JP6555683B2 - 標的dnaに変異が導入された植物細胞、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、標的DNAに変異が導入された植物細胞、該植物細胞を含む植物体、並びに該植物体の子孫、クローン及び繁殖材料に関する。また、本発明は、前記植物細胞の製造方法、その製造方法に用いるためのDNA構築物、並びにそのDNA構築物を含むキットに関する。
ジーンターゲッティング(GT)は、DNAの塩基配列の相同性を利用した組換えによりゲノム上の標的DNAを任意に改変する技術であり、植物の分野においても、基礎研究と育種素材の開発とにおいて非常に有望な技術である。
しかしながら、高等植物における相同組換えの頻度は低く、GTを介して標的DNAを改変すべく、標的DNAに相同な配列上に任意の変異を持つベクター(GTベクター)を細胞外から導入した際には、その殆どはゲノム中にランダムに挿入されてしまう。そこで、GTに成功した細胞を効率よく選抜するためにポジティブ・ネガティブ選抜法が開発されている。この方法は、GTベクターがゲノムにランダムに組み込まれた細胞をネガティブ選抜マーカー遺伝子の発現で排除し、GTによって標的DNAに変異が導入された細胞をポジティブ選抜マーカー遺伝子の発現によって単離する選抜法である。
しかしながら、この方法を用いた場合、ポジティブ選抜マーカー遺伝子の発現カセットが標的DNAに残ってしまうため、標的DNAに必要な変異のみを導入したい場合はこのカセットを除去する必要がある。この点に関し、これまでに、部位特異的組換え酵素を用いてGT後にポジティブ選抜マーカー遺伝子を除去する系が報告されている。しかしながら、この系を用いるとマーカー除去後に部位特異的組換え酵素の認識配列が残ってしまう。短い塩基配列の挿入も周辺の遺伝子の発現に影響を及ぼすことも報告されているため、自然突然変異と同等な変異の導入系を構築するに際し、GT後に足跡が残らないマーカー除去を行える技術の開発が待ち望まれていた。
このような技術に関し、哺乳動物細胞においては、転移後に足跡を残さない特殊なトランスポゾンであるpiggyBacトランスポゾン(以下、「piggyBac」とも称する)を利用することにより、標的DNAに必要な変異のみを導入できたことが報告されている(非特許文献1)。すなわち、マウス及びヒト由来の培養細胞においては、GTによる標的DNAの改変後にpiggyBacトランスポゼース(以下、「トランスポゼース」とも称する)を一過的に発現させることにより、ポジティブ選抜マーカー遺伝子を標的DNAより除去できることが明らかになっている。
しかしながら、かかる哺乳動物細胞における変異導入系において、piggyBac及びポジティブ選抜マーカー遺伝子の除去効率は低いため、これらが除去された細胞を得るためにネガティブ選抜を行う必要があった。さらに、このようにして選抜された細胞において、標的DNAとは異なるゲノム領域へのpiggyBacの再挿入が、68〜79%という高い頻度で生じていた。また、piggyBacは昆虫由来のトランスポゾンであるため、植物細胞においても哺乳動物細胞同様に転移が生じるかは明らかになっていなかった。
そこで、本発明者らは、植物細胞においてもpiggyBacの転移を利用して不要な配列を除去できるかどうかについて検証すべく、piggyBac内にレポーター遺伝子を組み込んだベクターを、植物細胞のゲノムDNA内にランダムに挿入した系を構築した。そして、この系においてトランスポゼースを恒常的に発現させた結果、挿入されたレポーター遺伝子をpiggyBacごと痕跡を残すことなく除去できることを明らかにしている(非特許文献2〜5)。
しかしながら、この系において、植物細胞のゲノムDNA内にランダムに挿入されているpiggyBacの除去効率は約72%ではあるものの、除去されたpiggyBacがゲノムDNAに再度挿入する率は41%と高かった。したがって、この系を利用して、植物細胞の標的DNAに必要な変異のみを導入する際には、標的DNA以外の領域にpiggyBacが再挿入されている細胞を除外するための、さらなる操作が必要となる。
遊佐 宏介ら、「人工多能性幹細胞における、α1アンチトリプシン欠損症の標的遺伝子修復(Targeted gene correction of α1−antitrypsin deficiency in induced pluripotent stem cells)」、Nature、2012年4月20日、478巻、7369号、391〜394ページ 横井−西澤 彩子、土岐 精一、「植物におけるトランスポゾンを用いた足跡を残さないマーカー遺伝子除去系の開発」、第54回日本植物生理学会年会要旨集、2013年3月14日 横井−西澤 彩子、土岐 精一、「2027 イネにおける高精度なゲノム工学(Precision genome engineering in rice)」、キーストンシンポジウム要旨集、2013年3月17日 横井 彩子、土岐 精一、「植物におけるトランスポゾンを用いた足跡を残さないマーカー遺伝子除去系の開発」、育種学研究、2013年3月27日、15巻、172ページ 雑賀 啓明、土岐 精一、「植物における新ゲノム改変技術の開発と応用」、バイオサイエンスとインダストリー、2013年5月、71巻、3号、275〜278ページ
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、植物細胞において、標的DNAのみならず、該DNA以外の領域にも、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく、標的DNAに必要な変異のみを導入することを可能とする方法等を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、植物細胞において、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく、必要な変異のみを標的DNAに導入することを可能とするため、図1に示す系を構想した。
すなわち先ず、図1の第1工程に示すように、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacが挿入され、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物を、植物細胞に導入することによって、相同組換えを生じさせる。
そして、前記マーカー遺伝子の発現を指標としたスクリーニングを行うことにより、前記変異及び前記piggyBacが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を選抜する。
さらに、図1の第2工程に示すように、このようにして選抜された細胞に、トランスポゼースを恒常的に発現させることにより、前記相同組換えにより挿入されたマーカー遺伝子を、標的DNAからpiggyBacごと除去する。この構想によれば、標的DNAに所望の変異のみを有する変異植物体を作製することが可能となる。
そこで、図1に示す系を実際に構築し、その有効性を検証した。その結果、植物細胞において、相同組換えによりゲノムDNA内に挿入された不要な配列(マーカー遺伝子)をpiggyBacの利用により痕跡残すことなく除去できることが初めて明らかになった。しかも、その効率は90%以上であり、哺乳動物におけるそれや植物細胞においてランダムにゲノムDNA内に挿入されたpiggyBacを除去する効率(非特許文献1〜5 参照)と比して、顕著に高いものであった。さらに、これら文献において開示されている従前の系においては、piggyBacトランスポゼースにより切り出されたpiggyBacがゲノムDNAに再挿入される率は、哺乳動物の系においては約70%、従前の植物の系においては約40%と高いのに対して、驚くべきことに、図1に示す系におけるそれは1%と極めて低いものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、標的DNAのみならず、該DNA以外の領域においても、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく、必要な変異のみが標的DNAに導入された植物細胞の製造方法、該方法により製造された植物細胞、並びに該製造方法に用いるためのキット等に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 下記工程(i)〜(iii)を含む、標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法
(i)標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物を、植物細胞に導入する工程、
(ii)前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を、前記マーカー遺伝子の発現を指標として選択する工程、
(iii)工程(ii)にて選択された細胞に、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させ、前記piggyBacトランスポゾンを前記標的DNAより除去する工程。
(2) 標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物が導入されることにより、前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞。
(3) (1)に記載の方法により製造された、標的DNAに変異が導入された植物細胞。
(4) (2)又は(3)に記載の細胞を含む植物体。
(5) (4)に記載の植物体の子孫又はクローンである植物体。
(6) (4)又は(5)に記載の植物体の繁殖材料。
(7) 標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物。
(8) (1)に記載の方法に用いるための、下記(a)及び(b)を含むキット
(a)(7)に記載のDNA構築物
(b)piggyBacトランスポゼースを植物細胞内で恒常的に発現させるためのDNA構築物。
本発明によれば、植物細胞において、相同組換えによりゲノムDNA内に挿入された不要な配列を、piggyBacトランスポゾンごと痕跡残すことなく除去できる。しかも、その効率は90%以上と顕著に高く、さらにpiggyBacトランスポゼースにより切り出されたpiggyBacトランスポゾンがゲノムDNAに再挿入される率は1%と極めて低い。したがって、本発明によれば、植物細胞において、標的DNAのみならず、該DNA以外の領域にも、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく、必要な変異のみを標的DNAに導入することが可能となる。
