(実施形態1)
(1)全体概要
本実施形態の接点装置1は、図1に示すように、接点部2と、固定端子31,32と、筐体4と、絶縁部材51,52とを備えている。
固定端子31,32は、接点部2に電気的に接続されている。筐体4は、箱状であって接点部2を囲むように配置され、固定端子31,32を通す開口孔411,412が底板41に形成されている。
絶縁部材51,52は、中空部511,521を囲む環状であって底板41における開口孔411,412の周囲に接合されている。
固定端子31,32は、中空部511,521を貫通方向に貫通する形で絶縁部材51,52に固定され、絶縁部材51,52を介して筐体4に保持されている。
さらに、絶縁部材51,52は、筐体4が接合される筐体側接合部512,522と、固定端子31,32が接合される端子側接合部513,523とを有している。ここで、絶縁部材51,52の表面のうち、筐体側接合部512,522と端子側接合部513,523とを隔てる位置には、電気的絶縁性を有する絶縁確保部514,524が設けられている。
この構成によれば、固定端子31,32は、環状の絶縁部材51,52を介して筐体4に保持されているので、寸法精度の比較的高い筐体4を用いることにより、絶縁性の筐体を用いる場合に比べて、固定端子31,32の位置のばらつきを低減できる。寸法精度の高い筐体4として、たとえば金属製の筐体4を用いることが考えられるが、この場合でも、固定端子31,32と筐体4との間の電気的な絶縁性は絶縁部材51,52にて確保することができる。
しかも、絶縁部材51,52は、筐体4の底板41における開口孔411,412の周囲に接合されている。そのため、この接点装置1は、仮に絶縁部材51,52の寸法精度が低くても、底板41に対する絶縁部材51,52の接合位置を調整することで、固定端子31,32の位置のばらつきを低減できる。
さらに、絶縁部材51,52の表面のうち、筐体側接合部512,522と端子側接合部513,523とを隔てる位置には、電気的絶縁性を有する絶縁確保部514,524が設けられている。これにより、筐体4と固定端子31,32との間の絶縁部材51,52の表面に沿った沿面距離が、絶縁確保部514,524によって確保されることになる。要するに、絶縁部材51,52の表面に絶縁確保部514,524が設けられていることで、筐体4と固定端子31,32との間の絶縁性能が向上し、絶縁性能の向上は接点装置1の耐圧の向上につながる。
また、本実施形態では、筐体4に一対(2個)の開口孔411,412が形成されている場合を例にする。固定端子31,32および絶縁部材51,52は、それぞれ開口孔411,412と一対一に対応するように、開口孔411,412と同数個(2個)ずつ設けられている。ただし、開口孔、固定端子、および絶縁部材の個数は2個に限らず、1個あるいは3個以上であってもよい。
以下、本実施形態の接点装置1について詳しく説明する。以下に説明する接点装置1は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、接点装置1が、図1に示すように電磁石装置10と共に電磁継電器100を構成する場合を例として説明する。つまり、電磁継電器100は、接点装置1と、接点部2を開閉するように駆動する電磁石装置10とを備えている。ただし、接点装置1は、電磁継電器100に限らず、たとえばブレーカ(遮断器)やスイッチ等に用いられていてもよい。本実施形態においては、電磁継電器100が電気自動車(EV)に搭載され、走行用のバッテリから負荷(たとえばインバータ)への直流電力の供給路上に接点部2が電気的に接続される場合を例とする。
(2)接点装置の構成
(2.1)接点部
本実施形態に係る接点装置1は、図1に示すように、一対の固定接点311,321と、一対の固定接点311,321に対向して配置された一対の可動接点81,82とを、接点部2として備えている。
以下では、説明のために固定接点311,321と可動接点81,82との対向方向を上下方向と定義し、可動接点81,82から見て固定接点311,321側を上方と定義する。さらに、一対の固定接点311,321の並んでいる方向を左右方向と定義し、固定接点311から見て固定接点321側を右方と定義する。つまり、以下では、図1の上下左右を上下左右として説明する。また、以下では、上下方向および左右方向の両方に直交する方向(図1の紙面に直交する方向)を、前後方向として説明する。ただし、これらの方向は接点装置1の使用形態を限定する趣旨ではない。
一方の(第1の)固定接点311は一方の(第1の)固定端子31の下端部に設けられており、他方の(第2の)固定接点321は他方の(第2の)固定端子32の下端部に設けられている。これにより、一対の固定端子31,32は、接点部2における一対の固定接点311,321と電気的に接続されている。一対の可動接点81,82は、導電性の金属材料からなる板状の可動接触子8に設けられている。これにより、一対の可動接点81,82は、可動接触子8を介して互いに電気的に接続されている。
(2.2)固定端子
一対の固定端子31,32は、左右方向に並ぶように配置されている。一対の固定端子31,32は、各々、導電性の金属材料から形成されており、接点部(一対の固定接点311,321)2に外部回路(バッテリおよび負荷)を接続するための端子として機能する。本実施形態では、一例として銅(Cu)で形成された固定端子31,32を用いることとするが、固定端子31,32を銅製に限定する趣旨ではなく、固定端子31,32は銅以外の導電性材料で形成されていてもよい。
一対の固定端子31,32の各々は、上下方向に直交する平面内での断面形状が円形状となる円柱状に形成されている。ここでは、一対の固定端子31,32の各々は、上端側を下端側の小径部312,322(図2参照)に比べて外径の大きな拡径部313,323(図2参照)とすることで、正面視がT字状となるように構成されている。
詳しくは下記「(2.4)筐体」の欄で説明するが、これら一対の固定端子31,32は、筐体4の底板41に形成されている開口孔411,412を貫通した状態で、筐体4に保持される。
(2.3)可動接触子
可動接触子8は、左右方向に長い矩形板状に形成されており、その長手方向(左右方向)の両端部を一対の固定端子31,32の下端部に対向させるように一対の固定端子31,32の下方に配置されている。可動接触子8のうち、一対の固定端子31,32の下端部(固定接点311,321)に対向する部位には、一対の可動接点81,82が設けられている。
可動接触子8は、筐体4内において後述するホルダ16によって保持されており、筐体4の下方に配置された電磁石装置10によってホルダ16ごと上下方向に駆動される。ホルダ16の構成については、下記「(3)電磁石装置の構成」の欄で詳しく説明する。これにより、可動接触子8に設けられている一対の可動接点81,82は、それぞれ対応する固定接点311,321に接触する閉位置と、固定接点311,321から離れる開位置との間で移動することになる。
両可動接点81,82が閉位置にあるとき、つまり接点部2が閉じた状態(以下、「閉状態」という)では、一対の固定端子31,32間は可動接触子8を介して短絡する。そのため、接点装置1は、バッテリおよび負荷の一方に固定端子31を電気的に接続し、他方に固定端子32を電気的に接続することで、閉状態においてバッテリからの負荷への直流電力の供給路を形成する。
なお、可動接点81,82は、可動接触子8の一部が打ち出されるなどして可動接触子8と一体に構成されていてもよいし、可動接触子8とは別部材からなり可動接触子8に固定されていてもよい。同様に、固定接点311,321は、固定端子31,32と一体に構成されていてもよいし、固定端子31,32とは別部材からなり固定端子31,32に固定されていてもよい。
(2.4)筐体
本実施形態では、筐体4は、下面が開口し、左右方向に長い中空の直方体状(図2参照)に形成され、接点部2を囲むように配置されている。筐体4の底板41は、矩形板状であって、接点部2の上方に位置し、筐体4の上面を形成する。筐体4は、底板41の他、底板41の下面の外周部から下方に延びる形の筒状部42を有している。言い換えれば、筒状部42は、上面および下面が開口した矩形筒状であって、その上面が底板41で塞がれている。ただし、筐体4は接点部2を囲む箱状に形成されていればよく、本実施形態のような中空の直方体状に限らず、たとえば有底の楕円筒状や、中空の多角柱状などであってもよい。つまり、ここでいう箱状は、内部に端子部2の収納空間を有する形状全般を意味しており、直方体状に限定する趣旨ではない。たとえば筐体4が有底の楕円筒状であれば、筒状部42は、上面および下面が開口した楕円筒状となり、その上面が楕円形状の底板41で塞がれることになる。
なお、筒状部42の下面は、後述する電磁石装置10の継鉄上板11によって塞がれている。具体的には、筒状部42は下端部が継鉄上板11に対し、たとえば溶接により接合されている。これにより、接点部2は、筐体4の底板41および筒状部42、さらに継鉄上板11で囲まれた空間に収納されることになる。電磁石装置10の構成については、下記「(3)電磁石装置の構成」の欄で詳しく説明する。
本実施形態では、筐体4は金属製であるが、底板41と底板41以外の部位(筒状部42)とが別部材である。要するに、底板41および筒状部42はいずれも金属製であるが、底板41は筒状部42とは別部材からなり、筒状部42に接合されることによって筒状部42と共に筐体4を構成する。また、図1の例では、底板41の厚み寸法は、底板41以外の部位(筒状部42)の厚み寸法より大きく設定されているが、両厚み寸法は同じであってもよい。
本実施形態では、一例として42アロイ(Fe−42Ni)で形成された底板41を用いることとするが、底板41を42アロイ製に限定する趣旨ではなく、底板41はたとえばコバール、ステンレス(SUS304等)などで形成されていてもよい。また、本実施形態では一例としてステンレス(SUS304等)で形成された筒状部42を用いることとするが、筒状部42をステンレス製に限定する趣旨ではなく、筒状部42はたとえば42アロイ(Fe−42Ni)、コバールなどで形成されていてもよい。
