JP2021092406A - 疲労度推定方法、及び疲労度推定用データベースの作成方法 - Google Patents

疲労度推定方法、及び疲労度推定用データベースの作成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属材料の疲労度の推定精度をより高めることができる技術を提供する。【解決手段】金属材料の疲労度を推定する疲労度推定方法であって、前記金属材料の断面において疲労が生じている疲労部を推定するステップS2と、前記疲労部に設定した測定エリアにおける結晶方位差に基づいて、測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求めるステップS4と、前記結晶粒サイズが所定の数値範囲である特定結晶粒の測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を求めるステップS5と、前記疲労部存在率、及び前記金属材料の疲労前後における前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方に基づいて、前記金属材料の推定疲労度を求めるステップS6と、を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、金属材料の疲労度を推定するための疲労度推定方法、及びこれに用いる疲労度推定用データベースの作成方法に関する。
従来から、金属部品の疲労度を推定するための手法として、X線回折によって金属の結晶粒内に生じる歪量を定量的に測定し、この歪量によって疲労度を推定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−344454号公報
X線回折による歪量の測定は、非破壊で行うことができる場合があるという利点を有する。その一方、X線は外部から照射したときの侵入深さが数μmであることから、例えば、軸受部品等に生じる転動疲労等のように、表面よりも比較的内部の領域に疲労が生じるものについては、疲労が生じている領域にまでX線が到達し難く、精度よく測定することが困難な場合があった。
このため、金属材料を切断しその断面に対してX線を照射することで、金属材料の比較的内部の領域についてX線回折による測定を行われることもある。
ここで、金属材料の断面に対してX線を照射する場合、より疲労度の推定精度を高めるために測定結果の精度を高めようとすると、X線の照射範囲を拡げたり、X線の照射時間を延ばしたりすることで、回折強度を高める必要がある。
しかし、X線の照射範囲を拡げれば、疲労部分以外の部分にもX線が照射される可能性が高まり、疲労部分以外の情報が測定結果に含まれてしまうことで、逆に測定結果の精度を低下させるという問題がある。また、X線の照射時間を延ばせば、測定時間が延びるとともにX線回折装置に対する負荷が増大し、コスト的な問題も生じる。
このように、X線回折によって金属材料の断面から疲労度を推定する場合、測定値の精度を高めるために回折強度を高めようとすると、逆に測定値の精度を低下させてしまったり、コストを上昇させたりすることがある。このため、疲労度の推定精度をより高めることが困難であるという問題を有していた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、金属材料の疲労度の推定精度をより高めることができる技術を提供することを目的とする。
本願発明者は、金属材料の疲労度を推定するにあたり、X線回折法と同様、金属材料の結晶解析を行うことができるEBSD(Electron Back Scattered Diffraction Pattern)による分析に着目した。その中で、金属材料の測定エリアにおける複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズをEBSDによって測定したときに、結晶粒サイズが所定の数値範囲である結晶粒の測定エリア内における存在割合が、前記金属材料の疲労度との間で良好な相関関係を有するという知見を得た。本願発明者は、この知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、金属材料の疲労度を推定する疲労度推定方法であって、前記金属材料の断面において疲労が生じている疲労部を推定するステップと、前記疲労部に設定した疲労部測定エリアにおける結晶方位差に基づいて、前記疲労部測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求めるステップと、前記結晶粒サイズが所定の数値範囲である特定結晶粒の前記疲労部測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を求めるステップと、前記疲労部存在率、及び前記金属材料の疲労前後における前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方に基づいて、前記金属材料の推定疲労度を求めるステップと、を含む。
上記構成の疲労度推定方法によれば、推定疲労度を求めるためにEBSDを用いて測定される結晶方位差に基づいて結晶粒サイズを求めるので、X線回折法と比較してより微少な範囲における結晶粒サイズを求めることができる。これにより、疲労が生じている疲労部に対して疲労部測定エリアを正確に設定し測定を行うことができ、疲労部測定エリアにおける複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを精度よく得ることができる。
