次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる積層ゴム体用接合部材の第1の参考例を示し、この接合部材1は、円筒状の外側ケース2と、外側ケース2の上部開口を塞ぐ上面視円形の蓋部3と、外側ケース2の内部に収容された内側ナット(内側部材)6と、内側ナット6の外周面6bと外側ケース2の内周面2bとの間に配されるせん断型複層筒状ゴム体(浮き上がり追従手段)7と、せん断型複層筒状ゴム体7の鉛直方向のせん断変形を規制するストッパプレート8等を備える。
内側ナット6は円筒状に形成され、内側ナット6の内周面6cには雌ねじ部6aが形成される。蓋部3の底面は外側ケース2の上端部2cに取付ボルト4を介して接合される。外側ケース2の下端部2dには接合部材1を取り付けるための据付板2aが設けられる。内側ナット6及び外側ケース2は、鋼、ステンレス鋼等の鋼材や鋼管又はアルミニウム等で形成される。
せん断型複層筒状ゴム体7は、円筒状ゴム7a、7b及び円筒状部材7c、7dの各々の部材を半径方向に交互に積層した状態で構成される。円筒状ゴム7a、7bに使用されるゴムにはいかなる材料のものも使用できるが、機械的特性に優れていることに加え、経年変化が小さく、さらに耐水性、耐オゾン性等の環境特性にも優れている材料が適する。
円筒状部材7c、7dは、一般構造用圧延鋼板、熱間圧延軟鋼板、冷間圧延鋼板又はステンレス鋼板、アルミニウム板等を円筒状に所定の径の大きさに曲げ成型された円筒状鋼板を使用してもよく、炭素鋼鋼管等の円筒状に予め成型されている円筒状鋼管を使用してもよい。これら鋼からなる材料に代え、せん断型複層筒状ゴムからなる接合部材に求められる、円筒状の軸方向へのせん断変形機能及び円筒状外周面方向からの圧縮力等に支障がない範囲であれば、アルミニウム等の非鉄金属材料や合成樹脂材料等も使用することができる。
隣接する円筒状ゴム7a、7bと円筒状部材7c、7dとは互いに接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。これによって、せん断型複層筒状ゴム体7は、円筒状ゴム7a、7bと円筒状部材7c、7dとが径方向に交互に積層された断面視同心円状の積層ゴム形状に形成される。
円筒状ゴム7aの内周面7fは内側ナット6の外周面6bに、円筒状部材7dの外周面7eは外側ケース2の内周面2bに接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。また、円筒状部材7dの外周面7eに雄ねじ、外側ケース2の内周面2bに雌ねじを設けて螺合させてもよい。
ストッパプレート8は円板状に形成され、ストッパボルト9が挿通される貫通孔8aを中心部に有し、貫通孔8aに挿通されたストッパボルト9が、内側ナット6の雌ねじ部6aに螺合することで、ストッパプレート8が内側ナット6に固定される。ストッパプレート8の外周面8bは外側ケース2の内周面2bと摺接する。このストッパプレート8の下面8cに円筒状部材7dの上面7gが当接することで、後述するように、せん断型複層筒状ゴム体7の過剰なせん断変形を防止するためのフェイルセーフ構造を構成することができる。
次に、上記接合部材1によって接合される積層ゴム体及び上部構造体等について、図2を参照しながら説明する。
構造物11の上部構造体12と下部構造体13との間に介装される積層ゴム体14は、ゴム層15aと補強板15bとを交互に積層し、上下部に鋼板15f、15gを内蔵する積層ゴム部15の上下端面の各々に上側フランジプレート17、下側フランジプレート18が接合されて形成される。ゴム層15aと補強板15bとの接触面は、加硫接着等により一体的に形成され、鋼板15f、15gと、上側及び下側フランジプレート17、18は、取付ボルト15h、15iにより連結される。積層ゴム部15の中央部の貫通孔には、円柱状の塑性金属15c、例えば鉛プラグが封入され、2枚のキャッププレート15d、15eで封止される。
上部構造体12の下面12aには、頭付きスタッド19を介してテンプレート20が固定され、下部構造体13の上面13aには、頭付きスタッド21を介してアンカープレート22が固定される。
次に、接合部材1を用いて積層ゴム体14を上部構造体12に装着する方法について図2及び図3(a)を参照しながら説明する。
