JP6555077B2 - 金属材料の余寿命予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属材料の余寿命または寿命消費率を予測する方法に関する。
従来、火力発電プラント等において高温環境下で使用されている金属材料(鋼管等)の余寿命を予測するための方法が提案されている。
例えば、特開2004−3922号公報(特許文献1)には、局所的な結晶方位のずれに基づいて、金属材料の余寿命を予測する方法が開示されている。具体的には、特許文献1の方法では、結晶粒内の所定領域のKAM値を測定することによって、金属材料の余寿命を推定している。なお、KAM値とは、結晶粒内における微小回転を示す値であり、結晶粒内の歪み量に関する値である。KAM値は、例えば、電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて、以下のようにして測定できる。まず、結晶粒内の複数に分割された分析区画(ピクセル)のうちから、任意の分析区画を選択する。そして、その選択した分析区画とその分析区画の周囲の複数の分析区画との間における結晶方位差の平均値を、KAM値として算出する。
また、特開昭63−228062号公報(特許文献2)には、結晶粒の形状に基づいて、金属材料の余寿命を予測する方法が開示されている。具体的には、特許文献2の方法では、結晶粒の長径、結晶粒の巾径、および結晶粒の円形度等に基づいて結晶粒の形状変化量を測定し、金属材料の余寿命を推定している。
特開2004−3922号公報 特開昭63−228062号公報
しかしながら、本発明者の種々の検討の結果、上述のような方法では、金属材料の余寿命を適切に予測できない場合があることが分かった。
すなわち、金属材料の劣化に伴って金属材料のミクロ組織の状態は変化するが、その変化量は、金属材料の劣化の程度によって異なる。具体的には、例えば、ミクロ組織の状態を示す要素として転位密度を挙げることができるが、転位密度の増加量は、クリープ変形量が小さい期間(例えば、遷移クリープ域)では大きいが、クリープ変形量が大きくなった期間(例えば、加速クリープ域)では小さくなる。
このため、ミクロ組織の状態を示す一つの情報(結晶粒内の歪み量または結晶粒の形状)に基づいて余寿命を予測する特許文献1および2の方法では、金属材料の劣化の程度によっては、余寿命を適切に予測できない場合がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金属材料の余寿命または寿命消費率を金属材料の劣化の程度に応じて適切に予測することができる金属材料の余寿命予測方法を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態にかかる余寿命予測方法は、ミクロ組織の状態に関する複数種の組織パラメータに基づいて、高温環境下で使用されている金属材料の余寿命を予測する余寿命予測方法であって、下記の(A)から(C)のステップを備える。
(A)前記高温環境下で使用されている金属材料に対応する金属材料を基準材として、該基準材について、前記組織パラメータの種類ごとに、組織パラメータと余寿命に関する余寿命情報との関係を得るステップ
(B)前記高温環境下で使用されている前記金属材料を試験材として、該試験材について、前記複数種の組織パラメータの中から選択された1種の組織パラメータを得るステップ
(C)前記(B)のステップで得た前記1種の組織パラメータおよび前記(A)のステップで得た前記組織パラメータと余寿命情報との関係から、前記試験材の余寿命を予測するステップ
前記複数種の組織パラメータは、転位密度を含んでもよい。
前記複数種の組織パラメータは、粒内歪みをさらに含んでもよい。
前記複数種の組織パラメータは、粒界歪みをさらに含んでもよい。
前記(B)のステップでは、前記試験材の転位密度が所定の閾値以下の場合には該転位密度が前記1種の組織パラメータとして選択され、前記試験材の転位密度が前記所定の閾値を超えている場合には、転位密度以外の組織パラメータが前記1種の組織パラメータとして選択されてもよい。
前記(A)のステップは、下記の(a1)および(a2)のステップを有し、
前記(A)のステップで得られる前記組織パラメータと余寿命情報との関係は、下記の(a1)のステップで得られる組織パラメータとクリープ歪み量との関係、および下記の(a2)のステップで得られるクリープ歪み量と余寿命との関係を含み、
前記(C)のステップは、下記の(c1)および(c2)のステップを有してもよい。
(a1)前記基準材について、前記複数種の組織パラメータごとに、組織パラメータとクリープ歪み量との関係を得るステップ
(a2)前記基準材について、クリープ歪み量と余寿命との関係を得るステップ
(c1)前記(B)のステップで得た前記1種の組織パラメータおよび前記(a1)のステップで得た該1種の組織パラメータとクリープ歪み量との関係から、前記試験材のクリープ歪み量を得るステップ
(c2)前記(c1)のステップで得た前記試験材のクリープ歪み量および前記(a2)のステップで得た前記クリープ歪み量と余寿命との関係から、前記試験材の余寿命を予測するステップ
前記複数種の組織パラメータは、転位密度を含み、
前記(B)のステップにおいて前記1種の組織パラメータとして転位密度が選択された場合に前記(c1)のステップで得られるクリープ歪み量は、前記(B)のステップにおいて転位密度以外の組織パラメータが前記1種の組織パラメータとして選択された場合に前記(c1)のステップで得られるクリープ歪み量よりも小さくてもよい。
前記(A)のステップでは、前記組織パラメータと余寿命情報との関係として、前記組織パラメータと余寿命との関係を求めてもよい。
本発明によれば、金属材料の劣化の程度に影響されることなく金属材料の余寿命を適切に予測することができる。
