JP6577975B2 - 酸化反応あるいは酸化重合反応性の常温アスファルト混合物 - Google Patents
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Description
補修工事は、緊急性を要する場合も多く、降雨時でも実施する場合があり、水分がある状態でも使用可能な材料を必要とする場合もあるために、本発明者等は、水分の特に鹸化反応を利用した、いわゆる「湿式施工型」のアスファルト混合物を既に提案している(特許文献1)。
加熱アスファルト混合物を舗装の補修材料として使用する場合、流動性のある高温状態で舗装施工しなければならず、可使時間に制限があるため、舗装上に点在する補修箇所で使用する場合、施工上困難な問題が発生することがあった。計画的で、大規模な補修工事に使用されるが、緊急性、または迅速性を有する補修工事の使用に問題が生じる。また、加熱アスファルト混合物の製造工場では、補修工事に必要な少量(100kg以下)を製造することが設備上困難である。仮に、製造工場の最小製造量(多くの場合500kg程度)を購入・使用した場合、その多くを廃棄することとなり、環境面・コスト面に問題があった。
その1つが、アスファルト乳剤を使用する常温アスファルト混合物であり、アスファルトと水を乳化剤により乳化したものと、骨材とを常温あるいはそれより若干高い温度(100℃以下)で混合して得られたアスファルト乳剤混合物を舗装施工すると、アスファルト乳剤の分解に伴ってアスファルトが水と分離して道路としての強度が得られるものである。環境への関心もあり、道路の舗装工事においては、このアスファルト乳剤技術の使用や改良が増えてきている。例えば、アニオンアスファルト乳剤においてアスファルトと骨材間の接着性を向上させる改良方法が提供されている(特許文献2参照。)。
しかしながら、アスファルト乳剤を使用した常温アスファルト混合物(以下、アスファルト乳剤系常温混合物)は、骨材と乳剤の接触により分解が始まるため、密閉された容器等を用いても貯蔵することが困難である。アスファルト乳剤と骨材を別の容器に分けて貯蔵し、作業現場において、混合し、施工する製品が開発されている(特許文献3および4参照。)。
これは、現場で混合作業をするため、補修の成否が作業員の熟練度に左右される側面がある。前記アスファルト乳剤系常温混合物は、施工後に硬化するまで交通解放することができず、硬化まで30分から2時間を要し、迅速性に劣る。また、雨天時ではアスファルト乳剤が骨材から剥離、流出してしまうため、所望の硬化の達成が困難である場合もある。
さらに、植物油脂類などを重合、縮合および架橋などにより高分子化させ、舗装用バインダーを得ることも知られている(特許文献6参照。)。
その原材料として、二重結合を脂肪酸分子中に有する動植物性脂肪酸及び反応促進剤を含むアスファルト混合物(「カットバックアスファルト」とも言う。)を主体とする材料とすることで課題を解決するものである。これは道路舗装を舗設する際の各種敷設材料の1つとしても使用可能な特性を備えた材料を提供することも目的とするものである。
本発明の特徴は、酸化反応性および(又は)酸化重合反応性の特性を備えた常温アスファルト混合物でもあるということも出来る。
すなわち、本発明は上記課題を解決する手段として、雨天、寒暖のような気候条件の影響や煩雑な作業手順を考慮することなく施工ができるという特性を備えており、しかも常温で施工ができるという性質を備えた、いわゆる全天候型アスファルト混合物(以下、単に「全天候型アスファルト混合物」と表示する場合もある。)の概要および特徴は以下のとおりのものである。
また、本発明における「常温アスファルト混合物」という用語の意味は、アスファルト混合物の調合段階である、アスファルトと乾性油、骨材、反応促進剤などの各種添加剤を調合する場合に、調合現場で、アスファルトの軟化温度、可塑化温度又は溶融温度である比較的高い温度に加熱する必要がなく、常温、例えば25℃に限定して解釈するものではなく、例えば5〜120℃、好ましくは15〜80℃程度の、より好ましくは20〜60℃というような、取り扱いが容易な常温に近い比較的低い温度でも調合するような場合を含めて、常温で調合すると表示している。
