以下、本発明による植物栽培システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による植物栽培システムでは、植物を保持している移動体を水路に浮かせることによって、容易に移動させることができるものである。
図1は、本実施の形態による植物栽培システム1の構成を示す、環境調整室15を透視した透視平面図であり、図2A〜図2Cは、移動体16の移動及び浮き沈みについて説明するための、植物栽培システム1の縦断面図である。なお、図1では、説明の便宜上、植物を省略している。図3A,図3Bは、第1及び第2の水路11,12における第1及び第2のフロート16c,16dの浮き沈みについて説明するための図である。図4A,図4Bは、浸漬槽13における移動体16の浮き沈みについて説明するための図である。なお、説明の便宜上、図1における右側を「前」、左側を「後」、上側を「左」、下側を「右」と呼ぶことがある。
本実施の形態による植物栽培システム1は、第1の水路11と、第2の水路12と、浸漬槽13と、貯留槽14と、環境調整室15と、移動体16と、空気供給部17と、移動手段18とを備える。
第1及び第2の水路11,12は、等間隔に設けられており、浸漬槽13に繋がっている。第1及び第2の水路11,12と浸漬槽13とが繋がっているとは、両者の間で液体及び移動体16が自由に移動することができことであってもよい。第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13が繋がっていることによって、それらの液面の高さは同じになる。第1及び第2の水路11,12は、それぞれ後述する第1及び第2のフロート16c,16dが浮かぶ程度の短手方向の長さ、及び深さを有していることが好適である。その短手方向の長さは限定されるものではないが、例えば、10センチメートルから80センチメートル程度であってもよい。第1及び第2の水路11,12の深さは限定されるものではないが、例えば、20センチメートルから60センチメートル程度であってもよい。第1及び第2の水路11,12の長手方向の長さは限定されるものではないが、例えば、10メートルから100メートル程度であってもよい。第1及び第2の水路11,12は、貯留槽14の幅(左右方向の長さ)程度の間隔をあけて平行に設けられていてもよい。また、本実施の形態では、第1及び第2の水路11,12が屋外に存在し、浸漬槽13が屋内に存在する場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。第1及び第2の水路11,12が屋内に存在してもよく、浸漬槽13が屋外に存在してもよい。
浸漬槽13には、植物3を浸漬するための液体が貯留される。その植物3の浸漬は、植物3についている害虫を駆除するために行われる。害虫の駆除は、例えば、殺虫であってもよく、害虫を植物3から除去することであってもよい。植物3は、例えば、レタス、ほうれん草、春菊、水菜、キャベツ等の食用の植物であってもよい。害虫は、例えば、アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、コナガムシ等であってもよい。浸漬槽13は、第1及び第2の水路11,12と繋がっているため、浸漬槽13の液体は、第1及び第2の水路11,12の液体と同じものであってもよい。その液体は、例えば、水であってもよい。本実施の形態では、浸漬槽13が環境調整室15内に設けられている場合について主に説明する。浸漬槽13に貯留される液体の温度は、調整されてもよく、または、そうでなくてもよい。浸漬槽13の液体の温度調整が行われる場合に、その液体の温度は、例えば、調整前よりも高くされてもよく、または、低くされてもよい。なお、図2A等で示されるように、通常、浸漬槽13の方が、第1及び第2の水路11,12よりも深くなる。浸漬槽13は、移動体16で保持されている植物3を完全に液中に沈められるだけの深さを有していることが好適だからである。浸漬槽13の深さは限定されるものではないが、例えば、40センチメートルから1メートル程度であってもよい。浸漬槽13の奥行き(前後方向の長さ)は限定されるものではないが、例えば、10メートルから100メートル程度であってもよい。浸漬槽13の奥行きは、例えば、第1及び第2の水路11,12の長手方向の長さと同じであってもよい。そのようにすることで、第1及び第2の水路11,12に複数の移動体16が存在する場合であっても、そのすべての移動体16を、浸漬槽13に、すなわち環境調整室15に入れることができることになる。浸漬槽13の幅(左右方向の長さ)は限定されるものではないが、例えば、1メートルから10メートル程度であってもよい。
貯留槽14は、第1及び第2の水路11,12の間に設けられ、植物3に供給される液体が貯留される。したがって、移動体16が第1及び第2の水路11,12に浮かんでいる場合に、貯留槽14は、移動体16の下方側に位置することになり、移動体16の保持している植物3に液体を供給することができる。なお、貯留槽14において貯留されている液体は、例えば、水であってもよく、培養液であってもよい。培養液は、植物3の生長に役立つものであり、例えば、有機肥料や化学肥料等を水などの溶媒に溶解させたものであってもよい。なお、図3A等で示されるように、例えば、貯留槽14は、第1及び第2の水路11,12よりも浅くてもよい。浅い貯留槽14に培養液を入れる場合に、高価な培養液の量を少なくできるというメリットがある。貯留槽14の深さは限定されるものではないが、例えば、10センチメートルから40センチメートル程度であってもよい。貯留槽14の長手方向(前後方向)の長さは、第1及び第2の水路11,12の長手方向の長さと同程度であることが好適である。貯留槽14の長手方向の長さは限定されるものではないが、例えば、10メートルから100メートル程度であってもよい。貯留槽14の短手方向の長さは限定されるものではないが、例えば、60センチメートルから8メートル程度であってもよい。
また、貯留槽14において、波を起こすようにしてもよい。そのように貯留槽14において波が起こされることによって、植物3の根部が波のない液面よりも上方に存在したとしても、その根部に波によって液体を供給することができるようになる。また、夏場には、植物3の根部に波によって液体の飛沫がかかることによって、植物3の根部を冷却する効果も得られる。また、波によって貯留槽14の液体に酸素を供給することもできる。貯留槽14において波を起こす場合には、植物栽培システム1は、貯留槽14において波を起こす造波装置をさらに備えていてもよい。その造波装置については、例えば、特許4029350号公報を参照されたい。
第1及び第2の水路11,12、浸漬槽13、貯留槽14はそれぞれ独立して、例えば、地面を掘って設けられた溝や槽であってもよく、地面などに載置された容器や槽であってもよい。本実施の形態では、第1及び第2の水路11,12、浸漬槽13、貯留槽14のすべてが、地面を掘って設けられたものである場合について主に説明する。このように、地面を掘って設けられた浸漬槽13等を用いることによって、例えば、夏場には液温の上昇を抑制することができ、また、冬場には液温の低下を抑制することができる。