筐体4の底板41には、一対の固定端子31,32を通すための一対の開口孔411,412が形成されている。一対の開口孔411,412は、それぞれ円形状に形成されており、底板41を厚み方向(上下方向)に貫通している。一方の(第1の)開口孔411には一方の(第1の)固定端子31が配置され、他方の(第2の)開口孔412には他方の(第2の)固定端子32が配置される。
(2.5)固定端子の固定構造
次に、筐体4への固定端子31,32の固定構造について詳しく説明する。
本実施形態においては、一対の固定端子31,32は共通の構成を採用しているため、以下では、とくに断りがない限りは一方の(第1の)固定端子31に着目して説明するが、他方の(第2の)固定端子32についても同様の構成であることとする。すなわち、以下の説明において、固定端子31、(第1の)開口孔411、(第1の)小径部312、(第1の)拡径部313は、それぞれ固定端子32、(第2の)開口孔412、(第2の)小径部322、(第2の)拡径部323に読み替え可能である。また、(第1の)絶縁部材51、(第1の)端子側スペーサ61、(第1の)筐体側スペーサ71は、それぞれ(第2の)絶縁部材52、(第2の)端子側スペーサ62、(第2の)筐体側スペーサ72に読み替え可能である。さらに、(第1の)筐体側接合部512、(第1の)端子側接合部513、(第1の)絶縁確保部514は、(第2の)筐体側接合部522、(第2の)端子側接合部523、(第2の)絶縁確保部524に読み替え可能である。実施形態2以降においても、とくに断りがない限りは一方の(第1の)固定端子31に着目して説明するが、他方の(第2の)固定端子32についても同様の構成であることとする。
絶縁部材51は、絶縁性材料から形成されており、少なくとも固定端子31と筐体4との間の電気的絶縁性を確保するように機能する。ここでは、絶縁部材51は、図2に示すように上面および下面がいずれも平坦な円環状に形成されており、内側に円形状に開口した中空部511を有している。本実施形態では、一例として酸化アルミニウム(アルミナ)等のセラミックで形成された絶縁部材51を用いることとするが、絶縁部材51をセラミック製に限定する趣旨ではなく、絶縁部材51はたとえばガラス等の絶縁性材料で形成されていてもよい。
この絶縁部材51は、底板41における開口孔411の周囲に接合されている。そして、固定端子31は絶縁部材51の中空部511を貫通方向に貫通する形で、絶縁部材51に固定される。これにより、固定端子31は、少なくとも絶縁部材51を介して、間接的に筐体4に保持されることになる。本実施形態では、固定端子31が中空部511を貫通する方向である「貫通方向」は上下方向である。
本実施形態では、絶縁部材51の下面に、筐体4と接合される筐体側接合部512が設けられ、絶縁部材51の上面に、固定端子31と接合される端子側接合部513が設けられている。絶縁部材51の外側面および内側面は絶縁確保部514を構成している。絶縁部材51の詳細については、下記「(2.6)絶縁部材の詳細」の欄で説明する。
また、本実施形態では、固定端子31と絶縁部材51との間には、金属製の端子側スペーサ61が設けられている。固定端子31は、端子側スペーサ61を介して絶縁部材51の端子側接合部513に接合されることにより、絶縁部材51に対して固定されている。ここでは、端子側スペーサ61は、図2に示すように上面および下面がいずれも平坦な円環状に形成されている。本実施形態では、一例として42アロイ(Fe−42Ni)で形成された端子側スペーサ61を用いることとするが、端子側スペーサ61を42アロイ製に限定する趣旨ではなく、端子側スペーサ61はたとえばコバールなどで形成されていてもよい。
さらに、本実施形態では、絶縁部材51と筐体4の底板41との間には、金属製の筐体側スペーサ71が設けられている。絶縁部材51の筐体側接合部512は、筐体側スペーサ71を介して底板41に接合されることにより、底板41に対して固定されている。ここでは、筐体側スペーサ71は、図2に示すように上面および下面がいずれも平坦な円環状に形成されている。本実施形態では、一例として42アロイ(Fe−42Ni)で形成された筐体側スペーサ71を用いることとするが、筐体側スペーサ71を42アロイ製に限定する趣旨ではなく、筐体側スペーサ71はたとえばコバールなどで形成されていてもよい。
なお、図1の例では、端子側スペーサ61の厚み寸法および筐体側スペーサ71の厚み寸法は、いずれも絶縁部材51の厚み寸法に比べて小さく設定されている。
要するに、本実施形態の接点装置1においては、固定端子31は、端子側スペーサ61、絶縁部材51、および筐体側スペーサ71を介して、間接的に筐体4の底板41に保持されている。以下に、図1および図3を参照して、固定端子31と端子側スペーサ61と絶縁部材51と筐体側スペーサ71と底板41との関係について詳述する。
筐体側スペーサ71、絶縁部材51、および端子側スペーサ61は、底板41の上面上に、筐体側スペーサ71、絶縁部材51、端子側スペーサ61の順で積み重なるように配置される。ここで、筐体側スペーサ71、絶縁部材51、および端子側スペーサ61は、上下方向に直交する平面(水平面)内での中心軸が開口孔411と一致するように配置される。
固定端子31は、小径部312が端子側スペーサ61、絶縁部材51、および筐体側スペーサ71の内側を貫通し、かつ拡径部313が端子側スペーサ61上に重なるように配置される。この状態で、固定端子31の小径部312の下端部は、開口孔411を通して底板41の下方(筐体4の内側)に突出することになる。
そして、固定端子31は、拡径部313の下面が端子側スペーサ61の上面に接合され、かつ端子側スペーサ61の下面が絶縁部材51の上面に接合されることにより、端子側スペーサ61を介して絶縁部材51に間接的に接合される。つまり、固定端子31は、絶縁部材51の上面に設けられた端子側接合部513に対し、端子側スペーサ61を介して間接的に接合される。また、絶縁部材51の下面が筐体側スペーサ71の上面に接合され、かつ筐体側スペーサ71の下面が底板41の上面における開口孔411の周囲に接合されることにより、絶縁部材51は筐体側スペーサ71を介して筐体(底板41)4に間接的に接合される。つまり、絶縁部材51の下面に設けられた筐体側接合部512は、筐体4に対し、筐体側スペーサ71を介して間接的に接合される。
ここにおいて、部材間の接合の方法は、接合する2つの部材の材料に応じて適切な方法が選択される。本実施形態では、一例として銅製の固定端子31と42アロイ製の端子側スペーサ61とは、ろう付けによって接合される。また、端子側スペーサ61とセラミック製の絶縁部材51との接合、および絶縁部材51と42アロイ製の筐体側スペーサ71との接合についても、ろう付けである。筐体側スペーサ71と42アロイ製の底板41とは、溶接によって接合される。なお、底板41とステンレス製の筒状部42とは、溶接によって接合される。
また、本実施形態では、図3に示すように絶縁部材51の内径φ1は、中空部511を貫通する固定端子31の小径部312の外径φ2よりも大きく設定され、絶縁部材51の内側面と固定端子31の外側面との間には隙間g1(図3参照)が形成されている。さらに、開口孔411の内径φ3は、絶縁部材51の内径φ1より大きく設定されている(φ3>φ1>φ2)。
また、本実施形態の接点装置1においては、筐体4の内部空間が気密空間となるように、固定端子31は絶縁部材51に気密接合され、絶縁部材51は底板41に気密接合されている。より詳細には、固定端子31と端子側スペーサ61とは気密接合され、底板41と筐体側スペーサ71とは気密接合されている。さらに、端子側スペーサ61と筐体側スペーサ71とは、いずれも絶縁部材51に対して気密接合されている。底板41と筒状部42との間、および筒状部42と継鉄上板11との間も気密接合されている。
なお、筐体4の内部空間にはたとえば水素を含む消弧性ガスが封入されていることが望ましい。これにより、筐体4内に収納されている接点部2が開極する際にアークが発生したとしても、アークは消弧性ガスによって急速に冷却され迅速に消弧可能になる。ただし、筐体4内に消弧性ガスが封入されていることは必須の構成ではない。
ところで、上述した接点装置1の製造方法は、中空部511を貫通する形で固定端子31を絶縁部材51に固定する固定工程と、絶縁部材51を底板41における開口孔411の周囲に接合する接合工程とを少なくとも含むことが好ましい。接合工程においては、筐体4に対する固定端子31の相対的な位置を調整しつつ、固定端子31が絶縁部材51を介して筐体4に保持されるように、絶縁部材51を底板41における開口孔411の周囲に接合する。
すなわち、ろう付けなどの方法により固定端子31を絶縁部材51に固定し(固定工程)、その後、筐体4に対する固定端子31の位置を調整しながら絶縁部材51を筐体4に接合する(接合工程)ことになる。より詳細には、固定工程では、固定端子31と端子側スペーサ61とを接合し、端子側スペーサ61と絶縁部材51の端子側接合部513とを接合し、絶縁部材51の筐体側接合部512と筐体側スペーサ71とを接合する。これにより、固定端子31を、端子側スペーサ61、絶縁部材51、および筐体側スペーサ71と一体化する。その後の接合工程では、筐体側スペーサ71と筐体(底板41)4とを接合することにより、筐体側スペーサ71を介して絶縁部材51を筐体4に接合する。
この製造方法によれば、固定端子31を絶縁部材51に固定する工程(固定工程)と、絶縁部材51を筐体4に接合する工程(接合工程)とは別工程である。そのため、予め固定端子31が固定された絶縁部材51を筐体4に接合する際に、筐体4と固定端子31との相対的な位置を調整することで、絶縁部材51の寸法精度に関わらず、固定端子31の位置決めを精度よく行うことができる。