また、この常温アスファルト混合物とは、工事現場の施工段階という具体的な工事において、路面などへ施工する場合に、アスファルトの軟化温度(例えば145〜175℃)に加熱溶融することにより軟化、次いで固化するというような操作を必要とすることなく、しかも気象条件に拘束されることなく、比較的常温近くで容易に、迅速に、安全に施工することができるという全天候型の材料の意味にも適合する用語である。
(2)本発明の第2の特徴は、骨材、繊維材料、道路舗装に使用されるストレートアスファルト又は改質アスファルト、脂肪酸分子中に共役二重結合を有する脂肪酸を主成分として含む乾性油、及び金属系触媒あるいはラジカル開始剤のいずれかを含有する反応促進剤から成ることを特徴とする常温アスファルト混合物である。
(3)本発明の第3の特徴は、前記乾性油が、乾性油と半乾性油、乾性油と不乾性油、又は乾性油と半乾性油と不乾性油から成る各混成物であって、ヨウ素価130以上に調整されたものであることを特徴とする常温アスファルト混合物にある。
(4)本発明の第4の特徴は、前記アスファルトと前記乾性油の重量比率が1:99から99:1の範囲で前記アスファルト混合物中に含まれていることを特徴とする常温アスファルト混合物にある。
(6)本発明の第6の特徴は、0〜30℃の常温骨材あるいは30〜180℃に加熱した骨材、あるいはさらに繊維材料を添加・混合し、次いで前記アスファルト、前記乾性油及び前記反応促進剤を混練したバインダー混合物を混練して施工することにより、空気中の酸素により酸化反応または酸化重合反応して固化し、強度を発現するようにした常温アスファルト混合物の固化方法にある。
(7)本発明の第7の特徴は、0〜30℃の常温骨材あるいは30〜180℃に加熱した骨材、あるいは必要に応じて繊維材料を添加・混合し、次いで前記アスファルト、前記乾性油及び前記反応促進剤を混練したバインダー混合物を混練して得られた混合物を、酸素透過防止層および熱融着層を備える包装内に充填し、次いで、前記熱融着層を熱融着することで、前記混合物を前記包装内に密封すること、あるいは前記混合物を酸素の透過を防止できる容器内に密封することを特徴とする常温アスファルト混合物の製造方法にある。
図1に基づいて、本発明の常温アスファルト混合物の硬化概念を説明する。図1(a)に示すアスファルトと乾性油を混合したカットバックアスファルトを用いた常温アスファルト混合物に空気中等の酸素が供給されることで、図1(b)に示すような乾性油に含まれる脂肪酸の二重結合部位に酸素が付加され、その際生成したラジカル酸化反応あるいは酸化重合反応が開始されることにより硬化強度を発現することができる。また、本発明によれば、アスファルト混合物に反応促進剤を使用することで、当該混合物の高い硬化度の達成や硬化養生にかかるまでの時間を短縮できることを可能にした。
ここでの「重量部」表示とは、例えば、トン(t)、キログラム(kg)、グラム(g)等の慣用の単位重量の規定に基づいて特定することを指す。
前記乾性油を例えば25、10、5重量部と添加量を順次少なくすれば、粘度が上昇し、半固体となる傾向を示すため、常温での施工を前提とした常温アスファルト混合物のバインダーとしては適正な性状を表さなくなる。
本発明では、アスファルト混合物として、特定の乾性油でカットバックされたアスファルトを用いることにより、アスファルト本来の性能を低下させることなく、取り扱い上も適正な性質になり、従来のカットバックアスファルトの問題を解決することができる。
骨材としては、慣用の主に無機質の材料が挙げられるが、例えば下記に例示されているような、慣用の砕石、砂利、鉄鋼スラグ、山砂、川砂、コンクリート砕粉、各種金属粉、無機顔料、などの材料が挙げられる。アスファルト混合物として、骨材が存在すると、耐久性の向上やコスト低減に寄与される。
いずれにせよ、この繊維材料が、アスファルト混合物の仕様において、以下に示すように骨材の飛散や偏りを防止する機能を発現するということは予期せぬ材料挙動である。