環境調整室15は、植物3の栽培環境を調整するための室である。この環境調整は、例えば、日射量や、温度、湿度等を調整することであってもよい。環境調整室15は、例えば、日射を遮るように、または日射を低減するように構成されていてもよい。植物3は、光合成の後に日射を遮る環境に置かれることによって生長が促進されることになる。したがって、例えば、日中に1,2回程度、移動体16を日射量の低減された環境調整室15に取り込むようにしてもよい。また、環境調整室15内において、例えば、LED等による照明を行ってもよい。また、環境調整室15では、例えば、暖房や冷房を行ってもよい。夏場においては、例えば、外気よりも温度の低い環境調整室15に移動体16を取り込むことによって、植物3を高温障害から守ることができる。また、冬場においては、例えば、外気よりも温度の高い環境調整室15に移動体16を取り込むことによって、植物3を低温障害から守ることができる。また、環境調整室15では、湿度の調整(例えば、加湿や除湿等)を行ってもよい。温度や湿度の調整を行う場合には、環境調整室15は、内部と外部との間での空気の移動が低減されるように、全体が囲われていることが好適である。なお、図2Aで示されるように、環境調整室15の入り口には、シャッター15aが存在し、植物3を環境調整室15に取り入れる場合には、図2Bで示されるように、シャッター15aを巻き上げるようにしてもよい。このように、シャッター15aなどの開閉部を有していることによって、例えば、環境調整室15において温度や湿度の調整を行っている場合に、調整された空気が外部に漏れることを低減できるようになる。環境調整室15は、内部に浸漬槽13が存在するため、浸漬槽13と同程度か少し大きい程度の大きさであることが好適である。
移動体16は、植物3を保持した状態で第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13を移動するものであり、植物3を保持する保持部材16aと、第1のフロート16cと、第2のフロート16dとを備える。
保持部材16aは、例えば、植物3を保持するための貫通孔16bが設けられたパネル状のものである。なお、上面に植物3を保持するための貫通孔16bが設けられている、植物3に供給される液体が貯留されるボックス状の保持部材については後述する。貫通孔16bによって植物3が保持されている場合に、植物3の葉茎部は、保持部材16aの上方に位置し、植物3の根部は、下面側から突出することになる。なお、保持部材16aに設けられる貫通孔16bの個数は問わない。保持部材16aの大きさと、植物3の大きさに応じて適宜、決められることが好適である。
パネル状の保持部材16aは、例えば、板状の部材であってもよく、網状の部材であってもよい。保持部材16aが網状の部材である場合であっても、植物3を保持している際や移動時などに、変形しない程度の強度を有していることが好適である。保持部材16aを液中に沈める観点からは、保持部材16aは、上下方向の通水性を有するものであることが好適である。そのため、保持部材16aが板状の部材である場合には、保持部材16aに複数の上下方向の孔が設けられていてもよい。
パネル状の保持部材16aの材質は限定されるものではないが、例えば、樹脂、木等であってもよい。より具体的には、樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等であってもよい。移動体16が屋外で用いられる場合には、耐候性を有する樹脂が好適である。保持部材16aの奥行き(第1及び第2の水路11,12に移動体16が存在する場合における前後方向の長さ)は特に限定されるものではないが、20センチメートルから5メートル程度であってもよい。なお、奥行きが大きい場合には植物3の収穫が困難になるため、奥行きは2メートル以下であることが好適であり、1メートル以下であることがより好適である。保持部材16aの幅(第1及び第2の水路11,12に移動体16が存在する場合における左右方向の長さ)は特に限定されるものではないが、80センチメートルから9メートル程度であってもよい。保持部材16aの上下方向の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、1センチメートルから10センチメートル程度であってもよい。
第1及び第2のフロート16c,16dは、それぞれ保持部材16aに設けられている。なお、第1及び第2のフロート16c,16dが保持部材16aに設けられているとは、保持部材16aと、第1及び第2のフロート16c,16dとが、直接的にまたは他の部材を介して間接的に固定されていることであってもよい。第1及び第2のフロート16c,16dは、保持部材16aの左右方向の端部に設けられていることが好適である。本実施の形態では、保持部材16aの両端側(図1では、上下端側)において、保持部材16aの下面側に、第1及び第2のフロート16c,16dが下方に突出するように設けられている場合について主に説明する。第1及び第2のフロート16c,16dの前後方向の長さは、例えば、保持部材16aの前後方向の長さと同程度であってもよく、または、そうでなくてもよい。
第1及び第2のフロート16c,16dは、それぞれ第1及び第2の水路11,12に浮かべられるものである。したがって、第1及び第2のフロート16c,16dの左右方向の長さは、第1及び第2の水路11,12の短手方向の長さよりも小さいことが好適である。第1及び第2のフロート16c,16dによって、移動体16が第1及び第2の水路11,12に浮かぶことによって、移動体16は、第1及び第2の水路11,12の長手方向に少ない力で移動できるようになる。第1及び第2のフロート16c,16dの高さは限定されるものではないが、例えば、20センチメートルから50センチメートル程度であってもよい。
第1及び第2のフロート16c,16dは、第1及び第2の水路11,12の液体に浮かぶために、例えば、比重の小さい材料(例えば、ポリスチレン樹脂の発泡体等)によって構成されていてもよく、空気が貯まる内部空間を有しており、その内部空間に空気が貯められることによって、液体に浮かんでもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。空気の貯まる内部空間を有している第1及び第2のフロート16c,16dは、例えば、直方体形状や、開口部の閉じられたパイプ形状などのものであってもよい。本実施の形態では、第1及び第2のフロート16c,16dが直方体形状のものである場合について主に説明する。第1及び第2のフロート16c,16dが、空気の貯められる内部空間を有しており、その内部空間に空気を出し入れできる場合において、内部空間への空気の出し入れは、バルブ等を介して行われてもよく、または、そうでなくてもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明し、前者の場合については後述する。
図5は、移動体16を正面から見た、空気の貯まる内部空間16eを有している第2のフロート16dを示す縦断面図である。図5において、第2のフロート16dは、後述する空気供給部17によって供給された空気を内部空間16eに取り込むための下方側に開口した開口部16fと、内部空間16eの空気を排出するための空気孔16gとを有している。なお、空気孔16gからは、図5中の矢印で示されるように、内部空間16eからの空気が抜けることになる。空気供給部17から空気が供給されている場合には、その空気が開口部16fから内部空間16eに取り込まれることによって、内部空間16eの空気が増えることになる。また、その空気の供給時には、開口部16fから内部空間16eに入る空気の量が、空気孔16gから抜ける空気の量よりも多くなるように、空気孔16gの大きさが調整されているものとする。その結果、第1及び第2のフロート16c,16dに空気供給部17から空気が供給されている場合には、内部空間16eの空気7の量が増えることになり、図5で示されるように、移動体16が液面に浮かぶことになる。例えば、移動体16の移動時には、そのようにして移動体16が液面に浮かぶようにしてもよい。一方、空気の供給が止められると、内部空間16eの空気7が徐々に空気孔16gを介して抜けることになり、内部空間16eに液体5が入ってくることになる。その結果、移動体16は、液中に沈むことになる。したがって、例えば、植物3の害虫駆除時には、浸漬槽13に存在する移動体16の第1及び第2のフロート16c,16dへの空気の供給が停止され、空気孔16gから空気7が排出されることによって移動体16が液中に沈んでもよい。
