JP6573115B2 - アミド化リン酸エステル化合物、抽出剤、及び抽出方法 - Google Patents

アミド化リン酸エステル化合物、抽出剤、及び抽出方法 Download PDF

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Description

本発明は、アミド化リン酸エステル化合物又はその塩に関し、より詳しくは金属元素を抽出するための抽出剤に利用することができるアミド化リン酸エステル化合物又はその塩に関する。
レアメタルや貴金属といった有価金属は、幅広い産業分野で利用されており、資源に乏しい我が国にとって、有価金属を安定的に確保することは極めて重要である。また、産業活動等を通じて生じる廃棄物の中には、毒性の高い有害金属が含まれている場合があり、有害金属を効率良く回収することも、環境保全の観点から非常に重要である。
これらの金属を分離・回収・精製する方法としては、溶媒抽出法が主に利用されており、溶媒抽出法においてはリン酸系抽出剤、カルボン酸系抽出剤、オキシム系抽出剤といった工業用抽出剤が利用されている。代表的なリン酸系抽出剤としては、ホスホン酸エステルであるジ(2−エチルヘキシル)リン酸やその類似体である2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルが、カルボン酸系抽出剤としては、ネオデカン酸が、オキシム系抽出剤としては、2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムや5,8−ジエチル−7−ヒドロキシ−6−ドデカオキシムが知られている。
ジ(2−エチルヘキシル)リン酸や2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルは、有価金属に対する抽出分離能が十分とは言い難く、例えばニッケルイオンを中性付近の高pH条件下でしか抽出することができない問題がある。また、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸や2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステルは、有害金属に対する抽出分離能も十分ではなく、例えば鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンが混ざっている場合、鉛イオンに対する選択性が小さく、鉛イオンを効率的に除去することが難しい。
2−メチル−2−エチル−1−ヘプタン酸は中性以上のpH条件下でしか抽出が進まないため、リン酸系抽出剤と比べれば抽出能が著しく劣る。
2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムもまた有価金属に対する抽出分離能が十分ではなく、例えばニッケルイオンを中性付近の高pH条件下でしか抽出することができない。また、抽出速度が遅く、定量的な抽出には時間を要することとなる。
さらに本発明者は、以前、ジグリコールアミド酸の骨格を持つ2−(2−(ジオクチルアミノ)−2−オキソエトキシ)酢酸(以下、「DODGAA」と略す場合がある。)を抽出剤として開発した。しかし、この抽出剤はランタノイドの抽出分離能に優れているものの、その他の有価金属に対しては抽出分離能が十分ではないものと言える(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
H. Naganawa et al., Solvent Extr. Res. Dev., Jpn, 2007, 14, 151-159. K. Shimojo et al., Anal. Sci., 2014, 30, 513-517.
本発明は、有用な新規化合物、特にレアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として利用することができる化合物を提供することを目的と
する。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のアミド化リン酸エステル化合物又はその塩が金属元素を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
<2> <1>に記載の化合物又はその塩からなる、金属元素を抽出するための抽出剤。
<3> 抽出対象となる金属元素が、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、<2>に記載の抽出剤。
<4> 溶媒抽出法用である、<2>又は<3>に記載の抽出剤。
<5> 抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程を含む、金属元素の抽出方法。
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
<6> 前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.0以下である、<5>に記載の金属元素の抽出方法。
<7> さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、<5>又は<6>に記載の金属元素の抽出方法。
<8> 前記準備工程で準備した水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、前記液液接触工程において前記抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する、<5>〜<7>の何れかに記載の金属元素の抽出方法。
本発明によれば、有用な新規化合物、特にレアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として利用することができる化合物を提供することができる。
実施例1で合成されたブチルハイドロゲン (2−(ジオクチルアミノ)−2−オキソエトキシ)メチルホスホネート(DOAOBPA)のH NMRスペクトルを示した図である。 DOAOBPA及びジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)を用いた56種の金属イオンの抽出率とpHとの関係を示した図である。 DOAOBPAを用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 DODGAAを用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステル(PC−88A)を用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA)を用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 各抽出剤のPbに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のCrに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のMnに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のCdに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のZnに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のCuに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のCoに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 各抽出剤のNiに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線である。 DOAOBPAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 DODGAAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 DOAOBPAを用いたTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。 DODGAAを用いたTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
