JP6566290B2 - 軟骨再生用移植材料、軟骨再生用移植材料の製造方法 - Google Patents
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Description
また、現在用いられているPGLAからなる多孔質性軟骨修復材料では、材料が自家組織に置き換わるまでに非常に長い時間を要するとの報告がある(非特許文献1)。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、軟骨再生能に優れる軟骨再生用移植材料の提供を課題とする。
前記密度勾配が連続密度勾配であり、
一方の端部から、前記一方の端部と対向する他方の端部へかけて、前記密度勾配のコラーゲン密度が大きくされており、
前記他方の端部のコラーゲン密度が、300〜500mg/cm3 であり、
前記軟骨再生用移植材料を10mM、4℃の塩酸に24時間浸漬させて抽出されたコラーゲンが、前記軟骨再生用移植材料に含まれる総コラーゲンのうち75質量%以上であることを特徴とする軟骨再生用移植材料。
(2)前記軟骨再生用移植材料が孔を有し、当該孔の平均孔径が1〜50μmである前記(1)に記載の軟骨再生用移植材料。
(3)20〜37℃での前記密度勾配の方向の圧縮剛性が10〜70N/mmである前記(1)又は(2)に記載の軟骨再生用移植材料。
(4)リン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)に20時間浸漬した後での体積増加率が1.5〜2.5倍の範囲内である前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の軟骨再生用移植材料。
(5)更に、細胞走化因子、成長因子、細胞増殖因子、血液凝固因子および抗凝固因子からなる群から選択される1種以上の因子を含む前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の軟骨再生用移植材料。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の軟骨再生用移植材料の製造方法であって、
コラーゲン酸性溶液を中性にしてコラーゲン線維を生成するコラーゲン線維生成工程、
前記コラーゲン線維を含有する溶液から前記コラーゲン線維を分取してコラーゲン濃度12〜50(w/v)%の粗コラーゲン線維を形成する粗コラーゲン線維形成工程、
前記粗コラーゲン線維を所定形状に成形する成型工程、および
前記成型工程で得た成形物を乾燥する乾燥工程を行い、
前記成型工程が圧縮濾過成型であることを特徴とする軟骨再生用移植材料の製造方法。
本発明の軟骨再生用移植材料は、平均直径が1〜10μmのコラーゲン線維を主成分として含有し、水分含量0〜20(w/w)%、コラーゲン密度50〜800mg/cm3であり、前記コラーゲンの分布が密度勾配を有するものである。
主成分として含有するとは、本発明の軟骨精製材料としての効果を有する程度であればよいが、好ましくは50(w/w)%以上で含有することである。
本発明の軟骨再生用移植材料に係るコラーゲンの分布は、密度勾配が連続密度勾配であることが好ましい。コラーゲンの分布が連続的であることにより、軟骨再生用移植材料の内部へと侵入した細胞の細胞移動が促進される。特に、単一層においてコラーゲンの分布が連続的であることにより、層間の接合部においても細胞の移動や増殖等が妨げられる恐れもないため好ましい。また、前記単一層は同一原料から構成されていることが好ましい。
軟骨再生用移植材料の圧縮剛性は、密度勾配の方向で測定することが好ましい。なお、本発明において、軟骨再生用移植材料の圧縮剛性は、後記する実施例に示す方法と同一の条件又は互換性のある条件で測定することにより求めることができる。
或いは、軟骨再生を促すために、生体組織を人為的に欠損させてできた欠損部の形状に成形して、欠損部に軟骨再生用移植材料を充填することもできる。このとき、骨髄部分に達するまで骨を削り、欠損部に軟骨再生用移植材料を充填して骨髄の成分を軟骨再生用移植材料に滲みこませることを行なってもよい。本発明の軟骨再生用移植材料は多孔質であるため、骨髄成分を保持することができ、骨髄成分中の細胞などの働きによって、より一層効果的に軟骨再生を促すことができる。
