車両用懸架装置等を構成するショックアブソーバが知られている。ショックアブソーバは、ばね質量系の周期振動を収束すべく、変位時速度の抵抗により運動エネルギーを熱に変換して減衰させ、ばね質量系の周期振動を収束させる衝撃緩衝装置である。車両用ショクアブソーバとして、単筒式及び複筒式の各形式のショックアブソーバが知られている。例えば、特許文献1(特開2001-295877号公報)及び特許文献2(特許第5388319号公報)には、単筒式ショックアブソーバが記載されており、特許文献3(特許第4143782号公報)及び特許文献4(特開2000-190721号公報)には、複筒式ショックアブソーバが記載されている。
一般に、複筒式ショックアブソーバは、内筒及び外筒からなる二重構造のシリンダを有し、内筒及び外筒の間には、気室が画成される。油室を分割するピストンには、伸び側の減衰力発生機構が配設され、内筒の下端部には、縮み側減衰力発生機構が配設される。
この種の複筒式ショックアブソーバは、気体と油とを分離する分離機構を備えず、気体と油とが直に接触する構造を有する。気室の気体圧力は、比較的低圧に設定されており、多くの複筒式ショックアブソーバにおいては、気室の気体圧力は、大気圧に設定されている。このため、複筒式ショックアブソーバにおいては、ショックアブソーバの作動時に気室圧力が過渡的に低下して気泡が油に混入し、減衰力低下や異音発生等の問題が生じ易く、大きな減衰力を確保し難いといった問題も生じる。また、複筒式ショックアブソーバにおいては、低速時の減衰力発生の応答性が比較的悪く、直進時に急激なハンドル操作を行った場合に操縦安定性レベルが低下するという課題も知られている。このような事情より、高度な操縦安定性を求められる車両や、高級車両等のショックアブソーバとしては、高圧ガスを気室内に密封した単筒式ショックアブソーバが用いられる傾向がある。
特許文献1及び2に記載される如く、単筒式ショックアブソーバは、ピストンロッド及び減衰力発生機構を備えたピストンをシリンダ内に配置し、シリンダ内の領域をピストンによってロッド側油室及びピストン側油室に分割するとともに、シリンダ端部にフリーピストンを配置し、気室をフリーピストンによってピストン側油室から区画した構造を有する。縮み側減衰力発生時に低圧となるロッド側油室の圧力を大気圧以上に保つことにより気泡の発生を防止し、正常な縮み側減衰力を確保するため、一般に、気室内には、1.0Mpa以上の高圧ガスが密封される。ピストンは、シリンダ内に伸び側及び縮み側の双方において機能し、気室内に密封された気体は、シリンダ内の油の体積変化を気体の体積変化によって吸収するとともに、使用環境や、ピストンロッドの伸縮速度等に起因して油室内の圧力が減圧するのを防止して、所望の減衰力を確保するように機能する。単筒式ショックアブソーバの一種として、気室を別体タンクに配し、ピストン側油室と別体タンク油室を連通し、いずれか一方の油室内に縮み側の減衰力発生機構を配設し、引張り側減衰力発生機構のみをピストンに配設した構成のものが知られている(特許文献1)。このように縮み側減衰力発生機構をピストン部から離間させて、気室とピストンとの間の油室内に設けることにより、縮み側減衰力発生時のロッド側油室の圧力低下を低減し、ピストン部に縮み側減衰力発生機構を備えた構成のものに比べて、気室の封入圧力を低減し得るかもしれない。
しかしながら、このような単筒式ショックアブソーバにおいては、シリンダ内周面に摺接するフリーピストンの摺動部に摺動抵抗が発生するので、摺動抵抗に伴う圧力損失を考慮して気室圧力を高く設定する必要があり、しかも、気室内に密封された気体が経年使用に伴って摺動部から油室にリークし、気室の封入ガス圧が徐々に低下する現象が生じ得るので、気体のリーク量を考慮し、正常な減衰力を維持するのに要する気体圧力以上の気体圧力の気体を予め気室に封入しなければならない。
また、ショックアブソーバの温度変化に関連した封入気体の体積変化及び圧力変化は、ボイルシャルルの法則によって求められるが、車両用懸架装置の使用環境の温度変化は、比較的大きな温度範囲(±50℃程度)に一般に設定され、しかも、振動エネルギーを熱エネルギーに変換するショックアブソーバの作用に起因した発熱が気室内の気体に作用するので、シリンダ内の気体と油は、更に大きく温度変化する。温度変化は油体積変化による気体室容積を変化させると共に気体圧力を変化させる。このため、温度上昇による気室圧力の変化を緩和すべく、気室の容積を予め増大しておく必要がある。更には、ショックアブソーバの伸縮変位に伴う封入気体の圧力変化は、ポアソンの法則から求めることができるが、通常作動状態の圧力変動範囲内で気室圧力の変化を抑制し、安定した減衰力を確保するには、気室容積をピストンロッドの断面積に対して大きく設定する必要があるばかりでなく、安定した減衰力を確保するため気体の封入圧力を高く設定する必要が生じる。
このような事情より、単筒式ショックアブソーバの気室内には、1.0Mpa以上で圧力的に十分な余裕を持った高圧ガスが充填される。なお、フリーピストンの摺動抵抗及び気体リークの問題の解決策として、気体と油との分離機構として金属ベローズを併用し、摺動抵抗及び気体リークの問題を解消することも考慮し得るが、U字形金属ベローズ等は、デッドスペースとなる密着高さが大きく、しかも、有効な受圧面積が小さく、金属ベローズをシリンダ内に組付けるために比較的大きな組付けスペースが必要となり、加えて、ショックアブソーバにおいては、気体及び油の温度変化が比較的大きく、温度変化に伴う気体の圧力変化及び容積変化や、油の体積変化等を考慮すると、U字形金属ベローズは、大きな占有面積を要するので、U字形金属ベローズを用いた気体及び油の分離機構は、採用し難いと考えられる。これは、他の構造の金属ベローズを使用する場合においても同様であり、温度変化に伴う気体の圧力変化及び容積変化等を考慮すると、金属ベローズを用いた気体及び油の分離機構は、採用し難い事情がある。この対策として、特許文献1に示すようにフリーピストンに金属ベローズを気密に組み付ける案が提案されているが、フリーピストンからの気体のリークはあり、この方法も採用し難い事情がある。
他方、車両用懸架装置を構成する空気ばね等の気体ばねが知られている。気体ばねは、昇圧した気体の弾力性を利用し、気体の圧力と体積を変化させて多機能を発揮するばね装置であり、車両用懸架装置を構成する多くの気体ばねは、ばね気室の気体圧力を可変制御する車両の流体圧力制御回路に接続され、車高調整機能や、姿勢制御機能を発揮するように構成される。
空気ばね及びショックアブソーバは、独立して車体に配設され、或いは、空気ばね及びショックアブソーバを構造的に一体化した状態で車体に配設される。例えば、前述の特許文献3及び特許文献4や、特許文献5(特開2007-177846号公報)等には、ショックアブソーバの上部外周域に配置されたゴムブラダ内に昇圧空気を封入し、ゴムブラダによって形成された空気ばねをショックアブソーバと一体化した構成を有する車両用懸架装置が記載されている。
また、前述の特許文献2や、非特許文献1(平成25年春季フルードパワーシステム講演会、講演論文集、第115〜117頁の「耐圧ベローズ空気ばねによる車両の姿勢制御」)には、ショックアブソーバのシリンダ外周域に配置された耐圧金属ベローズ内に昇圧空気を封入して空気ばねを形成した単筒式ショックアブソーバを備えた気体ばね装置が記載されている。なお、特許文献2及び非特許文献1に記載された耐圧金属ベローズは、粘弾性リングを金属ベローズのR部に挿入し、耐圧性を向上した構造のものである。
ここに、車両の車高は、車両の積載重量等に相応して変化するが、車両懸架装置を構成する車高調整用の空気ばねは、一般に、車両の車高検知手段及び空圧回路を用いた空気圧の給排制御の下で一定の車高を保持する。このような車高調整機能によれば、空気ばねのばね定数と積載重量との比を一定に保持し、積載重量の変化に起因したばね上振動の固有振動数の変化を抑制し、所望の操縦安定性、乗り心地等を得ることができる。周知の如く、ばね上固有振動数、ばね定数及びばね上質量の関係は、下式で表わされる。
ここに、k:空気ばねのばね定数、m:ばね上質量である。
また、空気ばねのばね定数は、下式で表される。
ここに、n:ポリトロープ指数(断熱変化n=1.4)、g:重力加速度、A:受圧面積、V:気室体積である。
ばね上の固有振動数は、上式(2)を上式(1)に代入することにより、次式で表すことができる。