本発明の、標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法を示す概略図である。図中、GTベクター上の双方向の矢印はマーカー遺伝子(ポジティブ選抜マーカー遺伝子)を示し、GTベクター上の対になっている矢印はネガティブ選抜マーカー遺伝子を示す。星印は、標的DNAに導入される所望の変異部位を示す。PBaseと付された矢印は、piggyBacトランスポゼースをコードするDNAを示す。また、PBaseと付された矢印の両側と、GTベクター上の対になっている矢印の両側とに付されている黒い棒は、GTベクター及びpiggyBacトランスポゼースをコードするDNAを植物細胞にアグロバクテリウムを介して導入する際に利用される、右側境界配列(RB)及び左側境界配列(LB)を示す。 イネ由来のALS遺伝子(OsALS)を標的とし、本発明の標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法の有効性を検証するためのスキームを示す概略図である。 イネ由来のALS遺伝子座と、GTベクターと、該ベクターとの相同組換え及びその後のpiggyBacトランスポゾンの除去により所望の点変異2点のみ(W548L及びS627I)が導入されたALS遺伝子座とを各々、制限酵素MfeIを用いたCAPS(切断増幅多型配列)法により分析した際に、検出されることが予想される断片及びその長さを示す、概略図である。 イネ由来のALS遺伝子座と、GTベクターと、該ベクターとの相同組換え及びその後のpiggyBacトランスポゾンの除去により所望の点変異2点のみ(W548L及びS627I)が導入されたALS遺伝子座とを各々、制限酵素MfeIを用いたサザンブロット法により分析した際に、検出されることが予想される断片及びその長さを示す、概略図である。また、サザンブロット分析に用いたプローブ(probe)1〜3がアニールする各DNA上の位置も付記する。 野生型イネ(図中「Wt」)、GTベクターを導入したイネ(GT系統A、図中「GT line A」、及びさらにpiggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させたGT系統A(GT系統A_hy:6及び10の各2個体、図中「GT line A_hy 6 1」、「GT line A_hy 6 2」、「GT line A_hy 10 1」、「GT line A_hy 10 2」)から抽出したゲノムDNAを、図4に示すプローブ1を用いたサザンブロット法により分析した結果を示す写真である。また、図中「M」はサイズマーカーを示す。なお、図中の表記は、以下の図6及び7において同じである。 野生型イネ、GT系統A、並びにGT系統A_hy:6及び10の各2個体から抽出したゲノムDNAを、図4に示すプローブ3を用いたサザンブロット法により分析した結果を示す写真である。 野生型イネ、GT系統A、並びにGT系統A_hy:6及び10の各2個体から抽出したゲノムDNAを、マーカー遺伝子hptに特異的なプローブを用いたサザンブロット法により分析した結果を示す写真である。 イネ由来のcleistogamy 1遺伝子(Oscly1)中のmiRNA結合部位(標的サイト)を標的とし、本発明の標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法の有効性を確認するためのスキームを示す概略図である。すなわち、Oscly1遺伝子座(図中、一番上)と、GTベクター(図中、上から2番目)と、該ベクターとの相同組換え(図中、上から3番目)及びその後のpiggyBacトランスポゾンの除去により所望の変異が導入されたOscly1遺伝子座(図中、上から4番目)とを各々、制限酵素EcoRVによって処理し、サザンブロット法により分析した際に、検出されることが予想される断片及びその長さを示す、概略図である。また、サザンブロット分析に用いたプローブ(probe)1〜3がアニールする各DNA上の位置も付記する。 野生型イネ(図中「wt」)、GTベクターを導入したイネ(図中、「cly1 GT−1」及び「cly1 GT−2」)、並びにさらにpiggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させたイネ(図中、「cly1 GT−1_hy 29−1」、「cly1 GT−1_hy 29−2」、「cly1 GT−1_hy 38−1」、「cly1 GT−1_hy 38−2」、「cly1 GT−2_hy 36−1」及び「cly1 GT−2_hy 36−2」)から抽出したゲノムDNAを、図8に示すプローブ1〜3各々を用いたサザンブロット法により分析した結果を示す写真である。また、図中の左端のレーンはサイズマーカーを示す。
<植物細胞の製造方法>
本発明の植物細胞の製造方法は、下記工程(i)〜(iii)を含む、標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法である
(i)標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物を、植物細胞に導入する工程、
(ii)前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を、前記マーカー遺伝子の発現を指標として選択する工程、
(iii)工程(ii)にて選択された細胞に、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させ、前記piggyBacトランスポゾンを前記標的DNAより除去する工程。
そして、かかる方法によって、後述の実施例において示す通り、植物細胞において、標的DNAに、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく必要な変異のみを導入することを可能となる。
工程(i)において、標的DNAに変異を導入するために植物細胞に導入される「DNA構築物」は、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物である。
本発明において「標的DNA」とは、変異導入の対象となるゲノム上のDNAを意味する。標的DNAは、植物細胞のゲノムDNAから任意に選択することができ、またタンパク質をコードするDNAであってもよく、機能性RNA等のノンコーディングRNAをコードするDNAであってもよい。さらに、標的DNAには、タンパク質やノンコーディングRNAをコードしていない領域(UTR等)のみならず、タンパク質をコードする転写産物やノンコーディングRNAの発現を調節する領域も含まれる。また、標的DNAは、通常内因性のものであるが、植物細胞のゲノムDNAに外来的に挿入されているDNAであってもよい。
標的DNAに導入される「変異」としては、特に制限はなく、ナンセンス変異、フレームシフト変異、挿入変異又はスプライス部位変異等のヌル変異であってもよく、サイレント変異であってもよい。また、標的DNAにおける変異としては、例えば、該DNAにおける、1又は複数のヌクレオチドの欠失、置換、付加及び/又は挿入が挙げられる。さらに、標的DNAにおける変異の個数としても、特に制限はなく、1個でもよく、また複数個でもよい。
「標的DNAと相同なDNA」とは、前述のゲノム上の標的DNAと相同性を有するDNAを意味し、本発明のDNA構築物においては、後述のpiggyBacトランスポゾンの両端に付加されている。
また、標的DNAと相同なDNAのヌクレオチド数としては、該相同DNAと標的DNAとの間で相同組換えが生じ得る数であればよく、通常、piggyBacトランスポゾンの両側には各々、500〜7000ヌクレオチド(好ましくは1000〜5000ヌクレオチド、より好ましくは2000〜4000ヌクレオチド、さらに好ましくは約3000ヌクレオチド(例えば、2500〜3500ヌクレオチド))からなる標的DNAと相同なDNAが付加される。
本発明において、「piggyBacトランスポゾン」は、鱗翅目(Lepidopteran)のイラクサギンウワバ(Trichopulsia ni)という蛾に由来し、後述のpiggyBacトランスポゼースによりゲノムDNAから切り出されるDNAのことである。すなわち、該トランスポゼースが特異的に認識するpiggyBac逆向き反復転移因子(IVR)を両端に配置するDNAのことである。IVRとしては、その一方又は他方が、例えば、配列番号:1(ccctagaaagata)、配列番号:2(ccctagaaagatagtctgcgtaaaattgacgcatg)、配列番号:3(ccctagaaagataatcatattgtgacgtacgttaaagataatcatgcgtaaaattgacgcatg)、配列番号:4(catgcgtcaattttacgcatgattatctttaacgtacgtcacaatatgattatctttctaggg)又は配列番号:5(catgcgtcaattttacgcagactatctttctaggg)に記載のヌクレオチド配列を含むDNAが挙げられる。また、前記トランスポゼースが特異的に認識され得る限り、該ヌクレオチド配列と高い相同性を示す配列からなるDNAも、IVRとして本発明において利用することができる。
また、IVR間の距離としては、相同組換えが生じ、さらにpiggyBacトランスポゼースにより切り出され得るヌクレオチド数であればよく、後述の挿入されるマーカー遺伝子等のヌクレオチド数にも依るものでもあるが、通常1〜10000ヌクレオチド以内である。
また、本発明の「piggyBacトランスポゾン」には、相同組換えによって標的DNAが導入された植物細胞を、その発現を指標として選択するためのマーカー遺伝子が含まれている。すなわち、該マーカー遺伝子の両端には前記IVRが付加されている。
piggyBacトランスポゾンに含まれる「マーカー遺伝子」は、その発現が標的DNAが導入された少数の形質転換細胞を大多数の非形質転換細胞の中から効率良く選択するための指標となるものであればよく、例えば、導入された細胞の増殖に必須なタンパク質又は該増殖を促進するタンパク質をコードする遺伝子(いわゆる、薬剤耐性遺伝子等のポジティブ選抜マーカー遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、CFP遺伝子、YFP遺伝子、DsRed遺伝子等のレポーター遺伝子が挙げられるが、マーカー遺伝子の発現を検出するために煩雑な操作(例えば、FACSによるスクリーニング)を必要としないという観点から、薬剤耐性遺伝子が好ましい。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ハイグロマイシン耐性遺伝子(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、hpt)、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、ALS(AHAS)遺伝子やPPO遺伝子等の除草剤耐性遺伝子が挙げられるが、これらの中では、イネカルスを用いた形質転換においては、その選抜効率が高いという観点から、ハイグロマイシン耐性遺伝子が好ましい。