接合部材1は上部構造体12の下端部に埋め込まれており、この接合部材1の内側ナット6の下端部6dをテンプレート20の貫通孔20aに挿入した後、内側ナット6の雌ねじ部6aに取付ボルト25を上側フランジプレート17を介して内側ナット6の下端面6e側から螺合させ、さらに外側ケース2の据付板2aをテンプレート20の上面20bに接合することで、接合部材1の内側ナット6を上側フランジプレート17に接合し、接合部材1の外側ケース2をテンプレート20に接合する。ここで、テンプレート20には接合部材1の外側ケース2を取り付けるものの、テンプレート20の厚さは従来と略々同じである。また、接合部材1全体は上部構造体12に埋め込まれ、上側フランジプレート17によって密封されるため、過度の防錆処理は不要である。これらにより従来に比較して大幅に製造・設置コストを削減することができる。
一方、下部構造体13側の下側フランジプレート18とアンカープレート22の接合は、図2(b)に示すように、頭付きスタッド26に固定された埋め込みナット27に複数の取付ボルト28を螺合させることによってなされる。これにより、積層ゴム体14が上部構造体12と下部構造体13との間に設置される。尚、下部構造体13側についても、接合部材1を用いて下側フランジプレート18とアンカープレート22とを接合してもよい。
次に、上記構成を有する接合部材1の動作について図3を参照しながら説明する。
通常は図3(a)に示す状態の構造物11に、地震等により振動が加わり、構造物11の上部構造体12にロッキング等により浮き上がりが生じ、図3(b)に示すように、積層ゴム体14の上側フランジプレート17と上部構造体12に固定されたテンプレート20との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7が外側ケース2を介してテンプレート20に固定されていると共に、接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7が内側ナット6を介して上側フランジプレート17の上面に接合されているため、せん断型複層筒状ゴム体7の円筒状ゴム7a、7bが鉛直方向にせん断変形して上側フランジプレート17のテンプレート20からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート8の下面8cにせん断型複層筒状ゴム体7の円筒状部材7dの上端部7gが当接してせん断型複層筒状ゴム体7の変形量を安全な範囲に抑制することができ、せん断型複層筒状ゴム体7の破損を防止することができる。
尚、上記参考例においては、頭付きスタッド19(図2(b)参照)を設けた場合について説明したが、接合部材1の外側ケース2によっても上部構造体12にせん断力を伝達することができるため、頭付きスタッド19を必ずしも設ける必要はない。下部構造体13側に接合部材1を用いる場合についても同様に、頭付きスタッド21を省略することができる。
さらに、上記参考例においては、接合部材1が浮き上がり追従手段としてせん断型複層筒状ゴム体7を備える場合について説明したが、他の浮き上がり追従手段を用いることもできる。以下、図4を参照しながら浮き上がり追従手段の他の例について説明する。尚、図4において、図1〜図3に示した接合部材1と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。
図4(a)に示す接合部材31は、図1〜図3に示した接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7に代えて、浮き上がり追従手段として単層のせん断型単層筒状ゴム体32を用いたものである。
せん断型単層筒状ゴム体32は、円筒状に形成され、上記せん断型複層筒状ゴム体7の円筒状ゴム7a、7bと同様の材質のゴムを使用することができる。せん断型単層筒状ゴム体32の内周面32aは内側ナット6の外周面6bに、せん断型単層筒状ゴム体32の外周面32bは、鋼材等からなるリング状部材33の内周面33aに、リング状部材33の外周面33bは外側ケース2の内周面2bに各々接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。
