上記のとおり、本発明は、並列接続された蓄電池により適切に電力供給を行う電源装置等を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る電源装置は、並列に接続された複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池が外部の電力負荷に供給する電力を調整する電力調整器と、前記複数の蓄電池による放電の開始時に前記複数の蓄電池のうちの少なくとも1つの蓄電池において、当該蓄電池の最大定格電流よりも大きな電流が出力されると予測されるとき、前記電力調整器を制御することで、前記外部の電力負荷に供給する電力を前記外部の電力負荷の電力需要よりも小さくする制御器とを備える。
これによれば、電源装置は、並列接続された蓄電池のうち、放電開始時に最大定格電流値を超えて放電する蓄電池があると予測されるときに、外部の電力負荷への出力を外部の電力負荷の電力需要より小さくする制御を行う。これにより、電源装置は、放電を開始する時に当該蓄電池が放電する電流値が最大定格電流値を超えることを未然に回避し、蓄電池の耐久性を向上させる。このように電源装置は、並列接続された蓄電池により適切に電力供給を行うことができる。
例えば、前記制御器は、前記電力調整器を制御することで、前記外部の電力負荷に供給する電力を、前記放電の開始時に最大定格電流よりも大きな電流が流れると予測される第1群の蓄電池の最大定格電力の総和よりも小さくする。
これによれば、電源装置は、並列接続された蓄電池のうち放電開始時に最大定格電流値を超えて放電すると予測される蓄電池である第1群の蓄電池の最大定格電力の総和より小さい電力を、外部の電力負荷に供給するように制御する。このように、電源装置は、並列接続された蓄電池により適切に電力供給を行うことができる。
例えば、前記第1群の蓄電池の電圧は、前記複数の蓄電池のうちの前記第1群の蓄電池と異なる第2群の蓄電池の電圧よりも高い。
これによれば、電源装置は、複数の蓄電池のうちの電圧が比較的高い蓄電池を第1群の蓄電池として放電電流の制限を行うことで、具体的に、適切な電力供給を行うことができる。
例えば、前記第1群の蓄電池の残存容量は、前記複数の蓄電池のうちの前記第1群の蓄電池と異なる第2群の蓄電池の蓄電量よりも多い。
これによれば、電源装置は、複数の蓄電池のうちの蓄電量が比較的多い蓄電池を第1群の蓄電池として放電電流の制限を行うことで、具体的に、適切な電力供給を行うことができる。
例えば、前記第1群の蓄電池の内部抵抗は、前記複数の蓄電池のうちの前記第1群の蓄電池と異なる第2群の蓄電池の内部抵抗よりも低い。
これによれば、電源装置は、複数の蓄電池のうちの内部抵抗が比較的低い蓄電池を第1群の蓄電池として放電電流の制限を行うことで、具体的に、適切な電力供給を行うことができる。
例えば、前記電力調整器は、前記複数の蓄電池により放電された直流電流を交流電流に変換するDC/AC電力変換器を備え、前記制御器は、前記DC/AC電力変換器による交流電流への変換を制御することで、前記外部の電力負荷に供給する電力を前記外部の電力負荷の電力需要よりも小さくする。
これによれば、電源装置は、DC/AC電力変換器による交流電力の出力量を制御することにより、外部の電力負荷に供給する電力を調整する。よって、電源装置は、交流電力の出力量を調整する機能を有するDC/AC電力変換器を用いることで、電流制限のための新たな素子又は回路を別途導入することなく、電流制限を行うことができる。
例えば、前記電力調整器は、前記複数の蓄電池により放電された直流電流を交流電流に変換するDC/AC電力変換器と、前記DC/AC電力変換器に流入する電流を制限する制限器と、を備え、前記制御器は、前記制限器を制御することで前記DC/AC電力変換器に流入する電流を前記第1群の蓄電池の最大定格電流の総和よりも小さくする。
これによれば、電源装置は、制限器による電流制御により、外部の電力負荷に供給する電力を調整する。よって、電源装置は、DC/AC電力変換器による出力制限機能を用いることなく電流制限を行うことができる。このように電源装置は、具体的に、適切な電力供給を行うことができる。
例えば、外部電源の停電を検知する停電検知器を備え、前記制御器は、前記停電検知器により前記外部電源の停電が検知されると前記制御を行う。
これによれば、電源装置は、系統電源が停電状態であるときに放電電流の制限を行うことにより、蓄電池が最大定格電流より大きな電流を出力することを未然に防ぐことができる。
例えば、前記電力調整器は、前記外部の電力負荷に供給する電力を、前記外部の電力負荷の電力需要に近づけるように、時間経過とともに徐々に増加させる。
これによれば、電源装置は、蓄電池同士の放電量の差が比較的大きいと考えられる放電初期段階には、制限量を比較的大きくし、蓄電池同士の放電量の差が次第に小さくなっていく期間には次第に制限量を小さく、つまり、制限を緩めていくように制御する。このように電源装置は、DC/AC電力変換器の出力量の急激な変動を回避することができる。
例えば、前記制御器は、前記電力調整器を制御している時に、前記DC/AC電力変換器による交流電流の出力が停止されると、前記DC/AC電力変換器を再起動させ、前記DC/AC電力変換器を制御することで前記外部の電気機器に供給する電力を前記再起動の前より増加させる。
これによれば、電源装置は、DC/AC電力変換器が過負荷等の要因により動作を停止した後には、動作を停止する前より制限量を小さく、つまり、制限を緩めるように制御する。これにより、電源装置は、DC/AC電力変換器が動作停止と起動とを繰り返すたびに外部の電力負荷に供給する電力を多くしていくことができる。
