「第1の実施形態」
(第1の実施形態の植物栽培装置の構成)
発明を実施するための第1の実施形態の植物栽培装置は、上下方向に延伸する支柱部材と、支柱部材と直交する方向である横方向に延伸する棚部材と、棚部材に支えられる植物載置棚と、を備え、支柱部材は、棚部材を片持梁方式で保持するための支持点の基準となる。
支柱部材の延伸する上下方向とは、垂直方向である。支柱部材は棚部材を片持梁方式で保持するための支持点の基準となるとは、支柱部材に棚部材を直接的に固着して支柱部材は棚部材を片持梁方式で保持するための支持点の基準となるものであってもよい。また、支柱部材は棚部材を片持梁方式で保持するための支持点の基準となるとは、植物栽培装置は、支柱部材および棚部材のいずれとも直交する棚部材保持部材を備え、支柱部材は棚部材保持部材を保持し、棚部材保持部材は棚部材を保持して、支柱部材は棚部材保持部材を介して棚部材を片持梁方式で保持するための支持点の基準となるものであってもよい。
植物栽培装置は、主要構成部材として、基本筐体部と植物載置器保持部材と光照射部と、を備える。これらの構成部材の各々の概要について以下に説明をする。
基本筐体部は、植物栽培装置の枠組みである。基本筐体部は、支柱部材と棚部材と植物載置棚、または、支柱部材と棚部材保持部材と棚部材と植物載置棚を有している。基本筐体部は、鉄材、ステンレス材、アルミニューム材、銅材等の種々の金属材料(金属材料の表面に塗装、塗膜を施したものも含む)で構成することができる。また、基本筐体部は、強化プラスチック材、木材、ファイバー材、炭素材、各種樹脂材等で構成してもよい。また、金属材料、強化プラスチック材、木材、ファイバー材、炭素材、各種樹脂材等の組み合わせで構成してもよい。要は、植物栽培装置の枠組みとなるに十分な強度を有しながら、所望の形状とし、部材同士を接続する等の加工可能な材料であればどのような物を用いるものであってもよい。また、栽培養液によって腐食することがない材料であるか、腐食防止の表面処理がなされている材料であることが望ましい。さらに、付着した栽培養液等の汚れを容易に除去できる表面処理がなされていることが望ましい。部材同士の接続は、ボルト締め、嵌合、接着、溶接、バンド締、サヤ管工法等の種々の方式を採用できる。
基本筐体部は、垂直方向である上下方向に延伸する支柱部材と、支柱部材を支持の基準として片持梁方式で保持され棚部材を有し、棚部材は支柱部材の延伸する方向に複数段配されるようにしてもよい。支柱部材は、床の上、または、天井に一端が固着され垂直方向に延伸する部材である。支柱部材はキャスタを有し床の上を移動し、または、天井に吊られて移動するようにしてもよい。以下の説明においては、3次元直交座標系を用いて支柱部材が延伸する垂直方向(上下方向)をZ軸で表す。後述するX軸、Y軸を含め、X軸、Y軸、Z軸は3次元直交座標の各軸である。棚部材が延伸する方向がX軸である。植物載置棚が延伸する方向がY軸である。
基本筐体部が棚部材保持部材を有する場合には、支柱部材と棚部材との間に介在する棚部材保持部材が延伸する方向はY軸である。すなわち、植物載置棚と棚部材保持部材とは平行して各々Y軸方向に延伸する。
棚部材は、植物載置棚を保持するための部材である。棚部材は、支柱部材のZ軸方向に複数個を段状に配することができる。また、支柱部材は、Y軸上に複数個並べて配置することができる。よって、Y軸方向の視点からZ軸・X軸平面を視認すると、支柱部材と棚部材とはあたかも魚の骨(フィッシュボーン)のような片持梁形状をしている。
棚部材は、植物載置棚を支える。棚部材は、棚部材の延伸する方向に1個または複数個の植物載置棚をその上に配することができる。すなわち、複数個の植物載置棚は平行してY軸方向に延伸する。植物載置棚の延伸長が長い場合には途中で撓むので、撓みなく一直線に延伸させるためにY軸方向に所定の間隔で離間して配される他のフィッシュボーン形状の棚部材が1個又は複数個の植物載置棚を支えるようにしてもよい。
植物載置棚は、植物育成に直接に関わるものであり、植物載置棚の内部で根を延ばすなどして植物を育成するための構成部である。例えば、植物載置棚の一つの実施形態としては、溝形状栽培部材が用いられる。本実施形態では溝形状栽培部材を植物載置棚の代表例として説明するが、植物載置棚は溝形状栽培部材に限られるものではない、例えば、Y軸方向に延伸する断面が円状、方形状のパイプ状部材であって、Y軸方向の所定間隔毎に植物を育成するための孔部を配するものであってもよい。
X、Y、Zの座標軸の原点は、各座標軸の最も端の1点を原点とするのが一般的である。しかしながら、本明細書においては、各構成部を複数の図面に分けて説明をする都合上、各図面において、原点の位置を特定することが困難である。よって、各図面の隅に示すX、Y、Zの座標軸の標記は、図面に表れた構成部を、X、Y、Zの各軸のどの方向から図面を表しているかを示すものに過ぎず、原点の位置を特定するものではない。以下では、X軸は横方向、Y軸は通路に沿った方向(通路方向と省略する)、Z軸は上下方向の用語も併用して、図を参照して第1の実施形態について説明をする。
図1は、植物栽培装置の主要部材である基本筐体部を構成する、支柱部材、棚部材保持部材、棚部材、植物載置棚(溝形状栽培部材)の斜視図の一部を示す模式図である。図1を参照して各構成部について以下に説明をする。
支柱部材111は、ボルト12で床に固着されている。支柱部材111は、図1の隅に記載の座標軸のZ軸方向(垂直方向)に延伸する。X軸方向(横方向)に延伸する棚部材131aと棚部材131bとは一体の部材で形成してもよく、棚部材131aと棚部材131bとを別部材で形成してもよい。棚部材131aと棚部材131bとは、折板(鋼材を折り曲げた板材)であるが、中空の円状または方形状の部材であってもよい。棚部材保持部材1111は、支柱部材111および棚部材131aと棚部材131bとのいずれとも直交する。棚部材131aと棚部材131bとは、片持梁方式で棚部材保持部材1111に保持されている。棚部材保持部材1111のX軸方向の中心点から左側(図1を参照)が棚部材131aであり、右側が棚部材131bである。支柱部材111は、棚部材131aと棚部材131bとを片持梁方式で保持するための支持点の基準となっている。
同様に、棚部材131aと棚部材131bの上の段に棚部材132aと棚部材132bが配置される。棚部材132aと棚部材132bの上の段に棚部材133aと棚部材133bが配置される。すなわち、棚部材131aと棚部材131b、棚部材132aと棚部材132b、棚部材133aと棚部材133b、の順に下方から上方に配置され、Z軸方向と直交するX軸方向に延伸するように、棚部材保持部材1111、棚部材保持部材1112、棚部材保持部材1113の各々を介して支持点の基準となる支柱部材111に固着される。
棚部材131aと棚部材131bとは、上述したように一体部材として形成してもよいが、棚部材131aと棚部材131bとの2つの部材を用いるようにしてもよいので、図1においては、二つの異なる符号を付している。また、支柱部材111を支持点の基準となるように、片持梁方式で棚部材131aと棚部材131bとを保持できればよい。よって、図2を参照して後述するように支柱部材111が直接に棚部材131aと棚部材131bとを保持してもよく、図1に記載のように、支柱部材111を支持点の基準となるように、棚部材保持部材1111を介して棚部材131aと棚部材131bとを保持してもよい。棚部材132aと棚部材132b、棚部材133aと棚部材133bについても同様に二つの異なる符号を付している。
植物載置棚の一実施形態である溝形状栽培部材141a、溝形状栽培部材141b、溝形状栽培部材141cは、X軸方向に順に棚部材131aの上に固着して配置される。溝形状栽培部材141f、溝形状栽培部材141g、溝形状栽培部材141hは、X軸方向に順に棚部材131bの上に固着して配置される。同様に、溝形状栽培部材142a、溝形状栽培部材142b、溝形状栽培部材142cは、X軸方向に順に棚部材132aの上に固着して配置される。溝形状栽培部材142f、溝形状栽培部材142g、溝形状栽培部材142hは、X軸方向に順に棚部材132bの上に固着して配置される。溝形状栽培部材143a、溝形状栽培部材143b、溝形状栽培部材143cは、X軸方向に順に棚部材133aの上に固着して配置される。溝形状栽培部材143f、溝形状栽培部材143g、溝形状栽培部材143hは、X軸方向に順に棚部材133bの上に固着して配置される。
これらの溝形状栽培部材は、すべて同一形状をしており、凹形状の溝を有している。溝の内部は植物栽培用の養液が保持される部分であるので、凹形状をしているものである。図示はしないがU形状、上側に開口を有する半円形状、V形状であっても同様の作用をするので別の実施例として用いることができる。
図2は、植物栽培装置の主要部材である基本筐体部を構成する、別の支柱部材、棚部材、植物載置棚の斜視図の一部を示す模式図である。図2を参照して各構成部について以下に説明をする。