即ち、前述の車高調整機能により車高を一定に制御することにより、A=一定、V=一定の条件が得られるので、ばね上固有振動数は、車両の積載重量の変化にかかわらず、一定である。
他方、振動の減衰特性を表わす減衰比は、下式で表わされる。
ここに、c:減衰係数である。
減衰比は、上式(2)を上式(4)に代入することにより、下式のとおり表すことができる。
従って、ばね上質量mの変化にかかわらず減衰比ζを一定の値に維持するには、空気ばねの車高調整機能のみならず、ばね上質量mに比例して減衰係数cを制御するショックアブソーバの機能を要する。即ち、空気ばねの車高調整機能のみに依存した場合、減衰力を可変制御することができないので、積載重量が減少した運転状態においては、過大な減衰比(振動減衰性)に起因した所謂「ごつごつ感」が発生して乗り心地が悪化し、積載重量が増大した運転状態においては、過小な減衰比(振動減衰性)に起因した所謂「ふわふわ感」が発生して操縦安定性が悪化する。これは、車両旋回時に外輪側車体の沈み込みを抑えられない状態や、内輪が地面から浮き上がるのを十分に抑制し得ずに操縦安定性を悪化させるといった問題をも生じさせる。
上記特許文献3には、このような問題の改善策として、シリンダの外部に減衰力制御機構を配設し、空気ばねの空気を減衰力制御機構に伝達し、積載重量の変化に感応して減衰力を制御するように構成された複筒式ショックアブソーバが記載されている。同様に、上記特許文献4には、ピストンロッドの軸芯部に形成した軸方向流路によって空気ばねの空気圧を減衰力制御機構に伝達し、積載重量の変化に感応して減衰力の制御を行うように構成された複筒式ショックアブソーバが記載されている。即ち、特許文献3及び4に記載された複筒式ショックアブソーバは、積載重量の変化に応答して変化する空気ばねの空気圧をパイロット圧力として減衰力制御機構に導き、積載重量の減少時には、減衰力制御機構の制御下に減衰力を低減し、積載重量の増大時には、減衰力制御機構の制御下に減衰力を増大するように構成され、これにより、減衰比を安定させ、操縦安定性や、乗り心地を向上させようとするものである。
しかしながら、仮に特許文献3及び4に記載された減衰力制御機構の構成を単筒式ショックアブソーバに適用し得たとしても、これは、減衰力制御機構の駆動部を作動させるパイロット圧として空気ばねの空気圧を用いた構成のものであるにすぎず、減衰力制御の応答性を所望の如く確保し難い。しかも、このような構成を採用するには、パイロット圧を減衰力制御機構の駆動部に導くための空気配管又は空気流路や、各種継手等をシリンダ外に配管し、或いは、比較的複雑な流路をピストンロッド内に形成しなければならず、この結果、装置構造が複雑化し、組付け工数及び製造コストが増大又は高額化するという問題が生じる。
また、従来の単筒式ショックアブソーバにおいては、所定圧力に設定された高圧窒素ガス等の高圧ガスを気室内に予め密封する構成が長年に亘って採用されてきた事情があることから、空気ばねの空気圧を気室のガス圧と関連させる制御形態又は制御方法は、過去に検討されていない。
更に、単筒式ショックアブソーバにおいては、安定した減衰力の確保、フリーピストンの摺動抵抗、フリーピストンの摺動部からの気体のリーク等を考慮し、ピストンロッドの断面積に対して気室容積を大きく設定してショックアブソーバを全体的に大型化するばかりでなく、1.0Mpa以上の高圧ガスを予め気室に密封しなければならない。1.0Mpa以上の高圧ガスを用いたショックアブソーバの製作には、高圧ガス封入のための高圧ガス封入設備等が必要となるばかりでなく、高圧ガス関連法規を遵守した部品、封入機構、専用工具等が必要とされる。しかも、高圧ガス封入後のショックアブソーバは、気室のガス圧によってロッドを伸長させた状態を維持するので、収納、保管、輸送、組立て作業、組付け作業等のために比較的大きな占有空間又は作業空間を要する。即ち、気室容積が大きく、しかも、1.0Mpa以上の高圧ガスを気室内に予め密封しなければならない従来のショックアブソーバの構成は、単筒式ショックアブソーバを備えた気体ばね装置を大型化するばかりでなく、その製作、収納、保管、輸送、組立て作業、組付け作業等を困難にするので、このような大型化又は困難性の問題を比較的容易に解消する対策又は改良が望まれる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単筒式ショックアブソーバを備えた気体ばね装置及びその減衰力制御方法において、ショックアブソーバの気室圧力及び気室容積を低減又は縮小して装置全体又はその構成要素を小形化するとともに、装置全体又はその構成要素の取扱を簡便化又は簡素化し、しかも、気体ばねの圧力変化と関連して減衰力を変化させることにより、積載重量の変化にかかわらず、振動特性変化を適切に制御することができる気体ばね装置及びその減衰力制御方法を提供することにある。
上記目的を達成すべく、本発明は、油室を形成するシリンダ装置と、前記油室内に移動可能に配置されたピストンと、流体圧力を伝達する流体分離手段によって前記油室内の油から分離するとともに、該油室の油圧が作用するショックアブソーバ気室とを有し、前記ピストンの移動時に生じる油の粘性抵抗又は流動抵抗により減衰力を発生させる単筒式ショックアブソーバ装置を備えた気体ばね装置であって、
前記ショックアブソーバ装置の衝撃緩衝作用と協働するように気体ばねを前記シリンダ装置に組付け又は連結した構成を有する気体ばね装置において、
前記気体ばねのばね気室と、前記ショックアブソーバ気室とを流体連通させ、前記ばね気室の気体圧力と前記ショックアブソーバ気室の気体圧力とを均衡させる気室間流路を有することを特徴とする気体ばね装置を提供する。
本発明の気体ばね装置は更に、少なくとも、以下の(1)〜(8)のいずれかの構成を有する。
(1)前記シリンダ装置内の油の流動抵抗を制御する減衰力制御弁と、前記油室内に配置され,前記減衰力制御弁の流路抵抗を可変制御する減衰力制御装置とを更に有し、
該減衰力制御装置は、所定圧力のガス又は気体を密封した制御気室と、前記油室と連通し、前記ショックアブソーバ気室の圧力が前記油室の油圧を介して伝播する制御油室と、前記制御気室の圧力と前記制御油室の圧力との圧力差の下で前記減衰力制御弁の弁体を付勢又は押圧する付勢手段又は押圧手段とを有し、該付勢手段又は押圧手段は、前記制御油室の圧力変化に応答して前記弁体を変位させ、前記流動抵抗を可変制御する。
(2)前記気室間流路は、気室間の圧力伝播を緩衝するように流路断面を拡大した圧力変動緩衝用の流路部分を有する。
(3)前記ばね気室又は前記ショックアブソーバ気室は、該気室の気体圧力を可変制御する流体圧力制御回路に連結され、前記流体圧力制御回路は、前記気室の気体圧力を可変制御する。
(4)前記ショックアブソーバ気室及び前記ばね気室は、前記ショックアブソーバ気室及び前記ばね気室の気体圧力を可変制御する流体圧力制御回路に連結されており、前記ショックアブソーバ気室へ繋がる流路の流路抵抗が、前記ばね気室へ繋がる流路の流路抵抗よりも低減される。
(5)前記流体分離手段は、前記油室及びショックアブソーバ気室を気密且つ液密に分離するとともに、前記油室及びショックアブソーバ気室の圧力変化に応答して変形する分離膜からなる。
(6)前記ショックアブソーバ気室と、前記油室の一部とが、前記シリンダ装置と別体の容器内に形成され、前記シリンダ装置内の油室と、前記容器内の油室とを相互連通する管路が前記シリンダ装置と前記容器との間に配設される。
(7)前記ばね気室の気体圧力が1.0Mpa未満の圧力に設定される。
(8)前記ばね気室と大気との分離膜として耐圧金属ベローズが使用されており、樹脂リングが、前記シリンダ装置の外側面と耐圧金属ベローズ谷部のばね気室側内面との間、及び/又は、前記ショックアブソーバ装置のピストンロッドの側に位置する耐圧金属ベローズ山部外面とその外側に位置するガイドカバー内面との間に介装される。
本発明は又、上記構成を有する気体ばね装置において、前記ショックアブソーバ気室の気体圧力を1.0Mpa未満の圧力に設定したことを特徴とする気体ばね装置を提供する。
他の観点より、本発明は、上記構成を有する気体ばね装置の減衰力を制御する減衰力制御方法において、
前記ばね気室の気体圧力を1.0Mpa未満の圧力に設定するとともに、前記ばね気室の空気圧の変化によって前記ショックアブソーバ気室の気体圧力を変化させることにより、前記ショックアブソーバ装置の減衰力を変化させることを特徴とする減衰力制御方法を提供する。