また、本発明のDNA構築物においては、前記マーカー遺伝子に、導入された植物細胞において該遺伝子がコードするタンパク質を発現させるための制御領域が作動可能に連結されている。
該タンパク質を恒常的に発現させる場合には、制御領域として、例えば、カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター、トウモロコシ由来のポリユビキチン1プロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、イネ由来の伸長因子1αプロモーター等のプロモーターと、該プロモーター等により誘導された遺伝子の転写を終結するためのターミネーター配列(イネ由来の熱ショックタンパク質17.3ターミネーター、イネ由来の熱ショックタンパク質16.9aターミネーター、イネ由来のアクチンターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35Sターミネーター等)が挙げられる。さらに、遺伝子の発現効率を高めるために、CaMV 35Sエンハンサー、転写エンハンサーE12、オメガ配列等のエンハンサー等のエンハンサーも、前記制御領域には含まれていてもよい。
また、タンパク質を誘導的に発現させる場合には、例えば、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーター、タバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、イネlip19遺伝子のプロモーター、イネhsp80遺伝子及びhsp72遺伝子のプロモーター、シロイヌナズナのrab16遺伝子プロモーター、パセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、トウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター、テトラサイクリン、エストラジオール、デキサメタゾン等の薬剤に応答して発現を誘導するプロモーター等の、刺激に応答して発現を誘導するプロモーターが好適に用いられる。
また、前記マーカー遺伝子の他、本発明のpiggyBacトランスポゾンにおいては、前記IVRの間に配置されている限り、他のDNAが挿入されていてもよい。かかる他のDNAとしては特に制限はないが、例えば、piggyBacトランスポゾンが挿入された標的DNAがコードするタンパク質等を不活性化するという観点から、ターミネーターが挙げられる。また、前記DNA構築物を導入した後に、標的DNAからpiggyBacを除去させるためにpiggyBacトランスポゼースを発現させるベクターを再度導入する工程を省略できるという観点から、piggyBacトランスポゼースを誘導的に発現させることが可能なDNA構築物(発現カセット)が挙げられる。
本発明の「DNA構築物」において、標的DNAと相同なDNAの両端に、導入された細胞の増殖を阻害するタンパク質又は該増殖を抑制するタンパク質をコードする遺伝子(いわゆる、ネガティブ選抜マーカー遺伝子)が付加されていてもよい(図1の「GTベクター」参照)。
「ネガティブ選抜マーカー遺伝子」としては、例えば、ジフテリア毒素(DT−A)遺伝子、codA遺伝子、エクソトキシンA遺伝子、リシントキシンA遺伝子、シトクロムP−450遺伝子、RNase T1遺伝子、バルナーゼ遺伝子が挙げられるが、これらの中では、イネカルス等に関しては、高いネガティブ選抜効率と、細胞間移行能がないために周囲の細胞に悪影響を及ぼさないという観点から、DT−A遺伝子が好ましい。また、ネガティブ選抜マーカー遺伝子には、前述のマーカー遺伝子同様、本発明のDNA構築物においては、導入された植物細胞において該遺伝子がコードするタンパク質を発現させるための制御領域が作動可能に連結されている。
そして、このようなネガティブ選抜マーカー遺伝子を含むDNA構築物を植物細胞に導入した際に、DNA構築物の一部(標的DNAと相同なDNA)が相同組換えにより標的DNAに組み込まれれば、ネガティブ選抜マーカー遺伝子は該相同DNAの外側にあるため、該細胞のゲノムDNAに挿入されることはない。そのため、植物細胞は該遺伝子の影響を受けることなく増殖することができる。一方、DNA構築物が植物細胞のゲノムDNAにランダムに挿入された際には、ネガティブ選抜マーカー遺伝子も挿入されうるため、ランダム挿入が生じた植物細胞の増殖は抑制又は阻害されうる。したがって、ネガティブ選抜マーカー遺伝子を含むDNA構築物を植物細胞に導入することにより、ランダム挿入は生じず、相同組換えにより、標的DNAに変異が導入された植物細胞を効率よく選択することができる。
以上、本発明の「DNA構築物」について説明したが、本発明の製造方法の工程(i)において、かかるDNA構築物を植物細胞に導入する方法としては特に制限はなく、アグロバクテリウムを介する方法、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、パーティクルガン法等、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
次に、本発明の製造方法の工程(ii)においては、前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を、前記マーカー遺伝子の発現を指標として選択する。
かかる「選択」は、当業者であれば用いるマーカー遺伝子の種類に合わせて適宜公知の手法により選択して行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子を用いた場合には、工程(i)において本発明のDNA構築物を導入した植物細胞を、対応する薬剤存在下にて培養することにより、標的DNAに変異等が導入された植物細胞を選択することができる。GFP遺伝子等のレポーター遺伝子を用いた場合には、工程(i)において本発明のDNA構築物を導入した植物細胞をFACS等にかけることにより、標的DNAに変異等が導入された植物細胞を選択することができる。
また、該工程においては、前記マーカー遺伝子の発現を指標として選択する他、前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入されたことを、後述の実施例において示す通り、PCR法、シークエンシング法、サザンブロット法、CAPS(切断増幅多型配列)法等により確認してもよい。
次に、本発明の製造方法の工程(iii)においては、前述の工程(ii)にて選択された細胞に、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させ、前記piggyBacトランスポゾンを前記標的DNAより除去する。
本発明における「piggyBacトランスポゼース」は、植物細胞において、前述のpiggyBacトランスポゾンをゲノムDNAより除去する活性を有するものであればよく、例えば、イラクサギンウワバに由来する野生型piggyBacトランスポゼース(典型的には、Genbankアクセション番号:AAA87375で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質)が挙げられる。
また、piggyBacトランスポゼースのアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。また、人為的に変異を導入することもできる。したがって、このような変異体も、前記除去する活性を有する限り、本発明に含まれる。piggyBacトランスポゼースの変異体としては、Genbankアクセション番号:AAA87375で特定されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。ここで「複数」とは、通常、120アミノ酸以内、100アミノ酸以内、80アミノ酸以内、60アミノ酸以内、40アミノ酸以内、20アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは数個のアミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。
このような変異体としては、例えば、Genbankアクセション番号:AFN89785、ABS12112、ABC88680、ABC88678、ABC88677、ABC88675、ABC88671又はAAE68098にて特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
また、「Yusa K.ら、Proc Natl Acad Sci USA.、2011年1月、108巻、4号、1531〜1536ページ」の記載によれば、Genbankアクセション番号:AAA87375で特定されるアミノ酸配列において、G2C、Q40R、I30V、G165S、T43A、S61R、S103P、S103T、M194V、R281G、M282V、G316E、I426V、Q497L、N505D、Q573L、S509G、N571S(又はN570S)、N538K、Q591P、Q591R及びF594Lから選択される少なくとも1のアミノ酸置換が導入されているアミノ酸配列からなるタンパク質は、piggyBacトランスポゾンをゲノムDNAより除去する活性が野生型のそれよりも向上されていることが明らかになっている。
したがって、本発明においても、これら少なくとも1のアミノ酸置換が導入されているアミノ酸配列からなるタンパク質が好適に用いられ、I30V、S103P、G165S、M282V、S509G、N571S(又はN570S)及びN538Kが導入されているアミノ酸配列からなるタンパク質(後述の実施例において示される、hyPBase、配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)が、より好適に用いられる。
また、本発明において「piggyBacトランスポゼース」には、機能性タンパク質が付加していてもよい。機能性タンパク質は、piggyBacトランスポゼースのN末側、C末側のどちらか一方若しくは両側に、直接的に又は間接的に付加させることができる。機能性タンパク質としては特に制限はなく、piggyBacトランスポゼースに付与したい機能に応じて適宜選択される。例えば、該タンパク質の検出等をし易くするという観点から、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼタンパク質、FLAG−タグタンパク質(登録商標、Sigma−Aldrich社)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タンパク質が挙げられる。また、piggyBacトランスポゼースを安定的に核内において機能させるという観点から、核内移行シグナルが付加されていてもよい。
