以下、図面を用いて、本発明の実施形態について具体的に説明する。尚、下記はあくまでも実施例であって、本発明の実施態様が下記実施例に限定されることを意図するものではない。
初めに、風力発電システムの概略構成等について図1および図2を用いて説明する。 まず、図1を用いて、本発明を適用可能な風力発電システム全体の概略構成について説明する。
図1の風力発電システム1は、複数のブレード2と、複数のブレード2を接続するハブ3とで構成されるロータ4を備える。ロータ4はナセル5に回転軸(図1では省略する)を介して連結されており、回転することでブレード2の位置を変更可能である。ナセル5はロータ4を回転可能に支持している。ナセル5は発電機6を適宜位置に備える。ブレード2が風を受けることによりロータ4が回転し、ロータ4の回転力が発電機6を回転させることで電力を発生することができる。
ブレード2の各々には、図では省略するが、ブレード2とハブ3の位置関係、すなわちピッチ角と呼ぶブレードの角度、を変更可能なピッチアクチュエータ7を備えている。ピッチアクチュエータ7を用いてブレード2のピッチ角を変更することにより、風に対するロータ4の回転エネルギーを変更できる。これにより、広い風速領域においてロータ4の回転速度を制御しながら、風力発電システム1の発電電力を制御することができる(可変速制御)。
図1の風力発電システム1では、ナセル5はタワー8上に設置されており、タワー8に対して回転可能に支持されている。ハブ3やナセル5を介してブレード2の荷重がタワー8に支持される。タワー7は、基部(図では省略)に設置され、地上または洋上等の所定位置に設置される。
また、風力発電システム1はコントローラ9を備えており、ナセル5の水平面からの傾斜角度や傾斜加速度を計測するナセル傾斜情報計測センサ10や、例えばナセル上に配置されてナセル5近傍の風速を計測する風速センサ(図では省略)、発電機の回転速度を計測する回転センサ(図では省略)に基づき、コントローラ9が発電機6とピッチアクチュエータ7を調整することで、風力発電システム1が出力する電力を調整する。
なお、風向を計測する風向センサ、発電機が出力する有効電力を計測する電力センサ、などを適宜位置に備えている。
図1ではコントローラ9はナセル5またはタワー8の外部に設置される形態にて図示されているが、これに限ったものではなく、ナセル5またはタワー8の内部またはそれ以外の所定位置、または風力発電システム1の外部に設置される形態であっても良い。
ここで、図2を用いて風力発電システム1の発電動作概要について説明する。図2は風速に対する、発電電力、発電機回転速度、発電機トルク、およびピッチ角度の関係を示す概要図である。図2の横軸は風速を示し、縦軸の上方側は上から順に、発電電力が高いこと、発電機回転速度が高いこと、発電機トルクが高いこと、ピッチ角度がフェザー側であることをそれぞれ示す。
まず、発電電力Pに注目すると、カットイン風速vinからカットアウト風速voutの範囲で発電電力を変化させるが、風速vdまでは風速vの増加に伴い発電電力Pを増加させるが、風速vdからカットアウト風速voutまでは発電出力Pを一定とする。
このような風速vに対する発電電力Pの特性に従って運転するために、コントローラ9は下記のように発電機回転速度ω、発電機トルクQ、およびブレード2のピッチ角度Θを調整する。
コントローラ9は発電機回転速度ωを、カットイン風速vinから風速vaまでは同期回転速度ωlowに保持し、風速vaから風速vbまでは風速vに伴って増加し、風速vbからカットアウト風速voutまで定格回転速度ωratedに保持する。また、コントローラ9は発電機トルクQをカットイン風速vinから風速vdまでは風速vの増加に従って定格トルクQratedまで増加し、風速vdからカットアウト風速voutまでは定格トルクQratedに保持する。発電機回転速度ωと発電機トルクQを上記のように調整するために、コントローラ9はロータ4が受ける風力エネルギーを調整するためにブレード2のピッチ角度Θをカットイン風速vinから風速vbまでファイン側のピッチ角度に保持し、風速vbからカットアウト風速voutまでは風速vの増加に伴い、ピッチ角度Θを増加させる。
ここで、タワー振動制御を可変速制御と並行して運用する際には、両手段の干渉が課題となる。具体的には、ブレードのピッチ角度が干渉した場合には、可変速制御がタワー振動制御手段の効果を妨害したり、逆にタワー振動制御が可変速制御の効果を妨害したりする。
特に、ピッチ角度の変化がロータに入力するエネルギーへの変化に対する感度が大きい風速が高い条件下において、タワー振動制御手段が、風速が低い条件と同様にピッチ角度を制御すると、可変速制御手段が必要とするピッチ角度から大きく動作させることで、当該風速で最大の発電電力を発生させるための風力エネルギーをロータが受けることができなくなり、結果としてロータの回転変動や発電電力の変動を招く場合がある。上記を鑑みると、可変速制御手段による発電動作に干渉しないタワー振動制御手段の適用が好ましい。
各実施例は、図2に示した風力発電システム1の発電運転の際に、ナセル5(またはタワー8)に発生する前後方向の振動(以下、タワー振動)を低減するタワー振動制御手段について主として説明しており、風速vに基づいて風力発電システム1の制御手段を調整する機能を備えることで、タワー振動を励起せず、適切にタワー振動を低減するものである。特に、コントローラ9が備えるタワー振動制御手段が決定するタワー振動を制御する調整幅を風速に基づいて決定する様にしている。そして、この調整幅を用いてピッチ角度目標値を決定している。
