分け業務において、例えば、紙幣の正損を2つのレベルに分類する場合には、当該業務において、紙幣処理装置100が処理を行った紙幣のうち、正券の情報を、一つの出力用データファイルにまとめ、損券の情報を、別の一つの出力用データファイルにまとめる。同様に、紙幣の正損を3つのレベルに分類する場合には、ATM正券の情報を、一つの出力用データファイルにまとめ、テラー正券の情報を、別の一つの出力用データファイルにまとめ、損券の情報を、さらに別の一つの出力用データファイルにまとめる。また正損分け業務においては、紐付けが不要であるため、出力用データファイルに紐付けデータは含まれない。
大束正損分け業務では、現物紙幣のうち大束単位に分類された紙幣の管理単位は大束である。また、大束正損分け業務において、そのような紙幣について作成する出力用データファイルの作成単位は、大束である。従って、大束正損分け業務では、現物紙幣のうち大束単位に分類された紙幣は、正券、又は、損券によって作成した大束単位で管理を行うと共に、作成した大束毎に、当該大束に含まれる紙幣全ての情報を、一つの出力用データファイルにまとめる。大束正損分け業務においては、現物紙幣の紐付け対象が大束紙幣であり、紐付けデータは、当該大束に付与された大束IDである。
また、大束正損分け業務では、大束単位に分類されなかった紙幣(例えば、紙幣処理装置100が識別を行った結果、正券として分類されたものの、大束単位にまとめることができなかった端数紙幣等)は、別途管理される。すなわち、現物紙幣のうち、大束単位に分類されなかった紙幣の管理単位は「大束以外」である。また、そのような紙幣について作成する出力用データファイルの作成単位は、正損分け業務と同様に、正損カテゴリである。
従って、大束正損分け業務では、大束単位で現物紙幣が管理されると共に、大束単位に分類された紙幣の情報が、一つのファイルにまとめられることになる。一方で、紙幣処理装置100が処理を行ったものの、大束単位に分類されなかった現物紙幣は、別途管理されると共に、大束単位に分類されなかった紙幣の出力用データファイルが、別途作成されることになる。尚、大束正損分け業務において、大束単位に分類できなかった紙幣については、紐付けが不要であるため、出力用データファイルに紐付けデータは含まれない。
カセット回収業務では、現物紙幣の管理単位は、回収対象のカセットであり、出力用データファイルの作成単位は、当該カセットである。カセット回収業務においては、回収対象のカセット単位で、現物紙幣が管理されると共に、当該カセットから回収された紙幣の全ての情報が、一つの出力用データファイルにまとめられる。カセット回収業務では、紐付け対象は、回収対象のカセットであり、紐付けデータは、当該カセットを特定するカセット番号である。
また、ATM回収業務も、カセット回収業務に準じ、ATM回収業務においては、回収対象のATM単位で、現物紙幣が管理されると共に、当該ATMから回収された紙幣の全ての情報が、一つの出力用データファイルにまとめられる。ATM回収業務において、紐付け対象は、回収対象のATMであり、紐付けデータは、当該ATMを特定するATM番号である。
カセット装填業務では、現物紙幣の管理単位は、装填対象のカセットである。出力用データファイルの作成単位は、カセットである。また、カセット装填業務では、様々な理由によってカセットに装填することができなかった紙幣(例えば、紙幣処理装置100が識別を行った結果、ATM正券でなかった等の紙幣。「装填カセット以外」)を、別途管理すると共に、当該装填できなかった紙幣(装填紙幣以外)に関する出力用データファイルを、別途、作成する(「装填紙幣以外まとめて」)。従って、カセット装填業務では、装填カセット単位で現物紙幣が管理されると共に、紙幣処理装置100が処理を行ったものの、カセットに装填できなかった現物紙幣が、別途管理されかつ、カセットに装填された紙幣の情報が、一つのファイルにまとめられると共に、カセットに装填されなかった紙幣の出力用データファイルが、別途作成される。カセット装填業務では、紐付け対象は、装填対象のカセットであり、紐付けデータは、当該カセットを特定するカセット番号である。また、カセット装填業務において、カセットに装填されなかった紙幣については、紐付け不要であり、出力用データファイルに、紐付けデータは含まれない。
ATM装填業務も、カセット装填業務に準じ、ATM装填業務では、ATM単位で現物紙幣が管理されると共に、紙幣処理装置100が処理を行ったものの、ATMに装填できなかった現物紙幣が、別途管理される。ATMに装填された紙幣の情報が、一つの出力用データファイルにまとめられると共に、ATMに装填されなかった紙幣の出力用データファイルが、別途作成される。ATM装填業務では、紐付け対象は、装填対象のATMであり、紐付けデータは、当該ATMを特定するATM番号である。ATM装填業務において、ATMに装填されなかった紙幣については、紐付け不要であり、出力用データファイルに紐付けデータは、含まれない。
記番号記録業務では、現物紙幣の記録単位の規定がない。記番号記録業務では、設定した枚数単位で、一つの紙幣出力用データファイルが作成される。また、記番号記録業務では、紐付け不要であり、出力用データファイルに紐付けデータは、含まれない。
紙幣処理装置100が第1モードで動作するときには、選択した業務に対応するように、出力用データファイルの作成単位、及び、その出力用データファイルに含める紐付けデータが、自動的に設定される(図4参照)。一方、紙幣処理装置100が第2モードで動作するときには、オペレータが、出力用データファイルの作成単位、及び、その出力用データファイルに含める紐付けデータを、それぞれ手動で設定する。
