JP6553029B2 - レチノイン酸導入リゾリン脂質を含有する細胞動員剤 - Google Patents

レチノイン酸導入リゾリン脂質を含有する細胞動員剤 Download PDF

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Description

本発明はレチノイン酸導入リゾリン脂質を含有する細胞動員剤に関する。
創傷の治癒、腫瘍の縮退等といった組織修復過程において、血球系細胞である好中球、好酸球、単球、マクロファージ等の働きが関与していることが知られている。中でも、マクロファージは死細胞や生体内に侵入した異物の貪食、増殖因子等の産生によって創傷の治癒を促進する等、組織修復において重要な役割を担っている。
したがって、何らかの方法により血球系細胞、特にマクロファージを対象となる患部に遊走させるとともに集積させる、即ち動員させることができれば、組織修復を促進されることが期待される。ここで、マクロファージは血中に存在する単球が各組織へ動員された後に分化した細胞であるため、単球を集積させることでも組織修復を促進させることが可能といえる(非特許文献1)。
単球やマクロファージを動員させることが可能な生体内物質として、リゾリン脂質の一種である1−ステアロイル−リゾホスホコリン(C18:0−LysoPC)やスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)等が報告されている(非特許文献2、3)。単球やマクロファージはこれらの物質の濃度勾配を認識し、濃厚な部位に動員される性質を持つため、組織修復促進を狙うには局所濃度を増加させる必要がある。また、組織修復促進を行うには継続的に単球やマクロファージを動員させる必要がある。しかし、C18:0−LysoPCは10μM以上の高濃度条件においてしか効果を示さず、また、より高濃度条件においては細胞障害等の副作用を生じる恐れがある。一方、S1PはS1P受容体1に作用することによってC18:0−LysoPCよりも低濃度で効果を示すが、100nM以上となっている場合にはS1P受容体2に作用することによって単球やマクロファージの動員を抑制するようになる。その結果、S1Pの有効濃度範囲は10nM前後と極めて狭くなっている。さらに、生体に投与した場合には単純な拡散現象に加え、血流によってリゾリン脂質局所濃度が低下してしまうため、前述の有効濃度を保つために断続的な局所投与を行う必要がある。その結果、生活の質(QOL)の低下を招くとともに、治療費が増加することとなる。
The Journal of International Medical Research. 37, 1528-1542 (2009) The Journal of Biological Chemistry. 283, 5296-5305 (February 2008) The FASEB Journal. 22, 2629-2638 (August 2008)
本発明の目的は、組織修復に関与する細胞を効率よく継続的に集積させることができる細胞動員剤を提供することである。また、本発明の目的は、副作用が低減でき、断続的な局所投与を必要としない細胞動員剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題解決のために鋭意検討した結果、後述の式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質またはその生理学的に許容される塩(以下「Ret−LysoPC」と略称することがある。)が広範な濃度条件で組織修復に関与する細胞を動員させる効果を持つことを見出し、この知見に基づきさらに検討を行って本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下を提供する。
[1]式(1)および/または式(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質またはその生理学的に許容される塩を有効成分として含有する、細胞動員剤。
式(1)
式(2)
(各式中、RおよびRは、レチノイル基または水素であり、互いに同一でない。)
[2]レチノイル基が、all−trans体、7−cis体、9−cis体、11−cis体、13−cis体、7,9−di−cis体、7,11−di−cis体、7,13−di−cis体、9,11−di−cis体、9,13−di−cis体、11,13−di−cis体、7,9,11−tri−cis体、7,9,13−tri−cis体、7,11,13−tri−cis体、9,11,13−tri−cis体またはall−cis体である、上記[1]記載の細胞動員剤。
[3]細胞動員することによって生体組織修復を促進するための、上記[1]または[2]に記載の細胞動員剤。
[4]動員される細胞が血球系細胞、造血幹細胞または間葉系幹細胞である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の細胞動員剤。
[5]徐放基材を含有する徐放性製剤である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の細胞動員剤。
[6]徐放基材が、生分解性高分子である、上記[5]の細胞動員剤。
[7]生分解性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、それらの誘導体およびそれらの架橋体からなる群から選択される1種または2種以上の生分解性高分子である、上記[6]記載の細胞動員剤。
本発明はまた、以下に関する。
[8]式(1)および/または式(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質またはその生理学的に許容される塩を有効成分として含有する、生体組織修復促進剤。
式(1)
式(2)
(各式中、RおよびRは、レチノイル基または水素であり、互いに同一でない。)
