JP6573232B2 - ガス圧接した鉄筋用のカプラーとこれを用いた鉄筋の連結方法 - Google Patents
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そして、例えば、高層建築、橋脚などにおいて、特に高層建築などにおいては、高強度の鉄筋を採用するケースが増えている。
ところが、このような高強度の鉄筋は、成分に炭素(C)が多く含有されていることから、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接部が脆化し、圧接終了後に自然放冷された鉄筋のガス圧接継手は、引張試験や曲げ試験、特に曲げ試験など、力が加わったときに、熱影響部破断(HAZ破断)する事例が多く見られる。このため、その改善が強く要望されていた。
(1):2本の鉄筋の端面同士を突き合わせガス圧接して、ふくらみを圧接部に形成させると共に;
内面後部に第1ストレート部を備え;前記第1ストレート部に隣接する内面中間部には外方に拡開するテーパー部を備え;前記テーパー部に隣接する内面前部には、前記第1ストレート部より内径が拡径され、かつ、雌ネジが形成されている第2ストレート部を備えた;外形が略円筒状の外側管と、
前記外側管の第2ストレート部に形成されている雌ネジに螺合する雄ネジを外面前部に備え;内面後部には、ストレート部を備え;前記ストレート部に隣接する内面前部には外方に拡開するテーパー部を備えた;外形が略円筒状の内側管と、
からなる、一部が内外二重管構造をなし、前記ふくらみを内包しうる構造を有するカプラーを用い、
前記2本の鉄筋を包囲するように、ガス圧接した後の鉄筋のふくらみを挟んで、左右のいずれかの側の位置に、前記外側管と前記内側管とをそれぞれ配置し;
前記ふくらみを跨いで前記外側管の雌ネジに前記内側管の雄ネジを螺入させ、前記外側管と前記内側管とは、前記外側管と前記内側管とにそれぞれ備えられているテーパー部の少なくとも一部分が、前記ふくらみの少なくとも一部分とそれぞれ接触するようにして結合させて一部が内外二重管構造をなすカプラーを形成・装着させる;
ことからなる、ガス圧接した鉄筋をカプラーを用いて連結する方法に関する。
(2):前記鉄筋が、異形鉄筋である、前記(1)に記載の方法に関する。
(3):前記外側管及び前記内側管が、その内面に、異形鉄筋の節と噛み合い可能な突起部をそれぞれ備えたものである、前記(2)に記載の方法に関する。
(4):カプラーを形成・装着させた後に、前記鉄筋と前記カプラーとの空隙に、グラウト剤を充填し固化させる、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法に関する。
また、本発明によれば、このカプラーを用いて、十分な結合強度(引張強度、曲げ強度)を有しつつ、鉄筋についてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部における破断(HAZ破断)、を有効に抑止した、鉄筋の連結方法と、が提供される。
さらに、本発明によれば、このカプラーを用いて、多大なエネルギーを必要とすることなく、むしろ少ないエネルギー量にて、しかも十分な結合強度(引張強度、曲げ強度)を有しつつ、鉄筋についてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部における破断(HAZ破断)、を有効に抑止した、鉄筋の連結方法、が提供される。
また、本発明は、第2に、前記カプラーを用いた鉄筋の連結方法に関するものである。
図1は、本発明のカプラー1の一態様を示す正面図であって、外側管11と内側管12とから構成されるカプラー1が、結合一体化されているときの状態を示す正面図である。
また、図2は、図1に示す本発明のカプラー1が、外側管11と内側管12とに分離されているときの状態を示す正面図である。
図3は、図2の縦断面図であって、後記図5のC−C線断面図であり、図1に示す本発明のカプラー1の内部構造が示されている。
次に、図4は、図1に示す本発明のカプラー1の平面図である。図中、符号13は、グラウト剤を注入するための注入口13である。
また、図5は、図1に示す本発明のカプラー1の左側面図である。図6は、図1に示す本発明のカプラー1の右側面図である。
次に、図7は、図1に示す本発明のカプラー1の斜視図である。
さらに、図8は、図1に示す本発明のカプラー1を、鉄筋2を包囲するように装着している様子を示す説明図である。
また、図9は、図1に示す本発明のカプラー1を、鉄筋2を包囲するように装着している様子を示す断面説明図である。
