JP6567929B2 - 電鋳方法及び電鋳装置 - Google Patents
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Description
のみならず、この電鋳方法において電鋳シェルの肉厚を分厚くする場合は、更に長い処理時間を要することになるが、肉厚を一定にするためには、定期的に電鋳処理を中断して形成途中の電鋳シェルをめっき槽から取り出し、この電鋳シェルの表面研削や研磨を行う必要があり、益々、製造効率の低下や製造コストの高騰化等を招来するものとなっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、原型の形状や大きさに制限されずに電鋳シェルの形成ができ、また分厚い肉厚を形成することもでき肉厚の一定化をも可能とするものであって、これらの電鋳シェルを高能率、高品質、低コストにて形成できるようにした電鋳方法及び電鋳装置を提供することを目的とする。
即ち、本発明に係る電鋳方法は、カソードとして使用する原型とこの原型の表面から離反して配置されたアノード体との間に形成される電鋳空間へめっき液を供給し、前記原型と前記アノード体との間に電鋳電圧を印加することで前記原型表面に電鋳シェルを析出形成させる電鋳方法において、前記原型は厚さ方向への突出成分を備えた立体形に形成されたものとし且つ前記アノード体は前記原型の立体表面を包囲するものとしたうえで、前記原型の一端部と前記アノード体における同側の端部とを連結する閉鎖板に前記原型の立体表面に沿った配置で設けたノズル孔により前記電鋳空間へ向けてめっき液を噴出させることにより当該電鋳空間内で前記原型の立体表面に沿ったメッキ液の層流を生じさせると共に、前記めっき液が供給圧に伴う流速よりも高速化するように前記原型と前記アノード体との間隔を近接させ、前記めっき液を加圧供給しつつ電鋳電圧の印加を行うことを特徴とする。
前記原型は中心軸まわりに全方位形とされ、前記アノード体は前記原型の全方位を取り囲む枠形とされることにより、前記電鋳空間が中空形体に形成されたものとすることができる。
前記アノード体は、内径の違いを段階的に区分することによって形成した複数のセグメントを前記原型の中心軸方向で段積みした構造を有したものとしてもよい。
或いは、前記ノズル孔は、前記電鋳空間で形成されるめっき液の層流が前記原型のまわりを周回する旋回流となるように孔軸を旋回方向に傾斜させて設けることができる。
前記電鋳空間と前記送液ポンプとの間には前記送液ポンプから前記電鋳空間へ向けた供給ラインと前記電鋳空間から前記送液ポンプへ向けた回収ラインとが設けられ、前記供給ラインにはめっき液から不純物を除去する濾過器が設けられていると共に前記回収ラインにはめっき液を暫時貯留する管理槽が設けられており、前記供給ラインは複数本の支流ラインにより前記電鋳空間に区画設定された複数ブロックへ接続され、これら支流ラインごとに前記濾過器が各別に設けられたものとするのが好適である。
図1乃至図3は、本発明に係る電鋳装置1の第1実施形態を示している。図1に示すように、この電鋳装置1は、厚さ方向への突出成分を備えた立体形で形成された原型2と、この原型2の立体表面を包囲する状態で設けられたアノード体3とを有している。
なお、アノード体3は容器型の装置本体4内に収容設置されたものとし、原型2は装置本体4の上部開口を塞ぐように設けられる蓋体5の下面に固定されたものとした。
またアノード体3には装置本体4の側部へ突出する陽極端子3aが設けられており、この陽極端子3aと直流電源の陽極側とが電気的に接続される。
ここにおいて「全方位形」とはいわゆる回転対称形であって、円錐形や円柱形などをはじめとして角錐形や角柱形などのn回対称形も含んでいる。また中心軸からの張出形状(張出度合い)が方角によって異なるような回転非対称形も含むものとする。
例えば、図1及び図2に示したような逆円錐台形では、その直径が厚さ方向への突出成分に相当するので、この原型2の表面は逆円錐台形の外周面としての曲面的な広がりを有していることになる。
アノード体3の表面(内周面)は、原型2の立体表面(外周面)に対して一定間隔を保持するように離されており、これら原型2とアノード体3との間に電鋳空間7が形成されている。言い換えれば、アノード体3は、その表面が原型2の中心軸から見て、当該原型2の立体表面と相似的な関係を有したものと言うことができる(図4各図を参照)。
また電鋳空間7を経た後のめっき液は、電鋳空間7の上部からオーバーフロー状に排出された後、装置本体4の閉鎖板10に設けられた排出管部13を介して装置本体4外へと取り出される。
