この発明の一実施形態に係る蓄電デバイス1について、図1から図5を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る蓄電デバイスが、屋外を走行する電動の移動車両に電力を供給する非接触給電装置の送電回路に用いられる例に適用して以降の説明を行う。なお、以降の説明に於いて、上下、左右、前後の方向は特に断りのない限り図中に記載の方向とする。
本実施形態に係る送電回路100は、送電コイル200と高周波交流電源である電源300から主に構成されている。この送電回路100は、送電コイル200と図示されていない移動車両に設けられた受電コイル500との電磁誘導の相互誘電作用に基づいて、移動車両に電力を供給するものである。送電コイル200は、給電に必要な磁界を発生するコイルであり、その左右方向の幅がW1で、同一平面内で前後方向(以降において「移動車両の進行方向」とも記載する。)に長い平面コイルである。送電コイル200の両端は、それぞれ電源300に接続されている。
本実施形態では、この送電コイル200が、電線50L〜53L、電線50R〜53R、及び電線54と、蓄電デバイス1A〜1Hから構成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、蓄電デバイス1A〜1Hは同一のデバイスである。以降の説明において蓄電デバイス1A〜1Hを総称して「蓄電デバイス1」とも記載する。
電線50L〜53Lは、それぞれの端部が互いに向かい合う様にして、前後方向に向かって直線状に配置されている。電線50R〜53Rも同様に、前後方向に向かって直線状に配置されている。また、電線50L〜53Lと電線50R〜53Rは、向かい合う電線が幅W1の間隔で、それぞれ平行となるように配置されている。
電線50Lと電線51Lの間には、蓄電デバイス1Aがその長手方向が、電線50L及び電線51Lが延びる方向と同じになるように配置されている。蓄電デバイス1Aの両側の端部は、電線50L及び電線51Lの向かい合う側の端部と電気的に接続されている。電線51Lと電線52Lの間、電線52Lと電線53Lの間にも、それぞれ蓄電デバイス1B〜1Cが同様に配置され、蓄電デバイス1B〜1Cの両側の端部が、それぞれの電線の端部と電気的に接続されている。電線50R〜電線53Rの間にも、蓄電デバイス1E〜1Gが同様に配置され、蓄電デバイス1E〜1Gの両側の端部が、それぞれの電線の端部と電気的に接続されている。
電線53Lの前側の端部には、蓄電デバイス1Dの一方の端部が電気的に接続されている。同様に、電線53Rの前側の端部には、蓄電デバイス1Hの一方の端部が電気的に接続されている。また、蓄電デバイス1Dの前側の端部と、蓄電デバイス1Hの前側の端部の間は、略U字状に曲げられた電線54が電気的に接続されている。また、電線50L、50Rの蓄電デバイス1A及び蓄電デバイス1Eとは反対側の後側の端部は、電源300にそれぞれ接続されている。
この様に送電コイル200は、電線50L〜53L、電線50R〜53R、及び電線54と、蓄電デバイス1A〜1Hが直列に接続され、移動車両の進行方向に長く延びたループ状の平面コイルに形成されている(図1(a)参照)。なお、使用される電線の数、及び蓄電デバイス1の数は、上記に限定される訳ではなく、用途によって任意の数に変更可能することが可能である(図1(b)参照。)。
送電コイル200は、路面80から所定の距離離れた一定の高さで支持されている。図3を参照して電線50L、51L及び蓄電デバイス1Aを例に説明すると、電線50L及び電線51Lは、図示されていない保持具等によって、路面80から所定の高さhの位置に支持されている。また、蓄電デバイス1Aも同様に、図示されていない支持部材によって、路面80から所定の高さhの位置に支持されている。電線52L〜53L及び電線50R〜53Rも同様に、図示されていない保持具等によって、路面80から所定の高さhの位置に支持されている。また、蓄電デバイス1B〜1Hも同様に蓄電デバイス1Aと略同一の高さで支持されている。
<蓄電デバイスの構成の説明>
次に、主に図2〜図4を参照し、蓄電デバイス1について説明を行う。前述の様に、蓄電デバイス1A〜1Hは同一のデバイスであるため、以降は蓄電デバイス1Aを例に説明を行い、蓄電デバイス1B〜1Hの説明は省略する。なお、以降の説明において、電線50L〜53L、電線50R〜53R、及び電線54はいずれも同一の線材からなるものであり、その直径(断面の径)は、同一の大きさであるものとする。