さらに、この結晶粒サイズに基づいて求められる疲労部存在率及びその変化度は、金属材料の疲労度との間で相関関係を有しているので、金属材料の推定疲労度を求めることができる。
このように、上記構成の疲労度推定方法によれば、疲労部における測定結果を精度よく得つつ推定疲労度を求めることができ、疲労度の推定精度をより高めることができる。
金属材料における疲労部以外の部分は、疲労が生じる前の状態を維持していることがある。このため、疲労部外存在率は、疲労部が疲労する前の疲労部存在率の値に近い値と考えることができる。
よって、上記疲労度推定方法において、前記金属材料の断面における前記疲労部以外の部分に設定した疲労部外測定エリアの結晶方位差に基づいて、前記疲労部外測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求めるステップと、前記特定結晶粒の前記疲労部外測定エリア内における存在割合を示す疲労部外存在率を求めるステップと、をさらに含み、前記金属材料の推定疲労度を求めるステップでは、前記疲労部存在率と、前記疲労部外存在率とに基づいて、前記疲労部存在率の変化度を求めてもよい。
この場合、疲労部存在率と疲労部外存在率とに基づいて、疲労部存在率の変化度を求めるので、疲労前の金属材料を予め用意することなく、金属材料の疲労前後における疲労部存在率の変化度を求めることができる。
さらに、前記疲労部は、転動疲労が生じている部分であるとともに、前記金属材料の転動面表面からの深さ距離が所定値以上の範囲に存在し、前記疲労部以外の部分は、前記金属材料の転動面表面と前記疲労部との間の表層部であることが好ましい。
金属材料に生じる疲労が転動疲労の場合、転動面表面と疲労部との間の表層部の金属組織は、転動疲労が生じる前の状態を維持している。さらに、金属材料に表面処理がなされている場合、疲労部に及ぶ表面処理の影響は、表層部にも及んでいる。このため、疲労前の疲労部の金属組織と表層部の金属組織とはほぼ同様である。このため、表層部における疲労部外存在率は、疲労部が疲労する前の疲労部存在率の値により近い値と考えることができる。
よって、表層部における疲労部外存在率を用いることで、より精度よく疲労部存在率の変化度を求めることができる。
上記疲労度推定方法において、前記所定の数値範囲は、所定の設定値以下であってもよい。
この場合、疲労に応じて増加する、結晶粒サイズが比較的小さい結晶粒を特定結晶粒に含めることができる。
さらに前記結晶粒サイズが結晶粒面積である場合、前記所定の設定値は、0.1μm以上、2.5μm以下であることが好ましい。
設定値が0.1μmより小さい場合、疲労部存在率の変化度と金属材料の疲労度との間の相関関係が部分的に不連続となることがある。また、設定値が2.5μmより大きい場合において、疲労部存在率と金属材料の疲労度との間の相関関係が部分的に不連続となることがある。
所定の設定値は、0.1μm以上、2.5μm以下とすることで、疲労部存在率の変化度と計算寿命比との間の相関、及び、疲労部存在率と計算寿命比との間の相関の両方について、良好な関係とすることができ、精度よく推定計算寿命比を求めることができる。
また、上記疲労度推定方法において、前記疲労部存在率、及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方と、前記金属材料の疲労度との関係を示すデータベースを作成するデータベース作成ステップをさらに含み、前記金属材料の推定疲労度を求めるステップでは、前記データベースを参照することで、前記金属材料の推定疲労度を求めることが好ましい。
さらに本発明は、上述の金属材料の疲労度を推定する疲労度推定方法において、前記疲労部存在率、及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方に基づいて、前記金属材料の推定疲労度を求める際に用いられる、金属材料の疲労度推定用データベースを作成する方法であって、それぞれ異なる疲労度とされた、前記金属材料と同じ素材からなる複数の試験片を得るステップと、前記複数の試験片の断面において疲労が生じている疲労部を推定するステップと、前記疲労部に設定した疲労部測定エリアにおける方位差の分布を、前記複数の試験片それぞれについて測定するステップと、前記疲労部測定エリアの方位差の分布に基づいて、前記疲労部測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを、前記複数の試験片それぞれについて求めるステップと、前記結晶粒サイズが所定の数値範囲である特定結晶粒の前記疲労部測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を、前記複数の試験片それぞれについて求めるステップと、前記複数の試験片それぞれの疲労度と、前記複数の試験片それぞれの前記疲労部存在率及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方と、を対応付けて疲労度推定用データベースとするステップと、を含む。
上記構成によれば、疲労度の推定精度をより高めることができる疲労度推定用データベースを得ることができる。
本発明によれば、金属材料の疲労度の推定精度をより高めることができる。