なお、上述した各部の形状は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。たとえば、絶縁部材51、端子側スペーサ61、および筐体側スペーサ71は、それぞれ円環状に限らず、たとえば多角形(五角形や六角形など)状に形成されていてもよい。固定端子31や開口孔411についても同様に、上下方向に直交する断面形状が多角形状に形成されていてもよい。
(2.6)絶縁部材の詳細
次に、絶縁部材51の詳細について、図4Aおよび図4Bを参照して説明する。
絶縁部材51は、所定の厚みを有する円環状に構成されている。絶縁部材51は、厚み方向の両端面(下面501および上面502)と、内側面(中空部511を囲む面)503との間の角部がそれぞれ面取りされている。同様に、絶縁部材51は、厚み方向の両端面(下面501および上面502)と、外側面504との間の角部がそれぞれ面取りされている。なお、面取りは絶縁部材51に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。図1等、絶縁部材51を模式的に表した図では、面取りのような細かい形状については図示を適宜省略している。
筐体側接合部512は、絶縁部材51の上下方向(貫通方向)の一端面(ここでは下面501)に設けられている。端子側接合部513は、絶縁部材51の上下方向(貫通方向)の他端面(ここでは上面502)に設けられている。言い換えれば、絶縁部材51は、厚み方向の両側に第1接合面(下面501)および第2接合面(上面502)を有しており、第1接合面には筐体側接合部512、第2接合面には端子側接合部513が設けられている。本実施形態では一例として、面取り部を除き、第1接合面の略全面が筐体側接合部512を構成し、第2接合面の略全面が端子側接合部513を構成している。なお、絶縁部材51を示した図(図4A、図4B等)において、網掛(ドット)領域は、筐体側接合部512または端子側接合部513を表している。
絶縁確保部514は、絶縁部材51の表面のうち、筐体側接合部512と端子側接合部513とを隔てる位置に設けられている。つまり、絶縁部材51の表面のうち、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の範囲には、絶縁確保部514が設けられている。本実施形態では、絶縁部材51の内側面503と外側面504とのそれぞれに、絶縁確保部514が形成されている。すなわち、絶縁部材51の下面(第1接合面)501に設けられた筐体側接合部512と、絶縁部材51の上面(第2接合面)502に設けられた端子側接合部513とは、絶縁部材51の表面上で絶縁確保部514にて分離されることになる。本実施形態では一例として、面取り部を含む、内側面503および外側面504の略全面が絶縁確保部514を構成している。
ここで、筐体側接合部512と端子側接合部513との少なくとも一方は、表面に金属層515が形成されている。すなわち、非金属製(ここではセラミック製)の絶縁部材51の表面のうち、筐体側接合部512と端子側接合部513との少なくとも一方に該当する部位は、メタライズ(メタライジング)により金属化されている。メタライズは、たとえば金属ペーストを絶縁部材51の表面にローラや刷毛によって塗布することにより行われる。本実施形態では、筐体側接合部512と端子側接合部513との両方にメタライズが施され、金属層515が形成されている。このように、絶縁部材51の接合部(筐体側接合部512と端子側接合部513との少なくとも一方)にメタライズが施されることで、絶縁部材51と金属部材(筐体4、固定端子31)との接合強度が高くなる。
絶縁部材51の表面のうちメタライズが施されていない部位は、絶縁確保部514を構成する。これにより、絶縁確保部514は電気的絶縁性を有することとなり、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の絶縁部材51,52の表面に沿った沿面距離が、絶縁確保部514によって確保される。したがって、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離は、貫通方向(上下方向)における絶縁部材51の寸法(厚み寸法)と同程度になる。
このような構成の絶縁部材51が用いられることにより、固定端子31が絶縁部材51を介して筐体4に接合された状態で、筐体4と固定端子31との間には、絶縁部材51の厚み寸法と同程度の沿面距離が確保されることになる。
(3)電磁石装置の構成
電磁石装置10は、図1に示すように、固定子12と、可動子13と、励磁コイル14とを有している。電磁石装置10は、励磁コイル14への通電時に励磁コイル14で生じる磁束によって固定子12に可動子13を吸引し、可動子13を第2の位置(図1に示す位置)から第1の位置へ移動させる。
ここでは、電磁石装置10は、固定子12、可動子13、励磁コイル14の他に、継鉄上板11を含む継鉄110と、シャフト15と、ホルダ16と、接圧ばね17と、復帰ばね18とを有している。なお、電磁石装置10は、合成樹脂製であって励磁コイル14が巻き付けられるコイルボビンを有していてもよい。
固定子12は、継鉄上板11の下面中央部から下方に突出する形の円筒状に形成された固定鉄芯であって、その上端部が継鉄上板11に固定されている。
可動子13は、円柱状に形成された可動鉄芯であって、固定子12の下方において、その上端面を固定子12の下端面に対向させるように配置されている。可動子13は、上下方向に移動可能に構成されており、その上端面が固定子12の下端面に接触した第1の位置と、その上端面が固定子12の下端面から離れた第2の位置との間で移動する。
励磁コイル14は、その中心軸方向を上下方向と一致させる向きで筐体4の下方に配置されており、その内側に固定子12と可動子13とが配置されている。
継鉄110は、励磁コイル14を囲むように配置されており、固定子12および可動子13と共に、励磁コイル14の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。そのため、継鉄110と固定子12と可動子13とはいずれも磁性材料から形成されている。継鉄上板11は、この継鉄110の一部を構成しており、上述したように筐体(筒状部42)4の下面を塞ぐように、筐体4と接合されている。
復帰ばね18は、固定子12の内側に配置されており、可動子13を下方(第2の位置)へ付勢するコイルばねである。
シャフト15は、非磁性材料にて上下方向に延びた丸棒状に形成されており、電磁石装置10で発生した駆動力を、電磁石装置10の上方に設けられている接点装置1へ伝達する。シャフト15は、継鉄上板11の中央部に形成された透孔111に挿し通されており、固定子12および復帰ばね18の内側を通って、その下端部が可動子13に固定されている。シャフト15の上端部は、可動接触子8を保持するホルダ16に固定されている。
ホルダ16は、たとえば左右方向の両面が開口した矩形筒状であって、可動接触子8が貫通するように可動接触子8と組み合わされている。ホルダ16にはシャフト15の上端部が固定されている。接圧ばね17は、ホルダ16の下板の上面と可動接触子8の下面との間に配置されており、可動接触子8を上方へと付勢するコイルばねである。
これにより、電磁石装置10で発生した駆動力はシャフト15にて可動接触子8へと伝達され、可動子13が上下方向に移動するのに伴い可動接触子8が上下方向に移動する。
なお、電磁石装置10は、非磁性材料からなり固定子12および可動子13を収納する筒体を有していてもよい。筒体は、上面が開口した有底円筒状に形成され、上端部(開口周部)が継鉄上板11に接合される。これにより、筒体は、可動子13の移動方向を上下方向に制限し、かつ可動子13の第2の位置を規定する。さらに接点装置1を気密構造とする場合(つまり、筐体4の内部空間を気密空間とする場合)には、筒体は継鉄上板11の下面に気密接合されていることが望ましい。これにより、継鉄上板11に透孔111が形成されていても、気密空間の気密性を確保することができる。
(4)電磁継電器の動作
次に、上述した構成の接点装置1および電磁石装置10を備えた電磁継電器100の動作について簡単に説明する。
励磁コイル14に通電されていないとき(非通電時)には、可動子13は、固定子12との間に磁気吸引力が生じないため、復帰ばね18のばね力によって第2の位置に位置する。このとき、図1に示すように、ホルダ16は、シャフト15ごと下方に引き下げられているため、可動接触子8は、上方への移動が規制され、一対の可動接点81,82を一対の固定接点311,321から離れた開位置に位置させる。この状態では、接点装置1は接点部2が開いた状態(以下、「開状態」という)にあるので、一対の固定端子31,32間は非導通である。
一方、励磁コイル14に通電されると、可動子13は、固定子12との間に磁気吸引力が生じるため、復帰ばね18のばね力に抗して上方に引き寄せられ第1の位置に移動する。このとき、ホルダ16は、シャフト15ごと上方に押し上げられるため、可動接触子8は、上方への移動規制が解除され、一対の可動接点81,82を一対の固定接点311,321に接触する閉位置に位置させる。この状態では、接点装置1は接点部2が閉状態にあるので、一対の固定端子31,32間は導通する。
このように、電磁石装置10は、励磁コイル14の通電状態の切り替えにより可動子13に作用する吸引力を制御し、可動子13を上下方向に移動させることにより、接点装置1の接点部2の開状態と閉状態とを切り替えるための駆動力を発生する。
(5)効果
以上説明した本実施形態の接点装置1によれば、固定端子31は、環状の絶縁部材51を介して筐体4に保持されている。したがって、この接点装置1は、寸法精度の比較的高い筐体4を用いれば、絶縁性の筐体を用いる場合に比べて、固定端子31の位置のばらつきを低減できる、という利点がある。