外側管11と内側管12とから構成されるカプラー1としては、強度等の面から、通常、鋼材製の鋼管が用いられるが、鋼材製の鋼管に限定されるものではなく、必要に応じて、各種金属製の管を用いることができる。
ここで第2ストレート部113について「内径が拡径され」とは、例えば、第1ストレート部111の内径が150mmであったとすると、第2ストレート部113の内径が190mmであるというように、第1ストレート部111の内径よりも内径が拡がっていることを指している。
第1ストレート部111と第2ストレート部113とは、テーパー部112で結ばれている。
ここで雌ネジAは、第2ストレート部113の全面にわたって形成してもよいが、少なくともこの雌ネジAに螺入される内側管12の雄ネジBと重なる面に形成しておけば十分である。
ここで雌ネジAと雄ネジBのネジの有効長さが、テーパー部(それぞれテーパー部112とテーパー部122)の長さよりも短い場合には、テーパー部(それぞれテーパー部112とテーパー部122)がふくらみCに接触するより前に、ネジが効いてしまうようになるため、テーパー部(それぞれテーパー部112とテーパー部122)をふくらみCと十分に接触させることができず、ある意味で、ふくらみCに突っ支い棒的な働きをさせることができず、外側管11と内側管12と(さらに鉄筋2と)を強固に結合することができないからである。
内側管12の第2ストレート部121の内径と比べて、テーパー部122の前部(図3では内側管12の最も右)側の内径は、拡大(拡径)されていることになる。
前述したように、このテーパー部122の少なくとも一部分が、鉄筋2のふくらみCの左右の少なくとも一部分と接触することになる。従って、このテーパー部122のテーパーの傾斜角度や長さは、鉄筋2のふくらみCの大きさを考慮して決定される。
即ち、外側管11の内面前部の第2ストレート部113に形成されている雌ネジAと、この雌ネジに螺入される内側管12の外面前部に備えられている雄ネジBと、の重なりにより、この部分付近に内外二重管構造が形成されるものであって、この部分付近以外は、テーパー部112やテーパー部122などの存在もあって、内外二重管構造は形成されない。
このテーパー部112とテーパー部122のテーパーの傾斜角度や長さは、両者同じであって、これらが左右対称形に配置された形で、前述したように、断面でみたときに、図9で示すように、互いに略「ハの字」の形となるように配置され、この配置にて外側管11と内側管12とが結合一体化され、左右の振り分けが決まるのである。この結果、曲げ試験などで力が加わったときに、カプラーの縁に鉄筋が当たることにより、HAZ破断を防止する効果がある。ここで、接合中心からカプラー端面までの距離が左右で違うと、曲げ試験などに悪影響を及ぼすおそれがあるため、好ましくない。
また、外側管11が鉄筋のふくらみの左側に配置され、内側管12が鉄筋のふくらみCの右側に配置されている場合には、この逆となる。
また、外側管11の内面後部に備えさせている第1ストレート部111の長さや、内側管12の内面後部に備えさせているストレート部121の長さなども、ガス圧接により、鉄筋の圧接部に形成させるふくらみCの大きさや鉄筋の直径、長さ等を考慮して決定すればよい。
これにより、外側管11と鉄筋2;内側管12と鉄筋2と;が、それぞれ緩やかながらも、噛み合うことになる。この噛み合いにより、鉄筋2をより強固に連結することができる。
なお、図に示すように、特に図7などから明らかなように、外側管11と内側管12のそれぞれ外面の端部には(互いに結合する部分とは反対側の端部)、ねじ回し用取っ手部部を設けておくことが好ましい。符号114は、外側管11のねじ回し用取っ手部であり、符号124は、内側管12のねじ回し用取っ手部を示している。
図では、このようなねじ回し用取っ手部は、六角のものとしているが、これに限定されるものではなく、三角、五画、八角など、他の多角型のものでもあってよいし、さらには滑りにくく、ねじ回しが容易となる形状のものであればよい。
このようなねじ回し用取っ手部を用いることにより、外側管11の雌ネジAに内側管12の雄ネジBを螺入させて締付けることが容易となり、外側管11と内側管12とを容易に結合一体化させることができる。
なお、このようなねじ回し用取っ手部を設ける代わりに、ベルトレンチなどを用いて、外側管11の雌ネジAに内側管12の雄ネジBを螺入させて締付けるようにしてもよい。
ガス圧接継手は、所定の長さに切断した状態で現場に搬入された鉄筋を繋ぎ合わせるために用いられる鉄筋継手方法の一つであって、鉄筋の端面同士を突き合わせ、突き合わせられた周辺を、酸素・燃焼ガス炎を用いて加熱すると共に鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧することで得られ、接合面を跨いで両端面の原子が移動拡散し、金属結合して一体となる継手である。