また、本発明の一態様に係る電源装置の動作方法は、電源装置の動作方法であって、並列に接続された複数の蓄電池が外部の電力負荷に供給する電力を調整するステップと、前記複数の蓄電池による放電の開始時に前記複数の蓄電池のうちの少なくとも1つの蓄電池において、当該蓄電池の最大定格電流よりも大きな電流が出力されると予測されるとき、前記調整するステップでの制御により、前記外部の電力負荷に供給する電力を前記外部の電力負荷の電力需要よりも小さくする制御ステップとを備える。
これによれば、上記の電源装置と同様の効果を奏する。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
本実施の形態において、並列接続された蓄電池により適切に電力供給を行う電源装置等について説明する。まず、電源装置が備える蓄電池について説明する。
図1は、本実施の形態に係る蓄電池10を正面側から見た外観図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電池10を底面側から見た外観図である。
図1及び図2に示されるように、蓄電池10は、本体部11と、取付部12と、保持部13と、表示器14と、ボタン15とを備える。
蓄電池10は、電気機器に着脱自在に接続され、当該電気機器の直流電源として使用される蓄電池である。蓄電池10は、充放電を行う二次電池であり、例えば、定格電圧が24Vのリチウムイオン二次電池である。なお、蓄電池10は、他の定格電圧のものであってもよいし、他の方式の二次電池であってもよい。なお、蓄電池10に充電しているときの電流値を充電電流値ともいい、蓄電池10が放電する電流値を放電電流値ともいう。蓄電池10は、残存容量に応じて出力電圧及び内部抵抗が変動する。例えば、蓄電池10の定格電圧が24Vである場合、残存容量に応じて出力電圧が約21V〜約29Vの範囲で変動する。なお、残存容量のことを蓄電量又はSOC(State of charge)ともいう。
蓄電池10が接続される電気機器は、例えば、電動自転車のような電動車両であるが、特に限定されるものではない。また、蓄電池10は、機能又は用途が異なる複数種類の機器に接続可能なように規格化されていてもよい。
本体部11は、電気エネルギーを蓄える蓄電部と、当該蓄電池部を充電及び放電するための制御部を収容する、蓄電池10の本体部分である。また、本体部11には、通信端子(後述する端子部12aに含まれる端子)を通じて蓄電池10に関する情報を出力するための通信部、及び、蓄電池10の放電電流値が閾値を超えないように放電電流を制御する過電流保護回路も収容されている。上記の蓄電池10に関する情報のことを蓄電池情報ともいう。また、上記閾値のことを過電流閾値ともいう。
蓄電池情報には、例えば、蓄電池10の状態を示す状態情報が含まれる。蓄電池10の状態情報としては、例えば、蓄電池10の蓄電量、電圧、温度、充放電サイクル数、温度異常、電流異常、電圧異常、衝撃異常等の異常履歴情報等が挙げられる。また、蓄電池10の情報には、蓄電池10の個体を一意に特定するための識別情報が含まれてもよい。
蓄電池10の蓄電量は、上記制御部により定期的に更新される。制御部は、蓄電池10による充電又は放電の際に、充電電流値又は放電電流値を計測し、計測した充電電流値又は放電電流値を時間的に積分することで蓄電量を更新する。
なお、本実施の形態では、本体部11が略直方体形状である例を示すが、本体部11の形状は特に限定されるものではない。なお、上記制御部及び上記通信部は、専用の回路によって実現されてもよいし、プロセッサまたはマイクロコンピュータなどによって実現されてもよい。
取付部12は、蓄電池10を電源として動作する電気機器に取り付けられる、本体部11の底面に設けられた接続用のインターフェースである。取付部12は、上記電気機器に取り付け可能な構造(形状及び大きさ)を有する。取付部12は、端子部12aと、無線通信器12bとを備える。
端子部12aは、複数の端子を有する端子部である。これらの複数の端子は、蓄電池10と、蓄電池10を電源として動作する電気機器とを電気的に接続するために用いられる金属製の端子である。端子部12aを通じて、蓄電池10は、充放電を行う。
無線通信器12bは、取付部12に内蔵された近距離無線通信用の通信器である。近距離無線通信の規格は、例えば、NFC(Near Field Communication)であるが、特に限定されない。なお、無線通信器12bは、本体部11に設けられてもよい。
保持部13は、蓄電池10を持ち運ぶためにユーザが把持する持ち手である。保持部13は、例えば、本体部11の上面に設けられる。
表示器14は、発光表示器の一例であって、蓄電池10の蓄電量を表示する。表示器14は、例えば、3つのLED(Light Emitting Diode)を有し、蓄電池10の蓄電量に応じた個数のLEDが点灯することで、蓄電池10の蓄電量を表示する。表示器14は、本体部11の正面(側面)に設けられる。なお、表示器14は、LEDの点滅または、スプリット表示(中央部分に位置するLEDのみ発光または非発光とする表示方法)により、蓄電池10の異常が発生したこと、及び、蓄電池10の劣化(例えば、寿命の経過)の度合い等を表示することも可能である。
ボタン15は、表示器14を点灯させるためにユーザにより押下されるハードウェアボタンである。ボタン15は、本体部11の正面(表示器14が設けられた側面と同一の側面)に設けられる。
次に、本実施の形態に係る電源装置20の構造について説明する。図3は、本実施の形態に係る電源装置20の外観図である。