<化合物又はその塩>
本発明の一態様である化合物又はその塩(以下、「本発明の化合物等」と略す場合がある。)は、下記一般式(1)で表されるものである。
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
本発明者らは、有用な新規化合物、特にレアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として利用することができる化合物を求めて鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物又はその塩が金属元素を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを見出したのである。
一般式(1)で表される化合物は、アミド基とリン酸エステル構造がエーテル鎖を介して連結している構造となっているが、構造内に含まれるエーテル酸素、アミド基、及びリン酸エステル構造が、金属元素との結合に非常に適しているものと考えられる。そして、水素イオン濃度やアニオン濃度によって、それぞれの金属元素に対する親和性が変化するため、特定の金属元素を選択的に抽出することもできる優れた抽出剤となり得るのである。特に炭化水素基の炭素数等によって有機溶媒との親和性を制御できるため、有機溶媒を利用した溶媒抽出法に好適な抽出剤となる。
なお、「その塩」とは、一般式(1)で表される化合物とイオン等によって形成される塩を意味し、塩を形成するためのイオンの種類は特に限定されないものとする。
以下、本発明の化合物等について、詳細に説明する。
、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」とは、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。
、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計は、8〜48であるが、好ましくは12以上、より好ましくは18以上であり、好ましくは42以下、より好ましくは36以下である。
及びRの炭化水素基のそれぞれの炭素数は、通常2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
、Rとしては、エチル基(−C)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、n−ヘプチル基(−15)、n−オクチル基(−17)、2−エチルヘキシル基(−CHCH(C)C)、n−ノニル基(−19)、n−デシル基(−1021)、n−ウンデシル基(−1123)、n−ドデシル基(−1225)、n−トリデシル基(−1327)、n−テトラデシル基(−1429)、n−ペンタデシル基(−1531)、n−ヘキサデシル基(−1633)、シクロへキシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)等が挙げられる。この中でも、n−ヘキシル基(−13)、n−オクチル基(−17)、2−ジエチルヘキシル基(−CHCH(C)C)、n−デシル基(−1021)、n−ドデシル基(−1225)等が特に好ましい。
の炭化水素基の炭素数は、通常1以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、通常16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
としては、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、n−プロピル基(−)、i−プロピル基(−)、アリル基(−CHCH=CH)、n−ブチル基(−)、t−ブチル基(−)、n−ペンチル基(−11)、n−ヘキシル基(−13)、n−ヘプチル基(−15)、n−オクチル基(−17)、2−エチルヘキシル基(−CHCH(C)C)、n−ノニル基(−19)、n−デシル基(−1021)、n−ウンデシル基(−1123)、n−ドデシル基(−1225)、n−トリデシル基(−1327)、n−テトラデシル基(−1429)、n−ペンタデシル基(−1531)、n−ヘキサデシル基(−1633)、シクロへ
キシル基(−11)、フェニル基(−C)、ナフチル基(−C10)等が挙げられる。この中でも、n−ヘキシル基(−13)、n−オクチル基(−17)、2−ジエチルヘキシル基(−CHCH(C)C)、n−デシル基(−1021)、n−ドデシル基(−1225)等が特に好ましい。
本発明の化合物等としては、下記式で表されるものが挙げられる。
また、一般式(1)で表される化合物から形成される塩の種類としては、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
本発明の化合物等の製造方法は、特に限定されず、公知の有機合成法を適宜組み合わせて製造することができるが、下記(i)〜(iv)の工程を含む製造方法が挙げられる。(i)2−ハロゲン化アセチルハライドに対するジアルキルアミンの求核置換反応によって、2−ハロゲノ−N,N−ジアルキルアセトアミドを得る工程。
(ii)亜リン酸ジエステルに対するヒドロキシメチル化反応によって、ヒドロキシメチルリン酸ジエステルを得る工程。
(iii)2−ハロゲノ−N,N−ジアルキルアセトアミドに対するヒドロキシメチルリン酸ジエステルの求核置換反応によって、アセトアミド化したリン酸ジエステル誘導体を得る工程。
(iv)アセトアミド化したリン酸ジエステル誘導体のエステルの1つを加水分解することによって、本発明の化合物等を得る工程。
なお、下記式で表される化合物は、市販されており、適宜入手して一般式(1)に該当する幅広い化合物を製造することができる。
<抽出剤>
本発明の化合物等が、レアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として非常に好適であることを前述したが、本発明の化合物等からなり、金属元素を抽出するための抽出剤(以下、「本発明の抽出剤」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
以下、本発明の抽出剤について、詳細に説明する。
本発明の抽出剤が抽出対象とする金属元素は、特に限定されないが、
リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)等の第1族元素(アルカリ金属元素);
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)が好ましい。
本発明の抽出剤は、イオン交換等の固相抽出法、溶媒抽出法等の何れの抽出法に利用してもよいが、溶媒抽出法に利用することが好ましい。
<金属元素の抽出方法>
本発明の抽出剤を溶媒抽出法に利用することが好ましいことを前述したが、溶媒抽出法、即ち、抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程(以下、「準備工程」と略す場合がある。)、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程(以下、「液液接触工程」と略す場合がある。)を含む金属元素の抽出方法(以下、「本発明の抽出方法」と略す場合がある。)も本発明の一態様である。
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。
但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