本実施形態に係る蓄電デバイス1Aは、接続部10及び接続部11と、直方体の外装2から主に構成されている。接続部10、11は、蓄電デバイス1Aの両側に配置される電線の端部に、電気的に接続される部分である。接続部10は、外装2の後側の側面21に設けられており、接続部11は、側面21と向かい合う前側の側面22に設けられている。接続部10、11には、それぞれ電線の端部に設けられた公知の接続端子に対応した図示されていない接続端子が設けられており、電線側の接続端子と係合させることで蓄電デバイス1Aをそれぞれの電線に電気的に接続して固定することができるようになっている。
外装2は、前後方向に長い略直方体のカバーであり、詳細は後述する蓄電部3を覆い保護するものである。外装2は、蓄電デバイス1Aを屋外に設置しても、雨や埃や紫外線といった設置環境における外的要因から内部の素子を保護することが可能な公知の部材からできている。外装2の接続部10側、及び接続部11側のそれぞれの側の左右には、固定部25が設けられている。この固定部25は、支持部材85に蓄電デバイス1を固定する際に使用される固定具である。なお、外装2は、電線50L、51Lを移動車両の軌道内に設置する際に必要となる設置空間の内側で設置可能な大きさとなっている。具体的に説明すると、少なくとも外装2の幅(左右方向の寸法)及び厚さ(上下方向の寸法)は、電線50L、51Lを設置する際に必要となる設置空間の、左右方向の幅、及び高さ方向の寸法の範囲内となっている。
外装2の内側には、蓄電デバイス1Aを流れる電流の方向でもある、接続部10から接続部11に向かう方向、あるいは接続部11から接続部10に向かう方向に長い、図示されていない棒状の形状の蓄電部3が設けられている。ここで棒状の形状とは、一方の方向に向かって伸びる柱状の形状であって、その形状が伸びる方向の長さが、当該伸びる方向と直交する断面の任意の方向の長さよりも長いものをいう。本実施形態では、蓄電部3が、その断面が矩形の直方体形状をしている例に適用して以降の説明を行う。なお、蓄電部3の形状は直方体に限定される訳ではなく、例えば断面が円や楕円、あるいはその他の多角形の棒状の形状であってもよく、あるいは断面がその他の形状の棒状の形状であってもよい。
この蓄電部3は、図4(a)に示すように、一方の端部31が接続部10側を向き、他方の端部32が接続部11側を向く様にして接続部10と接続部11の間に配置されている。
蓄電部3は、電荷を放電自在に蓄電可能な所定の静電容量を有した図示されていない公知の電気素子と、それらを電気的に接続する図示されていない導電部から主に構成されている。本実施形態では、蓄電部3が所定の静電容量を有した公知のコンデンサ素子(キャパシタ素子)とコンデンサ素子を電気的に接続する公知の導電部材から構成されている例に適用して以降の説明を行う。なお、蓄電部3を構成する電気素子は、電荷を放電自在に蓄電可能な所定の静電容量を有したものであれば、他の公知の蓄電素子であってもよい。
蓄電部3はコンデンサ(キャパシタ)の両極である図示されていない2つの端子を備えている。この端子の一方は、導電体12によって接続部10に電気的に接続され、他方の端子は、導電体13によって接続部11に電的に接続されている。なお、図4(a)は説明のための概略図であり、蓄電部3、接続部10、11、及び導電体12、13の形状は、図4(a)に示す形状に限定される訳ではなく蓄電部3を構成する電気素子に応じた任意の形状にすることが可能である。
蓄電部3は、所定の静電容量を有しているため、接続部10と接続部11の間に電圧が加えられた場合には、充放電が行われて、加えられた電圧の大きさ、周波数、及び接続されている他の電気素子の特性などに応じた電流が、接続部10から接続部11に向かう方向、あるいは接続部11から接続部10に向かう方向に流れる。ここで、蓄電部3を流れる電流の方向とは、蓄電部3を巨視的に見たときに、換言すれば蓄電部3の全体を観察したときに現れる蓄電部3を流れる電流全体の方向のことをいう。同様に、蓄電デバイス1に流れる電流の方向とは、蓄電デバイス1を巨視的に見たときに、換言すれば蓄電デバイス1の全体を観察したときに現れる蓄電デバイス1を流れる電流全体の方向のことをいう。