図3に示されるように、電源装置20は、棚24及び棚27を含む複数の棚を備える筐体21と、受電プラグ22と、コンセント23と、接続器70と、カバー28とを備える。なお、筐体21は少なくとも一つの棚を備えればよい。また、カバー28は、必須の構成要素ではない。
電源装置20は、複数の蓄電池10を収容し、収容している複数の蓄電池10を充電する機能を有する。つまり、電源装置20は、蓄電池10を充電するための充電装置として機能する。また、電源装置20は、系統電源に接続されており、系統電源から供給される電力、又は、蓄電池10が放電する電力を、コンセント23を通じて外部の電気機器(例えば、冷蔵庫130、照明装置160、エアコン等の空調機器(不図示))に供給することも可能である。上記の外部の電気機器は、本開示の外部の電力負荷の一例である。
また、電源装置20は、系統電源が停電したとき、系統電源に代えて外部の電気機器に電力を供給するバックアップ電源としての機能を有する。
筐体21は、蓄電池10が載置される複数の棚を備える略直方体形状の筐体である。筐体21は、言い換えれば、蓄電池10を収容するロッカーである。筐体21の正面の一部は、開放されており、開放された部分を通じて、蓄電池10の筐体21への収容及び蓄電池10の筐体21からの取り出しが可能である。棚24及び棚27は、蓄電池10が載置可能でれば、いずれの形態であっても構わない。
棚24及び棚27は、複数の蓄電池10が載置される棚であって、筐体21の内部の空間を仕切る棚板である。棚24の手前側(筐体21の正面側)は、解放されているので、棚24に載置された蓄電池10は、容易に取り出される。
これに対し、棚27の手前側(筐体21の正面側)がカバー28によって塞がれているので、棚27に載置された複数の蓄電池10は、棚24に載置された複数の蓄電池10よりも取り出しにくい。棚27に載置された複数の蓄電池10は、非常用の電源として電源装置20内に常備されることが想定されていることによる。
接続器70は、蓄電池10が着脱自在に、かつ、電気的及び機械的に接続されるインターフェースである。接続器70は、棚24又は棚27の奥に設けられている。接続器70は、蓄電池10の端子部12aと電気的に接続される端子(不図示)と、蓄電池10の無線通信器12bと無線通信可能な無線通信器(不図示)とを備える。接続器70は、無線通信器による無線通信を通じて、蓄電池10の蓄電量を取得する。
受電プラグ22は、系統電源に接続され、系統電源から電力を受電するためのプラグである。受電プラグ22は、筐体21の側面に設けられる。なお、受電プラグ22は、系統電源の代わりに、太陽電池又は燃料電池などの発電装置に接続され、接続された発電装置から電力を受電するものであってもよい。
コンセント23は、給電部の一例であって、蓄電池10が放電する電力を外部の電気機器に供給するために、外部の電気機器が接続される差込口である。コンセント23は、例えば、筐体21のうち受電プラグ22が設けられた側面と反対側の側面に設けられ、コンセント23には、冷蔵庫130の電源プラグ131、または、照明装置160の電源プラグ161などが接続される。
なお、コンセント23の形状は、例えば、家庭用100Vのコンセントの形状が想定されるが、他のコンセントの形状としてもよいし、例えばUSB(Universal Serial Bus)等の接続規格に適合する形状としてもよい。また、専用の形状としてもよい。
電源装置20を利用して複数の蓄電池10により電力を出力するときに生ずる現象について、以降において関連技術と対比しながら説明する。なお、関連技術とは、後述する、電源装置20が備える調整器を備えない電源装置を意味する。
図4は、関連技術に係る電源装置120の機能構成を示すブロック図である。電源装置120は、図3における電源装置20として関連技術において用いられるものである。
電源装置120は、蓄電池10a〜10fと、受電プラグ22と、コンセント23と、制御器40と、停電検知器42と、入出力器44と、充放電切替器50a〜50fと、出力切替器52と、AC/DC60と、DC/AC62と、接続器70a〜70fと、通信器72とを備える。
蓄電池10a〜10fのそれぞれは、電源装置120において電力を充放電する蓄電池であり、並列接続されている。蓄電池10a〜10fのそれぞれは、蓄電池10と同じものである。特に断らない限り、蓄電池10という場合は、蓄電池10a〜10fのいずれか又は全体を意味するものとする。なお、電源装置120が6個の蓄電池10を備える構成を示しているが、蓄電池の個数は、複数であれば他の数でもよい。
蓄電池10は、充電の際には、系統電源から供給される交流電力がAC/DC60により変換されることで生成される直流電力を給電される。また、蓄電池10は、放電の際には、蓄電池10が出力する直流電流がDC/AC62により変換されることで生成される交流電力を外部の電気機器へ提供する。
蓄電池10は、過電流保護回路(不図示)を備える。過電流保護回路は、蓄電池10の放電電流値を監視しており、蓄電池10の放電電流値が閾値以上である状態が所定時間以上継続するという条件を満たすと作動し、蓄電池10による放電を停止させる。このように、蓄電池10は、過電流保護回路の作動により過放電に起因する故障から保護される。上記電流の閾値は、蓄電池10の最大定格電流とすることができ、例えば、20A(アンペア)である。上記のように過電流保護回路を作動させる機能を過電流保護機能ともいう。
なお、過電流保護回路により蓄電池10による放電が停止された場合、ユーザが予め定められた手順により蓄電池10に対する処置を行うまで、蓄電池10は、放電することができない状態となる。よって、蓄電池10を継続的に運用する場合には、過電流保護回路が作動する大きさの電流が蓄電池10から放電されないように電流制限がなされることが望ましい。