更に、風速が増加するに従ってタワー振動制御手段の制御ゲインを減少させたり、可変速制御手段におけるピッチ角度制御手段やトルク制御手段の制御ゲインを増加させたりすることにより、可変速制御手段に対するタワー振動制御手段の効果の割合を減少させることも可能である。以下、図面を用いて各実施例について更に説明する。
図3から図8を用いて、本発明の実施例1に係る風力発電システム制御手段101について説明する。
図3は、本発明の実施例1における風力発電システム1のコントローラ9に実装される風力発電システム101の処理概要を示すブロック線図である。実施例1の風力発電システム101は、可変速制御手段301、風速に基づく制御ゲイン調整手段302、タワー振動制御手段303、および加算部304、により構成される。
可変速制御手段301は、発電機回転速度ωに基づき、発電機トルク目標値Q*および可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定する。この可変速制御手段301は、図2に示した風力発電システム1の運転特性を実現できるように、発電機トルク目標値Q*と可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定する。
風速に基づく制御ゲイン調整手段302は、風速vに基づき、タワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを決定する。実施例1では、図では省略するが、後述するタワー振動制御手段303が比例項により構成される比例制御に基づくことを想定する。ただし、これに限ったものではなく、タワー振動制御手段303は積分項や微分項を備えたものであっても良いし、タワー傾斜情報の所定周波数領域のみを通過させるフィルタを利用するものであってもよい。
図4は、実施例1に係る風速に基づく制御ゲイン調整手段302の特性概要の一例を示す図である。図4の横軸は風速、縦軸は風速に基づく制御ゲイン調整手段302が決定するタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを示し、縦軸上方が制御ゲインが大きいことを示す。
風速に基づく制御ゲイン調整手段302はカットイン風速vinから風速v1まではタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを一定に保持し、風速v1から風速v2の風速範囲ではタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを風速vの増加に伴って減少させ、風速v2からカットアウト風速voutではタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを一定に保持する。図4に示す通り、タワー振動制御手段の制御ゲインGTVCの特性は、風速vが増加するに従って減少する特性である。
ただし、風速に基づく制御ゲイン調整手段302の特性はこれに限ったものではなく、一定に保持する期間を保有しない特性であっても良いし、階段状に減少させる特性や、風速vの高次の曲線に近似した特性であっても良い。減少の仕方として、次の様に考えることが可能である。即ち、カットイン風速からカットアウト風速の範囲内に含まれる第1の風速及び第2の風速を規定した場合(但し、第1の風速よりも第2の風速が高いものとする)、1)カットイン風速から第1の風速の間の風速においてタワーの振動を制御する第1の調整幅が、第2の風速からカットアウト風速の間の風速においてタワーの振動を制御する第2の調整幅よりも小さく、2)第1の風速から第2の風速の間の風速においてタワーの振動を制御する第3の調整幅が、第1の調整幅よりも小さく、かつ第2の調整幅よりも大きくなる様に各調整幅を決定しても良い。第1の風速を例えば図4におけるv1とし、第2の風速を風速v2とすると、その間の風速における制御ゲインは、v1における制御ゲインとし、v2における制御ゲインとの間の値となっている。
タワー振動制御手段303は、タワー振動情報、および図4に示す特性に基づくタワー振動制御手段の制御ゲインGTVC、に基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定する。ここで、タワー振動制御手段303の入力であるタワー傾斜情報は図には明記しないが、タワー8の前後方向の傾斜角度であっても良いし、更にはタワーに限られず、ナセル5の前後方向の加速度であっても良い。以下では、タワー8の前後方向の傾斜角度(以下、タワー傾斜角度)として説明する。
図4に示すタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCの特性を備えることにより、タワー振動制御手段303が決定するタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCは図5に示すような特性を備える。
図5は、風速vに対するタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を示す。図上方がタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|が大きいことを示す。カットイン風速vinから風速v1まではタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を一定に保持し、風速v1から風速v2の風速範囲ではタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を風速vの増加に伴って減少させ、風速v2からカットアウト風速voutではタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を一定に保持する(ここでは、零より大の例を示している)。図5に示す通り、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|の特性は、風速vが増加するに従って減少する特性である。