図1は、転位密度とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブである。 図2は、β方向強度偏差とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブである。 図3は、GROD値とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブである。 図4は、寿命消費率とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブである。 図5は、残留応力とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブである。 図6は、基準ガウス関数および乗算ガウス関数の一例を示す図である。
(余寿命予測方法の概要)
本発明の一実施形態に係る余寿命予測方法(以下、単に予測方法という。)は、高温環境下において使用されている材料の余寿命を予測する際に好適に用いられる。なお、本発明において予測される余寿命には、後述する寿命消費率(寿命比)が含まれる。本実施形態において高温環境とは、例えば、通常の火力発電ボイラーまたは石油精製機器等の使用温度である500℃以上の環境を意味する。
本実施形態に係る予測方法は、例えば、発電プラント等において高温および高圧(例えば、20MPa以上)の環境下において使用されている金属材料の余寿命を予測する際に利用できる。具体的には、本実施形態に係る予測方法は、例えば、発電プラントから抜管したボイラー用鋼管の余寿命を予測する際に利用できる。
本実施形態では、後述するミクロ組織の状態に関する複数種のパラメータ(以下、組織パラメータという。)に基づいて、金属材料の余寿命を予測する。以下においては、余寿命の予測が行われる金属材料を試験材という。また、本実施形態では、試験材に対応する金属材料を基準材として用いる。基準材は、例えば、試験材と同様のミクロ組織を有する金属材料である。以下においては、予測方法の一例として、試験材および基準材としてともにNi基合金を用いた場合について説明する。
本実施形態に係る予測方法は、例えば、下記のステップA〜Cを備える。
ステップA:基準材について、組織パラメータの種類ごとに、組織パラメータと余寿命に関する情報(以下、余寿命情報という。)との関係を得る。
ステップB:試験材について、複数種の組織パラメータの中から選択された1種の組織パラメータを得る。
ステップC:ステップBで得た1種の組織パラメータおよびステップAで得た組織パラメータと余寿命情報との関係から、試験材の余寿命を予測する。
以下、上記のステップA〜Cについて具体的に説明する。
(ステップA:基準材に関する処理)
本実施形態では、ステップAは、下記のステップa1,a2を有する。また、ステップAで得られる組織パラメータと余寿命情報との関係には、下記のステップa1で得られる組織パラメータとクリープ歪み量との関係、および下記のステップa2で得られるクリープ歪み量と余寿命との関係が含まれる。
ステップa1:基準材について、複数種の組織パラメータごとに、組織パラメータとクリープ歪み量との関係を得る。
ステップa2:基準材について、クリープ歪み量と余寿命との関係を得る。
ステップa1,a2における上述の関係はそれぞれ、複数の基準材を用いて実験的に求められる。実験は、例えば、試験材が使用されている環境を模した環境下で行われる。
本実施形態では、上記複数種の組織パラメータには、転位密度、粒内歪み、および粒界歪みが含まれる。なお、本実施形態において粒内歪みとは、外力によって粒内全体に付与される均一歪みおよび不均一歪みのことを意味し、粒界歪みとは、外力によって粒界近傍に生じる結晶方位の微小回転を意味する。本実施形態では、粒内歪みを表す値(測定パラメータ)として、後述するβ方向強度偏差を測定し、粒界歪みを表す値(測定パラメータ)として、GROD(Grain Refirence Orientation Deviation)値を測定する。
本実施形態では、上記のステップa1において、図1〜図3に示すように、組織パラメータとクリープ歪み量との関係として、転位密度とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブ、粒内歪み(本実施形態では、β方向強度偏差)とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブ、および粒界歪み(本実施形態では、GROD値)とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブが作成される。また、上記のステップa2において、図4に示すように、寿命消費率とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブが作成される。これらのマスターカーブは、過去の実験等のデータに基づいて作成してもよく、試験材の余寿命を予測する際に新たに実験を行ってデータを収集し、そのデータに基づいて作成してもよい。マスターカーブは、例えば、実験データに基づいて、最小二乗法を用いて求めることができる。
なお、図1〜図4のグラフ(マスターカーブ)において横軸は、クリープ歪み量を対数目盛で示している。図1のグラフにおいて縦軸は、転位密度(m−2)を対数目盛で示している。図4に示すグラフにおいて寿命消費率とは、クリープ試験において、基準材がクリープ破断に至るまでの時間Trに対する試験経過時間Tの割合であり、T/Trで求められる値である。
転位密度は公知の方法で求めることができるので詳細な説明は省略するが、例えば、X線回折法によって得られる回折プロファイルの半値幅を用いて算出することができる。具体的には、転位密度は、例えば、Williamsの式を用いた方法、またはModified Warren-Abelbachの式およびModified willamson-Hallの式を用いた方法等によって算出することができる。また、転位密度は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察によって測定してもよく、陽電子消滅法(陽電子消滅寿命から転位密度を求める方法)を用いて算出してもよく、ビッカース硬さ(Hv)を測定して、測定したHvに基づいてBailey-Hirschの式を用いて算出してもよい。
