(はじめに)
発明の実施の形態の説明に先だって、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化されているLTE(Long Term Evolution)システムについて説明する。
図1は、LTEシステムの構成図である。図1に示すように、LTEシステムは、複数のUE(User Equipment)100と、E-UTRAN(Evolved-UMTS Terrestria1 Radio Access Network)10と、EPC(Evolved Packet Core)20と、を含んでいる。E−UTRAN10は無線アクセスネットワークに相当し、EPC20はコアネットワークに相当する。E−UTRAN10およびEPC20は、LTEシステムのネットワークを構成する。
UE100は、移動型の通信装置であり、接続先のセル(サービングセル)との無線通信を行う。UE100はユーザ端末に相当する。
E−UTRAN10は、複数のeNB200(Evolved Node-B)を含んでいる。eNB200は基地局に相当する。eNB200は、1または複数のセルを管理しており、自らが管理するセルとの接続を確立したUE100(配下の無線通信装置)との無線通信を行う。なお、「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として使用される他にUE100との無線通信を行う機能を示す用語としても使用される。
eNB200は、例えば、無線リソース管理(RRM)機能と、ユーザデータのルーティング機能と、モビリティ制御およびスケジューリングのための測定制御機能と、を有している。
EPC20は、複数のMME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving―Gateway)300を含んでいる。
MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うネットワークノードであり、制御局に相当する。S−GWは、ユーザデータの転送制御を行うネットワークノートであり、交換局に相当する。MME/S−GW300により構成されるEPC20は、eNB200を収容する。
eNB200は、インターフェイスX2を介して相互に接続される。また、eNB200は、インターフェイスX1を介してMME/S−GW300と接続される。
図2は、UE100の構成を示すブロック図である。図2に示すようにUE100は、複数のアンテナ101と、無線送受信機110と、ユーザインターフェイス120と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機130と、バッテリ140と、メモリ150と、プロセッサ160とを有している。なお、UE100は、GNSS受信機130を有していなくても良い。また、メモリ150をプロセッサ160と一体化し、このセット(すなわち、チップセット)をプロセッサ160'としても良い。
複数のアンテナ101および無線送受信機110は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機110は、プロセッサ160が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ101から送信する送信部111を含んでいる。また、無線送受信機110は、複数のアンテナ101が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ160に出力する受信部112を含んでいる。
ユーザインターフェイス120は、UE100を所持するユーザとのインターフェイスであり、例えば、ディスプレイ、マイク、スピーカ、および各種ボタンなどを含んでいる。ユーザインターフェイス120は、ユーザからの操作を受け付けて、該操作の内容を示す信号をプロセッサ160に出力する。
GNSS受信機130は、UE100の地理的な位置を示す位置情報を得るために、GNSS信号を受信して、受信した信号をプロセッサ160に出力する。バッテリ140は、UE100の各ブロックに供給すべき電力を蓄える。
メモリ150は、プロセッサ160によって実行されるプログラムと、プロセッサ160による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ160は、ベースバンド信号の変調・復調および符号化・復号などの信号処理を行う信号処理部161と、メモリ150に記憶されるプログラムを実行して各種の制御を行う制御部162と、を含んでいる。
ここで、後に説明するように、UE100が測定した下りチャネル情報(CSI)を、アナログフィードバックによりeNB200に伝送するので、信号処理部161にはデジタル伝送処理部に加えてアナログ伝送処理部を有している。
デジタル伝送処理部は、現行の3GPP規格に従ったデジタル伝送方式により送信信号を生成する。
アナログ伝送処理部は、アナログ伝送方式により送信信号を生成する。
プロセッサ160は、さらに、音声・映像信号の符号化・復号を行うコーデックを含んでも良い。プロセッサ160は、後述する各種の制御を実行する。
図3は、eNB200の構成を示すブロック図である。図3に示すようにeNB200は、複数のアンテナ201と、無線送受信機210と、ネットワークインターフェイス220と、メモリ230と、プロセッサ240と、を有している。メモリ230およびプロセッサ240は、基地局側制御部を構成する。
複数のアンテナ201および無線送受信機210は、無線信号の送受信に用いられる。無線送受信機210は、プロセッサ240が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換して複数のアンテナ201から送信する送信部211を含んでいる。また、無線送受信機210は、複数のアンテナ201が受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換してプロセッサ240に出力する受信部212を含んでいる。
ネットワークインターフェイス220は、インターフェイスX2(図1)を介して隣接するeNB200と接続され、インターフェイスX1(図1)を介してMME/S−GW300と接続される。ネットワークインターフェイス220は、インターフェイスX2上で行う通信およびインターフェイスX1上で行う通信に用いられる。
メモリ230は、プロセッサ240によって実行されるプログラムと、プロセッサ240による処理に使用される情報と、を記憶する。プロセッサ240は、ベースバンド信号の変調・復調および符号化・復号などの信号処理を行う信号処理部241と、メモリ230に記憶されるプログラムを実行して各種の制御を行う制御部242と、を含んでいる。プロセッサ240は、後述する各種の制御を実行する。
ここで、eNB200は、アナログ伝送方式により伝送される下りチャネル情報(CSI)を受ける。eNB200の信号処理部241は、アナログ伝送方式により伝送される下りチャネル情報を検出する機能を有している。より具体的には、eNB200の信号処理部241は、参照信号により求められる上りのチャネル情報で受信アナログ信号を等化し、等化後のアナログ信号を示す値を対象データとして検出する機能を有している。
