一般的にアーチ橋をコンクリートで製造しようとするときには、大きな構造物であるから、現場打ちで作業がなされている。まず、現地にて足場を架設してアーチの下方および側面を形づくるように型枠を形成し、構造物内部に適宜配筋を配してから、コンクリートを打設する。そして、流し込んだコンクリートが固化するまで十分に養生するといった必要もある。すると、大がかりであるから、建造コストや工期が大きなものとなってくる。ところが、道路整備が一巡したような現在では、新設する橋ばかりではなく、現在既にかかっている老朽化した橋を掛け換えるといった要請がむしろ高いものとなっている。さて、15m以上の橋梁は14万6千橋あり、15m以下の橋梁も推定によると約84万橋あるとされている。そして、15m以上の橋梁は、平成28年にはその20%が、平成38年にはその48%が寿命とされる50年に達するとされており、15m以下の橋梁においても、老朽化や改修の要請される傾向は同様であろうと想定される。
そして、橋の掛け替え工事においては、一般的に長寿命化修繕が志向されていることから、耐久性のある強固なコンクリート橋は、要望に適う手法のひとつに足りうる。しかしながら、日頃利用に供されている橋であればあるほど、利用・通行を阻害しないようにスムーズな掛け替え工事が望まれていることから、工期が長くなりがちなコンクリート構造物を選択することは必ずしも容易ではない。また、工期が長くかかるとコストも増していくことが多い。
さて、アーチ橋の構造物は、古くはローマ時代から石造の橋として広く活用されていたことが知られている。アーチ構造は、それぞれの迫石部材に曲げの力が大きくかかることがなく、鉛直方向の荷重の大部分の力は圧縮力であり両端の支点まで伝えられるものであるから、二つの支点間のスパンを比較的長く確保しやすいという利点がある。そして、コンクリートは、非常に圧縮に対して強い素材であるから、アーチ構造に際して適した素材である。
そして、アーチ橋そのものを一体的に大型プレキャストコンクリートとして製造してしまうことができれば、工場で成型した物を現場に持ち込んで据え付け工事をすることができるので、現地での施工工程が簡略化できることから、アーチ橋をプレキャストコンクリートブロックで製造することの有用性は高い。一方で、コンクリートの圧縮応力が十分に発揮されるには、養生温度にもよるとはいえ、打設後1週間以上かかる。そこで、プレキャストブロックで十分に養生したものであれば、強度が十分に備わった状態で現場での施工ができることとなる。もっとも、アーチ橋そのものを全体として一体的にプレキャスト化すると、構造物が大きすぎるものとなり、その搬送は困難になる。そこで、ある程度大まかに分割したブロックとする場合でも、大型ブロックとなってしまうので、各ブロックの重量が数トンにも及んでしまうこととなる。しかし、大型で大重量となると、工場からの搬出・搬送が容易ではなく、重機や輸送手段も大型化してしまうほか、アーチの高さ(迫高,アーチライズ)は高さがあるので、公道を走行するには支障がでやすく現実的には諸々の困難を伴いやすい。また、アーチの両端同士の距離(径間,スパン)とアーチライズは、橋によって種々にバリエーションがあるところ、プレキャストコンクリートの型枠をそれに種々に対応させることとなっては、大量生産に不向きものとなってしまい、コストに見合う実用化が容易とはいえなくなる。そこで、実用的にスパンやアーチライズなどのアーチ橋の設計に対応しやすい自由度の高い工法が望まれている。
もっとも、コンクリートブロックを迫石部のブロックひとつずつで製造し、これらを石積のようにひとつひとつ積み上げていくような手法をとるとなると、かえって実用性が乏しいものとなる。もちろん、設計自由度が高いものとなるであろうが、石積みのようにブロックを積み上げていくには、支点間のスパンにアーチの円弧の土台を土で盛るなどして築くなどの必要があり、大がかりな作業が事前に必要となる。しかし、河川での工法として採用するには、土台の支保工や足場工の困難さを考えると、実用的な工法とは言い難い。そして、ブロックをアーチ状に隙間なく積み上げていく作業は手間と時間がかかるのみならず、そもそも精緻な積み上げをするとなれば、作業者には相応な熟練の技量が要請されることとなる。すると、再現性がある安定的な一般的工法として建設業界に広く普及させていくには不向きな技術となるので、もっと簡便な取り扱いのできる施工しやすい工法の可能な建造物が望まれている。
より簡便な工法を志向したもののひとつとして、クイーンズ大学ベルファストのAdrian E. Long教授は、複数のコンクリートブロックを配列して形成させるアーチ橋およびその工法として、アーチの円弧を複数の逆台形状の複数個の迫石部に分割し、これらの迫石部を平面上に一列に展開して並べ置き、それぞれの迫石部の上平面を一連の補強材の格子状のポリプロピレン樹脂で連接した後、平面上の状態で現場まで搬送してから、現場で中央の迫石部のブロックが高くなるように吊り上げて全体を円弧状のアーチに形成して、現場に設置する方法を提案している(例えば特許文献1および特許文献2参照。)
たしかに、この工法によると、平面上に一列に配列して上平面を連接した一連の複数の迫石部を現場まで搬送後、吊り上げてアーチ状にすることとなるので、搬送時にはアーチライズ自体は考慮せずともよくなり、また複数のアーチ部材を平置きで重ね置くこともできる余地がある。そして、現場での足場工や支保工を簡略化できるので、通常のアーチ橋の架設に比した場合、現場での工期短縮が見込まれる。
これらの特許文献1、2で、具体的に実施の形態として発明の詳細な説明に開示されている手順には、1個の型枠で1個ずつ同形状の迫石部のコンクリートブロックを成型したうえで、この迫石部のブロックを平面に一列に配してから、格子状のポリプロピレン樹脂を上平面に渡して補強連結する手順が記載されている。
もっとも、この工法によると、最終的には、一連に連接されたアーチ橋が平置状態に展開された状態となるため、この一連のものを搬送するために吊り上げる際にも大型の重機が必要となる。また、設置時にも大型重機で吊り上げる必要がある。すなわち、製造時に最初から一連一体にするとなると、搬送自体がかなり大がかりな作業となる。たとえば、スパン10m、アーチライズ2.5mのときには、平面に展開した迫石部ブロックの全長は約12mとなる。また、スパン10m、アーチライズ4mならば、全長は約14mともなる。長大かつ大重量なので、大型のトレーラーでなければ、平置であっても日本国内の道路上を安全に搬送することができないものとなる。そこで、平置き状態で製造し、搬送できる便宜性が十分に活かせるものとは必ずしもいえなかった。なお、特許文献1、2においては、3〜8m程度のスパンが開示されるに留まっている。
迫石部のブロックをクレーンで吊り上げていくと、迫石部の各ブロックは隣接するブロックと壁面を接するように密着させながら吊り下がることとなるので、きれいなアーチの円弧が自然と形成されることが想定されている。ところが実際に再現してみようとすると、アーチライズが高くなるような深い円弧を描く配置を用いた場合には、吊り下がる両端の迫石部のブロックは、隣接するブロックと密着することができず、アーチのきれいな円弧のラインまで傾かずに、外側に開いた状態で吊り下がってしまうこととなる問題が発生することが判明した。すると、隙間が空いて外向きに折れ曲がったようになってしまうので、設置スパンどおりに両端のブロックを配設することが難しく、設置作業が進めにくく、かといって、自重が重いので、吊り下がった状態で開いたブロックを所望の位置に傾けることは容易ではない。設置する所期のスパンのとおりに再現性高く作業を進めることが容易とはいえないものとなっていた。
さて、このように吊り上げた際、吊り下がった下端部のブロックが隣接した上方の迫石部のブロックと密着しない現象が生じるのは、ブロックの重心位置と連接部位の回転支軸の位置関係による回転移動の方向に起因している。ここで、連接部から吊り下がるブロックには、さらにその下方に連接されたブロックも含めた荷重がかかるので自身の重心位置ではなく、吊り下がった部分全体の重心位置のことである。
まず、上平面側に隣接ブロックとの連接部があるので、その連接部位を回転支軸としてブロック自体は吊り下がることとなる。迫石部のコンクリートブロックは、1個が150kg以上もあるので、吊り下げられると、回転支軸となる連接部位を中心に回転しながら、その重心が支軸の鉛直下になる向きに移動しようと回転する。そして、迫石部のブロックの重心が連接部の鉛直下よりも外側に位置している場合には、隣接するブロックに接する方向へブロックが回転しようとするので、隣接するブロックに隙間なく接するようになることから、きれいな所望のアーチのラインが吊り上げるだけで自然と形成されることとなる。
ところが、スパンを一定としたときにアーチライズを高くしていくと、円弧の湾曲が大きくなり、下端側のブロックは上平面が大きく傾倒するので、上平面の連接部を回転支軸として下垂されたブロックを鉛直線下に重心が向かうようにブロックが回転したとき、隣接する上方のブロックから離れた状態になってしまい、きれいなアーチのラインを形成することなく、下端ブロックが逆方向に折れ曲がったようになる。すると、下端部分の所望のスパンの位置に安定的に載せ置くことができず、アーチライズが高く湾曲の大きなアーチを描くときには、下端ブロックの収まりが悪くなる欠点が生じることとなる。
さらに、一連一体に接続して一気に吊り上げるアーチ構造とすると、文献1、2に記載のように連結部材にポリプロピレン樹脂を用いるときには、荷重に耐えられず伸びてしまい易く、伸びてしまうと迫石部のブロックがずれて積み重なってしまうので、きれいなアーチを形成することが困難となってくる。なぜなら、迫石部のコンクリートブロックは、横幅1mのものであれば、およそ1個のブロックの重さが150〜180kgになるところ、全体では10数個〜20数個の迫石部のブロックが連接されることとなるからである。実用上、荷重に負けて連結部材が伸びてしまうこととなるので、スパンを大きくすることには限界が生じやすかった。
さて、特許文献1に記載のアーチ橋の従来工法は、先述のとおり、アーチを迫石ブロックに分節して平面に展開したかのようにしてコンクリートブロックを一列に平置した状態で、それらの迫石ブロックの上部をポリプロピレン樹脂で連接した後、これらを吊り上げてアーチ形状に湾曲させるようにして設置するアーチ橋の工法である。しかし、アーチ形状に吊り上げたときに、吊り下がった下端側の迫石部のブロックがアーチ形状のラインを描くことなく、隣接するブロックとの間が開いて折れ曲がってしまう問題が生じていた。これは吊り下がったブロックの重心移動によって引き起こされており、円弧の湾曲が大きな下端のブロックでは、連接部の延長下に向かって重心移動する際に、隣接するブロックと接するようにしてアーチの円弧を形作るのではなく、むしろ逆方向へ回転するので、逆に折れ曲がってアーチの下端が屈曲したように開いてしまうのである。