特に軟骨再生用移植材料の一方の端部と対向する他方の端部へかけて、前記密度勾配のコラーゲン密度が大きくされている軟骨再生用移植材料の場合、軟骨再生用移植材料を軟骨等の欠損部に充填する際に、コラーゲン密度の大きい側を軟骨を再生させるべき部分に対応させて配置させることが好ましい。上記配置により、軟骨再生用移植材料の内部へと侵入した細胞をコラーゲン密度の小さい側からコラーゲン密度の大きい側へと誘導させることができ、軟骨再生を促進することができる。
なお、本発明の軟骨再生用移植材料に更に他の構造が付加されたものを、移植に用いてもよい。
軟骨再生とは、細胞の増加、分化、成熟等の軟骨の修復又は軟骨の発生過程で生じる様々な現象のうち少なくとも一つを示していればよい。軟骨は、軟骨に特徴的な成分を検出することによっても確認することができる。検出は、サフラニンO、アルシアンブルー等の各種染色液や抗体による染色によっても行うことができる。その他、内視鏡等を用いて直接軟骨を観察することによっても確認することができる。
上記軟骨再生用移植材料の製造方法に限定はない。しかしながら、コラーゲン酸性溶液を中性にしてコラーゲン線維を生成するコラーゲン線維生成工程、前記コラーゲン線維を含有する溶液から前記コラーゲン線維を分取してコラーゲン濃度12〜50(w/v)%の粗コラーゲン線維を形成する粗コラーゲン線維形成工程、前記粗コラーゲン線維を所定形状に成形する成形工程、および前記成形工程で得た成形物を乾燥する乾燥工程とにより上記軟骨再生用移植材料を製造することができる。本発明の軟骨再生用移植材料の製造方法は、前記成型工程が圧縮濾過成型によるものである。
前記粗コラーゲン線維形成工程に次いで、前記粗コラーゲン線維を親水性有機溶媒に分散させた後に前記親水性有機溶媒から前記コラーゲン線維を分取して脱水するコラーゲン線維脱水工程を行い、その後に成形および乾燥して軟骨再生用移植材料を製造することもできる。また、前記コラーゲン線維脱水工程に次いで、前記脱水したコラーゲン線維を架橋処理および/または薬剤処理を行う処理工程を行い、ついで、前記処理したコラーゲン線維を乾燥する乾燥工程を行うことで、架橋軟骨再生用移植材料を製造することもできる。
本発明では、上記中性処理後のコラーゲン溶液を、温度4〜45℃、より好ましくは30〜37℃の範囲で静置する。この範囲で、前記コラーゲン溶液に溶解したコラーゲン分子は、上記中性処理により溶液中で会合し、ゲル状物を形成する。
本発明では、次いで上記したゲル状物を含む溶液を緩やかに撹拌する。穏やかな撹拌によりゲル状物を構成するコラーゲン分子相互の会合が促進され、コラーゲン線維の構造を保ちつつ線維間の水分が放出され、太く、かつ線維長の長いコラーゲン線維が前記溶液中に析出する。従って、撹拌の程度は、コラーゲン分子の会合が促進できる程度であればよい。強度の撹拌を行うと生成したコラーゲン線維が物理的に破断され、細く短いコラーゲン線維となる。穏やかな撹拌により析出するコラーゲン線維の溶液中の平均直径は1〜100μmであり、線維長さは1〜10mmである。
一方、前記コラーゲン溶液を遠心分離して、粗コラーゲン線維を分取することもできる。例えば、10000〜20000rpmで10分から1時間遠心する。なお、上記範囲のコラーゲン濃度に調整するため、遠心分離は複数回行ってもよい。
例えば、コラーゲン線維が析出したコラーゲン溶液をろ過して粗コラーゲン線維を分取する場合には、例えば、ロートの中間部に形成した多孔のろ紙載置部にろ紙を配設してコラーゲン溶液をろ過すれば、ろ紙上にシート状またはブロック状に粗コラーゲン線維を堆積することができる。予め、前記ろ紙載置部を所定形状に変形して鋳型として使用し、ろ紙載置部に粗コラーゲン線維を堆積させ、所定形状に成形することもできる。上記は、粗コラーゲン線維形成工程と成形工程とを連続して行う態様の一例である。また、ろ紙上に積層した粗コラーゲン線維を所定形状の鋳型に充填して成形してもよい。