すなわち、接点装置に用いられる絶縁性の筐体としては、一般的に、絶縁性、耐熱性、さらには必要に応じて気密性を確保するため、セラミック製の筐体が用いられるが、本実施形態では、絶縁部材51を用いることで寸法精度の高い筐体4を採用できる。たとえば上述したような金属製の筐体4は、セラミック製の筐体に比べて寸法精度が高いため、筐体4に保持される固定端子31の位置のばらつきを低減できる。
しかも、絶縁部材51は、筐体4の底板41における開口孔411の周囲に接合されている。そのため、この接点装置1は、仮に絶縁部材51の寸法精度が低くても、底板41に対する絶縁部材51の接合位置(取付位置)を調整することで、固定端子31の位置のばらつきを低減できる。
さらに、絶縁部材51は、筐体4が接合される筐体側接合部512と、固定端子31が接合される端子側接合部513とを有している。そして、絶縁部材51の表面のうち、筐体側接合部512と端子側接合部513とを隔てる位置には、電気的絶縁性を有する絶縁確保部514が設けられている。これにより、筐体4と固定端子31との間の絶縁部材51の表面に沿った沿面距離が、絶縁確保部514によって確保されることになる。要するに、絶縁部材51の表面に絶縁確保部514が設けられることによって、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上し、絶縁性能の向上が接点装置1の耐圧の向上につながる、という利点がある。
さらに、絶縁部材51は、固定端子31と筐体4との間の電気的な絶縁性を確保できる形状および寸法であればよい。そのため、絶縁部材51にセラミックが用いられる場合でも、セラミック製の部品は単純かつ小型でよいので、セラミック製の筐体を用いる場合に比べて、金型や材料にかかるコストの低コスト化、歩留りの向上を図ることが可能である。
なお、絶縁部材51の材料は、酸化アルミニウム(アルミナ)に限らないが、酸化アルミニウムが用いられることで、比較的高い電気的絶縁性、耐アーク性、および気密性が実現されるという利点がある。
また、本実施形態のように、絶縁部材51の内側面(内周面)503と固定端子31の外側面(外周面)との間に隙間g1が形成されるように、絶縁部材51の内径φ1は固定端子31の外径φ2よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、絶縁部材51の内側(中空部511内)における固定端子31の位置は、隙間g1の範囲内で調整する余地がある。したがって、絶縁部材51の寸法精度が低くても、筐体4に対する固定端子31の位置のばらつきを容易に低減できる。この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
なお、接点装置1は、絶縁部材51の内側面503と固定端子31の外側面との間に隙間g1が形成された構成により、固定端子31と筐体4との電気的絶縁を確実に確保できるという利点もある。すなわち、接点装置1は、接点部2の開閉に伴い接点部2から金属粉などの飛散物が飛散し、この飛散物が絶縁部材51に付着する可能性がある。ただし、本実施形態の接点装置1は、絶縁部材51と固定端子31との間に隙間g1があることで、飛散物が絶縁部材51に付着しても、固定端子31と筐体4との間の絶縁性を確保できる。
また、本実施形態のように、筐体4には、開口孔411,412が2個以上形成され、固定端子31,32および絶縁部材51,52は、それぞれ開口孔411,412と一対一に対応するように開口孔411,412と同数個ずつ設けられていることが好ましい。この構成によれば、筐体4に対する一対の固定端子31,32の各々の位置のばらつきが低減されることで、一対の固定端子31,32間の距離のばらつきも低減されることになる。言い換えれば、一対の固定端子31,32間の距離の寸法精度が向上するという利点がある。
しかも、接点装置1として、定格絶縁電圧などにより一対の固定端子31,32間の距離が異なる複数の仕様が存在する場合、絶縁部材51,52については、複数の仕様に亘って共通の部品を用いることができる利点がある。つまり、筐体4に形成する一対の開口孔411,412間の距離を変更するだけで、絶縁部材51,52は共通としながらも、一対の固定端子31,32間の距離が異なる接点装置1を実現可能である。
さらにまた、本実施形態のように、筐体4は金属製であることが好ましい。この構成によれば、筐体4を非金属材料で形成する場合に比べて、簡単な加工で、寸法精度の高い筐体4を実現できるという利点がある。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
筐体4が金属製である場合において、本実施形態のように、絶縁部材51と底板41との間に、金属製の筐体側スペーサ71が設けられ、絶縁部材51の筐体側接合部512は、筐体側スペーサ71を介して底板41に接合されていることが好ましい。この構成によれば、絶縁部材51と底板41とが直接接合される構成に比べて、底板41の材料の制約が緩和され、底板41の材料の選択の自由度が高くなる。
詳しく説明すると、絶縁部材51と底板41とが直接接合される構成においては、たとえば絶縁部材51がセラミック製で底板41が金属製であれば、絶縁部材51と底板41とはろう付けによって接合される。ろう付けの工程においては、絶縁部材51と底板41とは高温環境下に置かれることになるため、通常、底板41は、絶縁部材(セラミック)51に熱膨張率が近い金属材料(42アロイやコバール)で形成される。
これに対して、本実施形態の構成では、絶縁部材51と筐体側スペーサ71とがろう付けされるので、筐体側スペーサ71が、絶縁部材51に熱膨張率が近い金属材料で形成されていればよい。そのため、本実施形態の接点装置1は、筐体側スペーサ71を備える構成により、底板41の材料の制約が緩和され、底板41の材料の選択の自由度が高くなるという利点がある。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
また、筐体4が金属製である場合においては、本実施形態のように、筐体4は、少なくとも底板41と底板41以外の部位(筒状部42)とが別部材であることが好ましい。この構成によれば、筐体4は、固定端子31を保持する底板41のみが、絶縁部材(セラミック)51に熱膨張率が近い金属材料(42アロイやコバール)で形成されていればよい。したがって、筐体4のうち底板41以外の部位(筒状部42)は、たとえばステンレス(SUS304)等の加工性のよい材料を用いることができ、筐体4の全体が42アロイやコバールで形成される場合に比べて絞り加工の歩留りが向上する。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態のように、固定端子31と絶縁部材51との間に、金属製の端子側スペーサ61が設けられて、固定端子31は、端子側スペーサ61を介して絶縁部材51の端子側接合部513に接合されていることが好ましい。この構成によれば、固定端子31と絶縁部材51とが直接接合される構成に比べて、固定端子31の材料および形状の自由度が高くなる。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
また、筐体側接合部512は絶縁部材51の貫通方向(上下方向)の一端面(下面501)に設けられ、端子側接合部513は絶縁部材51の貫通方向の他端面(上面502)に設けられていることが好ましい。この構成によれば、絶縁部材51の内側面503および外側面504が絶縁確保部514になるので、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離は、貫通方向(上下方向)における絶縁部材51の寸法(厚み寸法)と同程度になる。したがって、貫通方向に直交する面内での絶縁部材51の寸法を小さく抑えながらも、筐体4と固定端子31との間の沿面距離を大きくとることができる。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態のように、筐体側接合部512と端子側接合部513との少なくとも一方は、表面に金属層515が形成されていることが好ましい。この構成によれば、たとえば絶縁部材51がセラミック製で筐体4や固定端子31が金属製の場合に、絶縁部材51と筐体4あるいは固定端子31との接合強度が高くなる。すなわち、絶縁部材51の接合部(筐体側接合部512と端子側接合部513との少なくとも一方)に金属層515が形成されていることで、絶縁部材51と金属部材(筐体4、固定端子31)との接合が金属同士の接合にて実現されるため、接合強度が向上する。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
さらに、本実施形態のように、筐体4の内部空間が気密空間となるように、固定端子31は絶縁部材51に気密接合され、絶縁部材51は底板41に気密接合されていることが好ましい。この構成によれば、接点部2が気密空間に収納されることになるため、接点装置1は、様々な雰囲気中での使用が可能になる。接点装置1は、筐体4の内部空間に消弧性ガスを封入して、消弧性能の向上を図ることも可能である。ただし、この構成は必須の構成ではなく、この構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態に係る電磁継電器100は、上記の接点装置1と、接点部2を開閉するように駆動する電磁石装置10とを備えている。したがって、電磁継電器100は、寸法精度の比較的高い筐体4を接点装置1に用いれば、絶縁性の筐体を用いる場合に比べて、固定端子31の位置のばらつきを低減できる、という利点がある。
(6)変形例
実施形態1の変形例として、接点装置1は、端子側スペーサ61(図1参照)が省略されていてもよい。