しかし、アーチ橋では、両端の下端側ブロックに向かって圧縮荷重がかかることから、下端ブロックは非常に重要なブロックとなるものであり、アーチのライン形状に適切に位置することが求められている。これらの下端のブロックが逆方向に折れ曲がったままに地面に着地させることはできないが、隣接したブロックから開いた状態で吊り下がる下端部のブロックは自重があるので、吊り上げた後にこれらを簡単に所望の向きに押し戻すこともできない。そこで、下端ブロックが逆向きに屈曲してしまうような大きな傾きとなるアーチライズを高くすることや、スパンを大きくすることは容易ではなかった。
また、こうした工法で用いられてきた迫石部のブロックは、たとえば20〜30cmといった厚みのあるブロックであって、上面側を連接するポリプロピレン樹脂がモルタル等で上平面に埋設するようにされている。この場合、コンクリートとの密着性を考えると、連接部材は上平面に薄くモルタル等を被せてカバーすることが考えられる。すると、平面状態で一列に迫石ブロックを並べて連接した状態のとき、および吊り上げて迫石ブロック同士が接してアーチ形状の円弧を正しく形成しきってしまった完成状態のときのような初期状態と最終状態では以下の問題は露顕しないが、吊リ上げる過程で、下端ブロックが逆向きに開いてしまう場合には、迫石ブロックの上端部が隣接するブロックの上端部とが接触して、欠けたり、ひびが入るといったことが問題となってくる。さらに、欠損の度合いによっては、内部に埋設された補強部材のコンクリートへの密着力が落ちる場合がある。特に2段階に分けて打設したような場合には、補強部材の上下でコンクリートの密着性が必ずしも良好とはいえないことから、上端がせることで、内部に埋設された補強部材より上方のモルタルが全体として浮きあがって剥がれてしまうことも生じうる。また、端部にかかった力によって、表層全体が浮き上がることとなれば、埋設された補強部材のところで強度が著しく低下することとなる。すると、連接強度を大きく損なってしまうことにつながりかねない問題となり、単なる美観といったレベルを越えて吊り下げの安全性にかかわるものとなってくる。
そして、吊り上げ工程で、たとえば連接した平置き配置された多数の迫石部のブロックを、中央からクレーンで順に吊り上げていくようにする場合、吊り上げ途中では、真ん中がアーチ状に高くなる一方で、下方に連なった両側のブロックは、いまだ平置きの状態である。すると、円弧のアーチカーブが途中で逆向きに湾曲するS字を描くことになる。さて、平面近くの場所でブロックが反対側に反るのは、迫石部のブロックのうち地面に接しているブロックと、その隣の持ち上がり出したブロックとは、迫石部のブロックが重心方向に動いて適切な向きに回転できないからである。すなわち、アーチライズが高いときにかぎらず、単に中央を吊り上げるときにも、隣接するブロック同士の上端部が連接部位よりも上方でせってしまい、接触した端部が欠けたりひび割れたりすることが生じやすいものとなる。そこで、連接したアーチを吊り上げる作業中のブロックの動きによって、端部が欠損しないようにする工夫が要請されている。
ところで、平面の上に一列に並置した迫石部のブロックは、全長が長大となり、重量も大きいことから、プレキャストコンクリートで製造した場合に不可避となる現場への搬出、搬送が大がかりなものとなり、搬出や搬送に用いる重機やトラックが大型化するばかりか、施工に際しての作業者の熟練度の要請などが高くなり、施工が容易ではなくなる。したがって、より搬出・搬送に適する工法が要請されている。
また、平面上に迫石部のブロックを並列に並べ置いたうえで、それらのブロックの上平面に連接部材を巡らすことで一連一体化するとなると、製作手順としては、長大な大型の型枠を用意して全体を一体的に製作していくか、あるいは迫石部のブロックを個別に型枠で打設した後にそれらを並列に並べ置いたうえで連接部材を上平面に一連となるように配してから2段目の打設をすることが想定される手順となる。
しかし、前者の手順のように一連一体で全体を打設する場合には、型枠の金型を何種類も用意する必要が生じてしまう。アーチのスパンやアーチライズの高さは個々の橋に応じてバラバラであり、一様ではないから、汎用的な製作ができず、プレキャスト製であるメリットに欠けている。また、後者は、打設作業が2度にわたるなど、手順が多く、より簡略化しうる構造的な工法が望まれている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、圧縮荷重を用いて強固に安定なアーチ構造を得られる迫石を円弧状に積み上げるアーチ構造を応用するべく、迫石部ブロックをコンクリートプレキャスト製ブロックで成型し、平面上に並列に並べ置いた状態で外周側の上面部を連接して一連のものとして吊り上げ可能としたブロックであって、これらを中央部が高く湾曲するように吊り上げることで円弧を描いてアーチ橋に形成しうる可搬性のプレキャストコンクリート製ブロックからなるアーチ橋を提供することであって、さらに、吊り上げ作業時に下垂された下端の迫石ブロックが隣接する迫石ブロックと接することなく開いてしまわないように、アーチの円弧形状で吊り上げ動作が適切にできることである。
また、一連の迫石ブロックが吊り上げによって中央部から順に高くしていくと、下方の裾野部分がアーチの円弧の湾曲とは逆の向きにS字を描くように湾曲することから、迫石ブロックがアーチの円弧とは逆向きに折れ曲がることがある。すると、迫石ブロックの上端が隣接する迫石ブロックと接触して欠損するおそれが高まるので、欠損しにくいようにすることである。
さて、アーチ橋の円弧を形成する一連のブロックが連続して一体に形成されていると、長大で大重量となるので、一体化後の現場への搬出・搬送が大がかりとなり難しい。そこで、製造や搬出、搬送をより容易にするためには、たとえば数個のブロックからなる複数のブロック群に分割された状態で搬出可能とすることができないかが検討されることとなる。ところが、数群に分割されたブロック群を組み合わせて一体化するには、搬送後にブロック群同士を連接することが必要となるが、複数の群の各両端の迫石ブロック同士を連接して一体化することは容易ではない。たとえば、搬送後にブロック群を組み合わせて現場で連接するための打設をさらにするとなれば、搬送後に打設する以上、数日間養生しなければ吊り上げることができなくなるので、工期や場所をとるなどしてしまい、プレキャスト製とするメリットが減殺されてしまう。そもそも、端部のブロック同士間だけにしか連接部材を巡らせられないことになるのであれば、連接部材にかかる荷重を保持するだけの密着強度を確保することも容易ではなく、連接自体が実用的な強度をもたせるうえで難しいものとなる。このように、搬送の都合を優先して複数のブロック群に分割することは、その後の連接も考えると容易に実施できる手段ではなく、さらなる実際上の工夫が必要となっている。
そこで、さらなる本発明の課題は、アーチ橋の迫石部のブロックを複数のブロック群として搬送容易としつつも、搬送されたブロック群を連接して一体に吊り上げ可能とすることで、吊り上げ時にアーチの円弧を適切に形成しうるものであって、吊り下げられたブロックがずれたりせず、所望の位置に円弧を形成して安定的に吊り上げることができる工夫を提供することであり、特にこれに用いるブロック群を安定的に製造する方法である。
本発明の迫石ブロックは、多数のブロックが連続的に積みあがって全体として大きな円弧を形成することから、一つのブロックであれば気にならない程度の僅かなズレが、多数のブロックになると大きな差異となって強調されてしまうこととなる。逆台形の斜辺の傾斜角や底辺、上辺の製造精度は、所望どおりの設計でアーチ橋を実現しようとすれば、とても厳密である必要がある。具体的には、逆台形の底辺の長さが左右1mmずつ違ってしまうと、それだけで20個以上の連接されたブロックでは、アーチライズの高さで10cm程度、スパンでも10〜20cm程度の差となってしまう。そこで、繰り返し安定的に所望の形状のブロック群を製造する方法が望まれている。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、ブロック群を複数群連結して一連一体とすることで、全体を吊り上げたときに下辺側を内周とし、上辺側を外周とする円弧状のアーチ橋に形成可能とした、アーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体全体を吊り上げたときに下辺側を内周とし、上辺側を外周とする円弧状に形成可能とした、アーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体において、このブロック群は、迫石ブロックと左端ブロックおよび右端ブロックを連接部材で連接したものであって、この迫石ブロックは、左右の斜辺と下辺と下辺に平行で下辺より長さの長い上辺とからなる逆台形を底面としてこれに側稜が直交する四角柱状であって、この四角柱状の迫石ブロックを逆台形の上から下に向かって2等分に縦割りにしたサイズの半身のブロックのうち、縦割り面が右側にくるものを右端ブロックとし、縦割り面が左側にくるものを左端ブロックとするとき、左端ブロックと右端ブロックの間に迫石ブロックを1から4個程度配列させて、各ブロックはその上平面近傍に埋設された連接部材で隣接のブロックと連接されてコンクリート製のブロック群が形成されており、
これらのブロック群の製造方法は、まず、ブロック群の外周を囲む4側壁と底面板による直方形の型枠内に、その内部空間を平行に間仕切る断面二等辺三角形の複数枚の仕切り壁を、側壁と両端の仕切り壁の上辺との離間距離を1としたときに隣接する仕切り壁の上辺同士の離間距離を2とするように底面板上に短手方向に配し、次に、これらの仕切り壁を配した直方形の型枠内に、仕切り壁の高さまでコンクリートを投入した後、連接部材を仕切り壁の上辺直上が連接面となるように載置し、その上に断面逆三角形の面取板型枠部材を仕切り壁の上辺と逆三角形の下向きの頂点の位置が上下に向き合うように対向するように配し、面取り板型枠部材と側壁で仕切られた上部空間に、それぞれ連接部材の上からコンクリートを投入して連接部材をコンクリートに埋設して固化させた後に、複数のブロックが連接部材で連接された状態のブロック群を得る、アーチ構造用の連接コンクリートブロック体に用いるブロック群の製造方法である。
まず、ブロック群の前提となる、ブロック群同士を連結する連接コンクリートブロック体について説明する。これは、左右の斜辺と下辺と下辺に平行で下辺より長さの長い上辺とからなる逆台形を底面としてこれに側稜が直交する四角柱状の迫石ブロックとし、この四角柱状の迫石ブロックを逆台形の上から下に向かって2等分に縦割りにしたサイズの半身のブロックのうち、縦割り面が右側にくるものを右端ブロックとし、縦割り面が左側にくるものを左端ブロックとするとき、左端ブロックと右端ブロックの間に迫石ブロックを1から4個程度配列させ、各ブロックの上平面近傍の内部に連接部材を埋設するようにして巡らせて、隣接する迫石ブロックと連接箇所を軸として下方に吊り下がる迫石ブロックを回動可能に連接させた状態のブロック群を、隣接するブロック群の一方端のブロックと縦割り面が向かい合わせるようにして複数群のブロック群を連結させたことで一連一体とし、全体を吊り上げたときに下辺側を内周とし、上辺側を外周とする円弧状のアーチ橋に形成可能とした、アーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体である。