繊維材料は、合成樹脂、コンクリート、石膏等の各種無機材料の強化のために慣用的に使用される材料ではあるが、本発明のように、特にアスファルト混合物が混在する骨材間の乖離、飛散等を防ぎ、施工後の硬化アスファルト混合物の強化を達成する作用を果たす。
アスファルトの針入度の特性は、混合物の強度およびたわみ性に影響する要因であり、JIS K 2207:2006に記載されている針入度10を超え300以下の範囲のものが推奨される。強度と作業性を考慮し、ストレートアスファルト60/80(以下、アスファルト60/80)を使用することが好ましい。
その他、上記の針入度の範囲外のアスファルトであっても、鉱物油または植物油等を混合し、針入度を所定の値に構成するアスファルトとしては、通常分類される石油アスファルトおよび天然アスファルトの範疇に属するいずれのものも使用することが推奨されるが、それ以外にも改質アスファルト等も使用できる。
本発明の脂肪酸とは、好ましくは不飽和脂肪酸であり、脂肪族基に、少なくとも1個、場合によっては、2個、3個の不飽和結合を有する化合物である。一般的には動植物由来の脂肪を分解して収得できる公知の化合物であり、カルボン酸を有する場合には酸性の化合物であり、オクタン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸のような炭素原子をC2〜C30個の適度の長さの炭化水素鎖を有しており、炭化水素鎖に少なくとも1個のカルボキシル基を有するのが通常である。また、場合によっては、脂肪酸と低級アルコールとのエステル、脂肪酸とナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛のような金属塩の形態も包含する。
「ヨウ素価による分類」 「ヨウ素価」 「油脂の種類」
乾性油 130以上 桐油、亜麻仁油、等
半乾性油 100〜130 胡麻油、大豆油、等
不乾性油 100以下 菜種油、オリーブ油、等
以上のヨウ素価区分から、本発明の常温アスファルト混合物を構成する脂肪酸としては、酸化反応性あるいは酸化重合反応性の高さから、乾性油の使用が好ましく、乾性油としては1種のみならず2種以上を混合しても使用可能である。更にヨウ素価が130以上である範囲内において、乾性油に加えて半乾性油および/または不乾性油が含まれている混成物の状態の物も使用可能である。即ち、ヨウ素価が130以上であれば、乾性油のみならず、乾性油−半乾性油、乾性油−不乾性油、乾性油−半乾性油−不乾性油のような各種油脂を任意に混合してなる混成物でも使用可能である。
このような本発明の脂肪酸、特に不飽和脂肪酸を含む代表的な植物油脂としては、上記以外にも、サフラワ−油、落花生油、ヤシ油、綿実油のような各種のものが挙げられる。
本発明の脂肪酸の酸素による重合、硬化反応は、脂肪酸の脂肪族基に存在する不飽和基である、二重結合に基づく、直鎖状の線状の重合反応、共重合反応に基づくものを基本とするものである。
乾性油は、成分として含む不飽和脂肪酸分子中に複数の二重結合を持っている。この二重結合は反応性が高く、空気中の酸素と徐々に結合して酸化され、過酸化物やラジカルが形成され、これらが反応開始剤となり二重結合間の重合反応が進行して高分子化して、最終的には流動性を失って固化する。不飽和結合の量が多いもの程、即ち、ヨウ素価の高い油ほど、固化するのが速い。
場合によっては、脂肪酸分子同士が架橋して架橋構造体として存在すること、あるいは部分的に隣接する脂肪族基の二重結合同士が、反応することもあり、分子の結合手が二次元、三次元構造という複数の結合手により複雑な構造を形成する、いわゆる多次元の架橋構造になることにより分子鎖が大きく成長する場合もある。
更には、脂肪酸分子が隣接する他の脂肪酸の不飽和基と反応することにより、二量化、三量化という、いわゆる多量化反応による高分子量体に成長し、複雑な重合反応を経ることにより、流動性を失った高分子量の固化物になる。炭化水素鎖に二重結合があれば、融点が低くなり、液状になる傾向を示すことが一般的に知られている。