粗コラーゲン線維中のコラーゲン線維の分布に偏りを生じさせる方法として、本発明の軟骨移植材料の製造方法では、成形工程として圧縮濾過成型を採用する。圧縮濾過成型の方法としては、例えば、壁面にろ紙等のフィルターを配設した鋳型に粗コラーゲン線維を充填し、粗コラーゲン線維を圧縮することが挙げられる。すると、圧縮によりフィルターから粗コラーゲン線維に含まれる水分が脱水されるとともに、フィルター付近でコラーゲン線維が集積して、フィルター付近を最大とするコラーゲン線維の密度勾配が形成された粗コラーゲン線維を成型することができる。
上記圧縮には、遠心力による圧縮も含まれる。すなわち上記した成形方法は、遠心操作によって粗コラーゲン線維を形成した場合も同様に応用することができる。この場合、鋳型中における遠心力の力の方向の端を最大とするコラーゲン線維の密度勾配が形成される。遠心力の力の方向とフィルターの配設位置を一致させることで、遠心操作によりフィルターから粗コラーゲン線維に含まれる水分が脱水されるとともに、フィルター付近でコラーゲン線維が集積して、フィルター付近を最大とするコラーゲン線維の密度勾配が形成された粗コラーゲン線維を成型することもできる。例えば、遠心分離の際に、遠心管の底面にろ紙等のフィルターを配設して、これを鋳型として使用し、遠心分離と同時に粗コラーゲン線維を所定の形状に成形することができる。遠心の操作は前記粗コラーゲン線維形成工程を兼ねていてもよく、上記の方法は、粗コラーゲン線維形成工程と成形工程とを連続して行う態様の一例とすることもできる。
なお、使用する親水性有機溶媒の温度は、15℃以下であることが好ましい。コラーゲン線維を変性させず、コラーゲン分子の三重螺旋構造を維持しうるからである。
コラーゲンは、親水性が高いため乾燥は容易でなく、特に立体物の乾燥は容易でない。しかしながら、本発明では、上記コラーゲン濃度の粗コラーゲン線維を使用し、親水性有機溶媒を使用して粗コラーゲン繊維を脱水するためコラーゲン密度が高く立体形状を維持しうるコラーゲン構造体を製造することができる。
因子を結合する工程は、軟骨再生用移植材料を製造するいずれの工程で行ってもよい。例えば、粗コラーゲン線維の乾燥工程に先立ついずれかの工程で、コラーゲン線維に細胞走化因子、成長因子、細胞増殖因子、血液凝固因子および抗凝固因子からなる群から選択される1種以上の因子を結合することができる。どの段階で因子を結合するかは、添加する成分の化学的特性その他によって適宜選択することができる。例えば、粗コラーゲン線維に上記因子を添加して均一に撹拌し、物理的に結合した後に、粗コラーゲン線維を所定形状に成形し、および乾燥して、軟骨再生用移植材料を製造することができる。また、粗コラーゲン線維を親水性有機溶媒中に分散し、当該溶媒をろ過して脱水した粗コラーゲン線維に上記成分を混合した後、乾燥して軟骨再生用移植材料を製造することができる。
更に、水分含有量が0〜20(w/w)%の軟骨再生用移植材料を製造した後に上記因子の水溶液を軟骨再生用移植材料に含浸させ、その後に再度水分含有量が0〜20(w/w)%となるように乾燥させてもよい。
(実施例1)
豚皮の真皮層を肉挽き等で細砕し、脱脂後十分に洗浄した組織を原料とした。終濃度5mg/mlのペプシン、50mM酢酸となるよう混合した可溶化水溶液に、コラーゲン終濃度0.5質量%となるように前記原料を懸濁し、4℃、一晩可溶化処理を行った。上記のようにして得た酵素可溶化コラーゲン液に、終濃度5質量%となるよう塩化ナトリウムを加えて塩析させ、遠心分離により沈殿を回収した。回収した塩析物を、コラーゲン濃度0.4(w/v)%となるように蒸留水に分散させ、塩酸を加えてpH3.0に調整して均一に溶解し、コラーゲン溶液とした。
このコラーゲン溶液10ml(温度4℃)に、温度4℃の中性緩衝液としてリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)を125ml添加し、温度37℃で24時間穏やかな撹拌を行った。緩やかに撹拌すると会合が促進してコラーゲン線維が形成され溶液中に分散した。次いで、17500rpm、20分の遠心分離により沈殿を回収し、粗コラーゲン線維を得た。