なお、「一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下」とは、通常有機溶媒に一般式(1)で表される化合物又はその塩が存在していることを意味し、予め有機溶媒に含有させていても、或いは水溶液と有機溶媒を接触させるときに別途一般式(1)で表される化合物又はその塩を添加するものであってもよいものとする。
また、「抽出対象となる金属元素」は、本発明の抽出剤において説明したものと同様のものが挙げられる。
以下、本発明の抽出方法について、詳細に説明する。
準備工程は、抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する工程であるが、準備方法は特に限定されず、抽出対象の金属元素を含む水溶液を入手しても、或いは抽出対象となる金属元素を含む水溶液を自ら調製してもよい。
水溶液は、抽出対象となる金属元素を含むものであれば、その他については特に限定されないが、通常水溶液は抽出対象となる金属元素が抽出できる条件(非抽出対象となる金属元素も含む場合には、抽出対象となる金属元素の抽出率と非抽出対象となる金属元素の抽出率に差が生じる条件)に調製されるものであり、水溶液は酸性水溶液に調製されることが好ましい。
水溶液が酸性水溶液の場合のpHも特に限定されず、抽出対象となる金属元素、目的等に応じて適宜選択されるべきであるが、通常6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
例えば、抽出対象が鉛元素(Pb)である場合のpHは、通常6.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。
抽出対象がニッケル元素(Ni)である場合のpHは、通常6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下である。
また、抽出対象の金属元素を含む酸性水溶液を自ら調製する場合、その調製方法は特に限定されず、抽出対象となる金属元素を含む水溶液に酸を添加して(pHを調製して)も、或いは抽出対象となる金属元素を溶解させるために酸性水溶液としてもよい。
なお、酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の無機酸が挙げられる。塩酸を使用する場合、水溶液は塩化物イオン(Cl)を含み、硫酸を使用する場合、水溶液は硫酸イオン(SO 2−)を含み、硝酸を使用する場合、水溶液は硝酸イオン(NO )を含み、リン酸を使用する場合、水溶液はリン酸イオン(PO 3−、HPO 2−、HPO )を含み、亜リン酸を使用する場合、水溶液は亜リン酸イオン(HPO 2−、HPO )を含み、次亜リン酸を使用する場合、水溶液は次亜リン酸イオン(HPO )を含むと表現することができる。
液液接触工程は、本発明の抽出剤、即ち一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程であるが、液液接触工程の操作手順は、特に限定されず、液相抽出法に利用される公知の操作手順を適宜選択することができる。例えば、任意の容器に水溶液と有機溶媒を投入し、振とう機等を用いて水溶液と有機溶媒を十分に混合した後、遠心分離によって相分離させて、分液を行うことが挙げられる。また、容器の代わりに向流抽出装置等の抽出装置や分液漏斗等の公知の抽出装置又は抽出器具を用いることもできる。
また、一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下で水溶液と有機溶媒を接触させる方法は、例えば下記(イ)〜(ハ)の方法が挙げられる。
(イ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む有機溶媒溶液を、容器内等で水溶液と接触させる方法。
(ロ)一般式(1)で表される化合物又はその塩を含む水溶液を、容器内等で有機溶媒と接触させる方法。
(ハ)一般式(1)で表される化合物又はその塩と水溶液と有機溶媒をそれぞれ容器等に投入し、接触させる方法。
この中でも、(イ)の方法が特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物又はその塩の使用量(存在量)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒中の濃度として、通常0.01〜1.6mol/Lの範囲であり、好ましくは0.1〜0.7mol/Lの範囲である。
有機溶媒としては、ケロシン等の石油系溶媒;ヘキサン、イソオクタン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ドデシルアルコール、オクタノール等の高級アルコール系溶媒等を挙げることができる。なお、有機溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
接触させる水溶液と有機溶媒の容積比(水溶液/有機溶媒)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができるが、通常1以上である。
本発明の抽出方法は、前述の準備工程及び液液接触工程を含むものであれば、その他については特に限定されないが、さらに下記の分液工程及び逆抽出工程を含むことが特に好ましい。
・液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程
・分液工程で分液した有機溶媒に、分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させて逆抽出する逆抽出工程
分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液は、逆抽出に利用できるものであれば特に限定されないが、酸性水溶液、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)若しくはチオ尿素等の錯化剤を含む水溶液が好ましい。なお、酸性水溶液の場合、そのpHは、準備工程で準備した酸性水溶液のpHよりも低く調整されていることが好ましく、その水素イオン濃度は0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上である。なお、使用する酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等の無機酸が挙げられる。
前述のように、本発明の化合物等は、例えば水素イオン濃度やアニオン濃度によって、それぞれの金属元素に対する親和性が変化するため、特定の金属元素を選択的に抽出することも可能となる。従って、水溶液に抽出対象となる金属元素と非抽出対象の金属元素が含まれる場合、抽出対象となる金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離することにも利用することができる。
なお、水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、液液接触工程において抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する態様は、本発明の抽出方法の好ましい態様の1つである。かかる態様は、言い換えれば下記のように表現することができる。
抽出対象の金属元素と非抽出対象の金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象の金属元素を抽出し、非抽出対象の金属元素と分離する液液接触工程を含む、金属元素の分離方法。
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
非抽出対象の金属元素としては、
リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)等の第1族元素(アルカリ金属元素);
マグネシウム元素(Mg)、カルシウム元素(Ca)、ストロンチウム元素(Sr)、バリウム元素(Ba)等の第2族元素(アルカリ土類金属元素);