ただし、タワー振動制御手段303の特性はこれに限ったものではなく、一定に保持する期間を保有しない特性であっても良いし、階段状に減少させる特性や、風速vの高次の曲線に近似した特性であっても良い。
図6は図5と同様に風速に対するタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|の特性の別の一例を示した図である。図5と図6の違いは、風速v2からカットアウト風速voutにおいて、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を零とする特性を備えることである。このように、タワー振動制御手段303の特性は、例えば所定値を超えた場合に、高風速時にタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅の絶対値|Θ*TVC|を零とする特性を備えるものであっても良い。そして、所定値が発電運転範囲に収まる様に、カットイン風速よりも大きく、カットアウト風速よりも小さくしている。
また、加算部304では、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定する。即ち、コントローラ9はタワー振動制御手段303が決定するタワー8の振動を制御する調整幅を用いてピッチ角度目標値Θ*を決定している。尚、本実施例では、ピッチ角度目標値Θ*はピッチアクチュエータ7へ送信される指令値と一致することを想定するが、これに限らず、例えばピッチ角度目標値Θ*の前回値を加算していく処理を備えていたり、ピッチ角度目標値Θ*の速度をピッチアクチュエータ7へ送信したりするものであっても良い。
ここで、図4、図5および図6のような特性を備える理由は下記の通りである。ロータ4が風から後方へ押しやる方向へ受ける力(以下、スラスト力)は風速vの2乗に、スラスト係数を乗算することで得られることが知られている。このスラスト係数は風速vにほぼ比例する特性を備えることから、結果として、スラスト力は風速vの3乗に比例する特性を備える。このため、風速vの増加に従ってスラスト力が増加するが、ブレード2のピッチ角度の感度は風速vの増加に従って増加することとなる。
タワー振動制御手段を適用する際には、上記特性を考慮したピッチ角度の調整を要する。タワー振動制御手段で決定されるピッチ角度調整幅Θ*TVCは、風速vが低い状態での所定タワー傾斜状態でのピッチ角度の調整幅Aに対し、同一のタワー傾斜状態において風速vが高い場合に同一のピッチ角度の調整幅Bとすると、上述の通り風速vが高い方がピッチ角度に対するスラスト力の感度が大きいため、大きくスラスト力を減少させることで、タワー傾斜状態を大きく変化させる。タワー振動制御手段303はタワー振動を低減するために適用される手段であるが、上述のようなスラスト力を考慮しない場合には、タワー振動を適切に低減することができない場合がある。
図7は、実施例1に係る風力発電システム制御手段101の効果を示す概要図である。図7の横軸は時間を示し、縦軸は図上方より風速v、発電機回転速度ω、発電電力P、およびタワー傾斜角度Ψを示す。縦軸の上方側は、上から順に風速vが高いこと、発電機回転速度ωが高いこと、発電電力Pが高いこと、タワー傾斜角度Ψが後方側であることをそれぞれ示す。図7は風速vが図2に示す風速vcからカットアウト風速voutの範囲内において、時刻t2から時刻t3の間に増加し、時刻t3から時刻t4までは増加した状態を維持する条件を想定した例である。なお、図7に示す破線は本発明に係る風力発電システム制御手段101のタワー振動制御手段303を適用しない場合(風速に応じてタワー振動制御手段で決定されるピッチ角度調整幅Θ*TVCを変更しない場合)の結果を示し、実線が本実施例に係る風力発電システム制御手段101のタワー振動制御手段303を適用した場合の結果を示す。
本実施例に係る風力発電システム制御手段101のタワー振動制御手段303を適用しない場合(風速に応じてタワー振動制御手段で決定されるピッチ角度調整幅Θ*TVCを変更しない場合)には、t1から時刻t2の間では発電回転速度ωおよび発電電力Pを一定に保持できており、タワー傾斜角度Ψも一定値に保持できている。ただし、時刻t2から時刻t3の間の風速の増加に伴い、タワー傾斜角度Ψが振動を開始する。タワー振動を低減するべく、ブレード2のピッチ角度も変化が大きくなるため、結果として、ロータ4に入力する風力エネルギーが変動することとなり、発電機回転速度ωおよび発電電力Pも変動することとなる。この結果は、可変速制御手段301とタワー振動制御手段303が双方共にブレード2のピッチ角度を調整するために起こる現象であり、複数の制御手段における干渉を示すものである。
これに対し、実線で示す、本発明に係る風力発電システム制御手段101のタワー振動制御手段303を適用した場合には、風速vに基づいてタワー振動制御によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを適切に調整することにより、制御手段間の干渉を抑制している。よって、タワー傾斜角度Ψの振動、発電機回転速度ωおよび発電電力Pの変動をいずれも抑制することができ、安定した発電電力の出力が可能である。