本変形例の接点装置1においては、固定端子31は、図5に示すように、拡径部313の下面から小径部312の外周面に沿って下方に突出する円環状の脚部314を有している。ここでは、脚部314の内径は、絶縁部材51の内径よりも大きく、かつ絶縁部材51の外径より小さく設定されている。
固定端子31は、脚部314の先端面(下端面)が絶縁部材51の上面に設けられた端子側接合部513に接する状態で、脚部314の先端部(下端部)を絶縁部材51の端子側接合部513に対して直接接合することにより、絶縁部材51に直接固定される。固定端子31と絶縁部材51の端子側接合部513とは、ろう付けによって接合される。
また、本変形例では、筐体側スペーサ71の形状が実施形態1と相違する。本変形例では、筐体側スペーサ71は、図5に示すように、底板41からの高さが外周部に比べ内周部で高くなるように、内周部と外周部の間に段差を有している。絶縁部材51は、その下面に設けられた筐体側接合部512が筐体側スペーサ71の上面における内周部に接する状態で、筐体側スペーサ71を介して筐体4に間接的に固定されている。
以上説明した本変形例の構成によれば、端子側スペーサ61が省略されているので、実施形態1の構成に比べて、接点装置1の部品点数を削減することができる。さらに、この場合において、固定端子31は、上述したように脚部314を有する構成とし、脚部314の先端部を絶縁部材51に接合することが好ましい。これにより、端子側接合部513は、絶縁部材51の上面のうち、脚部314の先端部が接触する部位のみで足りることになる。つまり、端子側スペーサ61や固定端子31が絶縁部材51に対して面接触する場合に比べ、端子側接合部513の面積を小さく抑えることができる。その結果、端子側接合部513と筐体側接合部512との間の絶縁距離(沿面距離)を長くとることができ、また、絶縁部材51においてメタライズを施す範囲を小さく抑えることができる。
また、絶縁部材51に用いられる絶縁性材料は、たとえば窒化アルミニウムや窒化珪素など、上述した酸化アルミニウム(アルミナ)以外のセラミックであってもよい。絶縁部材51の材料として窒化アルミニウムが用いられていれば、比較的高い熱伝導率および気密性が実現され、一方、絶縁部材51の材料として窒化珪素が用いられていれば、比較的高い耐熱衝撃性および気密性が実現される。さらに、絶縁部材51の材料は、セラミックおよびガラス以外の絶縁性材料であってもよく、たとえばエポキシ樹脂などの合成樹脂が用いられることで、絶縁部材51の形状の自由度が高く、かつ低コスト化にもつながる。
さらに、絶縁部材51は少なくとも絶縁確保部514に電気的絶縁性を有していればよく、絶縁部材51の全体が絶縁性材料で形成されていることは必須の構成ではない。たとえば絶縁部材51は、導電性の金属部材の表面が絶縁性材料で覆われることにより構成されていてもよいし、内部が空洞であってもよい。表面が絶縁性材料で覆われる場合、たとえばDLC(Diamond Like Carbon)薄膜や、金属酸化膜等の薄膜が用いられる。DLC薄膜は、化学的安定性が高く、かつ気密性も高いという利点がある。
(実施形態2)
本実施形態に係る接点装置1においては、絶縁部材51の貫通方向(上下方向)の両端面(下面501および上面502)が平坦ではない点で、実施形態1の接点装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。なお、本実施形態では、絶縁部材51以外の構成としては、実施形態1の変形例として説明した図5の構成が採用されることを前提として説明するが、これに限らず図1の構成が採用されてもよい。
以下では、本実施形態の絶縁部材51の具体例として、第1〜4の構成例を挙げて説明する。
(1)第1の構成例
第1の構成例に係る絶縁部材51では、図6Aおよび図6Bに示すように、絶縁確保部514は、絶縁部材51における内側面503および外側面504から、貫通方向(上下方向)の両端面(下面501および上面502)にかけて設けられている。ただし、絶縁部材51の下面501および上面502には、それぞれ筐体側接合部512、端子側接合部513が設けられている。そのため、絶縁確保部514は、絶縁部材51の下面501および上面502の全面ではなく、筐体側接合部512および端子側接合部513を除く一部にのみ形成されている。ここでは、絶縁部材51の下面501および上面502のうち、表面に金属層515が形成された部分がそれぞれ筐体側接合部512、端子側接合部513を構成し、残りの部分が絶縁確保部514を構成する。
第1の構成例において、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうち、少なくとも筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面において、中空部511を囲むように形成された凹形状部516を含んでいる。凹形状部516は、筐体側接合部512と端子側接合部513とのうち凹形状部516と同一面に設けられた接合部に比べて、絶縁部材51の貫通方向の寸法が小さくなる向きに(基準面S1側に)凹んだ形状である。ここでいう基準面S1は、絶縁部材51の貫通方向の中心を通り、かつ貫通方向に直交する仮想平面である。
すなわち、凹形状部516は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうちの少なくとも一面であって、筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面に形成されている。本実施形態では、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)に、それぞれ筐体側接合部512、端子側接合部513が設けられている。そのため、凹形状部516は、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)にそれぞれ設けられている。本実施形態では、絶縁部材51は、内側に円形状に開口した中空部511を有する円環状に形成されている。そのため、中空部511を囲むように形成された凹形状部516は、平面視円環状となる。
さらに、第1の構成例においては、筐体側接合部512と同一面、つまり絶縁部材51の下面501に形成された凹形状部516は、下面501のうちの内側面503側の周縁(内周縁)に沿って形成されている。言い換えれば、図6Bに示すように、絶縁部材51の下面501は、外周側と内周側とに二分され、基準面S1からの高さが外周側より内周側で一段低くなるように形成されており、この低くなった部分が凹形状部516を構成する。一方、端子側接合部513と同一面、つまり絶縁部材51の上面502に形成された凹形状部516は、上面502のうちの外側面504側の周縁(外周縁)に沿って形成されている。言い換えれば、図6Bに示すように、絶縁部材51の上面502は、外周側と内周側とに二分され、基準面S1からの高さが内周側より外周側で一段低くなるように形成されており、この低くなった部分が凹形状部516を構成する。これにより、筐体側接合部512は絶縁部材51の下面501の外周側に設けられ、端子側接合部513は絶縁部材51の上面502の内周側に設けられることになる。したがって、筐体側接合部512と端子側接合部513とは、図6Bに示すように、絶縁部材51の断面において下面501、上面502、内側面503、および外側面504で囲まれた略矩形状の対角に位置する。
以上説明した第1の構成例によれば、絶縁確保部514は、絶縁部材51における内側面503および外側面504から、貫通方向(上下方向)の両端面(下面501および上面502)にかけて設けられている。これにより、絶縁確保部514が絶縁部材51の内側面503および外側面504のみに設けられる構成に比較して、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。
しかも、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうち、少なくとも筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面において、中空部511を囲むように形成された凹形状部516を含んでいる。そのため、絶縁部材51が筐体4および固定端子31に対して面接触する場合であっても、凹形状部516の底面と筐体4および固定端子31との間には空隙が形成される。したがって、絶縁確保部514のうち凹形状部516が形成された部分においては、筐体4および固定端子31が絶縁確保部514に接触することを回避できる。これにより、凹形状部516がない場合に比べて、筐体4と固定端子31との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。また、凹形状部516がない場合に比較して、絶縁部材51の体積が小さくなり、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離を確保しながらも、絶縁部材51を1個製造するのに必要な材料を少なく抑えることができる。
さらに、凹形状部516は、筐体側接合部512や端子側接合部513に比べて一段下がった(基準面S1からの高さが低い)位置にあるので、筐体側接合部512や端子側接合部513にメタライズが施される際、メタライズの作業が容易になる。要するに、メタライズは、たとえば金属ペーストを絶縁部材51の表面にローラや刷毛によって塗布することにより行われるが、筐体側接合部512や端子側接合部513から一段下がった凹形状部516に対しては金属ペーストが付着しにくい。そのため、筐体側接合部512や端子側接合部513の表面に金属層515を形成する作業が簡単になる。