この手段では、ブロック群の両端のブロックを、迫石ブロックを分割したハーフサイズのブロックを用いて連接されたブロック群としている。迫石ブロックを逆台形の上辺から下辺に向けて縦に真半分に割ったような半身のブロックを用意し、通常の迫石ブロックを1から数個配列した両端に並べて1群のブロック群とし、隣のブロック群と、縦割りの面同士を向かい合わせて連接させることで、ブロック群を現場で一体化させるようにしている。そして、隣接ブロック群同士の連結では、向かい合う半身のブロック同士は、たとえば、ボルトと偏心座金を用いて左端ブロックと右端ブロックとを縦割り面を密着させて緊締するように固定させることで一体化させている。
偏心座金による固定は、ベースプレートの左右の穴から左端と右端の各ブロック内へとボルトをそれぞれ差し入れて締結する際、一方のボルトに偏心したボルト挿通孔の開口した偏心座金を取り付けておき、偏心座金を回転させてボルト軸間が狭まる近接方向に押し出させるようにすることで、コンクリートブロック同士を距離が拡がらないように密着させるものである。偏心座金の回転時に生じる押圧力に抗する当接部の突起をプレート端に設けて、回転する偏心座金を規制することで密着させている。
そして、迫石ブロックを縦に真半分に割ったような半身のブロックを用意し、通常の迫石ブロックを1から数個配列した両端に並べて1群のブロック群とし、隣のブロック群と、縦割りの面同士を向かい合わせて連接させることで、ブロック群を現場で一体化させるようにしている。向かい合う半身のブロック同士は、ボルトと偏心座金を用いて左端ブロックと右端ブロックとを縦割り面を密着させて緊締するように固定させることで一体化させている。
偏心座金による固定は、ベースプレートの左右の穴から左端と右端の各ブロック内へとボルトをそれぞれ差し入れて締結する際、一方のボルトに偏心したボルト挿通孔の開口した偏心座金を取り付けておき、偏心座金を回転させてボルト軸間が狭まる近接方向に押し出させるようにすることで、コンクリートブロック同士を距離が拡がらないように密着させるものである。偏心座金の回転時に生じる押圧力に抗する当接する対抗板の突起をプレートの片端に設けてあるので、回転する偏心座金を規制することでボルトが長孔内を移動しながらブロックを対向するブロック側に押圧して互いをしっかりと密着させている。
そして、ベースの金属製プレートはやや肉厚の鋼製とし、連接面に直交する方向のプレート外縁には、断面をコの字とするリブを立ち上げている。リブがあるので、荷重がかかってもプレートは容易に折れ曲がることがない。そこで、連接面に沿ってプレートが折れ曲がってしまうことがなく、安定的に連接ができるようになる。他方、単なる偏心座金に平板のプレートを用いた場合には、平置きした状態では緊締することはできるが、吊り上げた際に逆向きに開いてしまうと、プレートが屈曲してしまうこととなる。
もちろん、半分に縦割りされた縦割り面同士が向かい合って連結される場合には、迫石ブロック同士の連接とは異なり、平面上で連接しても下方に楔状の隙間は生じないので、吊り上げ時に上平面の角度に変化を予定していないので、迫石ブロック同士の連接と違ってプレートの変形を利用する必要もないはずである。しかし、下端に近い場面で連接するときには、円弧の傾斜がきつい位置なので、重心が連接部よりも円弧の中心側に位置することに無理が生じ、外方向に自重により回転しようとする力がかかる場合がある。すると、縦割り面が面接触してぴたっと連接された状態だったものでも、吊り上げた際に、重心移動によって逆方向に屈曲して外方向に開こうとするのである。その際、通常の平板なプレートだと、荷重に負けて屈曲してしまうこととなる。そこで、連接面が外方向に開いてしまわないように、プレート自体に補強をする必要が生じてくる。このように、プレート自体にリブを設ける補強することは、簡易でありながら、外方向への屈曲対策として着実な手法となっている。
なお、連接部材とは、たとえば空間の開いた平面シート状の部材でコンクリートとの密着性が良好で引張強度の高い部材であって、格子状の高強度のプラスチック樹脂、カーボン繊維やガラス繊維やポリエステル、アラミド繊維などの芯材で補強したプラスチック樹脂の格子材、ネット状やメッシュ状のステンレス鋼の線材、硬質ゴム製のメッシュ材などからなるものを挙げることができる。なかでも、連接部材の手段としては、土木工事に用いられているジオグリッドをコンクリートブロック同士を連接させる目的で本願に流用する用いることが簡易かつ好適な手法のひとつである。1枚のジオグリッドを一連の複数のコンクリートブロックにわたって埋設するようにして連接していくことで、通常のジオグリッドの使用目的である盛土の補強といった面での使用にはない機能を発揮しうるものとなる。そして、ジオグリッドとは、JIS L0221(ジオシンセティック用語)に規定されているように、引張抵抗性のある構成要素が連結した規則的な格子構造からなるシート状の高分子材料からなる部材である。たとえば高密度ポリエチレン樹脂からなるグリッド状の部材である。そして、その内部には、適宜アラミド樹脂の芯を配することでさらに補強したものを用いることが好ましい。具体的には、アラミド樹脂の芯材が配されたジオグリッドとしては、たとえば前田工繊製のアデムを挙げることができる。アデムHG−200は、品質管理強度の引張強さが200kN/mもあるので、コンクリートの打設時に迫石ブロックの上平面近傍に埋設しておくと、連接部材として吊り上げ時のブロックの荷重に耐えてアーチを形成をさせることができる。
次に、複数個の迫石ブロックは、アーチ橋の側面の円弧を細かく分節して平面に展開して並べたようにして、逆台形を平面上に多数並べたように多数並列で並べ置くことができ、迫石ブロックは隣接する迫石ブロックと連接部材のジオグリッドで連結されていることから、中央部分の迫石ブロックが高く位置するように1〜3本のワイヤーで吊り上げていくと、迫石ブロック同士が当接するように傾動して吊り上げるだけで自然とアーチの円弧を描いていくようになっている。なお、迫石ブロックは、中央のブロックを要石として安定させる場合には、奇数個であることが望ましい。たとえば、17〜25個程度のブロックとする。
なお、迫石ブロックの個数は、連接部材(たとえばジオグリッド)を隣接する迫石ブロックとの連接箇所である上平面部で切断することによって切り離すことができるので、連接するブロックの個数を調整することは可能である。ジオグリッドは前述のとおり全体としては縦横に格子状にめぐらされているが、全体として面で強度を発生するものであって、迫石ブロックと一体化するように、上平面の数センチといった深さのところに埋設するように敷設して打設されている。格子状の形状であるから、その空隙部分にコンクリートが流れ込んで固化することで上下一体のブロックとなり、内部に補強部材が配されたように機能することとなるのである。
また、ブロックの上辺の角部は連接箇所より上方が面取りされている。迫石ブロックの上平面の表層下には数センチの深さに連接部材となるジオグリッドが埋設されており、隣接ブロックとは、連接部位のジオグリッドが支点となって回動しうるものとなっているところ、楔状の開きが平面に平置きされた状態よりも大きく開口するような逆向きの回動をするときには、上平面の端部が隣接する迫石ブロックや、縦割りされた端ブロックの上辺角部と接してしまうことがあり、欠損しやすいものとなっている。そこで、予め上端をジオグリッドを配した連接部位より上方を面取りしておくことで逆台形の上辺の角を切り欠くものとしておけば、逆方向へ回動した場合でも欠損しにくい逃げを設けておくことができる。これにより、下端部のブロックが重心移動で逆向きに回動した場合でも、上平面端部を亀裂や欠け、剥離といったトラブルを避けることができる。これらの分割されたブロック群を複数群組み合わせて一連に形成させる場合においても、各ブロックの上方の角部を予め面取りしておくと、無用な欠損を避けることができる。
また、吊り上げ作業の途中では、連接する迫石ブロックが地面から持ち上がる際に逆方向に傾いてS字状に湾曲するように回動することがある。そこで、あらかじめ面取りしておけば欠損しにくくなるので、吊り上げ途中のブロック同士を拘束部材で固定しておかずとも、ブロック上端の欠損を気にせずに吊り上げ作業を進めることができるようになる。これにより、S字状になる挙動に対処する程度の回動であれば、各ブロック同士を拘束部材で拘束する手間を省くことができる。この手段を併用することにより、ターンバックル等の拘束部材を用いる場面を、下端のブロックの重心移動によって開いてしまう現象への対処に主として限定することが可能となることから、吊り上げ作業の工程が簡略化しやすくなる。なお、平面上に置かれたブロック、完成したアーチのいずれの状態でもせりあうことはないのであって、あくまで吊り上げ過程ではじめて顕在化する現象である。そして、これを解決する手段のひとつとして、面取りは重要な手段となっているので、ブロック群の製造でも、面取りを適切に付すことが重要であるから、後述のとおり型枠で実現するものとしている。
さて、これらのブロック群は、1個ずつ迫石ブロックや分割ブロックを型枠で成型して、これらを逆台形の向きになるようにして並べてから、連接部材のジオグリッド等を載せてモルタルで密着固定することもできるが、本発明の手段では、ブロック群を一体の型枠で一連の打設手順で製造するための型枠による製造方法である。
金属製の型枠は、まず、四方の外周を囲む4つの側壁パーツと、底面板とからなる直方径の型枠であって、底面板の上に、設けられた断面が二等辺三角形の仕切り壁が、対向する長手方向の側壁パーツ間に渡されており、仕切り壁は複数枚が短手方向の側壁パーツと平行に配されている。そして、複数枚の仕切り壁同士の離間距離が等間隔であり、両末端の側壁との距離がその半分である場合には、できあがるブロック群を連結していくと、円弧状のアーチを形成しうるものとなる。
さて、この型枠内に仕切り壁の頂部高さまでコンクリートを流し込んだ後、速やかに連接部材のジオグリッド等を一枚載せ置き、さらにそのうえに、仕切り壁に対向する位置に断面逆三角形の面取り板型枠部材を載せおいてから、ジオグリッドのなかにコンクリートがなじむようにしながら数センチ流し込み、ジオグリッドを埋設するようにする。
コンクリートは湿度や温度等をコントロールしながら数日から1週間ほど養生してコンクリートが十分に固化した後に、型枠を解体してブロック群を取り出して得る。ブロック群は、水平な状態で、数個を上下に重ねて積み置くように保管することができる。