図11は、出力用データファイルの構成を概念的に示している。出力用データファイルは、少なくとも紙幣一枚分の紙幣に関する情報(つまり、紙幣データ)を含む。尚、図11に示す例では、出力用データファイルは、紙幣X枚分の紙幣データと、紐付けデータとを含んでいる。
紙幣データは、ここでは、図11に示すように、処理日時と、処理IDと、RJフラグと、RJ要因と、通貨コードと、金種と、発行年数と、新旧情報と、正損情報と、搬送先と、結束IDと、記番号と、イメージデータIDとから構成されている。尚、紙幣データは、図11に示す例に限定されない。紙幣データに含める項目を、図11の例よりも少なくしたり、図11の例に存在しない項目を紙幣データに含めたりしてもよい。
具体的に、処理日時は、紙幣処理装置100が紙幣を計数処理した日時を示す情報である。処理IDは、紙幣処理装置100が処理を実行する毎に、当該処理に対して付与されるIDである。RJフラグは、紙幣がリジェクト紙幣であるか否かを示すフラグである。RJ要因は、リジェクト紙幣であると判定された紙幣が、指定外紙幣、異常紙幣、搬送異常紙幣、及び偽券のうちのいずれに該当するのかを示す情報である。発行年数は、紙幣の発行年であり、例えば西暦の下2桁の年数によって表すことが可能である。新旧情報は、前述したように、紙幣の版を示す情報である。正損情報は、紙幣の正損を特定する情報であり、詳しくは、紙幣の正損を3つのレベルで分類する場合であれば、識別された紙幣が、前述のATM正券、テラー正券、及び損券のいずれに該当するかを示す情報である。搬送先は、紙幣処理装置100において、紙幣が搬送されたスタッカを示す情報であり、第1結束スタッカ4A、第2結束スタッカ4B、第1非結束スタッカ5A、及び、第2非結束スタッカ5Bのいずれに搬送されたのかを示す情報である。結束IDは、紙幣処理装置100が紙幣の結束を行ったときに、当該結束紙幣に付与されるIDである。イメージデータIDは、紙幣の識別に使用したイメージデータを特定するために付与されるIDである。イメージデータそのものは、当該出力用データファイルに含まれない。こうすることで、出力用データファイルのデータ量を削減することが可能になる。尚、イメージデータは、別途、紙幣処理装置100の記憶部131、又は、上位端末140において、イメージデータIDと対応付けて記憶及び管理される。
図11の例に追加可能な項目としては、例えば、紙幣処理装置100が第1モードで動作したのか、又は、第2モードで動作したのかを特定するための情報や、紙幣処理装置100を操作したオペレータを特定するためのオペレータIDや、紙幣処理装置100を特定するための処理機IDや、カセット番号(カセット回収業務、又はカセット装填業務に限る)や、ATM番号(ATM回収、又はATM装填業務に限る)や、偽券判定の詳細(透かし異常、磁気異常、及び記番号異常など)や、各バッチ又は取引における金種別枚数又は総額などが挙げられる。
出力用データファイルは、予め設定された所定のフォーマットで作成される。出力用データファイルのフォーマットは、変更可能に構成されている。変更可能なフォーマットには、紙幣処理装置100の標準フォーマット、及び、上位端末140におけるデータ管理に適したフォーマット等が含まれる。このように構成することで、出力用データファイルのフォーマットを、情報の出力先において要求されるフォーマットに適合させることができる。フォーマットの設定・変更は、図示は省略するが、タッチパネル17に表示されるフォーマット設定画面において行うことが可能である。尚、出力用データファイルのフォーマットは、業務毎に設定されていたり、スタッカ4、5毎に設定されていたりしてもよい。
〈紙幣処理装置の動作中の機能〉
紙幣処理装置100は、選択した業務に応じて、紙幣処理装置100の動作中に、タッチパネル17に表示される画面の構成が異なる。つまり、紙幣処理装置100の動作中には、実行中の業務に適したインターフェースが、オペレータに提供される。
図12は、預入業務において、紙幣処理装置100の動作中に、タッチパネル17に表示される画面S5を例示している。この画面S5では、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣の種類が明示されると共に、各スタッカ4、5に集積されている紙幣の枚数が表示されている。図例では、紙幣の種類として正損レベルが明示されている。具体的には、結束スタッカ4に集積される紙幣が正券であり、第1結束スタッカ4Aに35枚の正券が集積されていることが示されている。また、非結束スタッカ5に集積される紙幣が損券であり、第1非結束スタッカ5Aに20枚の損券が集積されていることが示されている。この画面S5にはまた、これまでに処理を行った正券の総枚数、及び、損券の総枚数が表示されると共に、正券及び損券のそれぞれについて、バッチに達した回数が表示されている。さらに、処理を行った紙幣の総額が表示されている。
処理の完了後に、オペレータが承認(ACCEPT)ボタンを選択することにより、一つの処理、つまり一取引を完了することができる。次の処理を行う際には、ホッパ部2に紙幣を載置して、開始(START)ボタンを選択する。これにより、前の処理の計数結果が消去され、次の処理が開始する。処理の途中で取引をキャンセルする場合は、消去(CLEAR)ボタンを選択することにより、前の処理の計数結果が消去され、次の処理を開始することができる。