また、第1の構成例のように、筐体側接合部512と端子側接合部513とは、絶縁部材51の断面において下面501、上面502、内側面503、および外側面504で囲まれた略矩形状の対角に位置することが好ましい。この構成によれば、筐体側接合部512と端子側接合部513とが、いずれも内周側あるいは外周側にある場合に比べて、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。
(2)第2の構成例
第2の構成例に係る絶縁部材51は、図7Aおよび図7Bに示すように、第1の構成例で示した絶縁部材51に対し、(第1の)凸形状部517が付加された構成である。以下、第1の構成例と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
(第1の)凸形状部517は、凹形状部516の底面に、中空部511を囲むように形成されている。凸形状部517は、凹形状部516の底面における凸形状部517以外の部位に比べて、絶縁部材51の貫通方向(上下方向)の寸法が大きくなる向きに(基準面S1とは反対側に)突出した形状である。
第2の構成例では、凸形状部517は、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)に形成された凹形状部516に、それぞれ設けられている。本実施形態では、絶縁部材51は、内側に円形状に開口した中空部511を有する円環状に形成されている。そのため、中空部511を囲むように形成された凸形状部517は、平面視円環状となる。
さらに、第2の構成例においては、筐体側接合部512と同一面、つまり絶縁部材51の下面501に形成された凸形状部517は、下面501のうちの内側面503側の周縁(内周縁)に沿って形成されている。そのため、絶縁部材51の下面501には、筐体側接合部512と凸形状部517との間に円環状の溝が形成されることになる。一方、端子側接合部513と同一面、つまり絶縁部材51の上面502に形成された凸形状部517は、上面502のうちの外側面504側の周縁(外周縁)に沿って形成されている。そのため、絶縁部材51の上面502には、端子側接合部513と凸形状部517との間に円環状の溝が形成されることになる。
また、第2の構成例では、図7Bに示すように、凸形状部517の貫通方向(上下方向)の寸法(高さ)H2が、凹形状部516の深さH1より小さく設定されている(H1>H2)。言い換えれば、凸形状部517は、凹形状部516内に収まるような高さに設定されている。そのため、絶縁部材51の下面501においては、基準面S1から見て、凸形状部517の先端が、筐体側接合部512より低い位置にある。同様に、絶縁部材51の上面502においては、基準面S1から見て、凸形状部517の先端が、端子側接合部513より低い位置にある。
以上説明した第2の構成例によれば、凹形状部516の底面には凸形状部517が形成されているため、絶縁部材51の表面上において、筐体側接合部512と端子側接合部513との間には凸形状部517が介在することになる。これにより、絶縁部材51の厚み寸法が同じであっても、凹形状部516の底面が平坦な場合に比べて、凸形状部517の分だけ、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。したがって、絶縁部材51の貫通方向の寸法(厚み寸法)を小さく抑えながらも、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上し、接点装置1の耐圧が向上するという利点がある。第2の構成例であれば、凸形状部517の高さH2の約2倍分だけ、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなる。
また、第2の構成例のように、凸形状部517の貫通方向の寸法H2は、凹形状部516の深さH1より小さいことが好ましい。この構成によれば、第1の構成例と同様に、絶縁部材51が筐体4および固定端子31に対して面接触する場合でも、筐体4と固定端子31との間の沿面距離が長くなる。すなわち、絶縁部材51が筐体4および固定端子31に対して面接触する場合でも、凸形状部517の先端と筐体4および固定端子31との間には空隙が形成されることになり、筐体4および固定端子31が絶縁確保部514に接触することを回避できる。これにより、筐体4および固定端子31が絶縁確保部514に接触する場合に比べて、筐体4と固定端子31との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。さらに、第1の構成例と同様に、筐体側接合部512や端子側接合部513にメタライズが施される際、メタライズの作業が容易になる、という利点もある。
(3)第3の構成例
第3の構成例に係る絶縁部材51は、図8Aおよび図8Bに示すように、(第1の)凸形状部517が、中空部511を囲む同心状に複数(ここでは2つ)設けられている点で、第2の構成例と相違する。以下、第2の構成例と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
第3の構成例では、(第1の)凸形状部517は、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)に形成された凹形状部516に、それぞれ2つずつ設けられている。本実施形態では、絶縁部材51は、内側に円形状に開口した中空部511を有する円環状に形成されている。そのため、中空部511を囲む同心状に設けられた複数の凸形状部517は、平面視で同心円状に形成されている。これにより、絶縁部材51の下面501および上面502のそれぞれは、複数の凸形状部517にてコルゲート状に形成される。
また、第3の構成例では、図8Bに示すように、全ての凸形状部517の貫通方向(上下方向)の寸法(高さ)H2が、凹形状部516の深さH1より小さく設定されている(H1>H2)。言い換えれば、全ての凸形状部517は、凹形状部516内に収まるような高さに設定されている。
以上説明した第3の構成例によれば、凹形状部516の底面には同心状に複数の凸形状部517が形成されているため、絶縁部材51の表面上において、筐体側接合部512と端子側接合部513との間には複数の凸形状部517が介在することになる。これにより、凸形状部517が1つだけの場合に比べて、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離がさらに長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。
また、第3の構成例のように、全ての凸形状部517の貫通方向の寸法H2は、凹形状部516の深さH1より小さいことが好ましい。この構成によれば、第2の構成例と同様に、絶縁部材51が筐体4および固定端子31に対して面接触する場合でも、筐体4と固定端子31との間の沿面距離が長くなる。さらに、第2の構成例と同様に、筐体側接合部512や端子側接合部513にメタライズが施される際、メタライズの作業が容易になる、という利点もある。
(4)第4の構成例
第4の構成例に係る絶縁部材51は、図9Aおよび図9Bに示すように、凹形状部516(図6Aおよび図6B参照)に代えて(第2の)凸形状部518が設けられている点で、第1の構成例と相違する。以下、第1の構成例と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
第4の構成例では、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうち少なくとも筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面において、中空部511を囲むように形成された(第2の)凸形状部518を含んでいる。凸形状部518は、筐体側接合部512と端子側接合部513とのうち凸形状部518と同一面に設けられた接合部に比べて、絶縁部材51の貫通方向の寸法が大きくなる向きに(基準面S1とは反対側に)突出した形状である。
すなわち、凸形状部518は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうちの少なくとも一面であって、筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面に形成されている。本実施形態では、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)に、それぞれ筐体側接合部512、端子側接合部513が設けられている。そのため、凸形状部518は、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)にそれぞれ設けられている。本実施形態では、絶縁部材51は、内側に円形状に開口した中空部511を有する円環状に形成されている。そのため、中空部511を囲むように形成された凸形状部518は、平面視円環状となる。
さらに、第4の構成例においては、筐体側接合部512と同一面、つまり絶縁部材51の下面501に形成された凸形状部518は、下面501のうちの内側面503側の周縁(内周縁)に沿って形成されている。言い換えれば、図9Bに示すように、絶縁部材51の下面501は、外周側と内周側とに二分され、基準面S1からの高さが外周側より内周側で一段高くなるように形成されており、この高くなった部分が凸形状部518を構成する。一方、端子側接合部513と同一面、つまり絶縁部材51の上面502に形成された凸形状部518は、上面502のうちの外側面504側の周縁(外周縁)に沿って形成されている。言い換えれば、図9Bに示すように、絶縁部材51の上面502は、外周側と内周側とに二分され、基準面S1からの高さが内周側より外周側で一段高くなるように形成されており、この高くなった部分が凸形状部518を構成する。これにより、筐体側接合部512は絶縁部材51の下面501の外周側に設けられ、端子側接合部513は絶縁部材51の上面502の内周側に設けられることになる。したがって、筐体側接合部512と端子側接合部513とは、図9Bに示すように、絶縁部材51の断面において下面501、上面502、内側面503、および外側面504で囲まれた略矩形状の対角に位置する。