図1は、実施形態に係る金属材料の疲労度推定方法を示すフローチャートである。 図2は、図1中のステップS1からステップS3までの工程を説明するための図である。 図3は、疲労部の測定エリア内における結晶方位差の分布を表したマップの一部を示した図である。 図4は、結晶粒面積の値(階級)と、存在割合(相対度数)とを対応付けた対応表の一例を示す図である。 図5は、対応表に基づいて表されるヒストグラムの一例を示す図であり、図5(a)は、疲労前における結晶粒面積と、相対度数(存在割合)との関係を示す図、図5(b)は、図5(a)中の結晶粒面積の値が0から1.0μmの範囲を拡大した図、図5(c)は、疲労部における結晶粒面積と、相対度数(存在割合)との関係を示す図、図5(d)は、図5(c)中の結晶粒面積の値が0から1.0μmの範囲を拡大した図である。 図6は、疲労度データベースをグラフとして示した図である。 図7は、推定疲労度を求めるための計算装置の一例を示すブロック図である。 図8は、図6に示す疲労度データベースを作成する際に得られるヒストグラムを示す図であり、疲労部以外の部分の測定エリアにおける結晶粒面積(階級)と、存在割合(相対度数)との関係を示す図である。 図9は、図6に示す疲労度データベースを作成する際に得られる、疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示すグラフである。 図10(a)は、設定値を0.05〜0.50μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図10(b)は、設定値を0.60〜1.20μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図10(c)は、設定値を1.50〜5.00μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図である。 図11(a)は、設定値を0.05〜0.50μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図11(b)は、設定値を0.60〜1.20μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図11(c)は、設定値を1.50〜5.00μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔金属材料の疲労度推定について〕
図1は、実施形態に係る金属材料の疲労度推定方法を示すフローチャートである。
本方法では、まず、疲労度を推定する際の準備工程として、疲労度を推定する対象の試料である金属材料に対して試料調製を行う(ステップS1)。
次に、調製後の金属材料を用い、金属材料の断面において疲労が生じている部分(疲労部)を推定する(ステップS2)。
次に、推定した疲労部に測定エリアを設定し、測定エリアに対してEBSDを用いた結晶方位差の測定を行う(ステップS3)。
次に、結晶方位差の測定結果に基づいて測定エリアにおける複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求める(ステップS4)。本実施形態では、複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズとして、結晶粒面積を求める。
次いで、ステップS4にて求めた結晶粒面積に基づいて、結晶粒面積が所定の数値範囲である特定結晶粒の測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を求める(ステップS5)。
そして、ステップS5にて求めた疲労部存在率に基づいて、疲労部における疲労部存在率の変化度を求め、この変化度に基づいて、金属材料の推定疲労度を求める(ステップS6)。
図2は、図1中のステップS1からステップS3までの工程を説明するための図である。
以下の説明では、疲労度の推定対象となる金属材料として、円すいころ軸受の内輪を用いた場合について説明する。
図2中、試料調製(図1のステップS1)においては、円すいころ軸受1の内輪2を高速カッタ等により切断し、切断片とされた内輪2を樹脂4で埋包することで測定試料6を得る。内輪2は、測定試料6の観察面6aから断面2aが露出した状態で樹脂4に埋包される。断面2aが露出する観察面6aを鏡面研磨することで、断面2aが鏡面研磨される。
なお、内輪2は、例えば、機械構造用合金鋼や機械構造用炭素鋼等を用いて形成され、その後、熱処理される。
次いで、図2中、疲労部の推定(図1のステップS2)においては、鏡面研磨された内輪2の断面2aを所定の腐食液にてエッチングし、断面2aの金属組織を金属顕微鏡等で観察し、金属組織の観察結果から疲労部を推定する。
図2には、観察面6aにおいて観察される、円すいころ軸受の内輪2の断面2aの金属組織を模式的に示している。
図2中の金属組織の模式図には、樹脂4と、樹脂4に埋包された内輪2の断面2aとが示されている。
例えば、金属組織観察において、疲労部の領域と疲労部以外の領域とではコントラストに差が生じる。このコントラストの差により疲労部の有無及びその位置を推定することができる。このような疲労部は、疲労部以外の領域と比較して結晶粒の微細化が顕著に進んでいると推定することができる。
転がり軸受の軌道輪においては、転動体が走行する軌道面(転動面)近傍よりも内部の領域に転動疲労が生じる。
図2中の金属組織の模式図において、内輪2には、軌道面2b表面よりも内部の領域に疲労部の領域が生じている。
この疲労部の領域は、一般に、軌道面2bの表面からの深さ距離が50μmから200μmの範囲に生じる。
軌道面2b表面と疲労部の領域との間に位置する表層部、及び疲労部よりも内部側に位置する深部には、疲労部のように結晶粒の微細化が進んでおらず、疲労が生じている兆候は見られない。
このように、金属組織の観察によって、周囲と比較して疲労が進んでいる部分である疲労部を推定し、例えば、軌道面2bから疲労部までの距離、及び疲労部の深さ幅等、疲労部の位置情報等を組織観察によって取得する。
但し、負荷荷重が予め判っている定常条件下での使用をした場合においては、計算により疲労部の深さ、位置を推定してもよい。
