JP6573115B2 - アミド化リン酸エステル化合物、抽出剤、及び抽出方法 - Google Patents
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Description
これらの金属を分離・回収・精製する方法としては、溶媒抽出法が主に利用されており、溶媒抽出法においてはリン酸系抽出剤、カルボン酸系抽出剤、オキシム系抽出剤といった工業用抽出剤が利用されている。代表的なリン酸系抽出剤としては、ホスホン酸エステルであるジ(2−エチルヘキシル)リン酸やその類似体である2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルが、カルボン酸系抽出剤としては、ネオデカン酸が、オキシム系抽出剤としては、2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムや5,8−ジエチル−7−ヒドロキシ−6−ドデカオキシムが知られている。
2−メチル−2−エチル−1−ヘプタン酸は中性以上のpH条件下でしか抽出が進まないため、リン酸系抽出剤と比べれば抽出能が著しく劣る。
2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムもまた有価金属に対する抽出分離能が十分ではなく、例えばニッケルイオンを中性付近の高pH条件下でしか抽出することができない。また、抽出速度が遅く、定量的な抽出には時間を要することとなる。
する。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
<2> <1>に記載の化合物又はその塩からなる、金属元素を抽出するための抽出剤。
<3> 抽出対象となる金属元素が、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、<2>に記載の抽出剤。
<4> 溶媒抽出法用である、<2>又は<3>に記載の抽出剤。
<5> 抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程を含む、金属元素の抽出方法。
<6> 前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.0以下である、<5>に記載の金属元素の抽出方法。
<7> さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、<5>又は<6>に記載の金属元素の抽出方法。
<8> 前記準備工程で準備した水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、前記液液接触工程において前記抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する、<5>〜<7>の何れかに記載の金属元素の抽出方法。
本発明の一態様である化合物又はその塩(以下、「本発明の化合物等」と略す場合がある。)は、下記一般式(1)で表されるものである。
本発明者らは、有用な新規化合物、特にレアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として利用することができる化合物を求めて鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物又はその塩が金属元素を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを見出したのである。
一般式(1)で表される化合物は、アミド基とリン酸エステル構造がエーテル鎖を介して連結している構造となっているが、構造内に含まれるエーテル酸素、アミド基、及びリン酸エステル構造が、金属元素との結合に非常に適しているものと考えられる。そして、水素イオン濃度やアニオン濃度によって、それぞれの金属元素に対する親和性が変化するため、特定の金属元素を選択的に抽出することもできる優れた抽出剤となり得るのである。特に炭化水素基の炭素数等によって有機溶媒との親和性を制御できるため、有機溶媒を利用した溶媒抽出法に好適な抽出剤となる。
なお、「その塩」とは、一般式(1)で表される化合物とイオン等によって形成される塩を意味し、塩を形成するためのイオンの種類は特に限定されないものとする。
以下、本発明の化合物等について、詳細に説明する。
R1、R2、及びR3の炭化水素基の炭素数の合計は、8〜48であるが、好ましくは12以上、より好ましくは18以上であり、好ましくは42以下、より好ましくは36以下である。
R1及びR2の炭化水素基のそれぞれの炭素数は、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
R1、R2としては、エチル基(−C2H5)、n−プロピル基(−nC3H7)、i−プロピル基(−iC3H7)、n−ブチル基(−nC4H9)、t−ブチル基(−tC4H9)、n−ペンチル基(−nC5H11)、n−ヘキシル基(−nC6H13)、n−ヘプチル基(−nC7H15)、n−オクチル基(−nC8H17)、2−エチルヘキシル基(−CH2CH(C2H5)C4H9)、n−ノニル基(−nC9H19)、n−デシル基(−nC10H21)、n−ウンデシル基(−nC11H23)、n−ドデシル基(−nC12H25)、n−トリデシル基(−nC13H27)、n−テトラデシル基(−nC14H29)、n−ペンタデシル基(−nC15H31)、n−ヘキサデシル基(−nC16H33)、シクロへキシル基(−cC6H11)、フェニル基(−C6H5)、ナフチル基(−C10H7)等が挙げられる。この中でも、n−ヘキシル基(−nC6H13)、n−オクチル基(−nC8H17)、2−ジエチルヘキシル基(−CH2CH(C2H5)C4H9)、n−デシル基(−nC10H21)、n−ドデシル基(−nC12H25)等が特に好ましい。
R3の炭化水素基の炭素数は、通常1以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
R3としては、メチル基(−CH3)、エチル基(−C2H5)、n−プロピル基(−nC3H7)、i−プロピル基(−iC3H7)、アリル基(−CH2CH=CH2)、n−ブチル基(−nC4H9)、t−ブチル基(−tC4H9)、n−ペンチル基(−nC5H11)、n−ヘキシル基(−nC6H13)、n−ヘプチル基(−nC7H15)、n−オクチル基(−nC8H17)、2−エチルヘキシル基(−CH2CH(C2H5)C4H9)、n−ノニル基(−nC9H19)、n−デシル基(−nC10H21)、n−ウンデシル基(−nC11H23)、n−ドデシル基(−nC12H25)、n−トリデシル基(−nC13H27)、n−テトラデシル基(−nC14H29)、n−ペンタデシル基(−nC15H31)、n−ヘキサデシル基(−nC16H33)、シクロへ