ところで、複数のブロックを1つのブロック群として、複数のブロック群を組み合わせて一体とすることで全体をアーチ橋構造に用いる連接コンクリートブロック体にするときには、1つのブロック群は5個程度の迫石ブロックの上平面近傍の内面に連接部材としてたとえばジオグリッドを上平面と平行な水平長手方向に埋設して巡らせるようになる。あくまで、ジオグリッドは各ブロック群のなかのブロック同士を連接するに留まるので、アーチ橋全体でみれば、連接部材のジオグリッドは途切れ途切れとなっている。すると、ブロック群の両端のブロックには、下方の別なブロック群の荷重も含めてかかってくる一方で、端のブロックの連接箇所は、ジオグリッドとコンクリートとの密着性が弱かったりすると、端ブロックからジオグリッドが引っ張られて抜け落ちてしまうことも起こりかねない。ジオグリッドは連接面となる上平面近くのコンクリート内部、たとえば3cmの深さに埋められているので、連接面と平行に近い向きから引っ張られれば、ジオグリッドが抜け落ちやすくなる。そこで、より万全を期すために、両端の迫石ブロック又は縦割りされた両端の端ブロックのところに配される連接部材のジオグリッドの端部を、ジオグリッドの連接面である上平面近傍のブロック内部の埋設深さよりもさらに深い方向に曲げるようにすることで、より抜けにくくすることができる。
具体的には、ジオグリッドの端部を90度下方に折り曲げたり、さらにもう一度90度折って断面コの字状に折り返したり、ジオグリッドの端部を下方に丸く湾曲させたりする。このようにすることで、端ブロック内におけるジオグリッドの密着強度があがり、引っ張られてもジオグリッドが抜け落ちにくくなる。ブロック群の各コンクリート製ブロックを1つの型枠で打設するようにする場合には、下方にコンクリートを流していき、ジオグリッドの端部を端ブロックの下方に曲げるようにして配してから、さらに上方にコンクリートを数センチ打設することで、ブロックが連接したブロック群を得ることができる。なお、深く潜らせたジオグリッドの先に金属製のピンなどを配筋をしてさらに抜けにくくしてもよい。すなわち、連接部材を連接面に載置する際に、連接部材のジオグリッドの端部を少しコンクリートのなかに潜らせるなどするようにすることが好適である。
また、両末端のブロックは連接部材から抜けやすいので、これらの連接部材の端部などに、連接面に直交する向きで係止ピンを打ち込んでコンクリート内に埋設固定することで、連接部材がコンクリートから外れる抜けを防止することもできる。この係止ピンは、たとえばコの字型の金属製のピンなどであって、ジオグリッド等の格子の隙間に、連接面を貫くように打設中に打ち込み、そのまま埋設固定する。両末端のブロック以外のブロックにおいても、適宜、連接面に直交するようにして配することができ、連接面のコンクリートとの密着強度が補完され、ずれや抜けの発生が防止されることとなる。
次に、上記の課題を解決するための本発明の第2の手段は、仕切り壁を配した直方形の型枠は、その仕切り壁が断面二等辺三角形の底辺の長さの異なる複数の仕切り壁と交換可能な型枠とすることで、迫石ブロックの逆台形の形状を調整可能としたことを特徴とする、第1の手段に記載のアーチ構造用の連接コンクリートブロック体に用いるブロック群の製造方法である。
迫石ブロックは多数連接されるので、その逆台形の斜辺の角度や位置が僅かにずれるだけで大きくスパンやアーチライズに影響してくる。してみると、ブロックの製造時に、意図的に斜辺の角度を変更することで、スパンやアーチライズを変えていくことができる。そこで、この手段では、仕切り壁の断面二等辺三角形の底辺の長さを変えることで、斜辺の傾斜、すなわち逆台形の下辺のサイズを変えることができるので、上辺の長さは同じでも、スパンやアーチライズにバリエーションを簡単な方法で付加することができるようになる。連接コンクリートブロック体全体を1つの型枠で製造する場合と異なり、仕切り壁の交換だけで済むので、保管場所もとらずに効率的にバリエーションの製造が可能となる。なお、仕切り壁の下面を底面の型枠にボルトでねじ止めするなどして固定するものとして、仕切り壁を交換する方法と、仕切り壁のついた底面ごと交換する方法の2通りがある。
さらに、上記の課題を解決するための本発明の第3の手段は、仕切り壁を配した直方形の型枠は、その仕切り壁同士の離間距離を可変に移動可能とすることで、迫石ブロックの逆台形の上辺長さを調整可能としたことを特徴とする、第1または第2の手段に記載のアーチ構造用の連接コンクリートブロック体に用いるブロック群の製造方法である。
この手段では、仕切り壁の離間距離を、等間隔ではなく、ブロック毎に変化させることを可能とするものである。等間隔であれば、円弧のラインの上にブロックが並んでいくが、この手段では、たとえば、右から左に向かってブロック群内で各迫石ブロックの下辺や上辺の幅が徐々に広くなっていくように配するものとする。すると、右側を下方として、左側を中央側のアーチに用いるなどして、アーチの下端の傾斜を大きくすることができる。アーチにかかる横荷重の発生をコントロールするのに資するものとなる。
さらに、仕切り壁の配置に変化をつける手段と、仕切り壁毎に二等辺三角形の底辺の長さを変える手段を併用することもできる。すると、迫石ブロックの逆台形の下辺の長さがブロック毎に変わるなどするので、全体のブロック群の長さを変えずとも、連結したときには、アーチの円弧を真円ではなく楕円的なラインに調整することが可能となり、2心アーチ、3心アーチといったアーチラインを描くことも可能である。
さて、得られたコンクリートブロック連接体には、迫石ブロックもしくは端ブロックと、これに隣接する迫石ブロックとの両ブロック間に形成される楔状の隙間の開き具合を調整しうる拘束部材を配してもよい。
そして、連接されたコンクリートブロック体を中央が高くなるようにクレーンでアーチ状に吊り上げたとき、アーチライズが高い場合には、下端付近では円弧の湾曲が大きく描かれるので傾斜がきつくなる。すると、アーチを描くようにすると、連接部位に下垂される下端側の迫石ブロックの重心が連接部位の鉛直下に来るように回動すると、吊り下がった迫石ブロックが外向きに移動して、隣接のブロックとの間が楔型に大きく開いてしまうことがありえる。そこで、吊り上げていく際に、あらかじめ下端付近の迫石ブロックと、それに隣接する迫石ブロックとの間を拘束部材で平置き状態よりも開いていかないように拘束し、さらに拘束部材の開きを調整してアーチの円弧に沿うように楔状の隙間を狭めていき、最終的に隣接ブロックと当接するようにしてから、基礎ブロックの上に適切な所期のスパン位置で載せ置くものとするのである。
拘束部材は、迫石ブロックの下方と隣接する迫石ブロックの下方とを結び、ネジやバネを用いて張力を調整しうる器具とする。打設時に上平面の内部に配して密着固定されたジオグリッドによって連接されており、連接箇所を回動軸として下垂された側の迫石ブロックは回動するので、楔状に隙間が形成されるが、隙間を無くすことで所望のアーチ形状に導くことができる。すなわち、拘束部材を二つの隣接するブロック間に渡して初期状態よりも大きく開きすぎないようにして、さらにねじの具合を調整することで、吊り下げられた際に楔状の隙間を狭めていくことで、最終的に所望の適切なアーチ円弧の形成を導けるようになる。
拘束部材は、末端の迫石ブロックとそれに隣接する迫石ブロック間に設ける以外にも、隣接する迫石ブロック間を規制するために用いることができる。平置きの当初状態と、アーチを円弧に描いた完成状態のいずれも安定した状態であるが、吊り上げ途中では、平置きされた状態よりも楔状の開きが大きくなることがありえる。そして、迫石ブロックの上平面の表層部に埋設されるようにして巡らされているシート状の連接部材(たとえばジオグリッド)は、打設時に深さ3cm程度のコンクリートブロックに覆われているので、回動する支点となる連接部材は、上平面そのものよりもやや深く位置していることとなる。すると、打設された状態の平置き状態よりも楔状の開きが大きくなる向きに回動してしまうと、上平面側の端部が隣接する迫石ブロックとせってしまい、欠けたりひび割れたりすることとなる。
こうした欠損を避けるために、吊り上げ途中の姿勢変化に備えて、拘束部材を配することで欠けないように対処することができる。なお、中央部から順に吊り上げ出した状態のときは、中央側は円弧を描く方向に傾くが、吊り上げ始めの地面に近い箇所は、逆方向に曲がりやすい部位となり、上平面の端部がせって欠損を生じやすいこととなる。そして、端部の欠損に留まらず、上平面の表層近くに埋設された連接部材の周囲に密着させたコンクリートが連接部材のところで割れて剥がれてしまったりすると、連接強度が極端に落ちることとなってしまい、安全性にも大きく影響する。そこで、予めこうした迫石ブロックが逆方向に開きすぎないように規制することができる。
こうした重心によって吊り下げたときに開く現象は、分割したブロック群同士を連結する場合であっても、下方のブロックが吊り上げられたときに重心移動によって平面静置時の楔状の隙間が閉じずに開いてしまうこととなる。そこで、拘束部材として、ターンバックル等の拘束部材を二つの隣接するブロック間に渡して初期状態よりも大きく開きすぎないようにして、さらにねじの具合を調整することで、吊り下げられた際に楔状の隙間を狭めていくことで、最終的に所望の適切なアーチ円弧の形成を導けるようになる。このように、拘束部材としては、ターンバックルが好適である。
ターンバックルとは、JIS A5440(建築用ターンバックル)にも規定されているように、ターンバックル胴と胴体枠の両端に、一方は右ねじ、他方は左ねじのターンバックルボルトをねじ込んだものであり、ターンバックル胴の胴体枠を回転させて、ねじ棒相互の間隔を変えることで、両端の張りを調整可能となった拘束部材である。左右のターンバックルボルトのねじ棒に切られたねじの向きが逆方向であることによって、ターンバックル胴の胴体枠を回転させていくと、左右のターンバックルボルトの双方を一度に締め上げることができるので、隣接する迫石ブロックの楔状の離間距離を適切に素早く簡単な動作で縮めていくことができる。そこで、たとえば平置きの状態では最低限の張りをかけておき、吊り上げ時にこれ以上楔状の隙間が大きく拡がらないようにしておき、吊り上がった段階で、ターンバックル胴を回して徐々に締め上げていけば、最終的には楔状の隙間を無くすことで迫石ブロック同士を密着させることができ、所望のアーチ形状の円弧を描いた状態を描くことができるので、適切に基礎ブロック上に載せ置くことができる。
ターンバックルはアーチ状態で基礎ブロック上に載せ置いた後で、適宜取り外すことができる。基礎ブロック上でアーチ状に円弧に積みあがった迫石ブロック自体は、圧縮によってしっかりと押圧されているので、下端側のブロックを外部から誘導せずとも、隙間が開くことは一切考慮する必要がないからである。ターンバックル等の拘束部材が必要となるのは、吊り上げ途中の工程での吊り上げられた迫石ブロックの姿勢変化時に隙間が開く方向に傾動する場合に備えてのものである。製造当初の平置き状態や完成状態のアーチ状に円弧を描ききった時点はいずれも安定した状態なので、安定状態になった後は、ターンバックル等で拘束する必要はない。