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタックを示す図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルのレイヤ1〜レイヤ3に区分されており、レイヤ1は物理(PHY)レイヤである。レイヤ2は、MAC(Media Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、を含んでいる。レイヤ3は、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含んでいる。
物理レイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、およびリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100の物理レイヤとeNB200の物理レイヤとの間では、物理チャネルを介してデータが伝送される。
MACレイヤは、データの優先制御、およびハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理などを行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータが伝送される。eNB200のMACレイヤは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))、および割当りソースブロックを決定するスケジューラを含んでいる。
RLCレイヤは、MACレイヤおよび物理レイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータが伝送される。
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、および暗号化・復号化を行う。
RRCレイヤは、制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のための制御メッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立および解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、および物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間にRRC接続がある場合、UE100は接続状態(RRC connected state)であり、そうでない場合、UE100はアイドル状態(RRC idle state)である。
RRCレイヤの上位に位置するNAS(Non-Access Stratum)レイヤは、セッション管理およびモビリティ管理などを行う。
図5は、LTEシステムで使用される無線フレームの構成図である。LTEシステムは、下りリンクにはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上りリンクにはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)がそれぞれ適用される。
図5に示すように、無線フレームは、時間方向に並ぶ10個のサブフレームで構成され、各サブフレームは、時間方向に並ぶ2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さはlmsecであり、各スロットの長さは0.5msecである。各サブフレームは、周波数方向に複数個のリソースブロック(RB)を含み、時間方向に複数個のシンボルを含む。リソースブロックは、周波数方向に複数個のサブキャリアを含む。1つのサブキャリアおよび1つのシンボルによって構成される無線リソース単位は、リソースエレメント(RE)と称される。
UE100に割り当てられる無線リソースのうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(またはスロット)により特定できる。
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に制御信号を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームの残りの区間は、主にユーザデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)として使用できる領域である。
PDCCHは、制御信号を搬送する。制御信号は、例えば、上りリンクSI(Scheduling Information)、下りリンクSI、TPCビットを含む。上りリンクSIは上りリンク無線リソースの割り当てを示す情報であり、下りリンクSIは、下りリンク無線リソースの割り当てを示す情報である。TPCビットは、上りリンクの送信電力の増減を指示する情報である。これらの情報は、下りリンク制御情報(DCI)と称される。
PDSCHは、制御信号および/またはユーザデータを搬送する。例えば、下りリンクのデータ領域は、ユーザデータにのみ割り当てられても良く、ユーザデータおよび制御信号が多重されるように割り当てられても良い。
また、下りリンクにおいて、各サブフレームには、セル固有参照信号(CRS)およびチャネル情報参照信号(CSI−RS)が分散して設けられる。CRSおよびCSI−RSのそれぞれは、所定の直交信号系列により構成される。eNB200は、複数のアンテナ201のそれぞれからCRSおよびCSI−RSを送信する。
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に制御信号を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)として使用される制御領域である。また、各サブフレームにおける周波数方向の中央部は、主にユーザデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)として使用できる領域である。
PUCCHは、制御信号を搬送する。制御信号は、例えば、CQI(Channel Quality Indicator)、PMI(Precoding Matrix Indicator)、RI(Rank Indicator)、SR(Scheduling Request)、ACK/NACKなどである。
CQIは、下りリンクのチャネル品質を示すインデックスであり、下りリンク伝送に使用すべき推奨変調方式および符号化率の決定等に使用される。PMIは、下りリンクの伝送のために使用することが望ましいプレコーダーマトリックスを示すインデックスである。RIは、下りリンクの伝送に使用可能なレイヤ数(ランク数、ストリーム数)を示すインデックスである。SRは、上りリンク無線リソース(リソースブロック)の割り当てを要求する情報である。ACK/NACKは、下りリンクの物理チャネル(例えばPDSCH)を介して送信される信号の復号に成功したか否かを示す情報である。