本第1実施形態では、図2に示すように、装置本体4の供給管部11が複数本(図例では3本)設けられたものとして、電鋳空間7内に区画設定した複数ブロック(周方向に120°で区分けした3区画とした)に満遍なくめっき液が行き渡るように、それぞれの供給管部11を割り当てている。
なお、各支流ライン15aのライン方向(めっき液が流れる方向)において、送液ポンプ16や濾過器20の配置は特に限定されるものではなく、また送液ポンプ16と濾過器20との配置順(どちらを上流側にするか)についても限定されない。
管理槽22では、貯留しためっき液の濃度や温度を、設定値の許容範囲内に保持すべく自動又は手動操作により調整するようにしてある。
以上の説明から明らかなように、めっき液は、供給ライン15(複数本の支流ライン15a)及び回収ライン21により、送液ポンプ16、濾過器20、電鋳空間7、管理槽22の間を一巡することを繰り返すように、循環流動を行うようになる。
本発明者は、実際には、電鋳空間7を通るめっき液の流速を0.2〜0.5m/secとするのが好適であることを幾多の実験により突き止めている。通路幅Wは、電鋳空間7の大きさや得ようとする電鋳シェルSの肉厚にもよるが、29〜70mmの範囲で調整するのがよい。
のみならず、めっき液の流速を高速化することで、電鋳シェルSの形成効率を高めることもできる。すなわち、めっき液の流速を0.2〜0.5m/secとすることで、電鋳シェルSの形成前の原型表面や形成途中の電鋳シェル表面に対して、電流密度を4〜10A/dm2に上げることができる(従来の電鋳法ではせいぜい2〜3A/dm2程度である)。このことで、電鋳シェルSに対する焦げ付き防止作用を得ることにも繋がる。
本第1実施形態では、前記したようにアノード体3を円錐凹部形(すり鉢状)に形成する必要があることから、アノード体3は、内径の違いを段階的に区分することによってリング状に形成した複数の異径セグメント30a〜30eを、原型2の中心軸方向に沿って内径の小さなものから徐々に大きなものへと移行する順番で段積みさせた構造としている。
しかも、電鋳処理の継続に伴ってアノード体3から金属イオンが溶解した後に、各セグメント30a〜30eを新品のものと交換する作業がいとも簡単に行え、この交換作業により再び、電鋳空間7の通路幅Wを一定に保持できるという利点に繋がる。
アノード体3の表面積比が原型2の2倍に満たない場合には、電鋳シェルSの形成効率が低くなる(肉厚成長が遅い)という事情がある。とは言え、アノード体3の表面積比が原型2の2倍を超えると、金属イオンの溶解が過多となり電鋳シェルSの表面が粗面になるおそれがある。
このようにノズル孔12をスリット状にし、且つ原型2の外周面に沿った配置とする(原型2の外周面に近接させる)ことにより、めっき液の層流を原型2の立体表面(形成途中の電鋳シェル表面である場合を含む)から剥離し難くし、また原型2の立体表面に接することによる減速(管路抵抗)を可及的に小さく抑制できる利点が得られる。更に、原型2の立体表面や形成途中の電鋳シェル表面に対して、めっき液に含まれる不純物や気泡等が付着する機会を与えないようにできる。
また、原型2の下端部にピボット受け凹部を備えた座部34を設け、装置本体4の底9に対してピボット受けに嵌合する円錐状突起35を設けておくと、アノード体3に対する原型2の芯合わせや、原型2の外周面に対するノズル孔12のスリット幅一定化などが簡単且つ確実に行えるようになり、好適である。
かくして、電鋳シェルSを高能率、高品質、低コストにて形成できる。例えば、前記したような内径が数百mm〜数千mm、肉厚が数十mmといった大型の電鋳シェルSであっても、僅か1日程度の極めて短時間のうちに形成できることになる。
ノズル孔12の孔軸を傾斜させることで、電鋳空間7では原型2の外周面に沿ってできる層流が、当該原型2のまわりを周回しつつ上昇するような螺旋状の旋回流となる。勿論、この旋回流は、送液ポンプ16による供給流速よりも高速化されて0.2〜0.5m/secの流速を生じたものとなっている。
その他の構成及び作用効果については第1実施形態と略同様であり、同一作用を奏するものに同一符号を付することでここでの詳説は省略する。
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
電鋳空間7と管理槽22とを接続する回収ライン21の適所で負圧を発生させ、電鋳空間7からめっき液を強制吸引させるようにしてもよい。この場合、電鋳空間7内では強力な高速流が発生することになる。
アノード体3は銅に限らず、亜鉛、ニッケル、クロム、金、銀などをはじめとして何ら限定されるものではない。