制御器40は、電源装置120内の各機能ブロックから各種情報を取得し、また、電源装置120内の各機能ブロックの動作の制御を行う処理部である。具体的には、制御器40は、停電検知器42、入出力器44及び通信器72等から各種情報を取得し、充放電切替器50、出力切替器52、AC/DC60及びDC/AC62の動作を制御する。具体的には、制御器40は、出力切替器52を制御することで電源装置120から外部の電気機器への電力の出力のON/OFFを切替える。例えば、系統電源が停電状態であることを停電検知器42が検知した場合、制御器40は、出力切替器52を制御して、電源装置120の出力をONし、外部の電気機器に電力を供給する。一方、系統電源が停電状態でないとき、出力切替器52は、電源装置120からの電力の出力がOFFされるよう切替えられる。これにより、蓄電池10を充電しているとき、充電電力がDC/AC62に直接供給されるのを防ぐことができる。制御器40が取得する具体的な情報、及び、その情報に基づく制御については、後で詳しく説明する。
停電検知器42は、系統電源における停電状態を検知するセンサである。停電検知器42は、受電プラグ22を介して系統電源から電力が供給される電力線に接続され、上記電力線を流れる電流の有無を検知することで、系統電源が停電状態であるか否かを検知する。停電検知器42は、例えば電流センサにより実現される。
入出力器44は、ユーザから情報を受け付ける、又は、ユーザに情報を提示する入出力インターフェースである。入出力器44は、表示画面、ボタン又はタッチパネル(不図示)などにより実現される。
充放電切替器50a〜50fのそれぞれは、蓄電池10a〜10fのそれぞれについて設けられ、蓄電池10a〜10fのそれぞれを充電させるか、又は、放電させるかを切り替える切替器である。なお、特に断らない場合、充放電切替器50という場合、充放電切替器50a〜50fのいずれか又は全体を意味するものとする。
充放電切替器50は、蓄電池10を充電させる場合、AC/DC60により出力される直流電流を蓄電池10に供給するように充放電切替器50内の回路を構成する。また、充放電切替器50は、蓄電池10を放電させる場合、蓄電池10が出力する直流電流を出力切替器52を介してDC/AC62に伝達するように充放電切替器50内の回路を構成する。充放電切替器50は、制御器40による制御に基づいて、回路の構成の切り替えを行う。
出力切替器52は、電源装置120からの電力の出力のON/OFFを切り替える切替器である。電源装置120からの電力の出力をONするとき、蓄電池10は出力切替器52を介してDC/AC62に接続される。出力切替器52は、制御器40による制御に基づいて上記切り替えを行う。
AC/DC60は、系統電源から供給された交流電力を直流電力に変換する電力変換器である。AC/DC60が、上記変換により生成した直流電力は、充放電切替器50を介して蓄電池10に伝達され蓄電池10の充電に用いられる。
DC/AC62は、蓄電池10が出力した直流電力を交流電力に変換する電力変換器である。DC/AC62が、上記変換により生成した交流電力は、コンセント23を介して外部の電気機器へ供給される。
接続器70は、蓄電池10が着脱自在に、かつ、電気的及び機械的に接続されるインターフェースである。
通信器72は、蓄電池10が保持している蓄電池情報を、接続器70を介して通信により取得する通信インターフェースである。
電源装置120は、蓄電池10a〜10fが出力する直流電流を足し合わせたものがDC/AC62により交流に変換されることで生成される交流電流を、外部の電気機器に提供する。このとき、蓄電池10a〜10fのそれぞれの放電電流値は、各蓄電池の蓄電量に応じて変動するので、蓄電池10a〜10fのそれぞれにより均等に電流が出力されるとは限らない。よって、電源装置120が外部の電気機器に提供可能な電流量は、蓄電池10a〜10fのそれぞれの最大定格電流の合計値より小さくなることがある。このことについて、以降で説明する。
図5Aは、関連技術に係る電源装置120における第一の状況での蓄電池10の出力電流を示す模式図である。図5Bは、関連技術に係る電源装置120における第一の状況での蓄電池10の出力電流及び過電流保護機能の説明図である。ここで、第一の状況とは、複数の蓄電池10(蓄電池10a〜10f)の状態を示す状態量の偏りが小さい状況であり、本例では、蓄電池10のそれぞれの蓄電量が概ね均等である状況を示している。なお、これは一例であって、本例に限定されるものではない。また、上記状態量は、本例のような蓄電池10の蓄電量(残存容量)に限らず、蓄電池10の電圧、内部抵抗等が例示される。
図5Aには、複数の蓄電池10と、複数の蓄電池10のそれぞれが放電する電流が流れる電力線とが模式的に示されている。図5Aに示されるように、複数の蓄電池10は、共通の電力線に接続されており、複数の蓄電池10のそれぞれが出力した直流電流の合計がDC/AC62に伝達される。
図5Bに示されるように、第一の状況においては、複数の蓄電池10のそれぞれが出力する電流の偏りが小さく、電源装置120から外部の電気機器に供給される電力が増加するときに、相対的に大きい電流を出力する、一部の蓄電池の出力電流値が最大定格電流値を超える可能性が低い。