CQI、PMIおよびRIは、UE100が下り参照信号(CRSおよび/またはCSI−RS)を利用してチャネル推定を行い、得られたチャネル情報(CSI:Channel Sate Information)に相当する。
PUSCHは、制御信号および/またはユーザデータを搬送する。例えば、上りリンクのデータ領域は、ユーザデータにのみ割り当てられても良く、ユーザデータおよび制御信号が多重されるように割り当てられても良い。
また、上りリンクにおいて、各サブフレームの所定のシンボルには、サウンディング参照信号(SRS)および復調参照信号(DMRS)が設けられる。SRSおよびDMRSのそれぞれは、所定の直交信号系列により構成される。
以上、図1〜図5を用いて説明したLTEシステムへの適用を例として、以下、実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
UE100は、測定した下りチャネル情報(CSI)を、アナログ伝送方式によりeNB200にフィードバック(アナログフィードバック)するが、先に説明したように、上りリンクの雑音や干渉に起因した伝送誤りを訂正できず、eNB200が受信したCSIの信頼性は、チャネル品質(ノイズレベル等)に依存する。
本実施の形態においては、eNB200が、CSIのフィードバックに使用された上りチャネルのチャネル品質を推定し、推定したチャネル品質に基づいて、下りリンク通信においてUEに対する適切なスケジューリングを行う。
UE100からのCSIのフィードバックは、通常、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)または物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)を用いて行われるが、eNB200はこれらのチャネル品質を推定する。
図6は、実施の形態1におけるチャネル品質の推定値に基づいてスケジューリングする動作を説明するフローチャートである。
図6に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされる下りチャネルのCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用された上りチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS1)。チャネル品質は、SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)またはSNR(signal to noise ratio)で定義され、PUCCHおよびPUSCHのチャネル品質は、サウンディング参照信号(SRS)および/または復調参照信号(DMRS)を用いて推定できる。なお、PUCCHに関しては、eNB200が自ら管理している割り当てユーザの混みあい状況からチャネル品質を補助的に推定することも考えられる。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた閾値(便宜的に閾値1と呼称)と比較し(ステップS2)、推定したチャネル品質の値が閾値1よりも小さい場合はステップS4に進み、推定したチャネル品質の値が閾値1以上となる場合はステップS3に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値1としては、例えば5dBなどに設定する。
ここで、LTEシステムには、ビームフォーミングにより、互いに干渉しない複数の信号波を生成することで、複数のUEにそれぞれ異なったデータを同時に送信するMU−MIMO(Multi-User-MIMO)機能がある。ステップS3に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値1以上に該当するUEに対しては、MU−MIMOの対象として設定し、MU−MIMO用のプレコーダーを生成して、MU−MIMOを行う。
一方、ステップS4に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値1未満に該当するUEに対しては、MU−MIMOの対象としない。
すなわち、アナログ伝送により下りチャネル情報(CSI)がフィードバックされる場合、フィードバックに使用するチャネル(PUCCHやPUSCH)の品質が悪いと、受信したCSIの信頼性(精度)が低く、そのCSIに基づいてMU−MIMOを行うと伝送性能の低下を招く。そこで、品質が悪いチャネルを使用してCSIをフィードバックしてきたUEに対してはMU−MIMOの対象とせず、品質が良いチャネルを使用してCSIをフィードバックしてきたUEに対してのみMU−MIMOの対象とすることで、伝送性能の低下を回避することができる。
なお、上記においてはチャネル品質の推定値に基づいてMU−MIMOを行うか否かを決定する構成について説明したが、本実施の形態の適用はMU−MIMOに限定されず、空間多重通信であれば、例えばSDMA(space division multiple access)に適用しても良い。SDMAも、同じチャネルを使用して複数のUEにそれぞれ異なったデータを同時に送信することができる。
(変形例)
以上説明した実施の形態1においては、チャネル品質の推定値に基づいて空間多重通信を行うか否かを決定する構成について説明したが、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成としても良い。
例えば、高、低2つの閾値を設定し、高い方の閾値以上の品質の良いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては無条件にMU−MIMOの対象とし、2つの閾値の間の品質のチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、条件付きでMU−MIMOの対象とし、低い方の閾値よりも品質の悪いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対してはMU−MIMOの対象としないという構成を採っても良い。
その一例を図7を用いて説明する。図7は、チャネル品質の閾値を2種類設定し、推定したチャネル品質の判定を2段階で判定する動作を説明するフローチャートである。
図7に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS11)。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた第1閾値(便宜的に閾値2と呼称)と比較し(ステップS12)、推定したチャネル品質の値が閾値2よりも小さい場合はステップS15に進み、推定したチャネル品質の値が閾値2以上となる場合はステップS13に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値2としては、例えば5dBなどに設定する。