支柱部材211は、ボルト12で床に固着されている。支柱部材211は、図2の隅に記載の座標軸のZ軸方向(垂直方向)に延伸する。棚部材231aと棚部材231bとは一体の部材、または2つの部材である。棚部材231aと棚部材231bとは、折板(鋼材を折り曲げた板材)が図示されているが、中空の丸状または方形状の部材であって、Y軸方向の所定間隔毎に植物を育成するための孔部を配するものであってもよい。棚部材231aと棚部材231bとは、片持梁方式で支柱部材211に保持されている。片持梁方式で保持の支点となる支柱部材211のX軸方向の中心点から左側(図2を参照)が棚部材231aであり、右側が棚部材231bである。
同様に、棚部材231aと棚部材231bの上の段に棚部材232aと棚部材232bが配置される。棚部材232aと棚部材232bの上の段に棚部材233aと棚部材233bが配置される。すなわち、棚部材231aと棚部材231b、棚部材232aと棚部材232b、棚部材233aと棚部材233b、の順に下方から上方に配置され、Z軸方向と直交するX軸方向に延伸するように支持点の基準となる支柱部材111に固着される。
棚部材231aと棚部材231bとは、上述したように一体部材として形成してもよいが、棚部材231aと棚部材231bとの2つの部材を用いるようにしてもよいので、図1においては、二つの異なる符号を付している。棚部材132aと棚部材132b、棚部材133aと棚部材133bについても同様に二つの異なる符号を付している。
植物載置棚の一実施形態である溝形状栽培部材141a〜溝形状栽培部材141h、溝形状栽培部材142a〜溝形状栽培部材142h、溝形状栽培部材143a〜溝形状栽培部材143hは、図1に示すものと同一形状である。
図3は、植物栽培装置の基本筐体部を溝形状栽培部材(植物載置棚)の上方から見る図である。図3を参照して各構成部について以下に説明をする。
図3は、一番下の段の棚部材に配される溝形状栽培部材を上方から見る図であり、(下から)2段目、(下から)3段目等の各段についても同様の図で表される。溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141hは相互に平行に配置される。溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141hの各々は、複数個の棚部材131a、棚部材131bによって下から支えられ重力によって撓むことなく水平面上にY軸方向に延伸するように配置される。
図3の上側の2列は図1に示す基本筐体部であり、図3の下側の2列は図2に示す基本筐体部である。いずれの基本筐体部を用いるかは、また、どのように組み合わせるかは適宜に極め得るものである。
図1に示す基本筐体部を用いる場合には、図3に示すように、支柱部材111ないし支柱部材11Nの数は図2に示すものに比べて少なく、支柱部材111ないし支柱部材11Nが、棚部材保持部材1111を保持し、棚部材保持部材1111がすべての棚部材131aと棚部材131bを下側から支えている。
図2に示す基本筐体部を用いる場合には、図3に示すように、支柱部材211ないし支柱部材21Kの数は図1に示すものに比べて多く、支柱部材211ないし支柱部材21Kが、各々の棚部材131aと棚部材131bを保持している。
図3に示すようにして、図1に示す基本筐体部を用いる場合、図2に示す基本筐体部を用いる場合のいずれも、植物載置棚の一実施形態である溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141hはY軸方向に延伸するように配置される。2段目等の溝形状栽培部材142aないし溝形状栽培部材142hについても同様である。
支柱部材のY軸方向の数N、数K(図3では111〜11N、211〜21Kで表す)は、植物栽培工場の規模に応じて任意の数に設定できる。また、棚部材のY軸方向の間隔L1は、棚部材および支柱部材の強度、溝形状栽培部材の重量(保持される植物栽培用の養液の重量を含む)、育成する植物の重量、および植物載置器保持部材の重量に応じて適宜に極め得るものである。支柱部材および棚部材のY軸方向の間隔L1は、棚部材に積載される物の重量が重い程、小さくする必要がある。あるいは、棚部材に積載される物の重量が重い程、支柱部材、棚部材保持部材、および棚部材の耐重量特性を強化する必要がある。
例えば、一つの実施例では、図3における、L1、Nの値を以下の様に選んでいる。間隔L1≒2.778m(メータ)、N=10(個)、(N-1)×L1≒2.778×9≒25mとしている。
棚部材の上のX軸方向に配される溝形状栽培部材の数は、棚部材および支柱部材の強度、溝形状栽培部材の重量(保持される植物栽培用の養液の重量を含む)、育成する植物の重量、および植物載置器保持部材の重量に応じて適宜に選択できる。
図4は、基本筐体部10、または、基本筐体部20を垂直方向(Z軸方向)に切断して、X軸Z軸面を通路方向(Y軸方向)から見る断面図である。すなわち、基本筐体部10、または、基本筐体部20は、いずれも棚部材を片持梁方式で保持し、あたかも、魚の骨のごとき構造(フィッシュボーン構造)をしている。片持梁方式の効果については後述する。
なお、支柱部材は、支柱部材111で代表している。以下では基本筐体部10について説明するが、基本筐体部20については以下の読み替えをおこなうことができる。支柱部材111を支柱部材211に、支柱部材11Nを支柱部材21Kに、N番目をK番目に、棚部材131aを棚部材231aに、棚部材131bを棚部材231bに、棚部材132aを棚部材232aに、棚部材132bを棚部材232bに、棚部材133aを棚部材233aに、棚部材133bを棚部材233bに、棚部材134aを棚部材234aに、棚部材134bを棚部材234bに、棚部材135aを棚部材235aに、棚部材135bを棚部材235bに、棚部材136aを棚部材236aに、棚部材136bを棚部材236bに、各々読み替えることができる。以上の読み替えは、図5においても同様にできる。なお、図5(b)において、基本筐体部20では棚部材保持部材1111は存在しない。その他の各図においてもこのような、読み替えができる。
図4は、基本筐体部10、または、基本筐体部20と光照射部との配置の関係が分かるように、光照射部(S1a〜S1h)ないし光照射部(S6a〜S6h)が表されている。
棚部材131aは、支柱部材111の最下段(1段目)に固着されて、支柱部材111を基準としX軸方向(負方向)に延伸するように配置される。棚部材131bは、支柱部材111の最下段(1段目)に固着されて、支柱部材111を基準として棚部材131aとは同軸で逆方向(正方向)に延伸するように配置される。棚部材131aと棚部材131bは、一部材として形成されていてもよい。支柱部材111を中心として見れば、棚部材131aと棚部材131bとは延伸する方向が逆方向である。
棚部材132aは、支柱部材111の2段目に固着されてX軸方向(負方向)に延伸するように配置される。棚部材132bは、支柱部材111に固着されて棚部材132aと同軸で逆方向(正方向)に延伸するように配置される。棚部材133aは、支柱部材111の3段目に固着されてX軸方向に延伸するように配置される。同様にして、Y軸方向のN番目の支柱部材11Nまでの2段目の棚部材にはすべて棚部材132a、棚部材132bの符号を付す。
以下、同様に、棚部材133bは、支柱部材111に固着されて棚部材133aと同軸で逆方向に延伸するように配置される。棚部材134aは、支柱部材111の4段目に固着されてX軸方向に延伸するように配置される。棚部材134bは、支柱部材111に固着されて棚部材134aと同軸で逆方向に延伸するように配置される。棚部材135aは、支柱部材111の5段目に固着されてX軸方向に延伸するように配置される。棚部材135bは、支柱部材111に固着されて棚部材135aと同軸で逆方向に延伸するように配置される。棚部材136aは、支柱部材111の6段目に固着されてX軸方向に延伸するように配置される。棚部材136bは、支柱部材111に固着されて棚部材136aと同軸で逆方向に延伸するように配置される。
以下同様に、Y軸方向の1番目の支柱部材111からN番目の支柱部材11Nまでの3段目の棚部材にはすべて棚部材133a、棚部材133bの符号を付す。Y軸方向の1番目の支柱部材111からN番目の支柱部材11Nまでの4段目の棚部材にはすべて棚部材134a、棚部材134bの符号を付す。Y軸方向の1番目の支柱部材111からN番目の支柱部材11Nまでの5段目の棚部材にはすべて棚部材135a、棚部材135bの符号を付す。Y軸方向の1番目の支柱部材111からN番目の支柱部材11Nまでの6段目の棚部材にはすべて棚部材136a、棚部材136bの符号を付す。
図4においては、Y軸方向の1番目の支柱部材111からN番目の支柱部材11Nまでの7段目の棚部材の配置位置に対応する部分には、光照射部保持部材17a、光照射部保持部材17bが配されている。図4から見てとれるように、光照射部保持部材17a、光照射部保持部材17bは、棚部材としては機能せず、単に、光照射部S6a〜光照射部S6hを保持する機能を有しているに過ぎない。よって、光照射部保持部材17a、光照射部保持部材17bには、1段目から6段目の棚部材のような強度は要求されない。