本発明の上記構成によれば、ショックアブソーバ気室とばね気室とが気室間流路によって相互連通するので、ショックアブソーバ気室内の気体は、ばね気室内の気体と連続し、ショックアブソーバ気室の気体容積が実質的に増大する。このため、ショックアブソーバ装置の作動時に生じる温度変化及び圧力変化に起因したショックアブソーバ気室の体積変化及び圧力変化の変化率を低減することができる。
また、本発明の上記構成によれば、ばね気室に対する気体の供給により、ショックアブソーバ気室に気体を充填するとともに、ショックアブソーバ気室の圧力を設定することができる。このため、ショックアブソーバ気室の気体のリーク等を考慮して高い初期圧の気体をショックアブソーバ気室に予め封入する必要がなく、従って、ショックアブソーバ気室の気体圧力を1.0Mpa未満の圧力に設定して高圧ガス関連法規の適用を回避し得るとともに、ショックアブソーバ気室に気体を充填しない状態で装置全体又はその構成要素の収納、保管、輸送、組立て作業又は組付け作業等を実施することができる。
好ましくは、上記分離膜として、金属ベローズを好適に使用し得る。金属ベローズは、端部をシリンダ装置に液密且つ気密に固定し、ショックアブソーバ気室を油室から分離する。このような分離膜をショックアブソーバ装置に備えた空気ばね装置によれば、フリーピストンを使用せず、従って、シリンダ装置に対するフリーピストンの摺動抵抗を低減するとともに、フリーピストンの摺動部からショックアブソーバ気室の気体が油室にリークする現象を回避することができる。
また、このような構成においては、使用時におけるショックアブソーバ気室の気体圧力の変化(従って、油室の油圧の変化)をばね気室の空気によって補償することができる。これにより、安定した減衰力の確保を考慮し、或いは、ショックアブソーバ作動時の温度変化に起因したショックアブソーバ気室の圧力変動及び容積変化を考慮してショックアブソーバ気室の容積及び圧力を予め増大する必要性が解消し、ショックアブソーバの気室圧力及び気室容積を低減又は縮小することが可能となる。
ばね気室及びショックアブソーバ気室の気体圧力を前述の流体圧力制御回路によって可変制御するようにした構成を有する本発明の気体ばね装置によれば、気体ばねを介してショックアブソーバ気室を車両の車高調整制御用又は姿勢制御用の流体圧力制御回路に接続し、ショックアブソーバ気室の気体圧力を車両の車高調整制御又は姿勢制御に相応して制御し、これにより、気体ばね装置を構成するショックアブソーバ装置の減衰力を制御することができる。
車線変更やスラローム走行など短時間の応答性を要求され場合には、ショックアブソーバ気室の気室圧力を先に制御し、ショックアブソーバ気室の気体圧力を介して、ばね気室の圧力を制御しても良い。また、ショクアブソーバ気室の圧力を先に制御し、ばね気室への気体配管を流路抵抗の大きいものとして時間遅れを許容してばね気室の圧力を制御しても良い。また、両者を同時に並列的に制御しても良い。
前述の減衰力制御装置を備えた本発明の気体ばね装置によれば、例えば、積載重量の変化を気体ばねの気室圧力の制御によって補償する車高調整装置を備えた車両において上記気室間流路の構成を採用するとともに、上記減衰力制御弁及び減衰力制御装置を併用した場合、積載重量の変化にかかわらず一定の車高を保持するとともに、減衰比の変化を低減し、積載重量の変化に影響されない所望の乗り心地及び操縦安定性を確保することが可能となる。また、気体ばねの気室圧力の制御によって姿勢制御を行なう姿勢制御装置を備えた車両において上記気室間流路の構成を採用するとともに、上記減衰力制御弁及び減衰力制御装置を併用した場合、車両旋回時に圧力が増加する外輪側の減衰力を増大させることにより、外輪側車体の沈み込みを抑制するとともに、圧力が低下する内輪側の減衰力を低減して、内輪が地面から浮き上がる現象を抑制し、これにより、車両の旋回時の操縦安定性を向上することが可能となる。
好適には、上記制御気室と上記制御油室とは、金属ベローズによって分離され、制御気室の封入気体圧力は、負圧に設定される。封入気体の温度変化に対する圧力変化の値は、ボイルシャルルの式から計算され、封入圧力を低下させる程、温度変化に伴う封入気体の圧力変化の値は小さくなる。したがって、制御気室の気体圧力を負圧に設定することにより、油の温度変化に起因した制御気室の圧力変化を抑制し、制御油室の圧力と制御気室の圧力との圧力差によって制御される減衰力制御装置によって最適な減衰力制御性能を確保することができる。なお、汎用の真空ポンプによって比較的容易に得られる負圧−0.09MPaの気体圧力に制御気室の圧力を設定すると、大気圧の気体を制御気室に封入した場合と比較し、温度変化に伴う制御気室の圧力変化を約1/10程度に低減することができる。
本発明の好適な実施形態において、上記減衰力制御弁は、ピストンの各側に形成された油室を相互連通する流路の流路抵抗を制御するようにピストンに配置され、減衰力制御装置は、ピストンに取付けられ又は担持され、制御油室は、ピストンとショックアブソーバ気室との間の油室、或いは、ピストンロッドが位置するロッド側油室に連通する。
本発明の他の好適な実施形態においては、上記ピストンは、相互連結された第1及び第2ピストンと、第1及び第2ピストンの間に形成されたピストン内油室とを有する複合型ピストンである。第1ピストンは、ピストンロッドが位置するロッド側油室に面し、第2ピストンは、ピストンロッドとは反対の側に配置されたピストン側油室に面する。第1及び第2ピストンは夫々、ロッド側油室又はピストン側油室からピストン内油室に流れる油の流動抵抗を制御する上記減衰力制御弁と、減衰力制御弁の流路抵抗を可変制御する上記減衰力制御装置とを有する。第1及び第2ピストンは更に、ピストン内油室の油を前記ピストン側油室又は前記ロッド側油室に向かって比較的小さい流動抵抗の下で流すための流路を備える。
本発明の更に他の好敵な実施形態において、ピストンとショックアブソーバ気室との間の油室を分割する隔壁を有し、隔壁はピストンとショクアブソーバ気室との間に配置され、上記減衰力制御装置は隔壁に取付けられ又は担持される。隔壁は、その各側に形成された油室を相互連通する流路を備え、減衰力制御弁は、流路の流路抵抗を制御するように隔壁に配置され、制御油室は、隔壁とショックアブソーバ気室との間の油室、或いは、ピストンと隔壁との間の油室に連通する。
更に好ましくは、上記減衰力制御装置の付勢手段又は押圧手段は、制御気室の圧力と制御油室の圧力との差圧の変化により変位する差圧駆動式の作動子を有し、上記弁体は、ピストン又は隔壁に対する作動子の相対変位により変位又は変形してピストン又は隔壁の流路の流路抵抗を変化させる。
本発明の或る実施形態においては、上記減衰力制御弁の弁体は、円盤状薄板ばねを組合せた構造を有し、上記付勢手段又は押圧手段は、円盤状薄板ばねの反り変形量を調節するように構成され、上記ショックアブソーバ装置の減衰力は、円盤状薄板ばねの反り変形量に相応して油流れの流路抵抗を調節することにより制御される。好ましくは、円盤状薄板ばねに接する付勢手段又は押圧手段の構成要素として、外周部分が円盤状薄板ばねに接する皿ばねが使用される。
本発明の気体ばね装置及びその減衰力制御方法によれば、ショックアブソーバの気室圧力及び気室容積を低減又は縮小して装置全体又はその構成要素を小形化するとともに、装置全体又はその構成要素の取扱を簡便化又は簡素化し、しかも、気体ばねの圧力変化と関連して減衰力を変化させることにより、積載重量の変化にかかわらず、振動特性変化を適切に制御することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
図1(A)は、本発明の第1実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図であり、図1(B)及び図1(C)は、ピストンの構造を概略的に示す斜視図である。
サスペンション装置Sは、単筒式ショックアブソーバ装置1(以下、「ショックアブソーバ1」という。)と耐圧金属ベローズ式の空気ばね5とを一体化した構成を有する。ショックアブソーバ1は、シリンダ10、中シリンダ11、気室シリンダ12及びシールハウジング13を一体的且つ気密・液密に接合した単層構造のショックアブソーバである。気室シリンダ12は、取付目玉連結部12aを一体化した底板部12bを備える。ピストン14が、シリンダ10の中心軸線X−X方向に摺動可能にシリンダ10に内装される。ピストンロッド15の下端部がピストン14に一体的に連結される。シールハウジング13は、シール蓋、オイルシール、ロッドベアリング等を備える。シリンダ10、中シリンダ11、気室シリンダ12及びシールハウジング13は、油室Cr、Cpを備えたシリンダ装置を構成する。