また、β方向強度偏差は、2次元X線回折パターンを用いて算出することができる。以下、β方向強度偏差について簡単に説明する。β方向とは、デバイ・シェラーリングのリング方向を意味し、β方向強度偏差は、2次元X線回折パターンの状態(より具体的には、デバイ・シェラーリングの状態)を示す。本実施形態では、2次元X線回折パターンのβ方向の回折強度分布の標準偏差を、β方向強度偏差として求める。2次元X線回折パターンがバックグラウンドを含んでいる場合には、該回折パターンからバックグラウンドを除去した後、β方向強度偏差を求めることができる。例えば、β方向の回折強度分布の近似曲線とバックグラウンドの近似曲線との残差の標準偏差を、β方向強度偏差として求めてもよい。なお、2次元X線回折パターンは、クリープ歪みの増加に伴って、スポット状のパターンから、リング状のパターンへ変化する。すなわち、クリープ歪みの増加に伴って、デバイ・シェラーリングが表れる。2次元X線回折パターンがリング状のパターンである場合(クリープ歪み量が大きい場合)、2次元X線回折パターンのβ方向(リング方向)の強度分布は均一になる。この場合、β方向強度偏差は小さくなる。一方、2次元X線回折パターンがスポット状のパターンである場合(クリープ歪み量が小さい場合)、2次元X線回折パターンのβ方向(リング方向)の強度分布は不均一になる。この場合、β方向強度偏差は大きくなる。
GROD値は公知の方法で求めることができるので詳細な説明は省略するが、例えば、電子線後方散乱回折法(EBSD)を用いて求めることができる。
図1に示すように、クリープ変形の初期の段階において、転位密度が大きく上昇していることが分かる。また、図2に示すように、クリープ変形の中期の段階においては、β方向強度偏差が大きく低下していることが分かる。さらに、図3に示すように、クリープ変形の後期の段階においては、GROD値が大きく上昇していることが分かる。すなわち、クリープ変形の初期の段階においては、転位密度の変化量が大きくなり、クリープ変形の中期の段階においては、粒内歪みの変化量が大きくなり、クリープ変形の後期の段階においては、粒界歪みの変化量が大きくなっている。
(ステップB:試験材に関する処理)
ステップBにおいては、試験材について、ミクロ組織の状態に関する複数種の組織パラメータ(転位密度、粒内歪みおよび粒界歪み)の中から選択された1種の組織パラメータが求められる。本実施形態では、上記1種の組織パラメータとして粒内歪みが選択された場合には、粒内歪みを表す値としてβ方向強度偏差が求められ、上記1種の組織パラメータとして粒界歪みが選択された場合には、粒界歪みを表す値としてGROD値が求められる。以下、ステップCの詳細な説明とともに、ステップBにおける組織パラメータの選択方法の一例を説明する。
(ステップC:試験材の余寿命予測に関する処理)
本実施形態では、ステップCは、下記のステップc1,c2を有する。
ステップc1:ステップBで得た1種の組織パラメータおよびステップa1で得た組織パラメータとクリープ歪み量との関係から、試験材のクリープ歪み量を得る。
ステップc2:ステップc1で得た試験材のクリープ歪み量およびステップa2で得たクリープ歪み量と余寿命との関係から、試験材の余寿命を予測する。
上記のように、ステップCでは、ステップBにおいて選択された組織パラメータに基づいて試験材のクリープ歪み量を求め(ステップc1)、求めたクリープ歪み量に基づいて試験材の余寿命を予測する(ステップc2)。ここで、図1〜図3に示したように、ミクロ組織の組織パラメータ(転位密度、粒内歪み、粒界歪み)の変化量は、クリープ変形の進行の程度によって異なる。
そこで、本実施形態では、転位密度の変化量が大きくなるクリープ変形の初期の段階においては、試験材の組織パラメータとして、転位密度を求める(ステップB)。そして、ステップBで得た試験材の転位密度および図1に示したマスターカーブに基づいて試験材のクリープ歪み量を求める(ステップc1)。その後、ステップc1で求めたクリープ歪み量と図4に示したマスターカーブとに基づいて試験材の余寿命を求める(ステップc2)。なお、ステップc2では、図4に示したマスターカーブから求められる寿命消費率を試験材の余寿命としてもよく、1から寿命消費率を減算して得られる値を試験材の余寿命としてもよい。
なお、ステップBでは、例えば、試験材の転位密度が所定の閾値(以下、第1閾値という。)以下の場合に、試験材の組織パラメータとして転位密度を選択する。転位密度についての上記第1閾値は、試験材の特性等に応じて適宜設定される。本実施形態では、第1閾値は、例えば、基準材のクリープ歪み量が0.05になるときの基準材の転位密度に設定される。基準材のクリープ歪み量が0.05になるときの転位密度は、例えば、図1に示したマスターカーブから求めることができる。
また、粒内歪みの変化量が大きくなるクリープ変形の中期の段階においては、試験材の組織パラメータとして、粒内歪みを求める(ステップB)。本実施形態では、粒内歪みを表す値として、β方向強度偏差を求める。そして、ステップBで求めた試験材の粒内歪み(β方向強度偏差)および図2に示したマスターカーブに基づいて試験材のクリープ歪み量を求める(ステップc1)。その後、ステップc1で求めたクリープ歪み量と図4に示したマスターカーブとに基づいて試験材の余寿命を求める(ステップc2)。
なお、ステップBでは、例えば、試験材の転位密度および粒内歪みが所定の条件を満たしている場合に、試験材の組織パラメータとして粒内歪みを選択する。本実施形態では、試験材の転位密度が上記の第1閾値を超えかつβ方向強度偏差が所定の閾値(以下、第2閾値という。)以上の場合に、試験材の組織パラメータとして粒内歪みを選択する。β方向強度偏差についての上記第2閾値は、試験材の特性等に応じて適宜設定される。本実施形態では、第2閾値は、例えば、クリープ歪み量が0.1になるときの基準材のβ方向強度偏差に設定される。基準材のクリープ歪み量が0.1になるときのβ方向強度偏差は、例えば、図2に示したマスターカーブから求めることができる。