図8は実施例1に係る風力発電システム制御手段101の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS801では、風速vを決定し、次のステップに進む。ステップS802では、風速に基づく制御ゲイン調整手段302において、風速vに基づいてタワー振動制御手段303の制御ゲインGTVCを決定し、次のステップに進む。ステップS803では、発電機回転速度ωを決定し、次のステップに進む。ステップS804では、可変速制御手段301において、発電機回転速度ωに基づいて発電機トルク目標値Q*を決定し、次のステップに進む。ステップS805では、可変速制御手段301において、発電機回転速度ωに基づいて可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定し、次のステップに進む。ステップS806では、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψを決定し、次のステップに進む。ステップS807では、タワー振動制御手段303において、風速vに基づいてタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCおよびタワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS808では、加算部304において、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定した後、一連の処理を終了する。尚、タワー傾斜角度Ψに基づいてタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅を決定しているが、これに限られるものでなく、例えばタワーやナセルの加速度等に基づいて振動制御する振動制御手段にも適用が可能である。以降の各実施例においても同様である。
次に、図9から図11を用いて、本発明の実施例2に係る風力発電システム制御手段101について説明する。
図9は、本発明の実施例2における風力発電システム1のコントローラ9に実装される風力発電システム102の処理概要を示すブロック線図である。実施例2の風力発電システム102は、可変速制御手段901、風速に基づく制限値調整手段902、タワー振動制御手段903、入力値制限手段904、および加算部905、により構成される。
可変速制御手段901は、実施例1で説明した可変速制御手段301と同様のため説明を省略する。
風速に基づく制限値調整手段902は、風速vに基づき、ピッチ角度制限値ΘLTVCを決定する。図10は、実施例2に係る風速に基づく制限値調整手段902の特性概要の一例を示す図である。図10の横軸は風速、縦軸は風速に基づく制限値調整手段902が決定するピッチ角度制限値ΘLTVCを示し、縦軸上方がピッチ角度制限値が大きいことを示す。
風速に基づく制限値調整手段902はカットイン風速vinから風速v1まではピッチ角度制限値ΘLTVCを一定に保持し、風速v1から風速v2の風速範囲ではピッチ角度制限値ΘLTVCを風速vの増加に伴って減少させ、風速v2からカットアウト風速voutではピッチ角度制限値ΘLTVCを一定に保持する。図10に示す通り、ピッチ角度制限値ΘLTVCの特性は、風速vが増加するに従って減少する特性である。
ただし、風速に基づく制限値調整手段902の特性はこれに限ったものではなく、一定に保持する期間を保有しない特性であっても良いし、階段状に減少させる特性や、風速vの高次の曲線に近似した特性であっても良い。また、カットアウト風速voutに近い風速からカットアウト風速voutの風速範囲にて、ピッチ角度制限値ΘLTVCを零とするものであっても良い。
タワー振動制御手段903は、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψに基づいて、タワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCを決定する。図には明記しないが、実施例1にて説明したタワー振動制御手段と同様に、比例項に基づくものや、フィルタを利用したものであっても良い。ただし、実施例1と異なり、その制御ゲインを調整する機能を必ずしも持たなくとも良い。
入力値制限手段904は、風速に基づく制限値調整手段902が決定したピッチ角度制限値ΘLTVCおよびタワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定する。入力値制限手段904の一例を式1に示す。式1は入力値制限手段905の処理概要を示す関係式である。
ピッチ角度制限値ΘLTVCの絶対値|ΘLTVC|とタワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCの絶対値|Θ0*TVC|を比較することで、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定する処理を実行する。具体的には、タワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCの絶対値|Θ0*TVC|が、ピッチ角度制限値ΘLTVCの絶対値|ΘLTVC|よりも小さい場合には、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCにタワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCを格納し、逆の場合には、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCにピッチ角度制限値ΘLTVCを格納する。即ち、絶対値が小さいほうの値を格納する。故に本実施例では、風速の増加に伴って、タワー振動制御手段903が決定する調整幅の制限範囲が小さくなる様にされている。
