以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るインクジェットプリント装置100の一実施形態を説明するための断面図である。プリント装置100にはロール状に巻回された連続シート1が保持され、そのシート1は、上ガイド6と下ガイド7との間の搬送路を通して送られる。シート1は、搬送ローラ8とピンチローラ9と間のニップ部に挟持されて、矢印Yの搬送方向に搬送されて、プリントヘッド2と対向するプリント位置に配備されたプラテン10上に送られる。プリント位置に搬送されたシート1には、プリントヘッド2から吐出されるインクによって画像がプリントされる。プリントヘッド2、プリントヘッド2を搭載するキャリッジ3、およびプリントヘッド2に対向配備されたプラテン10によって、画像プリント部が構成される。プリント装置100には、キャリッジシャフト4、および不図示のガイドレールが互いに平行に配備されており、これらに沿って、キャリッジ3が搬送方向Yと交差(本例の場合は、直交)する方向に往復移動可能にガイドされている。キャリッジ3に備わる紙端センサ12は、キャリッジ3と共に移動することによりシート1の端部の位置を検知する。画像プリント部は、キャリッジ3の往動または復動を伴って1ライン分の画像をプリントしてから、シート1を搬送方向に所定量だけ搬送し、その後、キャリッジ3の移動を伴って次のラインの画像をプリントする。画像がプリントされたシート1のプリント部分(プリント済みの部分)は、排紙ガイド11へ向けて搬送される。
このような動作を繰り返すことによって、シート1に画像が順次プリント可能である。所定の画像がプリントされたシート1の部分は、切断装置5の切断位置において切断される。切断されたシート(カットシート)は、排紙ガイド11からプリント装置100の外側へ排出される。プリント装置100は、本例のようなシリアルスキャン方式のみに特定されず、いわゆるフルライン方式などであってもよく、またインクジェット方式以外のプリント方式であってもよい。
図2は、プリント装置100の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
プリント装置100に備わる制御部400は、カッターモータ103のエンコーダ104、紙端センサ12、待機位置センサ106からの信号に基づいて、搬送モータ51、カッターモータ103、キャリッジモータ52、およびプリントヘッド2を制御する。制御部400には、不図示のCPU、ROM、RAM、およびモータドライバ等が備えられており、主制御部410、搬送制御部420、およびプリント制御部430が構成されている。主制御部410は、搬送制御部420とプリント制御部430に対して指令を与える。搬送制御部420は、主制御部410の制御下において、搬送モータ51により搬送ローラ8を回転させてシート1を搬送し、カッターモータ103により切断装置5を作動させてシート1を切断する。プリント制御部430は、キャリッジモータ52によるキャリッジ3の移動と、プリントヘッド2からのインクの吐出動作と、によって、シート1に画像をプリントする。
(切断装置の概略構成)
図3は切断装置5の全体を示す斜視図、図4は、プリント装置100に備わる切断装置5の周辺部の平面図、図5は、切断装置5の要部の斜視図である。
切断装置5は、ガイドレール101、歯付のベルト102、キャリッジ200、およびカッターユニット300を含む。ガイドレール101は、シート1の搬送方向(矢印Y方向)と交差する方向に沿って、キャリッジ200を往復移動可能にガイドする。本例の場合、キャリッジ200は、搬送方向と直交する矢印X1,X2方向に往復移動可能にガイドされる。キャリッジ200はベルト102に連結されている。ガイドレール101の一方側には、カッターモータ103およびモータプーリ107が配備され、他方側には、テンショナプーリ108およびテンショナバネ109が配備されている。ベルト102は、モータプーリ107とテンショナプーリ108との間に架け渡される。テンショナバネ109によってテンショナプーリ108が矢印X2方向に付勢されることにより、ベルト102に張力が与えられて、ベルト102の歯飛びが防止される。