この接合部材31についても、浮き上がり追従手段としてせん断型単層筒状ゴム体32を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等により振動が加わり、構造物の上部構造体12にロッキング等により浮き上がりが生じ、積層ゴム体14の上側フランジプレート17と上部構造体12に固定されたテンプレート20との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、せん断型単層筒状ゴム体32の外周面32bがリング状部材33及び外側ケース2を介してテンプレート20の上面20bに固定され、せん断型単層筒状ゴム体32の内周面32aが内側ナット6を介して上側フランジプレート17の上面17aに接合されているため、せん断型単層筒状ゴム体32が鉛直方向にせん断変形して上側フランジプレート17のテンプレート20からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート8の下面8cにリング状部材33の上端部33cが当接してせん断型単層筒状ゴム体32の変形量を安全な範囲に抑制することができ、せん断型単層筒状ゴム体32の破損を防止することができる。
図4(b)に示す接合部材36は、上記接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7に代えて、浮き上がり追従手段としてすべり軸受37を用いたものである。
すべり軸受37は、多数の網目を有するエキスパンドメタル又は金網からなる金属シート(網状金属シート)の一方の面に、金属シートの網目を充填するようにして合成樹脂、好ましくはポリイミド樹脂若しくは四ふっ化エチレン樹脂又はこれらを混合したもの(以下「ポリイミド樹脂等」という。)を含む滑り層を形成した後に、このような滑り層が形成された金属シートを長尺の短冊状に切断したものが好ましく、円筒部を有する摺動部材としては、上記の金属シートを短冊状に切断し、この短冊状の金属シートを滑り層が内周側になるようにして一回巻回して、金属シートの互いの突き合わせ端の間で形成される一端面から他端面まで伸びたスリットを有した円筒体を形成し、その後、この円筒体をプレス成形して円筒部と鍔部とを一体的に有したものが好適である。しかし、すべり軸受37は、これに限定されず、板状の摺動部材としては、ポリイミド樹脂等からなる全体が合成樹脂製の板状体又は薄鋼板に焼結した多孔質焼結層にポリイミド樹脂等からなる合成樹脂を含浸させると共に、この多孔質焼結層の一方の面に同じくポリイミド樹脂等からなる合成樹脂滑り層を形成した板状体等であってもよく、円筒部を有している摺動部材としては、ポリイミド樹脂等からなる全体が合成樹脂製の円筒体又は薄鋼板に焼結した多孔質焼結層にポリイミド樹脂等からなる合成樹脂を含浸させると共に、この多孔質焼結層の一方の面に同じくポリイミド樹脂等からなる合成樹脂滑り層を形成した円筒体等であってもよい。すべり軸受37の外周面37aは、鋼材等からなるリング状部材38の内周面38aに、リング状部材38の外周面38bは外側ケース2の内周面2bに各々接着剤により頑強に接着される。また、すべり軸受37の内周面37bは、内側ナット6の外周面6bと摺動するように構成される。
この接合部材36についても、浮き上がり追従手段としてすべり軸受37を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等により振動が加わり、構造物の上部構造体12にロッキング等により浮き上がりが生じ、積層ゴム体14に固定された上側フランジプレート17と上部構造体12に固定されたテンプレート20との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、すべり軸受37及びリング状部材38を介して内側ナット6と外側ケース2とが鉛直方向に相対移動して上側フランジプレート17のテンプレート20からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート8の下面8cにリング状部材38の上端部38cが当接してすべり軸受37の滑り量を安全な範囲に抑制することができ、接合部材36の破損を防止することができる。
図4(c)に示す接合部材41は、上記接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7に代えて、浮き上がり追従手段として転がり軸受42を用いたものである。