ピストンロッド15は、シールハウジング13を貫通してシリンダ10外に延出する。ピストンロッド15の上端部は、バンプラバ16を貫通して車体側フランジ17に一体的且つ気密に連結される。車体側フランジ17は、取付目玉連結部17aを一体化した構造を有する。本例においては、取付目玉連結部12aは、車輪側部材(図示せず)に連結され、取付目玉連結部17aは、車体側部材(図示せず)に連結される。
シリンダ10内の領域は、ピストン14によってロッド側油室Cr及びピストン側油室Cpに分割される。ピストン14は、油の流通によって減衰力を発生させる流路20、29を備える。ロッド側油室Crに面するピストン14の上面には、縮み側の減衰力を発生させるディスクバルブ21が配設され、ピストン側油室Cpに面するピストン14の下面には、伸び側の減衰力を発生させるディスクバルブ22が配設される。ピストンロッド15に作用する軸方向の荷重、衝撃又は振動は、主として、ピストン14の流路20、29を流通する油の粘性抵抗及び流動抵抗によって減衰する。
図1には、ピストン側油室Cpからロッド側油室Crに向かう油の流れが、破線で示されている。この流れは、ディスクバルブ21によって規制又は制限され、縮み側の減衰力が発生する。ロッド側油室Crからピストン側油室Cpに向かう油の流れは、図1(B)及び図1(C)に点線で示されている。この流れは、ディスクバルブ22によって規制又は制限され、伸び側の減衰力が発生する。縮み側の減衰力を発生させる流路20と、伸び側の減衰力を発生させる流路29とは、平面視において中心軸芯X−X廻りに約45°の角度間隔を互いに隔てた位置に配置される。このような流路配置や、ディスクバルブ21、22の仕様等は、ショックアブソーバ1に要求される減衰力に適合するように適宜設定される。
気室シリンダ12内には、ショックアブソーバ気室Cg(以下、「気室Cg」という。)が形成され、気室Cgは、金属ベローズ30によってピストン側油室Cpから分離される。金属ベローズ30の下端は、受圧板32によって閉塞しており、金属ベローズ30の上部開放端縁は、中シリンダ11に同心状且つ一体的に連結された支持リング33に気密・液密且つ一体的に連結される。金属ベローズ30は、気室Cg及びピストン側油室Cpの流体圧力を相互伝達する流体分離手段を構成する。
ピストン側油室Cpは、中シリンダ11の内部領域18を介して金属ベローズ30の内側領域31に延びる。気室Cgの気体(空気)は、受圧板32と金属ベローズ30のR部及び腹部とによってピストン側油室Cpの油から分離される。かくして、気室Cgは、金属ベローズ30、支持リング33、中シリンダ11及び気室シリンダ12によって画成される。気室Cgの気体圧力およびピストン側油室Cpの油圧は、金属ベローズ30を介して円滑に相互伝達し、均衡する。金属ベローズ30として、密着高さが低く、取り付けスペースを小型化することができる日本発条株式会社製の成形ベローズ(日本発条株式会社の製品カタログ(2000年10月10日作成)に記載のS字形状ベローズ)を好適に使用し得る。
ショックアブソーバ1の非ストローク状態におけるピストン両側の油室圧力の同一化と、低速作動時における減衰力チューニングのために、ピストン流路20に接するディスクには切欠き(図示せず)が形成され、ピストン14の両側の油室Cp、Crを相互連通する相互連通路(図示せず)がディスクバルブ21、22に設けられている。また、ピストン14の円滑な作動を確保すべく、シリンダ10とピストン14との摺動部は、油の漏れを生じさせるように構成されている。従って、ショックアブソーバ1がストロークしていない状態では、気室Cgの圧力が、金属ベローズ30を介して油室Cp、Crに円滑に相互伝達する。
空気ばね5は、大気側(外側)の谷R部内壁面に粘弾性体リング51を配置して耐圧性を向上した板厚0.25mm以下の耐圧金属ベローズ50を有する。耐圧金属ベローズ50の構成及び作用等については、本出願人及び本発明者の出願に係る特許第5388319号(特許文献2)に詳細に記載されているので、同特許を引用し、更なる詳細な説明は、省略する。
空気ばね5は、耐圧金属ベローズ50の上端部及び下端部に気密且つ一体的に連結された上下のベローズフランジ52、53と、ベローズフランジ52、53に気密且つ一体的に連結された上フランジ54及び下フランジ55とを備える。上フランジ54は、車体側フランジ17に一体的且つ気密に連結され、下フランジ55は、中シリンダ11に一体的且つ気密に連結される。かくして、空気ばね5の空気ばね気室Ca(以下、「気室Ca」という。)が、耐圧金属ベローズ50内に形成される。
座屈防止用の樹脂リングを構成する樹脂製内側ガイド56が、耐圧金属ベローズ50の谷外表面とシリンダ10の外側面との間に介挿され、座屈防止用の樹脂リングを構成する樹脂製外側ガイド57が、耐圧金属ベローズ50の山外表面と上側の円筒状ガイドカバー58の内側面との間に介挿される。下側の円筒状ガイドカバー59が上側の円筒状ガイドカバー58にスライド可能に挿入される。ガイドカバー58の上端部は、上フランジ54の外縁部に固定され、ガイドカバー59の下端部は、気室シリンダ12の環状延出部12cに一体的に連結される。ガイドカバー58、59は、耐圧金属ベローズ50を全体的に囲繞し、耐圧金属ベローズ50を保護する。なお、本実施例では、樹脂製内側ガイド56と樹脂製外側ガイド57との双方を使用しているが、金属ベローズ50をシリンダ側のみの配置で取付ける場合等においては、樹脂製内側ガイド56のみとなり、従って、樹脂製内側ガイド56及び樹脂製外側ガイド57は、金属ベローズ50の取付け位置に相応して、その一方のみを使用しても良い。
継手弁60が、上フランジ54に連結されるとともに、継手弁60の流路と連通する流路61が、上フランジ54に形成される。流路61の端部は、空気ばね5の気室Caに開口する。継手弁60は、外部管路(図示せず)に連結され、外部管路は、コンプレッサ及び制御弁等を含む車両の車高調整用空圧回路(図示せず)に接続される。サスペンション装置Sは、上フランジ54及び気室シリンダ12に連結された車高調整用のストローク検出器62を有し、継手弁60は、ストローク検出器62の検出結果に基づいて、車高を一定に維持するように空圧回路の高圧空気を気室Caに供給し又は気室Caから排気する。このような車高一定の制御により、車両の積載重量が増加すると気室Caの圧力が上昇し、車両の積載重量が低下すると気室Caの圧力が下降し、前述の式(3)に示す如く、積載重量の変化に依らず、ばね上の固有振動数を一定に制御できる。
本発明に係るサスペンション装置Sは、ショックアブソーバ1の気室Cgと、空気ばね5の気室Caとを相互連通させる気室間流路40を有する。気室間流路40は、中シリンダ11及び支持リング33に穿設される。気室間流路40の空気ばね側開口部41は、気室Caの下部に開口し、気室間流路40のショックアブソーバ側開口部42は、気室Cgの上部に開口する。従って、気室Cgには、気室Caの空気が供給され、気室Caの空気圧が気室Cgに伝播するので、気室Cgの空気圧は、気室Caの空気圧の変動に追随して変動し、気室Caと同等、若しくは、気室Caと実質的に同じ圧力に制御される。本例において、気室Caの空気圧は、0.2〜1.0MPa未満の範囲内、例えば、設定車高時の空気圧=0.6MPaに設定される。
このような構成のサスペンション装置Sによれば、高圧の不活性気体(窒素ガス等)を予めショックアブソーバ1の気室Cgに封入することなく、ショックアブソーバ1を収納、保管又は輸送し、ショックアブソーバ1及び空気ばね5を互いに組付け、或いは、これらを車体に組付けた後、空気ばね5を介して気室Cgに空気を供給すれば良い。また、気室Cg及びピストン側油室Cpは、金属ベローズ30によって分離されており、フリーピストンの摺動抵抗や、気室Cg内の気体のリーク現象等を考慮する必要がないので、気室Cgの設定圧力を1.0MPa未満に低下させることができる。従って、ショックアブソーバ1の製造及び組付け作業は、高圧ガス封入設備等を必要とせず、高圧ガス関連法規を適用されることもなく、しかも、ショックアブソーバ1は、ロッドを短縮したコンパクトな状態で効率的に収納、保管又は輸送することができる。