図4に示す棚部材の間隔L3の数Jは6個であるが、間隔L3と個数Jは適宜に選択可能である。
図4では、各々の棚部材の間隔L3は均一としている。棚部材131aと棚部材131b、ないし、棚部材136aと棚部材136bの各々の上部には、溝形状栽培部材(141a〜141h)の各々が配される。棚部材132aと棚部材132b、ないし、棚部材136aと棚部材136bの各々の下部には、光照射部(S1a〜S1h)の各々が配される。
光照射部(S1a〜S1h)の各々は、溝形状栽培部材(141a〜141h)の各々の溝の開口部と対面する。光照射部(S2a〜S2h)の各々は、溝形状栽培部材(142a〜142h)の各々の溝の開口部と対面する。光照射部(S3a〜S3h)の各々は、溝形状栽培部材(143a〜143h)の各々の溝の開口部と対面する。光照射部(S4a〜S4h)の各々は、溝形状栽培部材(144a〜144h)の各々の溝の開口部と対面する。光照射部(S5a〜S5h)の各々は、溝形状栽培部材(145a〜145h)の各々の溝の開口部と対面する。光照射部(S6a〜S6h)の各々は、溝形状栽培部材(146a〜146h)の各々の溝の開口部と対面する。
光照射部(S1a〜S1h)の構成については後述する。光照射部としては、蛍光灯、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Organic Electro-Luminescence)等の種々の光源を用いることができる。
図5は、植物栽培装置(符号1で示す)の、溝形状栽培部材(植物載置棚)、光照射部、溝形状栽培部材の上に配置される植物載置器保持部材、植物載置器の各々をY軸方向から見る断面図(a)と、植物載置器保持部材の上方から見る図(b)とを示す図である。
図5(a)は、図4に対応する図であるので、図4において説明した部分については符号を付さず、それらの部分の説明も省略する。
図5(a)に示すように、植物載置器保持部材151aは、図5には符号を付さない溝形状栽培部材(141a〜141c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材151bは、図5には符号を付さない溝形状栽培部材(141f〜141h:図4を参照)の開口部の上に配される。
同様に、植物載置器保持部材152aは、溝形状栽培部材(142a〜142c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材152bは、溝形状栽培部材(142f〜142h:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材153aは、溝形状栽培部材(143a〜143c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材153bは、溝形状栽培部材(143f〜143h:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材154aは、溝形状栽培部材(144a〜144c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材154bは、溝形状栽培部材(144f〜144h:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材155aは、溝形状栽培部材(145a〜145c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材155bは、溝形状栽培部材(145f〜145h:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材156aは、溝形状栽培部材(146a〜146c:図4を参照)の開口部の上に配される。植物載置器保持部材156bは、溝形状栽培部材(146f〜146h:図4を参照)の開口部の上に配される。
植物載置器保持部材151aないし植物載置器保持部材156aの各々、および、植物載置器保持部材151bないし植物載置器保持部材156bの各々は孔部を有している。
符号16を付した部材は植物載置器である。植物載置器16は、例えば、スポンジで形成される。植物載置器保持部材151aないし植物載置器保持部材156aの各々の孔部、および、植物載置器保持部材151bないし植物載置器保持部材156bの各々の孔部に植物載置器16は着脱可能に挿入される。
植物載置器保持部材に装着された植物載置器16の各々の上方部分は、光照射部(S1a〜S1h)ないし光照射部(S6a〜S6h)の各々と対面する。植物載置器16の各々の下方部分は溝形状栽培部材(141a〜141h:図4を参照)ないし溝形状栽培部材(146a〜146h:図4を参照)の溝の内部に配される。
図5(b)は、植物載置器保持部材151a、植物載置器保持部材151bを上面から見る図である。図5(b)に示す○は、図5(a)において符号16を付した植物載置器である。植物載置器保持部材151aないし156a、および、植物載置器保持部材151bないし156bを上面から見る図も図5(b)に示すと同様の図となる。
図6は、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141c、植物載置器保持部材151a、植物載置器16の配置関係を示す図である。
図6に示すように、植物載置器保持部材151aは、複数個の、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの開口部の上に配されて水平面を形成する。植物載置器保持部材151aは、植物載置器保持部材151aの開口部の内部に植物載置器16を着脱可能とするための孔部を有する。図6には、植物載置器保持部材151aのY軸方向の一部、複数個の溝形状栽培部材のY軸方向の一部のみが表されている。植物載置器16は、植物載置器保持部材151aの孔部に着脱可能に装着される。植物載置器16に種子または苗を保持して育成することができる。
複数個の、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの溝の内部は、養液を保持する養液保持部として機能し、養液が流れる養液流路としても機能する。よって、複数個の、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの各々は、Y軸方向の一方の端部から他方の端部まで切れ目ない一体構造とされることによって養液の供給が簡単にできる。
一方、植物載置器保持部材151aについては、Y軸方向の一方の端部から他方の端部まで切れ目なく連続させると取扱いが困難である。例えば、一名の作業員によっては植物載置器保持部材の掃除、植物載置器の取り換えが困難を生じることがある。例えば、Y軸方向に長い植物載置器保持部材151aは重い。一方、植物載置器保持部材151aのY軸方向の単位長さが両手を広げた長さより短いものであれば、一名の作業員だけで持ち上げられる。このような単位長さの植物載置器保持部材151aを溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの上のY軸方向に複数個並べることにより単位長さごとに管理できるという利点もある(図7を参照)。
図7は、図5に示す植物栽培装置の変形例を示す図である。
図7に示す植物栽培装置3は、一名の作業員だけで持ち上げることができ、単位長さごとに管理できるという利点がある。その他に、ファーストイン・ファーストアウト法を実現する一つの実施例である。
図7に示す実施例は図5に示す実施例の以下の問題点を解決する。図5においては、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの3列の部材を有し、植物載置器保持部材151aは、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの開口部の上に配されていた。しかしながら、Y軸方向に長い(例えば、25m)植物載置器保持部材151aをY軸方向の一端から順次挿入して定植をし、Y軸方向の他端から植物載置器保持部材151aを順次取出すのは、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの開口部と植物載置器保持部材151aとの摩擦により、大きな力で押し込み、大きな力で引っ張らなくては簡単に植物載置器保持部材151aを移動させることができなかった。