スカンジウム元素(Sc)、イットリウム元素(Y)等の第3族元素;
チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)等の第4族元素;
バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)等の第5族元素;
クロム元素(Cr)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)等の第6族元素;
マンガン元素(Mn)、テクネチウム元素(Tc)、レニウム元素(Re)等の第7族元素;
鉄元素(Fe)、ルテニウム元素(Ru)、オスミウム元素(Os)等の第8族元素;
コバルト元素(Co)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)等の第9族元素;
ニッケル元素(Ni)、パラジウム元素(Pd)、白金元素(Pt)等の第10族元素;
銅元素(Cu)、銀元素(Ag)、金元素(Au)等の第11族元素;
亜鉛元素(Zn)、カドミウム元素(Cd)、水銀元素(Hg)等の第12族元素;
アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、インジウム元素(In)、タリウム元素(Tl)等の第13族元素;
ゲルマニウム元素(Ge)、スズ元素(Sn)、鉛元素(Pb)等の第14族元素;
ヒ素元素(As)、アンチモン元素(Sb)、ビスマス元素(Bi)等の第15族元素;
ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、プロメチウム元素(Pm)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)、ジスプロシウム元素(Dy)、ホルミウム元素(Ho)、エルビウム元素(Er)、ツリウム元素(Tm)、イッテルビウム元素(Yb)、ルテチウム元素(Lu)等のランタノイド;
アクチニウム元素(Ac)、トリウム元素(Th)、プロトアクチニウム元素(Pa)、ウラン元素(U)、ネプツニウム元素(Np)、プルトニウム元素(Pu)、アメリシウム元素(Am)、キュリウム元素(Cm)、バークリウム元素(Bk)、カリホルニウム元素(Cf)、アインスタイニウム元素(Es)、フェルミウム元素(Fm)、メンデレビウム元素(Md)、ノーベリウム元素(No)、ローレンシウム元素(Lr)等のアクチノイド
が挙げられる。
この中でも、ナトリウム元素(Na)、カリウム元素(K)、マグネシウム元素(Mg)、オスミウム元素(Os)、ロジウム元素(Rh)、イリジウム元素(Ir)、白金元素(Pt)が好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1:ブチルハイドロゲン (2−(ジオクチルアミノ)−2−オキソエトキシ)メチルホスホネート(DOAOBPA)の合成>
下記反応式で表される反応によって、2−クロロ−N,N−ジオクチルアセトアミド(以下、「ClDOAA」と略す場合がある。)を合成した。
ジオクチルアミン25g(純度98%,101mmol)を100mLの脱水ジクロロメタンに溶解させ、さらにトリエチルアミン10.32g(純度99%,101mmol)を加えて氷浴で撹拌した。この溶液に脱水ジクロロメタン10mLに溶解させた塩化クロロアセチル14.1g(純度,97%,121mmol)を、氷浴中アルゴン置換の下、ゆっくり滴下した。滴下後、室温で3時間撹拌して反応を終了した。反応後、0.1mol/L塩酸100mLで3回、超純水100mLで4回分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。さらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製を行った。溶媒を完全に減圧留去し、黄色粘性液体28.1g(収率:87.5%)を得た。得られた合成物を核磁気共鳴法(NMR)、元素分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF/MS)を用いて同定したところ、2−クロロ−N,N−ジオクチルアセトアミド(ClDOAA)であることを確認した。
下記反応式で表される反応によって、ジブチルヒドロキシメチルホスホネート(以下、「DBHMP」と略す場合がある。)を合成した。
亜リン酸ジブチル25.23g(純度95%,123.4mmol)とパラホルムアルデヒド4.33g(純度94%,135.7mmol)にトリエチルアミン13.24g(純度99%,129.5mmol)を加え、アルゴン置換の下、90℃で16時間還流した。還流後、反応溶液を室温に放冷し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。生成物をジクロロメタン40mLに溶解し、塩化アンモニウム飽和水溶液40mL、炭酸ナトリウム飽和水溶液40mL、塩化アンモニウム飽和水溶液40mL、塩化ナトリウム飽和水溶液40mL、超純水40mLの順で分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、溶媒を完全に減圧留去することで、無色透明液体21.11g(収率76.3%%)を得た。得られた生成物をNMRを用いて同定したところ、ジブチルヒドロキシメチルホスホネート(DBHMP)であることを確認した。
下記反応式で表される反応によって、ジブチル(2−(ジオクチルアミノ)−2−オキシエトキシ)メチルホスホネート(以下、「DBDOAOP」と略す場合がある。)を合成した。
DBHMP7.7g(34.3mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)60mLに溶解し、氷浴で冷却しながら水素化ナトリウム1.65g(純度60% in oil,41.3mmol)を加えた。アルゴン置換の下、0℃で1時間撹拌した。ヨウ化カリウムを微量加え、脱水THF20mLに溶解させたClDOAA12.0g(37.7mmol)を0℃でアルゴン置換の下、ゆっくり滴下し、室温で24時間撹拌した。反応後、塩化アンモニウム飽和水溶液50mLで分液を行い、回収した有機相をエバポレーターにより減圧留去した。生成物を酢酸エチル50mLに溶解し、超純水50mLで2回分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。さらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン→酢酸エチル)により精製を行った。溶媒を完全に減圧留去し、無色透明液体10.78g(収率62.1%)を得た。得られた合成物をNMRを用いて同定したところ、ジブチル(2−(ジオクチルアミノ)−2−オキシエトキシ)メチルホスホネート(DBDOAOP)であることを確認した。
下記反応式で表される反応によって、ブチルハイドロゲン(2−(ジオクチルアミノ)−2−オキソエトキシ)メチルホスホネート(以下、「DOAOBPA」と略す場合がある。)を合成した。
上記で合成したDBDOAOP5.06g(10mmol)をエタノール150mLに溶解した。超純水10mLに溶解させた水酸化カリウム0.66g(純度85%,10mmol)をアルゴン置換の下、ゆっくり滴下し、100℃で24時間還流した。還流後、エバポレーターによりエタノールを減圧留去し、クロロホルム100mLを加えた。1mol/L塩酸100mLで3回、超純水100mLで3回分液を行い、回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムをろ過し、エバポレーターにより溶媒を減圧留去した。さらに、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒 クロロホルム:エタノール=100:1)により精製を行った。溶媒を完全に減圧留去し、無色透明液体3.51g(収率78.1%)を得た。得られた合成物をNMR、元素分析、MALDI−TOF/MSを用いて同定したところ、DOAOBPAであることを確認した。なお、図1にH NMRの結果を示す。