転がり軸受42は、複数の鋼球若しくはステンレス鋼球又はセラミック球、複数の鋼製若しくはステンレス製又は樹脂製の円柱状のローラー等を備え、転がり軸受42を介して内側ナット6の外周面6bと外側ケース2の内周面2bとが鉛直方向に相対移動する。転がり軸受42の外輪42aは外側ケース2の内周面2bに接着剤により頑強に接着される。
この接合部材41についても、浮き上がり追従手段として転がり軸受42を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等により振動が加わり、構造物の上部構造体12にロッキング等により浮き上がりが生じ、積層ゴム体14の上側フランジプレート17と上部構造体12に固定されたテンプレート20との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、転がり軸受42を介して内側ナット6と外側ケース2とが鉛直方向に相対移動して上側フランジプレート17のテンプレート20からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート8の下面8cに転がり軸受42の外輪42aの上端部42bが当接して転がり軸受42の変位量を安全な範囲に抑制することができ、接合部材41の破損を防止することができる。
図4(d)に示す接合部材46は、上記接合部材1のせん断型複層筒状ゴム体7に代えて、浮き上がり追従手段として気体又は液体を封入したチューブ47を用いたものであり、本発明に相当するものである。
チューブ47は、ゴム部材として、合成ゴム、天然ゴム、シリコンゴム等の弾性体を用い、リング状又は円柱状の形状を有する少なくとも一つのチューブを外側ケース2と内側ナット6との隙間が微小になるように配置される。気体として空気、窒素、酸素、二酸化炭素等の人に対して無害である気体であればよく、液体として、水、作動油、シリコンオイル、高分子材料の粘性体等の触れたとしても人に無害である液体であれば封入することができる。チューブ47の外周面47aは、鋼材等からなるリング状部材48の内周面48aに、リング状部材48の外周面48bは外側ケース2の内周面2bに各々接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。
この接合部材46についても、浮き上がり追従手段としてチューブ47を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等により振動が加わり、構造物の上部構造体12にロッキング等により浮き上がりが生じ、積層ゴム体14の上側フランジプレート17と上部構造体12に固定されたテンプレート20との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、チューブ47等を介して内側ナット6と外側ケース2とが鉛直方向に相対移動して上側フランジプレート17のテンプレート20からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート8の下面8cにリング状部材48の上端部48cが当接してチューブ47の変位量を安全な範囲に抑制することができ、接合部材46の破損を防止することができる。
尚、上記参考例においては、円筒状部材7d、リング状部材33等を外側ケース2の内周面2bに設けたが、これらを内側ナット6の外周面6bにも設けることができ、外側ケース2の内周面2bに設けずに内側ナット6の外周面6bのみに設けることもできる。また、円筒状部材7d、リング状部材33等を設けずに、円筒状ゴム7a、7b、せん断型単層筒状ゴム体32等を外側ケース2の内周面2bや内側ナット6の外周面6bに直接接着することもできる。
図5は、上記接合部材1等と基本構成が共通する接合部材51を示し、この接合部材51は、接合部材1の外側ケース2に相当する四角筒状の外側ケース52と、外側ケース52の上部開口を塞ぐ上面視四角形の蓋部(接合部材1の蓋部3に相当、図5には不図示)と、外側ケース52の内部に収容された内側ナット56(接合部材1の内側ナット6に相当)と、内側ナット56と外側ケース52との間に配される4つの浮き上がり追従手段57と、浮き上がり追従手段57の鉛直方向のせん断変形を規制するストッパプレート58と、浮き上がり追従手段57と外側ケース52との間に四角筒状部材59等を備える。
