図1を用いて、発明を実施するための形態1に係る高分解能三次元音波探査装置101について説明する。図1に示した高分解能三次元音波探査装置101は、調査船としての船102のキャビン103にコンピュータ等の図示にされていない船上観測装置及びGPS方位計104を備え、船102の後部としての船尾側に音源曳航土台105とケーブル曳航土台106とを備える。音源曳航土台105及びケーブル曳航土台106は、船102の左右舷に渡って着脱可能に設置された別々の鋼材により構成される。尚、GPS方位計104に替えてGPS受信機を船102に搭載しても良い。
音源曳航土台105には、音源装置110を曳航する棒状部材からなる左右舷側の音源曳航ビーム107が別々に設けられる。左右舷側の音源曳航ビーム107は、中抜きされた中空状の金属製のパイプにより構成され、軽量になっている。
ケーブル曳航土台106には、受振ケーブル121を曳航する棒状部材からなる左右舷側のケーブル曳航ビーム108が別々に設けられる。左右舷側のケーブル曳航ビーム108は、中抜きされた中空状の金属製のパイプにより構成され、軽量になっている。よって、船102の後部には、左右舷側の音源曳航ビーム107が音源曳航土台105を介して別々に設けられ、左右舷側のケーブル曳航ビーム108がケーブル曳航土台106を介して別々に設けられる。
高分解能三次元音波探査装置101で行われる沿岸海域の地質構造の調査では、左右舷側の音源曳航ビーム107が左右舷側のケーブル曳航ビーム108よりも船尾側に設けられ、左右舷側の音源曳航ビーム107及び左右舷側のケーブル曳航ビーム108は船102から左右方向外側に直線的に延びている。
左右舷側の音源曳航ビーム107の船102から左右方向外側に直線的に延ばされた寸法は、左右舷側のケーブル曳航ビーム108の船102から左右方向外側に直線的に延ばされた寸法よりも短い。
左右舷側の音源曳航ビーム107の船102から左右方向外側に延びた他端部には、音源装置110が1個ずつ設けられる。左右舷側のケーブル曳航ビーム108の船102から左右方向外側に延びた他端部には、浮体115が1個ずつ個別に設けられる。
左右舷側のケーブル曳航ビーム108には4本の受振ケーブル121の一端部が別々に固定される。具体的には、左舷側のケーブル曳航ビーム108には、1本の受振ケーブル121が船102と音源装置110との間に配置されるように、別の1本の受振ケーブル121が音源装置110と浮体115との間に配置されるように、2本の受振ケーブル121の一端部が固定される。右舷のケーブル曳航ビーム108には、1本の受振ケーブル121が船102と音源装置110との間に配置されるように、別の1本の受振ケーブル121が音源装置110と浮体115との間に配置されるように、2本の受振ケーブル121の先端部が固定される。
高分解能三次元音波探査装置101で行われる沿岸海域の地質構造の調査では、2台の音源装置110の音源111を交互に一定間隔で発振させて反射点130を得るようになっている。図1では、左舷側の音源111の発振によって得られる反射点130の一例を四角形で図示してあり、右舷側の音源111の発振によって得られる反射点130の一例を三角形で図示してある。各反射点130の個数は、受振ケーブル121の長さ、並びに、受振ケーブル121の受振器122の個数つまり受振チャンネル数によって変わる。
4本の受振ケーブル121の他端部にはテールブイ123が1個ずつ別々に設けられる。各テールブイ123にはGPS受信機124が搭載されている。左右舷側のケーブル曳航ビーム108のそれぞれが曳航する受振ケーブル121の本数は、2本ずつに限定されるものではなく、同じ本数ずつであれば、1本でも3本以上でもよい。
又、高分解能三次元音波探査装置101で行われる沿岸海域の地質構造の調査では、調査海域に仮想のBinと呼ばれる格子状の領域を設定する。仮想のBinは、調査海域の地図上に地理座標を使用して描かれる。左右舷側の音源111の発振時に得られる中間点としての反射点130がどのBin内に入るか決めるためには、中間点としての反射点130の地理座標を知る必要がある。そのために、船102に搭載されたGPS方位計としてのGPS方位計104で測定された船上GPS位置を基準点とし、そこからの相対位置を使用して計算する。左右舷側の音源111の船上GPS位置に対する相対位置は、それらの設置位置から求めることができる。
