以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に、本発明にかかるロッキング機構を適用した椅子の一実施形態を示す。
また、本発明の説明においては、椅子の座に座った着座者を基準にして「上」及び「下」,「前」及び「後」,並びに「左」及び「右」を定義する(言い換えると、着座者から見て「上」及び「下」,「前」及び「後」,並びに「左」及び「右」を意味する)。
本実施形態のロッキング椅子は、脚9の上端に取り付けられているメインフレームによって座7及び背凭れ8(背フレームのみを図示して表す)が支持されると共に、メインフレームに対して揺動するシンクロフレーム(背支桿を兼ねることもある)に取り付けられた背凭れ8が反力付与機構並びにシンクロフレームの後傾動作時に傾動姿勢を段階的に固定可能とするロック機構とによって一定の反発力を受けながら後傾し、選択された後傾位置で固定されるようにしたものである。
なお、ロッキング機構は、座下前カバー29a、座下後カバー29b、及び背フレーム取付け部カバー29cによって覆われており、外観に露出しないように配慮されている。また、図中の符号8aは洋服を掛けるためのハンガー、8bはランバーサポートである。さらに、本実施形態における脚9は、例えば放射状に広がる5本の脚羽根9bの先端にキャスター9cを備える、所謂回転脚と呼ばれるものであるが、場合によっては固定脚であっても良い。
ここで、本実施形態にかかるロッキング機構は、図3〜図9に示すように、メインフレーム1と、該メインフレーム1に対し背凭れ8を揺動自在に連結するシンクロフレーム10と、シンクロフレーム10のシンクロフレーム回転軸4を中心にして背凭れ8が取り付けられる部位とは反対側の端部とメインフレーム1の前端側との間に配置されてシンクロフレーム10に反力を与える反力付与機構30並びにシンクロフレーム10の後傾動作時に傾動姿勢を段階的に固定可能とするロック機構50とを備える。
なお、本実施形態では背凭れ8の後傾と連動して座7が後方へ移動しながら後端側が沈み込むシンクロロッキング機構に適用した例を挙げて説明しているが、本発明の適用対象はこれに特に限られるものではなく、背凭れ8のみが単独で後傾するロッキング機構に適用することも可能であることは言うまでもない。
メインフレーム1は、本実施形態の場合、図13に示すように、座受部材支持部品2と脚柱支持部品3とで構成され、上下に互いに重ね合わせて溶接付により一体化することで箱形の構造物を構成している。
座受部材支持部品2は、1枚の鋼板をプレス加工による曲げ加工により、横断面コ形に成形して天板部2Aと左右の外壁部2Bとを備える。
他方、脚柱支持部品3は、鋼板をプレス曲げ加工することにより、脚柱9aの頂部(ガススプリングの動作バルブ周辺)部分を嵌合させる支柱受金具9dを貫通させる脚柱支持孔3dを有する底板部3Aと、座受部材支持部品2の中央部分を受支える前壁3Bと、ロック機構50を構成するロックプレート53を嵌入させる係合部51を縱に複数段配置した後壁3Cとを一体的に成形している。
そして、例えば図7〜図9に示すように、脚柱支持部品3の前壁3Bの上端に係合突片3eが、座受部材支持部品2の天板部2Aに前壁3Bの係合突片3eを嵌め込む係合突片を嵌め込む孔2fがそれぞれ設けられ、これらを嵌め合わせて溶接することによって前壁3Bと天板部2Aとが一体化されている。他方、脚柱支持部品3の後壁3Cと座受部材支持部品2の天板部2Aの後端面とが突き合わせ溶接されることによって、後壁3Cと天板部2Aとが一体化されている。
脚柱支持部品3の底板部3Aの脚柱支持孔3dと同軸上に、脚柱9aを保持する支柱受金具9dが貫通する脚柱支持孔2gがプレス加工によって内側に半球状に絞られるようにして天板部2Aに形成されている。そして、図7に示すように、支柱受金具9dが底板部3Aの脚柱支持孔3dと天板部2Aの脚柱支持孔2gとを貫通した状態で支柱受金具9dと各支持孔3d,2gの周縁部分とを溶接付により固着している。したがって、座受部材支持部品2と脚柱支持部品3とは、支柱受金具9dによっても中央部分が互いに連結され、構造体としての剛性が確保されている。因みに、支柱受金具9dの下端に設けられているフランジ9dfが、脚柱支持部品3の底板部3Aに裏側から宛がわれることによって、脚柱支持部品3惹いてはメインフレーム1に対する支持が補強されている。
また、図7並びに図13に示すように、座受部材支持部品2の天板部2Aの後端側には、シンクロフレーム10が揺動可能な角度の最大傾斜位置即ち背凭れが最大限後傾できる位置を規制するダンパ2cが設けられている。このダンパ2cは、干渉機能を有する素材、例えば硬質ウレタンクッションなどを頭部に備えたピン形状を成し、天板部2Aの所定位置に穿孔された孔2dに圧入により嵌め込むことで固定されている。
また、天板部2Aの前方側には、反力付与機構30を支持する受板2eが切り起こしによって形成されている。この受板2eには、反力付与機構30の反力調整機構32を構成する取付金具33の上端の係合突片33aを嵌め込む孔2jと反力調整回転軸34の上端を回転自在に支承する軸受け孔2kとを有する。
反力調整機構32の取付金具33は、上端の係合突片33aを受板2eの孔2jに嵌め合わせて溶接することによって受板2eに固着される。また、同時に、取付金具33の両側面を座受部材支持部品2の左右の外壁部2Bに内側から宛がってから溶接することにより外壁部2Bに固着される。勿論、部材間の固着・連結手法については、特に上述の溶接手法並びに溶接箇所に限定されるものではない。
さらに、座受部材支持部品2の前端側の左右の外壁部2Bには座前方支持軸5を貫通させる前後方向に移動可能に支持させる長孔19が形成されている。この長孔19は、座受部材支持部品2を鋼板材からブランクを打ち抜く際に、同時に打ち抜くことが好ましいが、別個に加工を加えても良い。また、長孔19の縁には座前方支持軸5の摺動性を高めるためにプラスチック製カバー(図示省略)で縁取りを施すことが好ましい。
なお、図中の符号2hはシンクロフレーム回転軸4を通す孔である。また、符号2iは座受部材支持部品2の内部でシンクロフレーム回転軸4に回転自在に支持されているガスシリンダ操作リンク26の自由端(先端)側を天板部2Aの外に出させる配置させるための孔である。ガスシリンダ操作リンク26は図示していない昇降レバーの操作によってシンクロフレーム回転軸4を軸に回転し、先端部分で脚柱9aを構成するロック機構付きガスシリンダの頂部のバルブを押下してガスシリンダの開閉を行うものである。
他方、座受部材支持部品2の中程には、図7などに示すように、シンクロフレーム10が左右の外壁部2Bに設けられている孔2hを貫通するシンクロフレーム回転軸4によって回転可能に揺動自在に取り付けられている。
このシンクロフレーム10は、メインフレーム1と背凭れ8とを連結するもので、後端に背凭れ8を取り付ける一方、前端に反力付与機構30をメインフレーム1との間に備え、背凭れ8を支持すると共に背凭れ8の後傾動作時に背凭れを元位置に押し戻す力を反力付与機構30の力を伝達するものである。