内側ナット56は、外周面56cが四角形状で内周面56bが円形状の四角筒状に形成され、内側ナット56の内周面56bには雌ねじ部56aが形成される。ストッパプレート58は上面視四角形に形成され、中心部にストッパボルト(接合部材1のストッパボルト9に相当、図5には不図示)が挿通される貫通孔58aを有し、貫通孔58aに挿通されたストッパボルトが、内側ナット56の雌ねじ部56aに螺合することで、ストッパプレート58が内側ナット56に固定される。ストッパプレート58の外周面58bは外側ケース52の内周面52aと摺接する。内側ナット56の外周面56cは浮き上がり追従手段57の内周面57aに、浮き上がり追従手段57の外周面57bは四角筒状部材59の内周面59aに、四角筒状部材59の外周面59bは外側ケース52の内周面52aに各々接着剤により頑強に接着される。内側ナット56、外側ケース52及び四角筒状部材59は、鋼、ステンレス鋼等の鋼材や鋼管又はアルミニウム等で形成される。
浮き上がり追従手段57には、上述の複層又は単層の弾性体や、すべり軸受又は転がり軸受、あるいは気体又は液体を封入したチューブ等を用いることができる。
この接合部材51についても、浮き上がり追従手段57を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等が発生しても、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート58の下面58cに四角筒状部材59の上端部59cが当接して浮き上がり追従手段57の変形量を安全な範囲に抑制することができ、浮き上がり追従手段57の破損を防止することができる。
尚、四角筒状部材59を、筒状ではなく、図5(c)に示すように、浮き上がり追従手段57の寸法と同一の4枚の板状部材59A、59B・・(他の2つは不図示)で構成することもできる。これにより、浮き上がり追従手段57の加硫接着等を容易に行うことなどが可能となり、製造コストの削減に繋がる。
図6は、上記接合部材1や接合部材51と基本構成が共通する接合部材61を示し、この接合部材61は、接合部材1の外側ケース2に相当する八角筒状の外側ケース62と、外側ケース62の上部開口を塞ぐ上面視八角形の蓋部(接合部材1の蓋部3に相当、図6には不図示)と、外側ケース62の内部に収容された内側ナット66(接合部材1の内側ナット6に相当)と、内側ナット66と外側ケース62との間に配される4つの浮き上がり追従手段67と、浮き上がり追従手段67の鉛直方向のせん断変形を規制するストッパプレート68と、浮き上がり追従手段67と外側ケース62との間に八角筒状部材69等を備える。
内側ナット66は、外周面66bが八角形状で内周面66cが円形状である八角筒状に形成され、内側ナット66の内周面66cには雌ねじ部66aが形成される。ストッパプレート68は上面視八角形に形成され、中心部にストッパボルト(接合部材1のストッパボルト9に相当、図6には不図示)が挿通される貫通孔68aを有し、貫通孔68aに挿通されたストッパボルトが、内側ナット66の雌ねじ部66aに螺合することで、ストッパプレート68が内側ナット66に固定される。ストッパプレート68の側面は外側ケース62の内周面62bと摺接する。浮き上がり追従手段に上述の複層又は単層の弾性体を使用する場合には、内側ナット66の外周面66bは浮き上がり追従手段67の内周面67aに、浮き上がり追従手段67の外周面67bは八角筒状部材69の内周面69aに、八角筒状部材69の外周面69bは外側ケース62の内周面62bに各々接着剤により頑強に接着される。内側ナット66、外側ケース62及び八角筒状部材69は、鋼、ステンレス鋼等の鋼材や鋼管又はアルミニウム等で形成される。
浮き上がり追従手段67には、上述の複層又は単層の弾性体や、すべり軸受又は転がり軸受、あるいは気体又は液体を封入したチューブ等を用いることができる。
この接合部材61についても、浮き上がり追従手段67を備えることで、図2及び図3の接合部材1に代えて使用した場合、地震等が発生しても、積層ゴム体14の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体14の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体14の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート17とテンプレート20との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパプレート68に八角筒状部材69が当接して浮き上がり追従手段67の変形量や変位量を安全な範囲に抑制することができ、浮き上がり追従手段67の破損を防止することができる。