以上説明した第4の構成例によれば、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうち、少なくとも筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれかが設けられた一面において、中空部511を囲むように形成された凸形状部518を含んでいる。そのため、絶縁部材51の表面上において、筐体側接合部512と端子側接合部513との間には凸形状部518が介在することになる。これにより、凸形状部518がない場合に比べて、凸形状部518の分だけ、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。第4の構成例であれば、凸形状部518の高さの約2倍分だけ、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなる。
(5)変形例
本実施形態の絶縁部材51は、上記構成に限らず、たとえば図10A〜図10Dに示すように、絶縁部材51の貫通方向の両端面のそれぞれにおいて、接合部(筐体側接合部512、端子側接合部513)の両側に絶縁確保部514が設けられていてもよい。図10A〜図10Dは、それぞれ第1〜4の構成例の変形例である。
すなわち、図10Aの例では、絶縁部材51の下面501においては、筐体側接合部512の両側にそれぞれ凹形状部516が設けられ、絶縁部材51の上面502においては、端子側接合部513の両側にそれぞれ凹形状部516が設けられている。
図10Bの例では、絶縁部材51の下面501においては、筐体側接合部512の両側にそれぞれ凸形状部517が設けられ、絶縁部材51の上面502においては、端子側接合部513の両側にそれぞれ凸形状部517が設けられている。
図10Cの例では、絶縁部材51の下面501においては、筐体側接合部512の両側にそれぞれ複数の凸形状部517が設けられ、絶縁部材51の上面502においては、端子側接合部513の両側にそれぞれ複数の凸形状部517が設けられている。
図10Dの例では、絶縁部材51の下面501においては、筐体側接合部512の両側にそれぞれ凸形状部518が設けられ、絶縁部材51の上面502においては、端子側接合部513の両側にそれぞれ凸形状部518が設けられている。言い換えれば、図10Dの例では、絶縁部材51の貫通方向の両端面のそれぞれにおいて、凸形状部518は、中空部511を囲む同心状に複数設けられている。
さらに、本実施形態において第1〜4の構成例は適宜組み合わせ可能であって、たとえば絶縁部材51の下面501は第1の構成例を適用し、絶縁部材51の上面502は第2の構成例の構成を適用することも可能である。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態に係る接点装置1は、筐体側接合部512が絶縁部材51の外側面504に設けられ、端子側接合部513が絶縁部材51の内側面503に設けられている点で、実施形態1の接点装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。なお、本実施形態では、絶縁部材51以外の構成としては、実施形態1の接点装置1から端子側スペーサ61(図1参照)および筐体側スペーサ71(図1参照)が省略された構成が採用されることを前提として説明する。
本実施形態では、絶縁部材51は、筐体4と固定端子31との間を、電気的絶縁性を確保しつつ気密接合(封止)するための封止ガラスである。つまり、絶縁部材51は、筐体4および固定端子31に比べて低融点のガラス製であって、固定端子31を筐体4に接合する封止工程においては溶融した状態から固化することにより、固定端子31を筐体4に接合する。なお、本実施形態においては、絶縁部材51にはメタライズが施されておらず、筐体側接合部512および端子側接合部513の表面に金属層はないこととする。
以下、本実施形態の絶縁部材51の具体例として、第1〜4の構成例を挙げて説明する。
(1)第1の構成例
第1の構成例に係る絶縁部材51では、図11Aおよび図11Bに示すように、絶縁確保部514は、絶縁部材51における貫通方向(上下方向)の両端面(下面501および上面502)に設けられている。第1の構成例においては、絶縁部材51は、底板41の開口孔411の内周面と固定端子31の小径部312の外周面との隙間を埋めるように設けられる。すなわち、絶縁部材51は、外側面504を筐体(底板41)4と接触させ、内側面503を固定端子31と接触させるようにして、筐体4に取り付けられる。
ここでは、絶縁部材51の外側面504のうち筐体(底板41)4と接する部分が筐体側接合部512を構成し、絶縁部材51の内側面503のうち固定端子31と接する部分が端子側接合部513を構成する。そして、絶縁部材51の外側面504および内側面503のうち、筐体側接合部512および端子側接合部513以外の部分、並びに絶縁部材51の下面501および上面502の全面が絶縁確保部514を構成する。
以上説明した第1の構成例によれば、少なくとも絶縁部材51の下面501および上面502の全面が絶縁確保部514になる。したがって、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離は、絶縁部材51における円環の太さ(幅寸法)以上になる。したがって、貫通方向に直交する面内での絶縁部材51の寸法次第で、筐体4と固定端子31との間の沿面距離を大きくとることができる。さらに、第1の構成例では、一般的な端子のハーメチックシール技術を用いて、筐体4と固定端子31との間を、電気的絶縁性を確保しつつ気密接合(封止)することができる。また、端子側スペーサおよび筐体側スペーサが省略されることで、部品点数の削減を図ることができる。
(2)第2の構成例
第2の構成例に係る絶縁部材51は、図12Aおよび図12Bに示すように、絶縁部材51に筐体4と固定端子31との少なくとも一方が食い込む点で、第1の構成例と相違する。以下、第1の構成例と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
図12Aに示す例では、筐体側接合部512において、絶縁部材51に筐体(底板41)4が食い込んだ状態で筐体4が接合されている。言い換えれば、絶縁部材51の外側面504には周方向の全周に亘って溝が形成されており、この溝に底板41における開口孔411の周縁が嵌り込むようにして、絶縁部材51と筐体4とが接合される。この場合、絶縁部材51の外側面504のうち筐体(底板41)4と接する部分、つまり溝部分が筐体側接合部512を構成する。この構成によれば、第1の構成例に比較して、絶縁部材51と筐体4との接合強度、とくに貫通方向(上下方向)における接合強度が高くなる。さらに、絶縁部材51の外側面504のうち溝部分以外の部分は絶縁確保部514を構成するので、絶縁部材51の外側面504の全面が筐体側接合部512である場合に比べて、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が大きくなる。したがって、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。
また、図12Bに示す例では、上記の構成(図12Aに示す構成)に加えて、端子側接合部513において、絶縁部材51に固定端子31が食い込んだ状態で固定端子31が接合されている。言い換えれば、絶縁部材51の内側面503には周方向の全周に亘って溝が形成されており、この溝に固定端子31に設けられた鍔部315が嵌り込むようにして、絶縁部材51と固定端子31とが接合される。鍔部315は、固定端子31の小径部312の外周面から突出するように形成され、小径部312の周方向の全周に亘って設けられている。この場合、絶縁部材51の内側面503のうち固定端子31と接する部分、つまり溝部分を含む絶縁部材51の内側面503の全面が端子側接合部513を構成する。この構成によれば、第1の構成例に比較して、絶縁部材51と固定端子31との接合強度、とくに貫通方向(上下方向)における接合強度が高くなる。
なお、図12Aおよび図12Bの構成は一例に過ぎず、絶縁部材51に筐体4と固定端子31との少なくとも一方が食い込んでいればよく、たとえば絶縁部材51に固定端子31のみが食い込んでいてもよい。また、端子側スペーサ61(図1参照)や筐体側スペーサ71(図1参照)が用いられる場合には、これら端子側スペーサ61と筐体側スペーサ71との少なくとも一方が、絶縁部材51に食い込んでいてもよい。
(3)第3の構成例
第3の構成例に係る絶縁部材51は、図13Aおよび図13Bに示すように、底板41の厚み寸法が小さい(薄い)筐体4に用いられる点で、第2の構成例と相違する。以下、第2の構成例と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
図13Aに示す例では、絶縁部材51は、貫通方向(上下方向)の寸法(厚み寸法)が内側面503側より外側面504側で小さくなるように、下面501および上面502が傾斜した形状に構成されている。図13Aに示す例では、図12Aの例と同様に、絶縁部材51の外側面504には周方向の全周に亘って溝が形成されており、この溝に底板41における開口孔411の周縁が嵌り込むようにして、絶縁部材51と筐体4とが接合されている。この構成によれば、底板41の厚み寸法が小さい筐体4を用いることができるので、接点装置1の小型化に寄与する。