本実施形態の場合、シンクロフレーム10は、背凭れ8を支持すると共にシンクロフレーム回転軸4を支点として背凭れ8を傾動させる梃子として機能するものであり、座受部材支持部品2の左右の外壁部2Bであって脚柱9aの取付け箇所よりも僅か前方に、軸受ブッシュ20を介在させて左右の外壁部2Bに回転可能に支持されているシンクロフレーム回転軸4により揺動自在に連結されている。
シンクロフレーム10は、本実施形態の場合、図10及び図11に示すように、左右一対の同一形状の平板であって、シンクロフレーム継金具11で連結されている。
シンクロフレーム継金具11は、並べて配置された左右共通のシンクロフレーム10の間に跨がり、これらを連結して一体化するものであって、尚且つ少なくともシンクロフレーム10の最大後傾位置でメインフレーム1と交差するストッパ構造を成すダンパ受部として機能するものである。
シンクロフレーム10の側面視の形状は、3本の軸、即ちシンクロフレーム回転軸4、座後方支持軸6、及び反力付与機構受軸31を取り付ける位置関係によって定まるが、例えば図11に示すように、全体として緩やかなへの字形をしている。なお、図中の符号24aはシンクロフレーム回転軸4を通す孔、24bは座後方支持軸6を通す孔、及び24cは反力付与機構受軸31を通す孔である。
このシンクロフレーム10は、シンクロフレーム継金具11の後方架橋部14の左右両側縁部の凹部22と嵌合する係合突片21を備えている。シンクロフレーム10の係合突片21は、シンクロフレーム継金具11の凹部22と嵌め合せることにより、シンクロフレーム10とシンクロフレーム継金具11の組み付け時の位置決めと位置ずれ防止を図るものであることから、少なくともシンクロフレーム10の上面(シンクロフレーム回転軸4と平行な面)に沿ってシンクロフレーム継金具11が位置ずれを起こさない程度の突起であれば良い。つまり、シンクロフレーム10の係合突片21の上面からの突出量は、シンクロフレーム継金具11の厚み程度の僅かな高さで足りる。したがって、シンクロフレームは、板取り時のブランクの輪郭形状がほとんど凸凹の無いスマートな形状となる。同時に、左右のシンクロフレームは同一形状となる。
このとき、シンクロフレーム10のブランクレイアウト(板取り計画)は、ブランクの輪郭形状が凹凸の少ない単純輪郭形状であるため、最小限の隙間を設定してブランクを並べて板取りできるので、材料取りの経済性(歩留まり)が良い。しかも、シンクロフレーム10には左右がなくなるので、部品を共通化でき、部品点数を少なくできる。したがって、部品管理が容易になる。
また、シンクロフレーム継金具11においても、ほぼ長方形のブランクであり、凹凸の少ない単純輪郭形状であるため、最小限の隙間を設定してブランクを並べて板取りできるので、材料取りの経済性(歩留まり)が良い。しかも、シンクロフレーム10には左右が無くなるので、部品を共通化でき、部品点数を少なくできる。
しかも、ブランクを打ち抜いた後に、背凭れ8を取り付けるためのねじを通す4箇所の透孔23aと、ロックプレート53を貫通させ支持するための2箇所のスリット18と、ロックプレート53をメインフレーム1の後壁3Cの係合部51に向けて進退動(ロック・アンロック)させるロックプレート用操作レバー54の中央付近を回転自在に取り付けるための止めねじ(図示省略)を挿通させる透孔25aと、ロックプレート用操作レバー54の先端の鉤状(クランク状)の引掛け部54cをU形溝部12内に入り込んで係合させた状態で摺動可能に保持させるガイド溝56と、ロックプレート用操作レバー54の動きをロックプレート53に伝達させるねじりコイルばね57の一端をU形溝部12内に導入するための長孔27とを打ち抜きによって一度に形成することができる。
そして、背凭れ8を取り付けるための4箇所の透孔23a及びロックプレート用操作レバー54を支持させるための止めねじを通す透孔25aの反対側の面には、ナット23及び25がそれぞれ溶接付されており、それぞれ対応するビスをねじ止め可能にしている。勿論、シンクロフレーム継金具11そのものに雌ねじを切っても良いが、十分なねじ長さを確保すると共にねじ加工を省略する上では、ナットを用いることが好ましい。
このシンクロフレーム継金具11は、ブランクデベロップメントにおいて、ほぼ長方形のブランクの前後方向の中程が4回折り返され、U形(ハット形)の溝部12を有し、その前方にダンパ受部を兼ねる前方架橋部13、後方に背凭れ8を取り付ける背凭れ枠取付部を兼ねる後方架橋部14とを一体成形したものである。U形溝部12を有するため、単なる平板の継金具よりも強度的に剛性が高まると共に、U形溝部12の内部にロックプレート53を貫通させて両端を支持する受部を構成することができる。
U形溝部12は、例えば、平坦面となる底部15と該底部15に対し垂直な前壁部16と後壁部17とを有し、前壁3Bと後壁3Cとのほぼ同じ高さに穿孔されるスリット18が設けられている。そして、前壁3Bと後壁3Cのスリット18を貫通して前壁3Bと後壁3Cに跨がるようにロックプレート53が底部15と平行に収容されて保持され、ロックプレート用操作レバー54の前後方向への揺動によって、ロックプレート53が前後方向にスライド可能とされている。なお、本実施形態では、底部15は前方架橋部13とほぼ平行な平面とされているが、これに特に限定されるものではなく、ロックプレート用操作レバー54の支持部材としての機能を妨げない範囲で傾斜ないし湾曲した面としても良い。
後方架橋部14は、その幅がU形溝部12の幅よりも広く設けられており、U形溝部12よりも外側に突出し、U形溝部12を挟むように平行に配置されたシンクロフレーム10の上に乗っかかるように設けられている。また、左右両側縁部には中程には凹部22がそれぞれ設けられている。これにより、後方架橋部14の両側には、それぞれ凹部22を挟んで前後に2箇所ずつ、合計4箇所のはみ出し部が形成され、シンクロフレーム10の上に乗っかかるように設けられている。したがって、シンクロフレーム10の上側の縁に4箇所のはみ出し部を載せ、且つ凹部22にシンクロフレーム10側の係合突片21を嵌め込ませることによって位置決めが可能となる。
この後方架橋部14には、背凭れ8の底部の背フレーム取付部8cを載置して4箇所のねじを利用して固定する。つまり、後方架橋部14は、背フレーム取付部として機能するものである。
前方架橋部13は、左右のシンクロフレーム10の間に跨がるようにして左右のシンクロフレーム10とそれぞれ溶接されている。前方架橋部13は、左右のシンクロフレーム10を互いに連結して構造物を構成すると共に座受部材支持部品2のダンパ2cとの間でシンクロフレーム10の揺動可能な角度の一方の端(下端側)を規制するストッパ構造を構成するものである。