この多次元の多くの結合手を有する架橋構造は、アスファルト混合物の、特に、道路舗装に施工した場合に、車両の通行に基づく振動に対して、長期間高い耐久性を発現する。更には、ひび割れの防止、滑面化の防止、平坦性低下防止、寄り、すべり抵抗低下、空隙つぶれ、破損度において、耐久性を有することになる。特に道路資材としては非常に適した特性を備えている。
このように、本発明のアスファルト、動植物由来脂肪酸および反応促進剤からなる常温酸化反応硬化性の常温アスファルト混合物は、硬化時間に要する時間は、取り扱い温度を調節すれば、例えば、所定の硬化度を達成するために、25℃の施工温度で30分で硬化する仕様の混合物を、施工温度を50℃に上げると硬化時間が10分と短縮できる場合があるので、工期などの現場の状況に応じて混合物の材料を選択することが可能である。
更に、乾性油の酸化反応は、空気中の酸素と反応するために、発熱反応であり、反応速度の速いものなどは温度が急上昇する場合があり、その取り扱いには留意する必要がある。
本発明は、このような脂肪酸に存在する二重結合を重合させるという原理を利用することにより、空気中で酸化固化する性質を備えた常温アスファルト混合物を提供したものであるが、舗装作業のスケジュール、工期、交通量などを考慮して、アスファルト混合物の仕様を調整することができることも本発明の特徴の一つである。
具体的な混合仕様で表すと、アスファルト100重量部に対して、25、10、5重量部と順次添加量を少なくすれば、粘度が上昇する傾向があり、半固体となる傾向を示すため、常温での施工を前提とした常温アスファルト混合物のバインダーとしては不向きとなる。
一方、脂肪酸を100、200、300重量部と順次多くすれば、粘度が低下し、常温での取り扱いは容易となるが、アスファルトの含有量が少なくなるため、常温アスファルト混合物のバインダとして使用した場合、たわみ性や飛散抵抗性などが低下する傾向を示す。
結局、本発明で特定するアスファルト混合物の成分からなる仕様のものが、そのバインダーに適しており、骨材、繊維材料などの材料を任意に併用することにより、空気中で酸化することにより早期硬化性、飛散抵抗性などの特殊な機能、および硬度のような特性を発現することに優位であることを知見したものである。
指標であるヨウ素価が、130以上の油を乾性油という。表1に見るとおり、亜麻仁油、桐油、トール油、紅花油(サフラワー油)等が挙げられる。中でも桐油は、他の乾性油とは全く成分組成が異なっている。
この乾性油とは、二重結合部位が酸化反応あるいは酸化重合反応することでそれ自体が硬化するため、従来のカットバックアスファルトと違い、揮発性有機溶剤(VOC)のような環境に有害な成分が土壌中および大気中に飛散することがない。
本発明で使用される桐油脂肪酸は、主として共役トリエン酸であるα−エレオステアリン酸を約70〜80%含有しているため、酸化反応性あるいは酸化重合反応性が極めて高いことが特徴である。そのため、桐油脂肪酸に半乾性油あるいは不乾性油が混合されている成る混成物であっても十分な反応性を示すことができる。ただし、混合する半乾性油あるいは不乾性油の重量割合が増加することで性能面が低下する恐れがあるため、硬化強度等を評価できる性能試験にて、桐油脂肪酸と半乾性油あるいは不乾性油の配合割合を決定する必要がある。
すなわち、乾性油の固化反応は、油脂により性能に違いがあり、空気による酸化反応の遂行が難しい場合とか、必要以上に時間や手間を費やす場合には、反応促進剤を併用することが必要である。
本発明の要旨は、少なくともアスファルト、動植物由来脂肪酸および反応促進剤からなる酸化反応あるいは酸化重合反応型常温アスファルト混合物から本質的に構成されるものである。このアスファルト混合物の施工時に反応促進剤を併用することにより、空気中の酸素により重合することで固化させるという原理に基づくものである。更に、脂肪酸の酸化反応あるいは酸化重合反応が、円滑に遂行できない場合に備えて、反応促進剤を併用して、より短時間に、しかも完璧に重合を達成するという手法に基づくものである。