図6Aは、関連技術に係る電源装置120における第二の状況での蓄電池10の出力電流を示す模式図である。図6Bは、関連技術に係る電源装置120における第二の状況での蓄電池10の出力電流及び過電流保護機能の説明図である。ここで、第二の状況とは、複数の蓄電池10(蓄電池10a〜10f)の状態を示す状態量の偏りが大きい状況であり、本例では、蓄電池10b〜10fのそれぞれの蓄電量が概ね等しく、また、蓄電池10aの蓄電量と蓄電池10b〜10fのそれぞれの蓄電量との差が、所定値以上である状況のことである。上記所定値は、電源装置120から外部の電気機器に供給される電力が増加するとき、蓄電池10の一部が最大定格電流値よりも大きな電流が出力されると予測される蓄電量差である。例えば、蓄電池10の満充電時の蓄電量の30%程度である。なお、これは一例であって、本例に限定されるものではない。また、上記状態量は、本例のような蓄電池10の蓄電量(残存容量)に限らず、蓄電池10の電圧、内部抵抗等が例示される。
図6A及び図6Bに示されるように、第二の状況においては、他の蓄電池10b〜10fのそれぞれより多くの電流が、蓄電池10aから出力される。特に、電源装置20より外部の電力負荷に供給する電力が増加するとき、蓄電池10aにより多くの電流が流れ、出力電流の偏りがより大きくなり、蓄電池10aから最大定格電流よりも大きな電流が出力される可能性がある。また、このとき、過電流保護回路が作動する可能性がある。そして、蓄電池10aの過電流保護回路が作動して蓄電池10aの出力が停止された場合には、蓄電池10b〜10fだけが出力を行う状態となる。
このように、第二の状況において、電源装置20より外部の電力負荷に供給する電力が増加すると、過電流保護回路が作動する可能性があるという問題が発生する。また、一部の蓄電池10の過電流保護回路が作動することとなった場合には、上記一部を除く残部の蓄電池10の放電電流が増加する状況となる。その結果、上記一部の蓄電池10は、蓄電量が比較的多い状態で放電停止状態となり、上記残部の蓄電池10は、蓄電量が比較的低い状態で放電を継続することになり、継続的な運用が困難な事態となる。
なお、電源装置20が外部の電気機器へ供給する電力が増加するときは、次のケースである。具体的には、例えば、系統電源が停電したことにより電源装置20が外部の電気機器への電力供給を開始するとき、又は、外部の電気機器への電力供給を行っているときに外部の電気機器による電力需要が上昇し、外部の電気機器に供給する電力を増加させるとき等である。
また、電源装置20は、蓄電池10を充電する目的を有する装置であるので、蓄電池10の中には、蓄電量が比較的小さいものと、満充電に近いものとが混在する状況、つまり、上記第二の状況が発生しやすい。よって、上記問題を解決することで、電源装置20の継続的な運用を可能とするという利点が大きいといえる。
上記問題を解決することができる電源装置20について以下で説明する。
図7は、本実施の形態に係る電源装置20の機能構成を示すブロック図である。
図7に示される電源装置20は、蓄電池10a〜10fと、受電プラグ22と、コンセント23と、停電検知器42と、入出力器44と、充放電切替器50a〜50fと、AC/DC60と、接続器70a〜70fと、通信器72とを備える。これらは、電源装置120における同名の構成要素と同じであるので説明を省略する。また、電源装置20は、さらに、調整器30と、制御器41と、DC/AC62Aとを備える。
調整器30は、蓄電池10が外部の電力負荷に供給する電力を調整する電力調整器である。調整器30は、蓄電池10a〜10fのそれぞれが充放電切替器50a〜50fを通じて接続される電力線を流れる電流を、蓄電池の蓄電量等に応じて制限することで、上記電力を調整する。
調整器30は、具体的には、調整器30が存在しない場合に比べて上記電力線を流れる電流を小さくするように電流を制限するための素子又は回路である。調整器30が存在しない場合の電流値から、調整器30が存在する場合の電流値を減じた値を電流制限量、又は、単に制限量ともいう。制限量は、調整器30による電流の下げ幅とも言える値であり、抑制幅又は削減量とも表現される。調整器30は、ダイオード、抵抗、その他の電流制限回路等により実現される。調整器30は、DC/AC62Aを備えており、DC/AC62Aが出力する交流電流の電流量を制限することで上記制御を行う。
制御器41は、電源装置20の各機能ブロックから各種情報を取得し、また、電源装置20内の機能ブロックの動作の制御を行う処理部である。制御器41は、電源装置120の制御器40の機能に加えて、蓄電池10の蓄電量に応じて、調整器30による電流の制限量を増減させる制御を行う。具体的には、制御器41は、複数の蓄電池10のいずれかにより最大定格電流よりも大きな電流が出力されると予測されるとき、調整器30を制御することで、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電力を外部の電力負荷の電力需要よりも小さくする。また、制御器41は、上記のように外部の電力負荷に供給する電力を小さくした後に、外部の電力負荷の電力需要に近づけるように、時間経過とともに徐々に増加させるようにしてもよい。
DC/AC62Aは、蓄電池10が出力した直流電力を交流電力に変換する電力変換器である。また、DC/AC62Aは、出力する交流電力を、制御器41による制御に基づいて調整する。なお、DC/AC62Aは、DC/AC電力変換器に相当する。
なお、DC/AC62Aは、一般に過負荷等の要因により動作を停止することがある。その場合、自動的に、又は、制御器41等による制御によりDC/AC62Aが再起動される。この場合に、制御器41は、電源装置20が外部の電力負荷に出力する電力を、再起動の前より増加させるように、調整器30によりDC/AC62Aを制御してもよい。
制限量の増減の詳細については、後で詳しく説明する。
次に、電源装置20における蓄電池10の充放電の制御方法について説明する。