図7に示す実施例では、植物載置器保持部材(浮遊植物載置器保持部材)251aは水、養液よりも比重が小さい浮力材で形成され、さらに、溝形状栽培部材241aの内部に配されている。溝形状栽培部材241aは、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cの3列の部材を1個にした形状を有している。よって、溝形状栽培部材241aの内部に配された、養液中に浮遊する植物載置器保持部材251aは水、養液から浮力を受けて浮いているので小さな力でY軸方向に移動が可能となる。溝形状栽培部材242a、溝形状栽培部材243a、溝形状栽培部材244a、溝形状栽培部材245a、溝形状栽培部材245a、溝形状栽培部材241b、溝形状栽培部材242b、溝形状栽培部材243b、溝形状栽培部材244b、溝形状栽培部材245b、溝形状栽培部材246bについても同様である。
植物載置器保持部材251aはY軸方向に短く切断され、その各々は連結金具(例えば鎹(かすがい))28で相互に連結されている。この鎹28は人力により簡単に植物載置器保持部材251aの孔部261に着脱可能とされている。ファーストイン・ファーストアウト法を実現する場合について説明をする。まず、ファーストインについては、植物載置器保持部材251aをY軸方向の一端(Y軸の原点付近)から順次挿入して定植をし、鎹28で次の植物載置器保持部材251a連結し同様の作業を繰り返せば、Y軸方向の他端まで定植が完了する。次に、ファーストアウトについては、Y軸方向の他端(Y軸の25m付近)の載置器保持部材251aから植物を収穫し、鎹28を外して、次の載置器保持部材251aをY軸方向の他端に引き寄せて植物を収穫する動作を繰り返せばよい。
(第1の実施形態の植物栽培装置の作用・効果)
第1の実施形態の植物栽培装置は、基本筐体部と植物載置器保持部材と光照射部と、を備えている。基本筐体部は、垂直方向(上下方向)に延伸する支柱部材を具備するので支柱部材の延伸する方向と直交する方向(横方向)に延伸する棚部材を支えることができる。支柱部材は複数段の棚部材を支えることができる。
複数段の中の同一段の棚部材は、この棚部材の上に支柱部材の延伸する方向および棚部材の延伸する方向の両方に直交する方向に相互に平行して延伸する複数個の溝形状栽培部材を水平に支えることができる。そして、植物載置器保持部材は、複数個の溝形状栽培部材の開口部の上に配されて水平面を形成する。
ここで、複数段の中の同一段の溝形状栽培部材が水平に支えられることによって、溝形状栽培部材の底面からの水位は等しくなり、溝の深さが浅くとも、Y軸方向に長い溝形状栽培部材の開口部から、水、または養液が溢れることはない。溝が浅い溝形状栽培部材の採用によって、床から天井までの高さが限られた植物工場においても、各段の間隔L3を狭くして段数を多くできる。すなわち、単位床面積当たりでは、より多くの植物の収穫が可能となる。
また、各段の間隔L3を狭くできることに加えて、溝形状栽培部材、そのものが流路を兼ねて水、または養液の循環を図ることができるので、装置の小型化が可能となる。そして、従来にはない、装置の小型化の結果として、コンパクトな空間で植物栽培ができる結果、作業員一人が担当する領域が従来よりも狭くても、より多くの植物収穫量が得られる、すなわち、省力化が図られ生産性が向上するので設備投資費用(土地面積、建屋の大きさも含む)が少なくなり、人件費も少なくなり、生産する植物の価格が安くできるようになり、市場における競争力が強化される。
植物載置器保持部材は溝形状栽培部材の溝の内部に植物載置器を着脱可能とするための孔部を有する広い面であり、上方から照射される光を植物がお互いに遮る要素がないので、密着させて植物育成することが可能となり、この点からも植物収穫量の増大を図ることができる。
基本筐体部は、垂直方向(上下方向)に延伸する支柱部材を具備するので支柱部材の延伸する方向と直交する方向(横方向)に延伸する棚部材を支えることができるので、垂直方向に適宜な複数段の棚部材を配置することができ、植物工場の規模の拡張・縮小が柔軟にできる。
植物の根は重力方向に伸び、植物の葉は光の方向に伸びる性質がある。よって、光照射部は、植物載置器保持部材に光を照射するように配置されている。植物載置器はスポンジ等の吸水性材料で形成されるので、植物載置器の上方から供給される肥料を溶かした養液を植物載置器の内部に保持して植物の育成に寄与する。また、溝形状栽培部材に肥料を溶かした養液を流すことによっても、スポンジ等の吸水性材料で形成される植物載置器は毛管現象によって養液を吸い上げて植物に育成に必要な肥料を供給して植物の育成に寄与する。
従来は両持梁方式を採用していたが、基本筐体部10、基本筐体部20の支柱部材は、直接に、または棚部材保持部材を介して、片持梁方式で棚部材を支えるという、従来にない特殊な構造を有している、この方式を採用することによって、以下の特別顕著な効果が生じる。
従来は、図20、図21に従来例として示すように通路側に垂直に伸びる支柱を有するのが基本筐体部の構成であった。この結果、図21に示すように成長した植物の葉が通路側に垂直に伸びる支柱に接触して成長が妨げられた。
また、従来の基本筐体部においては、自動化の目的で収穫時に植物載置器保持部材を通路方向(Y軸方向)に移動した場合には、通路側に配置されたすべての植物の葉が通路側の垂直に伸びる支柱に衝突してしまい、商品価値がなくなってしまっていた。すなわち、自動化する場合には、図20に示すような通路側から定植、収穫する方式を採用せざるを得ず、自動定植・収穫装置は3次元に移動するために複雑で高価なものとなる一方、棚の奥行以上の広い通路が必要となった。すなわち、通路確保のために単位面積当たりの収量が多くできなかった。そこで、通路確保を狭くして図21に示すような人手による定植、収穫をする方法は、作業の危険性を伴った。
また、従来の通路沿って垂直に伸びる支柱を有る両持梁方式の基本筐体構造では、自動化のために植物載置器保持部材を通路方向(Y軸方向)に移動する方式を採用する場合には、通路側に垂直に伸びる支柱から十分に距離を離して定植をしなければならず、通路の幅が狭くできたとしても、決局、単位面積当たりの収量が多くできなかった。また、両持梁方式の基本筐体構造では、自動化のために植物載置器保持部材を横方向(X軸方向)に移動する方式を採用する場合には、通路の幅を広くして3次元に移動するロボット方式を採用することになり同様に単位面積当たりの収量が多くできなかった。
片持梁方式で棚部材を支える本実施形態によれば、上述した従来の通路側に垂直に伸びる支柱を有する両持梁方式の基本筐体部の問題点をすべて解決できる。
図4、図5、図6、図7を参照すれば、片持梁方式によれば、通路側まで植物の葉が成長しても、葉に接触する部材が存在しないことは明らかである。さらに、収穫時に植物載置器保持部材を通路方向(Y軸方向)に移動した場合においても葉に衝突する部材は何も存在しない。よって、植物載置器保持部材151aをY軸方向の一端から順次挿入して定植をし、Y軸方向の他端から植物載置器保持部材151aを順次取出して収穫するファーストイン・ファーストアウト法が採用でき効率的な定植、収穫ができることは明らかである。
言うまでもなく、上述した、ファーストイン・ファーストアウト法を実現可能としたのは、棚部材を支柱部材に片持梁方式で保持しているからに他ならない。すなわち、片持梁方式を採用することによって、通路側の支柱を不要としたので、植物の葉が衝突する部材がなく、良好な品質の植物が収穫できる。また、通路の幅もメンテナンスで人が立入る最少の幅があれば充分であり。植物栽培の床面積を有効に活用でき、単位面積当たりの収量を増やすこともできる。さらに、図21に示すような植物収穫時における危険な作業が必要なく、作業はY軸方向の端部の広い空間でおこなうことができるので、定植、収穫時における作業の危険性は軽減される。
「第2の実施形態」
(第2の実施形態の植物栽培装置の構成)
発明を実施するための第2の実施形態の植物栽培装置は、人力を省いた自動化に関するものである。第2の実施形態の植物栽培装置は、第1の実施形態の基本筐体部を有し、第1の実施形態の特徴に加えて以下の特徴を有するものである。すなわち、植物載置器保持部材は、溝形状栽培部材の延伸する方向に伸び、溝形状栽培部材および棚部材を囲む無端ベルトで形成され、駆動器によって溝形状栽培部材の延伸する方向に移動するベルトコンベアであり、上から順に、光照射部、移動するベルトコンベアの上面、溝形状栽培部材、棚部材、移動するベルトコンベアの下面の順番に配置されるものである。以下に図を参照して第2の実施形態について説明をする。
なお、通常のベルトコンベアは、通路に沿って人が並んで分業作業をする目的で用いられるが、本実施形態における移動する植物載置器保持部材として機能するベルトコンベアの目的は、コンベアの進行方向(Y軸方向)の両端に作業場所を集中するとともに、自動化を狭い範囲でおこない、3次元ロボット等を用いる高度、複雑、高価な装置を採用せず安価な自動化装置を目指すものである。
図8は、植物載置器保持部材として駆動器で移動されるベルトコンベアを用いる場合の、光照射部、溝形状栽培部材、溝形状栽培部材、ベルトコンベア、植物載置器の各々を横方向(Y軸方向)から見る断面図(a)と、一の棚の上方から見る図(b)とを示す図である。
図8(a)は、第1の実施形態における図5(a)に対応するものである。図8(a)においては、図5(a)と同一の構成部についての説明は省略し、異なる部分に符号を付して説明をする。