さらに、粒界歪みの変化量が大きくなるクリープ変形の後期の段階においては、試験材の組織パラメータとして、粒界歪みを求める(ステップB)。本実施形態では、粒界歪みを表す値として、GROD値を求める。そして、ステップBで求めた試験材の粒界歪み(GROD値)および図3に示したマスターカーブに基づいて試験材のクリープ歪み量を求める(ステップc1)。その後、ステップc1で求めたクリープ歪み量と図4に示したマスターカーブとに基づいて試験材の余寿命を求める(ステップc2)。
なお、ステップBでは、例えば、試験材の粒内歪みが所定の条件を満たしている場合に、試験材の組織パラメータとして粒界歪みを選択する。本実施形態では、試験材のβ方向強度偏差が上記の第2閾値未満の場合に、試験材の組織パラメータとして粒界歪みを選択する。
なお、本実施形態に係る予測方法によって試験材の余寿命を予測する際には、例えば、最初に試験材の転位密度を測定して、転位密度が第1閾値以上の場合に、試験材のβ方向強度偏差を測定してもよい。また、例えば、最初に試験材のβ方向強度偏差を測定して、β方向強度偏差が上述の第2閾値未満の場合には試験材のGROD値を測定し、β方向強度偏差が所定の閾値(第3閾値)以上の場合には試験材の転位密度を測定してもよい。また、最初に試験材のGROD値を測定して、GROD値が所定の閾値(第4閾値)以下の場合には、試験材のβ方向強度偏差を測定してもよい。なお、上記の第3閾値および第4閾値は、試験材の特性等に応じて適宜設定される。このように、本実施形態に係る予測方法では、複数種の組織パラメータ(転位密度、粒内歪み(本実施形態では、β方向強度偏差)、および粒界歪み(本実施形態では、GROD値))のうちのいずれの組織パラメータを最初に求めてもよい。そして、最初に求めた組織パラメータが所定の条件を満たしていない場合には、他の組織パラメータを求め、その組織パラメータが所定の条件を満たしていない場合には、さらに他の組織パラメータを求め、クリープ歪み量を求めればよい。
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係る予測方法では、転位密度の変化量が大きいクリープ変形の初期段階においては、転位密度に基づいてクリープ歪み量を求める。また、粒内歪みの変化量が大きいクリープ変形の中期段階においては、粒内歪みに基づいてクリープ歪み量を求める。さらに、粒界歪みの変化量が大きいクリープ変形の後期段階においては、粒界歪みに基づいてクリープ歪み量を求める。
より具体的には、転位密度が所定の第1条件(本実施形態では、試験材の転位密度が第1閾値以下)を満たしている場合には、転位密度に基づいてクリープ歪み量を求める。また、転位密度が上記第1条件を満たしておらずかつ粒内歪みが所定の第2条件(本実施形態では、試験材のβ方向強度偏差が第2閾値以上)を満たしている場合には、粒内歪みに基づいてクリープ歪み量を求める。さらに、転位密度および粒内歪みが上記の第1条件および第2条件を満たしていない場合には、粒界歪みに基づいてクリープ歪み量を求める。
以上のように、本実施形態に係る予測方法によれば、試験材のクリープ変形の進行の程度(すなわち、試験材の劣化の程度)に応じて、試験材のクリープ歪み量を適切に求めることができる。具体的には、複数種の組織パラメータ(転位密度、粒内歪み、粒界歪み)のうちから選択された適切な組織パラメータに基づいて、試験材のクリープ歪み量を求めることができる。これにより、試験材のクリープ歪み量を高精度に予測することができる。その結果、試験材の余寿命を高精度で予測することができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、組織パラメータとして転位密度を求める場合について説明したが、転位密度の代わりに、転位密度を表す値(測定パラメータ)として、弾性ひずみエネルギーまたは陽電子消滅寿命を求めてもよい。なお、弾性ひずみエネルギーおよび陽電子消滅寿命は、公知の測定方法によって求めることができるので、測定方法の説明は省略する。
また、上述の実施形態では、粒内歪みを表す値(測定パラメータ)として、β方向強度偏差を求める場合について説明したが、粒内歪みを表す値として、残留応力を求めてもよい。該残留応力は、例えば、公知の技術であるsinψ法または2次元X線回折パターンを用いて算出することができる。
また、上述の実施形態では、粒界歪みを表す値(測定パラメータ)としてGROD値を求める場合について説明したが、KAM(Kernel Average Misorientation)値を求めてもよい。KAM値は、例えば、EBSDを用いて求めることができる。また、粒界歪みを表す値として、粒界近傍の局所的な格子定数を求めてもよい。局所的な格子定数は、例えば、収束電子回折(CBED)法を用いて求めることができる。
また、上述の実施形態では、3種類の組織パラメータに基づいて試験材の余寿命を予測する場合について説明したが、2種類の組織パラメータに基づいて余寿命を予測してもよく、4種類以上の組織パラメータに基づいて余寿命を予測してもよい。例えば、転位密度および粒内歪みの2種類の組織パラメータを用いて、試験材の余寿命を予測してもよい。なお、転位密度および粒内歪みの2種類の組織パラメータから試験材の余寿命を予測する場合、例えば、粒内歪みを表す値として残留応力を測定してもよい。この場合、図1および図4に示したマスターカーブに加えて、図5に示すような、残留応力とクリープ歪み量との関係を示すマスターカーブを作成する。このマスターカーブを用いて、上述の実施形態と同様に、クリープ歪み量および寿命消費率(余寿命)を予測することができる。なお、この場合にも、β方向強度偏差およびGROD値を用いる場合と同様に、残留応力についての閾値が適宜設定される。詳細な説明は省略するが、組織パラメータとして上述の弾性ひずみエネルギー、陽電子消滅寿命、またはKAM値等を用いる場合にも、各値についての閾値が適宜設定される。