カッターユニット300は、後述するように、キャリッジ200に対して結合方向(所定方向)から交換可能に結合される。カッターユニット300は、シート1を切断可能な円盤状の上可動刃301と下可動刃302とを有する。これらの可動刃301,302は、図4のように、切断方向となる方向X1に対して所定量の角度θ(交差角)で交差するように配備されており、これらの接触点においてシート1が切断される。カッターユニット300は、キャリッジ200と共に矢印X1,X2方向に往復移動し、矢印X1方向に移動するときにシート1を切断する。後述するように、キャリッジ200は、それ自体とベルト102との相対移動から回転力を得て、その回転力により、カッターユニット300の下可動刃302を回転駆動させる。これにより、シート1の切断時には、下可動刃302と、それに接触する上可動刃301と、がいずれも回転する。
画像のプリント中、カッターユニット300は、シート1の端部1aの外側の待機位置P1にて待機しており、シート1の切断時には、待機位置P1から矢印X1の切断方向に移動する。シート1の切断後は、シート1の幅に対応する反転位置P2にて反転し、次の切断動作のために待機位置P1に戻って待機する。カッターユニット300の矢印X2方向の移動は、切断動作には寄与しない。
カッターモータ103に備わるエンコーダ104の出力信号(パルス信号)に基づいて、カッターユニット300の矢印X1,X2の移動位置を制御することができる。予め、エンコーダ104のパルス数と、カッターユニット300の移動量と、の関係が分かっているため、エンコーダ104のパルス数を計数することによって、カッターユニット300の移動量が分かる。待機位置P1の近傍の定位置にセンサホルダ105が固定されており、このセンサホルダ105には待機位置センサ106が備えられている。カッターユニット300に配されたセンサフラグ部305fを待機位置センサ106によって検知することにより、カッターユニット300を待機位置P1に正確に停止させることができる。また待機位置センサ106によって、待機位置P1におけるカッターユニット300の有無を検知することもできる。
(キャリッジの構成)
図6はキャリッジ200の斜視図、図7は切断装置5の側面図である。
キャリッジ200は、後述するように4つのガイド面101a,101b,101c,101dを有するガイドレール101の内部に配される。キャリッジシャーシ201、キャリッジホルダ202、上コロホルダ(第1保持部)203、および下コロホルダ(第2保持部)204を含む。キャリッジホルダ202のベルト挿入部202aには、ベルト102の両端部が挿入されて連結される。キャリッジホルダ202はキャリッジシャーシ201に固定される。コロホルダ203,204は、後述するようにガイド体としてのコロ(回転体)を保持する。
キャリッジ200をガイドレール101に沿って滑らかに移動させるために、キャリッジ200とガイドレール101との間に若干の隙間を設けた場合には、その隙間の範囲において、キャリッジ200が変位する。前述したように、カッターユニット300の可動刃301,302が所定の角度θ(交差角)だけ傾いているため、カッターユニット300に対しては、シート1の切断中に搬送方向上流側へ変位させるような力が作用する。そのため、シート1の切断中は、キャリッジ200が搬送方向上流側へ変位するおそれがある。キャリッジ200と一体に結合されるカッターユニット300の位置が切断開始時から変位した場合には、シート1の切断部分が搬送方向に対して曲がる場合がある。よって、キャリッジ200は、ガイドレール101に対して隙間がないように配備し、かつ移動時の負荷を小さくする必要がある。
本例においては、ガイドレール101とキャリッジ200との間に下記のようなガイド機構が構成されている。