なお、開口部16fの下端には、重り16hが設けられていてもよい。その重り16hが設けられていることによって、移動体16の重心を低くすることができ、移動体16がひっくり返ることを防止することができる。その重りとしては、例えば、ステンレス等の比重が大きく、さびにくい材料が用いられることが好適である。なお、第1のフロート16cも、第2のフロート16dと同様の構成を有しており、その説明を省略する。
また、開口部16fは、図6A,図6Bで示されるように、下方に向かって広がるように漏斗状に形成されていてもよい。図6Aは、移動体16を正面から見た縦断面図であり、図6Bは、移動体16を側面からみた縦断面図である。図6A,図6Bにおいて、第2のフロート16dは、下端に漏斗状部材16iを有している。その漏斗状部材16iの下方側では、開口部16fの側面が広がるようにテーパー状に形成されている。このように、開口部16fが下方に広がるように漏斗状に形成されることによって、開口部16fの上端での水平方向の面積が小さくなるため、移動体16が揺れたり、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13において波が起こったりしても、内部空間16eの空気7が開口部16fから外部に漏れることを効果的に抑制することができる。一方、開口部16fの下端での水平方向の面積が大きくなるため、空気供給部17から供給された空気を効率よく内部空間16eに取り込むことができる。なお、漏斗状部材16iは、比重の大きい材料で構成され、重りを兼ねるようにしてもよい。
また、第1及び第2のフロート16c,16dには、図7で示されるように、空気量調整孔16jが設けられてもよい。図7において、空気孔16gよりも下方側の位置に、内部空間16eの空気を外部に排出するための空気量調整孔16jが設けられている。この空気量調整孔16jは、空気孔16gとは異なり、空気供給部17によって供給される空気の量よりも多くの空気を排出できるように構成されていることが好適である。したがって、図7で示されるように、空気量調整孔16jが設けられている場合には、内部空間16eにおける空気7の下端が、空気量調整孔16jの位置となる。そのため、空気供給部17によって空気が供給されている場合であっても、第1及び第2のフロート16c,16dの内部の空気量を一定に調整することができるようになる。空気量調整孔16jの上下方向の位置は、内部空間16eにおける上端から空気量調整孔16jの位置までの空気7の量が、所望の浮力を生じる量となるように決められることが好適である。このように、内部空間16eにおいて空気7が下端まで達しないようにすることによって、移動体16の重心が高くなることを防止でき、移動体16を安定化させることができる。
なお、後述するように、移動体16を浸漬槽13において沈めることができるようにするため、保持部材16a、並びに第1及び第2のフロート16c,16dは、第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間16eに液体が入っている場合に、全体としての比重が液体の比重(例えば、1など)を超えることによって液中に沈み、内部空間16eに空気を取り込んだ場合に、全体としての比重が液体の比重よりも小さくなることによって、液面に浮かぶようになっていることが好適である。
空気供給部17は、第1及び第2の水路11,12の液中において、また、浸漬槽13の液中において空気を供給する。空気供給部17は、空気を供給するポンプ17aと、ポンプ17a及び散気管17cに接続され、ポンプ17aから供給される空気を散気管17cに案内する導管17bと、液中において空気を放出する散気管17cとを有する。散気管17cは、第1及び第2の水路11,12に配置されていると共に、移動体16が浸漬槽13に存在する場合に、第1及び第2のフロート16c,16dが通過する箇所に配置されていることが好適である。散気管17cは、第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13の底部に配置されることが好適である。また、図1等では、ある散気管17cが、第1の水路11から浸漬槽13まで延びており、別の散気管17cが第2の水路12から浸漬槽13まで延びている場合について示しているが、そうでなくてもよい。3個以上の散気管17cが、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13に配置されていてもよい。ポンプ17aからは、圧縮空気が散気管17cに向けて出力されてもよい。また、ポンプ17aを停止させた際の逆流を防止するため、導管17b等の位置に逆流防止のためのバルブが設けられてもよい。散気管17cは、例えば、セラミックなどの多孔質の管であってもよく、または、樹脂や金属などの管に複数の散気孔が設けられたものであってもよい。
移動手段18は、移動体16を第1及び第2の水路11,12に沿って移動させ、浸漬槽13においても、移動体16を前後方向に移動させる。すなわち、移動手段18は、移動体16を第1及び第2の水路11,12と浸漬槽13との間で移動させる。
移動手段18が移動体16を移動させる方法は問わない。例えば、図1等で示されるように、移動手段18は、移動体16に接続されたロープ18aを巻き取ることによって移動体16を移動させてもよい。その場合には、移動手段18は、例えば、図1で示されるように、移動体16に繋がれたロープ18aと、ロープ18aが巻き取られるロープ巻き取り輪18bと、ロープ巻き取り輪18bを回転させるための回転軸18cと、回転軸18cを回転させる駆動手段18dとを備えていてもよい。なお、回転軸18cは、図示しない軸受けによって支持されてもよい。ロープ18aは、例えば、繊維状のものであってもよく、または、ワイヤであってもよい。また、図1では、移動体16の前側及び後側の両方において、ロープ18aを巻き取るように構成されている。したがって、例えば、移動体16を第1及び第2の水路11,12から浸漬槽13側(前方側)に移動させる場合には、浸漬槽13側の移動手段18において、駆動手段18dを駆動してロープ18aを巻き取るようにすればよい。その際には、第1及び第2の水路11,12側の移動手段18は、ロープ18aが自由に繰り出されるようにフリーにされていてもよく、浸漬槽13側の移動手段18と連動して、徐々にロープ18aを繰り出すように駆動されてもよい。移動体16を、浸漬槽13から第1及び第2の水路11,12側(後方側)に移動させる場合には、上記説明とは逆の操作を行えばよいことになる。
また、移動手段18は、上記以外の構成であってもよいことは言うまでもない。例えば、移動手段18は、移動体16に設けられていてもよい。移動体16に設けられた移動手段18は、例えば、空中または液中に配置されたプロペラと、そのプロペラを回転させる駆動手段とを備えたものであってもよい。その場合には、プロペラを回転させることによって、移動体16が第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13において移動することになる。また、移動手段18は、第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13において液体の流れを造ることによって、移動体16を移動させてもよい。その場合には、移動手段18は、例えば、造波装置等であってもよい。
次に、本実施の形態による植物栽培システム1の使用方法について説明する。
まず、移動体16で保持された植物3に日光を当てる場合には、移動体16が第1及び第2の水路11,12に存在するときに空気供給部17からの空気の供給を停止し、図3Bで示されるように、パネル状の保持部材16aの底面が、第1及び第2の水路11,12と貯留槽14との間の地面、または貯留槽14の枠部分によって支持されるようにしてもよい。その際には、植物3の根部が、貯留槽14の培養液を吸い上げることができるようになっていることが好適である。なお、この場合には、移動手段18において、ロープ18aを緩めて、移動体16が下方側に移動できるようにしてもよい。