この画面S5の構成は、図示は省略するが、払出業務、正損分け業務、及び記番号記録業務においても同様である。
図13は、カセット回収業務、又は、ATM回収業務において、紙幣処理装置100の動作中に、タッチパネル17に表示される画面S6を例示している。この画面S6においても、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣の正損レベルが明示され、各スタッカ4、5に集積されている紙幣の枚数が表示されている。また、これまでに処理を行った正券の総枚数、及び、損券の総枚数が表示されると共に、正券及び損券のバッチに至った回数がそれぞれ表示される。さらに、処理を行った紙幣の総額が表示されている。また、承認(ACCEPT)ボタンと、消去(CLEAR)ボタンと、スタート(START)ボタンとが設けられている。これらは、図12に示す画面S5と同じである。
カセット回収業務における画面S6では、現在の回収対象のカセットの番号が表示される(CST No.)と共に、このカセットの回収が完了した後、次に回収を行うカセットの番号を入力するためのカセット切り替えボタン(Next CST)が設けられている。
図14は、カセット切り替えボタンが選択されたときに、タッチパネル17に表示されるカセット番号入力画面S7を例示している。この画面S7の右側には、カセット番号を手入力するためのボタンが設けられ、左側には、入力したカセット番号を表示する欄が設けられている。オペレータは、ボタン操作によって、英字及び/又は数字を含むカセット番号を指定すると共に、入力(ENTER)ボタンを選択することにより、次に回収を行うカセット番号が入力され、図13に示す画面S6において、入力したカセット番号が表示されるようになる。尚、カセット回収業務の開始時にも、カセット番号入力画面S7がタッチパネル17に表示される。
尚、ここでは、回収対象のカセットを切り替える度に、オペレータがカセット番号を手入力するようにしているが、例えばカセット回収業務の開始時に、回収対象のカセットの番号を、予め全て入力しておき、カセットを切り替える時には、入力されているカセットの番号から、次に回収対象となるカセット番号を選択するように構成してもよい。また、カセット番号を手入力するのではなく、カセットに付されたコードや、伝票に記載されたコードをコードリーダー144で読み取り、読み取ったコードより取得したカセット番号を入力するようにしてもよい。
尚、ATM回収業務においては、画面S6において、カセット番号に代えて、ATM番号が表示され、カセット切り替えボタンの代わりに、ATM切り替えボタンが設けられる。ATM回収業務においては、カセット切り替えボタンと、ATM切り替えボタンとの両方を設けてもよい。
尚、カセット回収業務において、カセットは複数にまたがるが、一つの取引とする運用としてもよい。この運用では、処理の途中でカセットの切り替えが行われるが、カセットの切り替えを行っても、画面S6における総額は消去されないように構成される。また、この運用のカセット回収業務において紙幣の結束を行う場合、異なるカセットにまたがって、紙幣を集積し、一つの結束紙幣とすることが可能になる。つまり、一つのカセットの回収が完了したときに端数となっていても、次のカセットから回収した紙幣と合わせて、一つの結束紙幣を作成することが可能である。尚、このような運用では、出力用データファイルの作成単位は、各カセットとしてもよいし、一取引としてもよい。
図15は、カセット装填業務、及び、ATM装填業務において、紙幣処理装置100の動作中に、タッチパネル17に表示される画面S8を示している。この画面S8においても、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣の正損レベルが明示され、各スタッカに集積されている紙幣の枚数が表示されている。
また、画面の右側には、これまでに処理を行った正券の総枚数(図例では、ATM正券及びテラー正券に分けている)、及び、損券の総枚数が表示されると共に、正券及び損券のバッチに至った回数がそれぞれ表示される。また、現時点で集積中の紙幣の枚数、及び、これまでに装填完了したカセットの個数が表示される。さらに、設定されているカセットの装填枚数(バッチ枚数)が表示されている(図例では2000枚)と共に、処理を行った紙幣の総額が表示されている。また、承認(ACCEPT)ボタンと、消去(CLEAR)ボタンと、スタート(START)ボタンとが設けられている。画面S8には、現在の装填対象のカセットの番号が表示される。カセット装填業務においては、カセット装填枚数に対応するバッチ枚数に到達したときに、次の装填対象のカセットの番号を入力する画面S7(図14参照)が、タッチパネル17に自動的に表示される。オペレータがカセット番号入力画面S7において、次の装填対象のカセット番号を入力すれば、カセット装填業務が再開される。尚、画面S8においても、図13に示す画面S6と同様に、次の装填対象のカセットに切り替えるための、カセット切り替えボタンを設けてもよい。
尚、ATM装填業務においては、画面S8において、カセット番号に代えて、ATM番号が表示される。また、ATMの装填枚数の対応するバッチ枚数に到達したときに、次の装填対象のATMの番号を入力する画面(図示省略)が、タッチパネル17に自動的に表示される。ATM装填業務の画面においても、次の装填対象のATMに切り替えるための、ATM切り替えボタンを設けてもよい。