各受振ケーブル121における受振器122の相対位置は、次の(1)乃至(4)項により求める。(1)各受振ケーブル121の船側端の相対位置を各受振ケーブル121のケーブル曳航ビーム108への固定位置から求める。(2)各受振ケーブル121の他端部に設置されたテールブイ123に搭載されたGPS受信機124で測定されたGPS位置からテールブイ123の地理座標を求める。(3)各受振ケーブル121の船102の側に位置する一端部の地理座標を船上GPS位置との相対位置から求める。(4)各受振ケーブル121の他端部にテールブイ123が設けられていて、船102による曳航時には各受振ケーブル121に後方へ張力がかかり、各受振ケーブル121は直線状に後方へ延びているので、各受振ケーブル121が船102による曳航で直線状に延びているものとして、各受振ケーブル121における各受振器122の地理座標を求める。つまり、各受振器122は、各受信ケーブル121の船102の側に位置する一端部から後方に何メートルの位置に設置しているか、又は、各受信ケーブル121のテールブイ123の位置から前方に何メートルの位置に設置しているかを基に、各受振器122の地理座標を求める。
尚、図1に示した発明を実施するための形態1に係る高分解能三次元音波探査装置101で行った沿岸海域の地質構造の調査を、図9に示した従来の高分解能三次元音波探査装置901で行った沿岸海域の地質構造の調査と対比する。
図1に示した高分解能三次元音波探査装置101では、各音源曳航ビーム107の長さを4m、各ケーブル曳航ビーム108の長さを10m、各ケーブル曳航ビーム108に受振ケーブル121を2本ずつ固定し、各受振ケーブル121を27.5m、各受振ケーブル121が受振器122を2.5m間隔で12個備え、各受振ケーブル121の間の間隔141を8mとし、左舷側の音源111が船102の進行方向に2.5m間隔で発振し、左舷側の音源111の発振後に船102が1.25m前進した時に右舷側の音源111が発振し、右舷側の音源111の発振間隔も2.5mあり、つまり、船102の進行方向に1.25m間隔で、左右舷側の音源111を交互に発振し、調査を行ったところ、反射点130の左右舷方向幅142が18mであった。尚、図1において、符号141(8m)は間隔141が8mであることを表し、符号142(18m)は左右舷方向幅142が18mであることを表す。
これに対し、図9に示した三次元音波探査装置901では、音源902の曳航ロープ904の長さを17.2m、ケーブル曳航ビーム905の左右舷から突出した長さを10m、ケーブル曳航ビーム905の左右舷に受振ケーブル906を2本ずつ固定し、各受振ケーブル906を27.5m、各受振ケーブル906が受振器を2.5m間隔で12個備え、各受振ケーブル906の間の間隔913を8mとし、音源902が船903の進行方向に2.5m間隔で発振し、調査を行ったところ、反射点912の左右舷方向幅が12mであった。尚、図において、符号913(8m)は間隔913が8mであることを表し、符号914(12m)は左右舷方向幅914が12mであることを表す。
よって、図1に示した高分解能三次元音波探査装置101による沿岸海域の地質構造の調査と図9に示した三次元音波探査装置901による沿岸海域の地質構造の調査とを考察すると、図9に示した三次元音波探査装置901では反射点912の左右舷方向幅が12mであるのに対し、図1に示した高分解能三次元音波探査装置101では反射点130の左右舷方向幅914が18mと広く、効率的な調査作業を行えることが分かる。
尚、前記種々の数値は対比としての一例として記載したものであって、発明を実施するための形態としては前記数値に限定されるものではない。
又、図9に示した三次元音波探査装置901では、音源装置902を船903の後部中央から後方へロープ904で曳航するので、音源装置902が船903の進行方向に対して左右に動き、このため、音源装置位置と受信ケーブル内に設けられた各受信器911間の中点に位置する反射点912も音源装置902の動きに応じて船903の進行方向と直交する方向に動いてしまい、Bin内の反射点912の個数のばらつきが大きくなってしまう。
これに対し、図1に示した高分解能三次元音波探査装置101では、左右舷の音源装置110を音源曳航ビーム107で船102の船首と船尾とを結ぶ中心線に対して概ね直角になるように曳航するので、船102の進行方向に対する音源装置110の左右の動きを小さくすることができ、反射点位置の船102の進行方向と直交する方向への動きを小さくすることができ、Bin内の反射点130の個数のばらつきを小さくできる。
図2を用いて、発明を実施するための形態1に係る音源曳航ビーム107とケーブル曳航ビーム108とを船102で曳航するための構造について、受振ケーブル121の図示を省略し、船102の左舷側を例とし、先ず、音源曳航ビーム107を船102で曳航するための構造を説明し、次に、ケーブル曳航ビーム108を船102で曳航するための構造を説明する。