工程(iii)において、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させる方法としては、特に制限はないが、例えば、該トランスポゼースをコードする遺伝子を含み、該遺伝子を恒常的に発現させるための制御領域を備えたDNA構築物を、工程(ii)にて選択された細胞に導入する方法が挙げられる。さらに、導入された該DNA構築物は、恒常かつ安定的にpiggyBacトランスポゼースを発現させるという観点から、植物細胞のゲノムDNAに挿入されていることが好ましい。
piggyBacトランスポゼースを「恒常的に発現させるための制御領域」としては、上述の「本発明のDNA構築物」の説明の際に列挙した「恒常的に発現させる場合の制御領域」を用いることができるが、それらの中でも、プロモーターに関しては、あらゆる組織で発現量が高く、特にカルスのような分裂細胞において発現量が高いという観点から、トウモロコシ由来のポリユビキチン1プロモーターが好ましい。
また、工程(iii)において、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させる別の態様としては、例えば、該トランスポゼースをコードする遺伝子を含み、該遺伝子を誘導的に発現させるための制御領域を備えたDNA構築物を、導入した植物細胞を発現誘導の条件である刺激の存在下にて培養する方法が挙げられる。
piggyBacトランスポゼースを誘導的に発現させるための当該DNA構築物を、植物細胞に導入する時期としては、工程(i)において、標的DNAと相同なDNAを含む前述のDNA構築物の導入と同時であってもよく、それよりも前であってもよい。さらには、工程(ii)において、前記マーカー遺伝子の発現を指標とする選択の前であってもよく、その選択の後であってもよい。
また、piggyBacトランスポゼースを「誘導的に発現させるための制御領域」としては、上述の「本発明のDNA構築物」の説明の際に列挙した「誘導的に発現させる場合の制御領域」を用いることができる。
さらに、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させるためのDNA構築物(piggyBacトランスポゼースを誘導的に発現させるための前記DNA構築物も含まれる、以下同じ)には、該DNA構築物が導入された植物細胞を効率よく選択できるという観点から、前述のレポーター遺伝子、薬剤耐性遺伝子等が含まれていてもよい。
さらに、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させるためのDNA構築物を植物細胞に導入する方法としては特に制限はなく、アグロバクテリウムを介する方法、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法、パーティクルガン法等、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
そして、このようにして、工程(ii)にて選択された細胞にpiggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させることにより、後述の実施例において示す通り、piggyBacトランスポゾンごとマーカー遺伝子を除去することにより、標的DNAに所望の変異のみが導入されている植物細胞を、極めて高い頻度(92〜99%)にて得ることができる。さらに、このようにして除去されたpiggyBacのゲノムDNAの再挿入率は1%と極めて低いため、本発明においては、再挿入が生じている細胞を除外するための工程(ネガティブ選抜等)が不要である。
<植物細胞>
前述の通り、本発明の製造方法によれば、標的DNAに所望の変異のみが導入されている植物細胞を、極めて高い頻度(92〜99%)にて得ることができる。したがって、本発明は、前記製造方法により製造された、標的DNAに変異が導入された植物細胞を提供するものである。
また、後述の実施例において示す通り、相同組換えによりpiggyBacトランスポゾンが標的DNA内に挿入された植物細胞は、本発明において初めて作製されたものであり、前述の通り、標的DNAに所望の変異のみが導入された植物細胞を作製する上で有用である。したがって、本発明は、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入され、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物が導入されることにより、前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞をも提供するものである。
本発明において「植物」とは特に制限はなく、例えば、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ等の単子葉植物や、タバコ、ジャガイモ、ナス、ナタネ等の双子葉植物が挙げられる。また、「植物細胞」には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。さらに、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルス、未熟胚、花粉等が含まれる。
<植物体等>
本発明の植物細胞は、再生させることにより植物体を得ることができる。特に、本発明の製造方法により製造された植物細胞は、標的DNAに所望の変異のみを有しているため、このような植物細胞から再生させた植物体は、当該変異に伴い、表現型が変化しうる。したがって、本発明の方法を利用すれば、植物の育種を効率的に行うことが可能であり、また標的DNAの機能を効率よく分析することが可能となる。
植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、アラビドプシスであればAkamaら(Plant Cell Reports 12: 7−11, 1992)に記載の方法が挙げられ、イネであればDatta(In Gene Transfer To Plants(Potrykus I and Spangenberg Eds.)pp66−74,1995)に記載された方法、Tokiら(Plant Physiol.100:1503−1507,1992)に記載された方法、Christouら(Bio/technology,9:957−962,1991)に記載された方法及びHieiら(Plant J.6:271−282,1994)に記載された方法が挙げられ、オオムギであれば、Tingayら(Plant J.11:1369−1376,1997)に記載された方法、Murrayら(Plant Cell Report 22:397−402,2004)に記載された方法、及びTravallaら(Plant Cell Report 23:780−789,2005)に記載された方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology,7:581,1989)に記載された方法やGorden−Kammら(Plant Cell 2:603,1990)に記載された方法が挙げられ、トマトであればMatsukuraら(J.Exp.Bot.,44:1837−1845,1993)に記載された方法が挙げられ、ダイズであれば、特許公報(米国特許第5,416,011号)に記載された方法が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet,78:594,1989)に記載された方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta,99:12,1971)に記載された方法が挙げられる。ここに挙げた以外の植物についても、例えば、田部井豊編「形質転換プロトコール植物編」((株)化学同人発行)に記載された方法を用いることによって、当業者であれば植物体への再生が可能である。
一旦、このようにして標的DNAに変異が導入された細胞を含む植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。したがって、本発明には、本発明の植物細胞を含む植物体、該植物体の子孫及びクローン、並びに該植物体、その子孫、及びクローンの繁殖材料が含まれる。
また、本発明の製造方法において製造された植物細胞の標的DNAにおいては、所望の変異のみが導入されているが、該細胞においては外来的に導入されたpiggyBacトランスポゼースをコードするDNAが残存することとなる。しかしながら、本発明の製造方法において製造された植物細胞を含む植物体と、野生型のそれとを交配させ、戻し交配を行うことにより、piggyBacトランスポゼースをコードするDNAをも除去することができる。
また、本発明は、本発明の植物細胞、植物体、繁殖材料から製造される加工物をも提供する。本発明における加工物としては特に制限はなく、従来より植物から作られている加工物全般のことであり、例えば、植物体からの抽出液、植物体の乾燥粉末、加工食品が挙げられる。より具体的には、イネであれば米飯及び煎餅等、小麦であればパン及び麺類等、トウモロコシであればコーン油、コーンスターチ及びコーンチップス等、ダイズであれば大豆油、豆腐及び納豆等、ジャガイモであればポテトチップス及びデンプン等、トマトであればケッチャップ等、キャノーラであればキャノーラ油等が挙げられる。
<キット等>
前述の通り、本発明のDNA構築物は、本発明の製造方法において有用であり、その有効性も本発明において初めて示されたものである。したがって、本発明は、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物をも提供するものである。
また、前述の通り、piggyBacトランスポゼースを植物細胞内で恒常的に発現させるためのDNA構築物も本発明の製造方法において有用である。したがって、本発明は、本発明の製造方法に用いるための、下記(a)及び(b)を含むキットをも提供するものである。
(a)標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物
(b)piggyBacトランスポゼースを植物細胞内で恒常的に発現させるためのDNA構築物。
これらDNA構築物については各々、上述の本発明の製造方法における工程(i)及び(iii)についての記載の通りであるが、これらの形態は1本鎖DNAであってもよく、2本鎖DNAであってもよい。また、直鎖状DNAであってもよく、環状DNAであってもよく、前述の植物細胞への導入方法に適した形態に調製し得る。