上述の実施形態では、ステップAがステップa1,a2を有し、ステップCがステップc1,c2を有する場合について説明したが、ステップAおよびステップCにおける処理は上述の例に限定されない。具体的には、上述の実施形態では、ステップAにおいて、組織パラメータとクリープ歪み量との関係(ステップa1)、およびクリープ歪み量と余寿命との関係(ステップa2)を得ている。しかしながら、ステップa1,a2で得られる上記の関係の代わりに、ステップAにおいて、組織パラメータと余寿命との関係を得てもよい。この場合、ステップCにおいては、ステップBで得た組織パラメータとステップAで得た関係とに基づいて、試験材の余寿命を予測することができる。
具体的には、例えば、ステップAにおいて、基準材について、転位密度と余寿命との関係を示すマスターカーブ、粒内歪み(例えば、β方向強度偏差)と余寿命との関係を示すマスターカーブ、および粒界歪み(例えば、GROD値)と余寿命との関係を示すマスターカーブを得てもよい。そして、ステップCにおいて、ステップBで得た転位密度、粒内歪みまたは粒界歪みとステップAで得たマスターカーブとに基づいて、試験材の余寿命を予測してもよい。
上述の実施形態では、基準材および試験材の各組織パラメータを任意の一つの方法によって求め、その求めた組織パラメータに基づいて、試験材の寿命消費率を予測している。しかしながら、1種の組織パラメータを異なる複数の方法によって求めてもよい。具体的には、例えば、転位密度を求める方法として複数の方法(X線回折法および陽電子消滅法等)が考えられる。上述の実施形態では、該複数の方法の中から任意に選んだ一つの方法を用いて転位密度を求めている。しかしながら、例えば、遷移クリープ域において、X線回折法によって求めた転位密度および陽電子消滅法によって求めた転位密度の両方を用いて、試験材の余寿命を予測してもよい。同様に、例えば、粒内歪みを表す値としては、それぞれ異なる方法によって求められる複数の値(β方向強度偏差および残留応力等)が考えられる。上述の実施形態では、該複数の値の中から任意に選んだ値を、粒内歪みを表す値として用いている。しかしながら、例えば、加速クリープ域の前半部分において、β方向強度偏差および残留応力の両方を、粒内歪みを表す値として用いて、試験材の余寿命を予測してもよい。これらの場合、試験材の余寿命の予測精度を向上させることができる。
以下、1種の組織パラメータを異なる複数の方法によって求める場合について説明する。以下においては、X線回折法および陽電子消滅法の2つの方法によって転位密度を求める場合について説明する。以下に説明する第1予測方法および第2予測方法では、試験材の余寿命として、寿命消費率を求める。なお、以下に説明する予測方法においても、上記実施形態と同様に定義される基準材および試験材を用いることができる。
[第1予測方法]
本実施形態に係る予測方法では、後述するように、組織パラメータ(本実施形態では、転位密度)の測定方法ごとに、試験材の余寿命の予測値を示すガウス関数(以下、基準ガウス関数ともいう。)を求める。さらに、転位密度の測定方法ごとに求めた複数の基準ガウス関数を確率の乗法定理で乗算してガウス関数(以下、乗算ガウス関数ともいう。)を求める。そして、求めた乗算ガウス関数に基づいて試験材の余寿命を求める。
〈基準ガウス関数の導出〉
まず、基準ガウス関数の導出方法について説明する。本実施形態では、例えば、下記のステップQ1〜Q7の処理を実行することによって、転位密度の測定方法ごとに、基準ガウス関数を求める。以下、各ステップについて説明する。
(ステップQ1)
ステップQ1では、詳細を後述するように、複数の基準材のクリープ試験を行い、下記の表1に示すように、該クリープ試験後の複数の基準材についてそれぞれ、転位密度、余寿命およびクリープ歪みを求める。転位密度は、X線回折法および陽電子消滅法によって求める。なお、表1においては、説明を簡単にするために、転位密度等を、アルファベット文字を用いて示している。
Figure 0006555077
表1を参照して、ステップQ1では、例えば、任意の温度および応力の条件下で複数の基準材のクリープ試験を行い、複数のクリープ中断材(以下、単に中断材という。)およびクリープ破断材(以下、単に破断材という。)を得る。表1の例では、クリープ試験によって、7本の中断材と1本の破断材を得ている。クリープ試験における温度および応力は、例えば、余寿命を予測する金属材料の使用環境に応じて適宜設定される。クリープ試験によって得られた複数の中断材および破断材の転位密度を、X線回折法および陽電子消滅法によって求める。また、複数の中断材および破断材についてそれぞれ余寿命(寿命消費率)およびクリープ歪み量を求める。本実施形態では、例えば、クリープ試験において破断材が破断に至るまでに要した時間をTrとし、中断材の試験中断時間(試験経過時間)をTとして、各中断材の寿命消費率(=T/Tr)を求める。なお、破断材の寿命消費率は、1.0とする。
(ステップQ2)
本実施形態に係る予測方法のステップQ2は、下記のステップq21およびq22を含む。
(ステップq21)
ステップq21では、ステップQ1で求めたクリープ歪みおよび転位密度に基づいて、転位密度の測定方法ごとに、例えば、図1に示したような、転位密度とクリープ歪みとの関係を示すマスターカーブ(以下、第1マスターカーブという。)を求める。本実施形態では、X線回折法によって求めた転位密度とクリープ歪みとの関係を示す第1マスターカーブ、および陽電子消滅法によって求めた転位密度とクリープ歪みとの関係を示す第1マスターカーブがそれぞれ作成される。
なお、ステップq21においては、1つの測定方法に対して1つの第1マスターカーブを作成してもよく、1つの測定方法に対して複数の第1マスターカーブを作成してもよい。具体的には、例えば表1を参照して、基準材1〜4のクリープ試験条件と基準材5〜8のクリープ試験条件とが異なるような場合に、1つの測定方法に対して複数の第1マスターカーブを作成することが考えられる。このような場合、例えば、転位密度A〜Aとクリープ歪みS〜Sとに基づいて1つの第1マスターカーブを作成し、転位密度A〜Aとクリープ歪みS〜Sとに基づいて1つの第1マスターカーブを作成し、転位密度B〜Bとクリープ歪みS〜Sとに基づいて1つの第1マスターカーブを作成し、転位密度B〜Bとクリープ歪みS〜Sとに基づいて1つの第1マスターカーブを作成してもよい。