音源曳航ビーム107を船102で曳航するための構造にあっては、音源曳航ビーム107の一端部が船102上の音源曳航土台105の左端部に図示のされていない自在継手を中心として回転可能に連結されることから、うねり等による船102の上下あるいは左右の動きによって生じる音源曳航土台105と音源曳航ビーム107との接続部に対する機械的負荷を和らげることができる。前記図示のされていない自在継手は、例えば、自動車の牽引装置のヒッチボールとヒッチカプラーとから構成されるものが適用可能である。
つまり、ヒッチボールが音源曳航土台105に固定され、ヒッチカプラーが音源曳航ビーム107に固定され、ヒッチカプラーがヒッチボールに被せられて抜け止めが施されることによって、前記図示のされていない自在継手を構成することが可能である。前記ヒッチボールへのヒッチカプラーの抜け止めが人為操作で解除されると、ヒッチカプラーがヒッチボールから人為操作で抜けるので、音源曳航ビーム107が音源曳航土台105から外せる。即ち、音源曳航ビーム107が音源曳航土台105に自在継手で着脱可能に取り付けられている。
音源曳航ビーム107の他端部には、音源装置110が吊り下げロープ201で吊り下げられる。音源装置110は、2個の浮体210が上で、1個の音源111が下となるように、浮体210と音源111がフレーム211で固定されている。フレーム211には、吊り下げロープ201が連結されている。音源装置110の音源111から延びる音源ケーブル212は、船102のキャビン103の側の図示のされていない船上観測装置に配線される。つまり、音源曳航ビーム107の他端部には2個の浮体210を備えた音源装置110が吊り下げロープ201を介して取り付けられることから、音源装置110のうねり等による動きを吸収することができ、音源曳航ビーム107の他端部への機械的負荷を和らげることができる。
又、音源曳航土台105の左端部には、音源装置110を船102の甲板と海面との間で昇降する音源クレーン220がボルト及びナット等のネジ部材で着脱可能に設置される。音源クレーン220は、取付台座221、第1アーム222、第2アーム223、ダンパー224、図示のされていないウィンチを備える。
取付台座221は、音源曳航土台105の左端部の上面に固定される。第1アーム222は、取付台座221に水平方向に回転可能に連結され、かつ、取付台座221より上方に延びている。第1アーム222の上端部には、第2アーム223の下端部が上下方向に回転可能に連結されている。ダンパー224は、第1アーム222と第2アーム223とに回転可能に連結され、第2アーム223の第1アーム222に対する仰角を調整可能に保持する。
ウィンチの巻き胴が第1アーム222に取り付けられ、巻き胴から引き出されたウィンチにおけるロープの先端部が第2アーム223の先端部から下方に吊り下げられて昇降ロープ203に連結されている。昇降ロープ203は、音源曳航ビーム107の他端部と音源曳航ビーム107の中間部とに連結されている。そして、巻き胴の側部に設けられたウィンチのハンドルが人の操作を受けることによって、ウィンチにおけるロープと昇降ロープ203とを介して、音源曳航ビーム107が音源曳航土台105の側を回転中心として昇降する。第2アーム223の先端部と音源曳航ビーム107の中間部とは、伸縮ロープ204が連結されている。
尚、音源クレーン220は、音源装置110を船102の甲板と海面との間で昇降するものであれば、図2に示した構造のものに限定されるものではなく、又、手動式に限定されるものでもない。
ケーブル曳航ビーム108を船102で曳航するための構造にあっては、ケーブル曳航ビーム108の一端部が船102上のケーブル曳航土台106における左端部に図示のされていない自在継手を中心として水平方向に回転可能に連結されることから、うねり等による船102の上下あるいは左右の動きによって生じるケーブル曳航土台106とケーブル曳航ビーム108との接続部に対する機械的負荷を和らげることができる。前記図示のされていない自在継手は、例えば、自動車の牽引装置のヒッチボールとヒッチカプラーとから構成されるものが適用可能である。
つまり、ヒッチボールがケーブル曳航土台106に固定され、ヒッチカプラーがケーブル曳航ビーム108に固定され、ヒッチカプラーがヒッチボールに被せられて抜け止めが施されることによって、前記図示のされていない自在継手を構成することが可能である。前記ヒッチボールへのヒッチカプラーの抜け止めが人為操作で解除されると、ヒッチカプラーがヒッチボールから人為操作で抜けるので、ケーブル曳航ビーム108がケーブル曳航土台106から外せる。即ち、ケーブル曳航ビーム108がケーブル曳航土台106に自在継手で着脱可能に取り付けられている。