施工時に必要により任意のイオン重合触媒やラジカル重合触媒のような公知の重合触媒からなる重合開始剤、重合触媒を併用し、または液状または溶融状態の脂肪酸状態から強固な三次元架橋構造を有する不融物の状態に硬化させる硬化促進剤等を併用することにより硬化の程度や硬化時間を調整することも可能であり、これらの調整により混合物中の植物由来不飽和脂肪酸が空気中の酸素により硬化を開始することにより早期に高い強度を発現することができる。
また、水溶性、油溶性のラジカル反応開始剤なども有るので、アスファルト混合物の施工を考慮して任意に選定する必要がある。
本発明のアスファルト混合物を構成する反応促進剤としては、酸化反応あるいは酸化重合反応を促進できる材料であれば良く、金属系触媒あるいはラジカル開始剤等が挙げられる。
本発明のアスファルト混合物を形成する金属系触媒あるいはラジカル開始剤には混合物への分散性が良いものが望まれる。
金属系触媒では、長鎖脂肪酸と、ナトリウム、カリウム以外の金属塩を指す。例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、オクチル酸等の脂肪酸と、リチウム、マンガン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉛、コバルト等の金属塩が挙げられる。特に、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等々が、好ましく使用できる。
具体的な混合仕様に基づいて配合割合を表示すれば、乾性油100重量部に対して、反応促進剤の1〜230重量部であることが望ましい。好ましくは、1〜25重量部の添加量である。桐油脂肪酸100重量部に対して、反応促進剤を230重量部超えて添加しても、脂肪酸量に対して反応促進剤が大過剰量の添加となるため無駄になる。また、反応促進剤の1重量部未満の添加では、桐油脂肪酸の合計量100重量部に対しては少量すぎて早期での酸化反応の効果が期待できない。
このような常温アスファルト混合物を施工した際に、プレートまたはタンパで転圧3するとアスファルト中に分散した前記乾性油が、空気中の酸素と酸化反応あるいは酸化重合反応により硬化する。
一方、ラジカル開始剤は、ラジカル反応を進めるために穏和な反応条件でラジカルを発生させる化合物を指し、一般的に結合エネルギーの小さな弱い結合を持つ。例えば、ジハロゲン、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
また、反応促進剤、ラジカル開始剤などは、あらかじめカットバックアスファルトに添加しておくことが標準的な使用方法である。
骨材として、慣用的に使用される砂、砂利、砕石、スラグ、石粉、JIS規格(JIS A 5001:2008)に準じた単粒度砕石、粒度調整砕石、クラッシャランおよびコンクリートの粉細粒、アスファルト舗装の切削骨材のような再利用のものを含めて、単独又は適宜混合した通常の骨材として利用されている各種骨材を使用できる。タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウムなどを併用することも可能である。その他、アスファルト混合物の接着性改善や工法使用目的として、アスファルトを骨材にコーティングしたプレコート骨材等も使用できる。骨材の添加量は、例えば、舗装の場合に、その舗装に要求される特性に応じて任意に現場の裁量により決めることができる量であるが、通常は、アスファルト100重量部に対して骨材200〜17000重量部、好ましくは900〜9900重量部である。骨材の材質および形状は任意であり、粒径は最大粒径が0.01〜200mmと、材質は勿論のこと、粗骨、細骨材の種類により適宜変えることが出来るが、任意のものが採用できるので、参考までに、本願の混合物の標準的な骨材の粒度範囲を示す。
勿論、常温アスファルト混合物の施工後に早期に交通解放した場合に、常温アスファルト混合物が完全に硬化する前であっても容易に飛散・流動しないような骨材粒度とすることも重要である。