蓄電部3の接続部10から接続部11に向かう方向の長さ、即ち、蓄電部3に流れる電流の方向の寸法は、接続部10から接続部11に向かう方向と直交する蓄電部3の断面の任意の方向の寸法よりも長くなっている。換言すれば、蓄電部3の端部31と端部32の間の距離は、端部31と端部32のそれぞれの中心を通る蓄電部3の中心軸線35に直交する矩形の断面の対角線の寸法よりも長くなっている。なお、蓄電部3の接続部10から接続部11に向かう方向と直交する方向の寸法は、蓄電部3に流れる電流によって受電コイル500に誘導される電力の給電効率に大きな影響を及ぼさない長さであることが好ましい。図4(a)を参照して具体的に説明すると、蓄電部3の上下方向及び左右方向の寸法は、蓄電デバイス1Aに流れる電流によって受電コイル500に誘導される電力が、電線50R及び電線50Lを流れる電流によって受電コイル500に誘導される電力と略同一となるような長さであることが好ましい。換言すれば、蓄電部3の上下方向及び左右方向の寸法が、移動車両に電力を供給するにあたり問題となる程の電力の給電効率の変化が生じない、あるいは先行技術文献に記載の技術を用いた際に生じる程の電力の給電効率の変化が生じない程度の長さであることが好ましい。更に蓄電部3の上下方向及び左右方向の寸法は、電線50R、50Lの直径と略同一であることが好ましい。より具体的には、蓄電部3の上下方向及び左右方向の寸法は、電線50R、50Lの直径の約2倍程度の長さであることがより好ましく、更に電線50R、50Lの直径と同一であることがより好ましい。また、蓄電部3の矩形の断面の対角線の寸法が、電線50R、50Lの直径と略同一であってもよい。なお、蓄電部3の断面が円形である場合には、当該断面の直径が電線50R、50Lの直径の約2倍程度の長さであることがより好ましく、更に電線50R、50Lの直径と同一であることがより好ましい。また、蓄電部3の断面が多角形の場合には、当該多角形の最も長い対角線、あるいは多角形の向かい合う辺の間の距離の最も長い距離が、電線50R、50Lの直径の約2倍程度の長さであることがより好ましく、更に電線50R、50Lの直径と同一であることがより好ましい。
本実施形態では、蓄電部3の上下方向、及び左右方向の長さが等しく、それぞれ電線50L、51Lの直径の2倍の長さである例に適用して以降の説明を行う。
蓄電部3は、接続部10及び接続部11が電線にそれぞれ接続された際に、蓄電部3の伸びる方向に直交する任意の断面の中心を通る軸線である中心軸線が、蓄電デバイス1Aに接続された電線の断面を通る位置となるように外装2に固定されている。図4(b)を参照して具体的に説明すると、蓄電部3の中心軸線35Aが延びる方向から見たときに、中心軸線35Aが蓄電デバイス1Aに接続された電線50L、51Lの断面の内側にあるように、蓄電部3は配置されている(図4(b)参照。)。図4(b)において、説明のために接続部10、11、及び導電体12、13は省略されている。
なお、蓄電部3、接続部10及び接続部11は、好ましくは蓄電部3の中心軸線35Aが、接続されたいずれかの電線の中心軸線と一致していることが好ましい。換言すれば、蓄電部3は、その3の中心軸線35Aが、電線50L断面の中心を通る軸線である中心軸線60L、又は電線51Lの中心軸線61Lの少なくとも一方と一致するように配置されていることが好ましい。更には、蓄電部3は、その中心軸線35Aが、中心軸線60L及び中心軸線61Lと一致するように配置されていることがより好ましい。本実施形態では、蓄電部3の中心軸線35Aが、蓄電デバイス1Aに接続された電線50L及び電線51Lの中心軸線60L、61Lと一致している場合に適用して以降の説明を行う。なお、移動車両に電力を供給するにあたり問題となる程の電力の給電効率の変化が生じないのであれば、中心軸線35Aが電線50L及び電線50Rの断面の外側にあっても構わない。
<蓄電デバイスの作用の説明>
続いて、図1(a)を主に参照し、蓄電デバイス1、及び蓄電デバイス1を用いた送電コイル200の作用について説明を行う。なお、蓄電デバイス1A〜1Hはそれぞれ、送電コイル200のリアクタンス、及び電源300の電源周波数等に応じた所定の静電容量を有している例に適用して以降の説明を行う。