他方、吊り上げ工程では、連接部材(たとえばジオグリッド)は上平面の表層下に埋設されているので、その分だけ回動支点は深くなっており、逆方向に開くと、上平面の端部同士の接触による欠損が懸念される。さらにジオグリッドが埋設されているので、その付近の密着強度によっては、ジオグリッドのあたりでコンクリートが剥がれたりひび割れることも考えられるなど、端部の物理的欠損にとどまらない影響もありえる。そこで、ターンバックルは、下端のブロックのみならず、隣接するブロック同士を規制するために広く用いることもできる。
そして、連接コンクリートブロック体は、吊り上げて形成される中央が高いアーチを用いてその上部に水平な通路となる上路を備えた上路式アーチ橋とすることができる。アーチ構造は上からの荷重を隣接するブロックに順次伝えていき、アーチの両端に達することで非常に堅固な円弧を形づくることができるので、連接コンクリートブロック体を円弧に形成してアーチの両端を支える部材である迫元の基礎ブロックに載せおいた状態で、迫元から上路までの高さまで打設されたコンクリートで一体化されたものであっても、アーチはその荷重に十分に対応しうる。そこで、これらの連接コンクリートブロック体を用いると、簡便に上路式アーチ橋とすることができる。
第1の手段によると、ブロック群が精度よく繰り返し製造することができるので、型枠をもっていれば、全国の各所で製造でき、ストックしておくことが可能となる。コンクリートブロックは重量物であるから、製造工場が現場から遠すぎることは望ましくなく、安定的な製造方法が確立されることで普及が容易となる。そして、この手法によると、連接部材が下方のコンクリートが固まる前に埋設されるので、十分に密着するものとなるので、ブロック群のブロックは十分に連接強度が得られるものとなり、抜けにくくなる。すると、スパンを大きくするなどの余地が十分に得られることとなり、大きな橋梁にも適用しうるものとなりやすくなる。
第2の手段によると、仕切り壁の断面二等辺三角形の底辺の長さを変えることで、斜辺の傾斜、すなわち逆台形の下辺のサイズを変えることができるので、上辺の長さは同じでも、スパンやアーチライズにバリエーションを簡単な方法で付加することができるようになる。連接コンクリートブロック体全体を1つの型枠で製造する場合と異なり、仕切り壁の交換だけで済むので、保管場所もとらずに効率的にブロック群のバリエーションの製造が可能となる。
第3の手段によると、1心の半円アーチではなく、2心アーチ、3心アーチや、楕円などの複雑なアーチ形状とすることが可能となる。そして、型枠の一部の仕切り壁の位置調整や交換であるから、保管場所をとらずに効率的にブロック群のバリエーションを得ることができる。
なお、ブロック群の連接コンクリートブロック体を用いることで以下のようなメリットがある。
4〜5個のブロックを1群のブロック群として連接し、これらの群同士を連結して一体化する場合には、工場での型枠による製作が1群ごとに製造しやすくなり、画一化しやすい。また、複数のブロック群を組み合わせるので、組み合わせパターンを変えることで、全体のアーチライズやスパンにバリエーションを得られることから、1群を一体で作るほうが全ブロックを一連一体で製造する場合よりも格段に型枠製造による汎用性が高められる。また、1群のサイズが小型軽量となるので、成型後の搬出、搬送が容易で作業負担も減るので、保管も含めて利用しやすいものとなる。
さらに迫石ブロックを縦割りして2等分した形状のブロックを両端に配したブロック群を1群のブロックとして連接している場合、ブロック群同士の連結は、平面上で、端ブロック同士を縦割り面を向かい合わせるようにしてなされる。密着させて連結できるので、連結箇所が一体的な状態で吊り上げられることとなり、連接部材だけで連結されたりする場合に比して、強く固定することができる。
さらにプレートを連結部分のブロック同士のうえに渡して、左右の穴にボルトを差し入れ、プレート上の当接する対抗板を備えた偏心座金によって、少なくとも一方のボルトが他方のボルト側に押しつけるようになって、対向するブロック同士の面をより密着させながら容易に十分な緊結力を得ることができる。
もっとも、単なる平板状のプレートだと、平置きした状態では緊締することはできるが、吊り上げた際に逆向きに開いてしまうと、プレートが屈曲してしまうことが生じてしまうので、開きにくくするために、プレート板の左右にリブを立設させることによって屈曲しにくくすることで、簡易な補強でありながら、外方向へは屈曲しにくくなっている。
さらに、ブロック群を連結する仕組みにすると、端のブロックの連接部材のジオグリッドが抜け落ちやすくなる。そこで、連接面の平面上のみに連接部材としてジオグリッドを配するのではなく、端をブロックの内部に向けて曲げたようにさせる。すると、連接面方向の引っ張りに抗して抜けにくくなり、端部のブロックが抜け落ちにくくなる。そこで、より吊り下げが安定するので、安全に吊り上げ作業ができ、吊り下げ可能なブロック数の余力が大きくなるので、大型のスパンを実現しやすくなる。
また、連接部材に直交する向きに係止ピンを打ち込むようにすると、連接部材が連接面を滑りにくくなるので、コンクリートの密着強度が補完され、連接部材がコンクリートからずれたり抜けたりしにくくなり、端のブロックが抜け落ちにくくなる。
隣接するブロック同士を拘束部材で繋ぐことにより、楔状の隙間が吊り上げ時に平置きされた状態よりも開いていかないようにすると、隣接するブロックの上端同士がせって亀裂、欠損を生じたり、連接部分などで剥離、さらには連接部材からのブロックの脱落といった事態が生じることを回避しうるものとなる。そして、隙間の開き具合を狭める方に調整して閉じてしまえば、隣接するブロック同士が密着できるので、吊り下がった状態でアーチ状の円弧を適切に描くことができるようになる。そこで、隣接するブロック同士を拘束部材を配することで繋ぐときには、下垂された状態では自然と開いてしまうブロック同士であっても、アーチ状の円弧を適切に描くことができるので、所望のとおりにアーチを形づくらせて設置作業を進めることが、容易かつ安全に遂行できることとなる。
さらに拘束部材がターンバックルであるときには、ターンバックル胴を回転することで左右のターンバックルボルトが一度に操作できるので、効率よく素早く簡単な手順でねじ棒相互の間隔、すなわち楔状の開き具合を調整することができ、安全に閉じてブロック同士を密着させることができる。そして、設置作業後はこれを取り外すことができるので、アーチ橋の機能や美観に支障を生じることもない。
また、各ブロックの上辺の角部は、すなわち、上平面近傍に埋設された連接部材のジオグリッドよりも上方の角部は、面取りされたことによって、隣接ブロックとの接触が回避しうるものとなるので、せりあって亀裂、欠損、剥離が生じにくく、ジオグリッドからブロックが抜け落ちるリスクも低減できる。連接したブロックを持ち上げていく途中で、地表に近いブロックが逆向きに(楔状の開きが拡がる向きに)湾曲して、中央からS字状のカーブを描くことから、埋設された位置より上方のブロックがせってぶつかるリスクを予め低減しておくことができるので、吊り上げ作業の際に、工程が簡略化でき、安全で扱いやすくなり、両端のブロックのように大きく逆向きに開くブロックを拘束する場合にターンバックルを用いる場面を除けば、面取りによって十分に安全に吊り上げ作業を進めることが可能となる。
本願の連接コンクリートブロック体をアーチ状にした状態でさらに上方に上路を設けたものとすることは、安全で短期に、簡便かつ簡易に上路式アーチ橋を得ることができるものとなる。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら、以下に説明する。本願の理解を促進するため、前提として、ブロック群に分割してこれを連結するものについて説明し、その後、ブロック群について説明することとする。
(一連一体の連接コンクリートブロック体について)
本発明の実施の形態の1つは、図1は、一連一体に接続されたアーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)である。(a)は平面上に静置した状態、(b)はこれを吊り上げた状態の図である。迫石ブロック(2)は、四角柱状のコンクリートブロックであり、左右対称な斜辺(8,8)と、下辺(7)、下辺(7)よりも長さの長い上辺(6)とからなる逆台形(5)を四角柱の底面とし、底面に直交する側稜(10)からなる四角柱を、逆台形が側面視できるように横倒しした状態で用いるものである。図13に四角柱状の迫石ブロックの概略をしめす。この迫石ブロックのサイズは、たとえば、上辺の幅は32.4cm、下辺の幅は30cm、高さは23cm、側稜(10)の長さが100cmである。上辺に対する下辺の長さは、適宜変更することができ、変えることで曲率が変わり、アーチライズやスパンを変えることができる。ただし、1mmの長さの違いで大きな曲率変化となるので、迫石ブロックの製造精度を厳密にすることが重要となる。
さて、図1では、この迫石ブロック(2)を23個、逆台形(5)の上辺(6)の延伸方向に、上平面(9)の近傍に埋設した連接部材のジオグリッド(15)によって一連に連接され、アーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)となっている。隣接するブロックとの間には、平面に展開された状態で並べられている図1(a)の状態では、下辺(7)の長さが短いことから、楔状の隙間(13)が形成されている。なお、連接部材の例として以下の実施例ではジオグリッドを用いて説明するが、これに限定されるものではない。ジオグリッドは、3cmの深さのところに埋設されている。そして、図1(b)に示すように、中央が高くなるように吊り上げるとき、吊り下がった自重でもって、自然と迫石ブロック同士が当接して、アーチ状に円弧(17)を形成することとなる。なお、迫石ブロック(2)は、最上部中央のブロックを要石のように機能させるとアーチが安定しやすいので、奇数個の迫石ブロック(2)を用いるほうが安定的に施工しるものとなる。
連接部材のジオグリッド(15)は、迫石ブロック(2)などのブロックを複数並べた状態でこれらを1枚のジオグリッド(15)を用いて上平面(9)から3cmの深さに埋設することで、コンクリートに密着するように打設してある。ジオグリッド(15)が長手に配されて埋設されることで形成した連接面(11)で一連に接合されており、隣接するブロック同士は、連接箇所(12)を連接軸としてそれぞれ回動しうるようになっている。
(ジオグリッドについて)