[9]レチノイル基が、all−trans体、7−cis体、9−cis体、11−cis体、13−cis体、7,9−di−cis体、7,11−di−cis体、7,13−di−cis体、9,11−di−cis体、9,13−di−cis体、11,13−di−cis体、7,9,11−tri−cis体、7,9,13−tri−cis体、7,11,13−tri−cis体、9,11,13−tri−cis体またはall−cis体である、上記[8]記載の生体組織修復促進剤。
[10]さらに徐放基材を含有する徐放性製剤である、上記[8]または[9]に記載の生体組織修復促進剤。
[11]徐放基材が、生分解性高分子である、上記[10]記載の生体組織修復促進剤。
[12]生分解性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、それらの誘導体およびそれらの架橋体からなる群から選択される1種または2種以上の生分解性高分子である、上記[11]記載の生体組織修復促進剤
本発明により、組織修復に関与する細胞を継続的に集積させることが可能となる。例えば、本発明の細胞動員剤を、患部(例えば、軟骨、皮膚、筋肉、骨)またはその周辺部位に、投与(例えば、注射、経皮投与、あるいは埋め込み投与)することで、組織修復に関与する細胞を患部に継続的に集積させることが可能となり、その結果、患部の組織修復を促進させることが可能となる。
本発明によれば、有効成分の広範な濃度条件で生体組織修復促進が可能であるので、従来の化合物に比べて、副作用が低減でき、また、断続的な局所投与を必要とせずQOLの低下を防ぐことができる。
本発明の細胞動員剤は、インビトロにおける細胞の集積に利用することもできる。
図1はRet−LysoPCによる単球動員効果を示すグラフである。controlに対する有意差を検定し、*:P<0.05として示す。 図2はRet−LysoPC中のレチノイル基異性体含量による単球動員効果への影響を示すグラフである。controlに対する有意差を検定し、*:P<0.05として示す。 図3はRet−LysoPCによる間葉系幹細胞動員効果を示すグラフである。controlに対する有意差を検定し、**:P<0.01として示す。 図4はRet−LysoPCを含有する徐放性製剤からのRet−LysoPC徐放を示すグラフである。 図5は徐放基材の分解に伴うRet−LysoPC徐放を示すグラフである。 図6はRet−LysoPC、C18:0−LysoPC、S1Pそれぞれ100nMにおける単球動員効果を比較したグラフである。controlに対する有意差を検定し、**:P<0.01として示す。 図7はRet−LysoPCとS1Pの単球動員効果の濃度依存性について比較したグラフである。controlに対する有意差を検定し、*:P<0.05、**:P<0.01、***:P<0.001として示す。 図8はRet−LysoPCとS1Pの間葉系幹細胞動員効果の濃度依存性について比較したグラフである。controlに対する有意差を検定し、*:P<0.05、**:P<0.01として示す。
本発明の細胞動員剤は、有効成分として、下記の式(1)および/または式(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質またはその生理学的に許容される塩を含有する。
式(1)
式(2)
(各式中、RおよびRは、レチノイル基または水素であり、互いに同一でない。)
式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質には、1−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、2−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−レチノイル−sn−グリセロ−2−ホスホコリンが含まれる。式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質において、レチノイル基のcis/trans異性体により複数の構造異性体が存在するが、いずれであっても良い。
レチノイル基の立体構造としてall−trans体、7−cis体、9−cis体、11−cis体、13−cis体、7,9−di−cis体、7,11−di−cis体、7,13−di−cis体、9,11−di−cis体、9,13−di−cis体、11,13−di−cis体、7,9,11−tri−cis体、7,9,13−tri−cis体、7,11,13−tri−cis体、9,11,13−tri−cis体、all−cis体が挙げられる。7−cis体、9−cis体、11−cis体、13−cis体、7,9−di−cis体、7,11−di−cis体、7,13−di−cis体、9,11−di−cis体、9,13−di−cis体、11,13−di−cis体、7,9,11−tri−cis体、7,9,13−tri−cis体、7,11,13−tri−cis体、9,11,13−tri−cis体は、トランス体の表記は省略されている。すなわち、例えば7−cis体は、7−cis−9,11,13−tri−trans体を示す。
式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質は天然に得られるものであっても化学合成により製造されるものであってもよい。式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質は、例えば、グリセロホスホコリンとレチノイン酸をカルボジイミド等の縮合剤を用いてモノエステル化させた後、シリカゲルクロマトグラフィー等による精製を行うことによって得ることができる。また、グリセロホスホコリンあるいはリゾホスホコリンとレチノイン酸をカルボジイミド等の縮合剤を用いてジエステル化させた後、ホスホリパーゼ等の酵素を用いて位置選択的に加水分解しモノエステル体を得た後、シリカゲルクロマトグラフィー等による精製を行うことによっても得ることができる。