例えば、アグロバクテリウムを介して植物細胞に導入する場合には、前記DNA構築物の形態として、pBI系、pPZP系又はpSMA系のベクター等が挙げられ、また、より好適な形態として、バイナリーベクター系のベクター(pZHG、pKOD4、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBIG2113等)が挙げられる。
また、電気穿孔法等の他の方法により植物細胞に導入する場合には、前記DNA構築物の形態として、例えば、pUC18、pUC19、pUC9等のpUC系ベクターが挙げられる。さらに、CaMV、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターの形態も、前記DNA構築物はとり得る。
また、このようなDNA構築物は、後述の実施例において示す通り、PCR法、制限酵素処理、クローニング法等の公知の遺伝子組み換え技術を利用して当業者であれば適宜調製することができる、また、市販の自動化DNA配列合成装置等を用いて化学的に合成することもできる。
さらに、(a)に記載のDNA構築物の作製において、当業者であれば部位特異的変異誘発法(例えば、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci USA.82,488−492に記載の方法)等により、標的DNAと相同なDNAに、所望の変異を導入することができる。
また、前述の通り、piggyBacトランスポゼースは蛾に由来するタンパク質である。そのため、piggyBacトランスポゼースを植物細胞内に高発現させるという観点から、(b)に記載のDNA構築物には、該DNA構築物を導入する植物のコドン使用頻度に最適化したpiggyBacトランスポゼースをコードするDNAが挿入されていてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本発明者らは従前、2つのアミノ酸変換を生じさせる2つの点変異を、ジーンターゲティング(GT)を介して、アセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子座に導入することによって、除草剤ビスピリバックナトリウム(BS)耐性イネの植物体を創出することに成功している(Endo M.ら、The Plant Journal、2007年、52巻、157〜166ページ 参照)。
なお、ALS遺伝子における2つの点変異とは、548番目のトリプトファンをコードするTGGを、ロイシンをコードするTTGに変化させる変異(W548L)と、627番目のセリンをコードするAGTを、イソロイシンをコードするATTに変化させる変異(S627I)とのことである。また、これら点変異を導入するためのGTは滅多に生じないものの、BS含有培地にて培養することにより、GTが生じた細胞を容易に選択することができた。
しかしながら、このような選抜は、大概の標的DNAへの変異導入においては行うことはできない。そこで、標的DNAに所望の変異のみを有する変異植物体を作製するための、普遍的な戦略を確立するため、図1に示すような系を構想した。
すなわち先ず、図1の第1工程に示すように、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子(ポジティブ選択マーカー遺伝子)を含むpiggyBacが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物を、植物細胞に導入することによって、相同組換えを生じさせる。
なお、この際、前記相同DNAの外側にネガティブ選択マーカー遺伝子を配することにより、前記DNA構築物が、標的DNA以外の領域にランダムに挿入された細胞は排除されることとなる。
また、前記ポジティブ選択マーカー遺伝子の発現を指標としたスクリーニングを行うことにより、前記変異及び前記piggyBacが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を選抜する。
そして、図1の第2工程に示すように、このようにして選抜された細胞に、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させることにより、前記相同組換えにより挿入されたポジティブ選択マーカー遺伝子を、標的DNAからpiggyBacごと除去することができれば、標的DNAに所望の変異のみを有する変異植物体を作製することが可能となる。
そこで、以下に示す方法にて、図1に示す系を構築し、その有効性を検証した。なお、本実施例においては、標的DNA及び該DNAに導入する変異として、前述のイネALS遺伝子、並びに2点の点変異(W548L及びS627I)を選択した。また、ポジティブ選択マーカー遺伝子及びネガティブ選択マーカー遺伝子として、ハイグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ遺伝子(hpt)及びジフテリア毒素遺伝子(DT−A)を各々用いた。
(実施例1)
<GTベクターの構築>
標的DNAに所望の変異のみを有する変異植物体を作製するため、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入され、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物(GTベクター)を以下のようにして構築した。
先ず、前記「Endo M.ら、2007年」に記載のT−DNAを、HpaI及びEcoRIにて処理することにより、前記点変異2点を保持しているALS遺伝子を含む9.4kb長の断片を切り出し、pENTR L1/L2(Life Technologies社製)のSnaBI認識部位及びEcoRI認識部位に組み込んだ。
次に、メガヌクレアーゼI−SecIの認識部位を含む、piggyBac逆向き反復転移因子(IVR)を、前記ALS遺伝子内のHpaI認識部位に導入し、クローニングすることにより、pE(L1−L2)mALSpbを調製した。I−SecIの認識部位を含むIVRについては、Nishizawa−Yokoi A.ら、The Plant Journal、2014年2月、77巻、3号、454〜463ページ(2013年12月9日オンライン公開)参照のこと。また、前記ALS遺伝子内へのHpaI認識部位の導入は、下記プライマーセットを用いたエクスプレッション−PCR(E−PCR)にて行った(Lanar DE.及びKain KC.、PCR Methods Appl.、1994年10月、4巻、2号、S92−96 参照)。
5’−tgctggatgagttaacgaaaggtgagg−3’(配列番号:8)及び
5’−cctcacctttcgttaactcatccagca−3’(配列番号:9)。
次に、イネ由来のアクチンターミネーター、カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hpt)及びイネ由来の熱ショックタンパク質17.3ターミネーターを含有する、4.3kb長断片を、I−SceIにて消化し、pE(L1−L2)mALSに挿入し、pE(L1−L2)mALSpHPTbを調製した。
次に、mALSpHPTbに含まれている11.3kb長断片をゲートウェイLRクロナーゼII反応(登録商標、Life Technologies社製)により、ジフテリア毒素(DT−A)発現カセット2つを含むジーンターゲッティングバイナリーベクターpKOD4に導入して再クローニングし、pKOD4/mALSを調製した。pKOD4は、pZHGに由来するベクターである。pZHGについては、Osakabe K.ら、「イネにおけるジーンターゲッティングのための高効率ネガティブ選抜マーカーとしての、シトシンデアミナーゼ変異遺伝子 codA(D314A)(A Mutated Cytosine Deaminase Gene,codA(D314A),as an Efficient Negative Selection Marker for Gene Targeting in Rice」、Plant&Cell Physiology、2014年1月22日オンライン公開 参照のこと。DT−A発現カセットとしては、「トウモロコシ由来のポリユビキチン1プロモーター+DT−A+イネ由来の熱ショックタンパク質(hsp)16.9aターミネーター」と、「イネ由来の伸長因子1αプロモーター+DT−A+イネ由来のhsp16.9aターミネーター」とを用いた(Terada R.ら、Nat Biotechnol.、2002年、20巻、1030〜1034ページ 参照)。
このようにして構築されたGTベクター pKOD4/mALSは、ネガティブ選択マーカー遺伝子であるDT−A遺伝子を発現させるためのカセットと、ALSコーディング領域とを含む6.4−kb長の断片を保持している。また、前述の通り、該ALSコーディング領域には、W548L及びS627Iにて特定される変異の他、W548Lの301bp上流にHpaI認識部位を導入するためのサイレントな変異(GCTGACからGAATTCへの変更)も導入されている。なお、該サイレントな変異は、イネ由来のアクチンターミネーターと、ポジティブ選択マーカー遺伝子であるhpt遺伝子を発現させるためのカセットを保持するpiggyBacトランスポゾンとを挿入するために、導入されたものである。また、このGTベクターとの相同組換えを生じたALS遺伝子は、hpt遺伝子発現カセットの挿入により分断され、不活化されることとなる。
(実施例2)
次に、前記GTベクターを用い、以下に示す方法にて、標的DNAに所望の変異のみを有する植物体の作製を試みた。
すなわち先ず、前記GTベクター(pKOD4/mALSベクター)を、アグロバクテリウム ツメファシエンス株 EHA105(Hood E.ら、Transgenic Research、1993年、2巻、4号、208〜218ページ 参照)に、電気穿孔法にて導入した。
次に、得られたアグロバクテリウムによるイネカルス(日本晴由来の4週齢のカルス)の形質転換は、「Toki S.ら、The Plant Journal、2006年、47巻、969〜976ページ」に記載の方法に沿って行った。
そして、「Saika H.ら、Plant Physiology、2011年、156巻、1269〜1277ページ」に記載の方法に沿って、イネにGT形質転換を施した。すなわち、前述のpKOD4/mALSを保持するアグロバクテリウムにより形質転換したイネカルスを、カルス誘導用培地上にて4週間培養することにより選択した。なお、該培地として、50mg/L ハイグロマイシン及び25mg/L メロペネム(共に、和光純薬工業株式会社製)を含有し、0.4%ゲルライト(登録商標、和光純薬工業株式会社製)にて固化したN6D培地を用いた。また、その結果、表1に示す通り、3259のカルスから、独立した100のハイグロマシン耐性カルスを選抜することができた。