得られた粗コラーゲン線維を温度20℃のエタノール10gに投入し、ミキサーを用いて十分に分散させ、得られた分散液を、内部直径が5mmで脱脂綿を平面に圧縮したものが底面に詰められたシリンジ状の鋳型に注ぎ、プランジャを押して圧縮成型することで高さ5mmの成形物を得た。
次いで、成形物を室温で風乾し、実施例1のコラーゲン構造体を得た。実施例1のコラーゲン構造体は円柱状であり、直径5mm、高さ3mmであった。
コラーゲンスポンジとして市販されている細胞培養基材を入手し、これを比較例1のコラーゲン構造体とした。比較例1のコラーゲン構造体は円柱状であり、直径5mm、高さ3mmであった。
下記方法によりコラーゲン構造体の水分含有率を測定した。
(i)水分含有量の測定方法
コラーゲン構造体の質量(w1)をメトラートレド社製精密天秤AT250にて測定した。ついで、FTS SYSTEM社製真空乾燥機FLEXI-DRY FD-3-85D-MPにて15時間真空乾燥させて水分を蒸発させた後、コラーゲン構造体の質量(w2)を測定した。真空乾燥前後の質量変化(w1−w2)を水分量とし、コラーゲン構造体の質量(w1)に対する前記水分量の百分率(%)を水分含有量とした。
上記コラーゲン構造体について、乾燥状態における線維の平均直径、平均孔径を下記方法により測定した。
(i)コラーゲン線維の平均直径
実施例1のコラーゲン構造体を日本電子社製走査型電子顕微鏡(SEM)CarryScope JCM-5700で観察した(図1(a))。観察されたコラーゲン線維の内、無作為に20本の線維を選出してそれらの直径を測定した。20本の線維の直径の平均を算出し、平均直径とした。
比較例1のコラーゲン構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した(図1(b))。比較例1のコラーゲン構造体では、線維状の構造は観察されず、比較例1のコラーゲン構造体は海綿状の多孔質体であることが判明した。孔の枠を構成している膜状のコラーゲンを無作為に20カ所選出し、その部分の膜の厚みを測定した。20カ所の膜厚の平均を算出し、平均膜厚とした。
(ii)コラーゲン構造体の平均孔径
実施例1のコラーゲン構造体を走査型電子顕微鏡像(SEM)で観察し、無作為に選んだ20カ所の線維孔の直径を測定した。20ヶ所の孔径の平均を算出し、平均孔径とした。
比較例1のコラーゲン構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察された孔のうち、無作為に20個の孔を選出して、画像処理ソフトImageJによるエリア測定でそれぞれの孔の画像から孔の面積を計算し真円換算して、孔の直径を算出した。20個の孔の直径の平均を求め、平均直径とした。
コラーゲン密度を下記方法により測定した。
(i)コラーゲン構造体のコラーゲン密度の測定法
実施例1コラーゲン構造体を、メスを用いて円柱の底面及び上面に対して水平方向に3分割した。3分割されたサンプルを成形時の圧縮の方向に沿って、順に上部・中部・下部とした(図2参照)。上部・中部・下部のそれぞれを1mLの6N HClにて110℃、24時間加水分解後、蒸発乾固し、0.02N HClで再溶解した。得られた溶液をサンプルとし、日立製L−8800 Amino Acid Analyzerでアミノ酸組成を測定した。ヒドロキシプロリン量(Hypro量)より、〔Collagen(mg)=係数×Hypro(mg) 〕の式を用いてコラーゲン量を計算した(係数はブタ真皮由来ペプシン可溶化コラーゲンより算出:7.15)。算出されたコラーゲン量を体積にて除することで、上部・中部・下部のそれぞれの部分におけるコラーゲン密度を概算した(N=3)。
比較対照として、比較例1のコラーゲン構造体に対しても、同様の方法でコラーゲン密度を算出した(N=3)。なお、比較例1のコラーゲン構造体における測定値のデータの収集に際しては、計測の結果、密度の高かった方のサンプルを下部側とし、計測の結果、密度の低かった方のサンプルを上部側として、データを収集した。