はじめに、電源300から電流I1が蓄電デバイス1Aに向かって流れる場合、即ち電流I1が、送電コイル200を図1(a)に向かって時計回りに流れる場合について説明を行う。電源300から蓄電デバイス1Aに向かって電流I1が流れると、電流I1は、電線50L、蓄電デバイス1A、電線51L、蓄電デバイス1B、電線52L、蓄電デバイス1C、電線53L、蓄電デバイス1Dの順番で流れる。さらに、電流I1は、電線54を流れて、電源300に向かう方向で、蓄電デバイス1H、電線53R、蓄電デバイス1G、電線52R、蓄電デバイス1F、電線51R、蓄電デバイス1E、電線50Rの順番で流れて電源300に戻る。なお、蓄電デバイス1A〜1Hのそれぞれの蓄電部3は、その中心軸線が、接続された電線の中心軸線と一致する様に配置されており、蓄電部3の上下方向、及び左右方向の寸法は、電線50L〜53L、50R〜53R、54の直径と略同一である。このため電流I1は、電線50L〜53L、50R〜53R、54を流れる電流の経路から大きく離れることなく蓄電デバイス1A〜1Hを流れる。この様に電流I1が送電コイル200に流れると、送電コイル200の内側に、図1(a)の紙面の表面から裏面に向かう方向の磁界が発生する。
次に、電源300から電流I2が蓄電デバイス1Eに向かって流れる場合、即ち電流I2が、送電コイル200を図1(a)に向かって反時計回りに流れる場合について説明を行う。電源300から蓄電デバイス1Eに向かって流れた電流I2は、電線50R、蓄電デバイス1E、電線51R、蓄電デバイス1F、電線52R、蓄電デバイス1G、電線53R、蓄電デバイス1Hの順番で流れる。さらに電流I2は、電線54を流れ、電源300に向かう方向で、蓄電デバイス1D、電線53L、蓄電デバイス1C、電線52L、蓄電デバイス1B、電線51L、蓄電デバイス1A、電線50Lの順番で流れ、電源300に戻る。電流I2は、電流I1と同様に、電線50L〜53L、50R〜53R、54を流れる電流の経路とは異なる方向に広がることなく蓄電デバイス1A〜1Hを流れる。この時、送電コイル200の内側には、図1(a)の紙面の裏面から表面に向かう方向の磁界が発生する。このようによって発生した磁界によって、移動車両の駆動部に電力を供給する図示されていない受電回路の受電コイル500に電流が誘導され、電力が供給される。
ここで、図5(a)及び図5(b)を参照して、蓄電デバイス1の配置位置が、受電コイル500に誘導する電力の給電効率に及ぼす影響について説明する。受電コイル500は、移動車両に搭載されるコイルで、電線などの導電性の部材が平面上にループ状に配置された平面コイルである。本実施形態では、受電コイル500の左右方向の幅drが、送電コイル200の幅W1(以降において送電コイル200の左右方向の幅を「df」とも記載する。)よりも狭く形成されている例に適用して以降の説明を行う。
なお以降の説明では、蓄電デバイス1A及び蓄電デバイス1Eの上方に、受電コイル500が位置している場合に適用して説明を行う。具体的には、受電コイル500が、送電コイル200が延びる平面と平行に延びる平面内に配置されており、送電コイル200の蓄電デバイス1A及び蓄電デバイス1Eの上側にある受電コイル500部分の左右方向の中心が、送電コイル200の左右方向の中心と同一となる場所に位置している場合について説明を行う。
図5は、蓄電デバイス1A及び蓄電デバイス1Eが配置されている場所における、送電コイル200及び受電コイル500の断面を、電源300側から見た図である。なお以降において、蓄電デバイス1A、蓄電デバイス1Eのそれぞれの蓄電部3の断面の半径、及び電線50L〜53L、50R〜53R、及び54の断面の半径はいずれも同一であり、その大きさは半径aである例に適用して説明を行う。また、半径aを基準として、送電コイル200の幅df、即ち蓄電デバイス1Aの蓄電部3の中心軸線35A(以降において「蓄電デバイス1Aの中心軸線35A」とも記載する。)と、蓄電デバイス1Eの蓄電部3の中心軸線35E(以降において「蓄電デバイス1Eの中心軸線35E」とも記載する。)との間の距離は40aであり、受電コイル500の左右方向の幅drは33aである例に適用して以降の説明を行う。また、送電コイル200と受電コイル500との間の上下方向の距離h1、即ち送電コイル200が延びる平面であって電線50L、51L、50R,51Rの中心軸線60L、61L、60R、61Rを含む平面と、受電コイル500が延びる平面との間の距離h1は、13aであるものとする。また、図5において、蓄電デバイス1Aには、図5の紙面の表面から裏面に向かう方向に電流+Iが流れ、蓄電デバイス1Eには、その大きさが電流Iと同一で、流れる方向が逆向きの電流−Iが、図5の紙面の裏面から表面に向かう方向に流れている例に適用して以降の説明を行う。