連接部材の一例であるジオグリッドは、引張抵抗性の高い高分子プラスチック樹脂などによる規則的な格子状の形状になっているものであり、コンクリートブロック内に埋設されることで、コンクリートと密着するようにして用いる。たとえば高密度ポリエチレン樹脂からなるグリッド状の部材であり、アデム(前田工繊製)のように、その内部に適宜アラミド繊維の芯材を配することでさらに補強したものが好適である。その格子形状は、たとえば縦約5cm(長手方向)×横約3cm(幅方向)程度の間隔とする。図7(a)に示すような格子状のネットであり、面状に拡げてコンクリート内に埋設して密着固定する。なお、ジオグリッドはアデム以外にもトリグリッド(高強度ポリエステル繊維を束ねたものを芯材とし、ポリプロピレン樹脂を被覆材として複合させ格子構造のもの)や、テンサー(三菱化学産資製)など、格子状のジオグリッドが適用できるが、多数のブロックを吊り上げて連接するには、なかでも特に引張強度の高いものが好適である。
さて、この連接部材のジオグリッド(15)は複数のブロックを貫く方向に走る縦方向のポリエチレン樹脂内にアラミド繊維の芯材を配するなどしているので、連接による荷重に対して高い引張抵抗性を示すことができる。加えて、ジオグリッドは縦線に直交する横線も相俟って格子状に形成されているので、縦横の格子の目を連接箇所(12)の間隔と適切に同期させるようにすれば、さらに連接箇所における強度を確保することができる。たとえば、図6に示すように、格子の目の間隔の整数倍をブロックの間隔とすることによって、連接箇所(12)を縦線のラインと横線のラインが直交する交点の位置と重なるようにする。すると、連接箇所(12)の軸線上に格子の横線のポリエチレン樹脂が位置することとなるので、連接部分の強度が向上する。連接箇所を軸にしてブロックが吊り下がる際に重心方向に回動することから、格子の目の間隔と連接箇所(12)の軸線を一致させるようにしておけば、ジオグリッドの強度が増して、伸びたり切断されてしまうトラブルを低減することができ、より大きな荷重に耐えうることとなる。すると、安定な連接が確保できる。縦線のみの部分よりも横線と重なっていることで吊り下げ耐荷重が増し、より多くのブロックを連接してスパンの長く、アーチライズの大きなアーチ橋を形成しうるものとなる。
(ブロック群を連結して一体化させる連接コンクリートブロック体について)
次に、本発明のその他の実施の形態として、図2に、ブロック群(4)を複数群連結させることで、アーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)とした例を示す。図1のアーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)との相違は、ブロック群に分割されているものを施工現場で連結する構造である点である。分割された点以外の部分に相違はなく、たとえば下端ブロック(18)と隣接するブロックにターンバックル(20)を渡したり、各ブロックの上端を面取りして面取部(14)を設ける点などは、図1に記載の場合と同様である。
さて、ブロック群(4)は、迫石ブロック(2)を4〜5個程度をジオグリッドを埋設させて連接したもののほか、分割ブロックと組み合わせたものであってもよい。明細書の実施の形態で図2以下で具体的に説明するものとしては、以下のように分割ブロック(3)を端に備えて連結に用いる構造のブロック群(4)を例にとって説明する。これは、図3に示すように、両端のブロックを迫石ブロック(2)を逆台形の中央を上下方向に縦に等分したような分割ブロック(3)を用いたものであって、分割面である縦割り面(30)を左に有する半身の分割ブロック(3)を左端ブロック(3b)と、縦割り面(30)を右に有する分割ブロック(3)を右端ブロック(3a)としたときに、左端ブロック(3b)、迫石ブロック(2)を1〜3個程度、右端ブロック(3a)の順に並べた状態でジオグリッド(15)を埋設させることで連接し、一体のブロック群(4)としているものである。なお、図8にブロック群(4)におけるジオグリッド(15)の埋設パターンをいくつか示す。
そして、ブロック群(4)の右端ブロック(3a)は、その縦割り面(30)に向かい合う位置に、隣接のブロック群(4)の左端ブロック(3b)の縦割り面(30)を沿わせるようにして、これをリブ(25,25)付き鋼製のプレート(24)と偏心座金(23)を用いて緊締して一体に連結している。連結された右端ブロック(3a)と左端ブロック(3b)とは、ぴったり向かい合って連結することで迫石ブロックと同形状になるので、アーチの円弧(17)を違和感なく描けるので、ブロック群(4,4)を適切に連結しうる構成となっている。
(偏心座金を用いた緊締器具について)
ブロック群(4)と隣接するブロック群(4)の締結に用いる偏心座金(23)による固定は、図4に示す器具を用いてコンクリートブロック同士を締め上げるものとなっている。具体的には、連結する右端ブロック(3a)と左端ブロック(3b)の上平面にそれぞれボルト孔を穿設しておき、そのボルト孔の上に、鋼製のプレート(24)の平板部分を載せ、プレート(4)に設けられたボルト通し用のプレート孔(28,28)の上にそれぞれ座金を載置し、ボルト(31)で上から締めつける。その際、プレート孔の一方を細長いプレート長孔(27)とする。そして、長孔側には円板の中心から偏心して孔が開口している偏心座金(23)が載置される。プレートの長孔側の端には、偏心座金(23)と接する外側の突起(29)があり、同様にプレートの中央寄りにも座金と当接する内側の突起が設けられている。
偏心座金(23)による固定は、ボルトを軽く締めつけた後に、偏心座金(23)を回転させてボルトの軸間が狭まるように、ボルト(31)を近接方向に押し出すことで、コンクリートブロック同士を密着させるものである。偏心座金(23)の回転時に生じる押圧力に抗する当接部の外側の突起(29)は、外に拡がろうとする引っ張り応力に抗するものであって、回転する偏心座金(23)を規制することでボルトを押圧し、コンクリートブロック同士を密着させるものである。なお、内側の突起は、逆に圧縮応力が過度にかかりすぎないように、備えるものである。
図5に示すように、1m幅の分割ブロック同士の固定には、偏心座金を用いたプレートを3枚用いて、3カ所で締めるなど、複数個使用すると安定的に固定ができる。さらに、分割ブロック(3)の縦割り面(30)の中央付近に、インサート(35)を入れる下孔(34)を穿っておき、縦割り面(30,30)を向かい合わせて分割ブロック(3,3)を連結する際に、内部にインサート(35)を入れて分割ブロック同士が位置ズレしにくいようにしておくと、より好適である。インサート(35)のジョイントピンは、たとえば、直径2cm長さ5cm程度の鋼製とし、縦割り面に穿設されたインサート孔(34)に差し入れる。また、吊り上げ中に位置ズレしにくいのみならず、向かい合わせるときの位置決めにもインサートは有用である。
(プレートのリブについて)
次にプレート(24)の左右に立設されたリブ(25,25)は、鋼製であり、平面に対して直角な面を形成しているので、平面が屈曲する際に折れ曲がらないように抗することができる。連結された右端ブロック(3a)と左端ブロック(3b)とは、縦割り面(30,30)を向かい合わせてぴったり結合されるのであって、一見すると、面接触している関係でズレるものではない。ところが、分割したブロック群を連結した試作試験をしてみたところ、吊り下がるブロック群(4)の荷重が連結部分にかかるので、たとえば下端ブロックが逆方向に回動したように、連結部分で同様に折れ曲がることが発生することが判明した。そこで、吊り上げによる荷重の移動により屈曲しないように、あらかじめリブ(25)を立設しておくと、折れ曲がらないので、縦割り面(30,30)のところで楔状に隙間が割れて開くとった事態も避けることができるようになる。
他方、ブロック群を全て迫石ブロック(2)で構成する場合には、両端の迫石ブロック同士の連結に際して偏心座金とプレートでボルト締めする場合には、用いるプレートにはリブを立設しないものとする。平面から持ち上がって吊り下がる際には、楔状の隙間(13)が消えてブロック同士が密接するようにして、円弧(17)を形成する必要があるからである。そして、迫石ブロック同士を連結する場合は、プレート自体が追従して折れ曲がることがかえって望ましいので、平板のプレートである必要がある。
(ブロック群における連接部材の埋設について)
一群のブロック群(4)は、5ブロック程度を連接した構成なので、連接部材の一例として一面の格子状のジオグリッド(15)を上平面近傍に埋設してコンクリートと密着するように打設しておけば、ブロック群(4)単体であれば、吊り上げ移動することに特段の困難は生じない。図7(a)にブロック群(4)に対応する連接部材のジオグリッド(15)を上平面側から図示する。図6に示すように、ブロック群の上平面から数センチに埋設されている。
ところが、ブロック群(4)同士を多数連結して一体化していくと、ブロック群(4)の両端のブロックには、そこから吊り下がる下方に連結されたブロック群の荷重もかかってくることとなる。すると、端から端まで一体の一連のジオグリッド(15)を用いる場合と異なり、円弧の途中で途切れ途切れになっている関係で、ブロック群(4)の端のブロックのコンクリート内からジオグリッド(15)が抜け落ちてしまうことも起こりうる。コンクリートと密着して成型されていたとしても、ジオグリッド(15)が連接面(11)の方向に引っ張られたとき、密着面積が狭いので、保持できるとは限らず、力負けして抜け落ちてしまうことが起こらないとも限らない。
そこで、より安全を期すために、ブロック群(4)に分割した成型品を複数群連結して一体化する場合には、特に両端のブロックから連接部材のジオグリッドが抜けてしまわないように、ジオグリッド(15)の端部の埋設の仕方に工夫をすることが好ましい。たとえば、通常のジオグリッドは、打設時に拡げて置く程度の使用であるから、図8(a)に示すように、平面的に上平面近傍に配置されているにすぎない。ここで、図8の(b)、(c)、(d)に示すように、ジオグリッドの両端の埋設の仕方を、平面的な載せおき方ではなく、末端を90度折り曲げてより上平面からみて深い位置まで達するようにしてみたり、コの字に曲げてみたり、端を少し丸めてゆるく深さ方向にカーブさせるように配するものとすると、両端のブロックのなかで、ジオグリッドが3次元的な位置取りとなるので、打設されたとき、ジオグリッドの格子は多方向に絡むように密着することとなるので、より抜け落ちにくくなる。具体的には、20cmほどの深さでブロック群の川卓にコンクリートを流し、間をあけずにジオグリッドを載せ置くものとし、その際、ジオグリッドの端部をコンクリートの内部に深く潜らせて、立体的な形状に埋設してから、さらに表層3cmまでコンクリートを打設して、コンクリートをジオグリッドの格子に行き渡らせるようにして密着させ、抜け落ちにくいブロック群を得ることとするとよい。
(連接部材に連接面に直交する係止ピンを打ち込んで埋設することについて)