比較対照として、比較例1のコラーゲン構造体に対しても、同様の方法で、上部・中部・下部のそれぞれの部分におけるコラーゲン密度を算出した(N=3)。
実施例1のコラーゲン構造体において、上記(i)コラーゲン構造体のコラーゲン密度の測定法にて得られた、上部・中部・下部のそれぞれの部分のコラーゲン密度の平均値を求め、実施例1のコラーゲン構造体全体の密度を算出した(N=3)。
比較対照として、比較例1のコラーゲン構造体に対しても、同様の方法でコラーゲン構造体全体のコラーゲン密度を算出した(N=3)。
実施例1のコラーゲン構造体では、上部、中部、下部の順にコラーゲンの密度勾配が観察された。一方で、比較例1のコラーゲン構造体には、有意なコラーゲンの密度勾配は観察されなかった。
コラーゲン構造体の吸水性及び体積増加率を下記方法により測定した。
(i)コラーゲン構造体の吸水性の測定方法
100mlあたり、KCl 20 mg、KH2PO4 20 mg、NaCl 800 mg、Na2HPO4 115 mgの組成で調製したリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に、コラーゲン構造体全体を浸して室温で静置し、吸水開始から0.5時間、1時間、2時間、4時間、20時間の各時点でリン酸緩衝生理食塩水からコラーゲン構造体を取り出して、コラーゲン構造体から余分な水分を除去し、メトラートレド社製精密天秤AT250にてコラーゲン構造体の重量を測定した。重量変化量(吸水量)を吸水前のコラーゲン構造体の体積で除することで、体積当たりの吸水率を算出した(N=4)。
上記吸水性の測定方法において、吸水前および吸水開始時点から20時間後に余分な水分を取り除いたコラーゲン構造体の直径及び高さを定規にて測定し、下記の式にて体積を算出した。
(半径×半径)×π×高さ
次いで、吸水開始から20時間経過後のコラーゲン構造体の体積増加率を、下記の式にて算出した。
吸水開始から20時間後のコラーゲン構造体の体積 ÷ 吸水前のコラーゲン構造体の体積
コラーゲン構造体の酸抽出率を下記方法により測定した。
(i)酸抽出率の測定方法
実施例1のコラーゲン構造体に対し、40mlの10mM HClを加え、4℃で24時間撹拌し、コラーゲンを抽出した。当該抽出法によって抽出されるコラーゲン量は、コラーゲンの架橋の度合いを反映しているものと考えられる。抽出液を6N HClにて110℃、24時間加水分解後、蒸発乾固し、0.02N HClで再溶解した。得られた溶液をサンプルとし、日立製L−8800 Amino Acid Analyzerでアミノ酸組成を測定した。ヒドロキシプロリン量(Hypro量)より、〔Collagen(mg)=係数×Hypro(mg) 〕の式を用いてコラーゲン量を計算した(係数はブタ真皮由来ペプシン可溶化コラーゲンより算出:7.15)。また、同時に上記酸抽出を経ていないコラーゲン構造物をそのままアミノ酸分析することで、コラーゲン構造体一個当たりの総コラーゲン量を算出した(N=3)。抽出されたコラーゲン量を、コラーゲン構造体の総コラーゲン量の平均値で除することで、コラーゲンの酸抽出率を概算した。
比較対照として、比較例1のコラーゲン構造体に対しても、同様の方法でコラーゲンの酸抽出率を算出した(N=3)。
コラーゲン構造体の剛性を下記方法により測定した。
(i)剛性の測定方法
直径5mm、高さ3mmの円柱状の実施例1のコラーゲン構造体を試料として用いた。測定装置はデジタルフォースゲージFGP−100(日本電産シンポ株式会社)と縦型荷重試験スタンドFGS−50VB(日本電産シンポ株式会社)を用いた。速度1mm/sで、コラーゲン構造体の円柱の底面及び上面に垂直な方向に荷重をかけて試料を圧縮し、圧縮剛性を測定した(N=3)。測定値の解析には、フォースゲージFGPシリーズ、Excel用アドインソフト、トリえもんUCB Ver1.00(日本電産シンポ株式会社)を使用した。