次いで、図2中、結晶方位差の測定(図2のステップS3)では、金属組織の観察を終えた測定試料6を再度鏡面研磨し、鏡面研磨した測定試料6をSEMにセットし、EBSDによって結晶方位差の測定を行う。
なお、結晶方位差とは、隣接する結晶粒の結晶方位の相対的な差であり、例えば、KAM値(Kernel Average Misorientation)や、LOS値(Local Orientation Spread)等が挙げられる。
結晶方位差の測定を行うには、まず、測定エリアを設定する。疲労部における結晶方位差の測定する場合、疲労部の領域内に測定エリアA1(図2の金属組織の模式図)を設定する。EBSDによって、測定エリアA1内における結晶方位差を測定する。
測定エリアA1(疲労部測定エリア)は、疲労部における結晶方位差を測定する領域であって、疲労部における結晶粒の結晶粒面積を求める対象のエリアとして設定される。
また、本実施形態では、疲労部における結晶方位差の測定の他、表層部における結晶方位差の測定も行う。表層部における結晶方位差の測定も、疲労部における結晶方位差の測定と同様であり、表層部の領域内に測定エリアA2(図2の金属組織の模式図)を設定し、測定エリアA2内における結晶方位差を測定する。
測定エリアA2(疲労部外測定エリア)は、疲労部以外のエリアにおける結晶方位差を測定する領域であって、疲労部以外のエリアにおける結晶粒の結晶粒面積を求める対象のエリアとして設定される。
なお、測定エリアA1,A2は、例えば、一辺が30μmの正方形状に設定される。
次いで、図1のステップS4に示すように、結晶方位差の測定の結果に基づいて複数の結晶粒それぞれの結晶粒面積を求める。
測定エリアに対する結晶方位差の測定結果からは、測定エリアにおける結晶方位差の分布を得ることができる。
ここで、本実施形態では、結晶方位差が15deg以上の場合に結晶粒界と定義する。これにより、測定エリアにおける結晶方位差の分布を、結晶方位差が15deg以上の領域と、結晶方位差が15deg未満の領域とで2つの水準に分類することができ、2つの水準で分類した結晶方位差の分布をマップとして表すことができる。
図3は、測定エリアA1内における結晶方位差の分布を表したマップの一部を示した図である。図3では、結晶方位差が15deg以上の測定点エリアPを黒(色付き)で示し、結晶方位差が15deg未満の測定点エリアPを白(色なし)で示している。
図3に示すように、結晶方位差が15deg以上の領域は、線状部Bとして現れる。線状部Bは網目状に現れる。
本実施形態では、線状部Bを測定エリアA1内の結晶粒界と定義し、この線状部Bに囲まれる領域Gが結晶粒に相当するものとし、測定エリアA1内における各領域Gの面積を結晶粒面積として求める。
また、本実施形態では、測定エリアA1内における結晶粒面積と同様に、測定エリアA2内における各領域Gの面積についても結晶粒面積として求める。
測定エリアA1(A2)内における各領域Gの面積(結晶粒面積)は、例えば、測定エリアA1(A2)内における結晶方位差の分布を表した画像を画像処理することで求めることができる。
次いで、図1のステップS5に示すように、測定エリアA1における疲労部存在率を求める。
疲労部存在率を求めるために、まず、測定エリアA1内における各結晶粒(図3中の領域G)の結晶粒面積を、一定の数値範囲ごとに分類し、分類した結晶粒面積の値を階級、階級ごとの結晶粒の個数を度数とした度数分布を求める。
結晶粒面積を度数分布で表した場合、その相対度数は、測定エリアA1内に含まれる結晶粒の全個数に対する、各階級(各結晶粒面積の値)に含まれる結晶粒の個数の割合を示す。つまり、相対度数は、測定エリアA1内における、各階級に対応する結晶粒の存在割合を示す。
図4は、結晶粒面積の値(階級)と、存在割合(相対度数)とを対応付けた対応表の一例を示す図である。
図4中、対応表は、疲労部の測定エリアA1における度数分布と、表層部の測定エリアA2における度数分布とを含む。
各階級は、予め設定した数値幅に設定される(数値幅として、例えば、0.050μm)。図4において、結晶粒面積の値が0.025μmの階級は、0.000μmより大きく、0.050μm以下の数値範囲に設定されている。同様に、結晶粒面積の値が0.075μmの階級は、0.050μmより大きく、0.100μm以下の数値範囲に設定されている。
測定エリアA1(A2)内における各結晶粒は、結晶粒面積の値に応じて、複数の階級のいずれかに対応付けて分類され、度数としてカウントされる。
図5は、対応表に基づいて表されるヒストグラムの一例を示す図であり、図5(a)は、疲労前における結晶粒面積と、相対度数(存在割合)との関係を示す図、図5(b)は、図5(a)中の結晶粒面積の値が0から1.0μmの範囲を拡大した図、図5(c)は、疲労部における結晶粒面積と、相対度数(存在割合)との関係を示す図、図5(d)は、図5(c)中の結晶粒面積の値が0から1.0μmの範囲を拡大した図である。なお、図5(a)及び図5(b)は、未使用の内輪2を用いて得た値を示しており、図5(c)及び図5(d)は、耐久試験によって計算寿命比が17とされた内輪2を用いて得た値を示している。
図5(a)及び図5(b)に示すように、疲労前の内輪2の結晶粒の存在割合は、結晶粒面積が0.2μm以下の範囲で相対的にやや大きくなってはいるが、25μm以下の範囲で見ると、大きな偏りが見られない程度に分散している。
一方、 図5(c)及び図5(d)に示す疲労後の内輪2の結晶粒の存在割合は、結晶粒面積が0.2μm以下の範囲で顕著に大きな値となっており、これらグラフから、結晶粒面積が一定の数値範囲である特定結晶粒の存在割合が、疲労度との間で相関があることが判る。本実施形態では、この特定結晶粒の存在割合と疲労度との相関を利用して推定疲労度を求める。