図8(a)に示すように、植物載置器保持部材は、溝形状栽培部材の延伸する方向に伸び、溝形状栽培部材および棚部材を囲む無端ベルト(151auと151ad、152auと152ad、153auと153ad、154auと154ad、155auと155ad、156auと156ad、151buと151bd、152buと152bd、153buと153bd、154buと154bd、155buと155bd、156buと156bd)で形成されている。ここで、無端ベルトの形態は、両端が接着されているリング状のベルトである。
この無端ベルトは、駆動器によって前記溝形状栽培部材の延伸する方向に移動して、その(無端ベルトの)上に配される物体を移動させる機能を有している。このように移動機能を有する無端ベルトはベルトコンベアと称される。第2実施形態では、植物載置器保持部材の一の実施形態としてベルトコンベアを用いている。ベルトコンベアは植物載置器を保持する機能を有するとともに、その上に配される物体を移動させる機能も有する部材である。ベルトコンベアは、植物載置器保持部材の一つの実施形態である。
符号151auは移動するベルトコンベア151a(図8の最下段紙面左側のベルトコンベア)の上面を示し、符号151adは移動するベルトコンベア151aの下面を示すものである。ベルトコンベア151aの移動に伴い、ベルトコンベア151aのすべての部分が上面にも下面にもなる。図8中の他のベルトコンベア152a、ベルトコンベア153a、ベルトコンベア154a、ベルトコンベア155a、ベルトコンベア156a、ベルトコンベア151b、ベルトコンベア152b、ベルトコンベア153b、ベルトコンベア154b、ベルトコンベア155b、ベルトコンベア156bについても同様の符号を用いる。
例えば、図8に示すように、溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141cを該当する溝形状栽培部材であるとして、第2実施形態について説明をする。
第2実施形態では、植物載置器保持部材は、溝形状栽培部材(溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141c)の延伸する方向(Y軸方向)に伸び、溝形状栽培部材(溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141c)および棚部材(棚部材131a)を囲む無端ベルトで形成され、駆動器(回転モータ211aとプーリ221aとプーリ保持部材222a)によって溝形状栽培部材(溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141c)の延伸する方向(Y軸方向)に移動するベルトコンベア(ベルトコンベア151a)である。
図8に示すように、植物栽培装置においては、上から順に、光照射部(光照射部S1aないし光照射部S1c)、移動するベルトコンベアの上面(ベルトコンベアの上面151au)、溝形状栽培部材(溝形状栽培部材141aないし溝形状栽培部材141c)、棚部材(棚部材131a)、移動するベルトコンベアの下面(ベルトコンベアの下面151ac)の順番に配置される。
図9は、植物栽培装置の駆動器を構成する、回転モータ、プーリ、プーリ保持部材、の斜視図(a)と、プーリ、プーリ保持部材、棚部材、溝形状栽培部材の相互の配置をプーリの回転軸方向から見る図(b)、図(c)、図(d)と、を示す図である。
回転モータ211aは、支柱部材111に固着される。回転モータ211aはベルトコンベア151aを駆動する回転モータである。プーリ221aの回転軸の一端は回転モータ211aの回転軸に連結される。プーリ221aの回転軸の他端は、棚部材131aに固着されるプーリ保持部材222a(図示せず)によって保持される。回転モータ211aが回転するとプーリ221aが回転してベルトコンベア151aを移動させる。回転モータ211aの回転方向を正逆に切り替えるとベルトコンベア151aの移動方向が切り替わる。回転モータ211aとプーリ221aとプーリ保持部材222aとは、ベルトコンベア151aを移動させる駆動器を構成する。
回転モータ211bは、支柱部材111に固着される。回転モータ211bはベルトコンベア151bを駆動する回転モータである。プーリ221bの回転軸の一端は回転モータ211bの回転軸に連結される。プーリ221bの回転軸の他端は、棚部材131bに固着されるプーリ保持部材222bによって保持される。回転モータ211bが回転するとプーリ221bが回転してベルトコンベア151bを移動させる。回転モータ211bの回転方向を正逆に切り替えるとベルトコンベア151bの移動方向が切り替わる。回転モータ211bとプーリ221bとプーリ保持部材222bとは、ベルトコンベア151bを移動させる駆動器を構成する。
図9(b)、図9(c)、図9(d)の各々は、ベルトコンベア151bの駆動部の異なる形態を示す図であり、X軸方向からベルトコンベア151bの断面を見る図である。
図9(b)は、基本形を示す図である。ベルトコンベア151bは、二つのプーリ221bによって溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hと棚部材131bとを囲むように懸架されている。一方のプーリ221bは、回転モータ211bによって回転力を発生してベルトコンベア151bに移動力を与える。他方のプーリ221bは、その回転軸の両端がプーリ保持部材222bによって保持されベルトコンベア151bを懸架する。
図9(c)は、図9(b)の変形例であり、図9(c)に示すものよりもベルトコンベア151bと溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hとの間の摩擦力をコロ25の作用により小さくしてベルトコンベア151bの移動をより容易にするものである。コロの作用により回転モータ211bの小型化と省電力化を図ることができる。コロ25は、溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hの各々の溝の立上部の付近に配され、ベルトコンベア151bの移動に伴い回転する。
図9(d)は、図9(c)の変形例であり、養液の供給のための養液供給パイプ26と養液の排出のための養液排出パイプ27とを溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hの各々に配するものである。溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hの長手方向の両端は養液が漏らないように封止されている。養液供給パイプ26の各々と養液排出パイプ27の各々とは、溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hの各々の溝の底部に配されている。養液供給パイプ26と養液排出パイプ27とは、溝形状栽培部材ごとに独立経路を構成させて、溝形状栽培部材141fないし溝形状栽培部材141hの各々に異なる種類の養液を供給することができる。
図9(e)は、比較例としての第1の実施形態における植物載置器保持部材と溝形状栽培部材との関係を図9(a)ないし図9(d)と同方向から見る図である。図9(e)では、溝形状栽培部材の両方の端部は、ベルトコンベアを用いないことにより外部に露出している。一方の端部を封止して養液供給パイプ46から溝形状栽培部材に養液を供給することができる。溝形状栽培部材の他方の端部は開放端として養液排水路に養液が流れるようにできる。なお、開放端の部分に上方に向かい立上る立上壁を配すれば、溝形状栽培部材の内部の養液の水位を立上壁の高さに応じた水位に保つことができる。
図10は、別のベルトコンベアの例である。移動するベルトコンベアの上面251auは図8に示すと同じ構成である。しかしながら、移動するベルトコンベアの下面251adは、上面251auのX軸方向の端部にワイヤロープ29を半周分配するだけである。このようにすれば、植物を育成中の棚の1段下の棚を照射する照射部からの光はワイヤロープ29によって遮られることはない。よって、図8に示すように、棚部材、移動するベルトコンベアの下面、光照射部の順番に配置される複雑な構造が必要ではなくなる。
(第2の実施形態の植物栽培装置の作用・効果)
第2の実施形態の植物栽培装置は、第1の実施形態と同様に、基本筐体部と植物載置器保持部材と光照射部と、を備えている。基本筐体部は、垂直方向(上下方向)に延伸する支柱部材を具備するので支柱部材の延伸する方向と直交する方向(横方向)に延伸する棚部材を支えることができる。これによって、垂直方向に複数段の棚部材を配置することができる。また、棚部材は、この棚部材の上に支柱部材の延伸する方向および棚部材の延伸する方向の両方に直交する方向に相互に平行して延伸する複数個の溝形状栽培部材を支えることができる。そして、植物載置器保持部材は、複数個の溝形状栽培部材の開口部の上に配されて水平面を形成する。また、植物載置器保持部材は溝形状栽培部材の溝の内部に植物載置器を着脱可能とするための孔部を有するので広い水平面で植物育成が可能となり、単位床面積当たりの植物収穫量の増大を図ることができる。さらに、垂直方向に複数段の棚部材を配置することによって、棚部材の段数倍の単位床面積当たりの植物収穫量の増大を図ることができる。