上コロホルダ203は、キャリッジシャーシ201に固定され、図6のように、コロ軸206Aに回転自在に軸支されたコロ(第1ガイド体)205Aがシート1の切断方向に2つ配備されている。下コロホルダ204は、上コロホルダ203に対向する位置において、キャリッジホルダ202に矢印A1,A2方向にスライド可能に保持されている。つまり、コロホルダ203,204は、互いに近接および離間する方向に移動可能にガイドされている。下コロホルダ204には、図6のように、コロ軸206Bに回転自在に軸支されたコロ(第2ガイド体)205Bがシート1の切断方向に2つ配備されている。上コロホルダ203と下コロホルダ204との間には、それらを互いに離間させる方向に付勢する押圧バネ207が配備されている。すなわち、上コロホルダ203は矢印A2方向、つまり図7のように搬送方向上流側かつ上方に向かって傾斜する方向に付勢される。下コロホルダ204は矢印A1方向、つまり図7のように搬送方向下流側かつ下方に向かって傾斜する方向に付勢される。
ガイドレール101は、コロ205A,205Bをガイドするための第1,第2,第3,第4ガイド面101a,101b,101c,101dを有する。第1,第2ガイド面101a,101bは、互いに異なる平面上に位置して第1ガイド部を構成し、第3,第4ガイド面101c,101dは、互いに異なる平面上に位置して第2ガイド部を構成する。これらの第1および第2ガイド部は、ガイドレール101の内側において互いに対向する。本例の場合、第1,第2ガイド面101a,101bは略直角を成す2つの平面上に位置し、同様に、第3,第4ガイド面101c,101dは略直角を成す2つの平面上に位置する。また、第1ガイド面101aと第3ガイド面101cは略並行であり、第2ガイド面101bと第4ガイド面101dは略並行である。より具体的には、第1ガイド面101aと第3ガイド面101cは、シート1の搬送方向に対して直交する面であり、第1ガイド面101aは、第3ガイド面101cよりも搬送方向の上流側に位置する。第2ガイド面101bと第4ガイド面101dは、上下方向に対して直交する面であり、第2ガイド面101bは、第4ガイド面101dより上側に位置する。
コロ205Aは、2つの周縁部の一方にテ―パ部(第1被ガイド部)205Aaが形成され、その他方にテーパ部(第2被ガイド部)205Abが形成されている。矢印A2方向に付勢される上コロホルダ203は、テ―パ部205Aaを第1ガイド面101aに押圧し、テーパ部205Abを第2ガイド面101bに押圧する。コロ205Bは、2つの周縁部の一方にテ―パ部(第4被ガイド部)205Baが形成され、その他方にテーパ部(第3被ガイド部)205Bbが形成されている。矢印A1方向に付勢される下コロホルダ204は、テ―パ部205Baを第4ガイド面101dに押圧し、テーパ部205Bbを第3ガイド面101cに押圧する。押圧バネ207は、第1ガイド面101aと第2ガイド面101bとの間の角部に向かう矢印A2方向に上コロホルダ203を付勢し、第3ガイド面101cと第4ガイド面101dとの間の角部に向かう矢印A1方向に下コロホルダ204を付勢する。これにより、コロ205A,205Bのテーパ部が対応するガイドレール101のガイド面に確実に押圧され、キャリッジ200は、ガイドレール101に対して隙間がないように配備されて、安定した姿勢を維持することができる。このように、キャリッジ200はガイドレール101に対して隙間をなくす機能を有するため、その隙間をなくすための構成を別途備える必要がなく、その分、装置の小型化を図ることができる。
本例では、上下のコロホルダ203,204のそれぞれに対して、コロを2つずつ計4つ配備している。しかし、コロの配備数は計3つ以上であればよい。すなわち、上下のコロホルダ203,204の一方にコロを複数備え、他方に2つ以上のコロを備えることによって、ガイドレール101に対してキャリッジ200の姿勢を安定させることができる。また本例では、上下のコロホルダ203,204の間に、2つの押圧バネ207を備えている。しかし、押圧バネ207の配備数は1つ以上であればよい。