(ステップq22)
ステップq22では、ステップQ1で求めたクリープ歪みおよび余寿命に基づいて、図4に示したような、クリープ歪みと余寿命との関係を示すマスターカーブ(以下、第2マスターカーブという。)を求める。第2マスターカーブは、例えば、最小二乗法を用いて作成することができる。
なお、ステップq22においては、1つの第2マスターカーブを作成してもよく、複数の第2マスターカーブを作成してもよい。具体的には、例えば表1を参照して、基準材1〜4のクリープ試験条件と基準材5〜8のクリープ試験条件とが異なるような場合に、複数の第2マスターカーブを作成することが考えられる。このような場合、例えば、クリープ歪みS〜Sと余寿命rt〜rtとに基づいて1つの第2マスターカーブを作成し、クリープ歪みS〜Sと余寿命rt〜rtとに基づいて1つの第2マスターカーブを作成してもよい。
(ステップQ3)
本実施形態に係る予測方法のステップQ3は、下記のステップq31およびq32を含む。
(ステップq31)
ステップq31では、ステップQ1で求めた転位密度とステップq21で測定方法ごとに求めた第1マスターカーブ(図1参照)とに基づいて、測定方法ごとに、複数の基準材のクリープ歪み(以下、第1予測クリープ歪みという。)を求める。表1を参照して、本実施形態では、転位密度Aに基づいて各基準材の第1予測クリープ歪みASを求めるとともに、転位密度Bに基づいて各基準材の第1予測クリープ歪みBSを求める。
(ステップq32)
ステップq32では、ステップq31で測定方法ごとに求めた第1予測クリープ歪みとステップq22で求めた第2マスターカーブ(図4参照)とに基づいて、測定方法ごとに、複数の基準材の余寿命(以下、第1予測余寿命という。)を求める。表1を参照して、本実施形態では、第1予測クリープ歪みASに基づいて第1予測余寿命Atを求めるとともに、第1予測クリープ歪みBSに基づいて第1予測余寿命Btを求める。
(ステップQ4)
ステップQ4では、測定方法ごとに、ステップQ1で求めた複数の基準材の余寿命に対する、ステップQ3で求めた複数の基準材の第1予測余寿命の標準偏差を求める。すなわち、ステップQ4においては、複数の基準材の余寿命の実測値に対する、マスターカーブから決定される第1予測余寿命のばらつきの程度を、上記標準偏差として求めている。表1を参照して、例えば、ステップQ1において余寿命rtが測定され、ステップQ3において第1予測寿命At,Btが求められている場合には、ステップQ4では、余寿命rtに対する第1予測寿命At,Btの標準偏差AD,BDを求める。
(ステップQ5)
ステップQ5では、ステップQ1と同じ測定方法で試験材の組織パラメータ(本実施形態では、転位密度)を求める。本実施形態では、X線回折法および陽電子消滅法によって試験材の転位密度を求める。
(ステップQ6)
本実施形態に係る予測方法のステップQ6は、下記のステップq61およびq62を含む。
(ステップq61)
ステップq61では、上述のステップQ5で求めた試験材の転位密度とステップq21で測定方法ごとに求めた第1マスターカーブ(図1参照)とに基づいて、測定方法ごとに、試験材のクリープ歪み(以下、第2予測クリープ歪みという。)を求める。本実施形態では、X線回折法によって求めた転位密度に基づいて、上記第1マスターカーブから決定されるクリープ歪みを、第2予測クリープ歪みとして求める。同様に、陽電子消滅法に基づいて求めた転位密度に基づいて、上記第1マスターカーブから決定されるクリープ歪みを、第2予測クリープ歪みとして求める。すなわち、ステップq61では、測定方法ごとに、試験材の第2予測クリープ歪みが求められる。
(ステップq62)
ステップq62では、ステップq61で測定方法ごとに求めた試験材の第2予測クリープ歪みとステップq22で求めた第2マスターカーブ(図4参照)とに基づいて、測定方法ごとに、試験材の余寿命(以下、第2予測余寿命という。)を求める。
(ステップQ7)
ステップQ7では、ステップQ6で測定方法ごとに求めた第2予測余寿命を平均値としかつステップQ4で測定方法ごとに求めた標準偏差(表1の標準偏差AD,BDを参照。)を標準偏差とするガウス関数を、基準ガウス関数として、測定方法ごとに求める。すなわち、ステップQ7では、測定方法ごとに、試験材の余寿命の予測値を示す基準ガウス関数が求められる。
〈試験材の余寿命予測〉
本実施形態では、上述のようにして求めた複数の基準ガウス関数を用いて、下記のステップS1およびS2の処理を実行することによって、試験材(金属材料)の余寿命を予測する。
(ステップS1)
ステップS1では、ステップQ7で求めた複数の基準ガウス関数を、確率の乗法定理で乗算することによってガウス関数(以下、乗算ガウス関数という。)を求める。図6は、基準ガウス関数および乗算ガウス関数を表す正規分布図の一例を示す図である。図6には、X線回折法によって求めた転位密度に基づく基準ガウス関数と、陽電子消滅法によって求めた転位密度に基づく基準ガウス関数と、これらの基準ガウス関数を乗算することによって得られる乗算ガウス関数とが示されている。
(ステップS2)
ステップS2では、ステップS1で求めた乗算ガウス関数に基づいて、試験材の余寿命を予測する。図6を参照して、本実施形態では、例えば、乗算ガウス関数の半値幅FWHMによって規定される寿命消費率の範囲t〜tを、試験材の寿命消費率(余寿命)として予測する。
〈作用効果〉