そして、ステップS15に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値2未満に該当するUEに対しては、MU−MIMOの対象としない。
一方、ステップS13に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値2以上である場合は、推定したチャネル品質の値を予め定めた第2閾値(便宜的に閾値3と呼称)と比較し、推定したチャネル品質の値が閾値3よりも小さい場合はステップS16に進み、推定したチャネル品質の値が閾値3以上となる場合はステップS14に進む。
なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値3としては、例えば8dBなどに設定する。
ステップS16に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値3未満に該当するUEに対しては、条件付きでMU−MIMOの対象に設定する。
ここで、条件とは、例えば、MU−MIMOの対象となっている他のUEに対応するプリコーダーとの分離度または直交度とMU−MIMOの必要度合の少なくとも1つが規定値を満たすか否かで定義される。
なお、MU−MIMOの必要度合とは、例えば、余っているリソースの多寡で定義することができ、余っているリソースが多ければMU−MIMOの必要性は少ないと判断して、推定したチャネル品質の値が閾値3未満に該当するUEはMU−MIMOの対象とせず、余っているリソースが少なければMU−MIMOの必要性ありと判断して、推定したチャネル品質の値が閾値3未満に該当するUEをMU−MIMOの対象に設定する。なお、余っているリソースの多寡の判断は、例えば、予め定めたリソースの規定値に基づいて判断すれば良い。
また、MU−MIMOの対象となる他のUEに対応するプリコーダーとの分離度または直交度が小さい場合は、他のUEに対する信号との分離が困難である判断して、推定したチャネル品質の値が閾値3未満に該当するUEはMU−MIMOの対象とせず、分離度または直交度が大きい場合は、推定したチャネル品質の値が閾値3未満に該当するUEをMU−MIMOの対象に設定する。なお、プリコーダーとの分離度または直交度の大小の判断は、例えば、予め定めた分離度または直交度の規定値に基づいて判断すれば良い。
一方、ステップS14に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値3以上に該当するUEに対しては、無条件にMU−MIMOの対象とし、MU−MIMO用のコードブックを生成して、MU−MIMOを行う。
このように、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成を採ることで、チャネル品質をより細かく分類して対応することができる。
なお、図6および図7を用いて説明したチャネル品質の推定値に基づくスケジューリングは、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
(実施の形態2)
以上説明した実施の形態1およびその変形例においては、eNB200が、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定し、推定したチャネル品質に基づいてスケジューリングを行う構成を示したが、変調・符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を補正するか否かを決定する構成としても良い。
図8は、実施の形態2におけるチャネル品質の推定値に基づいて変調・符号化方式を補正する動作を説明するフローチャートである。
図8に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS21)。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた閾値(便宜的に閾値4と呼称)と比較し(ステップS22)、推定したチャネル品質の値が閾値4よりも小さい場合はステップS24に進み、推定したチャネル品質の値が閾値4以上となる場合はステップS23に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値4としては、例えば5dBなどに設定する。
ステップS23に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値4以上に該当するUEに対しては、MCSを補正しない。
以下の表1にはLTEシステムで使用されるチャネル品質状況(CQI)とMCSのマッピングテーブルを示す。
表1では、チャネル品質を16段階に分け、0から15までのCQIインデックスが付けられている。このうちMCSが割り当てられるのは、CQIインデックスが1〜15までであり、CQIインデックス0にはMCSは割り当てられない。
また、表1に示すように、CQIインデックスに対応づけて、変調方式、コードレート×1024、送信効率が格納されている。
CQIが小さいほど、チャネル品質は悪いと表す。表1にはCQIが表すチャネル品質に適した変調および符号化方式を示した。
LTEシステムでは、eNB200がUE100からフィードバックされるCSIを受信すると、そのCSI(ここではCQI)に基づいて、表1から対応する変調・符号化方式(MCS)を決定する。例えば、フィードバックされたCSIが7であれば、変調方式は16QAMとし、コードレートは378×1/1024とする。これがMCSを補正しない場合の通常の処理であり、このようにして決定されたMCSを通常のMCSと呼称する。
一方、ステップS24に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値4未満に該当するUEに対してはMCSを補正する。
すなわち、アナログ伝送によりCSIがフィードバックされる場合、フィードバックに使用するチャネルの品質が悪いと、受信したCSIの信頼性(精度)が低く、そのCSIに基づいてMCSを決定すると伝送性能の低下を招く。そこで、品質が悪いチャネルを使用してCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、通常のMCSよりも伝送レートが低いMCSを選択することで、伝送性能の低下を回避することができる。
例えば、フィードバックされたCSI、ここではCQIが5であれば、通常の処理では、変調方式はQPSKとし、コードレートは449×1/1024に設定されるが、推定したチャネル品質の値が閾値4未満に該当するUEに対しては、変調方式はQPSKとし、コードレートは308×1/1024を選択する。これがMCSを補正した場合の処理である。MCSをどのように補正するかは任意である。
