JP6572836B2 - 吸収性物品および吸収性物品の製造方法 - Google Patents
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Description
ところが、吸収体が不規則に折れ曲がったり捩れたりすると、着用者に対する触感や吸液性の低下を招き、着用者の快適性を確保することができないおそれがある。たとえば、吸収体において着用者の股下に配置される部位は、液体が排泄される主な部位であることから着用者に密着させて装着すべきであるが、脚部に挟まれて変形しやすいため、着用者の快適性大きく損なう場合がある。
たとえば、長手方向に沿って吸収体の股下部が凹設された溝状部に加えて、長手方向に吸収体を収縮させる弾性部材が設けられた吸収性物品が提案されている。この吸収性物品によれば、溝状部によって吸収体の折り曲がりが案内されるため、吸収体を所定形状に折り曲げることができる。さらに、弾性部材によって折り曲げられた吸収体が着用者の肌面側に持ち上げられるため、折り曲げられた状態の吸収体を保持することができる(特許文献1参照)。
なお、ここでいう目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置づけることができる。
吸収性物品は、着用時間の経過と共に剛性が低下し溝状部間が着用者の肌面側に持ち上げられた形状が保持され難くなるが、吸収体には凹凸パターンが形成されているので、この凹凸パターンによって剛性が高められ、上記形状が長時間保持され易くなり、長時間にわたって着用者の快適性を向上させることができる。
[1.紙おむつ]
[1−1.基本的な構成]
まず、図1および図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。この紙おむつ1は、幅方向の中心線Cを基準として対称に形成されている。なお、図2では、各部材における幅方向の中心線を示す符号について、各部材を示す符号を符号「C」に下付きで追記している。
紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
また、股下部1Bの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部1Bが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。
紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体12(図1では太破線で示す)が設けられている。図1および図2では、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい吸収体12を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体12を用いてもよい。
たとえば、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合されたコアをラップシートで被包(ラップ)したものがマット12に用いられる。
マット12の肌面側には、トップシート11が積層されている。
トップシート11は、紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このトップシート11は、着用者から排泄された液体をマット12に吸収させるために、液体を透過させる性質(液透過性)をもつ。そして、トップシート11は、マット12の肌面側を被覆する。
サイドシート10は、トップシート11と同様に紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このサイドシート10は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させない性質(液不透過性)をもつ。
バックシート13は、マット12からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもつ。このバックシート13は、マット12を非肌面側から被覆する。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート13に用いられる。
なお、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
このフロントパッチ3は、止着テープ2とともにファスニング機構を構成するものであり、止着テープ2は、後身頃1Cの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。図1および図2では、後身頃1Cの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ2を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ2が設けられていればよい。これらの止着テープ2は、後身頃1Cの両縁部のそれぞれから幅方向外側へ延設される。
面状ファスナーは、表面に多数の突起(たとえば鉤状やきのこ状など)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ2およびフロントパッチ3のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材およびループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。
つぎに、図1〜図3を参照して紙おむつ1の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部1Bを所定形状に折り曲げて保持するための構造(以下「折曲保持構造」という)を述べる。なお、股下部1Bの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部1Bを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ1に設けられている。
この折曲保持構造として、股下部1Bの形状を所定形状に折り曲げるための溝状部として一次元状のエンボス部(以下、単にエンボス部と言う)20が設けられ、所定形状に折り曲げられた股下部1Bの形状を保持するためのサポートギャザー31が設けられている。そのうえ、エンボス部20によって股下部1Bを所定形状へ確実に折り曲げるための構成がマット12に設けられている。
つまり、マット12の全面に凹部および凸部で構成される凹凸パターン(二次元状エンボス部とも言う)121が形成されている。なお、凹凸パターン121については、図1にその凹部を示し、図2〜図4では省略する。