実施例2においても、実施例1と同様に、風速vの増加に伴って、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを減少させる特性を備えることができる。本実施例では、コントローラ9はピッチ角度目標値Θ*を決定するに際し、タワー振動制御手段903が決定するタワー8の振動を制御する調整幅Θ0*TVCをピッチ角度制限値ΘLTVCとの比較の為に用いている。また、加算部905は、実施例1の加算部303と同様の処理を実行するため、詳細説明を省略する。
なお、実施例2に係る風力発電システム制御手段102の効果は、実施例1にて説明した図7と同様のため、詳細説明を省略する。
図11は実施例2に係る風力発電システム制御手段102の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS1101では、風速vを決定し、次のステップに進む。ステップS1102では、風速に基づく制限値調整手段902において、風速vに基づいてピッチ角度制限値ΘLTVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1103では、発電機回転速度ωを決定し、次のステップに進む。ステップS1104では、可変速制御手段901において、発電機回転速度ωに基づいて発電機トルク目標値Q*を決定し、次のステップに進む。ステップS1105では、可変速制御手段901において、発電機回転速度ωに基づいて可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定し、次のステップに進む。ステップS1106では、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψを決定し、次のステップに進む。ステップS1107では、タワー振動制御手段903において、タワー傾斜角度Ψに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1108では、入力値制限手段904において、ピッチ角度制限値ΘLTVCおよびタワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCに基づいて、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1109では、加算部905において、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定した後、一連の処理を終了する。
次に、図12から図15を用いて、本発明の実施例3に係る風力発電システム制御手段103について説明する。
図12は、本発明の実施例3における風力発電システム1のコントローラ9に実装される風力発電システム103の処理概要を示すブロック線図である。実施例3の風力発電システム103は、可変速制御手段1201、風速に基づく制御ゲイン調整手段1202、タワー振動制御手段1203、および加算部1204、により構成される。
可変速制御手段1201は、発電機回転速度ωに基づき、発電機トルク目標値Q*および可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定する。この可変速制御手段1201は、図2に示した風力発電システム1の運転特性を実現できるように、発電機トルク目標値Q*と可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定する。
実施例3においては、可変速制御手段1201における、発電機トルク目標値Q*および可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCの演算処理は、比例項と積分項から構成される比例積分制御により構成されるものとする。ただし、これに限ったものではなく、微分項を追加した比例積分微分制御に基づくものであっても良い。なお、後述する可変速制御手段の制御ゲインにより、上記比例項または積分項、またはその両方を調整可能な機能を備えるものを想定する。
風速に基づく制御ゲイン調整手段1202は、風速vに基づき、可変速制御手段の制御ゲインを決定する。その例を図13および図14を用いて説明する。
図13は、実施例3に係る風速に基づく制御ゲイン調整手段1202の特性概要の一例を示す図である。図13の横軸は風速、縦軸は風速に基づく制御ゲイン調整手段1202が決定する値が、可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSCを示し、縦軸上方が制御ゲインが大きいことを示す。
風速に基づく制御ゲイン調整手段1202はカットイン風速vinから風速v1までは可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSCを一定に保持し、風速v1から風速v2の風速範囲では可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSCを風速vの増加に伴って増加させ、風速v2からカットアウト風速voutでは可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSCを一定に保持する。図13に示す通り、可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSCの特性は、風速vが増加するに従って増加する特性である。
ただし、風速に基づく制御ゲイン調整手段1202の特性はこれに限ったものではなく、一定に保持する期間を保有しない特性であっても良いし、階段状に減少させる特性や、風速vの高次の曲線に近似した特性であっても良い。