次に、第1及び第2の水路11,12から浸漬槽13に移動体16を移動させる方法について説明する。そのような移動は、例えば、夏場の日光から植物3を守るためや、冬場の寒さから植物3を守るため、強風や大雨等の悪天候から植物3を守るために行われてもよく、または、害虫駆除のために行われてもよい。
移動体16を移動させる場合には、空気供給部17からの空気の供給を開始させる。すると、空気供給部17によって供給された空気が、第1及び第2のフロート16c,16dの開口部16fから内部空間16eに入り、第1及び第2のフロート16c,16dの浮力が大きくなって、図2A,図3Aで示されるように、第1及び第2の水路11,12において、移動体16が液面に浮かぶことになる。そのような状態で、環境調整室15のシャッター15aを開けて、浸漬槽13側の移動手段18がロープ18aを巻き取ることによって、移動体16は、浸漬槽13側に移動し、図2B,図4Aで示されるように、環境調整室15内の浸漬槽13に入ることになる。
なお、移動時には、植物3の根部が貯留槽14の液面から上に出るようにしてもよい。そのため、例えば、移動体16が液面に浮かんだ際には、植物3の根部が液面より上になるように設計されていてもよく、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13の液面を上昇させること、及び/または、貯留槽14の液面を下降させることによって、植物3の根部が液面より上になるようにしてもよい。そのように、根部が貯留槽14の液面から上に出るようにすることによって、移動時の抵抗を低減することができ、より小さな力で移動させることができるようになる。また、植物3の根部に貯留槽14内のゴミなどが絡むことを防止することができる。また、移動体16が環境調整室15に入る際に、貯留槽14と浸漬槽13の間の地面、または貯留槽14の枠部分に当たる根部が少なくなるように、または根部が当たらなくなるようにすることもできる。根部が貯留槽14の枠部分などに当たらないようにするため、例えば、植物3の根部が貯留槽14の上端よりも上方となるように、移動体16が上方に移動されてもよい。
移動時に植物3の根部が液面から上に出ている場合には、根部の乾燥を防止するため、例えば、貯留槽14において、波を起こして液体の飛沫が根部にかかるようにしてもよく、移動の途中において、例えば、移動体16を下方に移動させること、及び/または、貯留槽14の液面を一時的に高くすることによって、根部に液体を供給してもよい。移動体16を下方に移動させることは、例えば、空気供給部17による空気の供給を一時的に停止させることによって行われてもよく、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13の液面の高さを一時的に下げることによって行われてもよい。
移動体16が浸漬槽13に入った後に、シャッター15aを閉め、空気供給部17による空気の供給を停止し、第1及び第2の水路11,12側の移動手段18と、浸漬槽13側の移動手段18とのそれぞれにおいて、ロープ18aを緩める。すると、移動体16の第1及び第2のフロート16c,16dにおいて、空気孔16gから内部空間16eに貯められていた空気が徐々に抜け、図2C,図4Bで示されるように、浸漬槽13において保持部材16aが沈められることによって、保持部材16aが保持している植物3が、浸漬槽13の液体に浸漬されることになり、その植物3の害虫が駆除される。効果的な害虫駆除が行われるために、植物3が液体に浸漬された状態で所定の時間、保たれることが好適である。その所定の時間は、例えば、5分から2時間程度であってもよい。
なお、植物3から離れて液中や液面を漂う害虫が、再度、植物3に付着しないようにするため、害虫は植物の断片等の他のゴミ等と一緒に取り除かれてもよい。害虫やゴミの除去は、例えば、浸漬槽13において液体を循環させ、その循環路に設けられた網やフィルタ等によって害虫やゴミを濾し取ることによって行われてもよい。
その害虫の駆除の後に、空気供給部17による空気の供給を再開すると、移動体16の第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間16eに空気が取り込まれ、図2B,図4Aで示されるように、移動体16が液面に浮かぶことになる。その後、所定の期間、移動体16が環境調整室15内において、浸漬槽13において浮かんでいるようにしてもよい。または、害虫の駆除の後に、浸漬槽13の液体を抜くことによって、植物3が空気中に出るようにしてもよい。例えば、複数の植物栽培システム1が並列して設けられている場合には、ある植物栽培システム1の浸漬槽13から抜かれた液体は、他の植物栽培システム1浸漬槽13に入れられてもよい。この場合には、再度、移動体16を移動させる際に、浸漬槽13に液体を入れると共に、空気供給部17による空気の供給を行うことによって、移動体16が液面に浮かぶようにするものとする。また、移動体16が浸漬槽13に存在する際に浸漬槽13の液体を抜く場合には、浸漬槽13中の移動体16によって保持されている植物3に供給するための培養液等を、植物3の根部まで浸漬槽13に入れるようにしてもよい。その培養液等は、例えば、貯留槽14等からポンプ等によって移動されてもよい。この場合には、移動体16の移動を開始する際に、培養液等を再度、貯留槽14等に戻すものとする。
移動体16を再度、第1及び第2の水路11,12に戻す際には、シャッター15aを開けて、第1及び第2の水路11,12側の移動手段18においてロープ18aを巻き取るようにすればよい。そのようにすることで、図2A,図3Aで示されるように、移動体16は、第1及び第2の水路11,12に戻ることになる。このように、空気供給部17や移動手段18を制御することによって、移動体16を移動させたり、移動体16を沈めたり浮かせたりすることができる。
なお、空気供給部17や移動手段18は、例えば、図示しない制御部によって自動的に制御されることによって動作してもよく、または、操作者による操作に応じて動作してもよい。
また、複数の植物栽培システム1が存在する場合には、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13の液面の上下は、他の植物栽培システム1の第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13との間で液体を移動させることによって行われてもよい。例えば、図3Bで示されるように、移動体16が第1及び第2の水路11,12において浮かんでいない場合には、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13に液体が入っていなくてもよいことになる。したがって、移動体16を移動させる際や、浸漬槽13において移動体16を浸漬させる際に、他の植物栽培システム1から液体を第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13に移動し、移動体16の移動や移動体16の浸漬が終了した後に、その液体を、移動体16の移動や浸漬を行う他の植物栽培システム1に移動するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態による植物栽培システム1によれば、第1及び第2のフロート16c,16dによって液面に浮かんだ移動体16を移動させることによって、より簡易な構成によって、少ない抵抗で移動体16を移動させることができるようになる。また、円筒コロなどのように細かい機構もないため、メンテナンス性がよいことになり、屋外での使用にも適していることになる。また、植物を培養液上に浮かばせるのではないため、大量の培養液を用意しなくてもよいというメリットもある。また、浸漬槽13において移動体16が沈むようにすることによって、保持部材16aで保持されている植物3を浸漬槽13の液体に浸漬することができ、害虫駆除を行うことができるようになる。浸漬槽13の液体に農薬が含まれていない場合には、より安全な方法によって害虫を駆除できることになる。また、第1及び第2のフロート16c,16dが、開口部16fと、空気孔16gとを有している場合には、空気供給部17による空気の供給を制御することによって、移動体16を容易に沈めたり、浮かせたりすることができるようになる。また、移動体16を環境調整室15内に移動させることによって、移動体16が保持している植物3を、例えば、夏の暑さや、冬の寒さ、また、大雨や強風などの悪天候から守ることもできるようになる。