図8は、本実施の形態に係る電源装置20における蓄電池10の充放電の制御を示すフロー図である。
ステップS101において、制御器41は、複数の蓄電池10(蓄電池10a〜10f)のそれぞれの蓄電量を取得する。具体的には、制御器41は、複数の蓄電池10のそれぞれに設けられた接続器70a〜70f、及び、通信器72を介して複数の蓄電池10のそれぞれの蓄電量を取得する。
ステップS102において、制御器41は、蓄電池10a〜10fのそれぞれが充電可能であるか否かを判定する。具体的には、制御器41は、蓄電池10a〜10fのうち、ステップS101で取得した蓄電量が満充電でない蓄電池について充電可能であると判定し、満充電である蓄電池について充電可能でないと判定する。次に制御器41は、充電可能であると判定した蓄電池についてステップS103の処理を行い(ステップS102でYes)、充電可能でないと判定した蓄電池についてステップS104の処理を行う(ステップS102でNo)。なお、上記における「満充電」という語は、蓄電池10の蓄電量が、蓄電可能容量に一致することだけを意味するのではなく、実質的に満充電と考えられる蓄電量であることを意味するものとする。
ステップS103において、制御器41は、ステップS102で充電可能であると判定した蓄電池10に設けられた充放電切替器50を制御することで、充電可能であると判定した蓄電池10の充電を開始させる。
ステップS104において、制御器41は、ステップS102で充電可能でないと判定した蓄電池10に設けられた充放電切替器50を制御することで、充電可能でないと判定した蓄電池10の充電を停止させる。
ステップS105において、制御器41は、ステップS101で取得した蓄電池10a〜10fのそれぞれの蓄電量に基づいて、蓄電池10の放電電流値を予測する。ここで、制御器41は、仮に各蓄電池10が、電力制限を行わないAC/DCに接続されたとする場合、つまり、図5A又は図6Aの構成の場合に、各蓄電池が放電すると見込まれる電力を算出する。この予測される電流量のことを予測放電電流値ともいう。ここで、予測放電電流値が蓄電池10の最大定格電流より大きい蓄電池10が第1群の蓄電池に相当し、蓄電池10のうち第1の蓄電池を除く蓄電池が第2群の蓄電池に相当する。各蓄電池10の蓄電量がどのような場合にどのように算出されるかについては、後で具体的に説明する。
なお、ステップS105において、制御器41は、蓄電池10a〜10fのそれぞれの電圧に基づいて、蓄電池10の放電電流値を予測してもよい。また、制御器41は、蓄電池10a〜10fのそれぞれの内部抵抗に基づいて、蓄電池10の放電電流値を予測してもよい。このように蓄電池10の電圧又は内部抵抗を用いて制御器41が放電電流値を予測する場合には、予めステップS101で制御器41が蓄電池10から、蓄電池10の電圧又は内部抵抗を取得しておくことを要する。
ステップS106において、制御器41は、電流制限の実施の必要性の有無を判断する。具体的には、制御器41は、蓄電池10のそれぞれについて、ステップS105で算出した予測放電電流値が当該蓄電池10の最大定格電流値より大きいか否かを判定する。そして、少なくとも1つの蓄電池10について予測放電電流値が当該蓄電池10の最大定格電流値より大きいと判定された場合、電流制限の必要性があると判断する。
一方、制御器41は、蓄電池10のそれぞれについて、すべての蓄電池10について予測放電電流値が最大定格電流値より小さいと判定された場合、電流制限の必要性がないと判断する。
なお、蓄電池10の最大定格電流値として、蓄電池10の過電流保護回路の過電流閾値を用いてもよい。
ステップS107において、制御器41は、停電検知器42により系統電源が停電状態であるか否かを判定する。系統電源が停電状態である場合(ステップS107でYes)には、ステップS108に進む。一方、系統電源が停電状態でない場合(ステップS107でNo)には、ステップS101に進む。
ステップS108において、制御器41は、ステップS106で電流制限の実施の必要性があると判断されたか否かに応じて以降の処理を分岐させる。具体的には、制御器41は、電流制限の実施の必要性があると判断された場合(ステップS108でYes)には、ステップS109に進む。一方、制御器41は、電流制限の実施の必要性がないと判断された場合(ステップS108でNo)には、ステップS110に進む。
ステップS109において、制御器41は、調整器30及びDC/AC62Aを制御することで、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電流を制限する。
ステップS110において、制御器41は、充放電切替器50を制御することで各蓄電池10を放電させる。このとき、各蓄電池10が放電する電流が合計されたものが調整器30に流入し、調整器30による電流制限を受ける。よって、各蓄電池10の放電電流値は、調整器30が存在しない場合に比べて制限されたものとなる。
ステップS111において、制御器41は、蓄電池10a〜10fのそれぞれの蓄電量を計測により取得する。蓄電量を取得する手順及び処理は、ステップS101におけるものと同様であるが、ステップS110により放電が開始されているので、ステップS111で取得される蓄電量は、ステップS101で取得される蓄電量とは必ずしも一致しない。
ステップS112において、制御器41は、ステップS106と同様に、電流制限の実施の必要性の有無を判断する。
ステップS113において、制御器41は、ステップS108と同様に、ステップS112で電流制限の実施の必要性があると判断されたか否かに応じて、それぞれ、ステップS115又はステップS114に進む。