図16は、大束正損分け業務において、紙幣処理装置100の動作中に、タッチパネル17に表示される画面S9を例示している。この画面S9においても、第1及び第2結束スタッカ4A、4B、並びに、第1及び第2非結束スタッカ5A、5Bに集積する紙幣の正損レベルが明示され、各スタッカに集積されている紙幣の枚数が表示されている。
また、この画面S9では、これまでに処理を行った正券の総枚数、及び、損券の総枚数が表示されると共に、正券及び損券のバッチに至った回数がそれぞれ表示される。さらに、現時点で集積中の紙幣の枚数、これまでに作成をした大束の数、及び、設定されている大束の枚数(図例では1000枚)が、表示されている。また、処理を行った紙幣の総額も表示されている。これらは、図15に示す画面S8と、ほぼ同じである。この画面S9にはまた、承認(ACCEPT)ボタンと、消去(CLEAR)ボタンと、スタート(START)ボタンとが設けられている他、大束正損分け処理においてのみ有効な、ラベル印刷を行うためのボタン(RE−PRINTボタン)が設けられている。
以上のように、この紙幣処理装置100では、業務の選択に応じて、当該業務に対応するインターフェースが、オペレータに提供される。具体的に、カセット回収業務及びATM回収業務においては、制御部120は、カセット及びATM番号、並びに、カセット及びATM切り替えボタンを、タッチパネル17に表示しかつ、番号入力画面S7を、タッチパネル17に表示する(図13、図14参照)。また、カセット装填及びATM装填業務においては、制御部120は、カセット及びATM番号を、タッチパネル17に表示しかつ、番号入力画面S7を、タッチパネル17に表示する(図14、図15参照)。図4に「UIの提供」として示すように、業務の選択に応じて、当該業務に対応するインターフェースを自動的に切り替えてオペレータに提供することにより、紙幣処理装置100の使い勝手が向上する。
〈取り出すべき紙幣を視覚的に誘導する制御〉
カセット装填業務や、ATM装填業務、又は、大束正損分け業務においては、前述したように、オペレータは、一つのバッチが達成するまでの間に、結束スタッカ4、又は、非結束スタッカ5から、紙幣の取り出しを複数回繰り返すことになる。そのため、紙幣処理装置100の複数のスタッカ4,5のそれぞれでバッチが完了したような場合において、どのスタッカから紙幣の取り出しを行うべきか、わかりにくくなる場合がある。
現物紙幣の管理単位と、出力用データファイルの作成単位とを対応づけているときに、誤ったスタッカから紙幣を取り出してしまうと、現物紙幣と紙幣データとが対応しなくなる虞がある。例えばカセット装填業務や、ATM装填業務、又は、大束正損分け業務において、1つのスタッカでバッチが達成した直後に、別のスタッカでもバッチが完了したときに、当該別のスタッカから先に紙幣を取り出してしまうと、現物紙幣の順番と、紙幣データの順番とが対応しなくなる。また、最後のバッチが達成した(特定バッチ処理が完了した)直後に、別のスタッカにおいてバッチが完了したときに、当該別のスタッカから紙幣を取り出してしまうと、現物紙幣を、誤ったカセットやATMに装填したり、誤った大束に含めたりすることになる。
そこで、この紙幣処理装置100では、カセット装填業務や、ATM装填業務、又は、大束正損分け業務の遂行中に、いずれかのスタッカ4、5においてバッチ枚数に達した時には、紙幣を取り出すべきスタッカを、オペレータに視覚的に示すよう構成されている。この紙幣処理装置100では、複数の手段により、紙幣を取り出すべきスタッカに、オペレータを視覚的に誘導している。
図17は、カセット装填業務においてタッチパネル17に表示される画面S8を示している。画面の構成は、図15に示す画面S8と同じである。図17の例では、第1非結束スタッカ5Aと、第2非結束スタッカ5Bとの双方において、バッチ枚数(100枚)が達成している。制御部120は、バッチ枚数に到達した2つのスタッカ5A、5Bの内、先に紙幣を取り出すべきスタッカの枚数表示を点滅させる。図17の例では、
第1非結束スタッカ5Aの表示が点滅している。こうすることで、オペレータに対し、先に紙幣を取り出すべきスタッカを、視覚的に示す。
画面S8においては、紙幣処理装置100におけるスタッカ4、5の実際のレイアウトに対応して、第1結束スタッカ4A、第2結束スタッカ4B,第1非結束スタッカ5A、及び、第2非結束スタッカ5Bの情報が表示されると共に、紙幣を取り出すべきスタッカを点滅によって明示するから、オペレータは、スタッカを間違うことなく、正しいスタッカから紙幣を取り出すことが可能になる。尚、点滅表示に変えて、スタッカの枚数表示の色を、他のスタッカとは異ならせることによって、紙幣を取り出すべきスタッカを視覚的に示すようにしてもよい。
また、画面S8では、各スタッカ5A、5Bについて、集積している紙幣の正損レベルと、正損レベル以外の複数の種類の情報を表示している。図例において、「New」は、当該紙幣が新版であること、「Old」は、当該紙幣が旧版であることを意味する。これにより、オペレータは、取り出すべき紙幣の版がわかるため、当該版に対応する紙幣を、スタッカから取り出すべきであることがわかる。さらに、画面S8の例では、紙幣の金種の情報も表示している(図例では、「20元」と「10元」)。オペレータは、これにより、取り出すべき紙幣の金種がわかる。
タッチパネル17に表示することに加えて、この紙幣処理装置100では、非結束スタッカ5の近傍に取り付けられている液晶パネル18に、第1非結束スタッカ5A、及び、第2非結束スタッカ5Bに集積している紙幣の金種及びバージョンを表示する。こうすることで、オペレータは、タッチパネル17の表示内容と、液晶パネル18の表示内容とに基づいて、紙幣を取り出すべきスタッカを正確に認識することが可能になる。