繊維材料としては、セルロースのような天然繊維、植物繊維、ビニロンのような合成樹脂繊維等の有機質繊維、ガラス、炭素繊維、鉱物繊維のような無機質繊維等の各種の繊維材料が挙げられる。その繊維材料の形態は、通常は繊維長0.05〜120mm程度、好ましくは繊維長0.1〜30mm程度の、より好ましくは繊維長0.1〜10mm程度である。繊維径は0.5〜500μm、好ましくは繊維径1.0〜100μm程度のものである。繊維材料として、特に望ましくは繊維長0.5〜5.0mm、繊維径5.0〜80μmの範囲のものが望ましい。繊維材料は、アスファルト混合物中に、アスファルト100重量部に対して、1〜150重量部、好ましくは2〜30重量部の程度配合する。
混合物中の繊維材料は、硬化したカットバックアスファルトと共に隣接する骨材同士を繋ぎ合わせている。そのため、混合物のたわみ性が向上すると共に交通荷重がかかった場合、骨材飛散の発生が抑制される。
この現象は、水の存在を伴う、前記の「湿式施工型」における、界面に水が存在する場合には期待できなく、若干の水が存在しても本発明の乾式施工型の特有の利点および機能を発現することができる。
本発明の具体的な施工方法を示すと、0〜30℃の常温骨材あるいは30〜180℃に加熱した骨材、あるいは必要に応じて繊維材料を添加・混合し、次いで前記アスファルト、乾性油及び反応促進剤を混練したバインダー混合物を混練して施工することにより、空気中の酸素により酸化反応または酸化重合反応して固化し、強度を発現することにより常温アスファルト混合物の固化方法が達成される。
常温骨材は、硬化が達成できるが、加熱骨材は、酸化反応や酸化重合反応を迅速に達成する為に有益であるが、加熱などは作業現場における取り扱いに配慮しなければならない。
これは、空気中の酸素などの影響を遮断することにより、作業現場で開封することにより酸化重合を開始させるという手法は、保管、移送や現場の調合を省略するために、現場作業の時間短縮や作業能率、安全性などの向上に寄与するものである。この形式は、混合物の品質を安定に維持することのできる一種の包装体であるパック形式の取り扱いであり、空気中の酸素の影響による混合物の硬化の進行を調整することが可能であり、施工現場では取り扱いにおいて重宝される使用形態である。特に、ポットホールのような局部的な剥離や破損の部分の短時間による能率的な補修などにも有益である。
例えば、特に、一定量、例えば、常温アスファルト混合物の20kgの量をパックとした場合に、現場の舗装に如何なる量を消費するかを目算して、所定のパック数を予め調達すれば、輸送の効率化、常温アスファルト混合物の現場での余分物の破棄などの無駄な浪費が節減できる。
この図1に示す、硬化の原理および構造を詳細に説明すると、本発明の常温アスファルト混合物は、それを構成する材料の特性および形態に基づいて解析すれば、アスファルト中に二重結合を脂肪酸分子中に有する植物油脂である乾性油が分散した状態の組成からなるカットバックアスファルト(以下、この組成を単に「カットバックアスファルト」と呼称することもある。)が骨材に被覆した状態となっている。また、前記カットバックアスファルト中に反応促進剤が分散している状態の構造になっている。
このような常温アスファルト混合物を施工した際に、プレートまたはタンパ3で転圧するとアスファルト中に分散した前記乾性油と、反応促進剤と、空気中の酸素が酸化反応あるいは酸化重合反応により硬化する。
また、フェノール樹脂、テルペン樹脂のような各種粘着付与剤を必要により併用することが出来るが、公知のブロッキング防止剤の併用により、程度に調整することも出来る。
さらに、本発明の常温アスファルト混合物は、透水、排水機能を付与したり、明色や色彩機能を持たせることも可能である。騒音防止機能や、滑り止め機能を持たせることも可能である。
また、路面等の温度、日射などの過酷な状態に長期に放置することの多い材料であるという性格からして、乾性油硬化物、常温アスファルト混合物の硬化物の劣化を防止するために、不飽和脂肪酸中の二重結合が空気中の酸素と徐々に結合して酸化反応および酸化重合反応する性能を低下させない程度に、例えばフェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール等を併用すること、イオウ系化合物、りん系酸化防止剤を併用すること、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、などの公知の安定剤を任意に併用することが出来る。