キャリッジ200は、カッターモータ103により、ベルト102を介して矢印X1,X2方向に往復移動される。キャリッジ200の移動に応じて、上下のコロホルダ203,204に備わるコロ205A,205Bは、対応するガイド面101a,101b,ガイド面101c,ガイド面101dに接しつつ回転する。これによりコロ205A,205Bは、キャリッジ200の往復移動中において常にガイドレール101に接して、図7中の上下左右方向におけるキャリッジ200の位置を規制することができる。この結果、キャリッジ200に取り付けられるカッターユニット300の、切断開始時からの変位を抑制して、シート1の切断部分の曲がりの発生を抑えることができる。また、コロ205A,205Bが回転することにより、キャリッジ200の移動時の負荷を小さくすることができる。
また本例においては、上コロホルダ203がキャリッジシャーシ201に固定され、下コロホルダ204は、キャリッジシャーシ201に固定されるキャリッジホルダ202に対して、矢印A1,A2方向に移動可能に備えられている。そのため、キャリッジシャーシ201に取り付けられるキャリッジ200は、矢印A2方向(搬送方向上流側かつ上方向)の力が作用しても、その方向に動くことはない。よってシート切断時に、カッターユニット300が角度θ(交差角)のために搬送方向上流側の力を受けた場合にも、キャリッジ200は、矢印A2方向に動くことはなく、シート1の切断位置が正規な位置に規制される。
ガイドレール101には、その側面からキャリッジ200を組み付ける際に、キャリッジ200をガイドするガイドテ―パ部101e,101fが形成されている。ガイドテ―パ部101eは、搬送方向上流側に位置する第1ガイド面101aと滑らかに連続するように形成されており、搬送方向上流側に向かって傾斜されている。ガイドテ―パ部101fは、上側に位置する第2ガイド面101bと滑らかに連続するように形成されており、上側に向かって傾斜されている。このようなガイドテ―パ部101e,101fを利用することにより、ガイドレール101の側面からキャリッジ200を容易に組み付けることができる。さらに、これらの組立性を向上させるため、第3ガイド面101cおよび第4ガイド面101dに対しても同様のガイドテ―パ部を設けてもよい。
キャリッジシャーシ201には、軸208とコロ軸210が備えられている。軸208には出力ギア209が回転可能に軸支され、コロ軸210にはコロ211が回転可能に軸支されている。これらは、キャリッジ200とベルト102との相対移動に応じて、カッターユニット300の下可動刃302を回転駆動するための駆動機構を構成する。出力ギア209はベルト102の歯部と噛み合わされている。コロ211は、出力ギア209に対するベルト102の巻き付け量を増やすようにベルト102をガイドすることにより、ベルト102と出力ギア209の噛み合い量を増して、それらの間の歯飛びを抑制する。ベルト102を介して、キャリッジ200を矢印X1,X2に往復移動させると、ベルト102と噛み合う出力ギア209は、軸208を中心として回転される。出力ギア209は、カッターユニット300の下可動刃302の駆動力を供給する供給部を構成する。出力ギア209には、軸208の外周部に位置する断面多角形(本例の場合は、断面六角形)の出力部209aが設けられており、その出力部209aは、シート1の搬送方向下流側に突出している。出力部209aは、後述するように、カッターユニット300の下可動刃302に回転力を伝達する。
(カッターユニットの構成)
図8は、カッターユニット300の可動刃301,302を上方から視た拡大図、図9は、カッターユニット300が矢印X1方向(切断方向)に移動しているときの分解図、図10は、カッターユニット300が矢印X2方向に移動しているときの分解図である。