第2の実施形態の植物栽培装置は、第1の実施形態にない特徴を備えるので以下の作用・効果を奏する。植物載置器保持部材は、駆動器によって溝形状栽培部材の延伸する方向に移動するベルトコンベアであるので、作業者は、移動することなく一箇所に留まったままで、植物載置器保持部材のすべての孔部に植物載置器を着脱できる。
すなわち、植物の育成準備の作業、定植の作業においては、植物載置器を既に装着した植物載置器保持部材の孔部が作業者から遠ざかり、植物載置器を未だ装着していない植物載置器保持部材の孔部が作業者に近づくようにベルトコンベアを順次移動させる。このようにして作業者は(例えば、Y軸方向の原点付近に留まり)移動することなく(例えば、作業者は椅子に着座したまま)、植物載置器保持部材のすべての孔部にこれから育成をする植物載置器を装着することができる。作業者は手元式または足踏み式のコントローラで駆動器を制御して、作業速度に合わせてベルトコンベアの移動速度、移動方向を自由に調整することができる。また、植物の収穫においては、作業者は(例えば、Y軸方向の25m付近に留まり)移動することなく作業ができる。このようにして、ファーストイン・ファーストアウトによる自動化ができる。なお、当然ながら、移動するベルトコンベアの上面の一部の孔部にだけ種または苗を有する植物載置器が装着された状態とすることもできることはいうまでもない。
植物育成中において、光照射部を動作(点灯、ONとも称する)させると、光照射部からの光が、停止中の移動するベルトコンベアの上面、すなわち、ベルトコンベアの上面の孔部に配された植物載置器において育成中の植物に照射されて育成が促進される。溝形状栽培部材の溝の内部に植物載置器を着脱可能とされているので、育成中には植物載置器の下部は、溝形状栽培部材の溝の内部に配されることになる。
上述するように第2の実施の形態の植物栽培装置によれば、植物載置器保持部材としてベルトコンベアを用いるので作業者の生産性を向上させて、少ない人員によって植物工場を運営できる。また、第1の実施形態におけると同様に上下方向に多段の溝形状栽培部材を配置することによって、床面積当たりの植物の収量を多くすることができる。
言うまでもなく、上述した、ファーストイン・ファーストアウト法を手動ではなく、移動する植物載置器保持部材を用い自動化によって実現可能としたのは、棚部材を支柱部材に片持梁方式で保持しているからに他ならない。すなわち、片持梁方式を採用することによって、通路側の支柱を不要としたので、高速で植物載置器保持部材が移動したとしても植物の葉が支柱部材に衝突することがなく、良好な品質の植物が収穫できるからである。その他の第2の実施形態の効果は、上述した第1の実施形態の効果と同様である。
「第3の実施形態」
(第3の実施形態の植物栽培装置の構成)
発明を実施するための第3の実施形態の植物栽培装置は、第1の実施形態、第2の実施形態に記載されるすべての実施形態の植物栽培装置、または、第1の実施形態、第2の実施形態の構成部を組み合わせた実施形態の植物栽培装置の中の、いずれかの植物栽培装置を複数個有する植物栽培装置である。
第3の実施形態の植物栽培装置は、第1の実施形態、または、第2の実施形態の植物栽培装置に加え、さらに、多目的搬送装置を備える。多目的搬送装置は、植物載置棚の延伸する方向(Y軸方向)に移動可能とされる可動支柱部材と、可動支柱部材に片持梁方式で保持されて横方向(X軸方向)に延伸する横棒と、を具備する。横棒は、上下方向に隣接する棚部材の自由端の間に挿入可能とされ、植物監視部材、植物育成用部材、または、保守・整備部材の少なくともいずれかを保持する。
植物監視部材は、例えば、一実施形態としてのカメラであり、主として植物の育成状態を監視するが、植物載置器保持部材の上面を監視するので、植物載置器、および、その周辺の機構部材に異常がないかも監視できる。
植物育成用部材は、植物の育成に直接に関わる部材であり、例えば、一実施形態としての養液供給部材、風供給部材(例えば、実施例としての、葉に養液を供給する部材、送風機)等である。
保守・整備部材は、植物以外の植物栽培装置の構成部を保守・整備する部材であり、例えば、洗浄用の水の供給のための部材、植物栽培装置の構成部を掃除するための掃除用具、例えば、ブラシ、雑巾等である。
また、この植物栽培装置は、植物監視部材、植物育成用部材または保守・整備部材が、植物載置器保持部材の上面または溝形状栽培部材から所定距離を保ちながら、溝形状栽培部材の延伸する方向に移動するように多目的搬送装置の制御をする搬送装置制御部を具備する。以下に図面を参照して第3の実施形態の説明をする。
図11は、複数個の植物栽培装置1、植物監視部材を配する多目的搬送装置、可動式反射膜装置を具備する植物栽培装置を示す図である。
図11に示す、2個の植物栽培装置1は、図5に示す第1の実施形態の植物栽培装置1と同じ構成のものであるので各構成部の説明は省略する。図11に示す可動式反射膜装置41は、必要に応じて、光照射部からの光が、多目的搬送装置が移動するための空間である作業空間に漏れることを防止して、この光を育成中の植物に向けて反射させるための反射膜(図11の破線)を出し入れ可能な装置である。多目的搬送装置の移動時には、反射膜は、可動式反射膜装置41の内部に収納され、多目的搬送装置の移動を妨げることはない。
図11に示す植物栽培装置は、一の(例えば、左側の)植物栽培装置1の棚部材の自由端である先端部と、一の植物栽培装置1に隣接して配置される他の(例えば、右側の)植物栽培装置1の棚部材の自由端である先端部と、の間に間隔L4の空間を有し、この空間が、溝形状栽培部材の延伸する方向(Y軸方向)に伸びるように、2つの植物栽培装置1を配置している。なお、図11では、棚部材は6段の構成となっているので、空間は、Z軸方向にも伸びている。間隔L4は、Y軸方向、Z軸方向にも伸びている。なお、植物栽培装置1に替えて、第1の実施形態または第2の実施形態に記載されたいずれの植物栽培装置も用いることが可能である。
この植物栽培装置は、この空間に配置され溝形状栽培部材の延伸する方向(Y軸方向)に移動可能な多目的搬送装置31を具備する。多目的搬送装置31は、植物載置器保持部材の上面を監視する植物監視部材33の一実施形態であるカメラ33を配している。なお、植物監視部材に替えて、後述する、溝形状栽培部材を保守・整備する保守・整備部材34の一実施形態である掃除具34を配することができる。また、植物育成用部材43の一実施形態である送風機43を配することもできる。また、植物監視部材、植物育成用部材、保守・整備部材の任意の組み合わせを配することもできる。カメラ33は、植物載置器保持部材の上面を監視するのであるから、植物載置器保持部材の孔部に配されている植物載置器16(図5、図6を参照)とその中で育成される植物も当然監視できる。
多目的搬送装置31が、溝形状栽培部材の延伸する方向(Y軸方向)に移動可能とする理由は、カメラ33の数を削減するためである。すなわち、植物載置器16はY軸方向に多数(溝形状栽培部材の長手方向に延伸する開口部の上の殆どの部分に規則正しく)配列される。よって、1台のカメラ33の視野を1個の植物載置器を撮像する範囲に制限する場合には、すべての植物載置器16の中の植物の育成状態を監視するためには、植物載置器保持部材の孔部に配されている植物載置器16の総数と同数のカメラ33が必要とされる。
なお、カメラ33の視野を広げれば、1個のカメラ33によって広い範囲を監視できるのでカメラ33の数は少なくできるものの解像度との関係でむやみに視野を広げることはできない。また、一画像中に複数個の植物栽培装置が写りこんでいる場合には、作業員が植物の栽培状態を目視監視するときに、どの植物載置器の植物を見ているかの判断をしなければならず煩雑である。一方、カメラ33の視野を1個の職別載置器で育成される植物の範囲に限定した上で、X軸方向に配置される植物載置器の数に対応する数のカメラ33をX軸方向に配置すれば、多目的搬送装置31のY軸方向の位置(植物載置器一列毎のアドレス)を知るだけで、カメラ33の画像と特定の1個の植物載置器で育成中の植物とを対応させることができる。すなわち、特定の1個の植物載置器で育成中の植物の状態を瞬時に画像として視認できることとなる。
後述する、人手ではなくコンピュータが植物の育成状態を判断する場合においても、1個のカメラ33によって1個の植物を写すようにすれば、1画面に写った複数の植物の画面から特定の植物を抜き出して認識するための複雑で困難なプロセスを省くことができることとなる。