ケーブル曳航ビーム108の他端部には、浮体115が、ケーブル曳航ビーム108の一端部と他端部との方向に延びる中心線を回転中心として上下方向及び船102の船首と船尾とを結ぶ中心線に平行な方向に回転可能に設けられることから、浮体115のうねり等による動きを吸収することができ、ケーブル曳航ビーム108の他端部への機械的負荷を和らげることができる。
ケーブル曳航ビーム108には、2本の固定ロープ205及び206が設けられる。固定ロープ205は、ケーブル曳航ビーム108の他端部と船102に設けられた支柱207と連結される。別の固定ロープ206は、ケーブル曳航ビーム108の一端部と他端部との間の中間部と船102に設けられた支柱208と連結される。
図2に示したように、音源曳航ビーム107が音源クレーン220によって音源曳航土台105の側を回転中心として昇降可能なっており、音源クレーン220の第1アーム222が取付台座221に対して水平方向に回転可能になっているので、音源クレーン220の昇降と第1アーム222の水平方向への回転との協働によって、音源曳航ビーム107の他端部に設けられた音源装置110がケーブル曳航ビーム108を越えて船102の船尾の側と船首の側とに移動可能になっている。
次に、高分解能三次元音波探査装置101で行われる沿岸海域の地質構造の調査の作業手順について説明する。作業手順は、(1)港に着岸中の船102への調査に必要な装置や器具の設置作業、(2)調査海域に向けて出港し、調査海域到着後、音源装置110及び受振ケーブル121の曳航のための準備作業、(3)観測作業、(4)観測終了後に、音源装置110及び受振ケーブル121の撤収作業、(5)調査海域から港に帰港し、船102から装置の撤収作業、よりなる。
前記(1)項の設置作業では、高分解能三次元音波探査装置101で行わる沿岸海域の地質構造の調査に必要な装置や器具を船102に設置する。図示のされていない船上観測装置及びGPS方位計104を船102のキャビンに設置し、音源曳航土台105及びケーブル曳航土台106を船102の後部に取り付け、音源曳航土台105に左右舷側の音源クレーン220及び左右舷側の音源曳航ビーム107並びに左右舷側のケーブル曳航ビーム108が設置され、音源装置110が船102の甲板上に搭載される。
具体的には、左右舷側の音源クレーン220の取付台座221が音源曳航土台105の左右端部に別々に固定され、左右舷側の音源クレーン220が音源曳航土台105の左右端部に別々に設置される。左の音源曳航ビーム107の一端部が音源曳航土台105の左端部に自在継手で連結され、右の音源曳航ビーム107の一端部が音源曳航土台105の右端部に自在継手で連結される。そして、左右舷側の音源曳航ビーム107の他端部が船首の側に向けられ、左右舷側の音源曳航ビーム107が船102の左舷および右舷に固定されるか船内に収納される。
又、左のケーブル曳航ビーム108の一端部がケーブル曳航土台106の左端部に自在継手で連結され、右のケーブル曳航ビーム108の一端部がケーブル曳航土台106の右端部に自在継手で連結される。そして、左右舷側のケーブル曳航ビーム108の他端部に設けられた浮体115の側が船首の側に向けられ、左右舷側のケーブル曳航ビーム108が船102の左舷および右舷に固定されるか船内に収納される。
前記のように、左右舷側の音源曳航ビーム107及び左右舷側のケーブル曳航ビーム108は、港と調査海域との往復中、船102の左舷および右舷に固定されるか船内に収納されるため、左右舷側の音源曳航ビーム107の長さ及び左右舷側のケーブル曳航ビーム108の長さは船102の長さに依存し、船102の甲板の横幅には依存しない。このことから、受振ケーブル121の船102から左右方向に展開した幅が広くなる。
そして、左右舷側の音源装置110が船102の甲板上に搭載され、左右舷側の音源装置110と左右舷側の音源曳航ビーム107とが吊り下げロープ201で連結される。さらに、左右舷側の音源曳航ビーム107と音源クレーン220とが昇降ロープ203で連結される。
前記(2)項の準備作業では、前記(1)の作業を終えた船102が港から調査海域へ向かい、調査海域到着後、調査準備として、受振ケーブル121の曳航のための作業及び音源装置110の曳航のための作業が行われる。