測定エリアA1内における疲労部存在率は、図4に示した対応表に基づいて求められる。
疲労部存在率は、上述のように、結晶粒面積が所定の数値範囲である特定結晶粒が測定エリアA1内に存在する割合である。言い換えると、疲労部存在率は、測定エリアA1内に含まれる結晶粒の全個数に対する、特定結晶粒の個数の割合である。
例えば、特定結晶粒を定めるための結晶粒面積の所定の数値範囲が0.0μmより大きく、0.2μm以下に設定されている場合、結晶粒面積が0.2μm以下の各階級に対応する結晶粒が特定結晶粒となる。よって、結晶粒面積が0.2μm以下の各階級における存在割合の和を求める。この和が測定エリアA1における特定結晶粒の存在割合であり、測定エリアA1における疲労部存在率である。
例えば、図4に示す対応表に基づいて、所定の数値範囲が0μmより大きく、0.2μm以下の場合の疲労部存在率を求める場合、図4中の疲労部の欄において枠Hにて囲まれる、0.025μm、0.075μm、0.125μm、及び0.175μmの5つの階級に対応する存在割合の和を求める。この場合、疲労部存在率は、0.6521となる。
また、本実施形態では、測定エリアA2内における特定結晶粒の存在割合を示す疲労部外存在率も求める。
疲労部外存在率も疲労部存在率と同様、図4に示す対応表を用いて同様の方法によって求められる。
以上のようにして、図1のステップS5では、測定エリアA1における疲労部存在率が求められるとともに、測定エリアA2における疲労部外存在率が求められる。
次に、図1のステップS6に示すように、疲労部存在率の変化度を求め、この変化度に基づいて、内輪2の疲労度を求める。
疲労部存在率の変化度は、下記式に基づいて求められる。
疲労部存在率の変化度=
((疲労部存在率)−(初期値))/(初期値)
上記式中、初期値とは、疲労部の疲労前の疲労部存在率である。初期値は、例えば、疲労度を推定しようとしている内輪2と全く同じ製造過程を経た内輪2を使用前に切断して予め測定することで得ることができる。
しかし、市場回収した製品としての内輪2の初期値を求めることは困難である。ここで、本実施形態では、初期値に代えて疲労部外存在率を用いる。
上述したように、転がり軸受の軌道輪においては、転動体が走行する軌道面近傍よりも内部の領域に転動疲労が生じ、表層部には疲労発生の兆候が顕著に見られない。よって、疲労部外存在率は、疲労前における疲労部存在率とほぼ同じ値と見なすことができる。
よって、本実施形態では、初期値に代えて疲労部外存在率を用い、疲労部存在率の変化度を求める。
これにより、市場回収した製品であっても、初期値を得ることができ、疲労部存在率の変化度を精度よく求めることができる。
次に、疲労部存在率の変化度に基づいて、内輪2の推定疲労度を求める。
内輪2の推定疲労度は、予め作成された疲労度データベース(疲労度推定用データベース)を参照することで求められる。
図6は、疲労度データベースをグラフとして示した図である。疲労度データベース22は、疲労部存在率の変化度と、内輪2の疲労度との関係を示すデータ(数値又は数式)である。疲労度データベース22の作成方法については、後に説明する。
図6に示す疲労度データベース22は、特定結晶粒を定める結晶粒面積の数値範囲が0.2μm以下であるときの疲労部存在率の変化度と疲労度との関係を示す。
疲労度データベース22は、疲労度として計算寿命比を採用する。
計算寿命比とは、円すいころ軸受1の基本定格寿命L10に対する比率である。基本定格寿命L10とは、通常使用条件において、信頼度が90%のときの定格寿命である。なお、ここでいう寿命とは、軸受の軌道輪又は転動体のいずれかに材料の疲れの最初の形跡が現れるまでの、一方の軌道輪の他の軌道輪に対する総回転数を指す。また、信頼度とは、一群の同じ軸受を同一の条件で運転したとき,特定の寿命に達するか,又はそれを超えることが期待される軸受の個数の総個数に対する割合を指す。定格寿命とは、基本動ラジアル定格荷重又は基本動アキシアル定格荷重に基づく寿命の予測値を指す。
図6中の疲労度データベース22に示されるように、疲労部存在率の変化度は、計算寿命比(疲労度)との間で相関関係を有している。より具体的には、疲労部存在率の変化度と、計算寿命比とは、ほぼ線形関係を有する。
疲労度データベース22は、例えば、推定疲労度を求めるための計算装置に記憶される。
図7は、推定疲労度を求めるための計算装置の一例を示すブロック図である。
計算装置10は、CPU(Central Processing Unit)等からなる処理部12と、ハードディスクやメモリ等からなる記憶部14と、入出力インタフェース16とを含むコンピュータ等によって構成される。
記憶部14には、計算装置10の動作に必要なプログラムや、各種データ等が記憶される。計算装置10が有する機能は、記憶部14に記憶された前記プログラムを処理部12が実行することにより実現される。処理部12は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された前記プログラムを読み込むことで、前記計算装置10が有する機能を実現してもよい。
入出力インタフェース16には、キーボードやマウス等からなる入力デバイス18と、ディスプレイやプリンタ等からなる出力デバイス20とが接続されている。入出力インタフェース16は、これら入力デバイス18及び出力デバイス20を介して各種情報の入出力を行う。
図7に示すように、疲労度データベース22は、記憶部14に記憶される。