なお、本実施の形態による植物栽培システム1は、上記の説明のものに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。以下、その変形例について説明する。
[ボックス状の保持部材]
本実施の形態では、移動体16の保持部材16aがパネル状のものである場合について主に説明したが、上記のように、移動体16の保持部材は、ボックス状のものであってもよい。図8Aは、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16を示す縦断面図であり、図8Bは、そのボックス状の保持部材16kの内部構造を示す縦断面図である。図8A,図8Bにおいて、ボックス状の保持部材16kは、上面が開口した中空の下部部材16mと、下部部材16mの開口部を閉じる上面板16nとを有している。下部部材16mの内部には、植物3に供給される液体が貯留される。その液体は、例えば、培養液であってもよく、水であってもよい。また、上面板16nには、植物3を保持するための貫通孔16bが設けられている。ボックス状の保持部材16kにおいては、植物3の根部は内部空間に収容される。このように、移動体16がボックス状の保持部材16kを有する場合には、第1及び第2の水路11,12の間に貯留槽14が存在しなくてもよい。
また、下部部材16m及び上面板16nは、例えば、断熱性のある発泡樹脂によって構成されてもよい。発泡樹脂の種類は問わないが、例えば、発泡スチロール樹脂や発泡ウレタン樹脂等であってもよい。また、下部部材16m及び上面板16nが断熱性を有していなくてもよい場合には、例えば、その他の樹脂や、木、金属等によって構成されてもよい。
また、ボックス状の保持部材16kは、内部に液体を挿入するための挿入口や、内部の液体を排出するための排出孔等を備えていてもよい。液体の挿入口は、例えば、上面板16nに設けられてもよく、または、他の箇所に設けられてもよい。また、液体の排出孔は、例えば、第1及び第2のフロート16c,16dの少なくとも一方の位置に設けられ、フロート16c,16dの少なくとも一方を介して、保持部材16kの内部の液体が、第1及び第2の水路11,12の少なくとも一方に排出されるようにしてもよい。また、液体の排出孔は、例えば、第1及び第2のフロート16c,16dとは異なる位置に設けられてもよい。その場合には、排出された液体を受ける水路が、第1及び第2の水路11,12とは別に設けられてもよい。ボックス状の保持部材16kを有する移動体16を移動させる際には、内部の液体を排出してから移動させるようにしてもよい。
ボックス状の保持部材16kを有する移動体16は、通常、浸漬槽13において沈めることは困難であるため、第1及び第2のフロート16c,16dは、内部空間の空気を出し入れできるものでなくてもよい。そのような第1及び第2のフロート16c,16dは、例えば、発泡スチロール樹脂や発泡ウレタン樹脂等の発泡樹脂のフロートであってもよく、開口部を有しない空気タンクであってもよい。
上記のように、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16を浸漬槽13において沈めない場合には、植物栽培システム1は、浸漬槽13を有していなくてもよい。その場合には、環境調整室15内にまで、第1及び第2の水路11,12が延びていてもよい。そして、環境調整室15の一部において、移動体16を反転させ、植物3を液中に浸漬することによって、害虫駆除を行ってもよい。そのような反転による害虫駆除については、例えば、特許3760412号公報等を参照されたい。
また、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16においても、移動体16を移動させない場合には、図3Bと同様に、第1及び第2のフロート16c,16d内の空気が減るようにすることによって、保持部材16kの底面が、第1及び第2の水路11,12の枠部分で支えられるようにしてもよい。一方、移動体16を移動させる場合には、第1及び第2のフロート16c,16d内に空気を挿入することによって、移動体16が第1及び第2の水路11,12において液面に浮かぶようにしてもよい。また、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16の第1及び第2のフロート16c,16dが、空気を出し入れできるものではない場合(例えば、発泡樹脂や密閉された空気タンクである場合)には、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを低くすることによって、移動体16が移動しないようにすることができ、また、液面の高さを高くすることによって、移動体16が移動できるようにすることができる。
また、ボックス状の保持部材16kの内部、すなわち根収容室には、保水材が収容されてもよい。その保水材は、例えば、発泡スチロールチップ、発泡ウレタンチップ、スポンジ状の小片、糸玉、紙片、繊維ネット、樹脂製ネット等であってもよい。
[連結部材]
上記実施の形態では、説明の便宜上、植物栽培システム1が1個の移動体16を有する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。図9で示されるように、植物栽培システム1は、複数の移動体16を有していてもよい。その場合には、各移動体16は、隣接する2個の移動体16を連結する連結機構20を有していてもよい。図10,図11を参照して、その連結機構20について説明する。図10は、連結機構20によって連結された2個の移動体16を示す平面図であり、図11は、連結機構20によって連結された2個の移動体16を示す側面図である。
連結機構20は、第1の連結部材21と、第2の連結部材22と、ボルト23と、ナット24とを有する。連結対象の2個の移動体16のうち、一方の移動体16に第1の連結部材21が設けられ、他方の移動体16に第2の連結部材22が設けられ、両者がボルト23及びナット24で連結されることによって、連結対象の2個の移動体16が連結されることになる。そのため、第1及び第2の連結部材21,22は、それぞれボルト23を通すためのボルト孔21a,22aを有している。
より具体的には、移動体16の保持部材16aにおける他の移動体16と対向する辺の一方(例えば、前方側の辺)に第1の連結部材21が設けられ、他方(例えば、後方側の辺)に第2の連結部材22が設けられてもよい。第1及び第2の連結部材21,22は、保持部材16aにおける左右方向(図10の上下方向)において、略同じ位置に設けられることが好適である。また、2個の隣接する移動体16が整列された場合に、ボルト孔21a,22aが平面視で同一位置となるように、第1及び第2の連結部材21,22は、上下方向にずれた高さで保持部材16aに固定されていることが好適である。そして、図10,図11で示されるように、隣接する2個の移動体16について、一方の移動体16の第1の連結部材21のボルト孔21aと、他方の移動体16の第2の連結部材22のボルト孔22aとが直線状に並ぶようにした状態で、ボルト孔21a,22aにボルト23を通し、ナット24を締めることによって、隣接する2個の移動体16を連結させることができる。