以上のように、本実施形態では、まず、組織パラメータの測定方法ごとに、試験材の余寿命の予測値を示す複数の基準ガウス関数が求められる。そして、複数の基準ガウス関数を乗算して得られる乗算ガウス関数に基づいて、試験材の余寿命が予測される。すなわち、本実施形態では、異なる複数の余寿命予測方法を複合して、試験材の余寿命を予測する。この場合、複数の基準ガウス関数のうちのいずれかの基準ガウス関数が示す余寿命の予測値に大きな誤差が生じていたとしても、その誤差の影響を低減することができる。また、図6に示すように、乗算ガウス関数の標準偏差は、各基準ガウス関数の標準偏差よりも小さくなる。このため、乗算ガウス関数に基づいて余寿命を予測することによって、予測結果のバラツキを小さくすることができる。以上の結果、金属材料の余寿命の高精度な予測が可能になる。
[第2予測方法]
上述の第1予測方法では、測定パラメータ(転位密度)からクリープ歪みを求めた後、該クリープ歪みに基づいて余寿命を求めている。しかしながら、測定パラメータから余寿命を直接求めてもよい。以下、測定パラメータから余寿命を直接求める場合の予測方法について簡単に説明する。
〈基準ガウス関数の導出〉
まず、基準ガウス関数の導出方法について説明する。なお、上述の第1予測方法と本実施形態に係る予測方法とでは、ステップQ1、Q2、Q3およびQ6の処理が異なる。したがって、以下においては、主に、ステップQ1、Q2、Q3およびQ6の処理について説明する。
(ステップQ1)
本実施形態に係る予測方法のステップQ1では、下記の表2に示すように、クリープ試験後の複数の基準材についてそれぞれ、転位密度および余寿命を求める。
Figure 0006555077
(ステップQ2)
ステップQ2では、ステップQ1で求めた余寿命および転位密度に基づいて、測定方法ごとに、転位密度と余寿命との関係を示すマスターカーブを求める。
(ステップQ3)
ステップQ3では、ステップQ1で求めた転位密度とステップQ2で測定方法ごとに求めたマスターカーブとに基づいて、測定方法ごとに、複数の基準材の余寿命(以下、第1予測余寿命という。)を求める。表2を参照して、本実施形態では、転位密度Aに基づいて各基準材の第1予測余寿命Atを求めるとともに、転位密度Bに基づいて各基準材の第1予測余寿命Btを求める。
(ステップQ4)
表2を参照して、ステップQ4では、上述の第1予測方法の場合と同様に、測定方法ごとに、ステップQ1で求めた複数の基準材の余寿命に対する、ステップQ3で求めた複数の基準材の第1予測余寿命の標準偏差を求める。
(ステップQ5)
ステップQ5では、上述の第1予測方法の場合と同様に、ステップQ1と同じ測定方法で試験材の転位密度を求める。本実施形態では、X線回折法および陽電子消滅法によって試験材の転位密度を求める。
(ステップQ6)
ステップQ6では、ステップQ5で求めた転位密度とステップQ2で測定方法ごとに作成したマスターカーブとに基づいて、測定方法ごとに、試験材の余寿命(以下、第2予測余寿命という。)を求める。
(ステップQ7)
ステップQ7では、上述の第1予測方法の場合と同様に、ステップQ6で測定方法ごとに求めた第2予測余寿命を平均値としかつステップQ4で測定方法ごとに求めた標準偏差(表2参照)を標準偏差とするガウス関数を、基準ガウス関数として、測定方法ごとに求める。
〈試験材の余寿命予測〉
本実施形態においても、上述の第1予測方法の場合と同様に、上述のようにして求めた複数の基準ガウス関数を用いて、上述のステップS1およびS2の処理を実行することによって、試験材の余寿命を予測する。
〈作用効果〉
以上のように、本実施形態においても、組織パラメータの測定方法ごとに、試験材の余寿命の予測値を示す複数の基準ガウス関数が求められる。そして、複数の基準ガウス関数を乗算して得られる乗算ガウス関数に基づいて、試験材の余寿命が予測される。すなわち、本実施形態においても、異なる複数の余寿命予測方法を複合して、試験材の余寿命を予測する。この場合、複数の基準ガウス関数のうちのいずれかの基準ガウス関数が示す余寿命の予測値に大きな誤差が生じていたとしても、その誤差の影響を低減することができる。また、上述の第1予測方法の場合と同様に、予測結果のバラツキを小さくすることができる。
[変形例]
上述の実施形態では、乗算ガウス関数の半値幅に基づいて試験材の余寿命を予測しているが、余寿命の予測方法は上述の例に限定されない。例えば、乗算ガウス関数の平均値に基づいて試験材の余寿命を予測してもよく、乗算ガウス関数の標準偏差に基づいて試験材の余寿命を予測してもよい。
上述の実施形態では、1種の組織パラメータを2つの方法によって求める場合について説明したが、1種の組織パラメータを3つ以上の測定方法によって求めてもよい。
[寿命予測例]
以下、上述の第1予測方法によって試験材の寿命消費率を実際に予測した場合の一例を、数値とともに説明する。なお、以下の説明では、クリープ歪み量および寿命消費率を百分率で表す。この予測例では、基準材および試験材として、Ni基合金を用いた。また、この予測例では、X線回折法および陽電子消滅法によって、転位密度を求めた。
まず、複数の基準材について、ステップQ1〜ステップQ4の処理を実行することによって、測定方法ごとに標準偏差(上述のステップQ4参照)を求めた。その結果、下記の表3に示すように、標準偏差はそれぞれ、3.29×10−5および2.31×10−1であった。
Figure 0006555077
次に、上述のステップQ5の処理を実行することによって、試験材の転位密度を求めた。その結果、表3に示すように、X線回折法によって求めた転位密度は、6.75×1012(m−2)であり、陽電子消滅法によって求めた転位密度は、7.17×1012(m−2)であった。
次に、上述のステップq61の処理を実行することによって、試験材のクリープ歪み(第2予測クリープ歪み)を求めた。その結果、表3に示すように、X線回折法に基づく第2予測クリープ歪みは1.70×10−2(%)であり、陽電子消滅法に基づく第2予測クリープ歪みは1.78×10−2(%)であった。
次に、上述のステップq62の処理を実行することによって、試験材の寿命消費率(第2予測余寿命)を求めた。その結果、表3に示すように、X線回折法に基づく第2予測余寿命は2.00×10−1(%)であり、陽電子消滅法に基づく第2予測余寿命は2.12×10−1(%)であった。