上可動刃(第1刃)301は、上回転軸303と一体に回転可能な円盤状の丸刃(回転刃)であり、画像がプリントされたシート1のプリント面の上方に配備されている。下可動刃(第2刃)302は、下回転軸304と一体に回転可能な円盤状の丸刃(回転刃)であり、シート1のプリント面と反対側の面の下方に配備されている。上回転軸303は、主ホルダ(第1ホルダ)305と上ホルダ(第2ホルダ)306との間に回転可能に軸支されている。下可動刃302は、上可動刃301よりもシート1の搬送方向下流側に配されている。下可動刃302は、矢印Xの切断方向に対して所定量の角度θ1(交差角)を成すように、下回転軸304が主ホルダ(第1ホルダ)305と下ホルダ(第2ホルダ)307との間に回転可能に軸支されている。本例において、上可動刃301を回転可能に保持するホルダ305,306の一方の主ホルダ305と、下可動刃302を回転可能に保持するホルダ305,307の一方の主ホルダ305と、は同一である。下ホルダ307における下回転軸304の軸支部は、主ホルダ305の下回転軸304の軸支部より、切断方向(矢印X1方向)と反対の矢印X2方向に所定量ずれている。これにより下回転軸304は、切断方向と直交する方向(図8中の上下方向)に対して傾くこととなる。そのため、下可動刃302が矢印X1の切断方向に対して所定量の角度θ1(交差角)傾いて、交差角θ1が設定される。下可動刃302と主ホルダ305との間には、下回転軸304の周囲に位置する押圧バネ308が配備されており、この押圧バネ308により、上可動刃301は上可動刃と302と点接触するように押圧さる。上可動刃301と下可動刃302との接触点が切断点309となり、この切断点309にてシート1が切断される。
多種多様なシートに対する切断開始時の可動刃301,302の食い付きをよくして切断性能を高めるためは、切断方向(矢印方向X1)に対する交差角θ1を大きくすることが必要である。しかし、構成部品の精度のバラツキなどによって交差角θ1が大き過ぎた場合には、切断面が切り剥がされて、シートが紙の場合には紙粉が多く発生する等、切断品位の低下をもたらすおそれがある。また、交差角θ1が小さ過ぎた場合には、シートへの可動刃301,302の食い付きが低下して切断不良が発生し、切断方向の真直度の低下をもたらすおそれがある。そのため、交差角θ1を高精度に設定するように、可動刃301,302の位置決めすることが必要となる。一方、上可動刃301は、切断方向と略一致するように主ホルダ305と上ホルダ306との間に軸支されている。しかしながら、構成部品の精度のバラツキなどにより、切断方向に対して所定量の角度θ2(交差角)傾くおそれがある。その交差角θ2が大きくなった場合には、交差角θ1が大きくなった場合と同様に、切断面が切り剥がされて、シートが紙の場合には紙粉が多く発生する等、切断品位の低下をもたらすおそれがある。そのため、交差角θ2は限りなく0°に近付ける必要がある。
上可動刃301の交差角θ2は、主ホルダ305における上回転軸303の軸支部に対する、上ホルダ306における上回転軸303の軸支部の位置によって決まる。同様に、下可動刃302の交差角θ1は、主ホルダ305における下回転軸304の軸支部に対する、下ホルダ307における下回転軸304の軸支部の位置によって決まる。これらの交差角θ1,θ2を調整可能とするために、主ホルダ305に対して上ホルダ306および下ホルダ307を定位置に位置決めするための位置決め部は備えられていない。上ホルダ306および下刃ホルダ307は交差角θ1,θ2を調整した後に主ホルダ305に固定され、これにより、交差角θ1,θ2が最適な大きさに維持される。本例における交差角θ1,θ2は、θ1=1.8°±0.3°、θ2=0°±0.3°に設定される。
カッターユニット300は、下可動刃302を強制的に回転させるための入力ギア310と、振り子ギア311と、回転ギア312と、を有する。入力ギア310には穴形状の入力部310aが設けられており、その入力部310aには、断面多角形(本例の場合は、断面六角)の内周部が形成されている。その入力部310aと、キャリッジ200側の出力ギア209の回転出力部209aと、が嵌合することにより、出力ギア209と入力ギア310とが連結される。前述したように、キャリッジ200の往復移動に伴って出力ギア209が回転する。その出力ギア209の回転力は入力ギア310に伝達される。つまり、入力ギア310は、カッターユニット300の移動に伴って矢印B1,B2方向に回転される。