また、図13Bに示す例では、底板41における開口孔411の周縁から下方に突出する周壁413が形成されており、筐体4は、周壁413の内側面にて絶縁部材51と接合されている。周壁413は、たとえば絞り加工によって形成される。この場合、絶縁部材51の外側面504のうち周壁413と接する部分が、筐体側接合部512を構成する。この構成によれば、筐体側接合部512は周壁413の内側面に対して面接触するので、上記の構成(図13Aに示す構成)に比べて、絶縁部材51と筐体4との接合強度が高くなる。なお、筐体4は、周壁413が下方に突出する構成に限らず、周壁413が上方に突出する構成であってもよい。
(4)第4の構成例
第4の構成例では、図14に示すように、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうち少なくとも筐体側接合部512と端子側接合部513とのいずれも設けられていない一面において、中空部511を囲むように形成されたひだ状部519を含む。ひだ状部519は、ひだ状部519と同一面におけるひだ状部519以外の部位に比べて、絶縁部材51の貫通方向の寸法が大きくなる向きに突出した形状である。
ひだ状部519の形状は、実施形態2の「(2)第2の構成例」にて説明した(第1の)凸形状部517と同様である。第4の構成例では、ひだ状部519は、絶縁部材51の貫通方向の両端面(下面501および上面502)にそれぞれ形成されている。さらに、下面501および上面502のそれぞれにおいて、ひだ状部519は、実施形態2の「(3)第3の構成例」にて説明した(第1の)凸形状部517と同様に、中空部511を囲む同心状に複数(ここでは5つ)設けられている。これにより、絶縁部材51の下面501および上面502のそれぞれは、複数のひだ状部519にてコルゲート状に形成される。
以上説明した第4の構成例によれば、絶縁確保部514は、絶縁部材51の貫通方向の両端面のうちの少なくとも一面に形成されたひだ状部519を含んでいる。そのため、絶縁部材51の表面上において、筐体側接合部512と端子側接合部513との間にはひだ状部519が介在することになる。これにより、ひだ状部519がない場合に比べて、ひだ状部519の分だけ、筐体側接合部512と端子側接合部513との間の沿面距離が長くなり、筐体4と固定端子31との間の絶縁性能が向上する。
(5)変形例
本実施形態の絶縁部材51は、上記構成に限らず、適宜変更が可能である。たとえば第4の構成例において、ひだ状部519は、絶縁部材51の下面501と上面502とのいずれか一方にのみ形成されていてもよいし、1つのみ形成されていてもよい。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態4)
本実施形態に係る接点装置1は、図15Aおよび図15Bに示すように、筐体側接合部512が絶縁部材51の貫通方向の一端面(下面501)に設けられている点で、実施形態3の接点装置1と相違する。なお、本実施形態では、絶縁部材51以外の構成としては、実施形態1の変形例として説明した図5の筐体側スペーサ71が採用されることを前提として説明する。以下、実施形態3と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態の接点装置1は、端子側接合部513については、実施形態3と同様に絶縁部材51の内側面503に設けられている。本実施形態では、図15Aおよび図15Bに示すように、絶縁部材51の上面502と、絶縁部材51の下面501のうちの筐体側接合部512以外の部分と、絶縁部材51の外側面504とが、絶縁確保部514を構成する。ここで、絶縁部材51の上面502には、実施形態3の「(4)第4の構成例」と同様に複数のひだ状部519が形成されている。さらに、絶縁部材51の下面501の絶縁確保部514においては、実施形態2の「(3)第3の構成例」と同様に、凹形状部516が形成され、かつ凹形状部516の底面に複数(ここでは2つ)の(第1の)凸形状部517が形成されている。
以上説明した本実施形態の構成によれば、筐体側接合部512が絶縁部材51の下面501に設けられ、端子側接合部513が絶縁部材51の内側面503に設けられているので、絶縁部材51は、筐体4および固定端子31の多様な組み合わせに対応可能である。
なお、本実施形態では、筐体側接合部512が絶縁部材51の下面501、端子側接合部513が絶縁部材51の内側面503に設けられた例を示したが、この構成に限らず、実施形態1,2の構成と、実施形態3の構成とは適宜組み合わせ可能である。すなわち、筐体側接合部512が絶縁部材51の外側面504に設けられ、端子側接合部513が絶縁部材51の貫通方向の一端面(上面502)に設けられていてもよい。これにより、絶縁部材51は、筐体4および固定端子31のさらに多様な組み合わせに対応可能となる。
また、本実施形態の構成は、実施形態2で説明した構成、および実施形態3で説明した構成と、適宜組み合わせて適用可能である。
その他の構成および機能は実施形態3と同様である。
(実施形態5)
本実施形態に係る接点装置1は、図16に示すように、筐体4における底板41と底板41以外の部位(筒状部42)とが一部材で構成されている点で、実施形態1の接点装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態においては、底板41は筒状部42と継ぎ目なく連続するように形成されている。ここでは一例として、42アロイ(Fe−42Ni)で形成された筐体4を用いることとするが、筐体4を42アロイ製に限定する趣旨ではなく、筐体4はたとえばコバールなどで形成されていてもよい。
筐体4は、1枚の金属板から絞り加工によって形成され、図17に示すように、下面が開口した左右方向に長い中空の直方体状に形成される。筐体4の下面は、継鉄上板11によって塞がれている。筐体4のうち底板41となる部位には、一対の開口孔411,412が形成されている。なお、本実施形態においても実施形態1と同様に、筐体4は接点部2を囲む箱状に形成されていればよく、中空の直方体状に限らず、たとえば有底の楕円筒状や、中空の多角柱状などであってもよい。たとえば筐体4が有底の楕円筒状であれば、筐体4のうち底板41となる部位は楕円形状になる。
さらに、図16の例では、接点装置1は、端子側スペーサ61,62(図1参照)および筐体側スペーサ71,72(図1参照)が省略されている。なお、以下では、固定端子31、開口孔411、小径部312、拡径部313、(第1の)脚部314、絶縁部材51は、それぞれ固定端子32、開口孔412、小径部322、拡径部323、(第2の)脚部324、絶縁部材52に読み替え可能である。
具体的には、図16に示す接点装置1は、図18に示すように、実施形態2と同様に拡径部313の下面から小径部312の外周面に沿って下方に突出する円環状の脚部314を、固定端子31に有している。ここでは、脚部314の内径φ4は、絶縁部材51の内径φ1よりも大きく、かつ絶縁部材51の外径φ5より小さく設定されている(φ1<φ4<φ5)。なお、絶縁部材51の外径φ5は、開口孔411の内径φ3よりも大きく設定されている(φ5>φ3)。
固定端子31は、脚部314の先端面(下端面)が絶縁部材51の上面に接する状態で、脚部314の先端部(下端部)を絶縁部材51に対して直接接合することにより、絶縁部材51に直接固定される。固定端子31と絶縁部材51とは、ろう付けによって接合される。
絶縁部材51は、その下面が底板41の上面における開口孔411の周囲に接する状態で、その下面を底板41に対して直接接合することにより、筐体(底板41)4に直接固定される。絶縁部材51と底板41とは、ろう付けによって接合される。ろう付けの工程においては、絶縁部材51と底板41とは高温環境下に置かれることになるため、底板41は、絶縁部材(セラミック)51に熱膨張率が近い金属材料(42アロイやコバール)で形成される。
以上説明した構成によれば、筐体4の底板41と底板41以外の部位とが一部材で形成されているので、これらが別部材である場合に比べて、筐体4の部品点数を削減することができる。また、上述した接点装置1は、端子側スペーサおよび筐体側スペーサが省略されていることで、さらなる部品点数の削減を図ることができる。なお、端子側スペーサが省略される場合には、固定端子31は、上述したように脚部314を有する構成とし、脚部314の先端部を絶縁部材51に接合することが好ましい。
ところで、端子側スペーサおよび筐体側スペーサが省略されていることは、本実施形態の接点装置1において必須ではなく、必要に応じて、端子側スペーサおよび筐体側スペーサの各々を適宜採用可能である。以下、固定端子31、絶縁部材51、端子側スペーサ61、筐体側スペーサ71は、それぞれ固定端子32、絶縁部材52、端子側スペーサ62、筐体側スペーサ72に読み替え可能である。
図19は、図16に示す構成に、端子側スペーサ61を付加した接点装置1を示している。図19の例では、実施形態1と同様に、固定端子31の脚部314が省略され、固定端子31と絶縁部材51との間に、金属製の端子側スペーサ61が設けられて、固定端子31は、端子側スペーサ61を介して絶縁部材51に接合されている。
図20は、図16に示す構成に、筐体側スペーサ71を付加した接点装置1を示している。図20の例では、実施形態1と同様に、絶縁部材51と底板41との間に、金属製の筐体側スペーサ71が設けられ、絶縁部材51は、筐体側スペーサ71を介して底板41に接合されている。
また、図19の構成と図20の構成とを組み合わせることで、接点装置1は、実施形態1と同様に、端子側スペーサ61と筐体側スペーサ71との両方を備えていてもよい。
また、本実施形態の構成は、実施形態2で説明した構成、実施形態3で説明した構成、および実施形態4で説明した構成と、適宜組み合わせて適用可能である。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。