<蓄電デバイス1の中心軸線と電線の中心軸線が一致している場合>
はじめに、図5(a)を参照して、蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aが、蓄電デバイス1Aに接続された電線50L、51Lの中心軸線60L、61Lと一致しており、蓄電デバイス1Eの中心軸線35Eが、蓄電デバイス1Aに接続された電線50R、51Rの中心軸線60R,61Rと一致している場合について説明を行う。
図5(a)においてr11は、蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aから、図5における受電コイル500の左側の端部までの距離を示している。r12は、蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aから、図5における受電コイル500の右側の端部までの距離を示している。また、r21は蓄電デバイス1Eの中心軸線35Eから、図5における受電コイル500の左側の端部までの距離を示している。r22は、蓄電デバイス1Eの中心軸線35Eから、図5における受電コイル500の右側の端部までの距離を示している。前述のように、受電コイル500はその左右方向の中心が、送電コイル200の左右方向の中心と一致するようにして、送電コイル200の上側に位置している。即ち、距離r11とr22及び距離r12と距離r22がそれぞれ等しい距離となる場所に位置している。
非接触給電装置において、送電コイル200から受電コイル500に伝達される電力の給電効率は、送電コイル200から発生する磁束の受電コイル500との鎖交量によって定まる。ここで、蓄電デバイス1Aを流れる電流+Iからの単位長さあたりの鎖交磁束をφ+、蓄電デバイス1Eを流れる電流−Iからの単位長さあたりの鎖交磁束をφ−とすると、それぞれは下式で表される。
ここで、B+は、中心軸線35Aから距離rだけ離れた図5内の任意の場所における電流+Iによって生じる磁界の磁束密度であり、H+は同一の場所における磁界強度である。B−は、中心軸線35Eから距離rだけ離れた図5内の任意の場所における電流−Iによって生じる磁界の磁束密度であり、H―は同一の場所における磁界強度である。また、μは送電コイル200が設置される環境の透磁率である。なお上式では、説明のために、電流+Iは中心軸線35Aを、電流−Iは中心軸線35Eを流れているものとして鎖交磁束φ+、及び鎖交磁束φ−を表している。
上記の2式から、受電コイル500を貫く全鎖交磁束φは下式で表される。
前述のように、距離r11とr22及び距離r12と距離r22は同一の距離である。そこで、r11=r22、r12=r22とすると、受電コイル500を貫く全鎖交磁束φは下式のように表される。
距離r11と距離r12は、送電コイル200の幅df(蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aと蓄電デバイス1Eの中心軸線35Eとの間の距離)、受電コイル500の左右方向の幅dr、及び蓄電デバイス1A、1Eの中心軸線35A、35Eと受電コイル500との上下方向の距離h2、換言すれば中心軸線35A、35Eを含む平面と受電コイル500を含む平面の間の距離h2によって定まる。ここで、中心軸線35Aは電線50L、51Lの中心軸線60L、61Lと一致しており、中心軸線35Eは電線50R、51Rの中心軸線60R,61Rと一致しているため、中心軸線35A、35Eと受電コイル500との上下方向の距離h2は、送電コイル200と受電コイル500との間の上下方向の距離h1と等しい。従って、r11、r12を算出すると、それぞれはおよそr11=13.3a、r12=39.3aである。この結果から、受電コイル500を貫く全鎖交磁束φは下式で表される。
<蓄電デバイス1の中心軸線と電線の中心軸線がずれている場合>
続いて、蓄電デバイス1A、1Eの中心軸線35A、35Eが、電線50L、51L、50R、51Rの中心軸線60L、61L、60R、61Rからがずれている場合について説明する。