このようにして、複数の移動体16を連結させることによって、図9で示されるように、前方側または後方側の端の1個の移動体16を移動させることにより、複数の移動体16を一括して移動させることができる。また、隣接する移動体16が連結機構20によって連結されていることによって、その移動時に移動体16が左右方向にずれることを防止することもできる。
なお、ここでは、第1及び第2の連結部材21,22がボルト23及びナット24によって連結される場合について説明したが、両部材21,22は、ロープやリング状部材などのその他の部材によって連結されてもよい。
また、図10では、移動体16が、2個の連結機構20を有している場合について示しているが、連結機構20の個数は、1個であってもよく、3個以上であってもよい。また、図10,図11で示した連結機構20は一例であり、隣接する2個の移動体16を連結する他の連結機構が用いられてもよい。上記以外の連結機構としては、例えば、連結孔を有する連結部材と、その連結孔に係合するフックとを有する連結機構や、互いに係合する第1及び第2のフックを有する連結機構などを挙げることができる。
また、ここでは、パネル状の保持部材16aを有する移動体16が連結機構を備えた場合について説明したが、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16が連結機構を備えていてもよいことは言うまでもない。
[位置ずれ防止機構]
図9では、前方側または後方側の端の1個の移動体16を移動させることによって、複数の移動体16を一括して移動させる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、複数の移動体16を前方側に移動させる場合に、後方側の端の1個の移動体16をロープ18aで引っ張ることなどによって移動させることにより、複数の移動体16を一括して移動させることもできる。同様に、前方側の端の1個の移動体16を後方側に移動させることにより、複数の移動体16を一括して後方側に移動させることもできる。そのような場合には、隣接する2個の移動体16が連結されていなくてもよいことになる。例えば、後方側の端の1個の移動体16を前方側に移動させる場合には、後方側の移動体16によって前方側の移動体16を押すことになるため、移動体16が左右方向に位置ずれを起こし、第1及び第2のフロート16c,16dの一方が、第1及び第2の水路11,12の少なくとも一方の壁面に当たることによって、移動に対する抵抗になることも考えられる。そのため、移動体16は、第1及び第2の水路11,12上で隣接する2個の移動体16が、左右方向にずれることを防止するための位置ずれ防止機構を有していてもよい。なお、左右方向におけるずれを防止するとは、左右方向への位置ずれが実質的に防止できればよく、遊び程度の位置ずれは生じてもよい。
図12は、そのような位置ずれ防止機構の一例を示す図である。図12において、移動体16の保持部材16aにおける他の移動体16と対向する辺の一方(例えば、前方側の辺)に凸部25が設けられ、他方(例えば、後方側の辺)に凹部26が設けられてもよい。その凸部25及び凹部26によって、位置ずれ防止機構が構成されることになる。なお、凸部25及び凹部26は、図12で示されるように、2個の隣接する移動体16が整列された場合に、互いに係合する位置となるように設けられることが好適である。
このように、移動体16が位置ずれ防止機構を有することによって、例えば、後方側の端の1個の移動体16を前方側に移動させる場合に、隣接する移動体16において、凸部25と凹部26とが係合することになり、各移動体16が移動時に左右方向にずれることを防止でき、複数の移動体16を安定して移動させることができるようになる。
なお、図12では、移動体16が、凸部25及び凹部26を2個ずつ有している場合について示しているが、移動体16は、凸部25及び凹部26をそれぞれ1個有していてもよく、3個以上有していてもよい。
また、ここでは、互いに係合する凸部25及び凹部26によって、位置ずれ防止機構が構成される場合について説明したが、位置ずれ防止機構は、例えば、隣接する複数の移動体16において、他の移動体16と対向する保持部材16aの辺に磁石を埋め込むことによって構成されてもよい。また、上述した連結機構によっても位置ずれを防止することができるため、連結機構も、位置ずれ防止機構であると考えることもできる。
また、ここでは、パネル状の保持部材16aを有する移動体16が位置ずれ防止機構を備えた場合について説明したが、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16が位置ずれ防止機構を備えていてもよいことは言うまでもない。
[複数の保持部材を有する移動体]
上記実施の形態では、1個の移動体16が1個の保持部材16aを有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。1個の移動体16が、複数の保持部材16aを有していてもよい。その場合には、保持部材16aの位置によっては、植物3の収穫等が難しくなるため、移動体16において、保持部材16aが第1及び第2のフロート16c,16dに対して着脱可能に設けられていてもよい。なお、保持部材16aは、第1及び第2のフロート16c,16dに対して、直接的にまたは他の部材(例えば、枠体等)を介して間接的に着脱可能に設けられていてもよい。
図13A,図13Bを参照して、2以上の着脱可能な保持部材16aを有する移動体16について説明する。図13Aは、2以上の着脱可能な保持部材16aを有する移動体16を示す平面図であり、図13Bは、その移動体16を示す側面図である。
図13A,図13Bにおいて、パネル状の保持部材16aは、固定具31によって、第1及び第2のフロート16c,16dに着脱可能に固定されている。固定具31は、例えば、ボルトであってもよい。固定具31を外すことによって、保持部材16aを第1及び第2のフロート16c,16dから取り外すことができる。このような複数の着脱可能な保持部材16aを有する移動体16の前後方向の長さは限定されるものではないが、例えば、1メートルから30メートル程度であってもよい。
なお、図13A,図13Bで示される第1及び第2のフロート16c,16dは、開口部16fや空気孔16gを有しないものであってもよい。そのため、第1及び第2のフロート16c,16dは、内部空間と連通している導管32,34と、導管32,34にそれぞれ設けられたバルブ33,35とをそれぞれ有していてもよい。バルブ33,35は、例えば、手動バルブであってもよく、または、自動バルブであってもよい。後者の場合には、バルブ33,35は、例えば、電磁バルブ等であってもよい。
図13A,図13Bで示される移動体16を浸漬槽13において沈める場合には、バルブ33,35を開けて、導管34から液体を第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間に注入してもよい。液体の注入に応じて、内部空間の空気が導管32から外部に抜けることになる。そのようにすることで、第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間の空気の量が少なくなり、浮力が小さくなって、移動体16が沈むことになる。なお、液体の注入が終了すると、バルブ33,35は、閉じられることが好適である。この場合には、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13において、空気供給部17が設けられていなくてもよい。
また、図13A,図13Bで示される移動体16を浮かばせる場合には、バルブ33,35を開けて、導管32から空気を第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間に注入してもよい。空気の注入に応じて、内部空間の液体が導管34から外部に抜けることになる。そのようにすることで、第1及び第2のフロート16c,16dの内部空間の空気の量が多くなり、浮力が大きくなって、移動体16が浮かぶことになる。なお、空気の注入が終了すると、バルブ33,35は、閉じられることが好適である。