入力デバイス18を通じて計算装置10に、疲労部存在率の変化度が与えられると、処理部12は、疲労度データベース22を参照し、与えられた変化度に対応する計算寿命比を求める。
例えば、疲労部存在率の変化度として2.4という値が計算装置10に与えられると、処理部12は、疲労度データベース22(図6)を参照し、変化度の値が2.4の場合の計算寿命比を求める。
処理部12は、図6中、線図Lにおいて変化度の値が2.4である点Mを特定し、点Mに対応する計算寿命比を推定疲労度として求める。
図6の場合、変化度の値2.2に対応する計算寿命比は、約17となる。よって、処理部12は、内輪2の推定疲労度としての推定計算寿命比が17である旨を出力デバイス20を通じて出力する。
このように、本実施形態では、推定疲労度を求めるためにEBSDを用いて測定される結晶方位差を用いて結晶粒面積を求めるので、X線回折法と比較してより微少な範囲の測定を行うことができる。これにより、疲労が生じている疲労部に対して測定エリアA1を正確に設定し測定を行うことができ、測定エリアA1における結晶粒それぞれの結晶粒面積を精度よく得ることができる。
さらに、この結晶粒面積に基づいて求められる疲労部存在率及びその変化度は、金属材料である円すいころ軸受1の計算寿命比(疲労度)との間で相関関係を有しているので、推定計算寿命比を求めることができる。
このように、上記構成によれば、疲労部における測定結果を精度よく得つつ推定疲労度を求めることができ、疲労度の推定精度をより高めることができる。
また、本実施形態では、疲労部存在率の変化度を用いて推定疲労度を求めるので、疲労前における疲労部存在率の初期値の違いによる影響を抑制でき、より推定精度を高めることができる。
また、疲労部に設定された測定エリアA1における疲労部存在率と、疲労部以外のエリアに設定された測定エリアA2における疲労部外存在率とに基づいて、疲労部存在率の変化度を求めるので、疲労前の円すいころ軸受1を予め用意することなく、円すいころ軸受1の疲労前後における疲労部存在率の変化度を求めることができる。よって市場回収した製品であっても、疲労部存在率の変化度を求めることができる。
さらに、本実施形態において測定エリアA2を設定した表層部は、疲労前の疲労部の金属組織とほぼ同様であり、表層部における疲労部外存在率は、疲労部が疲労する前の疲労部存在率の値に近い値と考えることができる。よって、表層部における疲労部外存在率を用いることで、より精度よく疲労部存在率の変化度を求めることができる。
また、本実施形態では、1カ所の測定エリアA1(A2)から疲労部存在率(疲労部外存在率)を求めて計推定算寿命比を求めた場合を例示したが、複数の測定エリアA1(A2)から複数の計算寿命比を求め、これらの平均値から推定計算寿命比を求めてもよい。
〔疲労度データベースの作成について〕
次に、疲労度データベース22の作成方法について説明する。
疲労度データベース22を作成するには、まず、複数の円すいころ軸受1を用意し、耐久試験機を用いてこれら複数の円すいころ軸受1に対して耐久試験を行う。このとき、複数の円すいころ軸受1それぞれの計算寿命比が、例えば、0から17程度の範囲で分散するように耐久試験を行う。
これによって、それぞれ異なる計算寿命比(疲労度)とされた複数の円すいころ軸受1を得ることができる。
次いで、異なる計算寿命比とされた複数の円すいころ軸受1の内輪2それぞれについて、図1のステップS1からステップS6までの工程を行う。これにより、複数の内輪2それぞれについて、疲労部存在率、疲労部外存在率、及び疲労部存在率の変化度を得ることができる。
ここで、各工程を行う中で、図4に示した対応表を、複数の内輪2それぞれについて得ることができる。よって、複数の内輪2それぞれについて、疲労部存在率、及び疲労部外存在率を求める際、特定結晶粒を定めるための結晶粒面積の数値範囲を任意に設定することができる。よって、任意に設定された結晶粒面積の数値範囲によって定まる特定結晶粒についての疲労部存在率、疲労部外存在率、及び疲労部存在率の変化度を得ることができる。
次いで、複数の円すいころ軸受1それぞれの計算寿命比と、複数の円すいころ軸受1の内輪2それぞれの疲労部存在率の変化度とを対応付ければ、疲労度データベース22を得ることができる。
例えば、特定結晶粒を定めるための結晶粒面積の数値範囲を0.2μm以下に設定すれば、図6に示す疲労度データベース22が得られる。
疲労度データベース22は、複数の円すいころ軸受1それぞれの計算寿命比と、複数の円すいころ軸受1の内輪2それぞれの疲労部存在率の変化度とを対応付けた数値データであってもよいし、数値データに基づいて求めることができる近似式であってもよい。
図8は、図6に示す疲労度データベース22を作成する際に得られるヒストグラムを示す図であり、測定エリアA2における結晶粒面積(階級)と、存在割合(相対度数)との関係を示す図である。図8では、異なる4つの計算寿命比それぞれのグラフを示している。
図8に示すように、計算寿命比が0.0(疲労前)、2.3、10.0、及び17.0のいずれの場合においても、各結晶粒面積に対する存在割合の分布は互いに大きな変化が見られない。つまり、測定エリアA2における存在割合の分布は、疲労度である計算寿命比が増加しても、ほとんど変化が見られないことが判る。内輪2は、製造段階においてなされる焼き入れ等による歪を多少有している。図8は、内輪2が使用されたとしても、疲労部外存在率が疲労前の初期の値をほぼ維持していることを示している。
つまり、図8は、疲労部外存在率が、疲労前における疲労部存在率とほぼ同じ値と見なすことができることを裏付けている。
また、疲労部存在率の変化度と同様に、疲労部存在率についても、複数の円すいころ軸受それぞれの計算寿命比に対して対応付けることができる。