振り子ギア311は、入力ギア310の一方向の回転を回転ギア312に伝達する。すなわち、入力ギア310が図9中の矢印B1方向に回転したときに、振り子ギア311は、入力ギア310の軸を中心として矢印R1方向に回転して、回転ギア312と噛み合う位置まで回転してから、回転ギア312に回転を伝達する。これにより回転ギア312は、図9中の矢印方向に回転される。一方、入力ギア310が図10中の矢印B1向に回転したときには、振り子ギア311は、入力ギア310の軸を中心として矢印R2方向に回転して、不図示のストッパにより図10に示す位置にて止められる。これにより、振り子ギア311は回転ギア312と噛み合わず、回転ギア312は回転されない。回転ギア312は下回転軸304に取り付けられており、回転ギア312が回転することにより、下可動刃302も回転することとなる。上可動刃301は、下可動刃302と切断点309にて接触しているため、下可動刃302が回転すると上可動刃301は従動回転する。
カッターユニット300が矢印X1の切断方向X1へ移動されるときは、上可動刃301と下可動刃302は、図9のように切断点309にシート1を引き込む方向に回転する。このように回転する上可動刃301と下可動刃302の協働により、シート1を容易に切断することができる。一方、カッターユニット300が矢印X2方向へ移動されるときは、図10のように、振り子ギア311の回転は回転ギア312に伝達されないため、上可動刃301と下可動刃302は回転されない。これにより、上可動刃301と下可動刃302の摩耗を抑制し、結果的に、それらの耐久性を高めることができる。
(交差角θ1,θ2の調整)
次に、図11および図12を参照して、交差角θ1,θ2の測定および調整のための構成について説明する。
上ホルダ306の3箇所には、上可動刃301の交差角θ1を測定するための測定穴(第1回転刃用の測定穴)306b(306b−1,306b−2,306b−3)が形成されている。これら3つの測定穴306bは、上可動刃301の投影面内であって、かつ上可動刃301の刃先を露出させない領域に形成されており、測定穴306b−3は、上回転軸303を挟んで切断点309と反対側に位置する領域に形成されている。下ホルダ307の4箇所には、下可動刃302の交差角θ2を測定するための測定穴(第2回転刃用の測定穴)307b(307b−1,307b−2,307b−3,307b−4)が形成されている。これら4つの測定穴307bは、下可動刃302の投影面内であって、かつ下可動刃302の刃先を露出させない領域に形成されており、測定穴307b−3,307b−4は、下回転軸304を挟んで切断点309と反対側に位置する領域に形成されている。測定穴306bは、主ホルダ305と上ホルダ306の少なくとも一方に形成すればよく、測定穴307bは、主ホルダ305と下ホルダ307の少なくとも一方に形成すればよい。これら第1回転刃用の測定穴306b、第2回転刃用の測定穴307bは、いずれも穴を通して内部の回転刃の表面が部分的に見えるようになっている。 上可動刃301に関しては、3つの測定穴306bと対向する上可動刃301の測定点と、上ホルダ306から露出する上可動刃301の測定点Qと、の計4つの測定点の位置を測定端子314によって測定する。例えば、測定穴306b,307bを通して、測定端子314を可動刃301,302の測定点に接触させることによって測定点の位置を測定する。シートの切断のために露出している上可動刃301の部分を測定点Qとすることにより、測定穴306bの形成数を減らすことができる。上可動刃301に関する測定の後、計4つの測定点の測定位置の差分を算出し、その算出結果に基づいて、切断方向に対する上可動刃301の傾き、つまり交差角θ2を算出する。同様に、下可動刃302に関しては、4つの測定穴307bに測定端子314を差し込み、計4つの測定点の位置を測定して、下可動刃302の交差角θ1を算出する。
交差角θ1,θ2を高精度に測定するためには、可動刃301,302のそれぞれの測定点の位置を次のように設定することが望ましい。すなわち、それらの測定点の位置は、可動刃の中心からなるべく離れた位置であること、可動刃の中心からの距離が同じであること、および可動刃の周方向において等間隔(例えば、4つの測定点の場合には、90°間隔)の位置であることが望ましい。