H NMR(400MHz,CDCl,25℃): δ0.88(m,6H,CH),0.93(t,3H,CH),1.28(s,20H,CH(CHCH),1.40(sextet,2H,CHCH),1.52(m,4H,CHCHN),1.67(quintet,2H,CHCHOP),3.11(t,2H,C
N),3.30(t,2H,CHN),3.92(d,2H,OCHP),4.09(quartet,2H,CHOP),4.33(s,2H,COCHO),9.56(s,1H,POH).
<比較例1:ジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)の合成>
比較例1として、ジオクチルジグリコールアミド酸(以下、「DODGAA」と略す場合がある。)を準備した。DODGAAは、下記反応式で表される反応によって合成した。なお、DODGAAの合成方法については、本発明者らが既に報告している非特許文献1等を参照することができる。
無水ジグリコール酸4.17g(0.036mol)を三角フラスコに入れ、40mLのジクロロメタンに懸濁させた。滴下漏斗にジクロロメタン10mLに溶解させたオクチルアミン7g(0.0284mol)を入れ、氷浴の下、撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下後、室温で一晩撹拌し、溶液が透明になっていることを確認し、反応を終了した。超純水で中性になるまで4回分液を行い、水溶性不純物を除去した。分液後の溶液を硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾過により取り除いた。エバポレーターにより溶媒を減圧留去した後、真空ポンプで完全に溶媒を除去した。ヘキサンで溶液が透明になるまで3回再結晶を行い、凍結乾燥機で完全に乾燥させた。白色粉末。収量9.57g、収率94.2%。得られた合成物は元素分析及びH NMRにより、DODGAAであることを確認した。
<実施例2:DOAOBPAを用いた金属イオンの抽出>
アルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr,Ba)、希土類金属(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)、遷移金属(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W,Re)、貴金属(Ru,Rh,Pd,Ag,Os,Ir,Pt,Au)、典型金属(Al,Zn,Gd,Cd,In,Hg,Tl,Pb)をそれぞれ0.01mM(Na又はKに対しては0.1mM)含んだpH−1.0〜5.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜5.0の水溶液は2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。ただし、Naの抽出実験では、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化リチウムを用いた。また、Hf、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出実験では、0.1M塩化ナトリウムを含んだ酢酸ナトリウム緩衝液に0.1M塩酸を加えてpH1.0〜5.0に調整し、pH1.0以下の水溶液については塩酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)又は誘導プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸を用いた。但し、Hf、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auについては、5M塩酸、1Mチオ尿素水溶液、
又は0.2M EDTA水溶液を用いた。また、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Reについては、5M硝酸又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MS又はICP−AESを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。DOAOBPAを用いた56金属イオンの抽出挙動を図2に示す。図2の横軸は水相の抽出後のpH、縦軸は抽出率(単位:%)、黒丸がDOAOBPAを用いた抽出率の結果である。
<比較例2:DODGAAを用いた金属イオンの抽出>
水相のpHを0.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5%1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図2に示し、白丸がDODGAAを用いた抽出率の結果である。
(結果)
Liの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が46%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Naの場合、DOAOBPAを用いるとpH4.2で抽出率が25%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Kの場合、DOAOBPAを用いるとpH4.2で抽出率が33%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Rbの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が33%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Csの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.7以上で少なくとも抽出率が16%を超え、pH4.5で抽出率が35%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Mgの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.0以上で少なくとも抽出率が38%を超え、pH2.9以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Caの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.1以上で少なくとも抽出率が25%を超え、pH2.0以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Srの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が45%を超え、pH2.5以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Baの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が36%を超え、pH2.5以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Scの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Yの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Laの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上で少なくとも抽出率が40%を超え、pH0.6以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Ceの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が73%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAA
と比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Prの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が84%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Ndの場合、DOAOBPAを用いるとpH−0.7以上で少なくとも抽出率が84%を超え、pH0.4以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Smの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Euの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Gdの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Tbの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Dyの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Hoの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Erの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.3以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Tmの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Ybの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Luの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH2.2以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Tiの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が95%を超え、特にpH0.0以上pH3.6以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Vの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が55%を超え、特にpH3.0以上pH3.6以下の範囲で少なくとも抽出率が72%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Crの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.4以上で少なくとも抽出率が40%を超え、pH2.0以上で少なくとも抽出率が96%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Mnの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が50%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Feの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.5以下の範囲で少なくとも抽出率が70%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Coの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.2以上で少なくとも抽出率が52%を超え、pH3.2以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Niの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.4以上で少なくとも抽出率が57%を超え、pH3.2以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Cuの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.8以上で少なくとも抽出率が44%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Zrの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が76%を超え、特にpH0.0以上pH3.6以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Nbの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が90%を超え、特にpH0.0以上pH3.6以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Moの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が94%を超え、特にpH0.5以上pH3.1以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Hfの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH3.0以下の範囲で少なくとも抽出率が50%を超え、特にpH−1.0以上pH1.5以下の範囲で定量的な抽出が起こった。また、pH3.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が50%を超え、pH4.0で抽出率が97%に達した。DODGAAと比較して、抽出挙動に大きな違いがあり、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上した。
Taの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が90%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Wの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が46%を超え、特にpH0.0以上pH2.5以下の範囲で少なくとも抽出率が85%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Reの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.8以下の範囲で少なくとも抽出率が10%を超え、特にpH0.0以上pH1.5以下の範囲で少なくとも抽出率が20%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が若干向上した。
Ruの場合、DOAOBPAを用いるとpH2.0以上で抽出が起こり、pH3.5付近で抽出率が57%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が若干向上した。
Rh、Pd、Ptの場合、pH−1.0以上pH4.0以下の範囲でDOAOBPA及びDODGAAのどちらを用いてもほとんど抽出されなかった。
Os、Irの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH3.5以下の範囲でほとんど抽出されず、pH4.0付近で抽出率が7%であった。DODGAAはほとんど抽出能を示さなかった。