図9は、図6に示す疲労度データベース22を作成する際に得られる、疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示すグラフである。
図に示すように、疲労部存在率は、疲労部存在率の変化度と同様に、計算寿命比(疲労度)との間で相関関係を有している。よって、疲労部存在率と、計算寿命比との関係を疲労度データベースとし、疲労部存在率を用いて推定計算寿命比を求めることもできる。
〔特定結晶粒を定める結晶粒面積の数値範囲について〕
本実施形態において、特定結晶粒を定める結晶粒面積の数値範囲(所定の数値範囲)は、下限値及び上限値を任意に設定してもよいが、図5に示したように、結晶粒面積が比較的小さい結晶粒が疲労に応じて増加する。よって、特定結晶粒を定める結晶粒面積の数値範囲は、所定の設定値以下とすることができる。つまり、前記数値範囲の下限値を0.0μm、上限値を設定値とすることができる。これにより、疲労に応じて増加する、結晶粒面積が比較的小さい結晶粒を特定結晶粒に含めることができる。
以下、上記設定値について説明する。
図10(a)は、設定値を0.05〜0.50μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図10(b)は、設定値を0.60〜1.20μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図10(c)は、設定値を1.50〜5.00μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図である。
これら疲労度データベースは、上述の疲労度データベースの作成方法と同様の方法で得たものであり、複数の円すいころ軸受1の内輪2を用いて得たものである。
また、これら疲労度データベースは、計算寿命比0、2.3、10、17に対応する変化度をプロットして作成されたものである。
図10(a)に示すように、設定値が0.10〜0.50μmのデータベースは、いずれも計算寿命比に対してほぼ単純増加しており、疲労部存在率の変化度と計算寿命比との間に良好な相関関係があることが判る。
一方、設定値が0.05μmのデータベースは、計算寿命比10から17の間において他の部分と比較して傾きが著しく大きくなっており、疲労部存在率の変化度と計算寿命比との相関関係が部分的に不連続となっている。このため、設定値が0.05μmのデータベースを用いた場合、推定計算寿命比の精度を低下させるおそれがある。
また、図10(b),(c)に示すように、設定値が0.60〜5.00μmのデータベースは、いずれも計算寿命比に対してほぼ単純増加しており、疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との間に良好な相関関係があることが判る。
これらより、疲労部存在率の変化度に基づいて内輪2の計算寿命比を求める場合、設定値は0.10μm以上であることが好ましい。
次に、図10にて示した疲労度データベースの作成に用いたデータと同じデータを用い、疲労部存在率と計算寿命比との関係を疲労度データベースとしたときの設定値について説明する。
図11(a)は、設定値を0.05〜0.50μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図11(b)は、設定値を0.60〜1.20μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図、図11(c)は、設定値を1.50〜5.00μmの範囲で設定した場合の疲労部存在率と、計算寿命比との関係を示す疲労度データベースを示す図である。
図11(a),(b)に示すように、設定値が0.05〜1.20μmのデータベースは、いずれも計算寿命比に対してほぼ単純増加しており、疲労部存在率の変化度と、計算寿命比との間に良好な相関関係があることが判る。
一方、図11(c)に示すように、設定値が3.00〜5.00μmのデータベースは、計算寿命比が2.3以下において、計算寿命比に対して疲労部存在率が単純増加していない部分が見られ、疲労部存在率と計算寿命比との相関関係が部分的に不連続となっている。このため、設定値が3.00〜5.00μmのデータベースを用いた場合、推定計算寿命比の精度を低下させるおそれがある。
これらより、疲労部存在率に基づいて内輪2の計算寿命比を求める場合、設定値は2.5μm以下であることが好ましい。
以上より、設定値は、0.1μm以上、2.5μm以下であることが好ましい。
設定値をこの範囲に設定することで、疲労部存在率の変化度と計算寿命比との間の相関、及び、疲労部存在率と計算寿命比との間の相関の両方について、良好な線形関係とすることができ、精度よく推定計算寿命比を求めることができる。
〔その他〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。
上記実施形態において、計算装置10が、図1中のステップS6において、疲労部存在率の変化度に基づいて推定計算寿命比を求める処理を行う場合を例示したが、図1中のステップS4,S5において行われる結晶粒面積の算出や、疲労部存在率の算出等を、計算装置10に実行させてもよい。さらに、SEM及びEBSDを制御するコンピュータに、本実施形態の方法を実行させてもよい。
また、上記実施形態では、結晶方位差の測定結果に基づいて得られる結晶粒サイズとして結晶粒面積を求めた場合を例示したが、結晶粒面積に代えて結晶粒の平均円相当径を求め、これに基づいて金属材料の疲労度推定を行うこともできる。