キシル基(−cC6H11)、フェニル基(−C6H5)、ナフチル基(−C10H7)等が挙げられる。この中でも、n−ヘキシル基(−nC6H13)、n−オクチル基(−nC8H17)、2−ジエチルヘキシル基(−CH2CH(C2H5)C4H9)、n−デシル基(−nC10H21)、n−ドデシル基(−nC12H25)等が特に好ましい。
本発明の化合物等が、レアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを前述したが、本発明の化合物等からなり、金属元素を抽出するための抽出剤(以下、「本発明の抽出剤」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
以下、本発明の抽出剤について、詳細に説明する。
リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)等の第1族元素(アルカリ金属元素);
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)が好ましい。
本発明の抽出剤を溶媒抽出法に利用することが好ましいことを前述したが、溶媒抽出法、即ち、抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程(以下、「準備工程」と略す場合がある。)、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程(以下、「液液接触工程」と略す場合がある。)を含む金属元素の抽出方法(以下、「本発明の抽出方法」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
但し、R1、R2、及びR3の炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
なお、「一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下」とは、通常有機溶媒に一般式(1)で表される化合物又はその塩が存在していることを意味し、予め有機溶媒に含有させていても、或いは水溶液と有機溶媒を接触させるときに別途一般式(1)で表される化合物又はその塩を添加するものであってもよいものとする。
また、「抽出対象となる金属元素」は、本発明の抽出剤において説明したものと同様のものが挙げられる。
以下、本発明の抽出方法について、詳細に説明する。
水溶液が酸性水溶液の場合のpHも特に限定されず、抽出対象となる金属元素、目的等に応じて適宜選択されるべきであるが、通常6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
例えば、抽出対象が鉛元素(Pb)である場合のpHは、通常6.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。
抽出対象がニッケル元素(Ni)である場合のpHは、通常6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
また、抽出対象の金属元素を含む酸性水溶液を自ら調製する場合、その調製方法は特に限定されず、抽出対象となる金属元素を含む水溶液に酸を添加して(pHを調製して)も、或いは抽出対象となる金属元素を溶解させるために酸性水溶液としてもよい。
なお、酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の無機酸が挙げられる。塩酸を使用する場合、水溶液は塩化物イオン(Cl−)を含み、硫酸を使用する場合、水溶液は硫酸イオン(SO4 2−)を含み、硝酸を使用する場合、水溶液は硝酸イオン(NO3 −)を含み、リン酸を使用する場合、水溶液はリン酸イオン(PO4 3−、HPO4 2−、H2PO4 −)を含み、亜リン酸を使用する場合、水溶液は亜リン酸イオン(HPO3 2−、H2PO3 −)を含み、次亜リン酸を使用する場合、水溶液は次亜リン酸イオン(H2PO2 −)を含むと表現することができる。
また、一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下で水溶液と有機溶媒を接触させる方法は、例えば下記(イ)〜(ハ)の方法が挙げられる。
(イ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む有機溶媒溶液を、容器内等で水溶液と接触させる方法。
(ロ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む水溶液を、容器内等で有機溶媒と接触させる方法。
(ハ)一般式(1)で表される化合物又はその塩と水溶液と有機溶媒をそれぞれ容器等に投入し、接触させる方法。
この中でも、(イ)の方法が特に好ましい。
・液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程
・分液工程で分液した有機溶媒に、分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させて逆抽出する逆抽出工程
なお、水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、液液接触工程において抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する態様は、本発明の抽出方法の好ましい態様の1つである。かかる態様は、言い換えれば下記のように表現することができる。
抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する液液接触工程を含む、金属元素の分離方法。
リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)等の第1族元素(アルカリ金属元素);
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、マグネシウム元素(Mg)、オスミウム元素(Os)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)、白金元素(Pt)が好ましい。
下記反応式で表される反応によって、2−クロロ−N,N−ジオクチルアセトアミド(以下、「ClDOAA」と略す場合がある。)を合成した。
1H NMR(400MHz,CDCl3,25℃): δ0.88(m,6H,CH3),0.93(t,3H,CH3),1.28(s,20H,CH3(CH2)5CH2),1.40(sextet,2H,CH3CH2),1.52(m,4H,CH2CH2N),1.67(quintet,2H,CH2CH2OP),3.11(t,2H,C
H2N),3.30(t,2H,CH2N),3.92(d,2H,OCH2P),4.09(quartet,2H,CH2OP),4.33(s,2H,COCH2O),9.56(s,1H,POH).