エンボス部20は、股下部1Bにおいて長手方向に延びて凹設され、少なくとも一対(二本)の部位である。なお、前身頃1Aや後身頃1Cにはエンボス部20が設けられていない。
ここでは、トップシート11およびマット12にエンボス部20が設けられている。すなわち、紙おむつ1の肌面側にエンボス部20が配置される。なお、エンボス部20は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
図1および図2では、幅方向の中心線Cを基準として対称に配置され、互いに平行であって二本で一対をなす直線状のエンボス部20を例示する。ただし、エンボス部20は、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよいし、弧状や波型といった他の形状であってもよい。さらに、三本以上のエンボス部20が設けられてもよい。
本実施形態では、凹凸パターン121は、トップシート11が積層されたマット12に形成されているが、凹凸パターン121は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
なお、エンボス部20が股下部1Bを所定形状に折り曲げるのを案内する際に、凹凸パターン121がこれを妨げることのないように、凹凸パターン121は、エンボス部20よりも弱めのプレスを加えるようにしている。
また、たとえば、複数層からなる場合のマット12において、凹凸パターン121は全層ではなく単層あるいは一部の層に対してのみ形成し、一方で、エンボス部20は、少なくともパルプを含む層の全て(2層以上)など、凹凸パターン121の層よりも多くの層に対して形成するようにしてもよい。これらにより、凹凸パターン121の凹部直下におけるマット12の密度は、エンボス部20の直下におけるマット12の密度よりも低くなる。
サポートギャザー31は、装着状態において、マット12を肌面側に持ち上げて支持するための部位である。このサポートギャザー31は、エンボス部20よりも幅方向外側に配置される。ここでは、股下部1Bの領域内において、厚み方向において(平面視で)少なくとも一部がマット12と重なる位置にサポートギャザー31が配置される。
また、サポートギャザー31では、皺寄せられた紙おむつ1が長手方向に延びている。ここでは、前身頃1Aおよび股下部1Bに亘ってサポートギャザー31が設けられている。
第一弾性部材41は、サポートギャザー31と同様に、股下部1Bの領域内において、平面視で少なくとも一部がマット12と重なる位置に、エンボス部20よりも幅方向外側に配置され、長手方向に沿って設けられる。ここでは、エンボス部20と平行に第一弾性部材41が配置される。
この第一弾性部材41は、長手方向にマット12を収縮させるように設けられる。具体的に言えば、バックシート13とカバーシート14との間に第一弾性部材41が介装され、これらのシート13、14と伸張状態の第一弾性部材41の少なくとも股下部1Bの範囲内に位置する部分とが糊付けや縫合などによって互いに固定される。そのため、第一弾性部材41の収縮方向への弾性力によって、シート13、14が皺寄せられ、マット12が長手方向に収縮させられる。
立体ギャザー32は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー32では、サイドシート10の幅方向内側端縁部が第二弾性部材42(図1および図2では密破線で示す)によって肌面側に立設されるとともに皺寄せられる。
レッグギャザー33は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられる。このレッグギャザー33は、幅方向に突出しており、サイドシート20の幅方向外側端縁部、カバーシート14の幅方向外側端縁部およびバックシート13の幅方向外側端縁部が第三弾性部材43(図1では疎破線で示す)によって皺寄せられる。
つぎに、図4を参照して、装着状態の股下部1Bを説明する。
装着状態では、股下部1Bが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、股下部1Bの幅方向断面が「W」字状の所定形状に折り曲げられる。この「W」字状をなす部分を二つの並んだV字に準えて、一方のV字部分および他方のV字部分をV字部51、52と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折れと呼ぶ。
このように所定形状に折り曲げられた股下部1Bでは、V字部51、52のそれぞれの幅方向外側に、第一弾性部材41で形成されるサポートギャザー31が位置する。これらの第一弾性部材41あるいはサポートギャザー31によって、マット12が長手方向に収縮され、全体的に股下部1Bが肌面側に持ち上げられる。
[3.製造方法]
図5に示すように、まず、マット12の形成を行なう(ステップS10)。つまり、フラッフパルプにSAPが混合されたコアをラップシートで被包(ラップ)して、所定の長さにカットする。
また、第2プレス工程では第1プレス工程よりも高い加圧力でプレス加工を行なう。つまり、第1プレス工程では中圧でプレスし、第2プレス工程では高圧でプレスする。これによっても、エンボス部20が凹凸パターン121に対してより優先して形成される。
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
本実施形態の紙おむつ1によれば、エンボス部20においてマット12を確実に折り曲げることができる。さらに、第一弾性部材41によってマット12が長手方向に収縮されることで、マット12を肌面側に持ち上げ、エンボス部20でのマット12の折り曲げを確実に保持することができる。
よって、装着状態において紙おむつ1の股下部1Bが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。
したがって、紙おむつ1を長期間継続して使用した場合にも、マット12が折り曲げられた状態が保持され易くなり、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
また、凹凸パターン121は、幅方向の中心線Cを基準に対称に形成されるので、マット12が中心線Cを基準に対称な形状に折り曲げられた状態を保持しやすい。
また、止着テープ2の止め付けられるフロントパッチ3が通気性を有するため、紙おむつ1の蒸れを抑えることができる。
第1実施形態および以下の第2〜4実施形態の凹凸パターン121~124は、何れも、凹凸パターンが幅方向及び長手方向の二次元的な領域に配設されており、第2、4実施形態の凹凸パターン122、124は、第1実施形態の凹凸パターン121と同様に、凹部が少なくとも幅方向に線状に延びた複数の溝状である線状パターンを含んでいる。