比較対照として、直径5mm、高さ3mmの円柱状の比較例1のコラーゲン構造体を試料として用い、比較例1のコラーゲン構造体に対しても、実施例1のコラーゲン構造体に対して行ったものと同様の方法で、比較例1のコラーゲン構造体の圧縮剛性を測定した(N=3)。
(移植例1)
日本白色家兎(体重2.5−3.0 kg)の膝蓋大腿関節の大腿骨側に直径5mm,深さ5mmの骨軟骨欠損を作製した。円柱状であり、直径5mm,高さ3mmの実施例1のコラーゲン構造体をリン酸緩衝液に4℃で2時間浸漬させた後、兎の骨軟骨欠損部に移植した。移植24週後、移植部分の大腿骨を採取して、固定、脱灰、パラフィン包埋を行った。薄切切片を作製後、サフランニンO 染色を行った。
日本白色家兎(体重2.5〜3.0 kg)の膝蓋大腿関節の大腿骨側に直径5mm,深さ5mmの骨軟骨欠損を作製した。円柱状であり、直径5mm,高さ3mmの比較例1のコラーゲン構造体をリン酸緩衝液に4℃で2時間浸漬させた後、兎の骨軟骨欠損部に移植した。移植24週後、移植部分の大腿骨を採取して、固定、脱灰、パラフィン包埋を行った。薄切切片を作製後、サフランニンO 染色を行った。
実施例1のコラーゲン構造体が移植された移植例1の群では、移植後24週では軟骨欠損部は軟骨組織で覆われ、軟骨下骨も再生された。コラーゲン材料は完全に吸収されて消失していた(図5A,B)。
一方、比較例1のコラーゲン構造体が移植された比較移植例1の群では、コラーゲン構造体が移植された部分への自家組織由来の細胞の浸潤が認められはしたが、これらの細胞は軟骨の組織の細胞へとは分化しておらず、軟骨再生が全く認められなかった。また、コラーゲン材料の残存が認められた(図5C,D)。
Claims (6)
- 平均直径が1〜10μmのコラーゲン線維を主成分として含有する軟骨再生用移植材料であって、水分含量が0〜20(w/w)%であり、コラーゲン密度が200〜400mg/cm3であり、前記コラーゲン線維の分布が密度勾配を有し、
前記密度勾配が連続密度勾配であり、
一方の端部から、前記一方の端部と対向する他方の端部へかけて、前記密度勾配のコラーゲン密度が大きくされており、
前記他方の端部のコラーゲン密度が、300〜500mg/cm3 であり、
前記軟骨再生用移植材料を10mM、4℃の塩酸に24時間浸漬させて抽出されたコラーゲンが、前記軟骨再生用移植材料に含まれる総コラーゲンのうち75質量%以上であることを特徴とする軟骨再生用移植材料。 - 前記軟骨再生用移植材料が孔を有し、当該孔の平均孔径が1〜50μmである請求項1に記載の軟骨再生用移植材料。
- 20〜37℃での前記密度勾配の方向の圧縮剛性が10〜70N/mmである請求項1又は2に記載の軟骨再生用移植材料。
- リン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)に20時間浸漬した後での体積増加率が1.5〜2.5倍の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の軟骨再生用移植材料。
- 更に、細胞走化因子、成長因子、細胞増殖因子、血液凝固因子および抗凝固因子からなる群から選択される1種以上の因子を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の軟骨再生用移植材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の軟骨再生用移植材料の製造方法であって、
コラーゲン酸性溶液を中性にしてコラーゲン線維を生成するコラーゲン線維生成工程、
前記コラーゲン線維を含有する溶液から前記コラーゲン線維を分取してコラーゲン濃度12〜50(w/v)%の粗コラーゲン線維を形成する粗コラーゲン線維形成工程、
前記粗コラーゲン線維を所定形状に成形する成型工程、および
前記成型工程で得た成形物を乾燥する乾燥工程を行い、
前記成型工程が圧縮濾過成型であることを特徴とする軟骨再生用移植材料の製造方法。
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