JP6556159B2 - オイルかきピストンリング及びオイルかきピストンリングを製造する方法 - Google Patents

Description

本発明は、摺動ランドを有する摺動面領域と、内側の周面と、上下のフランクと、摺動ランド間において内側の周面まで延在するオイル流出孔／オイル流出スリットとを有する基体を備えるオイルかきピストンリングに関する。

米国特許第３４３５５０２号明細書は、上位概念部に記載のオイルかきピストンリングを開示している。マンドレルに多数のピストンリングブランクを固定し、ならい研削工具により加工する。ひとまとまり（セット）とした多数のピストンリングの外側輪郭に耐摩耗性のコーティングを施し、続いて、ピストンリングセットの外周面を円筒加工する。最終的に、ならい溝切り工具により所望の輪郭を個々のピストンリングに付与する。これにより、個々の摺動ランドが形成され、摺動ランドは、耐摩耗性の材料で満たされた溝を有する一方、摺動面ランドの残余の領域は、少なくとも部分的にコーティングフリーである。

独国特許第１０２０１００４８０７９号明細書は、２ｍｍ以下の軸方向の高さを備え、少なくとも１つのランドを有する半径方向外側の摺動面と、半径方向内側の周面と、両面間を延びる上下のフランク面とを備えるピストンリングを製造する方法であって、それぞれのランドに、半径方向外側に向かって錐形に先細りする輪郭を設け、その後、摺動面に、それぞれの錐形のランドのランドフランクを含め、少なくとも１つの耐摩耗性の層を設け、続いて、それぞれのランドのランドフランクの、かき取りエッジを形成し、クランクケースに面したフランク側の摩耗層のみを、少なくとも部分的な材料除去にかけ、このとき、摺動面の、加工したそれぞれのランドフランク外の残りの面成分は、それぞれのランドを含め、加工しない方法を開示している。

独国特許出願公開第１０２０１２０１０７５３号明細書には、２．０ｍｍ以下の軸方向の構造高さを備え、間隔を置いた２つの半径方向外側の摺動面ランドと、内側の周面と、上下のフランク領域とを備え、少なくとも摺動面ランドに耐摩耗性の被覆が被着されているオイルかきピストンリングを製造する方法であって、摺動面ランドの軸方向の間隔を設けるとき、向かい合う摺動ランドフランクが上下のフランク領域に対して略平行に延びるように、予め決められた幅及び深さの溝が形成されるように、鋳造材料からなる基体に摺動面輪郭を設け、摺動面ランドにクロム又はクロム合金をベースとする耐摩耗性の被覆を析出し、ならい研削により摺動面ランドの最終輪郭を形成し、このとき、機械的に摺動面ランドのエッジ領域のみを加工し、最終的に溝底の領域に逃し孔を設ける方法が記載されている。

本発明の根底にある課題は、小さな軸方向の構造高さ（好ましくは２．５ｍｍ以下）を有し、摺動面ランドに少なくとも部分的に摩耗防止が施されており、かつマンドレルを用いた製造に好適であるオイルかきピストンリングを提案することである。

別の課題は、簡単にピストンリングブランクを少なくともその摺動面の領域で最終的に加工し得る、この種のオイルかきピストンリングを製造する方法を提供することである。

上記課題は、摺動ランドを有する摺動面領域と、内側の周面と、上下のフランクと、摺動ランド間において内側の周面まで延在するオイル流出孔／オイル流出スリットとを有する基体を備えるオイルかきピストンリングにおいて、
ａ）基体は、１．２〜２．５ｍｍの構造高さを有し、
ｂ）それぞれの摺動ランドの幅は、外側の周面の領域で０．１０〜０．３５ｍｍであり、
ｃ）摺動ランドの領域に環状の溝が設けられており、溝には、耐摩耗性のコーティングが設けられており、
ｄ）溝は、上下のフランクの領域に０．０４〜０．２５ｍｍの幅を有するコーティングフリーの区分があるように、それぞれの摺動ランドの領域に部分的に延在し、
ｅ）それぞれの摺動ランドのコーティングフリーの区分は、それぞれのフランクへの導入領域において直角に形成されており、鋭利なエッジを有しており、
ｆ）摺動ランドの領域に設けられた溝の深さは、０．００５〜０．１０ｍｍであり、
ｇ）それぞれの摺動ランドの高さ（ｅ）は、０．１５〜０．７０ｍｍである、
ことを特徴とするオイルかきピストンリングにより解決される。