第2実施形態について説明する。
図6に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と凹凸パターンのみが異なり、他の構成は同様である。また、その製造方法も第1実施形態と同様である。
波線状パターン122は、マット12の幅方向の剛性を適度に高めるため、マット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
なお、凹部が幅方向に互いに平行な線状に延びた複数の溝状である線状パターンには、波線状パターン122のほかに、波線に替えて直線とした直線状パターンや、波線に替えて他の曲線とした曲線状パターンや、円又は楕円の曲線を用いた曲線状パターンも考えられる。
つぎに、第3実施形態について説明する。
図7に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と凹凸パターンのみが異なり、他の構成は同様である。また、その製造方法も第1実施形態と同様である。
ドット状パターン123は、マット12の幅方向の剛性を適度に高めるため、マット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
つぎに、第4実施形態について説明する。
図8に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と同様に凹凸パターンが格子状パターンであるが、凹部の密度がエンボス部20の相互間領域のみ高められている変形格子状パターン124となっている。
つまり、変形格子状パターン124は、エンボス部20の相互間領域では、格子状パターンの凹部の幅が太くされて、他の部分124aよりも凹部が高密度な格子状パターン124bとされている。
なお、格子状パターンの凹部を高密度にさせるには、凹凸パターンの凹部の溝幅やドット径を大きくする以外に、凹部の溝やドット径の単位面積当たりの数を増やすようにしてもよい。或いは、格子状パターンの凹部をプレスする圧力を部分的に高めて、凹部の深さを深くして、マット12の密度が高い格子状パターンとしてもよい。
サポートギャザー31、第一弾性部材41は、幅方向に対称に設けられるものに限らず、幅方向中心に沿って長手方向に延びていてもよい。この場合には、幅方向の中心線Cに沿って紙おむつ1を折り曲げやすくなり、着用者の快適性を向上させることができる。
さらに、溝状部はプレス加工以外で加工してもよく、例えばエンボス部20に替えて、対応する部分のマット12が肉抜きあるいは貫通した溝状部がマット12に凹設されてもよい。
さらに、凹凸パターンは、幅方向の中心線Cに対して線対称或いは略線対称でなくてもよい。
また、エンボス部20は、マット12の非肌面側に設けられていてもよく、マット12の肌面側と非肌面側とに設けられていてもよい。
なお、エンボス部20は、前身頃1Aや後身頃1Cの一部に設けられてもよい。
1A 前身頃
1B 股下部
1C 後身頃
2 止着テープ
3 フロントパッチ
10 サイドシート
11 トップシート
12 マット(吸収体)
13 バックシート
14 カバーシート
20 エンボス部(溝状部)
31 サポートギャザー
41 第一弾性部材(弾性部)
51、52 V字部
121 凹凸パターン(格子状パターン)
122 凹凸パターン(波線状パターン)
123 凹凸パターン(ドット状パターン)
124 凹凸パターン(変形格子状パターン)
C 幅方向の中心線
Claims (12)
- 吸収体を有する吸収性物品であって、
少なくとも着用者の股下に配置される股下部において、長手方向に沿って前記吸収体に設けられた一対の溝状部と、
少なくとも前記股下部において、前記長手方向に延びて前記吸収体に設けられた一対の弾性部と、を備え、
前記吸収体の肌面側および非肌面側の少なくとも何れかの面の全面に凹部及び凸部で構成される凹凸パターンが形成され、
前記凹凸パターンの前記凹部は、前記吸収体において、一対の前記溝状部の相互間領域の方が他の領域よりも高密度に形成されている
ことを特徴とする吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、前記吸収体の前記肌面側に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載された吸収性物品。 - 前記弾性部は、幅方向においてそれぞれの前記溝状部の外側に並んで設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、前記凹部が幅方向に線状に延びた複数の溝状である線状パターンを含んでいる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、前記凹部が格子状に形成された溝状である格子状パターンを含んでいる
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、前記凹部が直線状、波線状、円又は楕円の曲線状の何れかの溝状である線状パターンを含んでいる
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、前記凹部が複数のドット状であるドット状パターンを含んでいる
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記凹凸パターンは、幅方向の中心線に対して線対称に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記吸収体を非肌面側から被覆するバックシートおよびカバーシートを有し、
前身頃と、前記股下部と、後身頃とが長手方向にこの順で設けられている
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載された吸収性物品。 - 前記前身頃の幅方向中間部に設けられたフロントパッチと、
前記後身頃の幅方向両端部のそれぞれに外方へ延設され、前記フロントパッチに止め付けられる止め付け部を有する止着テープと、を備えている
ことを特徴とする請求項9に記載された吸収性物品。 - 請求項1〜10の何れか1項に記載された吸収性物品を製造する製造方法であって、
前記吸収体にプレス加工によって前記凹凸パターンを加工する第1工程と、
前記吸収体にプレス加工によって前記溝状部を凹設する第2工程と、
前記溝状部の外側に前記弾性部を配設する第3工程と、を有している
ことを特徴とする吸収性物品の製造方法。 - 前記第1工程の後に、前記第2工程を実施する
ことを特徴とする請求項11に記載された吸収性物品の製造方法。
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