そのため、この状態の貯槽を、本発明に係る電鋳装置1(電鋳処理を実施するもの)とは別に脱脂処理、水洗処理、活性処理、酸洗い処理などの工程に設置して、ノズル孔12から各種処理に必要な処理液を供給するといった使い方ができる。例えば、前処理用、及び後処理用を本発明に係る電鋳装置1に加えた合計3台の装置だけで、めっき処理全体(全工程)の自動化ラインを構成することができる。
2 原型
2a 陰極端子
3 アノード体
3a 陽極端子
4 装置本体
5 蓋体
7 電鋳空間
9 底
10 閉鎖板
11 供給管部
12 ノズル孔
13 排出管部
15 供給ライン
15a 支流ライン
16 送液ポンプ
20 濾過器
21 回収ライン
22 管理槽
30a〜30eセグメント
32 目皿
34 座部
35 円錐状突起
S 電鋳シェル
W 通路幅
Claims (8)
- カソードとして使用する原型とこの原型の表面から離反して配置されたアノード体との間に形成される電鋳空間へめっき液を供給し、前記原型と前記アノード体との間に電鋳電圧を印加することで前記原型表面に電鋳シェルを析出形成させる電鋳方法において、
前記原型は厚さ方向への突出成分を備えた立体形に形成されたものとし且つ前記アノード体は前記原型の立体表面を包囲するものとしたうえで、
前記原型の一端部と前記アノード体における同側の端部とを連結する閉鎖板に前記原型の立体表面に沿った配置で設けたノズル孔により前記電鋳空間へ向けてめっき液を噴出させることにより当該電鋳空間内で前記原型の立体表面に沿ったメッキ液の層流を生じさせると共に、
前記めっき液が供給圧に伴う流速よりも高速化するように前記原型と前記アノード体との間隔を近接させ、
前記めっき液を加圧供給しつつ電鋳電圧の印加を行うことを特徴とする電鋳方法。 - 厚さ方向への突出成分を備えた立体形で形成されカソードとして使用する原型と、
前記原型の立体表面を包囲する状態で且つ前記立体表面から電鋳空間を離して配置されたアノード体と、
前記電鋳空間にめっき液を加圧供給することで前記原型の立体表面に沿った層流を生じさせる送液ポンプと、を有しており、
前記アノード体は、
前記電鋳空間を通るめっき液の層流の流速が前記送液ポンプによる供給流速よりも高速になるように前記原型の立体表面との通路幅を近接させて配置され、
前記原型の一端部と前記アノード体における同側の端部とが閉鎖板により連結され、前記閉鎖板には前記送液ポンプにより供給されるめっき液を前記原型の立体表面に沿った位置から前記電鋳空間へ噴出するノズル孔が設けられていることを特徴とする電鋳装置。 - 前記原型は中心軸まわりに全方位形とされ、前記アノード体は前記原型の全方位を取り囲む枠形とされることにより、前記電鋳空間が中空形体に形成されていることを特徴とする請求項2記載の電鋳装置。
- 前記原型は中心軸の一方寄りが径小で他方寄りが径大となる円錐形又は円錐台形に形成されており、
前記アノード体は前記原型の径小側表面を包囲する部位が径小で前記原型の径大側表面を包囲する部位が径大となる開口を備えた円錐凹部形に形成されていることを特徴とする請求項3記載の電鋳装置。 - 前記アノード体は、内径の違いを段階的に区分することによって形成した複数のセグメントを前記原型の中心軸方向で段積みした構造を有していることを特徴とする請求項4記載の電鋳装置。
- 前記ノズル孔は、前記原型の立体表面に沿う方向に長いスリット状に開口形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の電鋳装置。
- 前記ノズル孔は、前記電鋳空間で形成されるめっき液の層流が前記原型のまわりを周回する旋回流となるように孔軸を旋回方向に傾斜させて設けられていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の電鋳装置。
- 前記電鋳空間と前記送液ポンプとの間には前記送液ポンプから前記電鋳空間へ向けた供給ラインと前記電鋳空間から前記送液ポンプへ向けた回収ラインとが設けられ、
前記供給ラインにはめっき液から不純物を除去する濾過器が設けられていると共に前記回収ラインにはめっき液を暫時貯留する管理槽が設けられており、
前記供給ラインは複数本の支流ラインにより前記電鋳空間に区画設定された複数ブロックへ接続され、
これら支流ラインごとに前記濾過器が各別に設けられている
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の電鋳装置。
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