さらに、この紙幣処理装置100では、紙幣を取り出すべきスタッカ4、5において、照明装置46、55を点滅又は点灯させるように構成されている。こうすることで、取り出すべき紙幣が照らされるため、オペレータは、紙幣を取り出すべきスタッカをさらに明確に認識することが可能になる。
加えて、この紙幣処理装置100では、紙幣を取り出すべきスタッカが、結束スタッカ4であるときには、ロック機構44をアンロック状態にすることで、扉43を開ける(図1参照)。こうすることで、紙幣を取り出すべき結束スタッカ4が、さらに明確になると共に、紙幣の取り出しが可能になる。また、紙幣を取り出すべきスタッカが、非結束スタッカ5であるときには、押出機構54によって、集積している紙幣を押し出す(図1参照)。こうすることで、紙幣を取り出すべき非結束スタッカ5が、さらに明確になる。
この紙幣処理装置100においては、タッチパネル17、液晶パネル18、結束スタッカ4の扉43、ロック機構44及び照明装置46、非結束スタッカ5の押出機構54及び照明装置55が、視覚誘導部を構成する。
紙幣処理装置100は、これらオペレータを視覚的に誘導する複数の手段の内の、少なくとも一つを有している、としてもよい。
紙幣がスタッカ4、5から取り出されたことは、集積センサ45、52によって検知される。正しいスタッカから紙幣が取り出されたときには、次に紙幣を取り出すべきスタッカを、オペレータに視覚的に示すか、紙幣処理装置100の動作を再開するか、紙幣処理装置100をスタンバイ状態にする。
一方、誤ったスタッカから紙幣が取り出されたことも、集積センサ45、52によって検知が可能である。誤ったスタッカから紙幣が取り出されたときには、制御部120は、タッチパネル17にその旨を表示してもよい(つまり、表示による警告)。また、ブザー145により、音でオペレータに警告を行ってもよい。タッチパネル17及びブザー145はそれぞれ、警告部を構成する。さらに、紙幣処理装置100の動作の再開を禁止してもよい。誤ったスタッカから取り出された紙幣が元に戻され、正しいスタッカから紙幣が取り出されれば、前述のように、次に紙幣を取り出すべきスタッカを、オペレータに視覚的に示すか、紙幣処理装置100の動作を再開するか、紙幣処理装置100をスタンバイ状態にする。
尚、紙幣を取り出すべきスタッカを明示する制御は、正損バッチ処理時に限らず、通常のバッチ処理において行ってもよいし、また、バッチ処理に限らず、スタッカから紙幣の取り出し忘れを防止するために、様々な処理における一取引の終了後に行ってもよい。
〈バッチ処理の完了時を明示する制御〉
前述したように、大束正損分け業務、カセット装填業務、又は、ATM装填業務においては、複数回の通常バッチ処理が繰り返されるため、オペレータは、いつ特定バッチ処理が完了したかがわかりにくい。具体的には、いつ大束のバッチ枚数に達したか、カセット装填のバッチ枚数に達したか、又は、ATM装填のバッチ枚数に達したかがわかりにくい。そこで、図18に示すように、大束正損分け業務、カセット装填業務、又は、ATM装填業務において、特定バッチ処理のバッチ枚数(以下、「特定バッチ枚数」と称する場合がある)に達したときに、その旨をタッチパネル17に表示してもよい。図例は、カセット装填業務において表示される画面S8を示しており、設定したカセット装填の特定バッチ枚数に達したことと、通常バッチが最後に達成されたスタッカを表示している(「Cassette batch complete for stacker 2」)。特定バッチ枚数に到達したことの表示(以下、「特定バッチ枚数達成表示」と称する場合がある)は、必要に応じて強調表示(例えば点滅等)としてもよい。
ここで、前述したように、大束正損分け業務、カセット装填業務、又は、ATM装填業務において繰出停止機能が有効である場合には、特定バッチ処理が完了したことを条件に、紙幣処理装置100の繰出動作が停止する。さらに、最後の通常バッチが達成されたスタッカから紙幣を取り出した後、オペレータが再開操作を行うまで、紙幣処理装置100の繰出動作を停止してもよい。この場合は、オペレータが再開操作を行うまで、前記の特定バッチ枚数達成表示を継続させればよい。
一方、繰出停止機能が無効である場合には、特定バッチ処理が完了しても紙幣処理装置100の繰出動作は停止しない。そのため、スタッカから紙幣を取り出した直後に、そのスタッカに新たな紙幣が集積される場合があり、バッチ枚数達成表示もすぐに消え、新たに集積された紙幣の情報を表示してしまうことになり、オペレータが、特定バッチ枚数達成表示を見落としてしまう虞がある。そこで、紙幣をスタッカから取り出した後、所定時間だけ、特定バッチ枚数達成表示を継続するように構成してもよい。こうすることで、オペレータの見落としを防止することができ、大束正損分け業務、カセット装填業務、又は、ATM装填業務の各業務を、正確に遂行することができるようになる。
〈出力用データファイルの出力タイミング〉
紙幣処理装置100において処理を行うと、バックグラウンドで、選択した業務に対応する作成単位で、出力用データファイルが作成される(図4参照)。紙幣処理装置100の制御部120は、作成した出力用データファイルを、通信部132を通じて上位端末140に出力する。尚、上位端末140に出力することに代えて、又は、上位端末140に出力することに加えて、制御部120は、入出力部133を通じて、メモリカード142や記憶ドライブ143に出力するとしてもよいし、プリンタ141において、紙幣データ等を印刷するとしてもよい。さらに、図示を省略する外部のディスプレイに、紙幣データ等を表示するとしてもよい。制御部120は、出力用データファイルを、紙幣処理装置100の外部に出力する出力部を構成する。