また、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成としても良い。例えば、高、低2つの閾値を設定し、高い方の閾値以上の品質の良いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては通常の処理でMCSを決定するが、2つの閾値の間の品質のチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、通常のMCSよりも伝送レートが低いMCSを選択し、低い方の閾値よりも品質の悪いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、さらに伝送レートが低いMCSを選択する構成としても良い。この場合、高い方の閾値は例えば8dBとし、低い方の閾値は例えば5dBなどに設定する。
このように、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成を採ることで、チャネル品質をより細かく分類して対応することができる。
なお、図8を用いて説明したチャネル品質の推定値に基づくMCSの補正の要否の判断およびMCSの補正は、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
(実施の形態3)
以上説明した実施の形態2においては、eNB200が、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定し、推定したチャネル品質に基づいて変調・符号化方式を補正するか否かを決定する構成としたが、ランクアダプテーションを補正する構成としても良い。
すなわち、MIMO通信では、ランク数(ストリーム数、レイヤ数)を多くすることにより高速な伝送が可能となるが、アナログ伝送によりCSIがフィードバックされる場合、フィードバックに使用するチャネルの品質が悪いと、受信したCSIの信頼性(精度)が低く、そのCSIに基づいてランクを決定すると伝送性能の低下を招く。そこで、品質が悪いチャネルを使用してCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、CSIに基づいて決められているランク数よりも、例えば一段階低いランク数で送信を行うことで、伝送性能の低下を回避することができる。
図9は、実施の形態3におけるチャネル品質の推定値に基づいてランクアダプテーションを補正する動作を説明するフローチャートである。
図9に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS31)。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた閾値(便宜的に閾値5と呼称)と比較し(ステップS32)、推定したチャネル品質の値が閾値5よりも小さい場合はステップS34に進み、推定したチャネル品質の値が閾値5以上となる場合はステップS33に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値5としては、例えば5dBなどに設定する。
ステップS33に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値5以上に該当するUEに対しては、ランクアダプテーションを補正せず通常の処理でランクを決定する。
すなわち、RIを例に採れば、インデックス値として1〜8が規定されており、インデックス値が大きくなるにつれてランク数が増えるように対応付けられているが、このインデックス値に対応付けられたランク数で送信を行うことがランクアダプテーションを補正しない場合の通常の処理である。
一方、ステップS34に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値5未満に該当するUEに対しては、ランクアダプテーションを補正してランクを決定する。
例えば、ランクを決定するためUEからフィードバックされたRIインデックス値が5であれば、通常の処理では、RIインデックス値5に対応したランク数で送信を行うが、推定したチャネル品質の値が閾値5未満に該当するUEに対してはRIインデックス値を、例えば一段階下げてRIインデックス値4に対応したランク数で送信を行う。これがランクアダプテーションを補正した場合の処理である。RIインデックス値を何段階下げるかは任意であり、2段階以上下げることも可能である。
また、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成としても良い。例えば、高、低2つの閾値を設定し、高い方の閾値以上の品質の良いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては通常の処理でランク数を決定するが、2つの閾値の間の品質のチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、一段階低いRIインデックス値に対応するランク数を選択し、低い方の閾値よりも品質の悪いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、二段階低いRIインデックス値に対応するランク数を選択する構成としても良い。この場合、高い方の閾値は例えば8dBとし、低い方の閾値は例えば5dBなどに設定する。
このように、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成を採ることで、チャネル品質をより細かく分類して対応することができる。
なお、図9を用いて説明したチャネル品質の推定値に基づくランクアダプテーションの補正の要否の判断およびランクアダプテーションの補正は、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
なお、以上の説明では、フィードバックされたRIを用いてランクアダプテーションをする構成について説明したが、RIに限らずフィードバックされたCSIあるいはチャネル行列等に基づいてランクアダプテーションを補正しても良い。
(実施の形態4)
以上説明した実施の形態1〜3においては、eNB200が、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定し、推定したチャネル品質に基づいてMU−MIMO対象に設定するか否か、変調・符号化方式を補正するか否か、ランクアダプテーションを補正するか否かを判断する構成としたが、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質に基づいて送信モード(Transmission mode)を変更する構成としても良い。
LTEシステムでは、送信ダイバーシティ、オープンループMIMOなどの送信モードがある。送信ダイバーシティはUEからのCSIに依存せず、オープンループMIMOはUEからのCSIに対する依存度が低く、両者とも送信の安定性が良いという特徴がある。
アナログ伝送によりCSIがフィードバックされる場合、フィードバックに使用するチャネルの品質が悪いと、受信したCSIの信頼性(精度)が低い。このような場合に、クローズドループMIMOやMU−MIMOで下りリンク送信を行うと、伝送性能の低下を招く。従って、CSIの精度が低い可能性がある場合には、CSIに依存しない送信ダイバーシティや、CSIに対する依存度が低いオープンループMIMOで下りリンク送信を行うことで、伝送性能を維持することができる。