また、上記実施形態において、疲労部存在率の変化度を求める際に用いる初期値として、表層部に設定された測定エリアA2における疲労部外存在率を用いる場合を例示したが、内輪2の芯部等、測定エリアA2を表層部及び疲労部以外の他の部分に設定して求めた疲労部外存在率を用いてもよい。
また、上記実施形態では、疲労部存在率の変化度を用いて推定計算寿命比を求める場合を例示したが、上述のように、疲労部存在率を用いて推定計算寿命比を求めてもよいし、両方を用いて推定計算寿命比を求めてもよい。
また、上記実施形態では、疲労度として計算寿命比を用いた場合を例示したが、例えば、疲労による損傷が生じるまで耐久試験を行い、試験開始から損傷が生じた時点までの試験時間等を基準(最大値)とし、これに対する比率によって疲労度を表すこともできる。
また、上記実施形態では、円すいころ軸受の内輪の疲労度を推定する場合を例示したが、外輪やころについて疲労度を推定することができるし、円すいころ軸受に限らず、他の転がり軸受の構成部品についても推定疲労度を求めることができる。
さらに、転がり軸受に限らず、金属疲労が生じる機械要素に対して、本発明に係る方法は適用することができる。
また、上記実施形態では、機械構造用合金鋼や機械構造用炭素鋼といった鉄鋼材料について推定疲労度を求めたが、アルミニウム合金等、鉄鋼材料以外の金属材料の推定疲労度を求めることができる。
A1,A2 測定エリア

Claims (7)

  1. 金属材料の疲労度を推定する疲労度推定方法であって、
    前記金属材料の断面において疲労が生じている疲労部を推定するステップと、
    前記疲労部に設定した疲労部測定エリアにおける結晶方位差に基づいて、前記疲労部測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求めるステップと、
    前記結晶粒サイズが所定の数値範囲である特定結晶粒の前記疲労部測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を求めるステップと、
    前記疲労部存在率、及び前記金属材料の疲労前後における前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方に基づいて、前記金属材料の推定疲労度を求めるステップと、を含む
    疲労度推定方法。
  2. 前記金属材料の断面における前記疲労部以外の部分に設定した疲労部外測定エリアの結晶方位差に基づいて、前記疲労部外測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを求めるステップと、
    前記特定結晶粒の前記疲労部外測定エリア内における存在割合を示す疲労部外存在率を求めるステップと、
    をさらに含み、
    前記金属材料の推定疲労度を求めるステップでは、前記疲労部存在率と、前記疲労部外存在率とに基づいて、前記疲労部存在率の変化度を求める
    請求項1に記載の疲労度推定方法。
  3. 前記疲労部は、転動疲労が生じている部分であるとともに、前記金属材料の転動面表面からの深さ距離が所定値以上の範囲に存在し、
    前記疲労部以外の部分は、前記金属材料の転動面表面と前記疲労部との間の表層部である
    請求項2に記載の疲労度推定方法。
  4. 前記所定の数値範囲は、所定の設定値以下である
    請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の疲労度推定方法。
  5. 前記結晶粒サイズは、結晶粒面積であり、
    前記所定の設定値は、0.1μm以上、2.5μm以下である
    請求項4に記載の疲労度推定方法。
  6. 前記疲労部存在率、及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方と、前記金属材料の疲労度との関係を示すデータベースを作成するデータベース作成ステップをさらに含み、
    前記金属材料の推定疲労度を求めるステップでは、前記データベースを参照することで、前記金属材料の推定疲労度を求める
    請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の疲労度推定方法。
  7. 請求項1に記載の金属材料の疲労度を推定する疲労度推定方法において、前記疲労部存在率、及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方に基づいて、前記金属材料の推定疲労度を求める際に用いられる、金属材料の疲労度推定用データベースを作成する方法であって、
    それぞれ異なる疲労度とされた、前記金属材料と同じ素材からなる複数の試験片を得るステップと、
    前記複数の試験片の断面において疲労が生じている疲労部を推定するステップと、
    前記疲労部に設定した疲労部測定エリアにおける方位差の分布を、前記複数の試験片それぞれについて測定するステップと、
    前記疲労部測定エリアの方位差の分布に基づいて、前記疲労部測定エリア内における複数の結晶粒それぞれの結晶粒サイズを、前記複数の試験片それぞれについて求めるステップと、
    前記結晶粒サイズが所定の数値範囲である特定結晶粒の前記疲労部測定エリア内における存在割合を示す疲労部存在率を、前記複数の試験片それぞれについて求めるステップと、
    前記複数の試験片それぞれの疲労度と、前記複数の試験片それぞれの前記疲労部存在率及び前記疲労部存在率の変化度の少なくとも一方と、を対応付けて疲労度推定用データベースとするステップと、を含む
    疲労度推定用データベースの作成方法。
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