ここで、出力用データファイルの作成単位は、業務に対応して異なるため、その作成タイミングも、業務に対応して異なる。紙幣処理装置100において、出力用データファイルの出力タイミングを一定にしたのでは、出力用データファイルを適切なタイミングで出力することができなくなる虞がある。業務に応じて出力用データファイルの作成単位を変えることに対応して、出力用データファイルの出力タイミングも変えることが必要である。
そこで、紙幣処理装置100は、複数の出力条件を予め設定しておき、複数の出力条件から選択した出力条件に基づいて、出力用データファイルの出力タイミングを制御する。詳しくは、制御部120は、適宜選択した出力条件の成立後に、出力用データファイルを出力するよう、制御部120が出力するタイミングを制御するよう構成されている。具体的に、第1モードでは、出力用データファイルの出力を行うための条件が、業務に対応して設定されている。業務を選択することによって、出力条件も自動的に選択される。第2モードでは、オペレータが、複数の条件から一つの出力条件を選択する。
先ず、図4を参照しながら、第1モードにおいて、各業務に対応して設定されている出力用データファイルの出力条件について、説明する。前述したように、制御部120は、この対応関係に従って、紙幣処理装置100を動作させるため、制御部120は、複数の条件の中から、一つの条件を選択する条件選択部を構成する。
預入業務及び払出業務の出力条件は、一取引が完了したことである。一取引は、図12に示す画面S5において、承認ボタンが選択されることで完了する。この出力条件は、オペレータが出力用データファイルの出力を指示する操作を行ったこと、と言い換えることも可能である。承認ボタンの選択以降に、紙幣処理装置100の制御部120は、取引毎に作成した出力用データファイルを出力する。ここで「承認ボタンの選択以降」は、承認ボタンを選択したとき、及び、その後を含む。以下の説明においても同様である。従って、承認ボタンの選択したタイミングで、制御部120は出力用データファイルを出力してもよいし、承認ボタンの選択後、所定の遅れ時間経過後に、制御部120は出力用データファイルを出力してもよい。尚、取引の完了は、画面S5において、承認ボタンが選択されることで完了するものに限られない。例えば、取引は、上位端末140からの指示により完了するものとしてもよい。また、上位端末140や図12に示す画面S5で顧客を特定するIDを入力できるようにすれば、取引は、次の預入業務または払出業務を行うために別の顧客を特定するIDが入力されることで完了するものとしてもよい。
正損分け業務の出力条件は、紙幣処理装置100の正損分け処理が最後に行われてから所定時間(例えば10分)が経過したこと、及び、正損分け処理をした紙幣の枚数が所定枚数(例えば2000枚)に達したことの、いずれか一方が成立したことである。条件成立以降の所定のタイミングで、制御部120は、それまでに処理を行った、正損レベルごとの出力用データファイルをそれぞれ出力する。尚、正損分け業務の出力条件は、オペレータが、前記2つの条件の内のいずれか一方の条件を選択してもよい。この場合、制御部120は、その選択した条件が成立した以降のタイミングで、出力用データファイルを出力する。
大束正損分け業務では、処理した現物紙幣を大束単位で管理できる場合の出力条件は、一つの大束作成のための特定バッチ処理が完了したことである。具体的には、一つの大束作成のための特定バッチ処理が完了した以降の所定のタイミング(完了した時点、または完了した時点から所定の時間が経過した時点)で、制御部120は、大束単位で作成した出力用データファイルを出力する。大束正損分け業務において、繰出停止機能が有効であるときには、制御部120は、特定バッチ処理の最後の通常バッチ処理が完了した以降のタイミングで、出力用データファイルを出力するようにしてもよい。また、オペレータが、最後の通常バッチ処理が完了したスタッカ4,5から紙幣を取り出した以降のタイミングで、制御部120は、出力用データファイルを出力するようにしてもよい。さらに、オペレータが、次の特定バッチ処理の再開を指示したとき以降のタイミングで、制御部120は、出力用データファイルを出力するようにしてもよい。また、繰出停止機能が無効であるときには、制御部120は、特定バッチ処理の最後の通常バッチ処理が完了した以降の適宜のタイミングで、出力用データファイルを出力すればよい。
ここで、例えば、特定バッチ枚数が1000枚に設定された大束正損分け業務において、5100枚の紙幣が、紙幣処理装置100に取り込まれた場合を考える。この場合、制御部120は、1000枚×5束=5000枚分の紙幣データを、5つの出力用データファイルとして、順次、出力する。一方、5100枚−5000枚=100枚分の端数紙幣は、現物紙幣の管理単位が「大束以外」の紙幣として管理される。大束正損分け業務が完了し、タッチパネル17に表示されている承認ボタンを、オペレータが選択したことを条件にして、制御部120は、端数紙幣に係る出力用データファイルを、出力するようにしてもよい。あるいは、出力用データファイルへの最後のデータ書き込みから所定時間(例えば10分)が経過したことを条件として、制御部120は、端数紙幣に係る出力用データファイルを、出力するようにしてもよい。