式(1)および(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質の生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、酪酸等の酸が付加した塩が挙げられ、また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の塩基が付加した塩が挙げられる。
本発明の細胞動員剤は、徐放基材を含有する徐放性製剤であることが好ましい。
徐放基材としては、生分解性高分子が好ましい。生分解性高分子としては、具体的には、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトンおよびそれらの誘導体、架橋体およびそれらの組み合わせが挙げられる。これらは目的とするRet−LysoPC徐放特性に応じて適宜選択される。これらは天然に得られるものであっても、微生物を用いた発酵法、あるいは、化学合成により製造されるものであっても良い。
生分解性高分子の誘導体について、特に制限はないが、例えば、コハク酸、エチレンジアミン、ジステアロイルホスホエタノールアミン等を導入したものが挙げられる。これらの誘導体は、例えば、生分解性高分子側鎖のアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基等に前記化合物をアミド化、エステル化等させることにより得ることができる。これらの誘導体は、誘導体化前に比べてRet−LysoPCとの物理的/化学的相互作用が変化し、徐放基材からのRet−LysoPC徐放特性を変化させることが可能となる。
徐放基材としては、ゼラチン誘導体が好ましく、例えば、等電点5ゼラチンハイドロゲル、等電点9ゼラチンハイドロゲル、コハク化ゼラチンハイドロゲル、エチレンジアミン導入ゼラチンハイドロゲル、ジステアロイルホスホエタノールアミン導入ゼラチンハイドロゲルが挙げられる。
これら誘導体は、目的とするRet−LysoPC徐放特性(例えば、投与初期は高濃度が必要であるとともに、中期以降は低濃度を持続する必要がある等)に応じて適宜選択される。
ここで、実際に生体に投与した際には、局所においてRet−LysoPCの有効濃度を保つ必要がある。徐放基材を用いるとRet−LysoPCを持続的に放出することにより有効濃度を長時間維持することができる。一方、単純に濃度を一定に維持すれば良い症例ではなく、例えば治療初期に多くの細胞を集積させることが重要となる症例においては、投与初期にRet−LysoPCが多く放出されるような徐放特性をもつ徐放基材を選択すればよい。
徐放基材の形状は、特に制限はないが、例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、ペースト状等がある。円柱状、角柱状、シート状、ディスク状のものは、埋込片として用いるのに特に適している。
本発明において、徐放性製剤は、例えば、上記の徐放基材にRet−LysoPC水溶液を滴下するか、あるいは徐放基材をRet−LysoPC水溶液中に浸漬させて、徐放基材内にRet−LysoPCを含浸させることにより得ることができる。また、Ret−LysoPCを揮発性の有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトン等に溶解させ、徐放基材を浸漬あるいは徐放基材を溶解した溶液と混合した後に溶剤を留去することにより得ることもできる。
徐放基材に対するRet−LysoPCの重量比は通常0.1〜0.0001倍である。Ret−LysoPC水溶液を徐放基材に含浸させる操作は、通常、4〜60℃で15分間〜24時間にて終了し、その間に徐放基材とRet−LysoPCが物理的/化学的相互作用によって複合体を形成し、Ret−LysoPCが徐放基材に固定される。また、Ret−LysoPCを揮発性の有機溶剤に溶解させ、徐放基材を浸漬あるいは徐放基材を溶解した溶液と混合した後に溶剤を留去する操作は、通常、−20〜80℃で15分間〜48時間にて終了し、その間に徐放基材とRet−LysoPCが物理的/化学的相互作用によって複合体を形成し、Ret−LysoPCが徐放基材に固定される。これらの調製方法は用いる徐放基材に応じて適宜選択される。Ret−LysoPCと徐放基材との結合には、クーロン力、水素結合力、疎水性相互作用等の物理的/化学的相互作用が単独あるいは複合的に関与していると考えられる。
上記で得られた徐放性製剤をそのまま、貼付剤等の経皮投与製剤、生体への埋め込み型製剤(移植担体)等として用いることができるが、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)を用いて、公知の方法により徐放性製剤(例えば、注射剤、経皮投与製剤、生体への埋め込み型製剤等)を調製してもよい。そのような担体としては公知のものが使用できる。さらに徐放効果を調節する各種添加剤を含めることもできる。
本発明において、「細胞動員」とは、細胞を遊走させるとともに集積させることをいう。本発明における「細胞動員」には、インビボにおける細胞動員及びインビトロにおける細胞動員のいずれも含まれる。
本発明の細胞動員剤は、ヒト、動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、トリ等の家畜や家禽、及びマウス、ラット等の実験動物)に対して、注射、経皮投与、あるいは埋め込み投与等、任意の方法で投与することができるが、目的とする部位で持続的に放出させるためには局所投与であることが好ましい。
本発明の細胞動員剤の投与量は、組織修復を促進するに十分であるように適宜選択することができる。通常、成人患者当たり0.1〜10000μgの範囲から投与量が選択され、これを患部またはその周辺部位に留置または注入することができる。また1回の投与で効果が不十分であった場合は、投与を複数回行うことも可能である。
本発明において、組織修復に関与する細胞としては、単球やマクロファージ等の血球系細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞が挙げられる。