ステップS114において、制御器41は、調整器30及びDC/AC62Aを制御することで、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電流の制限をしないこととする。すなわち、ステップS114に到達した時点で既に電流制限をしている場合には、電流制限を解除する。
ステップS115において、制御器41は、調整器30及びDC/AC62Aを制御することで、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電流の制限を実施する。ステップS115に到達した時点で既に電流制限をしている場合には、電流制限を維持する。
なお、ステップS115において電流制限を維持するときに、制御器41は、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電力を増加させてもよい。これにより、制御器41は、電源装置20が外部の電力負荷に供給する電力を時間経過とともに徐々に増加させるようにしてもよい。
ステップS116において、制御器41は、ステップS111で取得した各蓄電池10の蓄電量に基づいて、各蓄電池10が放電可能か否かを判定する。この判定により、制御器41は、各蓄電池10の蓄電量に基づいて、さらに放電を継続することができるか否かを判定する。
ステップS116で各蓄電池10が放電可能であると判定された場合(ステップS116でYes)には、ステップS111に進む。一方、各蓄電池10が放電可能でないと判定された場合(ステップS116でNo)には、ステップS101に進む。
なお、上記において、電源装置20が系統電源の停電状態を検知したことを契機として、蓄電池10による放電、及び、調整器30による放電電流の制限を行う場合を説明した。この他にも、電源装置20が外部の電気機器に電力を供給する状況において、その外部の電気機器による電力需要が電源装置20により供給可能な電力よりも大きいときに蓄電池10による放電、及び、調整器30による放電電流の制限を行うようにしてもよい。また、電源装置20が外部の電気機器に電力を供給する状況において、その外部の電気機器による電力需要の変動を監視し、その電力需要が増加するときに、蓄電池10による放電、及び、調整器30による放電電流の制限を行うようにしてもよい。
より具体的には、上記電力需要が、第1群の蓄電池の最大定格電力の総和よりも大きいときに、電源装置20が放電及び放電電流の制限を行うようにしてもよい。
以上の一連の処理により、電源装置20は、各蓄電池10により適切に放電し、また、各蓄電池10を適切に充電することができる。
図9は、本実施の形態に係る電源装置20における蓄電池10の出力電流を示す第一の模式図である。図9は、蓄電池10のうちの少数の蓄電池が満充電であり、その他の蓄電池の蓄電量が満充電ではないものの満充電に比較的近い状態を示している。具体的には、蓄電池10aは、満充電であり、蓄電池10b〜10fのそれぞれの蓄電量は、満充電ではないものの比較的満充電に近い状態である。つまり、蓄電池10aと、蓄電池10b〜10fのそれぞれとの電圧差ΔVが比較的小さい状態である。
図9に示される蓄電池10の蓄電量の場合、制御器41は、ステップS105の処理により、各蓄電池10の予測放電電流値としてほぼ同じ値を算出する。そして、制御器41は、ステップS106の処理により、調整器30において、電流制限の実施の必要性がない、つまり、制限量を0とすることにする。その結果、ステップS110で蓄電池10が放電する際には、蓄電池10a〜10fのそれぞれが概ね均等に放電する。
図10は、本実施の形態に係る電源装置20における蓄電池10の出力電流を示す第二の模式図である。図11は、本実施の形態に係る電源装置20における蓄電池10の出力電流の説明図である。
図10は、蓄電池10のうちの少数の蓄電池が満充電であり、その他の蓄電池の蓄電量が満充電に対して半分程度の蓄電量である状態を示している。具体的には、蓄電池10aは、満充電であり、蓄電池10b〜10fのそれぞれの蓄電量は、満充電に対して半分程度の蓄電量である状態である。つまり、蓄電池10aと、蓄電池10b〜10fのそれぞれとの電圧差ΔVは、図9の場合より大きい。
この場合、制御器41は、ステップS105の処理により、蓄電池10aの予測放電電流値として、他の蓄電池10b〜10fの予測放電電流値より大きい値を算出する。そして、制御器41は、ステップS106の処理により、電流制限の実施の必要性がある、つまり、制限量を0より大きい値とすることにする。より具体的には、例えば、制限量は、1つの蓄電池10の最大定格電流より小さい電流値が電源装置20から出力されるように定められる。
その結果、ステップS110で蓄電池10が放電する際には、蓄電池10a〜10fそれぞれは、調整器30が存在しない場合より制限量の分だけ制限された電流を放電する。より具体的には、電源装置20が1つの蓄電池10の最大定格電流より小さい電流を出力するように制御される。このようにすることで、図11に示されるように、各蓄電池10が放電する場合に、蓄電池10aの放電電流値が最大定格電流値を超えることが回避される。
なお、調整器30は、蓄電池10a〜10fそれぞれの状態量、つまり、蓄電量、電圧若しくは内部抵抗等、又は、電源装置20の出力電流などについての所定の条件を満たすまで、出力電流の制限を維持するようにしてもよい。例えば、調整器30は、電源装置20の出力電流値が上昇後にほぼ一定値をとるようになる、つまり、飽和するまで、出力電流の制限を続けるようにしてもよい。また、調整器30は、蓄電池10a〜10fそれぞれの蓄電量の差が所定値以内となるまで出力電流の制限を続けるようにしてもよい。