カセット回収業務の出力条件は、一つのカセットについて回収業務が完了したことである。前述したように、図13に示す画面S6において、一つのカセットについて回収業務が完了すれば、カセット切り替えボタンが選択される。制御部120は、カセット切り替えボタンが選択された以降の所定のタイミングで、当該回収対象のカセット単位で作成した出力用データファイルを出力する。また、一つのカセットについて回収業務が完了し、オペレータがタッチパネル17に表示されている承認ボタンを選択した場合にも、制御部120は、当該回収対象のカセット単位で作成した出力用データファイルを出力する。
ATM回収業務の出力条件も、カセット回収業務と同じであり、一つのATMについて回収業務が完了したことである。従って、画面S6において、ATM切り替えボタンが選択された以降の所定のタイミングで、制御部120は、当該回収対象のATM単位で作成した出力用データファイルを出力する。また、一つのATMについて回収業務が完了し、オペレータがタッチパネル17に表示されている承認ボタンを選択した場合にも、制御部120は、当該回収対象のATM単位で作成した出力用データファイルを出力する。
カセット装填業務においては、前述したように、装填カセットを作成単位とする出力用データファイルと、装填紙幣以外の出力用データファイルとの2種類の出力用データファイルを作成する。装填カセット単位の出力用データファイルは、一つのカセットに装填するための特定バッチ処理が完了したことが出力条件である。特定バッチ処理の完了以降の所定のタイミングで、制御部120は、当該カセット単位の出力用データファイルを出力する。カセット装填業務において、繰出停止機能が有効であるときには、前述したように、制御部120は、特定バッチ枚数に到達した以降のタイミングで、又は、オペレータが、特定バッチ処理の最後の通常バッチ処理が完了したスタッカ4、5から紙幣を取り出した以降のタイミングで、又は、オペレータが次の特定バッチ処理の再開を指示したとき以降のタイミングで、装填カセット単位の出力用データファイルを出力するようにしてもよい。また、繰出停止機能が無効であるときには、制御部120は、特定バッチ枚数に到達した以降の適宜のタイミングで、装填カセットに係る出力用データファイルを出力すればよい。
一方、装填紙幣以外の出力用データファイルの出力条件は、紙幣処理装置100の計数処理が最後に行われてから所定時間(例えば10分)が経過すること、及び、計数処理を行った紙幣の枚数が所定枚数(例えば2000枚)に達すること、の少なくとも一方が成立することである。いずれか一方の条件が成立した以降に、制御部120は、出力用データファイルを出力する。尚、オペレータが、前記の2つの条件のいずれか一方を選択してもよい。また、オペレータがタッチパネル17に表示されている承認ボタンを選択した場合にも、制御部120は、それまでに作成した出力用データファイルを出力する。
ATM装填業務の出力条件も、カセット装填業務と同じである。装填ATM単位の出力用データファイルの出力条件は、一つのATMについて装填業務が完了したことである。また、装填紙幣以外のデータファイルの出力条件は、紙幣処理装置100の計数処理が最後に行われてから所定時間(例えば10分)が経過すること、及び、計数処理を行った紙幣の枚数が所定枚数(例えば2000枚)に達すること、の少なくとも一方が成立したことである。また、オペレータがタッチパネル17に表示されている承認ボタンを選択した場合にも、制御部120は、それまでに作成した出力用データファイルを出力する。
記番号記録業務の出力条件は、紙幣処理装置100の処理が最後に行われてから所定時間(例えば10分)が経過したこと、及び、紙幣を計数処理した枚数が所定枚数(例えば2000枚)に達したこと、の少なくとも一方が成立したことである。また、オペレータがタッチパネル17に表示されている承認ボタンを選択した場合にも、制御部120は、それまでに作成した出力用データファイルを出力する。
第1モードでは、前述の通り、業務を選択することに伴い、選択した業務に対応する出力条件が、自動的に設定される。これに対し、第2モードにおいては、出力用データファイルを出力する条件を、オペレータが選択可能に構成されている。
この紙幣処理装置100では、第2モードにおいて選択可能な出力条件として、以下の条件が設定されている。すなわち、(1)取引が完了したこと、(2)バッチが達成したこと、(3)スタッカ4、5から紙幣が取り出されたこと、(4)識別部3が紙幣に関する情報を取得したこと、(5)オペレータが、出力用データファイルの出力を指示したこと、(6)紙幣の処理が最後に行われてから所定時間が経過したこと、(7)処理を行った紙幣の枚数が所定枚数に達したこと、の各条件を含む。
この内、(1)取引が完了したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、当該取引に係る紙幣全てのデータを含む。
(2)バッチが達成したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、当該バッチに含まれる紙幣全てのデータを含む。この場合において、制御部120は、当該バッチを特定するためのバッチIDを付与し、出力用データファイルにバッチIDを含めるようにしてもよい。尚、このバッチ処理には、前述の大束正損分け業務と同様に、バッチ枚数がスタッカ4、5の集積容量を超える枚数に設定されたバッチ処理(特定バッチ処理)も含まれる。