前述の通り、創傷の治癒、腫瘍の縮退等といった組織修復過程において、血球系細胞である好中球、好酸球、単球、マクロファージ等の働きが関与していることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。従って、本発明の細胞動員剤は、組織修復に関与する細胞を患部に動員(集積)させることによって、組織修復を促進させることが期待される。
造血幹細胞は血球系細胞に分化可能な幹細胞であるため、患部に動員することによって、血球系細胞を動員した際と同様に組織修復を促進することが期待される。
間葉系幹細胞は免疫反応の制御を行うほか、筋肉や骨等の組織に変化するので、間葉系幹細胞を対象となる患部に動員することにより、組織修復を促進することが期待される。
本発明の細胞動員剤は、例えば、組織(例えば、皮膚、筋、骨、臓器)の損傷や疾患(例えば、創傷、慢性潰瘍、組織欠損、線維化)の治療薬、固形がん治療薬、医療用デバイス(例えば、移植材の内皮組織化促進)、ワクチン(免疫細胞動員による効率的な抗原提示)として用いることができる。
また、本発明の細胞動員剤は、インビトロにおける用途、例えば、研究又は医療用デバイス(例えば、試験キット、移植材)、細胞ソーティング用試薬又は培地(細胞の高純度化)等に用いることができる。
本発明の細胞動員剤をインビトロで用いる場合の使用量は、細胞を集積するに十分であるように適宜選択することができる。
以下、実施例、比較例、製造例、試験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各実施例、比較例に記載のRet−LysoPCおよびジレチノイルホスホコリン(以下「Ret−PC」という。)の代表構造を表1に示す。また、Ret−LysoPCおよびRet−PCのレチノイル基all−trans体含有率、Ret−LysoPC中の1−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン含有率は、以下の記載に従い算出し、結果は、表2に示した。徐放基材である各ゼラチン誘導体は特許第4303196号に記載のTNBS法によりアミノ基数を求め、修飾率を算出し表3に示した。
(レチノイル基all−trans体含有率の算出方法)
精製後の反応生成物5mgを重溶媒1mlに溶解し、H−NMR(600MHz、内部標準 TMS)を測定した。Ret−LysoPCにおいては重メタノールを用いて測定し、δ=1.0ppm(−C(C −)のシグナルの積分値を6.0として、δ=5.8ppm(−OCO−C=C(CH)−)のシグナルの積分値(積分値1.0の時100%)から、all−trans体含有率を算出した。Ret−PCにおいては重クロロホルムを用いて測定し、δ=1.0ppm(−C(C −)のシグナルの積分値を12.0として、δ=5.8ppm(−OCO−C=C(CH)−)のシグナルの積分値(積分値2.0の時100%)から、all−trans体含有率を算出した。
(Ret−LysoPC中の1−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン含有率の算出方法)
精製後の反応生成物5mgを重メタノール1mlに溶解し、H−NMR(600MHz、内部標準 TMS)を測定した。δ=1.0ppm(−C(C −)のシグナルの積分値を6.0として、δ=5.0ppm(HO−CH−C(OCO−)−CH−O−)のシグナルの積分値(積分値1.0の時100%)から、2−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン含有率を算出するとともに、1−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン含有率(100−(2−レチノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン含有率),%)を算出した。
(実施例1)Ret−LysoPCおよび(比較例1)Ret−PCの製造
all−transレチノイン酸(東京化成工業株式会社製)1.0gに、クロロホルム(アミレン含有)12g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.35gを加え攪拌した。3時間後、α−グリセロホスホコリン(Euticals S.p.A製)2.6g、ジメチルアミノピリジン0.086gを加えて攪拌しながら50℃まで昇温した。60時間後、加熱を止めて、室温まで冷却した。反応溶液を攪拌しながらα−トコフェロール0.010gを加えた後、不溶物をろ別した。ろ液の溶剤を留去した後、展開溶剤としてクロロホルム、メタノール、水を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲル C−200(和光純薬工業株式会社製)10g)により精製を行った。Ret−PCを含む分画、またはRet−LysoPCを含む分画を複数に分けて回収した。それぞれの回収分画をイオン交換樹脂SMN−1(三菱化学株式会社製)5.5g、イオン交換樹脂SMN−1(三菱化学株式会社製)5.5gに通液した。その後、溶剤を留去し、目的物(実施例1−1〜1−2および比較例1)を得た。
得られた目的物をH−NMR(600MHz、重メタノール、内部標準 TMS)にて分析し、δ=1.0ppm(6H,s,−C(C −)、1.5ppm(2H,m,−C(CH−CH−CH−C −)、1.6ppm(2H,m,−C(CH−CH−C −CH−)、1.7ppm(3H,s,−CH−C(C )=)、2.0ppm(3H,s,−OCO−CH=C(CH)−CH=CH−CH=C(C )−)、2.0ppm(2H,m,−C(CH−C −CH−CH−)、2.3ppm(3H,s,−OCO−CH=C(C )−CH=CH−CH=C(CH)−)、3.2ppm(9H,s,N(C −CH−CH)、3.6ppm(2H,m,N(CH−C −CH−)、3.9ppm(2H,m,N(CH−CH−CH−O−POO−O−C −)、4.0ppm(1H,m,−CH−C(OH)−CH−OCO−CH=)、4.1,4.2ppm(2H,m,−C −OCO−CH=)、4.3ppm(2H,m,N(CH−CH−C −)、5.0−7.8ppm(6H,m,−OCO−C=C(CH)−C=C−C=C(CH)−C=C−)から、Ret−LysoPCの存在を確認した。