下可動刃302と上可動刃301とが重なっていて、測定点Qのように、上ホルダ306から露出する上可動刃301の部分を測定点とした場合、その測定点の位置が下可動刃302の中心に近づいて、交差角θ1,θ2の高精度の測定が難しくなる。そのため本例においては、下可動刃302の測定穴307bの位置は、上可動刃301の測定穴306bの位置とずれた関係となるように設定されている。具体的には、図11のように、上可動刃301の測定穴306b−1および306b−2は、それぞれ、上可動刃301の回転中心よりも矢印X1および矢印X2方向にずれて位置する。測定穴306b−3は、矢印X1方向と直交する直交方向において上可動刃301の回転中心の上方に位置する。また、下可動刃302の測定穴307b−1,307b−2は、それぞれ、下可動刃302の回転中心よりも矢印X1および矢印X2方向にずれて位置し、かつ下可動刃302の回転中心よりも上方に位置する。つまり、これらの測定穴307b−1,307b−2の配置位置は、下可動刃302の回転中心から、矢印X1および矢印X2方向に対して傾く方向にずれた位置である。また、下可動刃302の測定穴307b−3,307b−4は、それぞれ、下可動刃302の中心よりも矢印X1および矢印X2方向にずれて位置し、かつ下可動刃302の中心よりも下方に位置する。つまり、これらの測定穴307b−3,307b−4の配置位置は、下可動刃302の回転中心から、矢印X1方向と直交する直交方向に対して傾く方向にずれた位置である。このように、測定穴306bの配置形態と、測定穴307bの配置形態と、は異なる。
このように測定穴306b、307bを設定することにより、可動刃の露出部分を必要最小限に抑えた上、交差角θ1,θ2の高精度の測定が可能となる。測定された交差角θ1,θ2は、それぞれ、所望の基準交差角θ1′(=1.8°±0.3°),θ2′(=0°±0.3°)と比較される。交差角θ1,θ2が基準交差角θ1,θ2′の許容範囲から外れる場合には、主ホルダ305に対するホルダ306,307の位置をずらして、基準交差角θ1,θ2′の許容範囲内に収まるように交差角θ1,θ2を調整する。
前述したように、交差角θ1,θ2の調整を可能とするために、主ホルダ305に対して上ホルダ306および下ホルダ307を定位置に位置決めするための位置決め部は備えられていない。上ホルダ306および下ホルダ307が矢印X1,X2方向、およびそれらと直交する方向にずれた場合には、上可動刃301と下可動刃302の接触点がずれて、切断性能に影響を及ぼすおそれがある。本例のように、可動刃301,302のそれぞれに対して4つの測定点を設定することにより、矢印X1,X2方向、およびそれらと直交する方向における可動刃301,302の角度を測定して、それらの接触条件を管理することができる。つまり、可動刃301,302の角度の測定結果に基づいて、測定主ホルダ305に対するホルダ306,307の取り付け位置を調整することにより、可動刃301,302の接触条件を管理することができる。
ホルダ306,307にX−Yステージを係合し、そのX−Yステージをマイクロメータを用いて移動させることにより、主ホルダ305に対するルダ306,307の位置を微調整することができる。交差角θ1,θ2を所望の角度とするようにホルダ306,307の位置を微調整してから、固定ネジ313等の締結手段によって、ホルダ306,307を主ホルダ305に固定する。固定ネジ313は、測定穴306b,307bよりも可動刃301,302の中心から離れた位置において、ホルダ306,307を主ホルダ305に固定する。このように、測定穴306b,307bの外側においてホルダ306,307を主ホルダ305に固定することにより、それらの相対的な位置ずれを防止する。
測定端子314は、例えば、動刃の刃面の中心から半径10mmの部分の位置を測定する場合の分解能が5μmであれば、交差角θ1を0.03°単位(つまり、角度公差±0.3°の10分の1の分解能)で判別することができる。この場合には、ホルダ306,307の移動精度が5μm以下となるようにX−Yステージを移動させる。