ブロック群(4)の両端のブロックは、連接部材のジオグリッドが抜け落ち易い。そこで、連接部材の連接面上に、上からピンを打ち込んで係止するようにしてコンクリート内に埋設する。具体的には、型枠内に打設中、連接部材のジオグリッドを敷いた状態で、ステンレス鋼製のコの字型のピンを用いて、ジオグリッドを挟みこむように上からホッチキスの針のように連接面に直交するようにピンを打ち込み、さらにコンクリートで上から被覆して埋設するようにする。連接面に直行するピンであるから、連接面方向に滑ろうとする力に抗することができ、抜けが防止されることとなる。
ピンは、両端のブロックの連接部材の端部以外でも、適宜途中で用いることができるので、適宜連接面におけるコンクリートの密着性を補完することができる。
(連接コンクリートブロック体の製造について)
さて、20個以上の迫石ブロックを一連一体とした連接コンクリートブロック体を得るには、主として二通りの製造方法がある。
(1個ずつ基本部分のブロックを成型後に2段階目の打設で連接する手法)
まず、1個ずつ迫石ブロックの基本部分(32)となる逆台形の四角柱を型枠で成型することにより、高さ20センチメートル、上辺32.4cm,下辺30.0cmの逆台形の四角柱状の基本部分のコンクリート製ブロックを得る。そして、このブロックを多数、逆台形の上辺の延長線上に並置してから、その上に1枚のジオグリッドを載せ置き、モルタルを格子の隙間に馴染ませながら数センチの厚みで各ブロックの上に盛りつけることで2段階目の打設をし、ブロックの間隔でモルタルには切れ目を上から入れておき、硬化させることでに一体に連接されたブロック体を得る。
この手法は、型枠が一つずつ基本部分(32)のブロックを製造することができ、型枠を廉価にすることができるが、型枠の精度の要求度はむしろ逆に高くなる。同じ形状を20個以上も連接するので、基本部分(32)のサイズが想定どおりの形状でなければ、20数倍になってあらわれるからである。また、一旦打設してから、固まったブロックに、再度モルタルを上から盛るので、ジオグリッドを挟み込むモルタルとコンクリートとの密着強度を一様に高めるのは必ずしも容易とはならず、力のかかり具合によっては、モルタルが浮いて剥がれやすいこととなる。
(型枠で多数のブロックに打設していく手法について)
ひとつの型枠内で多数のブロックを打設する方法としては、底と四方を囲んだ長方形の枠体の内部に、短手方向に等間隔で断面楔形の仕切り壁を多数設け、コンクリートを流し込むことで、多数のブロックが並んだ状態を一度に形成するものであって、楔形の仕切りの頂点の深さまで流し込んだコンクリートが固まらないうちに、その上に1枚のジオグリッドを長手方向に行き渡るように載せ置き、さらにコンクリートを流してジオグリッドの格子にコンクリートをなじませて一体化するものである。楔形の頂点にジオグリッドが配され、それより上方のコンクリートは、固まらないうちにブロック毎となるように切れ目を入れて間仕切るか、あるいは、楔形の頂点に向かい合う位置まで上方から仕切り壁を差し入れてから、上平面表層のコンクリートを流し込むようにして、一体化された連接コンクリートブロック体を得る。
この手法によると、ジオグリッドとコンクリートとの密着性が良好になるので、吊り上げ時に抜け落ちたり剥離したりしにくくなる。もっとも、型枠が大型になること、型枠の製作精度が求められることなどから、型枠による製造難易度が若干あがることとなる。また、一連一体の型枠で一度に一体化するので、型抜きから搬出までも、大がかりな作業となる。また、アーチのスパンのサイズやアーチライズの高さが変わるたびに、四方を囲む型枠の大きさを変える必要がある。すると、アーチ橋のサイズにバリエーションをもたせるために、型枠をそれぞれに用意することは容易とはいいがたい。さらにプレキャストブロックは、工場で画一的に生産可能とするものであるが、重量があるので、全国各地に出荷することは経済的ではないので各地に拠点を設けることが多い。すると、それぞれの拠点に大型の型枠を多種用意することとなってしまう。
(ブロック群のサイズの型枠の製造方法について)
そこで、ブロック群を連結する方法を用いることができるならば、より実用性が高いものとなる。ブロック群の単位でブロックを連接するので、型枠はブロック群単位の大きさで足りることとなる。そして、アーチライズ、スパンの調整は連結数などで対応できるので、型枠を共通化でき、汎用性をもたせることができる。そして、図3のようなブロック群を大量に工場で製造しても、ブロック群単位の重量は800kg程度なので、小型重機による搬出、トラックによる搬送が可能となり、負荷が抑えられる。そして、ブロック群単位の製造は、たとえば、両端に迫石ブロックを縦割りしたような分割ブロックを配した場合には、次のような手順で作成する。
まず、図9(a)にブロック単位の下側の型枠(36)と、図9(b)に基本形の部分まで楔形の頂点の深さまでコンクリートを打設する様子を示す。まず、幅方向100cm×長さ方向約130cmの底面と高さ25cm程度の側壁で四方を囲い、長手側の対向する2側壁の間を断面楔形(2等辺三角形)の4本の仕切り壁を左から1:2:2:2:1の間隔となるように配することで間仕切る。楔状の仕切り壁(37)の高さは20cm底辺が2.4cmであるから、仕切り壁同士の間隔は、下端間が30cm、上端間は、32、4cmである。これらの型枠(36)は、鋼板製であり、各ブロック毎の寸法精度を1ミリ以下とする。寸法精度が狂うと、スパンが大きくずれてくるので、土台に据え置いてある基礎ブロック(39)の上に載せたときにズレが生じやすくなる。
そして、型枠に離型剤を吹きかけた後、図9の型枠(36)の仕切り壁(37)がちょうど埋まる楔形の頂角の高さまで、20cmの深さまでコンクリートを流し込み、次いでコンクリートが固まる前に速やかにジオグリッド(15)を高さ20cmの連接面(11)上に全面にわたって載せ起き、さらにジオグリッド(15)の上から面取部仕切枠(38)として、頂角に対向する位置に頂角が下向きの断面逆2等辺三角形の間仕切りを載せ置いて、さらにコンクリートを流し込むことで、ジオグリッド(15)の格子のなかにコンクリートを行き渡らせ、ジオグリッド(15)をコンクリートブロック内部にしっかりと密着させるように埋設固定する。打設後、コンクリート型枠は多湿に管理されたなかで数日から1週間ほど養生され、その後、型枠から外されて、図3のブロック群(4)を得る。
なお、ブロック群(4)の単位で型枠製造する際には、上述のとおり、図8の(b)から(d)に示すように、ジオグリッドを連接面である仕切り壁の頂点の位置(深さ3cm)に配置する際に、両端のブロックのなかにジオグリッド(15)の端部(16)をより深くもぐり込ませてから打設すると、ジオグリッド(15)が分割ブロック(3)が抜けにくくなる。ジオグリッドの端部(16)を90度下方に折り曲げたり、下方に曲げたものをさらに折り返してコの字にしたり、あるいは下方に曲げてゆるく湾曲させるなどして、ジオグリッドの端部(16)を連接面(11)よりも深く潜るようにする。さらにジオグリッドの曲げた先に鉄筋のピンなどを埋設してさらに引き抜きに強くしてもよい。打設時に空気を含まないように端部(16)を潜らせて、コンクリートと十分に密着させるものとする。
アーチライズ(43)やスパン(42)を変える場合には、連結する迫石ブロックやブロック群の数を変更することでも可能であるが、より柔軟に調整するには、この楔状の間仕切りの楔状の仕切り壁の下端間の長さを変えることで、隣接するブロックとの隣接面の斜面の傾斜を直接変更するように製造してもよい。両者を組み合わせることで、柔軟なサイズ調整が可能となる。楔状の仕切り壁(37)の断面二等辺三角形の頂角の角度を大きくし、底辺の長さを長くすると、斜辺の傾斜が大きくなるので、吊り上げたときのアーチの円弧の曲率を大きくすることができ、アーチライズが高くなる一方でアーチのスパンが狭められることとなる。そして、二等辺三角形の頂角(底辺の長さ)の異なる仕切り壁(37)の型枠パーツを複数タイプ揃えれば、アーチのスパンやアーチライズの異なるアーチ橋の設計、製造が柔軟にできることとなるうえに、1メートル×1.3メートル程度のサイズの型枠のパーツのバリエーションを設けたところで、それほど場所をとらず、コンパクトでありながら、柔軟なものとなりえる。たとえば、仕切り壁の底辺を20mm、22mm、24mm、26mm、28mm、30mmとする。仕切り壁の底辺が短いほうが吊り上げ時に形成される円弧のアーチは緩いものとなり、スパンは長く、アーチライズは高くなる。仕切り壁の底辺が長いと、円弧の曲率は大きくなり、アーチライズは高くなり、他方、スパンは短くなる。
具体的な例として、図11に迫石ブロックの下辺の長さを4mm変えた場合の円弧の様子を(a)(b)を重ねて示す。(a)(b)の迫石ブロックは、(a)が(b)より下辺の長さが4mm長いのみであり、逆台形の斜辺の傾斜が(a)のほうが緩い以外に大きな違いはない。まず、迫石ブロック(a)が、高さ23cm、上平面から3cmの深さがジオグリッドの連接面であり、連接部位の幅が32.4cm、下辺が30cmとした場合(すなわち、型枠の仕切り壁の底辺を24mmとした場合、)迫石ブロック(a)21個からなるアーチの両端ブロック間のスパン(42)は、4.67m、アーチライズ(43)は1.73mとなる。次に、迫石ブロック(b)の下辺を4mm縮めて29.6cmとした場合(すなわち、型枠の仕切り壁の底辺を28mmとした場合)、迫石ブロック(b)21個からなるアーチの両端ブロック間のスパン(42)は、4.22mであり、アーチライズ(43)は、1.90mとなる。アーチの高さが17cm高くなる一方で、45cmスパンが小さくなった。
次に迫石ブロックの連接数を23個とする場合については以下のとおりである。迫石ブロック(a)23個のスパン(42)は4.92m、アーチライズ(43)は2.02m、迫石ブロック(b)23個のスパン(42)は4.24m、アーチライズ(43)は2.19mである。(b)はアーチの高さが(a)より17cm高くなる一方、スパンは68cm小さくなった。
(a)と(b)ではアーチの曲率が異なるので、迫石ブロックの形状を変えると、アーチのバリエーションを簡単に増やすことができる。なお、迫石ブロックの数は、連接箇所(12)でジオグリッドを切断するなどして調整することができるので、ブロックの数の調整も比較的容易である。
なお、迫石ブロックの下辺の長さが4mm違うだけでこのようにアーチの円弧(17)が大きく変わるのであるから、迫石ブロックの寸法精度は、厳密さが求められる。ブロック群毎に型枠で製造する場合には、仕切り壁(37)の精度を0.1〜0.2mm程度にまで高めることができ、誤差も4箇所の仕切り壁によって平準化できるので、よりばらつきを目立たなくすることができる。
コンクリートの強度を十分に引き出すために、多湿に管理した状態で数日から1週間程度養生した後、上下、側壁の型枠を外して、図3に示すブロック群を取り出して得る。ブロック群の中央のブロックの上平面には、玉掛けをするための吊り下げ部位(33)として、中央のブロックの上平面に2カ所、玉掛け用のフックを設ける。具体的には、中央に先の丸い突起を残すようにして、その周囲は3cm程度の深さまでワイヤーが通るように溝を掘っておくなどする。玉掛けのための強度をもたせるために、必要であれば適宜配筋するなどして補強してもよい。