得られた目的物をH−NMR(600MHz、重クロロホルム、内部標準 TMS)にて分析し、δ=1.0ppm(12H,s,−C(C −)、1.5ppm(4H,m,−C(CH−CH−CH−C −)、1.6ppm(4H,m,−C(CH−CH−C −CH−)、1.7ppm(6H,s,−CH−C(C )=)、2.0ppm(6H,s,−OCO−CH=C(CH)−CH=CH−CH=C(C )−)、2.0ppm(4H,m,−C(CH−C −CH−CH−)、2.3ppm(6H,s,−OCO−CH=C(C )−CH=CH−CH=C(CH)−)、3.3ppm(9H,s,N(C −CH−CH)、3.8ppm(2H,m,N(CH−C −CH−)、4.0ppm(2H,m,N(CH−CH−CH−O−POO−O−C −)、4.3,4.4ppm(2H,m,−C −OCO−CH=)、4.3ppm(2H,br,N(CH−CH−C −)、5.3ppm(1H,m,−CH−C(OCO−CH=)−CH−OCO−CH=)、5.0−7.8ppm(12H,m,−OCO−C=C(CH)−C=C−C=C(CH)−C=C−)からRet−PCの存在を確認した。
(実施例2)Ret−LysoPCの製造
all−transレチノイン酸(東京化成工業株式会社製)0.60gに、クロロホルム(アミレン含有)18g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.21gを加え攪拌した。3時間後、溶剤を留去し、濃縮物2.0gとした。α−グリセロホスホコリン(Euticals S.p.A製)0.083g、ジメチルアミノピリジン0.053gを加えて攪拌しながら50℃まで昇温した。30時間後、加熱を止めて、室温まで冷却した。反応溶液を攪拌しながらα−トコフェロール0.006gを加えた後、不溶物をろ別した。ろ液の溶剤を留去した後、展開溶剤としてクロロホルム、メタノール、水を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲル C−200(和光純薬工業株式会社製)3.0g)により精製を行った。Ret−LysoPCを含む分画を回収し、イオン交換樹脂SMN−1(三菱化学株式会社製)3.3g、イオン交換樹脂SMN−1(三菱化学株式会社製)3.3gに通液した。その後、溶剤を留去し、目的物を得た。
得られた目的物をH−NMR(600MHz、重メタノール、内部標準 TMS)にて分析し、δ=1.0ppm(6H,s,−C(C −)、1.5ppm(2H,m,−C(CH−CH−CH−C −)、1.6ppm(2H,m,−C(CH−CH−C −CH−)、1.7ppm(3H,s,−CH−C(C )=)、2.0ppm(3H,s,−OCO−CH=C(CH)−CH=CH−CH=C(C )−)、2.0ppm(2H,m,−C(CH−C −CH−CH−)、2.3ppm(3H,s,−OCO−CH=C(C )−CH=CH−CH=C(CH)−)、3.2ppm(9H,s,N(C −CH−CH)、3.6ppm(2H,m,N(CH−C −CH−)、3.9ppm(2H,m,N(CH−CH−CH−O−POO−O−C −)、4.0ppm(1H,m,−CH−C(OH)−CH−OCO−CH=)、4.1,4.2ppm(2H,m,−C −OCO−CH=)、4.3ppm(2H,m,N(CH−CH−C −)、5.0−7.8ppm(6H,m,−OCO−C=C(CH)−C=C−C=C(CH)−C=C−)から、Ret−LysoPCの存在を確認した。
(実施例3)Ret−LysoPCによる単球動員効果の評価
ヒト急性単球性白血病細胞株(以下「THP−1」という。)(ATCC製)の細胞懸濁液を遠心分離した後、上澄みを廃棄し、0.1%ウシ血清アルブミン(脂肪酸不含、SIGMA ALDRICH製)含有RPMI−1640(Life Technologies製)を加えて分散させた。再び遠心分離を行い、上澄みを廃棄し細胞ペレットを得た。0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640を加えて細胞密度を1x10cells/mlに調整した。トランズウェル(Corning製、φ6.5mm、pore size φ8.0μm)に同細胞懸濁液100μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて30分間インキュベートした後、下部のマルチプルウェルプレート内に測定溶液(all−transレチノイン酸(東京化成工業株式会社製)(以下「RA」という)、比較例1のRet−PCまたは実施例1−2のRet−LysoPCをそれぞれ10nMとなるように0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に溶解したもの、ならびに、0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640単独)600μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて3時間インキュベートした後、マルチプルウェルプレート内の細胞懸濁液を採取し、ヘマサイトメーターにて細胞密度を測定し、細胞の遊走率を求めた。なお、細胞の遊走率は以下のように定義した。
細胞遊走率(%)=(マルチプルウェルプレート内の細胞数)/(トランズウェルに加えた細胞数)
図1に各測定溶液における細胞の遊走率測定結果を示す。なお、controlとは0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に何も添加していないものをいう。RA(10nM)、Ret−PC(10nM)では細胞が遊走されておらず、単球動員効果を示さないのに対し、Ret−LysoPC(10nM)ではcontrolに比べて有意(P<0.05)に細胞が遊走された。よって、Ret−LysoPCは単球動員効果を有することが分かった。