すなわち、送信ダイバーシティやオープンループMIMOは、PMI(またはチャネル行列)を用いない送信モードであり、確率的に常に平均的な特性を得られるよう設計されている。一方、クローズドループMIMOは、PMI(またはチャネル行列)を用いて動的に最適化する送信モードであるが、信頼性の低いPMI(またはチャネル行列)に従って送信すると、CSIの精度が低い場合には送信ダイバーシティやオープンループMIMOよりも伝送性能が低下する可能性がある。
なお、前記PMI(またはチャネル行列)を用いて動的に最適化する送信モードは、当該送信モードを設定することによりUEからPMIまたはチャネル行列をフィードバックさせる設定を可能とする送信モードや、ある送信ストリーム数での送信の際に複数のプレコーダの中から送信に用いるプレコーダを選択して送信する送信モードであっても良い。
また、前記PMI(またはチャネル行列)を用いない送信モードとしては、当該送信モードを設定することによりUEからPMIまたはチャネル行列をフィードバックさせる設定を可能としない送信モードや、ある送信ストリーム数での送信の際に所定のプレコーダ(あるいは所定の複数のプレコーダの組み合わせ)を用いて送信する送信モードであっても良い。
図10は、実施の形態4におけるチャネル品質の推定値に基づいて送信モードを変更する動作を説明するフローチャートである。
図10に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS41)。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた閾値(便宜的に閾値6と呼称)と比較し(ステップS42)、推定したチャネル品質の値が閾値6よりも小さい場合はステップS44に進み、推定したチャネル品質の値が閾値6以上となる場合はステップS43に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値6としては、例えば5dBなどに設定する。
ステップS43に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値6以上に該当するUEに対しては、通常の処理、すなわちCSIに依存するクローズドループMIMOまたはMU−MIMOでの送信を行う。クローズドループMIMOは、SU−MIMO(Single-User-MIMO)に適用した場合はデータレートの向上を図ることができ、MU−MIMOはリソースが少ない場合に、リソースを節約できるという利点がある。
一方、ステップS44に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値6未満に該当するUEに対しては送信ダイバーシティまたはオープンループMIMOでの送信を行う。これにより、フィードバックされた下りリンクのCSIと実際のCSIとで誤差がある場合でも、すなわちフィードバックされたCSIの信頼性(精度)が低い場合でも、下りリンク送信の伝送性能を維持することができる。
(変形例)
以上説明した実施の形態4においては、チャネル品質の推定値に基づいて送信モードを変更する構成について説明したが、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成としても良い。
例えば、高、低2つの閾値を設定し、高い方の閾値以上の品質の良いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、通常の処理、すなわちクローズドループMIMOまたはMU−MIMOでの送信を行う。そして、2つの閾値の間の品質のチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、オープンループMIMOでの送信を行い、低い方の閾値よりも品質の悪いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、送信ダイバーシティでの送信を行うという構成を採っても良い。
その一例を図11を用いて説明する。図11は、チャネル品質の閾値を2種類設定し、推定したチャネル品質の判定を2段階で判定する動作を説明するフローチャートである。
図11に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSIを受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS51)。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた第1閾値(便宜的に閾値7と呼称)と比較し(ステップS52)、推定したチャネル品質の値が閾値7よりも小さい場合はステップS55に進み、推定したチャネル品質の値が閾値7以上となる場合はステップS53に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値7としては、例えば5dBなどに設定する。
そして、ステップS55に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値7未満に該当するUEに対しては、送信ダイバーシティでの送信を行う。送信ダイバーシティは、最大スループットがオープンループMIMOよりは低下するが、CSIに依存せず、ロバスト性という点では優れているので、フィードバックされたCSIの信頼性(精度)がかなり悪い場合でも、一定レベルの送受信性能を確保できる。すなわち、信頼性の低いCSIに従うクローズドループMIMOで送信するよりも、性能の劣化を防ぐことができる。
一方、ステップS53に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値7以上である場合は、推定したチャネル品質の値を予め定めた第2閾値(便宜的に閾値8と呼称)と比較し、推定したチャネル品質の値が閾値8よりも小さい場合はステップS56に進み、推定したチャネル品質の値が閾値8以上となる場合はステップS54に進む。
なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値8としては、例えば8dBなどに設定する。
ステップS56に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値8未満に該当するUEに対しては、オープンループMIMOでの送信を行う。
一方、ステップS54に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値8以上である場合は、通常の処理、すなわちクローズドループMIMOまたはMU−MIMOでの送信を行う。
このように、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成を採ることで、チャネル品質をより細かく分類して対応することができる。
なお、図10および図11を用いて説明したチャネル品質の推定値に基づく空間多重通信を行うか否の判断および送信モードの選択動作は、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