本発明に係るオイルかきピストンリングの好ましい一態様は、以下のパラメータ、すなわち、
ａ）基体は、１．２〜２．０ｍｍの構造高さを有し、
ｂ）それぞれの摺動ランドの幅は、外側の周面の領域で０．１０〜０．２５ｍｍであり、
ｃ）摺動ランドの領域に環状の溝が設けられており、溝には、耐摩耗性のコーティングが設けられており、
ｄ）溝は、上下のフランクの領域に０．０４〜０．１５ｍｍの幅を有するコーティングフリーの区分があるように、それぞれの摺動ランドの領域に部分的に延在し、
ｅ）それぞれの摺動ランドのコーティングフリーの区分は、それぞれのフランクへの導入領域において直角に形成されており、鋭利なエッジを有しており、
ｆ）摺動ランドの領域に設けられた溝の深さは、０．００５〜０．０６ｍｍであり、
ｇ）それぞれの摺動ランドの高さ（ｅ）は、０．１５〜０．５０ｍｍである、
というパラメータを有する。

本発明に係るピストンリングの有利な形態は、ピストンリングについての対応する従属請求項に看取可能である。

上記課題は、
−多数のピストンリングブランクを１つの円形マンドレルに固定し、
−マンドレル全長にわたる個々のピストンリングブランク間の分離面の正確な位置を測定し、
−ピストンリングブランクの外周面に、隣り合うピストンリングブランクの移行領域において隆起部が生じるように輪郭を付与し、
−隆起部外で外周面の円筒加工を行い、
−ひとまとまりとしたピストンリングブランクの少なくとも外周面に耐摩耗性のコーティングを施し、
−このとき、隆起部に準えて少なくとも部分的にコーティングを少なくとも部分的に形成し、
−コーティングしたピストンリングブランクの外周面を円筒加工にかけ、
−このとき、耐摩耗性の層を、個々のピストンリングブランク間の移行領域に耐摩耗性の層がもはや存在しないほどに除去し、
−オイルため容積を形成すべくピストンリングブランクの所望の外側輪郭を形成し、
−ピストンリングブランクを続いて個別化し、ピストンリングブランクの後続の加工に供する、
ことにより、オイルかきピストンリングを製造する方法によっても解決される。

本発明に係る方法の有利な形態は、方法についての対応する従属請求項に看取可能である。

本発明に係るオイルかきピストンリングの基体は、好ましくは、ねずみ鋳鉄材料からなる。しかし、これとは異なり、基体を形成するのに鋼線材又は鋳鋼も可能である。リングは、絶対対称である。リングランドは、一方では、それぞれのフランクに向かって鋭利なエッジを有して、他方では、オイルため容積に向かって鋭利なエッジを有して形成されている。本発明に係るピストンリングの摺動面領域における予備輪郭及び最終輪郭は、同じ円形マンドレル上で製造される。このことは、必要に応じて例えば０．１５ｍｍにすぎないランド高さを実現する。

外側輪郭の加工完了後、マンドレルは開放される。それに続いて、逃し孔／逃しスリットが、基体のそれぞれの摺動面領域に加工され、続いて、ばね要素、特にチューブ状ばねリングとして形成されるばね要素を収容する内側輪郭が加工される。

耐摩耗性のコーティングは、有利には、クロム又はクロム合金をベースとして形成され得る。これとは異なり、ＰＶＤ、ＤＬＣをベースとする又は吹き付け加工層としてのコーティングも、当然のことながら可能である。

ブランクには、有利には、０．１０ｍｍ未満の層厚さを有する耐摩耗性の層が被着される。耐摩耗性の層は、円筒加工の経過中、０．０５ｍｍ以下の層厚さに除去される。

本発明の対象について、一実施の形態を図面に示し、以下に説明を加える。

本発明に係るオイルかきピストンリングの原理図である。 図２ａ乃至２ｅは、図１に示した本発明に係るオイルかきピストンリングを形成する方法過程を示す原理図である。

図１は、請求項１に記載のパラメータ内の具体的な数値が割り当てられた一例としての本発明に係るオイルかきピストンリングを示している。

本発明に係るオイルかきピストンリングは、本例では、ねずみ鋳鉄からなる基体１を含んでいる。基体１は、摺動面領域２と、内側の周面３と、上下のフランク４と、内側の周面３の領域に設けられた溝５とを備えている。溝５は、図示しない、特にチューブ状ばねとして形成されたばね要素を収容するために設けられている。