(実施例4)レチノイル基all−trans体含有率による単球動員効果への影響評価
THP−1の細胞懸濁液を遠心分離した後、上澄みを廃棄し、0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640を加えて分散させた。再び遠心分離を行い、上澄みを廃棄し細胞ペレットを得た。0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640を加えて細胞密度を1x10cells/mlに調整した。トランズウェル(Corning製、φ6.5mm、pore size φ8.0μm)に同細胞懸濁液100μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて30分間インキュベートした後、下部のマルチプルウェルプレート内に測定溶液(実施例1−1および1−2のRet−LysoPCをそれぞれ10nMとなるように0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に溶解したもの、ならびに、0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640単独)600μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて3時間インキュベートした後、マルチプルウェルプレート内の細胞懸濁液を採取し、ヘマサイトメーターにて細胞密度を測定し、細胞の遊走率を求めた。
図2に各測定溶液における細胞遊走率測定結果を示す。なお、controlとは0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に何も添加していないものをいう。いずれのRet−LysoPC(10nM)においても細胞の遊走が確認された。all−trans体含有率の高いものでは単球の動員効果が高い傾向にあるものの、all−trans体含有率の少ないものであっても有意な細胞の遊走が確認されており、その他の異性体であっても単球動員効果を有することが示唆された。
(実施例5)Ret−LysoPCによる間葉系幹細胞動員効果の評価
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株(UE7T−13)(医薬基盤研究所JCRB細胞バンク製)を予め血清不含DMEM(SIGMA ALDRICH製)を用いて24時間培養した後、0.25%トリプシン/1mM EDTA溶液(SIGMA ALDRICH製)を用いて同細胞の懸濁液とした。10%血清含有DMEM(Poweredby10培地;グライコテクニカ製)を加え、細胞懸濁液を遠心分離した後、上澄みを廃棄し、0.1%ウシ血清アルブミン(脂肪酸不含、SIGMA ALDRICH製)含有DMEM(SIGMA ALDRICH製)を加えて分散させた。再び遠心分離を行い、上澄みを廃棄し細胞ペレットを得た。0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMを加えて細胞密度を4x10cells/mlに調整した。トランズウェル(Corning製、φ6.5mm、pore size φ8.0μm)に同細胞懸濁液100μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて30分間インキュベートした後、下部のマルチプルウェルプレート内に測定溶液(実施例1−2のRet−LysoPCを10nMとなるように0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMに溶解したもの、または、0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEM単独)600μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて4時間インキュベートした後、インサート内の上清を除去した。メンブレン上側の細胞を除去した後、メンブレン下側の細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液を用いて固定化し、クリスタルバイオレット溶液を用いて染色した。水洗した後に乾燥させ、顕微鏡観察にて1視野あたりの細胞数を計測した。なお、遊走細胞比は以下のように定義した。
遊走細胞比=(各測定溶液を用いた際のメンブレン1視野あたりの細胞数)/(controlのメンブレン1視野あたりの細胞数)
ここで、controlとは0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMに何も添加していないものをいう。
図3に各測定溶液における遊走細胞比測定結果を示す。Ret−LysoPC(10nM)はcontrolに比べて有意(P<0.01)に細胞が遊走された。よって、Ret−LysoPCは間葉系幹細胞動員効果を有することが分かった。
(製造例1)ゼラチンハイドロゲル乾燥体の製造
Ret−LysoPCの徐放基材として、以下に示すゼラチンハイドロゲル乾燥体を製造し、実施例5に示す徐放試験に使用した。
・等電点5ゼラチンハイドロゲル乾燥体(以下、「pI5ゲル」という。)
・等電点9ゼラチンハイドロゲル乾燥体(以下、「pI9ゲル」という。)
・コハク化ゼラチンハイドロゲル乾燥体(以下、「Sucゲル」という。)
・エチレンジアミン導入ゼラチンハイドロゲル乾燥体(以下、「E50ゲル」という。)
・ジステアロイルホスホエタノールアミン導入ゼラチンハイドロゲル乾燥体(以下、「DSPEゲル」という。)
(製造例1−1)コハク化ゼラチンの製造