したがって、シンクロフレーム10がシンクロフレーム回転軸4を中心に後傾動作するときに、メインフレーム1とシンクロフレーム10との交差角が狭まり、メインフレーム1の座受部材支持部品2とシンクロフレーム10の前方架橋部13とが当接する。このとき、座受部材支持部品2の天板部2Aに取り付けられたダンパ2cと前方架橋部13とが当接することによって、シンクロフレーム10がそれ以上傾動できないように規制すると共にそのときに背凭れ8及び座7に作用する荷重を支持する。
以上のように構成されたシンクロフレーム10とシンクロフレーム継金具11とは、U形溝部12の幅方向の両側にシンクロフレーム10を宛がうことでシンクロフレーム10の間隔が一定に保たれた状態となるので、その状態でシンクロフレーム継金具11とシンクロフレーム10とを溶接付することによって一体化し、左右のシンクロフレーム10が連動する1つの構造体を構成することができる。
以上のように構成された本実施形態のロッキング機構によれば、メカ構造が全て鋼板の折り曲げ品で構成されており、ダイカスト品を必要としないので安価である。また、鋼板の曲げ加工品なので、コンパクト、軽量化が可能である。
他方、本実施形態では、メインフレーム1及びシンクロフレーム10の上側に座7が支持されていると共に、シンクロフレーム10には背凭れ8の背フレーム取付部8cが直接取り付けられ、背凭れ8と座7とが同期して後傾動作を行うシンクロロキング機構を構成している。
座7は、例えば、メインフレーム1に対して傾動可能に支持されて取り付けられる座受部材(アウターシェル)7aと、芯材となる座板(図示省略)とその上に載置されるクッション並びに該クッションを覆う上張地とから構成される。座7は、メインフレーム1の前端部に形成された長孔19を貫通する座前方支持軸5によって前方を支持されると共に、座後方支持軸6によって後方を揺動可能にシンクロフレーム10に連結支持される。これにより、シンクロフレーム10の揺動に伴って座7の後方が前後しながら昇降すると共に前方が前後にスライドしながら揺動し、背凭れ8及び座7が連動してロッキング動作を行う。座受部材7aの後端部にはフック7bが備えられ、シンクロフレーム10に取り付けられている座後方支持軸6に引っ掛けられて、シンクロフレーム10に支持されると共にシンクロフレーム10と連動して揺動するように回転自在に固定されている。なお、シンクロフレーム10と座後方支持軸6並びにシンクロフレーム10と反力付与機構30の反力付与機構受軸31とは溶接付により固着されている。
また、本実施形態のロッキング機構は、メインフレーム1とシンクロフレーム10との間に介在してシンクロフレーム10を初期位置に向けて付勢する反力付与機構30が備えられる。
反力付与機構30は、シンクロフレーム10の前端部を後ろに向けて付勢することによって背凭れ8及び座7の傾動に対して反発力・反力を与えて初期位置に戻す働きをする。なお、シンクロフレーム10の前端部が後方に一杯まで押し込まれ、シンクロフレーム10の後端部に設けられる後方架橋部14に取り付けられた背凭れ8が上方に一杯まで引き上げられた状態を初期位置とし、例えば図3乃至図6は初期位置にある状態を表す。
本実施形態の反力付与機構30は、摺動軸30aによって案内されて相互の間隔を変更可能な前ばねマウント30b及び後ばねマウント30cと、これら両ばねマウント30b,30cの間に跨がるように嵌合されて介在する圧縮コイルばね30dとを有する。なお、図3では圧縮コイルばね30dを仮想線で示していると共に、他の図では圧縮コイルばね30d及び摺動軸30aの図示を省略している。
前ばねマウント30bと後ばねマウント30cとは、圧縮コイルばね30dに挿入される軸部を有し、シンクロフレーム10の後傾動作によって圧縮コイルばね30dが圧縮されるときに、摺動軸30aと共に、座屈しないように圧縮コイルばね30dを保持する。
そして、前ばねマウント30bは、反力調整機構32の摺動ブロック35に当接し、メインフレーム1の前側の位置に固定された反力調整機構32を介して座受部材支持部品2(メインフレーム1)に支持される。
また、後ばねマウント30cはシンクロフレーム10の前端部に取り付けられた反力付与機構受軸31に支持され、当該後ばねマウント30cを介して反力付与機構30とシンクロフレーム10とが揺動可能に連結される。
なお、反力付与機構受軸31は、メインフレーム1の下方に配設され、左右両端部分それぞれが左右のシンクロフレーム10の前端部に挿し込まれてこれら左右のシンクロフレーム10に対して固定されて取り付けられる。
座前方支持軸5を含む回転スライド機構と座後方支持軸6とにより、シンクロフレーム10の後傾動作と座7の後傾動作とが連動して行われるロッキング機構が構成される。
具体的には、まず、座7や背凭れ8に荷重がかけられていない状態では、図3乃至図6に示すように、反力付与機構30によってシンクロフレーム10の前端部が当該シンクロフレーム10の回転軸4よりも下方位置において後ろに向けて付勢され、背凭れ8が着座者の自然姿勢の背中を支持する位置(即ち、初期位置)にある。
そして、着座者が背凭れ8に凭り掛かると、反力付与機構30が押し縮められながら、背凭れ8及びシンクロフレーム10がシンクロフレーム回転軸4を中心として後傾する。同時に、座後方支持軸6を介しての連結によって座受部材7aの後部が後方斜め下向きに引き込まれると共に座前方支持軸5が長孔19,19内を後ろ向きに移動することによって座受部材7aが後ろ向きにスライドしながら傾動する。
一方、背凭れ8に凭り掛かっていた着座者が上体を起こすと、反力付与機構30により、具体的には反力付与機構30が伸長する反力を発揮することにより、シンクロフレーム10の前部が後ろに向けて付勢され、同時に、座受部材7aの後端が押し上げられると共に座受部材7aが前向きにスライドする。
なお、シンクロフレーム10が後傾すると共に座受部材7aが後ろ向きにスライドしながら傾動したときに座前方支持軸5がメインフレーム1の長孔19,19内を移動して当該長孔19,19の後ろ周面に当接することにより、シンクロフレーム10の後傾と座受部材7aのスライド及び傾動とが規制される。
反力調整機構32は、反力付与機構30を構成する圧縮コイルばね30dの初期位置における傾斜角度を変化させて当該圧縮コイルばね30dがシンクロフレーム10を初期位置に戻す方向に作用する力を調整するものである。
なお、反力調整機構32は、ガイド部材39を抱持する取付金具33により、メインフレーム1の座受部材支持部品2に固定される。
取付金具33は、ガイド部材39を両側から挟み込むように抱持する横断面がコ字形の側壁部とガイド部材39の底部を受支える底部とを有し、ガイド部材39を保持しつつ当該ガイド部材39をメインフレーム1に対して固定する。
具体的には、取付金具33の上端に形成された突起がメインフレーム1に一体成形された受板2eに形成されたスリットに差し込まれた状態で溶接づけされることにより、メインフレーム1から吊り下げられるようにして当該メインフレーム1に対して取付金具33が固定され、当該取付金具33に保持されているガイド部材39が、延いては反力調整機構32がメインフレーム1に対して固定されて取り付けられる。