具体的には、受振ケーブル121の曳航のための作業では、船102の微速前進状態において、左右舷側のケーブル曳航ビーム108に設けられた浮体115が人の操作で船外に振り出される。その際、浮体115及びケーブル曳航ビーム108が船102の船首と船尾とを結ぶ中心線に対して概ね直角になるように、2本の固定ロープ205及び206の長さが人為的に調整された位置で、2本の固定ロープ205及び206が船102の支柱207及び208に別々に人の操作で固定される。
又、図1に示したように、2本の受振ケーブル121の一端部が左舷のケーブル曳航用ビーム108の他端部と中間部とに固定され、別の2本の受振ケーブル121の一端部が右舷のケーブル曳航用ビーム108の他端部と中間部とに固定された状態において、合計で4本の受振ケーブル121が受振ケーブル121の位置決定用のGPS受信機124の搭載されたテールブイ123の側から海に別々に投入される。これらの受振ケーブル121の海への投入は、左右舷のケーブル曳航用ビーム108のそれぞれにおいて、船102より遠い外側の受振ケーブル121が投入された後、船102に近い内側の受振ケーブル121が投入される。
段落0044及び0045の結果、段落0019に記載した各受振ケーブル121における受振器122の相対位置を求める場合において、船102による曳航時でも船102から左右舷側の寸法が特定でき、各受振ケーブル121の船側端の相対位置が各受振ケーブル121のケーブル曳航ビーム108への固定位置から求められる。
図2に戻り、音源装置110の曳航のための作業では、左右舷側の音源曳航ビーム107の他端部に設けられた音源装置110が船102の甲板上から船外に振り出され、船外へ振り出された左右舷側の音源装置110が音源クレーン220の昇降及び回転並びに音源曳航ビーム107の回転によって船102の船首と船尾とを結ぶ中心線と概ね直角方向となるまで船尾側へ移動されて停止する。
そして、左右舷側の音源クレーン220のウィンチのロープがウィンチの巻き胴から引き出されて、左右舷側の音源曳航ビーム107の他端部を下降させ、音源装置110の浮体115を海面に着水させる。
その後、左右舷側の音源曳航ビーム107が船首と船尾とを結ぶ中心線と概ね直角を保持するように、左右舷側の音源曳航ビーム107に固定された昇降ロープ203の長さを調整して、昇降ロープ203を船102の舷側に固定する。これによって、前記海面に着水した左右舷側の音源装置110は、伸縮ロープ204で左右舷側の音源曳航ビーム107に吊り下げられた状態になる。これによって、段落0018に記載した左右舷側の音源111の船上GPS位置に対する相対位置を求める場合に、船102による曳航時でも、音源111の位置が特定でき、この特定された音源111の位置から音源111の船上GPS位置に対する相対位置が求められる。
前記(2)項の準備作業が終了することによって、図1に示したように、左右舷側の音源曳航ビーム107が左右舷側のケーブル曳航ビーム108よりも船尾側に設けられ、左右舷側の音源曳航ビーム107及び左右舷側のケーブル曳航ビーム108は船102から左右舷方向外側に直線的に延ばされ、左右舷側の音源曳航ビーム107の他端部に音源装置110が1個ずつ設けられ、左右舷側のケーブル曳航ビーム108の他端部には、浮体115が1個ずつ個別に設けられ、左右舷側のケーブル曳航ビーム108に2本ずつの受振ケーブル121が別々に固定された状態になる。
前記(3)項の観測作業では、図1に示した状態において、左右舷側の音源装置110の音源111を交互に発振させて音波を海底に向けて送出し、海底あるいは海底下の地層構造境界からの反射音を4本の受振ケーブル121内に設置された各受振器122によって受信する。この動作を繰り返すことによって、調査海域に設定された仮想のBinと呼ばれる格子の領域内で複数の反射点130が得られる。
前記(3)項の撤収作業では、音源装置110と受振ケーブル121とが船102の甲板上に回収され、調査海域から港へ帰航し、調査に必要な装置及び器具を船102から港の岸壁に撤収して貨物自動車に積み込む。
図3を用いて、発明を実施するための形態1に係るケーブル曳航ビーム108について説明する。図3に示した左右舷側のケーブル曳航ビーム108それぞれは、中抜きされた中空状の金属製のパイプからなる2本のビーム担体301が1本ずつの棒状部材となるように連結されて構成される。よって、左右舷側のケーブル曳航ビーム108を合計4本のビーム担体301として分解して、貨物自動車で安全かつ適切に運搬できる。2本のビーム担体301は、同じ長さ又は異なる長さであってよい。
図3に示した2本のビーム担体301をケーブル曳航ビーム108となるように連結する構造について説明する。2本のビーム担体301の互いに連結される側の端部には、貫通孔302が複数個ずつ設けられる。貫通孔302は、ビーム担体301の周壁に設けられ、ビーム担体301外周面の一方から他方に向けてビーム担体301の直径に沿って貫通する。