摺動面領域２は、本例では、２つの摺動ランド６，７を有している。本例は、加工を終えた基体１を示しており、基体１は、本例では、摺動ランド６，７の領域に溝８，９を有している。溝８，９は、耐摩耗性の材料、例えばクロム１０，１１で満たされている。個々のパラメータについての第１の請求項１に記載の範囲は、以下の通り再現した：
構造高さ （ａ） １．５ｍｍ
摺動ランド幅 （ｂ） ０．１５ｍｍ
コーティングフリーの区分 （ｃ） ０．０８ｍｍ
溝深さ （ｄ） ０．０１ｍｍ
摺動ランド高さ （ｅ） ０．２５ｍｍ。

摺動面領域２と内側の周面２との間には、本例では、孔として形成される逃し穴１２が延在している。

図２ａ乃至２ｅは、本発明に係る加工工程を示している。

図２ａには、ひとまとまりとした複数のピストンリングブランク１３を示してある。これらのピストンリングブランク１３は、略示のみした円形マンドレル１４に固定されている。第１の工程において、隣り合うピストンリングブランク１３間の分離面１５の正確な位置を求め（↓）、続いて、ひとまとまりとした複数のピストンリングブランクの外周面１６を、分離面１５の領域において半径方向で突出した隆起部１７が形成されるように加工し、外周面１６の残りの周領域を円筒加工する。

図２ｂは、ひとまとまりとした複数のピストンリングブランク１３の外側の周面１６に耐摩耗性のコーティング１８、例えばクロム層を施したことを示している。これとは異なり、ＰＶＤ層、ＣＶＤ層、ＤＬＣ層又は吹き付け加工層も可能である。このとき、コーティング１８は、隆起部１７に準えて形成される。コーティング１８の層厚さは、本例では、０．１０ｍｍである。

図２ｃには、約０．０５ｍｍのコーティングの層厚さを残して、円筒加工によりコーティング１８を隆起部１７とともに削り落としたことが看取可能である。このとき、隆起部１７は、コーティングフリーであり、すなわち、基材まで除去されている。

図２ｄに示す加工工程は、特に図示しない加工工具により、ひとまとまりとした複数のピストンリングブランク１３のコーティングした外側の周面１６内に、２つの摺動ランド２０，２１が形成されるように輪郭１９を付与したことを示している。摺動ランド２０，２１は、今や、図１に示したコーティング１８が施された溝９，１０だけを有している。

図２ｅは、外側の周面１６の領域の加工を終えた基体１を示している。基体１は、それぞれの摺動ランド２０，２１からそれぞれ対応するフランク４への移行領域に、コーティングフリーの鋭利なエッジ２２，２３を有している。残されたコーティング１８から、傾斜して延びるフランク区分２６，２７への移行領域にも、鋭利なエッジ２４，２５が、形成される。

ピストンリングブランク１３の個別化に続いて、後続の作業工程において、図１に示したオイル流出孔／オイル流出スリット１２と、ばね要素を収容する溝５とを、さらに加工する。

Claims (11)