さらに図14は、実施例3に係る風速に基づく制御ゲイン調整手段1202の特性概要の別の例を示す図である。図14の横軸は風速、縦軸は風速に基づく制御ゲイン調整手段1202が決定する値が、可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCを示し、縦軸上方が制御ゲインが大きいことを示す。
風速に基づく制御ゲイン調整手段1202はカットイン風速vinから風速v1までは可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCを一定に保持し、風速v1から風速v2の風速範囲では可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCを風速vの増加に伴って増加させ、風速v2からカットアウト風速voutでは可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCを一定に保持する。図13に示す通り、可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCの特性は、風速vが増加するに従って増加する特性である。
ただし、風速に基づく制御ゲイン調整手段1202の特性はこれに限ったものではなく、一定に保持する期間を保有しない特性であっても良いし、階段状に増加させる特性や、風速vの高次の曲線に近似した特性であっても良い。但し、該図に示す様に、必ずしも常に増加し続けることは必要とせず、例えば所定の範囲では一定値となっていても良い。
また、図13および図14はそれぞれ、可変速制御手段2の中でも、ピッチ角度制御と発電機トルク制御に関わる制御ゲインを各々備える例を示したが、これに限るものではなく、図13と図14を組合せたもの、すなわち、風速に基づく制御ゲイン調整手段1202が、可変速制御手段1201におけるピッチ角度制御および発電機トルク制御の双方の制御ゲインを調整するものであっても良い。
タワー振動制御手段1203は、実施例2で説明したタワー振動制御手段903と同様の処理を実行するため詳細説明を省略する。
加算部1204は、実施例1で説明した加算部304と同様であるため、説明を省略する。
図15は実施例3に係る風力発電システム制御手段103の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS1501では、風速vを決定し、次のステップに進む。ステップS1502では、風速に基づく制御ゲイン調整手段1202において、風速vに基づいて可変速制御手段の制御ゲインを決定し、次のステップに進む。ステップS1503では、発電機回転速度ωを決定し、次のステップに進む。ステップS1504では、可変速制御手段1201において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて、発電機トルク目標値Q*を決定し、次のステップに進む。ステップS1505では、可変速制御手段1201において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定し、次のステップに進む。ステップS1506では、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψを決定し、次のステップに進む。ステップS1507では、タワー振動制御手段1203において、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1508では、加算部1204において、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定した後、一連の処理を終了する。
次に、図16および図17を用いて、本発明の実施例4に係る風力発電システム制御手段104について説明する。
図16は、本発明の実施例4における風力発電システム1のコントローラ9に実装される風力発電システム104の処理概要を示すブロック線図である。実施例4の風力発電システム104は、可変速制御手段1601、風速に基づく制御ゲイン調整手段1602、タワー振動制御手段1603、および加算部1604、により構成される。本構成は、実施例1と実施例3の構成を組み合わせたものである。
可変速制御手段1601は、実施例3で説明した可変速制御手段1201と同様のため、詳細説明を省略する。風速に基づく制御ゲイン調整手段1602は、風速vに基づき、可変速制御手段の制御ゲイン、およびタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCの両方を演算する。風速vに基づく可変速制御手段の制御ゲインの決定については、実施例3と同様に、可変速制御手段のピッチ角度制御に関する制御ゲインGωVSC、または可変速制御手段の発電機トルク制御に関する制御ゲインGQVSCの一方のみを決定するものであっても良いし、その両方を決定するものであっても良い。詳細については実施例3で説明済みのため省略する。また、風速vに基づくタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCの決定については、実施例1で説明したものと同様であるため、詳細説明を省略する。タワー振動制御手段1603は、実施例1で説明したタワー振動制御手段303と同様のため、詳細説明を省略する。加算部1604についても、上述の3つの実施例と同様のため、説明を省略する。