尚、この接合部材61についても、八角筒状部材69を、筒状ではなく、浮き上がり追従手段67の寸法と同一の4枚の板状部材を備える構造とすることもでき、これによって浮き上がり追従手段57の加硫接着を容易に行うことなどが可能となり、製造コストの削減に繋がる。
次に、本発明にかかる積層ゴム体用接合部材の第2の参考例について説明する。図7に示すように、この接合部材1xは、上記接合部材1の外側ケース2に設けられていた据付板2aを備えず、下端部2dの下端を、内側ナット6の下端と同一レベルに合わせた外側ケース2xを有する。その他の構成は、上記第1の参考例と同様である。この外側ケース2xを用いることで、テンプレート20を設けずに、上側フランジプレート17を上部構造体12に直接接続することもできる。尚、円筒状部材7dの外周面7eは外側ケース2xの内周面2bに接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。また、円筒状部材7dの外周面7eに雄ねじ、外側ケース2xの内周面2bに雌ねじを設けて螺合させてもよい。
また、この接合部材1xについても、図4に示したような、単層のせん断型単層筒状ゴム体や、すべり軸受又は転がり軸受、あるいは気体又は液体を封入したチューブ等を用いることもできる。また、外側ケース2xや内側ナット6も円筒状に限らず、図5、図6に示したような角筒状に形成することもできる。
次に、本発明にかかる積層ゴム体用接合部材の第3の参考例について説明する。図8に示すように、この接合部材71は、外側ケース72と、上面視円形の接合板73を介して外側ケース72に一体化される円筒部74と、円筒部74の上方開口部を塞ぐ上面視円形の蓋部75と、外側ケース72の内部に収容された内側ナット76と、内側ナット76の外周面76bと外側ケース72の内周面72aとの間に配される、浮き上がり追従手段としてのせん断型複層筒状ゴム体77と、接合板73の貫通孔73aを挿通し、内側ナット76の雌ねじ部76aに螺合するストッパボルト84等で構成される。外側ケース72〜内側ナット76は、鋼、ステンレス鋼等の鋼材や鋼管又はアルミニウム等により形成される。
内側ナット76は、内周面76cに雌ねじ部76aが形成された円筒状に形成される。内側ナット76の上面76dと接合板73の下面73cとの間には、ゴムや樹脂等からなる回り止め材85が介在し、回り止め材85は、内側ナット76を積層ゴム体のフランジプレートにボルトで取り付ける際に、内側ナット76が供回りするのを防止する回転止めとして機能する。
せん断型複層筒状ゴム体77は、円筒状ゴム77a〜77c及び円筒状部材77d、77eからなる。せん断型複層筒状ゴム体77の円筒状ゴム77aの内周面77fは円筒状の内側ナット76の外周面76bに、円筒状ゴム77cの外周面77gは外側ケース72の内周面72aに接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。尚、せん断型複層筒状ゴム体77の最外部を円筒状ゴム77cとせずに、円筒状部材77d、77eと同様の円筒状部材とすることも可能であり、その場合には、円筒状部材と外側ケース72の内周面72aとを接着剤により頑強に接着する。この接着に加硫接着を用いることもできる。また、円筒状部材に雄ねじ、外側ケース72の内周面72aに雌ねじを設けて螺合させてもよい。
ストッパボルト84は、六角ボルト及び六角穴付ボルト等、鍔の付いたボルトであって、頭部が円筒部74の内部に配置され、接合板73の貫通孔73aを挿通し、下部の雄ねじ部が内側ナット76の雌ねじ部76aに螺合し、ストッパボルト84の頭部と接合板73の上面73bとが隙間を有することで、後述するように、せん断型複層筒状ゴム体77の過剰なせん断変形を防止するためのフェイルセーフ構造を構成するストッパとして機能する。
次に、上記接合部材71によって接合される積層ゴム体14及び上部構造体12等について図9を参照しながら説明する。