1. 摺動ランド（２０，２１）を有する摺動面領域（２）と、内側の周面（３）と、上下のフランク（４）と、前記摺動ランド（２０，２１）間において前記内側の周面（３）まで延在するオイル流出孔／オイル流出スリット（１２）とを有する基体（１）を備えるオイルかきピストンリングであって、
   ａ）前記基体（１）は、１．２〜２．５ｍｍの構造高さ（ａ）を有し、
   ｂ）それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の幅（ｂ）は、外側の周面の領域で０．１０〜０．３５ｍｍであり、
   ｃ）前記摺動ランド（２０，２１）の外周の領域に環状の溝（８，９）が設けられており、前記溝（８，９）には、耐摩耗性のコーティング（１０，１１，１８）が設けられており、
   ｄ）それぞれの前記溝（８，９）は、前記摺動ランド（２０，２１）の前記上下のフランク（４）の領域に０．０４〜０．２５ｍｍの幅（ｃ）を有するコーティングフリーの区分があるように、それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の領域に前記コーティングフリーの区分まで前記摺動ランド（２０，２１）の幅（ｂ）方向に部分的に延在し、
   ｅ）それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の前記コーティングフリーの区分は、それぞれの前記フランク（４）への導入領域において直角に形成されており、鋭利なエッジ（２２，２３）を有しており、
   ｆ）前記摺動ランド（２０，２１）の領域に設けられた前記溝（８，９）の深さ（ｄ）は、０．００５〜０．１０ｍｍであり、
   ｇ）それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の高さ（ｅ）は、０．１５〜０．７０ｍｍである、
   ことを特徴とするオイルかきピストンリング。
2. ａ）前記基体（１）は、１．２〜２．０ｍｍの構造高さ（ａ）を有し、
   ｂ）それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の幅（ｂ）は、前記外側の周面の領域で０．１０〜０．２５ｍｍであり、
   ｃ）前記摺動ランド（２０，２１）の領域に環状の溝（８，９）が設けられており、前記溝（８，９）には、耐摩耗性のコーティング（１０，１１，１８）が設けられており、
   ｄ）それぞれの前記溝（８，９）は、前記上下のフランク（４）の領域に０．０４〜０．１５ｍｍの幅（ｃ）を有するコーティングフリーの区分があるように、それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の領域に部分的に延在し、
   ｅ）それぞれの前記摺動ランド（２０，２１）の前記コーティングフリーの区分は、それぞれの前記フランク（４）への導入領域において直角に形成されており、鋭利なエッジ（２２，２３）を有しており、
   ｆ）前記摺動ランド（２０，２１）の領域に設けられた前記溝（８，９）の深さ（ｄ）は、０．００５〜０．０６ｍｍであり、
   ｇ）前記それぞれの摺動ランド（２０，２１）の高さ（ｅ）は、０．１５〜０．５０ｍｍである、
   ことを特徴とする、請求項１に記載のオイルかきピストンリング。
3. 前記基体（１）は、鋳鉄又は鋼からなることを特徴とする、請求項１又は２に記載のオイルかきピストンリング。
4. 前記耐摩耗性のコーティング（１０，１１，１８）は、クロムベースに形成されていることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項に記載のオイルかきピストンリング。
5. 前記耐摩耗性のコーティング（１０，１１，１８）は、ＰＶＤ層、ＤＬＣ層又は吹き付け加工層であることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項に記載のオイルかきピストンリング。
6. 前記摺動ランド（２０，２１）間に設けられた前記オイル流出孔／オイル流出スリット（１２）は、０．４〜１．０ｍｍの直径／幅を有することを特徴とする、請求項１から５までのいずれか１項に記載のオイルかきピストンリング。
7. 前記耐摩耗性のコーティング（１８）の、オイル流出孔側に設けられたフランク区分（２６，２７）への移行領域は、鋭利なエッジを有して形成されていることを特徴とする、請求項１から６までのいずれか１項に記載のオイルかきピストンリング。
8. 多数のピストンリングブランク（１３）を１つの円形マンドレル（１４）に固定し、
   マンドレル全長にわたる個々の前記ピストンリングブランク（１３）間の分離面（１５）の正確な位置を測定し、
   前記ピストンリングブランク（１３）の外周面（１６）に、隣り合う前記ピストンリングブランク（１３）の移行領域において隆起部（１７）が生じるように輪郭を付与し、
   前記隆起部（１７）外で前記外周面（１６）の円筒加工を行い、
   ひとまとまりとした前記ピストンリングブランク（１３）の少なくとも前記外周面（１６）に耐摩耗性のコーティング（１８）を施し、
   このとき、前記隆起部（１７）に準えて前記コーティング（１８）を少なくとも部分的に形成し、
   コーティングした前記ピストンリングブランク（１３）の前記外周面（１６）を円筒加工にかけ、
   このとき、前記耐摩耗性の層（１８）を、個々の前記ピストンリングブランク（１３）間の前記移行領域に前記耐摩耗性の層（１８）がもはや存在しなくなるように除去し、
   オイルためを形成すべく前記ピストンリングブランク（１３）の所望の外側輪郭を形成し、このとき、コーティングした前記ピストンリングブランク（１３）の前記外周面（１６）に２つの摺動ランド（２０，２１）が形成されるように輪郭（１９）を付与して、残されたコーティング（１８）に前記オイルために向かって鋭利なエッジ（２４，２５）を形成し、
   前記ピストンリングブランク（１３）を続いて個別化し、前記ピストンリングブランク（１３）の後続の加工に供する、
   ことにより、オイルかきピストンリングを製造する方法。
9. 前記耐摩耗性のコーティング（１８）をクロムベースに形成することを特徴とする、請求項８に記載の方法。
10. 前記コーティングの進行中、０．１０ｍｍ未満の層厚さを形成し、前記円筒加工の進行中、０．０５ｍｍ以下の厚さに除去することを特徴とする、請求項８又は９に記載の方法。
11. 前記ピストンリングブランク（１３）を後続の加工のために個別化するまでの前記すべての加工工程を同じ前記円形マンドレル（１４）上において実施することを特徴とする、請求項８から１０までのいずれか１項に記載の方法。

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