また、上記構成のサスペンション装置Sによれば、空気ばね5の空気圧が気室Cgに直に作用するので、気室Cgの空気圧は、空気ばね5の空気圧の制御と関連して変動する。このため、重積載時における気室Cgの圧力不足に起因してショックアブソーバのエアレーション等が発生するのを防止することができ、従って、積載重量の変化に依らず、安定した減衰力を得ることができる。
更に、気室間流路40は、外部管路によって形成されるのではなく、シリンダ装置の壁体又は構成部材にチャンネル流路形態に形成されるので、ショックアブソーバ1をコンパクトに設計することができる。本例のサスペンション装置Sの取付スペースは、ショックアブソーバを備えるゴムブラダ式空気ばね装置の取付スペースより小さく、ショックアブソーバを備えるコイルばね装置(多機能性を有しないコイルばね装置)の取付スペースと同等のスペースに収めることができる。
図2は、本発明の第2実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図であり、図2には、気室Cgの構成の変形例が示されている。なお、図2において、図1に示す各構成要素又は構成部材と実質的に同一の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
図2に示すショックアブソーバ1は、図1に示す中シリンダ11を備えず、全体的に小型化を図った構成のものであり、シリンダ10及びシリンダ12は、一体的且つ気密・液密に接合される。金属ベローズ30の支持板34が、シリンダ12の底板部12bに固定される。金属ベローズ30の上端は、中央部が窪んだ受圧板35によって閉塞しており、金属ベローズ30の下側の開放端縁部は、支持板34の外周部に気密・液密且つ一体的に連結される。気室Cgは、金属ベローズ30、受圧板35及び支持板34によって画成される。支持板34の中心領域には、貫通流路36が形成され、貫通流路36は、底板部12bに配置されたショックアブソーバ側開口部42を介して気室間流路40に連通する。気室間流路40は、シリンダ12に穿設され、空気ばね側開口部41において気室Caの下部に開口する。かくして、気室Cg及び気室Caは、気室間流路40を介して相互連通し、気室Cgの空気圧は、気室Caの空気圧に追随して変動し、気室Caの空気圧と実質的に同一の圧力に設定される。図2に示すサスペンション装置Sの他の構成は、図1に示すサスペンション装置と同一であるので、更なる詳細な説明は、省略する。
図3は、本発明の第3実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図である。図3において、図2に示す各構成要素又は構成部材と実質的に同一の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
図3に示すサスペンション装置Sは、図2に示す実施例2のサスペンション装置において、ショックアブソーバ1の減衰力を可変制御する減衰力制御器7、8を減衰力制御装置として油室Cr、Cp内に更に備えた構成のものである。
前述の実施例と同じく、気室Cgの空気圧は、気室Caの空気圧に追従して変動し、気室Caの空気圧と実質的に同一の圧力に制御され、従って、ピストン側油室Cpの油圧も又、気室Caの空気圧と実質的に同一の圧力に制御されることから、ピストン側油室Cpの油圧は、車高一定の制御の下で積載重量に比例して変化する。このため、本例のサスペンション装置Sは、ピストン側油室Cpの油圧に応答してショックアブソーバ1の減衰力を制御するための減衰力制御器7、8を備える。
減衰力制御器7は、ピストン14とロッド15との間に介装され、ショックアブソーバ1の伸び側の減衰力を可変制御する。減衰力制御器8は、シリンダ10及び気室シリンダ12の接合部に配置され、ショックアブソーバ1の縮み側の減衰力を可変制御する。減衰力制御器8は、シリンダ10及び気室シリンダ12の接合部に固定された縮み制御用の隔壁8bを含む。隔壁8bと金属ベローズ30との間には、気室側油室Ciが画成される。縮み側の減衰力が減衰力制御器8によって得られるので、縮み側の減衰力を発生すべくピストン14に設けられた前述のディスクバルブ21(図2)は、省略される。なお、多くの車両においては、縮み側の減衰力は伸び側の減衰力と比較して相対的に小さく設定し得ることから、縮み側の減衰力を発生させるディスクバルブ21(図2)をピストン14に配設し、縮み側の減衰力を可変制御する減衰力制御器8を省略することも可能である。
図4及び図5は、減衰力制御器7の構造を示す縦断面図及び概略斜視図である。図4には、車両の積載重量が比較的小さい状態(軽積載時)における減衰力制御器7の状態が示されており、図5には、車両の積載重量が比較的大きい状態(重積載時)における減衰力制御器7の状態が示されている。また、図6は、減衰力制御器8の構造を示す縦断面図及び概略斜視図である。
図4及び図5に示す如く、減衰力制御器7は、ピストンロッド15の端部に固定されたハウジング70と、ピストン14に一体的に連結されたフランジ形基部71と、ハウジング70内に配置された上下動可能な差圧作動型の作動子72と、ハウジング70及び基部71の間に介装された制御用金属ベローズ73とから構成される。ハウジング70及び基部71は、気密・液密且つ一体的に連結され、金属ベローズ73の下端部及び上端部は、基部71及び作動子72に気密・液密且つ一体的に連結される。ハウジング70の内面と作動子72及び金属ベローズ73との間には、制御気室Cjが画成される。制御気室Cjには、所定圧力の気体(窒素ガス等)が予め封入される。制御気室Cjの設定ガス圧は、ショックアブソーバ1の使用目的、使用条件等によって適宜設定変更されるが、一般の車両用ショックアブソーバ1においては、制御気室Cjの圧力は、負圧(大気圧以下)に設定される。前述のとおり、このような圧力設定は、制御気室Cjの温度変化に伴う圧力変化量を低減させ、減衰力制御器7の制御精度の向上や、制御の安定性の向上を図る上で有利である。
作動子72は、その中心部から垂下する管路部分74を有する。管路部分74は、基部71及びピストン14の中心部を上下方向に貫通し、ピストン14の下面からピストン側油室Cpに突出する。管路部分74の下端部は、ピストン側油室Cpに開口しており、管路部分74内の管路74aは、ピストン側油室Cpに連通する。管路部分74の管壁上部には、連通孔74bが径方向に穿設され、連通孔74bは、基部71及び作動子72の間に形成された油圧室75に開口し、油圧室75は、前述のとおり、金属ベローズ73によって制御気室Cjから隔絶される。かくして、油圧室75は、管路部分74によってピストン側油室Cpと相互連通し、油圧室75の油圧は、ピストン側油室Cpの油圧と同一の圧力(従って、気室Cgの空気圧に相応する圧力)に設定される。
なお、金属ベローズ73は、単一の山の形態のものとして図4及び図5に図示されているが、比較的大きな伸縮変位を要する場合には、複数山の形態に設計しても良い。好ましくは、このような場合には、前述の特許第5388319号(特許文献2)に記載された粘弾性体リングが金属ベローズ73のR部に配置される。また、減衰力制御器7においては、制御精度の向上を意図して金属ベローズ73を使用しているが、制御精度の条件に適合する場合には、金属ダイアフラム等を使用しても良い。
六角ナット76が、管路部分74の下端部に螺合し、皿フランジ77及び皿ばね78が設定押し力を持って六角ナット76とディスクバルブ22との間に介挿される。皿ばね78は、内径側部分が皿ばねフランジ77に接し、外径側部分がディスクバルブ22に接する。皿ばね78に加わる荷重が増加すると、皿ばね78のたわみが増加するので、ディスクバルブ22の反りたわみが阻害され、皿ばね78の外周への伸び変位が加わり、ディスクバルブ22と皿ばね78との接点は、外周側に移動して、ディスクバルブ22の反り撓みを更に阻害するように作用し、この結果、ディスクバルブ22の流路抵抗は増大する。皿ばね78の変位を増大させるため、皿ばね78の外周部に放射状のスリットを形成しても良い。所望により、皿ばね78として、複数の皿ばね要素を組合せ又は集合した構造のものを採用しても良い。また、減衰力制御弁(ディスクバルブ22)の弁体として、円盤状薄板ばねを組合せた構造の弁体を好ましく使用し得る。皿ばね78は、弁体を構成する円盤状薄板ばねの反り変形量を調節するように構成され、従って、ショックアブソーバ装置1の減衰力は、円盤状薄板ばねの反り変形量に相応して油流れの流路抵抗を調節することにより制御される。ディスクバルブ22のリリーフ特性が発揮し易くするため、皿ばねの取り付けを上下逆にして内径側部分がディスクバルブ22に接し、外径側部分が皿ばねフランジ77に接する取り付けとしても良い。なお、ディスクバルブ22の周囲にスペース上の余裕がある場合、ディスクバルブ22を付勢又は押圧する手段として、皿ばね78に換えて、巻きばねを使用することも可能である。