このような観点から、第3の実施形態では、多目的搬送装置31が、溝形状栽培部材の延伸する方向(Y軸方向)に移動可能として、Y軸方向25mのすべての監視を可能としている。また、カメラ33は、図11に示すように、棚部材のZ軸方向の1段当たり、X軸方向に配置される溝形状栽培部材の数と同数の6個のカメラ33で、すべての植物載置器16の中の植物の育成状態を監視するようにしている。そして、棚の段数と等しい数である6段分のカメラ33を備えているので、6×6=36個のカメラ33を備えている。そして、多目的搬送装置31をY軸方向に移動させるだけで一瞬にして、全体の中から特定の1個の育成中の植物の画像を得ることができる。
第3の実施形態において、多目的搬送装置31が、溝形状栽培部材の延伸する方向(Y軸方向)に移動可能とできるのは、隣接する2つの植物栽培装置1の棚部材の端部をいずれをも自由端とできるように、上述したように「フィッシュボーン(魚の骨)」構造としているからである。また、植物栽培装置1の「フィッシュボーン」構造に合わせて、多目的搬送装置31も「フィッシュボーン」構造としている。
また、第3実施形態の植物栽培装置は、カメラ33が、光照射部と植物載置器保持部材の上面または溝形状栽培部材との間で、所定位置を保ちながら、溝形状栽培部材の延伸する方向に移動するように多目的搬送装置31のY軸方向の移動位置の制御をする搬送装置制御部(図19を参照)を具備する。搬送装置制御部の詳細は後述する。
図12は、植物載置器保持部材として板材を用いる、第1の実施形態の植物栽培装置1を第3の実施形態の植物栽培装置の一部として用いる図である。多目的搬送装置31には、保守・整備部材34の一実施形態である掃除具34が配されている。掃除具34を用いる場合には、予め、板材の植物載置器保持部材を取り除いておく。掃除具34を溝形状栽培部材の開口部から挿入して溝内側の底部に押圧しながら、多目的搬送装置31を溝形状栽培部材の延伸する方向に移動させることによって溝形状栽培部材の内面は清掃される。このような溝形状栽培部材の掃除は植物の収穫後におこなわれる。
掃除具34は、植物育成中には、溝形状栽培部材の植物育成を妨げない場所に置くか、溝形状栽培部材から除去されている。溝形状栽培部材の一の端部を開放端(図9の(e)を参照)とすることによって、掃除具34を開放端よりも除去することもできる。掃除具34を除去後に板材の植物載置器保持部材を溝形状栽培部材の上部に再び配し、溝形状栽培部材に配される植物載置器の内部で植物は育成される。
多目的搬送装置31に移動力を与える移動力発生装置および駆動方式については、図示しないが、クレーン等に用いられる、公知のワイヤー駆動方式、モータを多目的搬送装置31に積載する自走方式等を用いることができる。図示しないが、実施形態では、ワイヤー駆動方式で駆動されている。また、手動(人力)によって多目的搬送装置31を移動させるようにしてもよい。
図13は、図11に示す植物栽培装置をZ軸方向から見る図である。図13に示すように、X軸方向の両端に位置する多目的搬送装置311は、「フィッシュボーン」形状ではなく、片側の棚部部材(骨)が存在しない形状となっている。図13は、カメラ33を機能させながら多目的搬送装置31、多目的搬送装置311が移動中の状態を示す図である。移動中においては、多目的搬送装置31、多目的搬送装置311は、光照射部と植物載置器保持部材の上面との間に位置するので、光照射部からの光を多目的搬送装置31、多目的搬送装置311は遮る。しかしながら、多目的搬送装置31、多目的搬送装置311は移動中であるので、特定の位置における光の遮りは短時間であり植物育成に影響は与えない。
図14は、多目的搬送装置31、多目的搬送装置311が移動を停止の状態を示す図である。移動を停止の状態においては、多目的搬送装置31、多目的搬送装置311は、溝形状栽培部材のY軸方向の端部に位置するので、光照射部からの光を多目的搬送装置31、多目的搬送装置311が遮って植物育成に影響は与えることはない。なお、第1の実施形態の植物栽培装置1を用いる場合には、溝形状栽培部材の開放端から掃除具34を除去しながら多目的搬送装置31、多目的搬送装置311を撤去することができる。
図13、図14においては、X軸方向の両端に位置する多目的搬送装置311は、「フィッシュボーン」形状ではなく、片側の棚部部材(骨)が存在しない形状となっているが、図示はしないものの、X軸方向の両端に位置する植物栽培装置を「フィッシュボーン」形状ではなく、片側の棚部部材(骨)が存在しない形状とすれば、多目的搬送装置そのものが不要となり、多目的搬送装置311のような形状の多目的搬送装置は不要となる。
図15は、溝形状栽培部材の溝を掃除するための掃除具33、多目的搬送装置31を示す図である。掃除具34は、溝形状栽培部材の溝内側を掃除するための器具である。溝形状栽培部材の開口部の内側には、植物の育成中においては養液または水が循環しており、アオコ、肥料の滓、水垢等で汚染されることがある。掃除具34はこれらの汚染物質を取り除く掃除具である。掃除具34はブラシとなっており、上部から押圧力を加えるとブラシの先端は、溝形状栽培部材の溝内側の底部に接触して横方向(X軸方向)に広がり開口部の内側の広い範囲の掃除ができるようになされている。
図16は、掃除具34を搬送する多目的搬送装置31の横方向から見る図(a)と、掃除具34を上下方向に駆動する掃除具駆動部の上方向(図16(a)中の矢印A方向)から見る図(b)と、掃除具34を上方向(図16(a)中の矢印B方向)から見る図(c)である。
図16(a)に示すように、多目的搬送装置31は、縦方向移動部材37と、横方向移動部材38と、横方向移動部材駆動器である回転モータ35および歯車36とを具備する。縦方向移動部材37の側面には歯車36と噛み合う噛合溝が形成されている。図16(b)に示すように回転モータ35によって回転する歯車36は縦方向移動部材37の噛合溝と噛み合い、回転方向に応じて横方向移動部材38を上下方向(図16(a)中の横方向移動部材38に付された矢印方向)に移動させる。これにより、掃除具34の上下方向の位置を変化させることができる。掃除具34を上げて掃除が必要な場所の上に多目的搬送装置31を移動させて、その場所で掃除具34を下げて必要な場所のみを掃除することができる。
掃除具34に上部から押圧力を加えブラシの先端を溝形状栽培部材の溝内側の底部に接触させ掃除をするときの掃除具34の上下方向の位置と、植物育成中の掃除具34の上下方向の位置とを異ならせる。植物育成中に、単に植物育成の邪魔にならない場所に掃除具34を移動するのみならず、ブラシの先端が溝形状栽培部材の底部に押圧接触しないようにするのがブラシの劣化防止の観点から望ましいからである。
(第3の実施形態の植物栽培装置の作用・効果)
述したように、第3の実施形態の植物栽培装置は、多目的搬送装置31に植物監視部材33を装着することによって、作業員が工場内を常時、見回るのではなく、作業員は制御室(図19を参照)において植物監視部材33に接続される表示装置にディスプレイ表示される画像によって植物の育成状態を効率的に監視することができる。
また、第3の実施形態の植物栽培装置は、多目的搬送装置31に保守・整備部材34を装着することによって、作業員は制御室において複数段の複数個の棚に配される溝形状栽培部材を掃除具34によって掃除することができる。また、植物監視部材33と掃除具34とを同時に作動させ、作業員は、植物監視部材33に接続される表示装置の画像によって掃除具34による掃除の仕上がり具合を監視できる。
また、第3の実施形態の植物栽培装置は、多目的搬送装置31に植物育成用部材43を装着することによって、作業員は制御室において複数段の複数個の棚に配される溝形状栽培部材で育成する植物の成長の状態を制御することができる。
このような、植物監視部材33、保守・整備部材34、植物育成用部材43のいずれもが、片持梁方式によって実現される「フィッシュボーン」構造を有する多目的搬送装置31の横棒38に配されている。一方、植物を育成するための棚部材を有する植物栽培装置も同様に片持梁方式によって実現される「フィッシュボーン」構造を有するので、2つの「フィッシュボーン」構造が干渉することなく、Y軸方向の相互の位置を変更することが可能となり、両者が本来の機能を発揮する。従来技術によれば、植物を育成するための棚部材を有する植物栽培装置は両持梁方式によって実現されていたので、このような効果を生じさせることはできなかった。
「その他の実施形態」
(第2、第3の実施形態における駆動器の変形例)
第2の実施形態、第3の実施形態において回転モータ211a、回転モータ211bに替えて回転ハンドルを用いて人力でベルトコンベアを移動させることもできる。
(第1、第2、第3の実施形態における光照射部の変形例)
図17は、光照射部の種々の形態を示す図である。図17(a1)はY軸方向から見る光照射部、図17(a2)はZ軸方向の下から上を見る光照射部である。S6は、市場で販売されている蛍光灯である。図17(b1)はY軸方向から見る光照射部、図17(b2)はZ軸方向の下から上を見る光照射部である。S6は、市場で販売されている蛍光灯である。図17(c1)はY軸方向から見る光照射部、図17(c2)はZ軸方向の下から上を見る光照射部である。S6は、有機ELである。図17(d1)はY軸方向から見る光照射部、図17(d2)はZ軸方向の下から上を見る光照射部である。S6は、市場で販売されているLEDである。