さて、仕切り壁(37)は型枠(36)の底面にボルトで取り外し交換自在に固定されている。仕切り壁の底辺の長さをたとえば1mm単位で異なる部材を多数用意しておき、これらを適宜取り替えることで、迫石ブロックのアーチライズやスパンを調整するものとする。あるいは、底面にあらかじめ仕切り壁(37)を固定した状態の底面を多数パターン化して用意しておくものとする。これにより、複雑なオーダーにも迅速に応えることができる。
(下端ブロックが楔状に開いてしまう点について)
さて、図1(b)は、中央が高くなるように吊り上げられたことで、アーチの円弧(17)を描いて吊り下がるアーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)の様子を図示している。ところが、吊り下げられた迫石ブロック(2)のうち、下端ブロック(18)は、重心(19)が連接箇所(12)の真下になるように自重で回動する結果、アーチの円弧(17)のラインに沿って並ぶことなく、楔状に開いた状態で吊り下がってしまっている。このように単に吊り下げたままだと、開いてしまった状態で吊り下がってしまうので、重要な下端ブロック(18)を基台となる基礎ブロックの上に適切な位置で載せおくことができなくなる。そこで、適切な位置に修正する必要が生ずることとなってしまうのである。
もちろん、ブロックの傾動角度が浅いうちは、重心移動によってアーチの円弧と沿う方向に回動するから、吊り下げるだけで隣接するブロックとの楔状の隙間が埋まるので、適切な円弧(17)に沿ってアーチが形成されていく。そこで、ある程度の小さなスパンのアーチや、アーチライズの低い橋であれば、差支えることなく、何らの対策をせずともアーチを描いて吊り下がることもありえるところであって、そのまま吊り下げて基礎ブロックに据えつけることができうるときもある。したがって、必ず下端ブロック(18)が開くという現象に遭遇するわけではない。しかしながら、アーチのスパンが大きかったり、アーチライズが高い場合には、下端近辺のブロックの上平面の傾斜が大きい場合には、連接箇所(12)を軸として連接箇所の真下に重心が向かうように回動することからすると、隣接ブロックと接するようにしてアーチの円弧(17)を適切に描くラインに位置取りに動かすと、かえって重心(19)が連接部位よりも円弧の中心寄り位置してしまうことから、吊り下げ荷重によって回動して円弧の位置から離脱するようにして隙間が楔状に開いてしまうことが判明した。
迫石ブロック(2)の連接個数が多いと、吊り下がる荷重がジオグリッド(15)の連接箇所(12)に大きな負荷となるので、そもそも多数の連接は容易ではないが、加えて、スパンが長くなり、アーチライズが高くなると、上平面(9)の傾きが強くなるので、重心(19)によってブロックの回動する向きが、想定外の逆方向になり、楔状に開くこととなりやすいこととなる。そこで、スパンを長くするには、次のような工夫が改めて必要となるのである。
(拘束部材について)
まず、下端ブロック(18)をはじめとして、左右両端に近い部分のブロックとそれに隣接するブロックとの間に、ターンバックル(20)などの拘束部材を設置する。拘束部材は、ターンバックルに限らず、ワイヤーやゴム紐や、さらにバックルによる長さ調整などが適用しうる。ターンバックルは、以下のとおり、安全かつ確実に適用しうる。さて、ターンバックル(20)は、中央にターンバックル胴(21)、その左右にねじの向きが逆向きのターンバックルボルト(22,22)を配した器具で、これをブロックの下方または側方下部と繋いで、ターンバックル胴(21)を回転させることで、楔状の隙間(13)の開き具合を調整しうるものとする。ところで、平面に迫石ブロック(2)を連接して並置した状態では、上辺が324mmで下辺が300mm、ジオグリッド(15)の埋設された連接面(11)は230mmのブロックの厚みに対して上平面(9)から30mmの深さである。そこで、隣接する迫石ブロック(2)同士の間に形成される楔状の隙間(13)は、平面に置かれた状態では、幅24mm、高さ20mmの2等辺三角形であり、楔の開く角度は約17度である。
ターンバックル(20)により、この楔状の隙間(13)が拡がらないように隣接ブロック同士の開き加減を拘束し、ターンバックル胴(21)を回転させて開きを段々狭くしていくことで、徐々に両ブロックの開きを解消させ、アーチの円弧(17)の位置に下方のブロックの位置に導くようにして、最終的に下端ブロック(18)を支える基礎ブロック(39)の上に円弧(17)を描いたアーチ橋構造用の連接コンクリートブロック体(1)全体を載置する。
拘束部材は、ゴムのような伸縮性の部材を用いてもよいが、離間した状態で張力をかけてゴムを巡らすのは力がいるほか、平面上で張力が発生すると、ブロック同士が縮まろうと傾いて欠損する可能性もある。そこで、ターンバックル(20)のほうが収縮といった挙動がないので扱いが容易といえる。
(面取りについて)
次に、四角柱の迫石ブロックの逆台形(5)の上隅は、上平面(9)から3cmの深さに形成された連接部材による連接面(11)から上の部分が面取りされており、面取部(14)を形成している。面取部(14)の切欠きは、この実施例では、深さ3cm、幅1cmのサイズである。角度にして20度弱である。面取部(14)は直線的に図示されているが、断面が円弧状に角丸めしてあるものであってもよい。
先述のとおり、下端ブロック(18)が重心による移動によってアーチの円弧(17)とは逆向きに開くように回動するとなると、場合によっては平面に置かれていた状態よりも、大きく逆側に開くことも起こり得る。すると、上平面がもともと3cmの深さに連接箇所(12)がある関係で、連接箇所(12)より上の角は隣接ブロックのそれと接触しやすいものとなる。また、ブロックがつり上がる途中では、地表近くのブロックは、アーチの円弧(17)の湾曲とは逆向きに湾曲してS字を描くことがある。すると、この部分も逆方向に曲がって開くので、平面上においてあったときよりも楔状の隙間の開きは大きくなり、上方の端部がせってしまうこととなる。これらは、上平面の端部をはじめとして、欠損、剥離、亀裂を招来することとなるおそれがある。
しかし、面取部(14)をあらかじめ設けておくと、上記サイズであれば、面取りにより19度程度の傾斜を付すこととなる。左右合計で38度分、逆方向に開いても面取り部が接触しない余裕が生じることとなる。そこで、隣接ブロック同士の上端が接触しにくくなるので、欠落や剥離が生じにくい。吊り上げる際にS字になる際に、楔状の開きが大きく逆向きとなる場合についても、面取りは十分なマージンとなる。
(アーチ橋の設置について)
図12に本発明のブロックを設置して円弧に形づくった連接コンクリートブロック体(1)の上方に水平な上路を形成したアーチ橋を構築する設置手順のひとつを図示して示す。アーチ橋のコンクリートブロックは迫石同士が密着すると摩擦で動くことがないので、そのまま両端に圧縮応力が伝わる。すると、外方向に向かって斜め下方向に拡がろうとする横圧力(スラスト)が発生するので、基礎ブロックなどでこれに抗することが重要となっている。基礎ブロックなどの土台の上に本発明の連接コンクリートブロック体をアーチ状に吊り上げて置き、これらの上方を重量物のコンクリート等で埋めて水平な上路(44)を形作って上路式のアーチ橋として使用しうるものとなる。そして、本発明を用いた上路式アーチ橋の設置手順は一例と示すと次のとおりである。
・工程(a)は、型枠で成型して得たプレキャストコンクリート製(4)のブロック群あるいは一連の連接コンクリートブロック体(1)を、現場に搬送して、現地で一連一体とする連接コンクリートブロック体(1)とする工程である。
・工程(b)は、アーチ状に吊り上げたブロックの圧縮荷重を受け止める基礎ブロック(39)である。同様に型枠でプレキャストコンクリートとして製造しておき、同じく現場に運ぶ工程である。基礎ブロック(39)は、長さ4mなど、複数の連接コンクリートブロック体(1)を並列させて幅広の橋を形成しうるサイズであってもよい。
・工程(c)は、まず、所定のスパンで、水平に基礎ブロックを設置する。基礎ブロックの下は、水平に土台を形成して適宜砂利や砕石を敷き、モルタルを敷いてそのうえに基礎ブロック(39)を載置する。
・工程(d) 連接コンクリートブロック体(1)を3カ所玉掛けして、中央のワイヤーを短めのものとして、クレーンで徐々に吊り上げる。
・工程(e) 吊り上げてアーチ状に形成した連接コンクリートブロック体(1)ものを基礎ブロック(39)の上に置く。円弧(17)を下端ブロック(18)が描かない場合は、適宜ターンバックル(20)を用いて拘束していき、隣接ブロックに密着させるようにしてから、基礎ブロック(39)に載せ置く。
・工程(f) アーチ状に載せ置いた連接コンクリートブロック体(1)のとなりに、さらに連接コンクリートブロック体(1)を横付けする。
・工程(g) 複数列のアーチ状の連接コンクリートブロック体(1)を基礎ブロック(39)に載置して、互いを偏心座金等で緊締固定する。
・工程(h) アーチのブロックの周囲にコンクリートを打設するための型枠を設置する。
・工程(i) バックフィル(40)となるコンクリートを型枠に流し、基礎ブロックおよびアーチの下方を固定する。
・工程(j) 型枠とコンクリート打設を繰り返して徐々にバックフィル(40)の高さを高くする。
・工程(k) アーチの連接コンクリートブロック体を水平走行可能な高さまでコンクリートを打設して水平な上路(44)を形作り、上路式アーチ橋とする。
複数列のアーチを横付けして橋の幅を拡げる際には、適宜偏心座金を用いた締結具などで連結しながら作業を進めてもよい。また、工程(j)〜(k)については、その他にも、橋の外装を化粧できる外壁パネルブロック(41)のプレキャストコンクリートブロックでアーチの円弧および上方の水平な通路の高さまでをカバーするサイズのパネルとし、橋幅方向に対面のパネルと連結固定したうえで、内部をコンクリートで打設していくといった方法で上路(44)を備えた上路式アーチ橋を形成することも可能である。化粧パネルを用いれば、全体が石造アーチ橋さながらの石積模様を外表面に再現するなどすることが容易で、より風合い豊かなものとすることができる。
なお、周辺のバックフィルの打設も含めたアーチ橋の強度については、有限要素法を用いたFEM解析などによってコンピュータでシミュレーションすることができるので、本発明の手段によっても安全性を十分に確保できることが確認されている。アーチの円弧、バックフィル、基礎ブロックのいずれも、通常使用時に発生する荷重に耐えうること、地震等での剪断応力にも耐えることなどを予め確保できるので、安全面に配慮したうえで使用することができる。