また、受板2eの中央部に形成された貫通孔には反力調整機構32の反力調整回転軸34が嵌入されて回転可能に支持される。
本実施形態の反力調整機構32は、座7を構成するフレームとしてのメインフレーム1と当該座7を構成するフレーム(メインフレーム1)に対して背凭れ8を揺動可能に連結するフレームとしてのシンクロフレーム10との間に介在させられつつ座7の前側下方の左右中央位置に一つ設けられると共に背凭れ8を揺動可能に連結するフレーム(シンクロフレーム10)の揺動方向に沿わされて配置されたコイルばね30dの初期位置における傾斜角度を変化させるものである。
また、本実施形態の反力調整機構32は、具体的な構成として、コイルばね30dの一端を前ばねマウント30bを介して受け支える摺動ブロック35と、背凭れ8を揺動可能に連結するフレーム(シンクロフレーム10)の揺動方向に沿わされて且つ後傾して配設される軸としての反力調整回転軸34とを有し、摺動ブロック35が反力調整回転軸34を貫通させる貫通孔36を備えて反力調整回転軸34を貫通させた状態で当該反力調整回転軸34の軸方向に移動し、これにより、前ばねマウント30bを介して摺動ブロック35によって受け支えられるコイルばね30dの一端を移動させてコイルばね30dの初期位置における傾斜角度を変化させるようにしている。
本実施形態の反力調整機構32は、具体的な構成として、さらに、外周面にねじが形成された円筒ねじ部材37と、摺動ブロック35を反力調整回転軸34の軸方向に移動可能であるように保持するガイド部材39とを更に有し、反力調整回転軸34が円筒ねじ部材37を軸方向に貫通して当該円筒ねじ部材37が反力調整回転軸34の外周面に取り付けられると共に、摺動ブロック35の貫通孔36の内周面に円筒ねじ部材37の外周面のねじと噛み合うねじが形成され、反力調整回転軸34が回転すると円筒ねじ部材37の外周面のねじが摺動ブロック35の貫通孔36の内周面のねじと噛み合うと共にガイド部材39によって摺動ブロック35の回転が制限されつつ摺動ブロック35が反力調整回転軸34の軸方向に移動し、これにより、前ばねマウント30bを介して摺動ブロック35によって受け支えられるコイルばね30dの一端を移動させてコイルばね30dの初期位置における傾斜角度を変化させるようにしている。
反力調整回転軸34の外周面に、レール状の凸部として、軸方向のキー40が一体に形成される。本実施形態では、反力調整回転軸34の外周面の、径方向において対向する位置に一対のキー40,40が形成される。
また、円筒ねじ部材37の中心軸位置に、反力調整回転軸34を嵌入させる貫通孔が設けられ、さらに、当該貫通孔の内周面のキー40の対応する位置・間隔に、キー40が嵌合する軸方向のキー溝41が形成される。
そして、反力調整回転軸34と円筒ねじ部材37とは、キー40とキー溝41とが嵌合し係合することにより、相互に軸回転不能に結合される。
なお、反力調整回転軸34と円筒ねじ部材37との結合の態様は、キー40とキー溝41とが嵌合し係合する態様に限定されるものではなく、他の方法によって結合されるようにしても良い。
円筒ねじ部材37は、軸方向の両端面(上側の端面及び下側の端面)がガイド部材39の対向する上壁39b及び下壁39cそれぞれの内側面に当接する長さ(即ち、上壁39bの下面と下壁39cの上面との間隔と同じ長さ)に調整されて形成される。また、円筒ねじ部材37の外周面には雄ねじが形成される。なお、例として示す各図においては、円筒ねじ部材37を単なる円筒状のものとして図示してねじ山の図示を省略している。
反力調整回転軸34は、また、ガイド部材39の下壁39cの下面に係止する座受部44が下端寄りの位置に設けられると共に、ハンドル38のスリット38aと嵌合する取付部34aが下端部に設けられる。そして、反力調整回転軸34の下端にハンドル38が取り付けられる。
前ばねマウント30bの摺動ブロック35と対向する面に、鉛直面に沿う縦断面形状が円弧状である(即ち、蒲鉾形に抉られた)凹部43が設けられる。
また、摺動ブロック35の前ばねマウント30bと対向する面に、ねじ孔36の軸心と直交する方向に軸が配置された半円筒状の(言い換えると、蒲鉾形に突出した)凸部42が設けられる。
すなわち、前ばねマウント30bの凹部43と摺動ブロック35の凸部42とは、鉛直面と直交する方向に中心軸を配置するようにどちらも形成され、鉛直面に沿って相互に揺動可能に当接する。
そして、前ばねマウント30bの凹部43に摺動ブロック35の凸部42が嵌合することにより、圧縮コイルばね30dにかかる力が摺動ブロック35によって受け止められると共に前記圧縮コイルばね30dを含む反力付与機構30の一端(図に示す例では、前端)が揺動可能に支承される。
他方、後ばねマウント30cは、シンクロフレーム10の前端部に取り付けられて軸に係合する係合フック30eと前記軸に押し当てられる受部30fとを有し、反力付与機構受軸31に取り付けられる。
そして、圧縮コイルばね30dにかかる力が反力付与機構受軸31によって受け止められると共に前記圧縮コイルばね30dを含む反力付与機構30の他端(図に示す例では、後端)が揺動可能に支承される。
ガイド部材39は、円筒ねじ部材37を介して反力調整回転軸34と連結している摺動ブロック35の、反力調整回転軸34の軸心を中心とする軸回転を阻止しつつ、一方向(具体的には、反力調整回転軸34の軸方向)の移動をガイドするためのものである。
ガイド部材39は、本実施形態では、後ろ側の面(即ち、反力調整回転軸34と対向する面)が開口した箱体として形成され、摺動ブロック35を抱持するように構成される。
ガイド部材39は、具体的には、摺動ブロック35の前側の面と当接して反力付与機構30から加えられる力を摺動ブロック35を介して受け支える前壁39aと、円筒ねじ部材37の上側の端面及び下側の端面とそれぞれ当接して円筒ねじ部材37に作用するアキシアル荷重を受け止める上壁39b及び下壁39cと、摺動ブロック35の左側の面及び右側の面とそれぞれ当接して摺動ブロック35が反力調整回転軸34の軸心を中心として軸回転することを阻止する左右一対の側壁39d,39dとを有する。
なお、ガイド部材39の前壁39aの左右両端から、取付金具33に対してガイド部材39を固定すると共に左右の側壁39d,39dを補強して変形を防止するための左右一対の取付部39a’,39a’が一体に形成される。
ガイド部材39の、対向する上壁39bと下壁39cとのそれぞれに貫通孔が形成され、これら貫通孔を通過して反力調整回転軸34がガイド部材39を貫通する。
ガイド部材39の内面には反力調整回転軸34の軸方向(即ち、摺動ブロック35がスライド移動する方向)の縱筋が複数設けられ、摺動ブロック35が軸方向に滑らかに移動し得るように摩擦を軽減させる構造とされている。