(第3の実施形態における変形例)
図18は、第3の実施の形態における横方向移動部材38に配する部材の変形例である。図18では、カメラ33、掃除具34、風を植物に送風するための送風機43、横方向移動部材位置検出器44を板材に取付けて横方向移動部材38に配している。送風機43は風を植物に送風することによって自然環境に近い環境を作り出し植物の育成を促進する。送風機は棚部材131a等に取り付けるようにしてもよい。横方向移動部材位置検出器44は、植物載置器保持部材に対する横方向移動部材38のY軸方向の位置を検出するものである。横方向移動部材位置検出器44は、植物載置器保持部材のX軸方向の横一列の孔部毎に付与されたアドレスを検出する。養液噴射口45は、カメラ33の視野に入った植物に向けて下方に養液を噴射する。掃除具を動作させて掃除をする場合には、養液噴射口45から水を噴射して汚れを掃除具34で擦りながら洗い流すようにしてもよい。
X軸方向の横一列の孔部毎に付与されたアドレスは、例えば、植物載置器保持部材のX軸方向の端部にバーコードで表示され、横方向移動部材位置検出器44がこのバーコードを読み取るようにしてもよい。また、横方向移動部材位置検出器44に替えて、多目的搬送装置31に移動力を与える移動力発生装置に付加したエンコーダからアドレスを読み取る方式を採用してもよい。このエンコーダからの情報と植物載置器保持部材のY軸方向の位置とを予め関係づけておき、エンコーダからの情報に基づき横方向移動部材38の位置を検出することができる。
植物載置器16の中の植物が未だ育っていない育成開始時においては、植物の葉によって妨害されることなく、カメラ33によって植物載置器16の中を見ることができる。よって、植物載置器16の中にバーコードのタグを配置すれば、その植物栽培装置16に植えている植物の属性(種類、育成開始日時、産地等々)をカメラ33と制御用コンピュータで特定することができる。植物育成中は植物載置器16を移動させることがないので、植物の属性の情報は収穫時まで利用できる。
(その他の変形例)
多目的搬送装置31は、天井から吊る方式(ハンガーレール方式)であっても、床を移動する地上部方式(キャスタ方式、磁気方式)であってもよい。
(第3の実施形態の植物栽培装置の制御系の実施例)
図19は、植物栽培装置の制御系を示す図である。図19に一例として示す植物栽培装置は、第1植物栽培装置から第P植物栽培装置までのP個の植物栽培装置を植物育成室の内部に有し、制御用コンピュータを制御室に有している。そして、制御用コンピュータは外部のサーバ・コンピュータにインターネットで接続できるようになされている。制御用コンピュータは、以下の手順を実行させるためのプログラムを有している。バスライン通信の手順、光照射部制御の手順、監視器制御の手順、掃除機制御の手順、インターネット通信の手順、搬送装置制御の手順、コンベア制御の手順、送風機制御の手順、育成状態評価の手順、ディスプレイ表示の手順、養液供給の手順等である。そして、コンピュータはこれらの手順を実行することによって、バスライン通信部、光照射部制御部、監視器制御部、掃除機制御部、インターネット通信部、搬送装置制御部、コンベア制御部、送風機制御部、育成状態評価部、ディスプレイ表示部、養液供給部等として機能する。
図19においては、第1植物栽培装置ないし第P植物栽培装置のP個の植物栽培装置と、制御用コンピュータとはバスラインで接続され情報をやり取りしている。専用のバスラインに替えて、いわゆる、インターネット・オブ・シングズ(I.O.T)方式を採用して直接に、各構成部材と制御用コンピュータとを接続するものであってもよい。
P個の植物栽培装置の小さな四角い囲みの内容は、植物栽培装置における機能ないしは植物栽培装置と制御用コンピュータとの間でやり取りする情報である。制御用コンピュータの小さな四角い囲みの内容は、制御用コンピュータにおける処理の概要を示すものである。
図19に示す植物栽培装置の制御系においては、制御用コンピュータは、基本動作として以下の処理をおこなう。[1]光照射部を制御して光照射のON/OFFおよび光強度の調節。[2]横方向移動部材位置検出器44からの植物載置器保持部材位置情報に基づき植物載置器保持部材に対する横方向移動部材38のY軸方向の位置を検出する。[3]横方向移動部材38の位置検出結果に基づき、所望のY軸方向の位置へ多目的搬送装置31を移動させる。[4]1個の植物載置器が視野範囲となるように予め設定されているカメラ33によって植物の育成状態の画像を検出する。そして、画像をディスプレイ表示する。[5]カメラ33が適切に画像を捉えないときないはカメラ33の視野を調整する。
[6]カメラ33によって、上述したように育成開始時の植物の葉で遮られない状態において植物載置器16毎に付加される識別タグに記録されている植物載置器内容情報(どのような植物であるかの属性情報等)を読み出す。読み出した後にRAMに記憶する。[7]植物載置器保持部材としてベルトコンベアを用いる場合にはコンベアの位置が所定の位置となるように回転モータ211a、回転モータ211bを制御する(たとえば、図示しない棚部材のセンサで、ベルトコンベアのX軸方向の端部のバーコードを読み、回転モータ211a、回転モータ211bを制御する)。[8]送風機43を制御して植物に風を送る。
[9]制御用コンピュータは、育成状態評価をおこなう。例えば、作業者がディスプレイ表示された画像を見て、植物載置器16毎(植物毎でもある)の育成状態を判断してその結果に点数を付けて制御用コンピュータに入力する。育成状態が良好な程点数が高く、例えば、100点満点で90点以上であれば収穫時期であると決めておき、90点以上を得た植物載置器16の存在場所をマップにして作業者に知らせる。あるいは、育成途中において育成状況を知らせ、育ちが悪い植物(チップバーン等)、良い植物の配置場所をマップにして作業者に知らせる。[10]制御用コンピュータは、その画像データと得点とをインターネットを用いサーバ・コンピュータに送る。[11]養液噴射口45からの噴射を調整する電磁バルブを制御してカメラ33の視野内の植物に養液を噴射する。養液の噴射の時間、噴射量を制御する。養液噴射口45のノズルを複数個有することによって、養液の種類と混合比を制御することができる。[12]溝形状栽培部材毎に、養液供給パイプから溝形状栽培部材に流す、養液の種類、養液の混合比、養液の量を制御する。
[13]サーバ・コンピュータには複数階層のニューラルネットワークモデルが構成されており、作業者の付けた得点と画像との間の特徴抽出をディープ・ラーニングによって繰り返し学習して、ニューラルネットワークの結合係数の最適化を図り、最終的には、作業者の手を借りずに、サーバ・コンピュータ自らが収穫時期を判断し、作業者に知らせるようになる。
(第1の実施形態ないし第3の実施形態の植物栽培装置の共通する効果)
第1の実施形態ないし第3の実施形態の植物栽培装置は、いずれも片持梁方式(カンチレバー方式)を採用し棚部材の端点に支柱がないことを共通の特徴とする。従来の棚部材の両端に支柱がある両持梁方式と比べると以下の特別な効果を生じる。(1)従来の棚部材の奥行は600mmであり、支柱は手前と奥に2本ある(図21、図22を参照)。一方、本実施形態で採用する片持梁方式は支柱が1本しかなく安価である上に作業スペースが広くなる。かつ、作業者の作業の妨げとなる障害物である支柱が通路に面する側に存在しないので、安全に作業ができ、その上に奥の植物、高い場所にある植物まで見通すことができ植物の育成状況の把握が容易にできる。(2)長物部材、例えば、植物載置棚を、通路に面した部分から困難なく容易に設置できる。何故なら、通路に面する部分に支柱がないからである。(3)通路に面する側に支柱がないために第3の実施形態に示す多目的移動装置の横棒が容易にY軸方向に移動できる。(4)勾配(1/200程度)が付け易い。(5)片持梁方式では梁(棚部材、横材)が簡単に設置できる。例えば、支柱部材と梁(棚部材)との接合部はボルト締めではなく、支柱部材に配するサヤ管に棚部材、横材を挿入するサヤ管工法を採用することができる。同様に縦方向移動部材37と梁(横棒、横方向移動部材)との接合部についてもサヤ管工法を採用することができる。一方、棚部材の両端を支柱に固定する従来の両持梁方式ではこの方法は採用できない。(5)片持梁方式では折板を使用することにより、支柱間の間隔を、従来方式の2.4mから4mまでと長くすることができ、安価となる。
上述した第1の実施形態の各実施例、第2の実施形態の各実施例、第3の実施形態の各実施例、その他の各実施例に記載の構成部の全部または一部を組み合わせた実施例も実施可能であり、本願の実施形態に含まれる。なお、上述した各実施例に表される構成部の形状が異なっても同一作用を奏する構成部を用いる実施例も本願の実施形態に含まれる。本願発明はこれら実施形態のみならず同一の技術的思想の範囲を含むことはいうまでもない。