このように、本実施形態においては、上ホルダ306の3箇所に測定穴306bを形成し、下ホルダ307の4箇所に測定穴307bを形成し、それらの測定穴から測定端子314によって上可動刃301と下可動刃302の交差角θ1,θ2を測定する。上述したように、測定穴306bは、上可動刃301の上回転軸303を挟んで切断点309の反対側に位置する測定穴306b−3を含む。同様に、測定穴307bは、下可動刃302の下回転軸304を挟んで切断点309の反対側に位置する測定穴307b−3,307b−4を含む。このような測定穴306b−3,307b−3,307b−4を含むことにより、交差角θ1,θ2を高精度に測定することができる。そして、このような測定結果に応じて、主ホルダ305に対するホルダ306,307の位置調整をしてから、それらを固定することにより、交差角θ1,θ2を高精度に設定することができる。前述したように、測定穴306b,307bの開口は可動刃301,302の刃先を露出していないように形成され、また測定穴306b−3,307b−3,307b−4の開口は、回転軸303,304を挟んで切断点309の反対側に位置する。これにより、可動刃301,302の刃先の露出を最小限に抑えた上、交差角θ1,θ2を高精度に測定することができる。
(ユニット構成)
切断装置5におけるキャリッジ200とカッターユニット300は、それぞれユニット化されていて互いに着脱可能である。可動刃301,302は、ユニット化されたカッターユニット300に備えられているため、可動刃301,302の磨耗等により、その交換が必要となった場合には、カッターユニット300を交換するだけでよい。仮に、キャリッジ200とカッターユニット300がユニット化されてなくて、可動刃301,302が切断装置5に組み付けられていた場合には、切断装置5を分解しなければ可動刃301,302を交換することができず、極めて面倒となる。特に、切断装置5がプリント装置100などの装置に組み込まれている場合には、可動刃301,302の交換は極めて面倒となる。
前述したように、回転力を出力するキャリッジ200側の出力部209a、および、その回転力を入力するカッターユニット300側の入力部310aは、下可動刃302の回転力の伝達機能と、カッターユニット300の位置決め機能と、を兼有する。これにより、キャリッジ200およびカッターユニット300の小型化を図ることができ、特に、カッターユニット300の小型化により、それが取り扱いやすくなり、それを交換する際の作業性が大幅に向上する。
(他の実施形態)
切断装置は、プリント装置に組み込まれる構成のみに特定されず、接続装置単体を構成するものであってよく、またプリント装置以外の種々の装置に組み込まれる構成であってもよい。またシートを切断する刃は、回転可能な円盤状の上下の可動刃のみに特定されず、例えば、丸刃と固定刃を組み合わせて、丸刃のみの角度の調整ができるように構成してもよい。切断装置は、少なくとも1つの回転刃を用いてシートを切断する構成であればよく、1つの回転刃のみを備え、他の回転刃や固定刃なおdの相手刃を備えないこうせいであってもよい。下可動刃を上可動刃に対してシートの搬送方向下流側に配備する構成のみに特定されず、下可動刃を上可動刃に対してシートの搬送方向上流側に配備してもよい。上述した例においては、上可動刃の交差角を0°に近づけるように設定にしている。しかし、下可動刃の交差角を0°に近づける設定し、上可動刃の交差角を積極的に設定とするように構成してもよい。
また、測定穴306b,307bのそれぞれの数は前述した例のみに特定されず、1つあるいは複数設けてもよく、好ましくは3つ以上である。また、それらの測定穴の形成位置は特に限定されない。交差角θ1,θ2を精度よく測定する上において、それらの測定穴は、可動刃301,302の中心からなるべく離れた位置であること、それらの中心からの距離が同じあること、および周方向に等間隔に位置することが望ましい。