Agの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.0以上で少なくとも抽出率が32%を超え、pH4.1で抽出率が80%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Auの場合、DOAOBPAを用いるとpH−1.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が60%を超え、特にpH−1.0以上pH0.5以下で少なくとも抽出率が93%を超えた。DODGAAと比較して、抽出能が向上した。
Alの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.1以上pH3.0以下の範囲で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Znの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.8以上で少なくとも抽出率が50%を超え、pH2.9以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Gaの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.5以上pH3.0以下の範囲で少なくとも抽出率が60%を超え、特にpH1.1以上pH2.5以下の範囲で少なくとも抽出率が96%を超えた。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し
、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Cdの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.6以上で少なくとも抽出率が43%を超え、pH2.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
Inの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.0以上pH4.0以下の範囲で少なくとも抽出率が43%を超え、特にpH0.0以上pH2.0以下の範囲で少なくとも抽出率が94%を超えた。DODGAAと比較して、強酸性条件では抽出能が飛躍的に向上し、弱酸性条件では抽出能が低下した。
Hgの場合、DOAOBPAを用いるとpH1.5以上で少なくとも抽出率が77%を超え、pH3.0以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が向上した。
Tlの場合、DOAOBPAを用いるとpH3.0以上で少なくとも抽出率が22%を超え、pH4.0で抽出率が73%に達した。DODGAAと比較して、抽出能が飛躍的に向上した。
Pbの場合、DOAOBPAを用いるとpH0.8以上で少なくとも抽出率が53%を超え、pH1.6以上で定量的な抽出が起こった。DODGAAと比較して、抽出能が大幅に向上した。
<実施例3:DOAOBPAを用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出分離>
Pb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0〜4.8の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜4.8の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は3M硝酸を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図3に示す。
<比較例3:DODGAAを用いたPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdの抽出分離)
水相のpHを2.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図4に示す。
<比較例4:PC−88A又はD2EHPAを用いたPb、Cr、Mn、Co,Ni、Cu、Zn、Cdの抽出分離>
水相のpHを0.8〜7.0に調整し、抽出剤(2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシルエステル(PC−88A)、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA))をイソオクタンに溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で抽出実験を行った。PC−88Aによる抽出結果を図5、D2EHPAによる抽出結果を図6に示す。
(各抽出剤のPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdに対する抽出挙動の比較)
DOAOBPA、DODGAA、PC−88A、D2EHPAのPbに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図7、Crに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図8、Mnに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図9、Cdに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図10、Znに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図11、Cuに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図12、Coに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図13、Niに対する抽出挙動の比較を示した抽出曲線を図14に示す。
(結果)
図3に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いた場合、Pb>Cr>Mn=Cd>Zn=Cu>Co>Niの順番で金属イオンを抽出し、Pbに対して選択性を示した。例えば、水溶液のpHを1.0程度に調整して抽出を行えば、Pbを選択的に抽出し、Cr、Mn、Cd、Zn、Cu、Co、Niから分離することができる。また、本発明の抽出剤の抽出特性を利用すれば、pHを調整することによって、各金属を個別に抽出する多段階の工程を組み、それぞれの成分ごとに分離するプロセスを構築できる。
一方、図4に示すように、比較例の抽出剤(DODGAA)の場合、Pb>Cu>Cd>Zn>Mn>Co>Ni>Crの順番で金属イオンを抽出し、Pbに対して選択性を示した。しかし、DODGAAはDOAOBPAに比べてPbに対する抽出能が低く、強酸性溶液の条件ではPbを十分に抽出することができなかった。例えば、DOAOBPAはpH1.6以上でPbを定量的に抽出できるが、DODGAAはpHを4.2以上に調整しなければPbを定量的に抽出できない。
また、図5および図6に示すように、比較例のリン酸系抽出剤(PC−88A、D2EHPA)の場合、PC−88AはZn>Pb>Cu>Mn>Cd>Co>Cr>Niの順番で、D2EHPAはZn>Pb>Mn=Cd=Cu=Cr>Co>Niの順番で金属イオンを抽出し、両抽出剤共にZnに対して選択性を示した。つまり、リン酸系抽出剤ではZnを含む場合、Pbの分離は困難である。
また、図7から図14に示すようにDOAOBPAは、DODGAA、PC−88A、D2EHPAのどれよりもPb、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cdに対して高い抽出能を示した。例えば、DODGAA、PC−88A、D2EHPAを用いた場合、水溶液を弱酸から中性に調整しなければCo及びNiを定量的に抽出できないが、DOAOBPAを用いた場合、pH3.2以上でCo及びNiを定量的に抽出できる