比較例1として、ジオクチルジグリコールアミド酸(以下、「DODGAA」と略す場合がある。)を準備した。DODGAAは、下記反応式で表される反応によって合成した。なお、DODGAAの合成方法については、本発明者らが既に報告している非特許文献1等を参照することができる。
アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)、希土類金属(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)、遷移金属(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W,Re)、貴金属(Ru,Rh,Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au)、典型金属(Al,Zn,Gd,Cd,In,Hg,Tl,Pb)をそれぞれ0.01mM(Na又はKに対しては0.1mM)含んだpH−1.0〜5.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜5.0の水溶液は2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。ただし、Naの抽出実験では、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化リチウムを用いた。また、Hf、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出実験では、0.1M塩化ナトリウムを含んだ酢酸ナトリウム緩衝液に0.1M塩酸を加えてpH1.0〜5.0に調整し、pH1.0以下の水溶液については塩酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)又は誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
又は0.2M EDTA水溶液を用いた。また、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Reについては、5M硝酸又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MS又はICP−AESを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。DOAOBPAを用いた56金属イオンの抽出挙動を図2に示す。図2の横軸は水相の抽出後のpH、縦軸は抽出率(単位:%)、黒丸がDOAOBPAを用いた抽出率の結果である。
水相のpHを0.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5%1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図2に示し、白丸がDODGAAを用いた抽出率の結果である。
Liの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が46%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Naの場合、DOAOBPAを用いるとpH4.2で抽出率が25%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Kの場合、DOAOBPAを用いるとpH4.2で抽出率が33%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Rbの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が33%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Csの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が35%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Caの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.1以上で少なくとも抽出率が25%を超え、pH2.0以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Srの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が45%を超え、pH2.5以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Baの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が36%を超え、pH2.5以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Yの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Laの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上で少なくとも抽出率が40%を超え、pH0.6以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Ceの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が73%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAA
と比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Prの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が84%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Ndの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が84%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Smの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Euの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Gdの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Tbの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Dyの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Hoの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Erの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Tmの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Ybの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Luの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Vの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が55%を超え、特にpH3.0以上pH3.6以下の範囲で少なくとも抽出率が72%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Crの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.4以上で少なくとも抽出率が40%を超え、pH2.0以上で少なくとも抽出率が96%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Mnの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が50%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Feの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.5以下の範囲で少なくとも抽出率が70%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Coの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.2以上で少なくとも抽出率が52%を超え、pH3.2以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Niの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.4以上で少なくとも抽出率が57%を超え、pH3.2以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Cuの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.8以上で少なくとも抽出率が44%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Zrの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が76%を超え、特にpH0.0以上pH3.6以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Nbの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が90%を超え、特にpH0.0以上pH3.6以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Moの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が94%を超え、特にpH0.5以上pH3.1以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Hfの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH3.0以下の範囲で少なくとも抽出率が50%を超え、特にpH−1.0以上pH1.5以下の範囲で定量的な抽出が起こった。また、pH3.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が50%を超え、pH4.0で抽出率が97%に達した。DODGAAと比較して、抽出挙動に大きな違いがあり、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上した。
Taの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が90%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Wの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が46%を超え、特にpH0.0以上pH2.5以下の範囲で少なくとも抽出率が85%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Reの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が10%を超え、特にpH0.0以上pH1.5以下の範囲で少なくとも抽出率が20%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が若干向上した。