皿フランジ77の円筒状基部77aは、ピストン14の中心孔14a内に延入し、ピストン14及び管路部分74によって上下動可能に支持される。気室Cgの空気圧が降圧すると、ピストン側油室Cpの油圧が降圧し、これに伴って油圧室75の油圧が降圧するので、作動子72は、下方に変位し、六角ナット76と一体になった皿フランジ77及びディスクバルブ22を付勢又は押圧する圧力を低減し、この結果、ディスクバルブ22は、流路20の流路抵抗を低減する。逆に、気室Cgの空気圧が昇圧すると、ピストン側油室Cpの油圧が昇圧し、これに伴って油圧室75の油圧が昇圧するので、作動子72は、上方に変位し、六角ナット76と一体になった皿フランジ77を介してディスクバルブ22を上方に押圧又は付勢し、この結果、ディスクバルブ22は、流路20の流路抵抗を増大する。図4には、前者の状態が示されており、図5には、後者の状態が示されている。
かくして、気室Cgの空気圧と制御気室Cjの気体圧との圧力差に相応した力が、ディスクバルブ22に常時作用し、流路20の流路抵抗は、気室Cgの圧力変動に相応して変化するので、気室Cgの空気圧に感応した伸び側の減衰力が得られる。例えば、図4に示す軽積載状態においては、空気室Cgの空気圧が低下し、ディスクバルブ22が流路20の流路抵抗を低減するので、伸び側の減衰力は低下し、他方、図5に示す重積載状態においては、空気室Cgの空気圧が増大し、ディスクバルブ22が流路20の流路抵抗を増大するので、伸び側の減衰力は増大する。即ち、減衰力制御器7は、前記空気室Cgの空気圧の変化に応答してピストン側油室Cp及び制御気室Cjの圧力差の下で減衰力制御弁(ディスクバルブ22)の弁体を付勢又は押圧する付勢手段又は押圧手段(作動子72、皿フランジ77及び皿ばね78)を有し、減衰力制御弁の流路抵抗を可変制御する減衰力制御装置を構成する。
なお、ピストン14は、ピストン側油室Cp及びロッド側油室Crを相互連通させるようにピストン14を貫通する流路26を備えるとともに、伸び側の作動時に油の流れを整流するように機能する整流ディスク27を備える。整流ディスク27は、ロッド側油室Cr側の面に配置される。整流ディスク27は、流路26の開口部をロッド側油室Crに開放するための切欠き部27aを備える。流路26は、縮み側の作動時に、ピストン側油室Cpの油を抵抗なくロッド側油室Crに流出させる。
図6に示す如く、減衰力制御器8は、減衰力制御器7と類似した構造を有する制御器本体8aと、制御器本体8aの下方に配置された縮み減衰制御用の隔壁8bとから構成される。隔壁8bは、ピストン14と類似した形態を有するが、ピストン14とは構造的に異なり、シリンダ10及び気室シリンダ12の接合部に一体化している。
ピストン側油室Cp内に配置された制御器本体8aは、ピストン側油室Cpに面するハウジング80と、隔壁8bに一体的に連結されたフランジ形基部81と、ハウジング80内に配置された上下動可能な作動子82と、ハウジング80及び基部81の間に介装された金属ベローズ83とから構成される。ハウジング80及び基部81は、気密且つ一体的に連結され、金属ベローズ83の下端部及び上端部は、基部81及び作動子82に気密且つ一体的に連結される。ハウジング80の内面と作動子82及び金属ベローズ83との間には、制御気室Ckが画成される。制御気室Ckには、所定圧力の気体(窒素ガス等)が封入される。減衰力制御器7の制御気室Cjと同じく、制御気室Ckの圧力は、温度変化の影響の抑制や、制御精度の向上、制御の安定性の向上等を考慮し、負圧(大気圧以下)に設定される。
隔壁8bは、ピストン側油室Cp及び気室側油室Ciを分離するとともに、油の流通によって減衰力を発生させる流路90を備える。気室側油室Ciに面する隔壁8bの下面には、縮み側の減衰力を発生させるディスクバルブ92が配設される。作動子82は、その中心部から垂下する管路部分84を有する。管路部分84は、基部81及び隔壁8bの中心孔94を上下方向に貫通し、隔壁8bの下面から気室側油室Ciに突出する。管路部分84の下端部は、気室側油室Ciに開口しており、管路部分84内の管路84aは、気室側油室Ciに連通する。管路部分84の管壁上部には、連通孔84bが径方向に穿設され、連通孔84bは、基部81及び作動子82の間に形成された油圧室85に開口する。油圧室85は、金属ベローズ83によって制御気室Ckから隔絶される。かくして、油圧室85は、管路部分84によって気室側油室Ciと相互連通し、油圧室85の油圧は、気室側油室Ciの油圧と同一の圧力(従って、気室Cgの空気圧と同一の圧力)に設定される。
なお、前述の特許第5388319号(特許文献2)に記載された構成を有する粘弾性体リング89を、金属ベローズ83のR部に配置しても良い。これは、皿ばねの押し力との兼ね合いで、制御気室Ckの封入圧力を大気圧以上にする場合において、金属ベローズ83の差圧での破損を防止する上で有用である。所望により、金属ベローズ73に換えて、金属ダイアフラム等を使用することも可能である。必要に応じて、金属ベローズ83は、複数山の形態に設計しても良く、そのような構成においては、粘弾性体リング89は、制御気室Ck側の各R部に好ましく配設される。このような粘弾性体リング89の配設は、圧力差による金属ベローズ83の破損を防止する上で有用である。
六角ナット86が、管路部分84の下端部に螺合し、皿フランジ87及び皿ばね88が設定押し力を持って六角ナット86とディスクバルブ92との間に介挿される。皿フランジ87の円筒状基部87aは、隔壁8bの中心孔94内に延入し、隔壁8b及び管路部分84によって上下動可能に支持される。気室Cgの空気圧が昇圧すると、気室側油室Ciの油圧が昇圧し、これに伴って油圧室85の油圧が昇圧するので、作動子82は、上方に変位し、六角ナット86と一体になった皿フランジ87を介してディスクバルブ92を上方に押圧又は付勢し、この結果、ディスクバルブ92は、流路90の流路抵抗を増大する。逆に、気室Cgの空気圧が降圧すると、気室側油室Ciの油圧が降圧し、これに伴って油圧室85の油圧が降圧するので、作動子82は、下方に変位し、六角ナット86と一体になった皿フランジ87及びディスクバルブ92を付勢又は押圧する圧力を低減し、この結果、ディスクバルブ92は、流路90の流路抵抗を低減する。図6には、後者の状態が示されている。
かくして、気室Cgの空気圧と制御気室Ckの気体圧との圧力差に相応した力が、ディスクバルブ92に常時作用し、流路90の流路抵抗は、気室Cgの圧力変動に相応して変化するので、気室Cgの空気圧に感応した縮み側の減衰力が得られる。例えば、軽積載状態においては、空気室Cgの空気圧が低下し、ディスクバルブ92が流路90の流路抵抗を低減するので、縮み側の減衰力は低下し、他方、重積載状態においては、空気室Cgの空気圧が増大し、ディスクバルブ92が流路90の流路抵抗を増大するので、縮み側の減衰力は増大する。即ち、減衰力制御器8は、空気室Cgの空気圧の変化に応答して気室側油室Ci及び制御気室Ckの圧力差の下で減衰力制御弁(ディスクバルブ92)の弁体を付勢又は押圧する付勢手段又は押圧手段(作動子82、皿フランジ87及び皿ばね88)を有し、減衰力制御弁の流路抵抗を可変制御する減衰力制御装置を構成する。
なお、隔壁8bは、ピストン側油室Cp及び気室側油室Ciを相互連通させるように隔壁8bを貫通する流路96を備えるとともに、伸び側の作動時に油の流れを整流するように機能する整流ディスク97を備える。整流ディスク97は、ピストン側油室Cp側の面に配置される。整流ディスク97は、流路96の開口部をピストン側油室Cpに開放するための手段(図示せず)を備える。流路96は、伸び側の作動時に、気室側油室Ciの油を抵抗なくピストン側油室Cpに流出させる。
また、一般的には、縮み側の減衰力は伸びの側減衰力より小さく設定されるので、縮み側ディスクバルブ92の湾曲撓みのばね定数を伸び側ディスクバルブ22よりも小さく設定し、これに適合するように皿ばね92のばね定数や、制御気室Ckのガス圧等を設定しても良い。