構造物91の上部構造体92と下部構造体93との間に介装される積層ゴム体94は、ゴム層95aと補強板95bとを交互に積層した積層ゴム部95の上下端面の各々に上側フランジプレート97、下側フランジプレート98が接合されて形成される。ゴム層95aと補強板95b及びゴム層95aと上側及び下側フランジプレート97、98との接触面は、加硫接着等により一体的に形成される。積層ゴム部95の貫通孔には、円柱状の塑性金属95c、例えば鉛プラグが封入され、2枚のキャッププレート95d、95eで封止される。
上部構造体92の下面92aには、頭付きスタッド99を介して上側アンカープレート100が固定され、下部構造体93の上面93aには、頭付きスタッド101を介して下側アンカープレート102が固定される。また、頭付きスタッド106に固定された埋め込みナット107に螺合する複数の取付ボルト108によって下側フランジプレート98が下側アンカープレート102に接合される。これによって、積層ゴム体94が下部構造体93に装着される。
一方、接合部材71を用いて積層ゴム体94を上部構造体92に装着するには、図9及び図10に示すように、上部構造体92に埋め込まれた接合部材71の外側ケース72の下端部72bに、上側アンカープレート100の貫通孔100aを挿入した後、外側ケース72を上側アンカープレート100に固定し、内側ナット76の雌ねじ部76aに取付ボルト105を螺合させて、内側ナット76を上側フランジプレート97に接合して、接合部材71を上側フランジプレート97及び上側アンカープレート100に固定する。このようにして積層ゴム体94が上部構造体92と下部構造体93との間に設置される。尚、下部構造体93側についても、接合部材71を用いて下側フランジプレート98と下側アンカープレート102とを接合してもよい。
次に、上記構成を有する接合部材71の動作について図10を参照しながら説明する。
通常は図10(a)に示す状態の構造物91に、地震等により振動が加わり、構造物91の上部構造体92にロッキング等により浮き上がりが生じ、図10(b)に示すように、積層ゴム体94のフランジプレート97と上部構造体92に固定された上側アンカープレート100との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、せん断型複層筒状ゴム体77の外周面77gが外側ケース72を介して上側アンカープレート100に不動に固定されていると共に、せん断型複層筒状ゴム体77の内周面77fが内側ナット76を介して上側フランジプレート97の上面97aに接合されているため、円筒状ゴム77a〜77cが鉛直方向にせん断変形して上側フランジプレート97の上側アンカープレート100からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体94の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体94の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体94の損傷や破断を防止することができる。
また、上側フランジプレート97と上側アンカープレート100との間に所定の設定量以上の大きな浮き上がり量が生じると、ストッパボルト84の頭部底面84aに接合板73の上面73bが当接してせん断型複層筒状ゴム体77の変形量を安全な範囲に抑制することができ、せん断型複層筒状ゴム体77の破損を防止することができる。
尚、上記参考例においては、接合部材71が積層ゴム形状のせん断型複層筒状ゴム体77を有する場合について説明したが、第1の参考例の場合と同様に、単層のせん断型単層筒状ゴム体を用いることもでき、せん断型筒状ゴム体以外にも、すべり軸受又は転がり軸受、あるいは気体又は液体を封入したチューブ等を用いることもでき、このチューブを用いたものが本発明に相当する。また、外側ケース72や内側ナット76も円筒状に限らず、図5、図6に示したような角筒状に形成することもできる。
また、円筒状ゴム77a、77cを各々内側ナット76の外周面76bや外側ケース72の内周面72aに直接接着したが、円筒状部材77d、77eのような円筒状部材を内側ナット76の外周面76b又は外側ケース72の内周面72a、あるいはこれらの両面に設け、円筒状部材を介して円筒状ゴム77a、77cの各々と内側ナット76の外周面76bや外側ケース72の内周面72aとを接続することもできる。