また、取り外しの対象となる保持部材16aを固定している固定具31を緩めて外すことによって、その保持部材16aを移動体16から取り外すことができ、植物3の収穫や、植物3の貫通孔16bへの固定等を容易に行うことができるようになる。取り外した保持部材16aを移動体16に取り付ける場合には、第1及び第2のフロート16c,16dの上面に保持部材16aを載置した後に、固定具31によって、その保持部材16aを第1及び第2のフロート16c,16dに対して固定すればよい。
なお、すべての保持部材16aを取り外した状況でも、第1及び第2のフロート16c,16dがばらばらにならないようにするため、第1及び第2のフロート16c,16dは、図示しない枠体等に固定されていてもよい。その場合には、例えば、保持部材16aは、その枠体等に固定されてもよい。
また、図13A,図13Bでは、第1及び第2のフロート16c,16dが開口部16fや空気孔16gを有さない場合について説明したが、第1及び第2のフロート16c,16dは、開口部16fや空気孔16gを有しているものであってもよい。その場合には、移動体16に、導管32,34や、バルブ33,35が設けられていなくてもよい。
また、移動体16が1個の保持部材16aを有する場合であっても、その保持部材16aが第1及び第2のフロート16c,16dに対して着脱可能に設けられていてもよく、第1及び第2のフロート16c,16dが、図13A,図13Bで示されるように、開口部16fや空気孔16gを有していないものであってもよい。
また、保持部材16aが着脱可能になっている場合であって、移動体16の浸漬槽13における浸漬を行わない場合(例えば、害虫駆除を保持部材16aの反転によって行う場合など)には、保持部材16aの第1及び第2のフロート16c,16dに対する固定は、ボルトなどに比べて簡単なものによって行われてもよい。移動時に保持部材16aが第1及び第2のフロート16c,16dに対してずれない程度の固定であればよいからである。そのため、例えば、保持部材16aの下面側に設けられた凹部と、第1及び第2のフロート16c,16dの上面側に設けられた凸部とが係合することによって、保持部材16aが固定されてもよい。その凹部と凸部は逆であってもよい。また、例えば、保持部材16aの下面側に設けられた磁石と、第1及び第2のフロート16c,16dの上面側に設けられた磁石との磁力によって、保持部材16aが第1及び第2のフロート16c,16dに着脱可能に固定されてもよい。
また、ここでは、第1及び第2のフロート16c,16dが、導管34及びバルブ35を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、第1及び第2のフロート16c,16dは、導管34及びバルブ35を有していなくてもよい。その場合には、第1及び第2のフロート16c,16dの下部(例えば、下面側等)に、液体の通過しうる孔が設けられていてもよい。第1及び第2のフロート16c,16dを浮かばせる場合には、内部空間に導管32から空気を注入することによって、第1及び第2のフロート16c,16dの下部に設けられた孔から、内部空間の液体が抜けることになる。一方、移動体16を沈める場合には、バルブ33を開けることによって、バルブ33から内部空間の空気が抜け、第1及び第2のフロート16c,16dの下部に設けられた孔から液体が内部空間に入ることになる。
また、ここでは、パネル状の保持部材16aを有する移動体16について説明したが、ボックス状の保持部材16kを有する移動体16についても同様であることは言うまでもない。
[液面の高さ調整]
第1及び第2の水路11,12が浸漬槽13と繋がっていない場合には、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを調整することができる。したがって、植物栽培システム1は、第1及び第2の水路11,12の液面の高さをそれぞれ変更することができる液面高さ調整部19を備えていてもよい。図14A〜図14Cは、液面高さ調整部19を有する植物栽培システム1を示す縦断面図である。図14A〜図14Cにおいて、液面高さ調整部19は、第1及び第2の水路11,12の一方から他方に液体を移動させるポンプ19aと、第1及び第2の水路11,12を繋ぐパイプ19bとを備える。ポンプ19aを動作させることによって、第1の水路11から第2の水路12に対して、または、第2の水路12から第1の水路11に対して、液体を移動させることができる。その結果、第2の水路12に対して、第1の水路11の液面を高くしたり(図14B)、第1の水路11に対して、第2の水路12の液面を高くしたり(図14C)することができる。
図14A〜図14Cでは、太陽の向きに応じて、植物3により多くの日光が当たるようにするため、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを変更して移動体16を傾ける場合について示しているが、その他の目的で移動体16を傾けてもよい。例えば、ボックス状の保持部材16kから内部の液体を排出するために、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを変化させて移動体16を傾けるようにしてもよい。
なお、図14A〜図14Cでは、第1及び第2の水路11,12の間で液体を移動させることによって、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを相対的に変化させる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、液体が貯留されるタンクと、第1及び第2の水路11,12との間で液体を移動させることによって、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを調整してもよい。その場合には、第1及び第2の水路11,12の液面の高さをそれぞれ独立して変化させることができる。
また、図14A〜図14Cで示されるように、第1及び第2の水路11,12の液面の高さを調整する場合には、移動体16が、ボックス状の保持部材16kを有することが好適であるが、そうでなくてもよい。移動体16は、パネル状の保持部材16aを有していてもよい。その場合には、第1及び第2の水路11,12の間に、貯留槽14が設けられていてもよい。
[保持部材に設けられる通水性を有する面状部材]
移動体16がパネル状の保持部材16aを有する場合に、その保持部材16aの下面側には、図15で示されるように、通水性を有する面状部材41が設けられていてもよい。図15は、面状部材41が設けられたパネル状の保持部材16aの縦断面図である。面状部材41は、例えば、布などの繊維状のものであってもよく、網状のものであってもよく、複数の孔の設けられた板状部材であってもよく、通水性を有するその他のものであってもよい。その面状部材41は、植物3の根が通過可能な程度の孔や隙間を有していてもよく、または、根が通過できないようになっていてもよい。前者の場合には、面状部材41は、例えば、細い根は通過して、太い根は通過しない程度の孔や隙間を有していてもよい。面状部材41が布などの繊維状のものである場合には、例えば、面状部材41の根部側の面に、フェルト状やスポンジ状の層が設けられてもよい。