図7は、本発明の第4実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図である。図7において、前述の各実施例における各構成要素又は構成部材と実質的に同一の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
図7に示すサスペンション装置Sは、図3に示すショックアブソーバと同一のショックアブソーバ1を備えるとともに、ゴムブラダ(ダイアフラム)101を有する空気ばね100を備える。ゴムブラダ101の一端部が、ブラダ上リング103によってゴムブラダ支持用の上フランジ102に気密且つ一体的に取付けられ、上フランジ102は、上フランジ54に気密且つ一体的に取付けられる。ゴムブラダ101の他端部が、ブラダ下リング104及び保持リング105によってブラダシリンダ110の上端部に気密且つ一体的に組付けられる。
ブラダシリンダ110は、下端部が下フランジ55に気密且つ一体的に取付けられる。ブラダシリンダ110の内周面とシリンダ10の外周面との間には、流体通路111が形成される。流体通路111の上端部は、保持リング105の連通流路112を介してゴムブラダ100内の気室Cbと連通する。気室間流路40の開口部41が流体通路111の下端部に開口する。かくして、気室Cg及び気室Cbは、気室間流路40及び流体通路111を介して相互連通し、気室Cgの空気圧は、気室Cbの空気圧に追随して変動し、気室Cbの空気圧と実質的に同一の圧力に設定される。なお、流体通路111は、気室Cbから気室Cgへの圧力伝播を緩衝するように流路断面を拡大した流路であり、車両の荷重変化や、温度変化等の変化に応答したゆっくりした圧力変化を伝達するが、振動のような短時間の圧力変化の伝達を緩和する圧力緩衝用の流路部分を構成する。
ゴムブラダ101のR部106は、ショックアブソーバ1の伸縮に追従して屈曲作動する。R部106の屈曲抵抗を低減するためには、屈曲半径を大きく設定するとともに、気室Cbの気体圧力を低下させる必要があることから、乗用車等においては、コイルばねや、耐圧金属ベローズの場合に比べて、取付径が相対的に増大するので、図7に示す形式のサスペンション装置Sは、取付けスペースに比較的余裕がある大型車両用サスペンション装置において好ましく使用し得る構成のものである。
図8は、本発明の第5実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図である。図8において、前述の各実施例における各構成要素又は構成部材と実質的に同一の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
図8に示すサスペンション装置Sを構成するショックアブソーバ1は、ピストンロッド15を下向きに配向した倒立形態の構造を有する。ピストン14の側に位置する車体側フランジ112の取付目玉連結部112aは、車体側部材(図示せず)に連結され、ピストンロッド15の側に位置する車輪側フランジ117の取付目玉連結部117aは、車体側部材(図示せず)に連結される。
図8に示すショックアブソーバ1は、シリンダ10と別体のタンク200を備える。タンク200は、下部シリンダ201及び上部シリンダ202から構成される。タンク200内には、気室Cg、気室側油室Ci、金属ベローズ30及び減衰力制御器8が倒立形態に配設され、減衰力制御器8の下側に油室Cp'が形成される。タンク200の下部シリンダ201には、油圧ポート206を備えた管継手205が連結される。油圧ポート206は、油圧配管(図示せず)を介して車体側フランジ112の油圧ポート113に連結される。倒立式のショックアブソーバ1は、このような油圧配管の車体側配置を容易にするとともに、ばね下重量の軽減や、ショックアブソーバ取付け長の短縮等を可能にする。また、ショックアブソーバ1の一部をタンク200によって分割することにより、タンク200や、油圧配管からの放熱効果を利用して、油の温度上昇を抑制することも可能である。このように構成された本例のサスペンション装置Sは、減衰力制御器を内蔵した場合においても、ショックアブソーバを備えたコイルばね装置(多機能性のないコイルばね装置)と同等の取付長に収めることができる。
タンク200内の油室Cp'は、シリンダ10及び車体側フランジ112によって形成されたピストン側油室Cpと常時連通し、ピストン側油室Cpの一部を構成する。下部シリンダ201及び上部シリンダ202の接合部には、減衰力制御器8の隔壁8bが固定される。上部シリンダ202は、管継手60を介して外部管路(図示せず)に連結された空気流路215を有する。外部管路は、コンプレッサ及び制御弁等を含む車両の車高調整用空圧回路(図示せず)に接続される。
空気流路215は、流路45を介して気室Cgに連通するとともに、管継手210の流路を介して車体側フランジ112の空気流路114に連通する。空気流路114は、空気流路43に連通し、空気流路43は、空気ばね側開口部44において空気ばね5の気室Caに開口する。空気流路43、114、215及び管継手210は、空気ばね5の気室Caを車両の空圧回路に接続する昇圧空気の給排流路を構成するとともに、気室Cg及び気室Caを相互連通する前述の気室間流路を構成する。
このような構成によれば、気室Cgは、外部の流体圧力制御回路に気室Caよりも先に流路抵抗少なく繋がり、しかも、気室Cgの容積は、気室Caよりも大幅に小さいので、気室Cgの圧力は、気室Caの圧力よりも先に応答性良く短時間で制御される。従って、気室Cgの圧力は、ショックアブソーバ内油室圧力に瞬時に伝達され、ショックアブソーバ1の減衰力制御及び動ばね定数変化は、空気ばねの圧力制御よりも先に短時間で応答性良く制御され、車線変更やスラローム走行等のように短時間の応答性を要求される場合に車両の操縦安定性を更に向上することができる。なお、空気ばね5の周囲にタンク200の設置スペースを確保し難い場合、管継手210に換えて車体側フランジ112、上部シリンダ202の間に空圧配管を配管しても良い。
図9(A)は、本発明の第6実施例に係る車両用サスペンション装置の構造を示す縦断面図であり、図9(B)及び図9(C)は、ピストン部の断面構造及び流路構成を示す拡大図である。図9において、前述の各実施例における各構成要素又は構成部材と実質的に同一の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
図9に示すサスペンション装置Sを構成するショックアブソーバ1は、実施例5と同様、ピストンロッド15を下向き配向した倒立形態の構造を有し、車体に対するショックアブソーバ1の取付け形態は、実施例5と実質的に同一のものである。
図9(A)に示す如く、シリンダ10の外側には、空気ばね5を構成する耐圧金属ベローズ50が配置される。耐圧金属ベローズ50の内表面とシリンダ10の外表面との間の空間は、空気ばね5のベローズ内空気ばね気室Cabを形成する。シリンダ10と耐圧金属ベローズ50との間には、樹脂製の内側ガイド56が周方向に耐圧金属ベローズ50の座屈を防止できる軸方向間隔を隔てて取付けられる。ベローズフランジ53が、耐圧金属ベローズ50の下部に気密に取付けられる。ベローズフランジ53の下部には、ロッドカバーシリンダ301が気密に取付けられる。ロッドカバーシリンダ301は、ピストンロッド15の側に位置する車輪側フランジ117に気密に取付けられ、シールハウジング13と協働して空気ばね5のロッド側空気ばね気室Carを形成する。ベローズフランジ53とロッドカバーシリンダ301との間には、樹脂製のガイドロッドカバー302が挿入される。ガイドロッドカバー302は、シリンダ10の外表面をガイドとした両者の円滑な摺動を確保する。ベローズ内空気ばね気室Cabとロッド側空気ばね気室Carとは、ガイドロッドカバー302とシリンダ10の外表面との間の狭い空気流路50aによって相互連通し、気室Caは、ベローズ内空気ばね気室Cabとロッド側空気ばね気室Carとから形成される。衝撃入力に対するベローズ内空気ばね気室Cabの圧力変化は、空気流路50aの流路抵抗により、ロッド側空気ばね気室Carの圧力変化より小さくなり、車輪側からの衝撃入力に対する耐圧金属ベローズ50への入力は、緩和される。
空気ばね5の外側には、耐圧金属ベローズ50を保護するダストカバー358が配置される。樹脂製のダストワイパー303が、ロッドカバーシリンダ301の外表面に設けられた溝に取付けられ、或いは、ロッドカバーシリンダ301とベローズフランジ53との間に介挿される。ダストワイパー303は、ダストカバー358の内面とロッドカバーシリンダ301との間において空気の通過を許容する一方、ダストの通過を阻止し、耐圧金属ベローズ50の耐久性を低下させるダストがベローズ外側空間Co内に侵入するのを防止する。