接続具303は、2本のビーム担体301を1本のケーブル曳航ビーム108となるように接続する部材であって、2本のビーム担体301に外接嵌合される太さであって、中抜きされた中空状の両端部に開口した金属のパイプにより構成される。接続具303には、貫通孔304が複数個設けられている。貫通孔304の個数は、2本のビーム担体301の貫通孔302の合計の個数と同数である。
接続具303の外周面には、金属製のロープ係留部305と合成樹脂製のスペーサ306とが設けられる。ロープ係留部305は、接続具303の一端部の側の貫通孔304と他端部の側の貫通孔304と間から接続具303の直径方向の外側に弧状に突出する。スペーサ306は、接続具303の一端部の側の複数個の貫通孔304の間、接続具303の他端部の側の複数個の貫通孔304の間から接続具303の直径方向の外側に突出する。2本のビーム担体301と1個の接続具303とを結合する結合部材として、頭付きボルトからなるボルト310とナットとを例示した。
内側カバー315は、中抜きされた中空状の両端部に開口した強化プラスチック製のパイプの周壁部の一部がパイプの両端部にわたって除去された側部開口317を有する割れ筒状になっている一方、パイプの周壁部に逃げ部318を側部開口317の側から直径方向の内側に窪む形状に備える。逃げ部318は内側カバー315が被せられる時に接続具303のロープ係留部305を避けるためのものである。内側カバー315は、接続具303で接続された2本のビーム担体301にわたる長さを有する1個になった構造を例示したが、逃げ部318の部分で左右に分離された2個になった構造でも良い。逃げ部318は1個に限定されるものではなく、ロープ係留部305の接続具303の側の根元部を避けるように左右に分かれた2個であっても良い。
又、外側カバー316は、中抜きされた中空状の両端部に開口した強化プラスチック製のパイプの周壁部の一部がパイプの両端部にわたって除去された側部開口319を有する割れ筒状になっている。外側カバー316は、接続具303のロープ係留部305を避けるように2個になった構造を例示したが、パイプの周壁部に図示のされていない逃げ部を側部開口319の側から直径方向の内側に窪む形状に備えかつ接続具303で接続された2本のビーム担体301にわたる長さを有する1個になった構造でも良い。
内側カバー315と外側カバー316とは、2本のビーム担体301と接続具303とが複数本のボルト310とナット311とで連結された状態において、ボルト310の頭部とナット311とを覆うように2本のビーム担体301と接続具303とにわたって被せられることで、2本のビーム担体301を接続具303で接続した部分の機械的強度を増すための補強部材を構成するうえ、ボルト310とナット311との脱落を防止するようになっている。内側カバー315と外側カバー316との一方又は両方が金属でもよい。
次に、2本のビーム担体301を連結する場合について説明する。2本のビーム担体301のうちの一方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部が接続具303の一端部に内接嵌合され、貫通孔302及び304が互いに合った位置で、ボルト310の雄ネジ部が接続具303の外周面の一方から貫通孔302及び304を経由して接続具303の外周面の他方に向けて接続具303とビーム担体301とに挿入され、ボルト310の接続具303より外側に突出した雄ネジ部にナット311が螺合される。これによって、一方のビーム担体301と接続具303とが互いに固定される。
又、他方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部が接続具303の他端部に内接嵌合され、貫通孔302及び304が互いに合った位置で、ボルト310の雄ネジ部が接続具303の外周面の一方から貫通孔302及び304を経由して接続具303の外周面の他方に向けて接続具303とビーム担体301とに挿入され、ボルト310の接続具303より外側に突出した雄ネジ部にナット311が螺合される。これによって、2本のビーム担体301が接続具303とボルト310とナット311とで連結されて1本のケーブル曳航ビーム108になる。