図11は、本発明にかかる積層ゴム体用接合部材の第4の参考例を示し、この接合部材111は、円筒状の外側ケース112と、外側ケース112の上部開口を塞ぐ上面視円形の蓋部113と、外側ケース112の内部に収容された内側ナット114と、内側ナット114と外側ケース112との間に配され、浮き上がり追従手段としてのせん断型複層筒状ゴム体115を備える。この接合部材111は、上記第1〜第3の参考例で示したストッパを備えておらず、製造コストをより低く抑えた構成となっている。
内側ナット114は円筒状に形成され、内周面114bには雌ねじ部114aが形成される。外側ケース112の上端部112aは、蓋部113の底面113aに溶接等により接合されて閉塞状態となる。
せん断型複層筒状ゴム体115は、円筒状ゴム115a〜115c及び円筒状部材115d、115eからなり、上記第3の参考例におけるせん断型複層筒状ゴム体77と同様に構成される。せん断型複層筒状ゴム体115の円筒状ゴム115aの内周面115fは円筒状の内側ナット114の外周面114cに、円筒状ゴム115cの外周面115gは外側ケース112の内周面112bに接着剤により頑強に接着され、加硫接着とすることもできる。尚、せん断型複層筒状ゴム体115の最外部を円筒状ゴム115cとせずに、円筒状部材115d、115eと同様の円筒状部材とすることも可能であり、その場合には、円筒状部材と外側ケース112の内周面112bとを接着剤により頑強に接着する。この接着に加硫接着を用いることもできる。また、円筒状部材に雄ねじ、外側ケース112の内周面112bに雌ねじを設けて螺合させてもよい。
図12(a)は、上記構成を有する接合部材111を用いて、ゴム材料を含む弾性層と補強板を含む剛性層とを交互に積層した積層ゴム体117を上部構造体118に装着する要領を示す。上部構造体118には複数の頭付きスタッド119及び接合部材111が埋め込まれ、接合部材111の外側ケース112の下端部112cに、上側アンカープレート120の貫通孔120aを挿入した後、内側ナット114の雌ねじ部114aに取付ボルト121を螺合させて上側フランジプレート122を上側アンカープレート120に接合する。
一方、積層ゴム体117を下部構造体(不図示)に装着する方法は従来と同様としてもよく、また、接合部材111を用いて積層ゴム体117の下側フランジプレート(不図示)と、下部構造体に固定された下側アンカープレート(不図示)とを接合してもよい。
次に、上記構成を有する接合部材111の動作について図12を参照しながら説明する。
積層ゴム体117を備えた構造物は、通常は図12(a)に示す状態にあるが、地震等により振動が加わり、構造物の上部構造体118にロッキング等により浮き上がりが生じ、図12(b)に示すように、積層ゴム体117の上側フランジプレート122と上部構造体118に固定された上側アンカープレート120との間に鉛直方向の浮き上がりを生じても、せん断型複層筒状ゴム体115の外周面115gが円筒状ゴム115c及び外側ケース112を介して上側アンカープレート120に固定されていると共に、せん断型複層筒状ゴム体115の内周面115fが取付ボルト121を用いて内側ナット114の底面114dを介して上側フランジプレート122の上面122aに接合されているため、円筒状ゴム115a〜115cが鉛直方向にせん断変形して上側フランジプレート122の上側アンカープレート120からの鉛直方向の離反及び近接に追従することで、積層ゴム体117の上方への浮き上がりを吸収し、積層ゴム体117の弾性層、接着層等に大きな引張力が生じるのを防止し、積層ゴム体117の損傷や破断を防止することができる。
尚、上記参考例においては、接合部材111が積層ゴム形状のせん断型複層筒状ゴム体115を有する場合について説明したが、単層のせん断型単層筒状ゴム体を用いることもでき、せん断型筒状ゴム体以外にも、上述のすべり軸受又は転がり軸受、あるいは気体又は液体を封入したチューブ等を用いることもでき、このチューブを用いたものが本発明に相当する。また、外側ケース112や内側ナット114も円筒状に限らず、図5、図6に示したような角筒状に形成することもできる。
また、円筒状ゴム115a、115cを各々内側ナット114の外周面114cや外側ケース112の内周面112bに直接接着したが、円筒状部材115d、115eのような円筒状部材を内側ナット114の外周面114c又は外側ケース112の内周面112b、あるいはこれらの両面に設け、円筒状部材を介して円筒状ゴム115a、115cの各々と内側ナット114の外周面114cや外側ケース112の内周面112bとを接続することもできる。