標準的な粒度範囲は表3に示すとおりであり、すべての実施例で使用している骨材粒度の仕様を表3に示す。
(1)混合機械
使用する混合機械としては、カットバックアスファルトの製造では、小〜中型攪拌機を混合物の製造では、モルタルミキサーを使用した。
(2)バインダーの製造
150℃に加熱したストレートアスファルト60/80(100重量部)に対して、常温の桐油脂肪酸(100重量部)を添加し、120℃で1時間撹拌する。
(3)混合物の製造
混合物の混合は、骨材(9600重量部)、場合により繊維材料(2〜30重量部)を予め混合したものに対して、バインダー(200重量部)、反応促進剤(2重量部)を予め混合したものを混合・撹拌する。
(4)供試体作製手順
混合物製造後の供試体作製手順は、常温(20℃)の混合物をモールド(型枠)へ充填した後に締固めを実施し、任意に設定した恒温室で養生する。
[種々の乾性油を用いた酸化反応あるいは酸化重合反応性の常温アスファルト混合物のマーシャル安定度試験結果]
以下、本発明の典型的な実施態様を実施例として挙げて説明をするが、本発明の技術範囲は、この実施例の範囲に限定されるものではない。
実施例で提示する常温アスファルト混合物の標準的な配合割合を表4に示す。
[乾性油と種々の半乾性油あるいは不乾性油を混合してなる混合脂肪酸を用いた酸化反応あるいは酸化重合反応性を有する常温アスファルト混合物のマーシャル安定度試験結果]
実施例1の結果を踏まえて、乾性油の代表例として桐油脂肪酸を使用することとした。桐油脂肪酸と表5に示す種々の半乾性油あるいは不乾性油を混合したときの配合割合とヨウ素価を表7に示す。そこで、表7に示す(桐油脂肪酸−半乾性油、あるいは桐油脂肪酸−不乾性油)混合油をストレートアスファルト60/80でカットバックしたバインダーを作製し、そのバインダーで作製した常温アスファルト混合物の配合割合とマーシャル安定度試験結果を表8に示す。マーシャル安定度試験には、養生時間1日後のマーシャル供試体について評価した。
[繊維材料の有無における骨材飛散抵抗性評価結果]
常温アスファルト混合物の骨材飛散抵抗性を評価することにより、繊維材料の添加の有用性を実証した。骨材飛散抵抗性の評価には、カンタブロ試験を採用した。そこで、配合割合と、カンタブロ試験により算出できた配合別の損失率(%)の試験値を表9に示す。
[アスファルトと乾性油の配合比率別マーシャル安定度試験結果]
アスファルトと乾性油の重量比率を、1:99から99:1の範囲で調整したバインダーで作製された常温アスファルト混合物の請求範囲の有効性を実証するために、マーシャル安定度試験にて硬化の程度をマーシャル安定度(kN)で示す。表10にアスファルトと乾性油の配合割合と測定値を示す。検証に使用したアスファルトと乾性油は、実施例1の結果を踏まえて、アスファルトはストレートアスファルト60/80を、乾性油には桐油脂肪酸を採用した。マーシャル安定度試験には、養生時間7日後のマーシャル供試体について評価した。
[種々の反応促進剤を用いて作製された常温アスファルト混合物のマーシャル安定度試験結果]
本願発明の酸化反応性あるいは酸化重合反応性を備えた常温アスファルト混合物は、反応促進剤として金属系触媒あるいはラジカル開始剤を使用できる。そのため、反応促進剤を使用することで従来技術(特許文献6)と比べて短い養生時間で高強度を発現できることを実証するために、種々の反応促進剤配合した常温アスファルト混合物を作製し、マーシャル安定度試験により硬化の程度を検証することとした。反応促進剤には、金属系触媒にナフチル酸コバルト溶液(Co:8.0%)、ラジカル開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを使用した。マーシャル安定度試験には、養生時間1日後のマーシャル供試体について評価した。表11に使用した反応促進剤と、各養生温度におけるマーシャル安定度(kN)測定値を示す。
[乾性油と反応促進剤の各配合割合におけるマーシャル安定度試験結果]