面状部材41を有することによって、植物3の根部を保護することができると共に、移動体16を移動する際に、広がった根が抵抗になることも防止することができる。また、面状部材41を有さない場合には、貯留槽14に落ちたゴミなどが、移動体16の移動時に植物3の根部に絡むこともあり得るが、面状部材41が存在することによって、ゴミなどが根部に絡むことを防止することもできる。また、害虫駆除のために移動体16を反転させる場合に、植物3の根部がばらばらになることを防止でき、反転の操作性が向上することになる。また、植物3の根部が面状部材41とパネル状の保持部材16aとの間に広がった場合には、その広がった根部によって、移動体16の反転時に植物3が貫通孔16bから抜けることも防止することができる。
また、面状部材41は、植物3ごとに根部を区切る仕切りを有していてもよい。そのような仕切りが存在することによって、隣接する植物3の根部が絡まないようにすることができる。そのため、例えば、植物3の収穫時に、根部ごと収穫できるようになる。根部ごと収穫した場合には、根部を付けた状態で出荷することもでき、植物3をより長持ちさせることができるようになる。
なお、保持部材16aの下面側に面状部材41を設けた場合には、植物3の根部が下方に伸びることが妨げられ、根部が貯留槽14の液体を吸い上げにくくなることもある。そのため、例えば、面状部材41の下面側に、布などをぶら下げることによって、貯留槽14の液体が効率的に根部に供給されるようにしてもよい。また、貯留槽14において波を起こすことによって、液体が根部に供給されるようにしてもよい。
また、面状部材41として、金属製の網や、耐熱性を有する樹脂製の網などを用いた場合には、植物3の収穫後に網に付いた根に熱湯をかけることによって、網に付着した根を容易に除去することができるようになる。
[保持部材の下面側に吊り下げられる吸水性部材]
移動体16がパネル状の保持部材16aを有する場合に、その保持部材16aの下面側には、図16で示されるように、複数の吸水性部材42がぶら下げられてもよい。その吸水性部材42は、例えば、短冊形状であってもよく、紐形状であってもよく、その他の形状であってもよい。吸水性部材42が短冊形状や紐形状であることによって、植物3の根部の広がりが妨げられないようにすることができる。吸水性部材42は、柔軟性を有するものであることが好適である。植物3の根部を痛めないようにするためである。吸水性部材42は、例えば、織物、編物、不織布などの布状の部材であってもよく、網状の部材であってもよく、スポンジ状の部材であってもよく、紐状の部材であってもよい。吸水性部材42が短冊形状である場合に、その幅は限定されるものではないが、例えば、1センチメートルから10センチメートル程度であってもよい。また、吸水性部材42が紐形状である場合に、その直径は問わないが、例えば、1センチメートルから3センチメートル程度であってもよい。また、吸水性部材42の上下方向の長さは、移動体16が第1及び第2の水路11,12に存在する場合に、吸水性部材42の下端側が、貯留槽14の液面に到達する程度の長さであることが好適である。その長さは限定されるものではないが、例えば、10センチメートルから30センチメートル程度であってもよい。
吸水性部材42は、保持部材16aの貫通孔16bの周囲に少なくとも設けられていることが好適である。植物3の根部が吸水性部材42に触れるようになっていることが好適だからである。貫通孔16bの周囲以外の保持部材16aの下面側にも、吸水性部材42が設けられてもよい。その場合には、例えば、保持部材16aの下面側に均等に吸水性部材42が設けられてもよい。パネル状の保持部材16aの下面側に複数の吸水性部材42を設けることによって、植物3の根部に液体を供給することができるようになる。例えば、吸水性部材42によって、貯留槽14の液体を吸い上げることができるからである。また、吸水性部材42によって、植物3の根部を分散させ、根部がより多くの空気に触れるようにすることもできる。また、夏場には、吸水性部材42からの気化熱による冷却効果も得られることになる。
[その他]
第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13、貯留槽14には植物3の断片等のゴミが溜まりやすいため、ゴミを除去する機構を備えていてもよい。そのゴミを除去する機構は、第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13、貯留槽14の液体をオーバーフローで排出する位置に設けられた網やフィルタ等であってもよく、液体の循環路に設けられた網やフィルタ等であってもよく、第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13、貯留槽14の底部に設けられたゴミ溜めと、そのゴミ溜めに溜まったゴミを排出する排出機構とを有してもよく、その他の構成であってもよい。
また、第1及び第2の水路11,12の一端や、浸漬槽13の一端において植物3の収穫が行われる場合には、移動体16において保持されている植物3を茎等において切断する切断手段を備えていてもよい。また、植物3の根部を切断して利用する場合には、その植物3の根部を切断するための切断手段を備えていてもよい。
また、移動体16を第1及び第2の水路11,12から環境調整室15内に取り入れる際に、害虫駆除のために、液体を植物3に噴霧するようにしてもよい。その液体は、例えば、水や培養液、その他の害虫駆除や防虫に適した液体等であってもよい。
また、貯留槽14において、波を起こさない場合には、貯留槽14の液体に酸素を供給するため、貯留槽14の液体においてエアレーションを行ってもよい。貯留槽14の液体の酸素濃度の高いことが、植物3の生長には好適だからである。
また、上記実施の形態では、第1及び第2のフロート16c,16dが空気を出し入れ可能である場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。移動体16を浸漬槽13において浸漬させない場合には、第1及び第2のフロート16c,16dは、発泡樹脂や、空気を出し入れできない空気タンク等であってもよい。その場合には、植物栽培システム1は、空気供給部17を備えていなくてもよい。また、反転等によって植物3の浸漬を行う場合には、植物栽培システム1は、浸漬槽13を備えていなくてもよい。浸漬槽13が存在しない場合には、植物栽培システム1は、環境調整室15を有していてもよく、または、有していなくてもよい。前者の場合には、環境調整室15の内部まで、第1及び第2の水路11,12が延びていてもよい。
また、上記実施の形態では、空気供給部17による空気の供給が、第1及び第2の水路11,12並びに浸漬槽13において一括して行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。第1及び第2の水路11,12や浸漬槽13が複数の領域に分けられ、その領域ごとに空気の供給が行われるようにしてもよい。この場合には、移動体16が存在する領域のみにおいて、空気の供給が行われてもよい。このようにすることで、より容量の小さいポンプ17aを用いることができるようになる。また、空気を供給する領域の切り替えは、ポンプ17aから供給される空気の供給先をバルブ等によって切り替えることによって行われてもよい。
また、上記実施の形態では、移動体16が2個のフロートを有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。移動体16は、3個以上のフロートを有していてもよい。例えば、移動体16の右側に2個以上のフロートが設けられ、左側に2個以上のフロートが設けられてもよい。
また、貯留槽14において波を起こす場合に、植物3の生長に応じて、液面の高さを変更してもよい。例えば、植物3の根部がまだ短い場合には、液面の高さを高くして、波が根部に当たりやすいようにし、植物3の根部が長くなった場合には、液面の高さを低くして、根部が空気に触れやすいようにしてもよい。そのため、植物栽培システム1は、貯留槽14の液面の高さを調整するための調整部を備えていてもよい。
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。