なお、少なくとも摺動ブロック35,円筒ねじ部材37,及びガイド部材39は、樹脂で形成されることが好ましい。例えばポリアセタール等の摩擦係数が小さく良好な摺動性を発揮し得る樹脂によって形成されることにより、摺動ブロック35と円筒ねじ部材37との送りねじ機構としての螺合摺動や摺動ブロック35とガイド部材39との当接摺動が滑らかなものになり、反力調整機構32の操作に必要とされる力(具体的には、ハンドル38を回す力)が軽くなる。
摺動ブロック35のねじ孔36の内周面には円筒ねじ部材37の外周面の雄ねじと螺合する雌ねじが形成され、これらねじによって送りねじ機構が構成され、また、これらねじ同士が噛み合うことで摺動ブロック35と円筒ねじ部材37とが連結される。
なお、摺動ブロック35や円筒ねじ部材37に形成されるねじは、大きなアキシアル荷重が発生するため、台形ねじであることが好ましいものの、台形ねじに限られるものではない。
上述の構成によれば、ハンドル38が回されて反力調整回転軸34と共に円筒ねじ部材37が軸回転すると、ガイド部材39に保持された摺動ブロック35が、反力調整回転軸34の軸心を中心とする軸回転が阻止されつつ前記軸心の方向に直線移動する。
そして、摺動ブロック35の移動に伴い、当該摺動ブロック35に支承される前ばねマウント30bの位置が移動する。
このとき、摺動ブロック35は反力調整回転軸34やガイド部材39に拘束されながら一直線上を動くので、摺動ブロック35とシンクロフレーム回転軸4及び反力付与機構受軸31の軸心との間の位置関係が変化する。
したがって、側面視において、摺動ブロック35と揺動可能に当接する前ばねマウント30bの凹部43から反力付与機構受軸31(シンクロフレーム10に対する反力付与機構30の圧縮コイルばね30dの作用点)の軸心へと向かう方向とシンクロフレーム回転軸4の軸心から反力付与機構受軸31の軸心へと向かう方向とのなす角の大きさが変化し、言い換えると、圧縮コイルばね30dの初期位置における傾斜角度が変化し、これにより、当該圧縮コイルばね30dがシンクロフレーム10を初期位置に戻す方向に作用する力(即ち、実効反力)が変化し、すなわち、反力付与機構30によってシンクロフレーム10に対して発揮される反力が調整される。したがって、背凭れ8に凭れたときの反発力が着座者の好みに合うように調整され得る。
なお、側面視においてシンクロフレーム回転軸4の軸心から反力付与機構受軸31の軸心へと向かう方向と凹部43から反力付与機構受軸31の軸心へと向かう方向とのなす角、言い換えると、反力付与機構受軸31の軸心を頂点とするシンクロフレーム回転軸4への方向と凹部43への方向とのなす角の大きさを変化させるということは、シンクロフレーム10の方向に対する圧縮コイルばね30dの伸縮方向を変化させるということであり、すなわち、シンクロフレーム10に対する反力の作用方向を変化させるということであり、このため、シンクロフレーム10に対する反力のうちの実効的に作用する方向成分の大きさが変化する。
以上のように構成された反力調整機構及びこの反力調整機構を備える椅子によれば、圧縮コイルばね30dの傾斜角度を変化させることによって初期位置(言い換えると、初期状態)における背凭れ8を揺動可能に連結するフレームとしてのシンクロフレーム10と圧縮コイルばね30dとのなす角の大きさが変えられるので、シンクロフレーム10を初期位置に戻す方向に作用する力が変化し、シンクロフレーム10を付勢する圧縮コイルばね30dの反力の見かけの大きさが調整される。このため、単に圧縮コイルばね30dの傾斜角度を変化させることのみによってシンクロフレーム10を付勢する圧縮コイルばね30dの反力の見かけの大きさを調整することができるので、部品点数が抑制されて非常に簡便な且つ小規模の仕組みによって反力調整機構を構成することが可能になり、延いては、組み立て作業の手間やコストを低減させることが可能になる。
しかも、例えば初期長さを変化させることによってコイルばねの反力の見かけの大きさを調整する場合にはコイルばねを圧縮させるための大きな力が必要とされるのに対し、上述の反力調整機構の場合には、圧縮コイルばね30dの傾斜角度を変化させるだけであるので、コイルばねを圧縮させる際のような大きな力が必要とされること無くコイルばねの反力の見かけの大きさが調整される。このため、反力調整の操作に必要とされる力を低減させ、操作性を向上させて使用時の快適性を向上させることが可能になる。また、反力調整機構を構成する各部材(例えば、ハンドル38及び反力調整回転軸34,摺動ブロック35,円筒ねじ部材37,並びにガイド部材39など)に大きな力(負荷)が作用しないため、樹脂成形品などによって反力調整機構を構成することが可能になる。
以上のように構成された反力調整機構及びこの反力調整機構を備える椅子によれば、また、背凭れ8を揺動可能に連結するフレームとしてのシンクロフレーム10の揺動方向に沿わされて反力調整回転軸34が配設されて当該反力調整回転軸34の軸方向に摺動ブロック35が移動するようにしているので、反力付与機構30を構成する圧縮コイルばね30d及び当該圧縮コイルばね30dの反力調整機構32を収容する空間として左右方向における大きな寸法は必要とされない。このため、他の部材の配設を設計する際の制約やデザイン上の制約を緩和させて反力調整機構としての汎用性を向上させることが可能になる。
ここで、本実施形態では、メインフレーム1に対して揺動するシンクロフレーム10へと反力を発揮する仕組みとして反力付与機構30のみが備えられる。すなわち、椅子のロッキング機構としては、座7の前側下方(言い換えると、脚9の脚柱9aの前方)に配置される本実施形態における反力付与機構30に対応する仕組みに加え、座7の後側下方乃至後方(言い換えると、脚9の脚柱9aの後方)においてメインフレーム1とシンクロフレーム10との間に介在するように配設されてシンクロフレーム10へと反力を発揮する二つ目の反力付与機構として流体スプリングが更に設けられる態様が従来汎用されているのに対し、本実施形態では座7の前側下方の左右中央位置に一つの反力付与機構30のみが備えられて二つ目の反力付与機構は備えられていない。
そして、従来汎用されているロッキング機構では、上述の二つ目の反力付与機構としての流体スプリングとしてロック機構付きのものが用いられ、この二つ目の反力付与機構が備えるロック機能が利用されて背凭れ8の傾動動作の固定と当該固定の解除とが制御されるようにしている。
これに対して本実施形態では、ロック機構を備えない反力付与機構30のみが備えられ、背凭れ8の傾動動作の固定・固定解除の制御はロック機構50によって行われる。
ロック機構50は、シンクロフレーム回転軸4を中心としてメインフレーム1に対して揺動可能であるシンクロフレーム10の揺動を不能にしたり許容したりすることにより、当該シンクロフレーム10に取り付けられる背凭れ8の傾動動作の固定と当該固定の解除とを制御するものである。