乾性油と反応促進剤の重量比率を、99:1から30:70の範囲で作製された常温アスファルト混合物の有効性の範囲を実証するために、マーシャル安定度試験にて硬化の程度をマーシャル安定度(kN)で示す。表12に乾性油と反応促進剤の配合割合と測定値を示す。検証に使用した乾性油と反応促進剤は、実施例5の結果を踏まえて、乾性油には桐油脂肪酸を、反応促進剤にはナフチル酸コバルト(Co:8.0%)を採用した。マーシャル安定度試験には、最終強度の確認のため、養生時間7日後のマーシャル供試体について評価した。
特に、常温アスファルト混合物は、雨天のような施工環境が悪い状態においても天候を考慮することなく短期間で作業ができるばかりでなく、大規模な道路の施工、補修環境に適しており、交通量の多い道路の短時間補修にはもちろんのこと、街中の、道路、ガス、セットバック等の、常時通行人が多く、注意を要する作業現場でもアスファルトの取扱いが安全で、短期間で施工することができため、常温アスファルトを利用する、特に、土木、建設を含めた産業分野の発展および新たな利用分野の可能性を期待することができる。施工作業において取り扱い上の簡便性、およびアスファルト材料としての性質、特性において優れているばかりでなく、通常の状態では、工事の雨天、天候などにも過度にも拘束されることのないので、全天候型アスファルト混合物として、作業計画、工事日程などのスケジュールの作成などにも安定的に寄与することが挙げられる。
12 ポットホール
2 常温アスファルト混合物
3 プレート又はタンパ
Claims (7)
- 骨材、道路舗装に使用されるストレートアスファルト又は改質アスファルト、脂肪酸分子中に共役二重結合を有する脂肪酸を主成分として含む乾性油、及び金属系触媒あるいはラジカル開始剤のいずれかを含有する反応促進剤から成ることを特徴とする常温アスファルト混合物。
- 骨材、繊維材料、道路舗装に使用されるストレートアスファルト又は改質アスファルト、脂肪酸分子中に共役二重結合を有する脂肪酸を主成分として含む乾性油、及び金属系触媒あるいはラジカル開始剤のいずれかを含有する反応促進剤から成ることを特徴とする常温アスファルト混合物。
- 前記乾性油が、乾性油と半乾性油、乾性油と不乾性油、又は乾性油と半乾性油と不乾性油から成る各混成物であって、ヨウ素価130以上に調整されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温アスファルト混合物。
- 前記アスファルトと前記乾性油の重量比率が1:99から99:1の範囲で前記アスファルト混合物中に含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の常温アスファルト混合物。
- 前記乾性油と前記反応促進剤の重量比率が99:1から30:70の範囲で含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の常温アスファルト混合物。
- 0〜30℃の常温骨材あるいは30〜180℃に加熱した骨材、あるいはさらに繊維材料を添加・混合し、次いで前記アスファルト、前記乾性油及び前記反応促進剤を混練したバインダー混合物を混練して施工することにより、空気中の酸素により酸化反応または酸化重合反応して固化し、強度を発現することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の常温アスファルト混合物の固化方法。
- 0〜30℃の常温骨材あるいは30〜180℃に加熱した骨材、あるいはさらに繊維材料を添加・混合し、次いで前記アスファルト、前記乾性油及び前記反応促進剤を混練したバインダー混合物を混練して得られた混合物を、酸素透過防止層および熱融着層を備える包装内に充填し、次いで、前記熱融着層を熱融着することで、前記混合物を前記包装内に密封すること、あるいは前記混合物を酸素の透過を防止できる容器内に密封することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の常温アスファルト混合物の製造方法。
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