このような鉄筋のガス圧接継手には、横節鉄筋のガス圧接継手と、ねじ節鉄筋のガス圧接継手と、がある。
ここで横節(竹節)鉄筋とは、ねじを切ってない節状の鉄筋を指し、ねじ節鉄筋とは、ねじを切ってある節状の鉄筋を指す。
前述したように、このようなねじ節鉄筋を用いると、外側管11と内側管12として、外側管11の内面と内側管12の内面に、それぞれ異形鉄筋(特にねじ節鉄筋)の節と噛み合い可能な突起部をそれぞれ備えたものを用いることにより、鉄筋2をより強固に連結することができる。
ここで、成分に炭素(C)が多く含有されている、高強度の鉄筋としては、例えば降伏強度が490MPa程度のSD490が挙げられる。
勿論、これ以下の降伏強度を有する鉄筋(SD390やSD345など)について本発明の方法を適用することができるが、SD490に比べて、SD390やSD345などは、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)や、このこぶ状のふくらみ部分(圧接部)のすぐ外側のガス圧接継手の「熱影響部(HAZ)」において破断する現象の発生率は一般に低い。
鉄筋のサイズとしては、一般にD19サイズ(直径19mm程度)からD51サイズ(直径51mm程度)のものが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
即ち、従来一般的に行われているガス圧接技術は、二本の鉄筋の端面をそれぞれ平坦にした後、端面同士を突き合わせ、圧接器などを用いて鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧し、圧接した端面同士が密着するまで、突き合わせられた周辺を、酸素・燃焼ガス炎を用いて、1200〜1300℃程度に加熱し、溶かすことなく赤熱状態で接合する技術である。
即ち、高強度の鉄筋は、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接終了後に自然放冷された横節又はねじ節鉄筋のガス圧接継手は、引張試験、特に曲げ試験にてHAZ破断(熱影響部破断)する現象が多く見られることになる。
ここで鉄筋又はレールの「熱影響部(HAZ)」とは、圧接時の熱で組織・冶金的性質・機械的性質などが変化を生じた母材部分を指している。
また、鉄筋又はレールの「圧接部」とは、圧接によって得られた熱影響部を含む接合部(継手部)全体を指している。
ここで、「装着」とは、本発明のカプラー1を構成する外側管11と内側管12とを、ガス圧接する前に鉄筋2それぞれに挿入し、配置(以下、「挿入・配置」と称することがある。)し、その後、両者を結合させて、一体化されたカプラーを形成させるまでの一連の操作を総称するものである。
そのような場合には、次のようにして行うことができる。
即ち、まず前記2本の鉄筋2を包囲するように、ガス圧接した後の鉄筋のふくらみCを挟んで、左右のいずれかの側の位置に、外側管11と内側管12とをそれぞれ挿入・配置する。
図8、図9では、右側に外側管11を、左側に内側管12を挿入・配置した例を示しているが、この反対に、左側に外側管11を、右側に内側管12を挿入・配置してもよい。
このとき、外側管11と内側管12とは、圧接部付近において、外側管11と内側管12とにそれぞれ備えられているテーパー部(それぞれテーパー部112とテーパー部122)の少なくとも一部分が、ふくらみCの少なくとも一部分とそれぞれ接触するようにして結合させて一部が内外二重管構造をなすカプラー1を形成させる。
これにより、カプラー1は、鉄筋2のふくらみCを挟んで、ふくらみCを両側から締付けるような形で固定することになり、鉄筋2への本発明のカプラー1の装着(結合一体化)が完了する。
グラウト剤としては、セメント(モルタル)系グラウト剤、ガラス系グラウト剤、などの無機グラウト剤と;合成樹脂系(エポキシ樹脂など)グラウト剤などの有機グラウト剤;とがあり、本発明においては、いずれも使用することができるが、このうち充填後、固化させたときに、曲げ強度や引張強度に優れた固化物となるものが特に好ましい。
グラウト剤を、鉄筋2とカプラー1との空隙(間隙)に注入・充填し、固化させることにより、より一層鉄筋2を強固に連結することができる。