等電点5のゼラチン(牛骨由来、平均分子量約10万:新田ゼラチン株式会社製)1.0gをジメチルスルホキシド14gに溶解させた。無水コハク酸0.014gをジメチルスルホキシド4.5gに溶解させた後、この溶液をゼラチン溶液に添加した。37℃、1時間攪拌した後、透析膜で包み、外相に水を用いて3日間の透析を行った。透析終了後、内相を回収し、凍結乾燥することによってコハク化ゼラチンを得た。当該ゼラチンの修飾率を表3に示す。
(製造例1−2)カチオン化ゼラチンの製造
等電点9のゼラチン(豚皮由来、平均分子量約10万:新田ゼラチン株式会社製)1.0gを24mlの0.1Mリン酸緩衝水溶液(pH5.0)に溶解させた。次に、ゼラチンのカルボキシル基に対して50等量のエチレンジアミンを加えた後、11Mの塩酸水溶液を用いて溶液のpHを5.0に調整した。その後、ゼラチンのカルボキシル基に対して3等量の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を添加し、0.1Mリン酸緩衝水溶液(pH5.0)を加えることによりゼラチンの最終濃度を2wt%とした。37℃、4時間攪拌を行った後、反応物を透析膜で包み、外相に水を用いて3日間の透析を行った。透析終了後、内相を回収し、凍結乾燥することによってカチオン化ゼラチンを得た。当該ゼラチンの修飾率を表3に示す。
(製造例1−3)ジステアロイルホスホエタノールアミン導入ゼラチンの製造
等電点5のゼラチン(牛骨由来、平均分子量約10万:新田ゼラチン株式会社製)1.0gをジメチルスルホキシド30gに溶解させた。ここにN−(スクシンイミジロキシグルタリル)−ホスホエタノールアミン,ジステアロイル(COATSOME FE−8080SU5;日油株式会社製)0.67gを加え、25℃、18時間攪拌した。当該反応液を透析膜で包み、外相に水を用いて3日間の透析を行った。透析終了後、内相を回収し、凍結乾燥することによってジステアロイルホスホエタノールアミン導入ゼラチンを得た。当該ゼラチンの修飾率を表3に示す。
(製造例1−4)ハイドロゲル乾燥体の製造
製造例1−1で製造したコハク化ゼラチン0.5gを水9.5gで溶解した後、5M水酸化ナトリウム水溶液を用いて、溶液のpHを5.0に調整した。25%グルタルアルデヒド水溶液45μlを加え、30秒間静かに撹拌した。その後、反応液を分注し、遮光して、室温で30分間静置後、4℃で12時間架橋反応を行った。当該ゲルを0.1Mグリシン水溶液500mlに投入し、室温で1時間振盪することにより架橋反応を停止させた。その後、グリシン水溶液を純水に置換し、室温で1時間の振盪を3回繰り返した。得られたハイドロゲルを凍結乾燥することによって、Sucゲルを得た。
その他のゼラチンについても同様の手法で架橋および精製を行い、等電点5のゼラチン(牛骨由来、平均分子量約10万:新田ゼラチン株式会社製)よりpI5ゲル、等電点9のゼラチン(豚皮由来、平均分子量約10万:新田ゼラチン株式会社製)よりpI9ゲル、製造例1−2のゼラチン誘導体よりE50ゲル、製造例1−3のゼラチン誘導体よりDSPEゲルを得た。
(実施例6)Ret−LysoPC含有ゼラチンハイドロゲルの徐放試験
徐放性製剤の一例として、ゼラチン誘導体を徐放基材として用いたRet−LysoPC含有徐放性製剤を作成し、徐放試験を実施した。即ち、製造例1に示した種々のゼラチンハイドロゲル乾燥体を徐放基材としてRet−LysoPC水溶液を含浸させ、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4、以下「PBS」という。)中および10μg/mlコラゲナーゼ含有PBSにおける徐放特性を評価した。
Ret−LysoPC濃度が500μMとなるようRet−LysoPC(実施例1−2)をPBSに溶解した。この500μM Ret−LysoPC水溶液100μlをゼラチンハイドロゲル(10mg)に滴下し、37℃、1時間含浸させた。PBS(500μl)を加えた後、37℃、遮光条件下にて所定時間静置した(徐放試験開始)。その後、4℃、5000rpm、10分間の遠心分離にかけ、上清全量を回収した後、新しいPBS(500μl)を添加した。この操作を所定回数繰り返した。徐放試験開始12時間後、上清を回収した後、Sucゲル、E50ゲル、DSPEゲルを用いた試験について10μg/mlコラゲナーゼL(新田ゼラチン株式会社製)含有PBS(500μl)を添加した後、同様に所定時間静置した。同様に上清を回収するとともに、新しい10μg/mlコラゲナーゼL含有PBS(500μl)を添加した。この操作を徐放基材が消失するまで、または徐放試験開始から60時間後まで繰り返した。回収した上清中のRet−LysoPC濃度を逆相HPLCにて測定することによって、Ret−LysoPC徐放率を求めた。
図4および図5に各回収時間におけるRet−LysoPCの徐放率を示す。ゼラチン種によってRet−LysoPCの徐放特性が大きく異なることが分かった。これは徐放基材とRet−LysoPCとの相互作用が異なるためである。また、コラゲナーゼの添加により徐放基材を分解させたところ、それに伴ってRet−LysoPCが徐放されることが確認された。
(試験例1)各リゾリン脂質の単球動員効果の比較試験
ヒト急性単球性白血病細胞株(THP−1)(ATCC製)を用いて各検体の単球遊走効果を評価した。THP−1の細胞懸濁液を遠心分離した後、上澄みを廃棄し、0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640を加えて分散させた。再び遠心分離を行い、上澄みを廃棄し細胞ペレットを得た。0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640を加えて細胞密度を1x10cells/mlに調整した。トランズウェル(Corning製、φ6.5mm、pore size φ8.0μm)に同細胞懸濁液100μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて30分間インキュベートした後、下部のマルチプルウェルプレート内に測定溶液(C18:0−LysoPC(COATSOME MC−80H;日油株式会社製)、実施例2のRet−LysoPCまたはS1P(Toronto Research Chemicals製)を0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に溶解したもの、ならびに、0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640単独)600μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて3時間インキュベートした後、マルチプルウェルプレート内の細胞懸濁液を採取し、ヘマサイトメーターにて細胞密度を測定し、細胞の遊走率を求めた。