次に、上述のステップQ7、ステップS1およびステップS2の処理を実行することによって、試験材の寿命消費率の範囲t〜tを求めた。その結果、試験材の寿命消費率の範囲は、1.97×10−1〜2.05×10−1(%)であった。一方、試験材の寿命消費率の実測値は、0.2(%)であった。すなわち、試験材の実際の寿命消費率は、上述の第1予測方法によって予測された試験材の寿命消費率の範囲内の値であった。このことから、第1予測方法によって、試験材の寿命消費率を高精度で予測できることが分かる。
(他の寿命予測例)
詳細な説明は省略するが、粒内歪みを表す値として、β方向強度偏差および残留応力の2つの値を用いる場合についても、上述の寿命予測例と同様のステップを実行することによって、試験材の余寿命を予測することができる。
以下、粒内歪みを表す値としてβ方向強度偏差および残留応力を用いて寿命消費率を予測した場合の一例を、数値とともに説明する。なお、以下の説明では、クリープ歪み量および寿命消費率を百分率で表す。この予測例では、基準材および試験材として、Ni基合金を用いた。
まず、複数の基準材について、ステップQ1〜ステップQ4の処理を実行することによって、測定方法ごとに標準偏差(上述のステップQ4参照)を求めた。その結果、下記の表4に示す値が得られた。
Figure 0006555077
次に、上述のステップQ5,q61,q62の処理と同様の処理を実行することによって、試験材について、β方向強度偏差、残留応力(MPa)、第2予測クリープ歪みおよび第2予測余寿命(寿命消費率)を求めた。その結果、上記の表4に示す値が得られた。
次に、上述のステップQ7、ステップS1およびステップS2の処理と同様の処理を実行することによって、試験材の寿命消費率の範囲t〜tを求めた。その結果、試験材の寿命消費率の範囲は、47.6〜48.5(%)であった。一方、試験材の寿命消費率の実測値は、48(%)であった。すなわち、試験材の実際の寿命消費率は、本予測例において予測された試験材の寿命消費率の範囲内の値であった。このことから、試験材の寿命消費率を高精度で予測できたことが分かる。
本発明によれば、金属材料の余寿命または寿命消費率を金属材料の劣化の程度に応じて適切に予測することができる。本発明は、例えば、ステンレス鋼、Ni基合金、Fe−Ni基合金等の種々の金属材料の余寿命の予測に好適に利用できる。

Claims (8)

  1. ミクロ組織の状態に関する複数種の組織パラメータに基づいて、高温環境下で使用されている金属材料の余寿命を予測する余寿命予測方法であって、下記の(A)から(C)のステップを備える、金属材料の余寿命予測方法。
    (A)前記高温環境下で使用されている金属材料に対応する金属材料を基準材として、該基準材について、前記組織パラメータの種類ごとに、組織パラメータと余寿命に関する余寿命情報との関係を得るステップ
    (B)前記高温環境下で使用されている前記金属材料を試験材として、該試験材について、前記複数種の組織パラメータの中から選択された1種の組織パラメータを得るステップ
    (C)前記(B)のステップで得た前記1種の組織パラメータおよび前記(A)のステップで得た前記組織パラメータと余寿命情報との関係から、前記試験材の余寿命を予測するステップ
  2. 前記複数種の組織パラメータは、転位密度を含む、請求項1に記載の金属材料の余寿命予測方法。
  3. 前記複数種の組織パラメータは、粒内歪みをさらに含む、請求項2に記載の金属材料の余寿命予測方法。
  4. 前記複数種の組織パラメータは、粒界歪みをさらに含む、請求項3に記載の金属材料の余寿命予測方法。
  5. 前記(B)のステップでは、前記試験材の転位密度が所定の閾値以下の場合には該転位密度が前記1種の組織パラメータとして選択され、前記試験材の転位密度が前記所定の閾値を超えている場合には、転位密度以外の組織パラメータが前記1種の組織パラメータとして選択される、請求項2から4のいずれかに記載の金属材料の余寿命予測方法。
  6. 前記(A)のステップは、下記の(a1)および(a2)のステップを有し、
    前記(A)のステップで得られる前記組織パラメータと余寿命情報との関係は、下記の(a1)のステップで得られる組織パラメータとクリープ歪み量との関係、および下記の(a2)のステップで得られるクリープ歪み量と余寿命との関係を含み、
    前記(C)のステップは、下記の(c1)および(c2)のステップを有する、請求項1から5のいずれかに記載の金属材料の余寿命予測方法。
    (a1)前記基準材について、前記複数種の組織パラメータごとに、組織パラメータとクリープ歪み量との関係を得るステップ
    (a2)前記基準材について、クリープ歪み量と余寿命との関係を得るステップ
    (c1)前記(B)のステップで得た前記1種の組織パラメータおよび前記(a1)のステップで得た該1種の組織パラメータとクリープ歪み量との関係から、前記試験材のクリープ歪み量を得るステップ
    (c2)前記(c1)のステップで得た前記試験材のクリープ歪み量および前記(a2)のステップで得た前記クリープ歪み量と余寿命との関係から、前記試験材の余寿命を予測するステップ
  7. 前記複数種の組織パラメータは、転位密度を含み、
    前記(B)のステップにおいて前記1種の組織パラメータとして転位密度が選択された場合に前記(c1)のステップで得られるクリープ歪み量は、前記(B)のステップにおいて転位密度以外の組織パラメータが前記1種の組織パラメータとして選択された場合に前記(c1)のステップで得られるクリープ歪み量よりも小さい、請求項6に記載の金属材料の余寿命予測方法。
  8. 前記(A)のステップでは、前記組織パラメータと余寿命情報との関係として、前記組織パラメータと余寿命との関係を求める、請求項1から5のいずれかに記載の金属材料の余寿命予測方法。
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