さらに、ALS遺伝子座にてGTイベントが生じたトランスジェニックカルスを同定するため、得られたハイグロマシン耐性カルスを、以下に示すPCR及びシークエンシング分析によるスクリーニングに供した。
<PCR>
イネカルスの小塊からゲノムDNAを、アジェンコート クロロピュア(BECKMAN COULTER社製)を用い、添付のメーカープロトコールに従って抽出した。そして、抽出したゲノムDNAを鋳型として、KOD FX又はKOD FXネオ(TOYOBO社製)と、以下に示すプライマーセットを用い、PCR増幅を行った(ALS遺伝子座とプライマーのアニーリング位置については、図2参照)。
ALS遺伝子 5’増幅用プライマーセット
ALS GT−F(5’−gacatgacaaccagtcatccgattaggttt−3’(配列番号:10))及びTact−R(5’−ctgacgatgagaatatatctgatgctgtga−3’(配列番号:11))
ALS遺伝子 3’増幅用プライマーセット
Thsp17.3−F(5’−acatacccatccaacaatgttcaatccctt−3’(配列番号:12))及びALS GT−R(5’−tctggagatagcatacttgctttgcttggt−3’(配列番号:13))。
そして、このPCRの結果、表1に示す通り、独立した6のカルスにおいて、ジャンクション断片の上流及び下流を検出することができ、これらカルスにおいて、GTベクターと標的DNAとの間にて相同組換えが生じ、ALS遺伝子座にポジティブ選択マーカー遺伝子が導入されていることが確認された。
<シークエンシング分析>
次に、ALS遺伝子の5’側を増幅して得られた4,302bp長の断片、及び、該遺伝子の3’側を増幅して得られた3,943bp長の断片を、TOPOクローニング法により、pCR−Blunt II−TOPOベクター(Life Technologies社製)に導入してクローニングし、シークエンシング分析に供した。
具体的には、ユニバーサルプライマーM13−R(5’−caggaaacagctatgac−3’(配列番号:14))及びM13−F(5’−gtaaaacgacggccagt−3’(配列番号:15))を用い、ジャンクション配列が予期しているものであるかどうかを確認した。
また、前記3,943bp長の断片に、W548L及びS627Iの変異が存在しているか否か、プライマーALS−R1(5’−acttgggatcataggcagca−3’(配列番号:16))及びALS−R2(5’−ccttagcagtcaggaatagcttg−3’(配列番号:17))を各々用いて、チェックした。
そして、このシークエンシング分析の結果、表1に示す通り、W548L変異の欠如、及び、W548L/S627I変異の欠如が、2つのカルス系統にて各々検出された。
したがって、最終的には、W548L及びS627Iの変異導入が確認された4つのカルス系統(A、B1、B2、B3及びB4)をGT候補カルスとして同定し、それらの中から、2系統(A及びB1)を、以下に示すpiggyBac除去処理に供した。
<piggyBac除去処理>
W548L及びS627Iの変異導入が確認されたカルス(GT候補カルス系統 A及びB1)を、ハイグロマイシン及びメロペナムが添加されていないN6D培地に移し、4週間培養した。
次に、ポジティブ選択マーカー遺伝子(hpt)を含むpiggyBacを標的DNAから除去すべく、pPN/hyPBase発現ベクターを保持するアグロバクテリウムを、GT候補カルスに感染させた。なお、該発現ベクターには、トウモロコシ由来のポリユビキチン1プロモーターによって発現が誘導される高活性型のpiggyBacトランスポゼース(hyPBase、非特許文献1 参照)がコードされている(前記「Nishizawa−Yokoi A.ら、2014年2月 参照のこと)。
そして、形質転換後のカルスを、35mg/L ジェネティシン(ナカライテスク社製)及び25mg/L メロペナムを添加したN6D培地にて培養することにより、hyPBaseを恒常的に発現しているカルス(GT_hyカルス)を、各GT候補カルス系統につき5又は6系統選択した(GT系統A_hy:5、6、10、13及び24、並びにGT系統B1_hy:5、9、11、12、19及び20)。
次に、このようにして得られたGT_hyカルスを、25mg/Lメロペナムを添加した再分化用培地に移した。そして、カルスから生じたシュートを、植物ホルモンを添加していないムラシゲ&スクーグ培地(Murashige T.及びSkoog F.、Physiologia Plantarum、1962年、15巻、3号、473〜497ページ 参照)に移して培養することにより、前記11系統のカルスからT0再分化植物体を、各系統につき20個体ずつ調製した。
(試験例1)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証1>
実施例2にて調製したT0再分化植物体における、piggyBac転移を介したポジティブ選択マーカー遺伝子の除去効率を評価するため、切断増幅多型配列(CAPS)を指標とするマーカー除去分析に供した(前記「Endo M.ら、2007年」参照)。
すなわち先ず、GT系統A_hy及びGT系統B1_hyの葉からゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAを鋳型として、プライムスターGXL DNAポリメラーゼ(TAKARA社製)、並びにプライマーセット(ALS−F1及びALS GT−R)を用い、3,833bp長のpiggyBac除去断片をPCRにて増幅した。そして、このPCR産物をMfeIにより処理してゲル電気泳動に供し、得られる切断断片のパターンを検出した。また、piggyBacの再挿入頻度を分析するため、ゲノムDNAを鋳型として、プライムスターGXL DNAポリメラーゼ(TAKARA社製)、並びにマーカー遺伝子を特異的に検出するためのプライマーセット HPT−F(5’−caaagatcgttatgtttatcggcactttg−3’(配列番号:18))及びHPT−R(5’−ctcgagctatttctttgccctc−3’(配列番号:19))を用い、PCR分析を行った。得られた結果を、GT系統A_hyについては表2に示し、GT系統B1_hyについては表3に示す。
なお、ALS−F1(5’−gtacgcaaattatgccgtgga−3’(配列番号:20))は、piggyBacの挿入部位より359bp上流にアニーリングするプライマーである。ALS GT−Rは、内在性のALS遺伝子座(piggyBac挿入部位より3,478bp下流)に特異的なプライマーである(ALS遺伝子座とプライマーのアニーリング位置については、図3参照)。また、これらプライマーによって、マーカー遺伝子が含まれている8,726bp長の断片を増幅することはできない(図3参照)。
また、ALS遺伝子座における、W548L及びS627Iの2つの点変異は、制限酵素MfeIの認識部位(CAATTG)を生じさせるため、該制限酵素による切断の有無を指標として、簡便にGTの有無を検出することができる。
さらに、標的のALS遺伝子座からpiggyBacがhyPBaseの発現により除去された場合には、プライマーセットALS F1及びALS GT−Rを用いたPCR増幅と、その後のMfeI処理にて、2938bp、657bp及び238bp長の断片が検出されることとなる(図3参照)。
また、ALS遺伝子座においてヘテロ接合性を示すT0再分化植物体においては、前記3断片に加えて、MfeIによって切断されることのない3833bp長の断片も検出されることとなる(図3参照)。一方、hyPBaseが発現している植物個体において、標的のALS遺伝子座にpiggyBacが残存している場合には、前記PCRの条件では増幅することのできない、マーカー遺伝子の配列を含む8,726bpの断片が検出されることが予想される(図3参照)。
前記CAPSを指標とするマーカー除去分析を行った結果、図には示さないが、検出されたMfeIの切断断片のパターンから、GT系統A_hy及びGT系統B1_hyのいずれのALS遺伝子座においても、W548L及びS627I変異の導入が認められ、さらにマーカー遺伝子を含むpiggyBacが除去されていることが明らかになった。
また、表2及び3に示す通り、再分化植物体の90%以上において、hyPBaseの発現により標的のALS遺伝子座から効率良くpiggyBacが除去されたことを示す、MfeIの切断断片が検出された(平均して、GT系統A_hyにおいては100%、GT系統B1_hyにおいては92.5%の植物体から、該断片が検出された)。
さらに、マーカー遺伝子(hpt)を特異的に検出するためのプライマーセットを用いたPCR分析を行った結果、表2及び3に示す通り、GT系統A_hy及びGT系統B1_hyにおいて、各1個体のみにCAPS分析によるMfeI切断断片に、hpt特異的断片が含まれていた。
このように、GT系統A_hy及びGT系統B1_hyの各々99%及び92%の再分化植物体において、ALS遺伝子座にGTを介して2つの点変異W548L/S627Iが導入され、かつマーカー遺伝子は除去されていることが明らかになった。
(試験例2)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証2>
前記T0再分化植物体のALS遺伝子座における、マーカー遺伝子の除去及びW548L及びS627Iの点変異の導入について、ダイレクトシークエンシング法を用いて分析した。
すなわち、GT系統A_hy及びGT系統B1_hyの植物体から各々ランダムに選択した6個体及び16個体について、プライマーセット ALS F1及びALS GT−Rを用いたPCRにより得られた増幅断片をダイレクトシークエンシングした。
その結果、全ての分析した植物体にて、W548L、S627I及びHpaI認識部位を付加するサイレント変異が導入されていることが明らかになった。
(試験例3)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証3>
T0植物体のALS遺伝子座における、GTを介したW548L/S627I変異導入、及び、piggyBac転移によるマーカー遺伝子の除去について確認するため、野生型、GT系統Aの再分化植物体、並びにGT系統A_hyの独立した2系統のT0植物体(系統番号:6及び10)からゲノムDNAを抽出し、以下に示す方法にて、サザンブロット分析を行った。
<サザンブロット分析>