<実施例4:DOAOBPAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出分離>
Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auをそれぞれ0.01mM含んだpH−1.0〜4.7の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜4.7の水溶液は0.1M塩化ナトリウムを含んだ酢酸ナトリウム緩衝液に0.1M塩酸を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については塩酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M塩酸、1Mチオ尿素水溶液、又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図15に示す。
<比較例5:DODGAAを用いたRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Auの抽出分
離>
水相のpHを0.0〜6.0に調整し、抽出剤DODGAAをイソオクタン(5% 1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例4と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図16に示す。
(結果)
図15に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いることで、Auの抽出率がpH−1.0〜2.0の範囲で63%以上、特にpH−1.0〜0.5の範囲で93%以上を示した。RuはpH2.0以上で抽出が起こり、pH3.5付近で抽出率が57%に達した。他のRh、Pd、Os、Ir、PtはpH−1.0〜4.0の範囲でほとんど抽出されないことが確認された。つまり水溶液のpHを−1.0〜2.0の範囲に調整して抽出を行えば、Auを選択的に抽出し、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから分離することができる。
一方、図16に示すように、比較例の抽出剤(DODGAA)では、Auの抽出率が最大で50%程度であり、定量的な抽出ができない。DODGAAはDOAOBPAに比べてAuに対する抽出能が低く、Auの分離に適していない。
<実施例5:DOAOBPAを用いたTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの抽出分離>
Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wをそれぞれ0.01mM含んだpH0.0〜5.0の水溶液を調製した。このとき、pH1.0〜5.0の水溶液はMES緩衝液に硝酸又は水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製した。pH1.0以下の水溶液については硝酸のみで調製した。
調製した水溶液と、それと同体積の10mM DOAOBPAを含むイソオクタン溶液を混合し、25℃で30分間以上激しく振盪した。振盪後、両相を分取し、分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、ICP−MSを用いて、各金属イオンの濃度を測定した。
一方、分取した有機相と、それと同体積の逆抽出水溶液を混合し、25℃で1時間以上激しく振盪することで逆抽出を行った。逆抽出溶液は5M硝酸又は0.2M EDTA水溶液を用いた。逆抽出相中の金属イオン濃度をICP−MSを用いて測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を、有機相中の物質量/初期条件の物質量×100で定義し、算出した。抽出結果を図17に示す。
<比較例6:DODGAAを用いたTi、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの抽出分離>
水相のpHを1.0〜6.0に調整し、抽出剤(DODGAA)をイソオクタン(5%
1−オクタノール)に溶解した有機相を用いたこと以外は、実施例5と同じ方法で抽出実験を行った。結果を図18に示す。
(結果)
図17に示すように、実施例の抽出剤(DOAOBPA)を用いた場合、Ti、Zr、Nb、Mo、Taの抽出率がpH0.0〜3.6の範囲で少なくとも90%以上を示した。Vにおいて、pH2.0〜3.8の範囲で少なくとも抽出率が55%を超え、特にpH3.0〜3.6の範囲で少なくとも抽出率が72%を超えた。Wにおいて、pH0.0〜3.8の範囲で少なくとも抽出率が46%を超え、特にpH0.0〜2.5の範囲で少なくとも抽出率が85%を超えた。
一方、図18に示すように、比較例の抽出剤(DODGAA)を用いた場合、Vの抽出率はpH2.5で11%に達するが、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、WはpH1.0〜4.0の範囲でほとんど抽出されなかった。つまり、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ta、Wいずれにおいても、DODGAAはDOAOBPAに比べて著しく抽出能が劣ることが確認された。
本発明の化合物等は、レアメタルや貴金属等の有価金属や毒性の高い有害金属を抽出するための抽出剤として利用することができる。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
    (式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
  2. 請求項1に記載の化合物又はその塩からなる、金属元素を抽出するための抽出剤。
  3. 抽出対象となる金属元素が、リチウム元素(Li)、ルビジウム元素(Rb)、セシウム元素(Cs)、タリウム元素(Tl)、チタン元素(Ti)、ジルコニウム元素(Zr)、ハフニウム元素(Hf)、バナジウム元素(V)、ニオブ元素(Nb)、タンタル元素(Ta)、モリブデン元素(Mo)、タングステン元素(W)、鉛元素(Pb)、クロム元素(Cr)、マンガン元素(Mn)、カドミウム元素(Cd)、銅元素(Cu)、コバルト元素(Co)、ニッケル元素(Ni)、水銀元素(Hg)、金元素(Au)、ルテニウム元素(Ru)、ガリウム元素(Ga)、及びインジウム元素(In)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である、請求項2に記載の抽出剤。
  4. 溶媒抽出法用である、請求項2又は3に記載の抽出剤。
  5. 抽出対象となる金属元素を含む水溶液を準備する準備工程、並びに下記一般式(1)で表される化合物又はその塩の存在下、前記準備工程で準備した水溶液と有機溶媒を接触させて、抽出対象となる金属元素を抽出する液液接触工程を含む、金属元素の抽出方法。
    (式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ同一種又は異種の炭化水素基を表す。但し、R、R、及びRの炭化水素基の炭素数の合計が、8〜48である。)
  6. 前記準備工程で準備した水溶液のpHが、6.0以下である、請求項5に記載の金属元素の抽出方法。
  7. さらに前記液液接触工程で接触させた水溶液と有機溶媒を分液する分液工程、及び前記分液工程で分液した有機溶媒に、前記分液工程で分液した水溶液とは別の水溶液を接触させる逆抽出工程を含む、請求項5又は6に記載の金属元素の抽出方法。
  8. 前記準備工程で準備した水溶液が、非抽出対象の金属元素を含み、前記液液接触工程において前記抽出対象となる金属元素を抽出して、非抽出対象の金属元素と分離する、請求項5〜7の何れか1項に記載の金属元素の抽出方法。
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