はじめに、図5(b)を参照して蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aが電線50L、51Lの中心軸線60L、61Lから、電線の断面の半径の2/3の距離(2/3a)だけ下側にずれた位置にあり、蓄電デバイス1Eの中心軸線35Eが、電線50R、51Rの中心軸線60R,61Rから、電線の断面の半径の2/3の距離(2/3a)だけ下側にずれた位置にある場合に適用して以降の説明を行う。
この場合、蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aと受電コイル500との間の上下方向の距離h2は、半径aを基準としておよそ14aである。このため、中心軸線35Aと受電コイル500の左側の端部までの距離r11はおよそ14.3a、中心軸線35Aと受電コイル500の右側の端部までの距離r12はおよそ39.3aとなる。このため、この場合における受電コイル500を貫く全鎖交磁束φ1は下式の様に表される。
続いて、中心軸線35Aが電線50L、51Lの中心軸線60L、61Lから半径aの距離だけ下側にずれた位置あり、中心軸線35Eが電線50R、51Rの中心軸線60R,61Rから半径aの距離だけ下側にずれた位置にある場合について説明を行う。
この場合には、蓄電デバイス1Aの中心軸線35Aと受電コイル500との間の上下方向の距離h2は、半径aを基準としておよそ14.3aである。このため、中心軸線35Aと受電コイル500の左側の端部までの距離r11は、およそ14.7a、中心軸線35Aと受電コイル500の右側の端部までの距離r12は、およそ39.4aとなる。このため、この場合における受電コイル500を貫く全鎖交磁束φ2は下式の様に表される。
即ち、蓄電デバイス1A及び蓄電デバイス1Eの配置位置が、電線50L、51L、50R、51Rの中心軸線60L、61L、及び中心軸線60R,61Rからずれたとしても、蓄電デバイス1A、1Eの中心軸線35A,35Eが、それぞれの電線の断面の範囲内にある場合には、受電コイル500を貫く全鎖交磁束の変化は、中心軸線35A,35Eが、それぞれ中心軸線60L、61L及び中心軸線60R,61Rと一致している場合と比較して数%であり、給電効率に及ぼす影響は少ないと言える。
上記の構成からなる蓄電デバイス1によれば、接続部10と接続部11の間に、電流の流れる方向に長い棒状(立方体形状)の蓄電部3が設けられている。このため、電線の端部を接続部10、及び接続部11に接続するだけで、例えば送電コイル200を構成する電線の間に容易にコンデンサを設けることができる。またこの際に、接続のための複雑な配線設備を設けたり、配線スペースが必要になったりすることはない。また、蓄電デバイス1は、電線に流れる電流の方向と直交する方向に延出する部分がない。このため、電線の間に配置しても、蓄電デバイス1を流れる電流が、電線を流れる電流の方向と異なる方向に拡散して広がることはない。先行技術では、送電コイルに設けられたコンデンサが電線に流れる電流の方向と直交する方向に延びているため、コンデンサが設けられた部分において、受電コイルとコンデンサ部分に流れる電流とのギャップが広がってしまい、給電効率が低下してしまうという問題が生じていた。一方、本発明に係る蓄電デバイス1を非接触給電装置の送電コイル200に用いれば、蓄電デバイス1を流れる電流が受電コイル500から大きく離れて流れることはないため、蓄電デバイス1を設けた部分において給電効率が低下することのない、給電効率のよい送電コイル200を提供することが可能となる。
また、本発明に係る蓄電デバイス1では、蓄電デバイス1を電線に接続した際に、蓄電部3の中心軸線35が、接続された電線の断面の内側にある様に蓄電部3が配置される。このため、蓄電デバイス1を流れる電流の経路が、電線を流れる電流の経路から大きくずれて流れることが防がれる。このため、蓄電デバイス1が設けられた箇所で給電効率が低下してしまうことが防がれて、給電効率のよい非接触給電装置を提供することが可能となる。なお、本発明に係る蓄電デバイス1は、先行技術の様に電流が受電コイル500から離れて流れる様な延出した部分はないため、仮に中心軸線35が電線の断面の外側となる様に配置されたとしても、先行技術のコンデンサを用いた送電コイルの様に給電効率が低下することはない。