(実施の形態5)
実施の形態1においては、推定したチャネル品質に基づいてスケジューリングを行う例として、チャネル品質の推定値に基づいて空間多重通信を行うか否かを決定する構成について説明したが、スケジューリングの例としてはリソースブロック(RB)の割り当ての優先度を変える構成を採っても良い。
すなわち、UEからCSIをフィードバックする方式として、例えば、10MHz、50リソースブロックのシステム帯域の全体に対して1つのCSIの値をフィードバックするワイドバンドフィードバックと、1つのシステム帯域(10MHz、50リソースブロック)を、例えば6リソースブロックごとのサブバンドに区分して、サブバンドごとにCSIの値をフィードバックするサブバンドフィードバックがある。
サブバンドフィードバックでは、一般的にeNB側で各UEからフィードバックされたCSIに基づいて、各UEに対して特性の良い周波数リソースを特定し、当該周波数リソースをそれぞれのUEに対して優先的に割り当てることで、全体のパフォーマンスを改善するスケジューリングが行われる。
図12にはサブバンドフィードバックを模式的に示しており、横軸を時間軸、縦軸を周波数軸として1つのシステム帯域が6リソースブロックごとに2つのサブバンドに区分された構成を示している。
図12においては、1つのシステム帯域においてリソースブロックRB0〜RB5はサブバンドSB0として定義され、リソースブロックRB6〜RB11はサブバンドSB1として定義されている。
このような、サブバンドフィードバックに基づいたケジューリングの一例を図13に示しており、例えば、システム帯域T1では、リソースブロックRB0〜RB3が第1のUEに割り当てられ、リソースブロックRB4〜RB7が第2のUEに割り当てられ、リソースブロックRB8〜RB11が第1のUEに割り当てられている。このようにリソースブロックが分散するのはスケジューリングの結果であり、UEごとに特性の良い周波数リソースを特定して優先的に割り当てた結果である。
このようにスケジューリングによって、各UEに対して特性の良い周波数リソースを割り当てるが、CSIをフィードバックするチャネルの品質が悪いと、eNBで受信したCSIの信頼性(精度)がサブバンドごとに異なるという状況が発生し、適切な周波数リソースの割り当てができず、結果として全体のパフォーマンスが低下する可能性がある。
そこで、eNB側で推定したチャネル品質に基づいてリソースブロックの割り当ての優先度を変えることで、パフォーマンスの低下を抑制することができる。
図14は、実施の形態5におけるチャネル品質の推定値に基づいてスケジューリングを補正する動作を説明するフローチャートである。
図14に示されるように、eNB200は、UE100からフィードバックされるCSI(サブバンドごとのCSI)を受信すると、CSIのフィードバックに使用されたチャネルのチャネル品質を推定する(ステップS61)。なお、eNB200では、フィードバックされたCSIに基づいて、例えばPFスケジューリングを行ってUEごとにリソースブロックの割り当てを行っている。
次に、推定したチャネル品質の値を予め定めた閾値(便宜的に閾値9と呼称)と比較し(ステップS62)、推定したチャネル品質の値が閾値9よりも小さい場合はステップS64に進み、推定したチャネル品質の値が閾値9以上となる場合はステップS63に進む。なお、チャネル品質としてSINRを使用する場合、閾値9としては、例えば5dBなどに設定する。
ステップS63に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値9以上に該当するUEに対しては、リソースブロックの割り当て優先度は、先に設定されたものを維持する(スケジューリングを補正しない)。
一方、ステップS64に進んだ場合、すなわち、推定したチャネル品質の値が閾値9未満に該当するUEに対しては、リソースブロックの割り当て優先度を下げる(スケジューリングを補正する)。
例えば、図13に示すスケジューリングの例において、リソースブロックRB0〜RB3を含むサブバンドのフィードバックが第1のUEから行われた際に、CSIのフィードバックに使用する上りチャネルの品質が悪い場合には、このサブバンド内のリソースブロックの割り当て優先度を下げ、第2のUEの優先度を上げる、あるいは第2のUEの優先度が相対的に上がることとなる。
そして、全てのリソースブロックRBに対して優先度を再計算してスケジューリングを補正することで、パフォーマンスの低下を抑制することができる。
図15には、補正後のスケジューリングの一例を示す。図15に示すように、補正後のスケジューリングでは、リソースブロックRB0〜RB3は第2のUEに割り当てられている。
なお、スケジューリングの一例としてPF(Proportional Fairness)スケジューリングが挙げられる。PFスケジューリングでは、RFメトリックが優先度に相当し、優先度を上げるとはRFメトリックを増加させることを意味し、優先度を下げるとはRFメトリックを減少させることを意味する。
また、以上の説明では、推定したチャネル品質の値が所定の閾値未満に該当するUEに対しては、リソースブロックの割り当て優先度を下げるものとして説明したが、推定したチャネル品質の値が所定の閾値以上に該当するUEに対しては、リソースブロックの割り当て優先度を上げるという構成も可能である。優先度は相対的な値であるので、優先度を上げることでも、結果として全体のパフォーマンスを上げることができる。
また、本実施の形態においても、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成としても良い。例えば、高、低2つの閾値を設定し、高い方の閾値以上の品質の良いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、リソースブロックの割り当て優先度は、先に設定されたものを維持する(スケジューリングを補正しない)が、2つの閾値の間の品質のチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、優先度を一段階下げる。そして、低い方の閾値よりも品質の悪いチャネルでCSIをフィードバックしてきたUEに対しては、優先度を二段階下げる構成としても良い。この場合、高い方の閾値は例えば8dBとし、低い方の閾値は例えば5dBなどに設定する。なお、このように複数の閾値を用いて段階的に判定する構成においても、閾値に基づいて優先度を段階的に上げるように構成しても良いことは言うまでもない。
このように、推定したチャネル品質の判定を複数の閾値を用いて段階的に判定する構成を採ることで、チャネル品質をより細かく分類して対応することができる。
なお、図14を用いて説明したチャネル品質の推定値に基づくリソースブロックの割り当ての優先度を変えるか否かの判断およびスケジューリングの補正は、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
(実施の形態の組み合わせ)