尚、バッチ未達の端数紙幣に関する出力用データファイルは、その出力を保留してもよいし、オペレータの別途の指示を含む所定の条件の成立に基づいて、出力用データファイルを出力してもよい。
(3)スタッカ4、5から紙幣が取り出したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、当該取り出した紙幣全てのデータを含む。この場合において、制御部120は、当該取り出しを特定するための取り出しIDを付与し、出力用データファイルに取り出しIDを含めるようにしてもよい。
尚、紙幣の取り出しを条件にした場合は、前述したバッチ達成を条件にする場合とは異なり、バッチ未達の端数紙幣に関する出力用データファイルは、スタッカから紙幣を取り出した以降に、随時、出力される。
(4)識別部3が紙幣に関する情報を取得したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルには、当該紙幣一枚の情報が含まれる。この場合、出力用データファイルの出力は、識別部3による識別と同期して、随時、行われる。
(5)オペレータが、出力用データファイルの出力を指示したことには、図12に示す画面S5等において、承認ボタンを選択することや、図13に示す画面S6において、カセット又はATM切り替えボタンを選択することも含まれる。オペレータの指示を条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、未出力の紙幣データを含む。尚、別途の「出力ボタン」を設け、出力ボタンが操作されたことを条件に、例えばバッチ未達の端数紙幣のデータ等を出力するようにしてもよい。出力ボタンは、ハードウエアによって構成されるボタンであってもよいし、タッチパネル17に表示されるボタンであってもよい。
(6)紙幣の処理が最後に行われてから所定時間が経過したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、未出力の紙幣データを含む。
(7)処理を行った紙幣の枚数が所定枚数に達したことを条件に、制御部120が出力用データファイルを出力する場合、出力用データファイルは、未出力の紙幣データを含む。
例えば、(2)の条件と、(3)の条件とを使い分けることにより、バッチ未達の端数紙幣に関する情報の出力を、次のバッチに達するまで保留するか、バッチ達成を待たずに分割して行うかを切り換えることが可能になる。そのことで、バッチ単位でのデータ管理を望む顧客と、リアルタイム性を重視する顧客との両方をサポートしたり、上位端末140におけるデータ管理の仕様に適合させたりすることが可能になる。
尚、オペレータは、これら(1)〜(7)の各条件を、単独で出力条件に設定してもよいし、(1)〜(7)の条件から複数の条件を選択すると共に、選択した複数条件のAND条件を出力条件に設定したり、選択した複数条件のOR条件を出力条件に設定したりしてもよい。
このように、この紙幣処理装置100では、第1モード、及び、第2モードのそれぞれにおいて、出力用データファイルを出力する条件として、複数の条件が設定されている。制御部120は、複数の条件から選択された条件に基づいて、出力用データファイルを出力するタイミングを制御する。従って、紙幣処理装置100を用いて行う業務に応じて異なるタイミングで作成される出力用データファイルを、適切なタイミングで出力することが可能になる。つまり、出力用データファイルに含める紙幣データに対応して、適切なタイミングで、出力用データファイルを出力することができる。また、第1モードにおいては、業務に適したタイミングで情報を出力することが可能になる一方、第2モードにおいては、顧客の要望等に応じてタイミングを適宜調整することが可能になる。
尚、出力用データファイルは、例えば暗号化して上位端末140や外部装置に出力したり、ファイルを圧縮した上で上位端末140や外部装置に出力したりしてもよい。
〈その他の実施形態〉
前記実施形態では、所定の構成を有する紙幣整理機としての紙幣処理装置100について説明したが、紙幣処理装置はこれに限られない。ここに開示する技術は、様々な紙幣処理装置に適用することが可能である。
図19は紙幣処理装置の一例として、紙幣整理機1003を例示している。この紙幣整理機1003は、投入された複数枚の紙幣を、予め設定された仕分け内容に従って仕分けて計数するよう構成されている。紙幣整理機1003は、紙幣を投入するホッパ1003aと、リジェクト紙幣を投出する2つのリジェクト部1003bと、それぞれ紙幣を集積する4つの集積部1003cとを備えており、その内部には、識別部を備えている。この紙幣整理機1003も、構成は相違するものの、その機能は、前記紙幣処理装置100と、実質同様である。
図20は紙幣処理装置の一例として、紙幣分類結束装置1004を例示している。この紙幣分類結束装置1004は、入金処理時に、集積カテゴリ及び紙幣種別毎に、投入された紙幣を分類して集積すると共に、分類集積した集積カテゴリ及び紙幣種別別の紙幣をテープで結束するよう構成されている。紙幣分類結束装置1004は、紙幣が投入される投入部1004aと、それぞれ紙幣を集積する複数の集積部1004bと、結束した紙幣を投出する投出部1004cと、を備えており、その内部には、識別部を備えている。この紙幣分類結束装置1004も、構成は相違するものの、その一部の機能は、前記紙幣処理装置100と、実質同様である。