本実施形態のロック機構50は、相互に揺動可能に連結される第一の部材としてのメインフレーム1及び第二の部材としてのシンクロフレーム10と、第一の部材(メインフレーム1)に設けられる被係合部材を構成する脚柱支持部品3と、当該被係合部材(脚柱支持部品3)へと向かう方向において前後にスライド移動可能であるように第二の部材(シンクロフレーム10)に支持されて設けられる係合部材としてのロックプレート53とを有し、被係合部材(脚柱支持部品3)は、第一及び第二の部材相互の揺動方向に沿って配列されて設けられる複数の係合部51と、第一及び第二の部材相互の揺動方向に沿って設けられるガイド部52とを備え、また、係合部材(ロックプレート53)は、前後にスライド移動することによって被係合部材(脚柱支持部品3)の係合部51へと嵌入したり係合部51から外れたりする短係止片53aと、被係合部材(脚柱支持部品3)のガイド部52に常時差し込まれた状態が維持される長係止片53bとを備える。
メインフレーム1を構成する脚柱支持部品3の後壁3Cに、係合部51及びガイド部52が設けられる。なお、本実施形態では、脚柱支持部品3の後壁3Cは板状の部材によって構成され、当該板状の部材に形成された貫通孔として係合部51及びガイド部52が設けられる。
脚柱支持部品3の後壁3Cを構成する板状の部材は、側面視において、シンクロフレーム回転軸4を中心とする円弧状に湾曲して形成される。これにより、シンクロフレーム回転軸4を中心としてシンクロフレーム10が揺動する際に、後壁3Cの後面とシンクロフレーム10の各部との間の距離が一定に保たれる。
脚柱支持部品3の後壁3Cの係合部51は、横長(即ち、左右方向)の矩形状の貫通孔として形成される。
係合部51は、シンクロフレーム10が揺動する方向(即ち、上下方向)に相互に間隔をあけて複数個並べられて設けられ、且つ、前記シンクロフレーム10が揺動する方向と直交する方向(即ち、左右方向)に相互に間隔をあけて複数個並べられて設けられる。
すなわち、係合部51は、シンクロフレーム10が揺動する方向(即ち、上下方向)において複数の段を有すると共に前記シンクロフレーム10が揺動する方向と直交する方向(即ち、左右方向)において複数の列を有するものとして設けられる。
係合部51に係る、上下方向に並べられる個数(即ち、係合部群としての段数)及び左右方向に並べられる個数(即ち、係合部群としての列数)や、上下方向における相互の間隔は、特定の数や値に限定されるものではなく、背凭れの傾動及び固定の仕組みとして好ましい傾動範囲,傾動動作の固定可能な位置の数,及び/又は固定時の傾斜角度のピッチなどが考慮された上で適当な数や値に適宜設定される。
本実施形態では、あくまで一例として、係合部51が、上下方向に五個並べられると共に左右方向に四個並べられて、すなわち、五段四列に配置されて設けられる。
脚柱支持部品3の後壁3Cのガイド部52は、シンクロフレーム10が揺動する方向(即ち、上下方向)に沿う縦長の矩形状の貫通孔として形成される。
ガイド部52は、左右方向において合計四列配置されているうちの左側二列の係合部51群と右側二列の係合部51群との間に、したがって脚柱支持部品3の後壁3Cの左右方向における中央位置に設けられる。
係合部材としてのロックプレート53は、被係合部材(脚柱支持部品3)と係合してシンクロフレーム10の揺動の、延いては背凭れ8の傾動の、固定と当該固定の解除とを制御するものである。
ロックプレート53の材質は、背凭れ8にかかる荷重を受け止めて当該背凭れ8の傾動を固定し得る強度を発揮し得るように金属であることが好ましいものの、必要な強度を発揮することが可能であれば樹脂或いはその他のものであっても良い。
ロックプレート53は、板状の部材によって前端部分に短係止片53aと長係止片53bとを有するものとして形成され、板面を水平(即ち、左右方向)にした状態でシンクロフレーム10側に配設される。
ロックプレート53の長係止片53bは、短係止片53aよりも長いものとして、言い換えると、短係止片53aよりも更に前方に突出するものとして設けられる。
ロックプレート53は、シンクロフレーム10に固定されて取り付けられるシンクロフレーム継金具11のU形溝部12を構成するものとして前後方向において対向して形成される前壁部16と後壁部17とのそれぞれに、前後方向において対向する位置に形成された左右方向のスリット18,18に差し込まれた状態で、摺動可能に支持される。
上述の構造により、ロックプレート53は、前後方向にスライド可能であると共に上下方向への移動が制限された態様で、シンクロフレーム10に固定されて取り付けられるシンクロフレーム継金具11に支持される。
ロックプレート53は、前後方向のスライド動作によって前端部分の短係止片53aが係合部51へと嵌入したり係合部51から外れたりすると共に、前端部分の長係止片53bがガイド部52へと挿入される(言い換えると、差し込まれる)。
すなわち、本実施形態では、ロックプレート53に、あくまで一例として、脚柱支持部品3の後壁3Cに設けられている係合部51群のうちの一段分の左側二個の係合部51,51と右側二個の係合部51,51とのそれぞれに対応する位置に短係止片53aが設けられ、脚柱支持部品3の後壁3Cの左右方向における中央位置に設けられているガイド部52に対応する位置に長係止片53bが設けられる。つまり、ロックプレート53に、左側二個の短係止片53a,53aと中央の長係止片53bと右側二個の短係止片53a,53aとが左右方向において並んで設けられる。
そして、ロックプレート53が前方に摺動して前端部分の短係止片53aが係合部51へと嵌入すると(このときのロックプレート53の位置を「ロック位置」と呼ぶ;例えば図22及び図23や図27)、ロックプレート53がメインフレーム1とシンクロフレーム10に固定されて取り付けられるシンクロフレーム継金具11とに跨がって存在することになり、シンクロフレーム10の揺動がロックプレート53を介して制限されて背凭れ8の傾動が固定される。
一方で、ロックプレート53が後方に摺動して前端部分の短係止片53aが係合部51から外れると(このときのロックプレート53の位置を「ロック解除位置」と呼ぶ;図24及び図28)、シンクロフレーム10の揺動の制限が解除され、背凭れ8の傾動が可能になる。
ここで、ロックプレート53がロック位置とロック解除位置との間で前後方向にスライド動作する際に、当該ロックプレート53がロック位置とロック解除位置とのどちら側に位置しても、当該ロックプレート53の長係止片53bはガイド部52へと差し込まれた状態が常時維持される。
すなわち、ロックプレート53が前方に摺動してロック位置にあるときには、各短係止片53aが対応する係合部51のそれぞれへと同時に嵌入すると共に、長係止片53bがガイド部52に差し込まれる。
また、ロックプレート53が後方に摺動してロック解除位置にあるときには、各短係止片53aが対応する係合部51のそれぞれから全て外れる一方で、長係止片53bはガイド部52に差し込まれたままになっている。