図12は、本実施の形態に係る電源装置の機能構成の変形例(電源装置20A)を示すブロック図である。図12に示される電源装置20Aは、電源装置20と同じ用途及び機能で用いられるものである。
電源装置20Aは、蓄電池10a〜10fと、受電プラグ22と、コンセント23と、停電検知器42と、入出力器44と、充放電切替器50a〜50fと、AC/DC60と、DC/AC62と、接続器70a〜70fと、通信器72とを備える。これらは、電源装置120における同名の構成要素と同じであるので説明を省略する。また、電源装置20は、さらに、調整器31と、制限器32と、制御器41とを備える。
調整器31は、調整器30と同様、蓄電池10a〜10fのそれぞれが充放電切替器50a〜50fを通じて接続される電力線を流れる電流を、蓄電池の蓄電量等に応じて制限する出力調整器である。ただし、調整器30がDC/AC62Aを制御することで電流を制限するのと異なり、調整器31は、制限器32を制御することで電流を制限する。
制限器32は、蓄電池10a〜10fのそれぞれが充放電切替器50a〜fを通じて接続される電力線上に設けられ、当該電力線を流れる電流を、蓄電池の蓄電量等に応じて制限する出力調整器である。
制限器32は、制限器32が存在しない場合に比べて電力線を流れる電流を小さくするように電流を制限するための素子又は回路である。制限器32の制限量は、制御器41により制御される。制限器32は、ダイオード、抵抗、その他の電流制限回路等により実現される。
制御器41は、電源装置20Aの制御器41と同様、電源装置120の制御器40の機能に加えて、蓄電池10の蓄電量に応じて調整器30による電流の制限量を増減させる制御を行う処理部である。
このように構成された電源装置20Aは、調整器31及び制限器32による電流制限により、図7に示される電源装置20と同様の効果を奏する。
以降において、制限器32の詳細構成について説明する。
図13は、本実施の形態に係る電源装置20Aにおける制限器32の詳細構成を示す説明図である。
図13の(a)に示される制限器32は、電流制限素子32Bと、電流制限素子32Bが設けられた電路と、電流制限素子32Bをバイパスする電路であるバイパス電路と、スイッチ32Aとを有する。電流制限素子32Bは、蓄電池10が放電する電流を制限する電流制限素子であり、電流制限素子32Bに流れる電流量を制御器41から通知される制限量に基づいて動的に変更することができる。スイッチ32Aは、蓄電池10が放電する電流を、電流制限素子32Bが設けられた電路に流すか、バイパス電路に流すかを切り替えるスイッチである。
これにより、制限器32は、制御器41による制御に基づいて電流制限素子32Bによる制限量を変更することで、蓄電池10が放電する電流値を制限する。
図13の(b)に示される制限器32は、3つの電路と、スイッチ32Dとを有する。3つの電路のうち、第一の電路は、2個のダイオード32Fが設けられており、2個のダイオード32Fによる電流制限がなされる電路である。また、第二の電路は、1個のダイオード32Eが設けられており、1個のダイオード32Eによる電流制限がなされる電路である。第三の電路は、電流制限がない電路である。また、スイッチ32Dは、蓄電池10の放電路として上記3つの電路のうちのどれを使用するかを切り替えるためのスイッチである。制限器32は、制御器41による制御に基づいてスイッチ32Dを切り替えることで、蓄電池10が放電する電流値を、複数の段階のうちのいずれかに制限することができる。なお、制限器32は、4つ以上の電路を有するものであってもよい。
なお、電源装置20は、外部の電気機器(図3の照明装置160及び冷蔵庫130)に電力を供給するものと説明したが、電気機器に搭載され、当該電気機器に電力を供給するものであってもよい。
図14は、本実施の形態に係る電源装置20を搭載する電動スクータ100の外観図である。電動スクータ100は、電源装置20を搭載し、電源装置20が備える複数の蓄電池10が放電する電力により駆動する電動スクータである。これにより、複数の並列接続された蓄電池10が適切に電力供給を行い、電動スクータ100を駆動する。
以上のように、本実施の形態の形態に係る電源装置は、並列接続された蓄電池のうち、放電開始時に最大定格電流値を超えて放電する蓄電池があると予測されるときに、外部の電力負荷への出力を外部の電力負荷の電力需要より小さくする制御を行う。これにより、電源装置は、放電を開始する時に当該蓄電池が放電する電流値が最大定格電流値を超えることを未然に回避し、蓄電池の耐久性を向上させる。このように電源装置は、並列接続された蓄電池により適切に電力供給を行うことができる。
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の電源装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、電源装置の動作方法であって、並列に接続された複数の蓄電池が外部の電力負荷に供給する電力を調整するステップと、前記複数の蓄電池による放電の開始時に前記複数の蓄電池のうちの少なくとも1つの蓄電池において、当該蓄電池の最大定格電流よりも大きな電流が出力されると予測されるとき、前記調整するステップでの制御により、前記外部の電力負荷に供給する電力を前記外部の電力負荷の電力需要よりも小さくする制御ステップとを備える動作方法を実行させる。
以上、一つまたは複数の態様に係る電源装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。