図6および図7に各測定溶液における細胞遊走率測定結果を示す。なお、controlとは0.1%ウシ血清アルブミン含有RPMI−1640に何も添加していないものをいう。図6より、C18:0−LysoPC(100nM)では単球の動員効果を示さないが、Ret−LysoPC(100nM)では単球の動員効果を示すことが分かる。また、図7より、S1Pは1、100nMにおいては有意(p<0.05)な単球動員効果を示さないのに対し、Ret−LysoPCでは1〜100nMのいずれにおいても有意な単球動員効果を示すことが明らかとなった。
(試験例2)各リゾリン脂質の間葉系幹細胞動員効果の比較試験
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株(UE7T−13)(医薬基盤研究所JCRB細胞バンク製)を予め血清不含DMEM(SIGMA ALDRICH製)を用いて24時間培養した後、0.25%トリプシン/1mM EDTA溶液(SIGMA ALDRICH製)を用いて同細胞の懸濁液とした。10%血清含有DMEM(Poweredby10培地;グライコテクニカ製)を加え、細胞懸濁液を遠心分離した後、上澄みを廃棄し、0.1%ウシ血清アルブミン(脂肪酸不含、SIGMA ALDRICH製)含有DMEM(SIGMA ALDRICH製)を加えて分散させた。再び遠心分離を行い、上澄みを廃棄し細胞ペレットを得た。0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMを加えて細胞密度を4x10cells/mlに調整した。トランズウェル(Corning製、φ6.5mm、pore size φ8.0μm)に同細胞懸濁液100μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて30分間インキュベートした後、下部のマルチプルウェルプレート内に測定溶液(実施例1−2のRet−LysoPCまたはS1P(Toronto Research Chemicals製)をそれぞれ所定濃度になるように0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMに溶解したもの、ならびに、0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEM単独)600μl/wellを加えた。37℃、5%CO条件下にて4時間インキュベートした後、インサート内の上清を除去した。メンブレン上側の細胞を除去した後、メンブレン下側の細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液を用いて固定化し、クリスタルバイオレット溶液を用いて染色した。水洗した後に乾燥させ、顕微鏡観察にて1視野あたりの細胞数を計測した。なお、遊走細胞比は以下のように定義した。
遊走細胞比=(各測定溶液を用いた際のメンブレン1視野あたりの細胞数)/(controlのメンブレン1視野あたりの細胞数)
ここで、controlとは0.1%ウシ血清アルブミン含有DMEMに何も添加していないものをいう。
図8に各測定溶液における遊走細胞比測定結果を示す。図8より、S1Pは10、100nMにおいては有意(p<0.05)な間葉系幹細胞動員効果を示さないのに対し、Ret−LysoPCでは1〜100nMのいずれにおいても有意な間葉系幹細胞動員効果を示すことが明らかとなった。
本出願は、日本で出願された特願2014−128644を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (6)

  1. 式(1)および/または式(2)で示されるレチノイン酸導入リゾリン脂質またはその生理学的に許容される塩を有効成分として含有する、細胞動員剤であって、
    動員される細胞が血球系細胞、造血幹細胞または間葉系幹細胞である、細胞動員剤
    式(1)

    式(2)

    (各式中、RおよびRは、レチノイル基または水素であり、互いに同一でない。)
  2. レチノイル基が、all−trans体、7−cis体、9−cis体、11−cis体、13−cis体、7,9−di−cis体、7,11−di−cis体、7,13−di−cis体、9,11−di−cis体、9,13−di−cis体、11,13−di−cis体、7,9,11−tri−cis体、7,9,13−tri−cis体、7,11,13−tri−cis体、9,11,13−tri−cis体またはall−cis体である、請求項1記載の細胞動員剤。
  3. 細胞動員することによって生体組織修復を促進するための、請求項1または2に記載の細胞動員剤。
  4. 徐放基材を含有する徐放性製剤である、請求項1〜のいずれか一項に記載の細胞動員剤。
  5. 徐放基材が、生分解性高分子である、請求項記載の細胞動員剤。
  6. 生分解性高分子が、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、それらの誘導体およびそれらの架橋体からなる群から選択される1種または2種以上の生分解性高分子である、請求項記載の細胞動員剤。
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