そして、ロックプレート53の前後方向のスライド動作に関係なく、言い換えると、ロックプレート53の前後方向における位置に関係なく、長係止片53bはガイド部52に常時差し込まれるので、ガイド部52の上端に当接する位置から下端に当接する位置までとして、メインフレーム1を構成する脚柱支持部品3の後壁3Cに対するロックプレート53の移動範囲が制限される。
したがって、ガイド部52の、シンクロフレーム10が揺動する方向(即ち、上下方向)における長さを調整することにより、ロックプレート53の移動可能範囲が調整され、これによってメインフレーム1に対するシンクロフレーム10の揺動範囲が調整され、延いては背凭れ8の傾動範囲が調整される。
なお、ガイド部52とロックプレート53の長係止片53bとの当接によるシンクロフレーム10の揺動範囲の制限は、ガイド部52の上端に当接させることによるシンクロフレーム10の上向き揺動範囲の制限と、ガイド部52の下端に当接させることによるシンクロフレーム10の下向き揺動範囲の制限とのうちのどちらか一方のみが行われるようにしても良く、或いは、前記上向き揺動範囲の制限と前記下向き揺動範囲の制限との両方が行われるようにしても良い。
本実施形態では、具体的には、反力付与機構30によってシンクロフレーム10の前端部が後ろに向けて付勢されて背凭れ8が着座者の自然姿勢の背中を支持する位置(即ち、初期位置)にある状態でのロックプレート53の長係止片53bがガイド部52の上端に当接するようにガイド部52の上端位置が調整されてシンクロフレーム10の上向き揺動範囲の制限が行われる。
ロックプレート53の前後方向へのスライド動作は、ロックプレート用操作レバー54が操作されることによって行われる。
ロックプレート用操作レバー54は、把手部54aと軸部54bとを有し、シンクロフレーム10に固定されて取り付けられるシンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15の下方に配設されてシンクロフレーム継金具11に対して揺動可能に取り付けられる。
ロックプレート用操作レバー54は、シンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15を軸回転可能に貫通して上下方向に配設されると共に把手部54aと軸部54bとの連結部分においてロックプレート用操作レバー54に固定されるレバー揺動軸55により、シンクロフレーム継金具11に対して揺動可能に取り付けられる。
ロックプレート用操作レバー54の軸部54bの先端部(即ち、レバー揺動軸55が固定されている把手部54aと軸部54bとの連結部分とは反対側の端部)に、上向きに突設される鉤状の引掛け部54cが形成される。
また、シンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15に、ロックプレート用操作レバー54の引掛け部54cが貫通するガイド溝56が前後方向に形成される。
そして、鉤状の引掛け部54cがガイド溝56を下から上へと貫通すると共に鉤状の引掛け部54cの屈曲部分がガイド溝56の周縁部に引っ掛けられることにより、軸部54bの先端側がシンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15に対して摺動可能に掛け下げられる。
本実施形態では、シンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15の右端寄りの位置において当該底部15をレバー揺動軸55が上下方向に貫通し、当該レバー揺動軸55の位置から把手部54aが右方に突出すると共に軸部54bが左方に延出するようにロックプレート用操作レバー54が配設され、当該ロックプレート用操作レバー54の軸部54bの先端部の引掛け部54cに対応する位置であってシンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15の左端寄りの位置に前後方向のガイド溝56が形成される。
なお、前後方向のガイド溝56としての開口範囲により、引掛け部54cの前後方向の移動のストローク長が規制され、延いては、ロックプレート用操作レバー54の前後方向の揺動範囲が規制される。
また、ロックプレート53とロックプレート用操作レバー54とが、ロックプレート用操作レバー54が前後方向に揺動操作されることによってロックプレート53がロック位置とロック解除位置との間で前後にスライド動作するように連結される。
具体的には、本実施形態では、ロックプレート53とロックプレート用操作レバー54の軸部54bとの間に介在するように配設されたねじりコイルばね57により、ロックプレート53とロックプレート用操作レバー54とが連結され、ロックプレート用操作レバー54の動作がロックプレート53に伝達される。
なお、シンクロフレーム継金具11のU形溝部の底部15に、ねじりコイルばね57を通過させるための前後方向の長孔27が形成される。
ねじりコイルばね57は、一端がロックプレート53に連結されると共に他端がロックプレート用操作レバー54に連結され、ロックプレート用操作レバー54の把手部54aが後方に押し込まれた位置から前方に押し出された位置まで揺動する間に思案点を通過してロックプレート53に与えられる付勢力の向きが反転するように配置される。
具体的には、本実施形態では、ロックプレート用操作レバー54の把手部54aが後方に押し込まれると軸部54bが前方に揺動してロックプレート53がロック位置に移動し、この状態でロックプレート53はねじりコイルばね57によって前方に弾性付勢される。
このとき、ロックプレート用操作レバー54の把手部54aが後方に押し込まれたもののロックプレート53の短係止片53aの位置と係合部51の位置とが合っていないために短係止片53aが係合部51へと嵌入することができないときは、ねじりコイルばね57に蓄力され、短係止片53aが係合部51へと嵌入可能になったときにねじりコイルばね57の付勢力によってロックプレート53がスライド移動させられて短係止片53aが係合部51へと嵌入する。
一方、ロックプレート用操作レバー54の把手部54aが前方に押し出されると軸部54bが後方に揺動してロックプレート53がロック解除位置に移動し、この状態でロックプレート53はねじりコイルばね57によって後方に弾性付勢される。
なお、ロックプレート53とロックプレート用操作レバー54との連結の仕組みは、ロックプレート用操作レバー54の揺動操作と連動してロックプレート53がスライド動作するものであれば、上述のものには限られない。付け加えると、上述の仕組みのように弾性付勢されることによってロック位置やロック解除位置において適度に拘束されることが好ましいものの、各位置において適度に付勢されることは本発明において必須の構成ではない。