そして、1個の内側カバー315が側部開口317からロープ係留部305を避けてボルト310とナット311とを覆うように2本のビーム担体301と接続具303とにわたって被せられる。次に、2個の外側カバー316が側部開口319からロープ係留部305を避けて内側カバー315の側部開口317を覆うように1個の内側カバー315に被せられる。その後、図4に示したように、締結バンド等の締結具320で内側カバー315と外側カバー316とを脱落しないように外側から内側に締め付ける。締結具320の本数は図4に示した4本に限定されるものでなく5本以上であってもよい。
以上によって、図5に示したように、内側カバー315と外側カバー316とがボルト310とナット311とを覆い、2本のビーム担体301を接続具303で接続した部分の機械的強度が増し、ボルト310とナット311との脱落も防止する。尚、図5において、内側カバー315と外側カバー316とから断面を表わす斜線を省略してある。又、図5では、締結具320が図示されない。図5において、接続具303の貫通孔304周りに外側から内部に窪む凹部を設け、この凹部にボルト310の頭部又はナットを収容させれば、スペーサ306が省ける。又、ビーム担体301と接続具303とを結合する結合具としてボルト310とナット311を使用したが、ビーム担体301の周壁に形成された他方の貫通孔の内周面に雌ネジ部を形成し、この雌ネジ部に結合部材としてボルトの雄ネジ部を螺合させば、ナットが省ける。又、ボルト310とナット311とに替えて、結合部材を頭付きピンからなるピンで構成してもよい。
2本のビーム担体301と接続具303とボルト310とナット311と内側カバー315と外側カバー316と締結具320とからなるケーブル曳航ビーム108の組み立ては、船102が港で着岸する脇の岸壁上で行うことができ、組み立てに必要なスペースは、ケーブル曳航ビーム108の全長程度であり、組み立て完了後すぐに船102にケーブル曳航ビーム108を搭載でき、ケーブル曳航ビーム108の組み立てから船102への設置までの作業効率が良い。
図6を用いて、発明を実施するための形態2に係る2本のビーム担体301を1本のケーブル曳航ビーム108となるように連結する構造について説明する。図6示した構造にあっては、2本のビーム担体301の互いに連結される側の端部には、貫通孔302及び貫通孔501が複数個ずつ設けられる。貫通孔501は、貫通孔302と同様、ビーム担体301の周壁に設けられ、ビーム担体301の外周面の一方から他方に向けてビーム担体301の直径に沿って貫通する。
接続具502は、2本のビーム担体301に内接嵌合される太さであって、中抜きされた中空状の両端部に開口した金属製のパイプにより構成される。接続具502には、貫通孔503が複数個設けられる。貫通孔503は、接続具502の周壁に設けられ、接続具502の直径に沿い、接続具502の外周面の一方と他方とに貫通する。
2本のビーム担体301と1個の接続具502とを互いに結合する結合部材として、金属製の頭付きピンからなるピン505を例示した。カバー509は、中抜きされた中空状の両端部に開口した強化プラスチック製のパイプにより構成され、2本のビーム担体301と接続具502とが複数本のピン505で連結された状態において、頭付きピンからなるピン505を覆うように2本のビーム担体301と接続具502とにわたって被せられることで、2本のビーム担体301を接続具502で接続した部分の機械的強度を増すための補強部材を構成するうえ、ピン505の脱落を防止するようになっている。カバー509は金属製でもよい。
2個のロープ係留具510は、中抜きされた中空状の両端部に開口した金属製のパイプにより構成され、金属製のフランジ部511、金属製のロープ係留部513、貫通孔512を備える。フランジ部511は、ロープ係留具510の一端部に設けられ、ロープ係留具510の直径方向外側に突出する。ロープ係留部513は、ロープ係留具510の周壁に設けられ、ロープ係留具510の外周面より直径方向の外側に弧状に突出する。貫通孔512は、ロープ係留具510の周壁に設けられ、ロープ係留具510の外周面の一方から他方に向けてロープ係留具510の直径に沿って貫通する。
次に、2本のビーム担体301を連結する場合について説明する。2個のロープ係留具510のうちの一方のロープ係留具510がロープ係留部513の側から一方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部に外接嵌合され、一方のロープ係留具510が貫通孔501の側に移動され、貫通孔501及び512が互いに合った位置で、図示のされていない頭付きボルトからなるボルトの雄ネジ部がロープ係留具510の外周面の一方から貫通孔501及び512を経由してロープ係留具510の外周面の他方に向けてロープ係留具510とビーム担体301とに挿入された後、図示のされていないナットがボルトのロープ係留具510から他方に突出した雄ネジ部に螺合される。これによって、一方のビーム担体301と一方のロープ係留具510とが互いに固定される。