また、蓄電デバイス1の蓄電部3の断面の所定方向の長さ、即ち断面の上下、左右方向の長さは、蓄電デバイス1に接続される電線の直径と略同一、具体的には電線の直径の2倍の長さとなっている。このため、蓄電デバイス1を流れる電流は、蓄電デバイス1に接続された電線の電流の経路の一定の距離の範囲内で流れることになり、電線を流れる電流の方向と異なる方向に大きく拡散して広がることはない。従って蓄電デバイス1を非接触給電装置の送電コイル200に用いれば、蓄電デバイス1を設けた部分において給電効率が大きく低下することのない、さらに給電効率のよい送電コイル200を提供することが可能となる。
また、蓄電部3の断面は、矩形形状をしている。このため、蓄電デバイス1を流れる電流の経路は、蓄電デバイス1に接続された電線の経路から大きく外れて広がって流れることなく、同一の経路の範囲で流れる。このため、蓄電デバイス1を用いた非接触給電装置の送電コイル200において、蓄電デバイス1を設けた部分において電流が広がって流れることはなく、給電効率が低下してしまうことが効果的に防がれる。このため、更に給電効率のよい送電コイル200を提供することが可能となる。
また、蓄電部3の断面は、蓄電デバイス1に接続される電線の断面と同様の円形とすれば、蓄電デバイス1を流れる電流の経路は、蓄電デバイス1に接続された電線の経路から外れて広がって流れることなく、同一の経路の範囲で流れる。このため、蓄電デバイス1を用いた非接触給電装置の送電コイル200において、蓄電デバイス1を設けた部分において電流が広がって流れることはなく、給電効率が低下してしまうことが効果的に防がれる。このため、更に給電効率のよい送電コイル200を提供することが可能となる。
また、蓄電デバイス1の蓄電部3は、電流の流れる方向に長い棒状の形状をしているため、蓄電デバイス1の外装2の大きさや形状を、接続される電線に近い大きさの統一した形状とすることができる。即ち、蓄電デバイス1の形状を、電線を配置する際に必要となる空間の内側で、設置可能な形状とすることができる。このため、蓄電デバイス1を配置するために特別な施工を行う必要がなく、送電コイル200が配置される任意の場所に設けることが可能な蓄電デバイスを提供することができる。そして、その様な蓄電デバイス1を用いることで、例えば送電コイル200の共振調整のために必要なコンデンサ容量を、送電コイル200の任意の場所に分散して設けることが容易となる。
図6(a)を参照して具体的に説明すると、従来のコンデンサを用いた送電コイル600では、コンデンサ610が一定の大きさを有しており、また給電効率低下の原因となるため、その配置場所は制限されていた。一方、本発明に係る蓄電デバイス1では、任意の場所に設置可能で、給電効率が低下してしまう畏れもないことから、複数の蓄電デバイス1を送電コイルの複数の箇所に設けて、送電コイルに必要なコンデンサを分散して配置することができる。
また、本発明にかかる蓄電デバイス1を用いて送電コイルを構成すれば、例えば移動車両の軌道の変更等の理由によって、送電コイルの長さを変更する場合の作業も容易に行うことができる。具体的に説明すると、従来のコンデンサを用いて構成した送電コイル600では、そのコイルの長さを変更した場合には、リアクタンスが変更となるため、コンデンサ610を、長さが変更された送電コイル620のリアクタンスに応じた静電容量のコンデンサ630に交換する必要があった(図6(a)、図6(b)参照。)。一方、図1(a)に示す様に、複数の蓄電デバイス1と電線を接続して構成した送電コイル200であれば、送電コイルの長さに応じ、電線及び蓄電デバイス1を追加、あるいは取り除きをするだけの作業で、送電コイルの長さを容易に変更することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態では本発明に係る蓄電デバイス1が、電気で駆動する移動車両に電力を供給する非接触給電装置の送電コイルに用いられた例に適用して説明を行ったがこれに限定される訳ではない。例えば、蓄電デバイス1を、工場などの屋内にて物資を搬送する搬送システムに用いられる非接触給電装置の送電コイルに用いてもよい。あるいは、非接触給電装置以外の装置やシステムにて用いられる他の公知の電気回路に用いてもよい。また、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。