以上のように構成されたロック機構50及びこのロック機構50を備える椅子によれば、係合部材としてのロックプレート53がスライド移動することにより短係止片53aが係合部51へと嵌入したり係合部51から外れたりすることによってメインフレーム1とシンクロフレーム10との相互の揺動動作が制限されたり許容されたりすると共に、ガイド部52に長係止片53bが常時差し込まれた状態が維持されるので、一組の係合部材(ロックプレート53)及び被係合部材(脚柱支持部品3)により、二つの部材相互の揺動動作の制限及びその解除を行うことができ、且つ、ガイド部52の形成範囲によって二つの部材相互の揺動範囲の規制を行うことができる。このため、これらの機能を別々に有する仕組みをそれぞれ設ける場合と比べ、仕組みの小型化を図ったり部品点数を抑制すると共に構造を簡便にしたりすることが可能になる。
以上のように構成されたロック機構50及びこのロック機構50を備える椅子によれば、また、シンクロフレーム10側の係合部材としてのロックプレート53の長係止片53bがメインフレーム1側のガイド部52に常時差し込まれた状態が維持されて長係止片53bがガイド部52によって常にガイドされるので、メインフレーム1とシンクロフレーム10とが相互に揺動する際のこれら部材相互の揺動動作の直進性の確保を行うことができる。このため、一組の係合部材(ロックプレート53)及び被係合部材(脚柱支持部品3)により、二つの部材相互の揺動動作の制限及びその解除を行うことができ、且つ、二つの部材相互の揺動範囲の規制を行うことができることに加え、二つの部材相互の揺動動作の直進性の確保を行うことができる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では本発明が図1に全体構成を示す椅子のうちの図3乃至図6に示すようになっている座及び背に纏わる構造に適用されるようにしているが、本発明が適用され得るメインフレーム1,座受部材7a,シンクロフレーム10などの各構成部材の具体的な形状や態様は、上述の実施形態におけるものに限られるものではなく、椅子の用途やデザインなどを踏まえて適宜選択される。具体的には例えば、上述の実施形態では背凭れ8と座7とが連動してロッキング動作を行うものとしてロッキング機構が構成されているが、本発明は、背凭れ8のみがロッキング動作を行うロッキング機構に適用することも可能であり、或いは、座7のみがロッキング動作を行うロッキング機構に適用することも可能である。
また、上述の実施形態では鋼板をプレス加工で折り曲げて成る座受部材支持部品2と脚柱支持部品3とを組み合わせてメインフレーム1が構成されているが、メインフレーム1の構成態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではない。メインフレーム1は、座受部材7aとシンクロフレーム10とを支持して椅子の脚9の脚柱9aに搭載させるためのものであり、座受部材7a、シンクロフレーム10などの各構成部材を支持する部位と剛性とを備えていれば良く、特定の構造や形状などに限定されるものではなく、一般的なダイキャスト製の一体成形品でも良い。
また、上述の実施形態では反力調整機構32のガイド部材39が前壁39a,上壁39b,下壁39c,並びに一対の側壁39d及び39dを有するものとして構成されるようにしているが、反力調整機構32の構成態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではなく、摺動ブロック35の反力調整回転軸34の軸心を中心とする軸回転を阻止しつつ一方向(具体的には、反力調整回転軸34の軸方向)の移動をガイドし得るものであればどのような態様でも良い。具体的には例えば、摺動ブロック35の左右それぞれの面から左右方向に突出する左右一対の係止片が形成されると共に、ガイド部材としてこれら左右一対の係止片それぞれが摺動可能に嵌まり込む直線状の係合溝や係合孔がメインフレーム1側に形成され、係止片と係合溝・係合孔との摺動係合によって摺動ブロック35の軸回転が阻止されると共に一方向に移動し得るように構成されても良い。すなわち、ガイド部材39が、摺動ブロック35に形成された係止片が摺動可能に係合する係合溝や係合孔として形成されるようにしても良い。
また、上述の実施形態では反力調整機構32の反力調整回転軸34が後傾姿勢で配置されるようにしているが、反力調整回転軸34の配置(姿勢)の態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではなく、反力調整回転軸34が鉛直方向に沿う姿勢で配置されるようにしたり前傾姿勢で配置されるようにしたりしても良い。
また、上述の実施形態では、反力調整回転軸34に取り付けられた円筒ねじ部材37の外周面のねじと摺動ブロック35の貫通孔36の内周面のねじとを噛み合わせることによって摺動ブロック35を反力調整回転軸34の軸方向に移動させるようにしているが、摺動ブロック35を移動させるための仕組みの態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではなく、シンクロフレーム回転軸4及び反力付与機構受軸31の軸心との位置関係が変化するように摺動ブロック35を移動させ得る仕組みであればどのようなものでも良い。
また、上述の実施形態ではロック機構50の係合部51及びガイド部52が貫通孔として形成されるようにしているが、ロック機構50の係合部51やガイド部52の態様は貫通孔に限定されるものではなく、ロックプレート53の短係止片53aや長係止片53bが入り込む凹部や溝として係合部51やガイド部52が形成されるようにしても良い。付け加えると、係合部51が凹部や溝として形成されると共にガイド部52が貫通孔として形成されるようにしたり、その逆の態様で形成されるようしたりしても良い。
また、上述の実施形態ではロック機構50の係合部51及びガイド部52がメインフレーム1側に設けられると共にロックプレート53がシンクロフレーム10側に配設されるようにしているが、ロック機構50を構成する係合部及びガイド部とロックプレートとの配設の態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではなく、ロック機構50を構成する係合部51及びガイド部52がシンクロフレーム10側に設けられると共にロックプレート53がメインフレーム1側に配設されるようにしても良い。
また、上述の実施形態ではロック機構50の係合部51及びガイド部52がメインフレーム1を構成する脚柱支持部品3の後壁3Cに直接形成されるようにしているが、ロック機構50を構成する係合部及びガイド部の設置の態様は上述の実施形態における態様に限定されるものではなく、ロック機構50を構成する係合部51及びガイド部52が形成された別部品(被係合部材)がメインフレーム1(座受部材支持部品2,脚柱支持部品3)に取り付けられるようにしても良い。ただし、上述の実施形態のようにもとよりメインフレーム1を構成する部材・部品に係合部51及びガイド部52が直接形成されるようにすることにより、部品点数を削減すると共に構造を簡便にすることができ、延いては組み立て作業の手間を低減することができる。