Rh、Pd、Ptの場合、pH−1.0以上pH4.0以下の範囲でDOAOBPA及びDODGAAのどちらを用いてもほとんど抽出されなかった。
Os、Irの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.5以下の範囲でほとんど抽出されず、pH4.0付近で抽出率が7%であった。DODGAAはほとんど抽出能を示さなかった。
Agの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.0以上で少なくとも抽出率が32%を超え、pH4.1で抽出率が80%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Auの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が60%を超え、特にpH−1.0以上pH0.5以下で少なくとも抽出率が93%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が向上した。
Znの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.8以上で少なくとも抽出率が50%を超え、pH2.9以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Gaの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.5以上pH3.0以下の範囲で少なくとも抽出率が60%を超え、特にpH1.1以上pH2.5以下の範囲で少なくとも抽出率が96%を超えた。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し
、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Cdの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が43%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Inの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が43%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で少なくとも抽出率が94%を超えた。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Hgの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.5以上で少なくとも抽出率が77%を超え、pH3.0以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が向上した。
Tlの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.0以上で少なくとも抽出率が22%を超え、pH4.0で抽出率が73%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Pbの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.8以上で少なくとも抽出率が53%を超え、pH1.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Pb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0〜4.8の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜4.8の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は3M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図3に示す。
水相のpHを2.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図4に示す。
水相のpHを0.8〜7.0に調整し、抽出剤(2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステル(PC−88A)、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA))をイソオクタンに溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。PC−88Aによる抽出結果を図5、D2EHPAによる抽出結果を図6に示す。
DOAOBPA、DODGAA、PC−88A、D2EHPAのPbに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図7、Crに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図8、Mnに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図9、Cdに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図10、Znに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図11、Cuに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図12、Coに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図13、Niに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図14に示す。
図3に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いた場合、Pb>Cr>Mn=Cd>Zn=Cu>Co>Niの順番で金属イオンを抽出し、Pbに対して選択性を示した。例えば、水溶液のpHを1.0程度に調整して抽出を行えば、Pbを選択的に抽出し、Cr、Mn、Cd、Zn、Cu、Co、Niから分離することができる。また、本発明の抽出剤の抽出特性を利用すれば、pHを調整することによって、各金属を個別に抽出する多段階の工程を組み、それぞれの成分ごとに分離するプロセスを構築できる。
また、図5および図6に示すように、比較例のリン酸系抽出剤(PC−88A、D2EHPA)の場合、PC−88AはZn>Pb>Cu>Mn>Cd>Co>Cr>Niの順番で、D2EHPAはZn>Pb>Mn=Cd=Cu=Cr>Co>Niの順番で金属イオンを抽出し、両抽出剤共にZnに対して選択性を示した。つまり、リン酸系抽出剤ではZnを含む場合、Pbの分離は困難である。
Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auをそれぞれ0.01mM含んだpH−1.0〜4.7の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜4.7の水溶液は0.1M塩化ナトリウムを含んだ酢酸ナトリウム緩衝液に0.1M塩酸を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については塩酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M塩酸、1Mチオ尿素水溶液、又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図15に示す。
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水相のpHを0.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図16に示す。
図15に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いることで、Auの抽出率がpH−1.0〜2.0の範囲で63%以上、特にpH−1.0〜0.5の範囲で93%以上を示した。RuはpH2.0以上で抽出が起こり、pH3.5付近で抽出率が57%に達した。他のRh、Pd、Os、Ir、PtはpH−1.0〜4.0の範囲でほとんど抽出されないことが確認された。つまり水溶液のpHを−1.0〜2.0の範囲に調整して抽出を行えば、Auを選択的に抽出し、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから分離することができる。
一方、図16に示すように、比較例の抽出剤(DODGAA)では、Auの抽出率が最大で50%程度であり、定量的な抽出ができない。DODGAAはDOAOBPAに比べてAuに対する抽出能が低く、Auの分離に適していない。
Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0〜5.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜5.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図17に示す。
水相のpHを1.0〜6.0に調整し、抽出剤(DODGAA)をイソオクタン(5%
1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例5と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図18に示す。
図17に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いた場合、Ti、Zr、Nb、Mo、Taの抽出率がpH0.0〜3.6の範囲で少なくとも90%以上を示した。Vにおいて、pH2.0〜3.8の範囲で少なくとも抽出率が55%を超え、特にpH3.0〜3.6の範囲で少なくとも抽出率が72%を超えた。Wにおいて、pH0.0〜3.8の範囲で少なくとも抽出率が46%を超え、特にpH0.0〜2.5の範囲で少なくとも抽出率が85%を超えた。
一方、図18に示すように、比較例の抽出剤(DODGAA)を用いた場合、Vの抽出率はpH2.5で11%に達するが、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、WはpH1.0〜4.0の範囲でほとんど抽出されなかった。つまり、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wいずれにおいても、DODGAAはDOAOBPAに比べて著しく抽出能が劣ることが確認された。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
- 請求項1に記載の化合物又はその塩からなる、金属元素を抽出するための抽出剤。
- 抽出対象となる金属元素が、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、請求項2に記載の抽出剤。
- 溶媒抽出法用である、請求項2又は3に記載の抽出剤。
- 抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程を含む、金属元素の抽出方法。
- 前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.0以下である、請求項5に記載の金属元素の抽出方法。
- さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、請求項5又は6に記載の金属元素の抽出方法。
- 前記準備工程で準備した水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、前記液液接触工程において前記抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する、請求項5〜7の何れか1項に記載の金属元素の抽出方法。
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