又、他方のロープ係留具510がロープ係留部513の側から他方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部に外接嵌合された後、カバー509が他方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部に外接嵌合され、ロープ係留具510とカバー509とが他方のビーム担体301に対しビーム担体301の延長する方向に移動可能になっている。
次に、一方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部が接続具502の一端部に外接嵌合され、貫通孔302及び503が互いに合った位置で、ピン505がビーム担体301の外周面の一方から貫通孔302及び503を経由してビーム担体301の外周面の他方に向けてビーム担体301と接続具502とに挿入される。
又、他方のビーム担体301の貫通孔302の側の端部が接続具502の他端部に外接嵌合され、貫通孔302と503とが互いに合った位置で、ピン505がビーム担体301の外周面の一方から貫通孔302及び503を経由してビーム担体301の外周面の他方に向けてビーム担体301と接続具502とに挿入される。これによって、2本のビーム担体301が接続具502及びピン505で互いに連結されて1本のケーブル曳航ビーム108になる。
その後、前記他方のビーム担体301に移動可能に装着されたカバー509が一方のビーム担体301に装着されたロープ係留具510の側に移動されてピン505を覆うように2本のビーム担体301にわたって被せられる。
そして、前記他方のビーム担体301に移動可能に装着されたロープ係留具510がカバー509の側に移動され、貫通孔501及び512が互いに合った位置で、図示のされていない頭付きボルトからなるボルトの雄ネジ部がロープ係留具510の外周面の一方から貫通孔501及び512を経由してロープ係留具510の外周面の他方に向けてロープ係留具510とビーム担体301とに挿入された後、図示のされていないナットがボルトのロープ係留具510から他方に突出した雄ネジ部に螺合される。これによって、他方のロープ係留具510が他方のビーム担体301に固定され、カバー509が2個のロープ係留具510で挟まれて、2本のビーム担体301を接続具303で接続した部分の機械的強度が増し、ピン505の脱落も防止する。
以上によって、図7及び図8に示したように、2本のビーム担体301が接続具502とピン505とで連結されて一本のケーブル曳航ビーム108を構成し、ピン505がカバー509で覆われる。又、図7に示したようにカバー509の両側にロープ係留具510が配置され、ロープ係留具510が2本のビーム担体301に結合した結合具としてのボルトの頭部701が外側に配置される。ロープ係留具510をビーム担体301に結合する結合具としてボルトとナットを使用したが、ビーム担体301の周壁に形成された他方の貫通孔の内周面に雌ネジ部を形成し、この雌ネジ部に結合部材としてボルトの雄ネジ部を螺合させれば、ナットが省ける。
図7に示したように、2本のビーム担体301と接続具502とピン505とカバー509とロープ係留具510と図示のされていないボルトと図示のされていないナットとからなるケーブル曳航ビーム108の組み立ては、船102が港で着岸する脇の岸壁上で行うことができ、組み立てに必要なスペースは、ケーブル曳航ビーム108の全長程度であり、組み立て完了後すぐに船102にケーブル曳航ビーム108を搭載でき、ケーブル曳航ビーム108の組み立てから船102への設置までの作業効率が良い。
図8に示したように、カバー509とビーム担体301との間には、隙間801が配置される。図8において、ピン505の頭部がビーム担体301の貫通孔302周りの周壁に設けられた凹部に収容され、ピン505の先端部がビーム担体301の周壁より直径方向の外側に出なければ、隙間801は省略できる。ピン505の先端部の側部に図示のされていない突起部が、ピン505の周壁に設けられ、ピン505の直径方向に出たり入ったりするように弾性で支持されても良い。又、結合部材としてピン505に替えてボルトを使用してもよい。このように結合部材としてボルトを使用する場合、ビーム担体301の周壁に形成された他方の貫通孔の内周面に雌ネジ部を形成し、この雌ネジ部に結合部材としてのボルトの雄ネジ部を螺合してもよい。