苗の葉から、ヌクレオン フィトピュア抽出キット(GE Healthcare社製)を用い、添付のメーカープロトコールに従って、ゲノムDNAを抽出した。次いで、抽出したゲノムDNA2μgをMfeIにて処理し、1.0%アガロースゲルにて分画した。そして、ジゴキシゲニン(DIG)アプリケーションマニュアル(Roche Diagnostics社製)に従って、サザンブロット分析を行った。得られた結果を、図5〜7に示す。
なお、ALS遺伝子座に特異的なDNAプローブは、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Diagnostics社製)、並びに以下に示すプライマーを用い、添付のメーカープロトコールに従って合成した。
プローブ−1(5’−ttctttttcaatactttcctcgcttgctct−3’(配列番号:21) 及び 5’−attcagccacttatcttgacacaaccattt−3’(配列番号:22))
プローブ−2(5’−tgtgacagcccagtcatcat−3’(配列番号:23) 及び 5’−cgttggatcgacatcatcag−3’(配列番号:24))
プローブ−3(5’−caaagatcgttatgtttatcggcactttg−3’(配列番号:25) 及び 5’−ctcgagctatttctttgccctc−3’(配列番号:26))。
また、各プローブとALS遺伝子座との位置関係については、図4参照のこと。
図5に示す通り、MfeIにて処理したDNAを、プローブ−1を用いたサザンブロット分析に供したところ、野生型ALS遺伝子座に由来する由来のバンド(11.8−kb)と、GTベクター由来のバンド(6.8−kb)とが、GT系統Aの再分化植物体において検出された。
一方、図5に示す通り、GT系統A_hyの再分化植物体においては、プローブ−1を用いたサザンブロット分析により、野生型ALS遺伝子座に由来する由来のバンド(11.8−kb)と、piggyBacが除去されたALS遺伝子座に由来する4.8−kb長のバンドとが、検出された。
また、図6に示す通り、プローブ−3を用いたサザンブロット分析により、野生型ALS遺伝子座に由来するバンド(11.8−kb)と、GTによりW548L/S627Iが導入されたALS遺伝子座に由来する6.8−kb長のバンドとが、GT系統A_hyの再分化植物体において検出された。
さらに、図7に示す通り、hptに特異的なプローブを用いたサザンブロット分析により、マーカー遺伝子に由来する2.3−kb長のバンドは、GT系統Aの再分化植物体のみにおいて検出された。
したがって、GT系統A_hyの再分化植物体において、切り出されたpiggyBacが、他のゲノム領域に再挿入されていないことが明らかになった。
非特許文献1において示される、哺乳動物細胞におけるGT遺伝子座からのpiggyBac除去においては、切り出されたpiggyBacは、68〜79%という高い頻度にて、標的DNAとは異なるゲノム領域に再挿入されることが明らかになっている。
また、非特許文献2〜5において示されるように、植物細胞のゲノムDNA内にランダムに挿入されているpiggyBacにおいては、その除去効率は約72%ではあるものの、除去されたpiggyBac等の再挿入率は41%と高いことが、本発明者らにより明らかになっている。
一方、前述の試験例1〜3の結果から明らかな通り、本発明によれば、標的DNAに所望の変異が導入されているが、マーカー遺伝子を含む不要な配列が除去されている植物体を、高頻度(92〜99%)に得ることができる。さらに、切り出されたpiggyBacの再挿入率は1%と極めて低いため、本発明においては、再挿入が生じている細胞を除外するための工程(ネガティブ選抜等)が不要である。
次に、上述のジーンターゲッティング(GT)による標的DNAの改変及びpiggyBacによる足跡を残さないマーカー除去からなる系が、標的とする遺伝子に依らず、普遍的に活用できる技術であることを確認するため、本発明によって、イネのcleistogamy 1(Oscly1)遺伝子を改変することを試みた。
なお、Oscly1遺伝子は、イネアノテーションプロジェクト(RAP)−データベース(http://rapdb.dna.affrc.go.jp/)にて、アクセッション番号:Os04g0649100として登録されている遺伝子である(cly1遺伝子の機能等については、Chen、Science、2004年、303巻、2022〜2025ページ、Nairら、Proc Natl Acad Sci USA、2010年、107巻、490〜449ページの記載を参照のこと)。
一方、Cly1遺伝子は、花器官の形態形成に関わるシロイヌナズナのAP2転写因子(Jofukuら、Plant Cell、1994年、6巻、1211〜1225ページ 参照)のオーソログであり、オオムギでは閉花性を示す栽培品種の原因遺伝子として同定されている(前記Nairら、2010年 参照)。また、この品種ではmicroRNA結合サイトに1塩基置換(アデニンからグアニンへの1塩基置換(CAGCAGCATCATCACGATTCCからCAGCAGCGTCATCACGATTCCとする変異、配列番号:27及び28)が生じていることにより、閉花性の表現型が示されることも明らかになっている。
したがって、痕跡を残すことなく前記1塩基置換をOscly1遺伝子に導入することができれば、イネに閉花性の性質のみを付与することができ、ひいては閉花性によってもたらされる赤かび病等への抵抗性も向上された育種素材を得ることもできる。
そこで、かかる育種素材の開発における有効性を確認するということも含め、図8及び以下に示す方法により、Oscly1遺伝子のmicroRNA結合サイトに前記1塩基置換を導入した後、piggyBacトランスポゾンを転移させることによってマーカーを除去し、最終的に点変異のみを残せることを確認した。
(実施例3)
<GTベクターの構築>
標的DNAに所望の変異のみを有する変異植物体を作製するため、標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入され、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物(GTベクター)を以下のようにして構築した。
すなわち先ず、OsCly1遺伝子のコード領域を含む6−kbのゲノム配列を、プライマー5’−ttggcgcgccttgtcgtcacgcgccagttc−3’
(配列番号:29)と5’−ccttaattaatccagggaaatccaccactactact−3’(配列番号:30)とで増幅し、エントリーベクターpENTR L1/L2のAscI/PacIサイトに挿入し、pE(L1−L2)Oscly1ベクターを作製した。
また、OsCly1遺伝子において、10番目のエクソン中にあるmicroRNA結合配列(stopコドンより88bp上流)に、前述のアデニンからグアニンへの1塩基置換が導入され、さらに当該遺伝子の3’−UTRのTTAAサイトにpiggyBacトランスポゾンの配列が挿入された、人工合成DNA配列を調製した。
そして、前述のpE(L1−L2)Oscly1及び人工合成DNA配列をEcoRIにて処理することによって、当該ベクター中の野生型OsCly1配列を、前記1塩基変異及びpiggyBacトランスポゾンの配列が導入されたOsCly1配列に置き換えて、pE(L1−L2)Oscly1pbを作製した。
次いで、pE(L1−L2)Oscly1pbのpiggyBacトランスポゾン内部のI−SceIサイトに、I−SceIで処理した4.3kb長断片を挿入することにより、pE(L1−L2)Oscly1pHPTbを作製した。なお、この断片には、イネ由来のアクチンターミネーター、カリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hpt)及びイネ由来の熱ショックタンパク質17.3ターミネーターが含まれている。
そして、pE(L1−L2)Oscly1pHPTb中の10.9−Kbの配列を、ゲートウェイLRクロナーゼII反応によって、DT−A発現カセット2つを含むジーンターゲッティングバイナリーベクターpKOD4に導入して再クローニングし、pKOD4/Oscly1pHPTbを調製した。
(実施例4)
次に、実施例2に記載の方法と同様の方法にて、このようにして得られたGTベクター(pKOD4/Oscly1pHPTb)を用い、標的DNAに所望の変異のみを有する植物体の作製を試みた。
その結果、表4に示す通り、5139のカルスから、独立した74のハイグロマシン耐性カルスを選抜することができた。
さらに、Oscly1遺伝子座にてGTイベントが生じたトランスジェニックカルスを同定するため、得られたハイグロマシン耐性カルスを、以下に示すPCR及びシークエンシング分析によるスクリーニングに供した。
<PCR>
イネカルスの小塊からゲノムDNAを、アジェンコート クロロピュアを用い、添付のメーカープロトコールに従って抽出した。そして、抽出したゲノムDNAを鋳型として、KOD FX又はKOD FXネオと、以下に示すプライマーセットを用い、PCR増幅を行った(Oscly1遺伝子座とプライマーのアニーリング位置については、図8参照)。
Oscly1の5’側の増幅に用いたプライマーセット:
Oscly1 GT−F(5’−tcggtcggctaaggtttgctactaaaaaca−3’(配列番号:31))及びTact−R
Oscly1の3’側の増幅に用いたプライマーセット:
Thsp17.3−F及びOscly1 GT−R(5’−cttgcacgacggttctacaggagattagtg−3’(配列番号:32))。
そして、このPCRの結果、表4に示す通り、独立した4のカルスにおいて、ジャンクション断片の上流及び下流を検出することができ、これらカルスにおいて、GTベクターと標的DNAとの間にて相同組換えが生じ、Oscly1遺伝子座にポジティブ選択マーカー遺伝子が導入されていることが確認された。
<シークエンシング分析>
次に、Oscly1遺伝子の3’側を増幅して得られた3,942bp長の断片、及び、該遺伝子の3’側を増幅して得られた4257bp長の断片を、TOPOクローニング法により、pCR−Blunt II−TOPOベクターに導入してクローニングし、シークエンシング分析に供した。
具体的には、ユニバーサルプライマー M13−R及びM13−Fを用い、ジャンクション配列が予期しているものであるかどうかを確認した。
また、前記4257bp長の断片内のmicroRNA標的配列に1点変異が挿入されていることを、プライマーOscly1 Seq−5101F(5’−cgaccagaactcgaaccatc−3’(配列番号:33))を用いて、シークエンシング分析によりチェックした。
このシークエンシング分析の結果、表4に示す通り、miRNA標的サイトの変異であるアデニンからグアニンへの塩基置換が、2つのカルス系統にて各々検出された。