以上説明した各実施の形態の組み合わせも考えられる。例えば、実施の形態2〜4は、実施の形態5と組み合わせることができる。例えば、実施の形態2の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するUEに対して変調・符号化方式を補正してMCSを決定した後、さらに実施の形態5の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するリソースブロックの割り当て優先度を下げる(スケジューリングを補正する)処理を行う。
また、実施の形態3の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するUEに対してランクアダプテーションを補正してランクを決定した後、さらに実施の形態5の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するリソースブロックの割り当て優先度を下げる(スケジューリングを補正する)処理を行う。
また、実施の形態4の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するUEに対して送信ダイバーシティまたはオープンループMIMOでの送信を決定した後、さらに実施の形態5の構成において、推定したチャネル品質の値が閾値未満に該当するリソースブロックの割り当て優先度を下げる(スケジューリングを補正する)処理を行う。
(チャネル品質の推定のタイミング)
以上説明した実施の形態1〜5においては、チャネル品質を推定するタイミングについては特に言及していなかったが、受信したCSIと同じタイミング(同じサブフレーム)が望ましい。従って、図6〜図11および図14で示されるフローチャートのように、CSIの受信と同時に行うことが望ましいが、CSIの受信とは独立して行っても良い。
すなわち、一連の通信セッション中に、一定の間隔で周期的にチャネル品質の推定を行い、チャネル品質の推定結果を利用する場合に、一番直近の推定結果を利用するようにしても良い。
例えば、周期的にCSIがフィードバックされる場合は、CSIがフィードバックされる直前のタイミングでチャネル品質を推定すれば良い。CSIのフィードバックが非周期的である場合は、eNB200からUE100にCSIを要求する直前にチャネル品質を推定すれば良い。
また、頻繁にチャネル推定をする必要がない場合、チャネル推定の間隔を任意に設定しても良い。例えば、推定間隔を20msecと設定し、伝送路変化の速いUEからのCSIのフィードバックに対しては、推定間隔を、例えば、10msec、5msecまたは2msecなどに設定すれば良い。
また、以下に説明するように、推定間隔をチャネル品質の変化の速さに従って動的に調整するようにしても良い。
図16はチャネル推定の間隔を動的に調整する方法を説明するフローチャートである。図16に示すように、eNB200とUE100との間で通信が開始されると、初期推定間隔として例えば20msecが設定される(ステップS81)。
そして、20msec間隔でチャネル推定を繰り返し、その都度、新しい推定値とその前(前回)の推定値との差を算出し、両者の差が20%を超えるか否かを判断する(ステップS82)。そして、所定の期間内に20%を超える場合が3回以上ある場合にはステップS86に進み、そうでない場合にはステップS83に進む。
ここで、所定の期間内に20%を超える場合が3回以上ある場合とは、現在設定されている推定間隔の例えば5倍時間内(5回の推定を行う時間内)に20%を超えることが累積で3回以上ある場合を意味し、推定間隔が、例えば初期設定の20msec間隔である場合は、その5倍の時間(100msec)内で20%を超えることが3回以上あったと言うことになる。
ステップS86に進んだ場合、すなわち、所定の期間内に20%を超える場合が3回以上あった場合は、チャネル品質の大きな変化が頻繁に起きていると言うことができ、チャネル品質の変化の早さを確認するため、推定間隔を半分に変更する。
続いて、ステップS87に進んで、変更後の推定間隔が最短間隔より小さいか否かを判断し、変更後の推定間隔が最短間隔よりも小さいと判断される場合は、推定間隔を最短間隔に設定し(ステップS88)、ステップS85に進む。ここで、最短間隔とは、LTE仕様で規定されるCSIフィードバックの最短間隔時間のことであり、例えばCSIフィードバックの最短期間が1サブフレームの場合は最短の推定間隔が1msecとなる。
一方、変更後の推定間隔が最短間隔以上と判断される場合は、変更後の推定間隔のままステップS85に進む。
ステップS82からステップS83に進んだ場合、すなわち、所定の期間内に20%を超える場合が3回に満たない場合は、ステップS83において、所定の期間内に新しい推定値と前回の推定値との差が5%未満となる場合が3回以上あるか否かを判断する。これは、新しい推定値と前回の推定値との差が20%を超えるような大きな変化ではなく、チャネル品質があまり変化していないことを確認するための動作である。
ここでの所定の期間は20%を超えるか否かを判定する場合の所定期間と同じである。すなわち、同じ所定期間内に、新しい推定値と前回の推定値との差が20%を超える場合と5%未満となる場合の両方について判断を行うことになる。
そして、所定の期間内に5%未満となる場合が3回以上ある場合にはステップS84に進み、そうでない場合にはステップS85に進む。
ステップS84に進んだ場合、すなわち、所定の期間内に5%未満となる場合が3回以上あった場合は、チャネル品質の変化が頻繁に起きていないと言うことができ、チャネル品質の変化を頻繁に確認する必要がなく、推定間隔を2倍に変更し、ステップS85に進む。
ステップS85では、現在進行中の通信セッションが終了したかを判断する。通信セッションが終了した場合はチャネル推定間隔の動的調整の制御も終了する。一方、通信セッションが終了していない場合はステップS82以下の動作を繰り返すことになる。
なお、ステップS82からステップS83に進み、ステップS83からステップS85に進んだ場合、すなわち、推定間隔が所定期間内で変更がない場合は、記録した推定値の一番古いものを捨てて、推定間隔の時間経過で得た新たな推定値を累積する。また、記録した推定値の全て、例えば5回分の全てを捨てて、記録をリセットし、再度、所定期間内で記録するようにしても良い。
なお、上述した新しい推定値と前回の推定値との差(20%、5%)は一例であり、20%を15%とし、5%を3%としても良いことは言うまでもない。
また、所定の期間内に新しい推定値と前回の推定値との差が所定値を超える、または所定値未満となる回数(3回)についても一例であり、2回や5回に設定しても良いことは言うまでもない。
なお、上述したチャネル推定の間隔を動的に調整する方法は、CSIの受信と同時にチャネル推定を行う場合にも、CSIの受信とは独立して行う場合にも適用することができる。
なお、図14を用いて説明したチャネル推定の間隔を動的に調整する動作は、eNB200のプロセッサ240の制御部242による動作である。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。