注入口13は、グラウト剤の注入・充填の役割の他、注入状況を確認する役割もあることから、2ヶ所から3ヶ所に(好ましくは、上側と下側の少なくとも2ヶ所に)形成しておくとよい。通常、グラウト剤の注入に用いる上側の注入口の他に、下側にも注入口を設けておくことにより、十分にグラウト剤を注入・充填できた場合には、ここから溢れたグラウト剤が垂れ始め、グラウト剤の注入・充填が不足ないことを確認することができる。
このような本発明の第2に示す鉄筋の連結方法によれば、多大なエネルギーを必要とすることなく、むしろより少ないエネルギー量にて、しかも十分な結合強度(引張強度、曲げ強度)を有しつつ、鉄筋のガス圧接時の熱影響部における破断(HAZ破断)、特に高強度の鉄筋のガス圧接時の熱影響部における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができる。
ここで機械式継手とは、鉄筋を直接結合するのではなく、特殊鋼材製の鋼管(カプラー)と、異形鉄筋の節との噛み合いを利用して接合する工法であって、突き合わせた2本の異形鉄筋の節に、内部がねじ加工された筒状のカプラーを外側から被せる形でねじ込み、さらに、鉄筋とカプラーとの間にグラウト剤を注入して固定するものである。
この機械式継手は、コンクリートに埋設する鉄筋の接続によく用いられており、この機械式継手により接合された鉄筋を用いた鉄筋コンクリート構造物が生み出されている。
しかし、この場合、カプラーと、異形鉄筋の節とは、緩く噛み合っているに過ぎず、完全には噛み合っておらず、隙間があるままであるので、隙間にグラウト剤を注入して、強度を出してはいるものの、多少なりとも鉄筋が動くおそれがある。
また、鉄筋端面同士が突き合わせされないままにグラウト剤で固めてしまうと、建造物の重量に耐えられず、その部位が座屈することも考えられる。
本発明の方法では、鉄筋端面は接合されているのでその心配はない。
従って、この機械式継手により接合された鉄筋を用いた鉄筋コンクリート構造物は、大きな負荷がかかった場合、鉄筋が動き、コンクリートが割れるおそれがある。このため、この機械式継手を、高層建築、橋脚などの鉄筋コンクリート構造物に適用することは、問題なしとは言えない。
従って、大きな負荷がかかった場合に、機械式継手により接合された鉄筋を用いた鉄筋コンクリート構造物のように、鉄筋が動き、コンクリートが割れるようなおそれは、本発明の場合にはない。
2 鉄筋
11 (カプラーの)外側管
12 (カプラーの)内側管
13 注入口
111 (外側管の)第1ストレート部
112 (外側管の)テーパー部
113 (外側管の)第2ストレート部
114 (外側管の)ねじ回し用取っ手部
121 (内側管の)ストレート部
122 (内側管の)テーパー部
124 (内側管の)ねじ回し用取っ手部
A 雌ネジ
B 雄ネジ
C ふくらみ
Claims (4)
- 2本の鉄筋の端面同士を突き合わせガス圧接して、ふくらみを圧接部に形成させると共に;
内面後部に第1ストレート部を備え;前記第1ストレート部に隣接する内面中間部には外方に拡開するテーパー部を備え;前記テーパー部に隣接する内面前部には、前記第1ストレート部より内径が拡径され、かつ、雌ネジが形成されている第2ストレート部を備えた;外形が略円筒状の外側管と、
前記外側管の第2ストレート部に形成されている雌ネジに螺合する雄ネジを外面前部に備え;内面後部には、ストレート部を備え;前記ストレート部に隣接する内面前部には外方に拡開するテーパー部を備えた;外形が略円筒状の内側管と、
からなる、一部が内外二重管構造をなし、前記ふくらみを内包しうる構造を有するカプラーを用い、
前記2本の鉄筋を包囲するように、ガス圧接した後の鉄筋のふくらみを挟んで、左右のいずれかの側の位置に、前記外側管と前記内側管とをそれぞれ配置し;
前記ふくらみを跨いで前記外側管の雌ネジに前記内側管の雄ネジを螺入させ、前記外側管と前記内側管とは、前記外側管と前記内側管とにそれぞれ備えられているテーパー部の少なくとも一部分が、前記ふくらみの少なくとも一部分とそれぞれ接触するようにして結合させて一部が内外二重管構造をなすカプラーを形成・装着させる;
ことからなる、ガス圧接した鉄筋をカプラーを用いて連結する方法。
- 前記鉄筋が、異形鉄筋である、請求項1に記載の方法。
- 前記外側管及び前記内側管が、その内面に、異形鉄筋の節と噛み合い可能な突起部をそれぞれ備えたものである、請求項2に記載の方法。
- カプラーを形成・装着させた後に、前記鉄筋と前記カプラーとの空隙に、グラウト剤を充填し固化させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
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