そして、これら2系統(cly1 GT−1及びcly1 GT−2)を、上述のGT候補カルス系統 A及びB1同様の方法(実施例2)にて、piggyBacを除去するための処理に供し、hyPBaseを恒常的に発現しているカルス(GT_hyカルス)を、各カルス系統につき6又は4系統選択した(cly1 GT−1_hy−22,23,27,28,29及び38、並びにcly1 GT−2_hy−21,23,36及び37)。
次に、このようにして得られたGT_hyカルスを、上述のGT系統A_hy:5等と同様の方法にて再分化させ、前記10系統のカルスからT0再分化植物体を、各系統につき19〜25個体ずつ調製した。
(試験例4)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証4>
実施例4にて調製したT0再分化植物体における、piggyBac転移を介したポジティブ選択マーカー遺伝子の除去効率を評価するため、PCRによる解析を行った。
すなわち先ず、cly1 GT−1_hy及びcly1 GT−2_hyの葉からゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAを鋳型として、プライムスターGXL DNAポリメラーゼ、並びにプライマーセット(Oscly1 GT−F及びTact−Rのセット、又は、Oscly1 3’ UTR−F:5’−ggatgctattcttttgctctaccttttt−3’(配列番号:34)及びOscly1 3’ UTR−R:5’−ttactttagtaccaacatctagaaggacga−3’(配列番号:35)のセット)を用いたPCRを行った。hyPBaseの発現によってOsCly1 GT遺伝子座からpiggyBacが除去されていた場合、0.6−kb長の断片がOscly1 3’ UTR−F及びOscly1 3’ UTR−Rからなるプライマーセットにより増幅されることとなる。一方、除去されていなかった場合は、5.5−kb長の断片と3.9−kb長の断片とが、Oscly1 3’ UTR−F及びOscly1 3’ UTR−Rからなるプライマーセットと、Oscly1 GT−F及びTact−Rからなるプライマーセットとによってそれぞれ増幅される。
なお、Oscly1 3’ UTR−Fは、piggyBacの挿入部位より380bp上流にアニーリングするプライマーである。Oscly1 3’ UTR−Rは、piggyBac挿入部位より223bp下流にアニーリングするプライマーである(Oscly1遺伝子座とプライマーのアニーリング位置については、図8参照)。
また、piggyBacの再挿入頻度を分析するため、ゲノムDNAを鋳型として、プライムスターGXL DNAポリメラーゼ(TAKARA社製)、並びにマーカー遺伝子を特異的に検出するためのプライマーセット HPT−F及びHPT−Rを用い、PCR分析を行った。得られた結果を表5及び6に示す。
表5及び6に示す通り、再分化植物体の90%以上において、hyPBaseの発現により標的のOscly1遺伝子座から効率良くpiggyBacが除去されたことを示すPCR増幅断片が検出された(平均して、cly1 GT−1_hyにおいては91%、cly1 GT−2_hyにおいては98%の植物体から、該断片が検出された)。
このように、cly1 GT−1及びcly1 GT−2の各々90.7%及び98%の再分化植物体において、Oscly1遺伝子座にGTを介して点変異が導入され、かつマーカー遺伝子は除去されていることが明らかになった。
(試験例5)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証5>
前記T0再分化植物体のOscly1遺伝子座における、マーカー遺伝子の除去及び点変異の導入について、ダイレクトシークエンシング法を用いて分析した。
すなわち、cly1 GT−1_hy及びcly1 GT−2_hyの植物体から各々ランダムに選択した10個体及び6個体を対象として、プライマーセットOsCly1−3895F(5‘−ctattccctgctcgcccaat−3’(配列番号:36))及びOsCly1 7276R(5’−agactgaaaacggccaatgc−3’(配列番号:37))を用いたPCRを行った。そして、得られた増幅断片を、OsCly1−5101F及びOsCly1−6536R(5’−cttcgagatgttagatatgtgtgc−3’(配列番号:38))によりダイレクトシークエンシングした。
その結果、図には示さないが、全ての分析した植物体にて、Oscly1遺伝子のmicroRNA結合サイトにアデニンからグアニンへの1塩基置換が導入されていることが明らかになった。また、piggyBacが転移した後のOscly1遺伝子の配列を解析したところ、piggyBacは足跡を残さずに転移していた。
(試験例6)
<piggyBacによる標的DNAからのマーカー除去についての検証6>
T0植物体のOscly1遺伝子座における、GTを介した変異導入、及び、piggyBac転移によるマーカー遺伝子の除去について確認するため、野生型、GT系統の再分化植物体(cly1 GT−1及びcly1 GT−2)、並びにcly1 GT−1_hy(系統番号:29−1、29−2、38−1、38−2)及びcly1 GT−2_hy(系統番号:36−1、36−2)の独立した2系統のT1植物体からゲノムDNAを抽出し、該ゲノムDNAを処理する制限酵素をMfeIからEcoRVに変更し、後述のプローブを用いた以外は、試験例3に記載と同様の方法にて、サザンブロット分析を行った。得られた結果を図9に示す。
なお、Oscly1遺伝子座に特異的なDNAプローブは、PCR DIGプローブ合成キット(Roche Diagnostics社製)、並びに以下に示すプライマーを用い、添付のメーカープロトコールに従って合成した。
プローブ−1(5’−ggttccattccctgacccggcccacct−3’(配列番号:39)及び5’−cagtgaatgatgcaacatgagaccgaaca−3’(配列番号:40))
プローブ−2(5’−tgtgacagcccagtcatcat−3’(配列番号:23)及び5’−cgttggatcgacatcatcag−3’(配列番号:24))
プローブ−3(5’−cagtcatctggacttgttggaattg−3’(配列番号:41)及び5’−catcggatgagaccacattaactt−3’(配列番号:42))。
また、各プローブとOscly1遺伝子座との位置関係については、図8を参照のこと。
図9に示す通り、EcoRVにて処理したDNAを、プローブ−1を用いたサザンブロット分析に供したところ、ポジティブマーカー遺伝子のないOscly1遺伝子座に由来のバンド(19.8−kb)と、GTベクター由来のバンド(9.8−kb)とが、cly1 GT−1及びcly1 GT−2の再分化植物体において検出された。また、図9に示す通り、プローブ−3を用いたサザンブロット分析に供したところ、ポジティブマーカー遺伝子のないOscly1遺伝子座に由来のバンド(19.8−kb)と、GTベクター由来のバンド(12.6−kb)とが、cly1 GT−1及びcly1 GT−2の再分化植物体において検出された。
一方、cly1 GT−1_hy及びcly1 GT−2_hyの再分化植物体においては、プローブ−1とプローブ−3のどちらを用いたサザンブロット分析でも、野生型Oscly1遺伝子座由来のバンド(19.8−kb)のみが、検出された。
さらに、図9に示す通り、hptに特異的なプローブを用いたサザンブロット分析により、マーカー遺伝子に由来する2.3−kb長のバンドは、cly1 GT−1及びcly1 GT−2の再分化植物体のみにおいて検出された。
したがって、cly1 GT−1_hy及びcly1 GT−2_hyの再分化植物体において、切り出されたpiggyBacが、他のゲノム領域に再挿入されていないことが明らかになった。
以上の通り、本発明によれば、標的とするDNAの種類に依らず、所望の変異のみを植物細胞に導入できることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、標的DNAのみならず、該DNA以外の領域にも、マーカー遺伝子等の不要な配列を残すことなく、標的DNAに所望の変異のみを導入した植物細胞等を得ることが可能となる。
したがって、本発明の標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法等は、遺伝子の機能解析等の基礎研究や、育種素材の開発とにおいて非常に有用である。
配列番号:1〜5
<223> 逆向き反復配列
配列番号:6及び7
<223> 高活性型piggyBacトランスポゼース
配列番号:8〜26及び29〜42
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列
配列番号:27及び28
<223> miRNAの標的部位

Claims (6)

  1. 下記工程(i)〜(iii)を含む、標的DNAに変異が導入された植物細胞の製造方法
    (i)標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物を、植物細胞に導入する工程、
    (ii)前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞を、前記マーカー遺伝子の発現を指標として選択する工程、
    (iii)工程(ii)にて選択された細胞に、piggyBacトランスポゼースを恒常的に発現させ、前記piggyBacトランスポゾンを前記標的DNAより除去する工程。
  2. 前記piggyBacトランスポゼースをコードする遺伝子が、植物細胞内で恒常的に発現させるための制御領域に作動可能に連結されている、請求項1に記載の方法。
  3. 標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物が導入されることにより、前記変異及び前記piggyBacトランスポゾンが相同組換えによって標的DNAに導入された植物細胞。
  4. 標的DNAと相同なDNAを含むDNA構築物であって、該相同DNAにマーカー遺伝子を含むpiggyBacトランスポゾンが挿入されており、かつ所望の変異が導入されているDNA構築物。
  5. 請求項1に記載の方法に用いるための、下記(a)及び(b)を含むキット
    (a)請求項に記載のDNA構築物
    (b)piggyBacトランスポゼースを植物細胞内で恒常的に発現させるためのDNA構築物。
  6. (b)に記載のDNA構築物において、前記piggyBacトランスポゼースをコードする遺伝子が、植物細胞内で恒常的に発現させるための制御領域に作動可能に連結されている、請求項5に記載のキット。
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