図17は実施例4に係る風力発電システム制御手段104の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS1701では、風速vを決定し、次のステップに進む。ステップS1502では、風速に基づく制御ゲイン調整手段1602において、風速vに基づいて可変速制御手段の制御ゲインを決定し、次のステップに進む。ステップS1703では、風速に基づく制御ゲイン調整手段1602において、風速vに基づいてタワー振動制御手段の制御ゲインGTVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1704では、発電機回転速度ωを決定し、次のステップに進む。ステップS1705では、可変速制御手段1601において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて、発電機トルク目標値Q*を決定し、次のステップに進む。ステップS1706では、可変速制御手段1701において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定し、次のステップに進む。ステップS1707では、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψを決定し、次のステップに進む。ステップS1708では、タワー振動制御手段1603において、タワー振動制御手段の制御ゲインGTVCおよびタワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1709では、加算部1604において、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定した後、一連の処理を終了する。
次に、図18および図19を用いて、本発明の実施例5に係る風力発電システム制御手段105について説明する。
図18は、本発明の実施例5における風力発電システム1のコントローラ9に実装される風力発電システム105の処理概要を示すブロック線図である。実施例5の風力発電システム105は、可変速制御手段1801、風速に基づく制御ゲイン調整手段1802、タワー振動制御手段1803、入力値制限手段1804、および加算部1805、により構成される。本実施例の構成は、実施例2と実施例3を組み合わせたものである。
可変速制御手段1801は、実施例3で説明した可変速制御手段1201と同様のため、詳細説明を省略する。
風速に基づく制御ゲイン調整手段1802は、風速に基づき、可変速制御手段の制御ゲインおよびピッチ角度制限値ΘLTVCを決定する。可変速制御手段の制御ゲインの決定方法については、実施例3の風速に基づく制御ゲイン調整手段1202と同様のため、詳細説明を省略する。また、ピッチ角度制限値ΘLTVCについても実施例2で説明した風速に基づく制御値調整手段902と同様のため、詳細説明を省略する。タワー振動制御手段1803は、実施例2で説明したタワー振動制御手段903と同様のため詳細説明を省略する。 入力値制限手段1804は、実施例2で説明した入力値制限手段904と同様のため説明を省略する。加算部1805は、上述の4つの実施例と同様のため、説明を省略する。
図19は、実施例5に係る風力発電システム制御手段105の処理概要を示すフローチャートである。
ステップS1901では、風速vを決定し、次のステップに進む。ステップS1902では、風速に基づく制御ゲイン調整手段1802において、風速vに基づいて可変速制御手段の制御ゲインを決定し、次のステップに進む。ステップS1903では、風速に基づく制御ゲイン調整手段1802において、風速vに基づいてピッチ角度制限値ΘLTVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1904では、発電機回転速度ωを決定し、次のステップに進む。ステップS1905では、可変速制御手段1801において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて、発電機トルク目標値Q*を決定し、次のステップに進む。ステップS1906では、可変速制御手段1801において、発電機回転速度ωおよび可変速制御手段の制御ゲインに基づいて可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCを決定し、次のステップに進む。ステップS1907では、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψを決定し、次のステップに進む。ステップS1908では、タワー振動制御手段1803において、タワー振動情報であるタワー傾斜角度Ψに基づき、タワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1909では、入力値制限手段1804において、ピッチ角度制限値ΘLTVCおよびタワー振動制御手段によるピッチ角度基本調整幅Θ0*TVCにもとづいて、タワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCを決定し、次のステップに進む。ステップS1910では、加算部1804において、可変速制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*VSCとタワー振動制御手段によるピッチ角度調整幅Θ*TVCとを加算し、ピッチ角度目標値Θ*を決定した後、一連の処理を終了する。
なお、本発明が請求する範囲は上記に限ったものではない。具体的には、図1に示す風力発電システム1は設置形態を明記していないが、地面または海底に設置される着床式の風力発電システムであっても良い。また、図20に示すように、洋上に浮かべられる浮体構造物11の上に設置される構成を備えるものであっても良い。