なお、本例においては、耐圧金属ベローズ50の座屈防止用のガイドは、谷内面のみに設けられており、山部におけるガイドを含む他の実施例に比べて、耐圧金属ベローズ50の耐久性を向上できる点で有利である。
ショックアブソーバ1は、上下方向に間隔を隔てて配置された第1及び第2ピストン141、142と、ピストン141、142を一体的に相互連結する円筒状又は円環状の連結部143と、シリンダ10の内面をガイドとして摺動するウエアーリング144とから構成される複合型ピストン14を有する。第1及び第2ピストン141、142の間には、ピストン内油室Ccが形成される。第1ピストン141は、減衰力制御器7を介してロッド15に一体的に連結される。第1ピストン141は、伸び側の減衰力を発生させるディスクバルブ22を備える。ロッド側油室Crに面する第1ピストン141の減衰力制御器7は、ショックアブソーバ1の伸び側の減衰力を可変制御する。他方、第2ピストン142は、縮み側の減衰力を発生させるディスクバルブ21を備える。ピストン側油室Cpに面する減衰力制御器8が、第2ピストン142に取付けられる。減衰力制御器8は、ショックアブソーバ1の縮み側の減衰力を可変制御する。
図9(B)は、減衰力制御器7の部分拡大断面図であり、図9(C)は、中心軸線X−Xを中心として角度22.5度回転させた状態で示す減衰力制御器7の部分拡大断面図である。減衰力制御器7の基本構成は、図4を参照して説明したとおりのものであるが、本例の減衰力制御器7は、管路部分74によってロッド側油室Crと相互連通しており、油圧室75の油圧は、ロッド側油室Crの油圧と同一の圧力に設定される。即ち、管路部分74の管路74aは、図9(C)に示す如く、流路74cを介してロッド側油室Crの延長部74dに連通するとともに、連通孔74eを介して油圧室75に連通しており、ロッド側油室Crの油圧は、延長部74d、管路74c、74a及び連通孔74eを介して油圧室75に導かれる。なお、管路74a、74cの外端部は、硬球74fによって封止されている。
このような構成によれば、ロッド側油室Crの油圧が降圧すると、油圧室75の油圧が降圧するので、作動子72は、皿ばね78のたわみを減少させて上方に変位し、皿フランジ77及びディスクバルブ22を付勢又は押圧する圧力を低減し、この結果、第1ピストン141のディスクバルブ22は、流路20の流路抵抗を低減する。逆に、ロッド側油室Crの油圧が昇圧すると、油圧室75の油圧が昇圧するので、作動子72は、皿ばね78のたわみを増加させて下方に変位し、皿フランジ77を介してディスクバルブ22を下方に押圧又は付勢し、この結果、第1ピストン141のディスクバルブ22は、流路20の流路抵抗を増大する。従って、ディスクバルブ22及び皿ばね78のばね力は、伸び側減衰力の必要量に相応して調整される。
なお、本例においては、ディスクバルブ22は、ガイドナット77bによって第1ピストン141の中心部に取付けられ、皿フランジ77は、ガイドナット77bによってガイドされ、皿ばね78を押える。また、皿フランジ77は、抜止め用の止め輪77cによって管路部分74に保持される。
第2ピストン142に取付けられた減衰力制御器8は、減衰力制御器7を上下反転した構造のものである。但し、減衰力制御器8の油圧室85には、ピストン側油室Cpの油圧が導かれ、油圧室85の油圧は、ピストン側油室Cpの油圧と同一の圧力に設定される。従って、ピストン側油室Cpの油圧が降圧すると、油圧室85の油圧が降圧するので、第2ピストン142のディスクバルブ21は、流路29の流路抵抗を低減する。逆に、ピストン側油室Cpの油圧が昇圧すると、油圧室85の油圧が昇圧するので、第2ピストン142のディスクバルブ21は、流路29の流路抵抗を増大する。従って、ディスクバルブ21及び皿ばね88のばね力は、縮み側減衰力の必要量に相応して調整される。
複合型ピストン14は又、ピストン141、142の間にピストン内油室Ccを備えるので、ショックアブソーバ1が伸び側にストロークすると、ロッド側油室Crの油が、ピストン141の流路20及びディスクバルブ22の絞り抵抗を発生させながら、ピストン内油室Ccに流れ、絞り抵抗がないピストン142の流路を通ってピストン内油室Ccからピストン側油室Cpに流れる。この状態では、ピストン142の流路において流路抵抗がないので、気室Cgの圧力がピストン内油圧室Ccの圧力になる。前述のとおり、ディスクバルブ22及び皿ばね78のばね力は、伸び側減衰力の必要量に相応して調整される。逆に、ショックアブソーバ1が縮み側にストロークすると、ピストン側油室Cpの油が、ピストン142の流路29及びディスクバルブ21の絞り抵抗を発生させながら、ピストン内油室Ccに流れ、絞り抵抗がないピストン141の流路を通ってピストン内油室Ccからロッド側油室Crに流れる。前述のとおり、ディスクバルブ21及び皿ばね88のばね力は、縮み側減衰力の必要量に相応して調整される。即ち、上記構成の複合型ピストン14及び減衰力制御器7、8を備えたショックアブソーバ1によれば、ストローク方向に位置する油室の圧力に感応した減衰力が得られる。
図9(A)に示すように、サスペンション装置Sは、制御弁FVを介して外部管路FCに接続された空気流路Eを有する。外部管路FCは、コンプレッサ及び制御弁等を含む車両の車高調整用空圧回路(図示せず)に接続される。空気流路Eは、空気流路114、43及び空気ばね側開口部44を介して、気室Caを構成するベローズ内空気ばね気室Cab及びロッド側空気ばね気室Carに連通するとともに、空気流路45を介して気室Cgに連通する。なお、気室Cgは、前述の実施例と同じく、シリンダ10の上部に配置された金属ベローズ30及び受圧板32によってピストン側油室Cpから分離されている。
空気流路Eは、流路抵抗が小さい気体配管からなり、気室Ca、Cgを相互連通させる。空気流路43と気室Cgとを連通させる流路を空気流路Eとして車体側フランジ112内に形成することにより、空気流路Eとしての外部配管の設置を省略することも可能である。この場合、図9に示す空気流路114は、プラグ等の密封栓で封止され、車体側フランジ112に設けられた空気流路Eは、制御弁FV又は外部管路FCに直に接続される。
本例の減衰力制御器8と第2ピストン142はそのまま使用し、本例の減衰力制御器7の管路部分74と第1ピストン141の流路構造を、実施例3に示す減衰力制御器7の管路部分74とピストン14の流路構造と同じにして、減衰力制御器7の油圧室75への油圧は、ピストン内油室Ccから導かれる油圧が加わるようにしても良い。この場合は、実施例3と同様に、作動速度に関係なく気室Cgに対応する圧力によるディスクバルブ22への押し力が得られ、減衰力調整がより容易になる。
本例のサスペンション装置Sによれば、ピストン141、142の流路20、29を流通する油量が、伸び側及び縮み側の各ストローク時に、ストローク量に対応した均等な流量となるので、前述の実施例3、4及び5の各サスペンション装置Sに比べて、減衰力の調整が容易であり、しかも、耐圧ベローズ50の耐久性も向上でき、この点において、本例のサスペンション装置Sは優位性がある。
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施例においては、空気ばねは、圧縮空気の弾性力を利用したばね装置として構成されているが、窒素ガス等の不活性ガスを封入した気体ばねとして構成しても良い。
また、上記実施例においては、空気ばねは、車両の車高調整用空圧回路に接続されるが、車両の姿勢制御用空圧回路、或いは、車高調整及び姿勢制御を兼ねた空圧回路に対して空気ばねを接続しても良い。変形例として、空気ばねを空圧回路等の流体圧力制御回路に接続せず、所定圧力の空気や、窒素ガス等の不活性ガス等を密封した空気ばね又は気体ばねとして構成しても良い。この場合、空気ばね又は気体ばねの気室圧力及び気室体積は、車体の重量変化に相応して変化する。
更に、上記実施例1〜5においては、気室間流路をシリンダ装置の壁体又はフランジ部等にチャンネル流路形態に形成しているが、壁体又はフランジ部等に流路を形成し難い構造のシリンダ装置の場合、実施例6と同様、実施例1〜5においても、ショックアブソーバ気室と空気ばね気室とを相互連通する管継手や、管路等を設け、これにより、気室間流路を形成しても良い。