本発明の画像形成方法は、電子写真感光体に当接し該電子写真感光体を帯電するための帯電工程と、該電子写真感光体上にトナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程と、該電子写真感光体の表面を摺擦して清掃する転写残トナーを除去するためのクリーニング工程を具備する。
該トナーは、式(1)
で示される構造を有する樹脂を含有している。
該電子写真感光体は、表面層が少なくとも式(2)で示される基または式(3)で示される環状エーテル基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を含むことを特徴とする。
式(2)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示す。
式(3)は、炭素数3から5の環状エーテルを有する基を示し、該環状エーテルを有する基としては、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはテトラヒドロピランを有する基を示す。
<トナー>
本発明に係るトナーについてさらに詳細に説明する。
本発明に係るトナーが有するトナー粒子は、式(1)で示される構造であるイソソルビドユニットを構成成分として含有する樹脂C(以下「樹脂C」ともいう)を含有している。
本発明に係る樹脂Cは、アルコール成分としてイソソルビドを用いたポリエステル樹脂であることが好ましい。樹脂Cがポリエステル樹脂である場合、樹脂Cは、二塩基酸又はその無水物と、式(17)で示されるイソソルビド及び二価のアルコールとを、カルボキシル基が残存する組成比率で、窒素雰囲気中、180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法などにより調製することができる。また、必要に応じて三官能以上の多塩基酸若しくはその無水物及び一塩基酸、または三官能以上のアルコール若しくは一価のアルコールなどを用いることも可能である。
二価のアルコールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような脂肪族系のジオール類等が挙げられる。
三価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
一方、上記二塩基酸などの酸成分としては下記のものが挙げられる。
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸のような炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸の脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステル。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。
本発明において、樹脂Cは、式(1)で示される構造であるイソソルビドユニットを構成成分として0.10mol%以上含有することが、良好なクリーニング性を効果的に発現できる点から好ましい。また、トナーの帯電量の安定性の観点から、30.00mol%以下含有されることがより好ましい。さらには、0.50mol%以上20.0mol%以下で含有することがより好ましい。
樹脂Cの組成は、一般的な手法である樹脂の1H−NMR測定による水素原子(樹脂を構成している水素原子)のピーク面積比による換算法等によって確認することができる。
本発明において、樹脂Cの酸価は、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であることが、トナーの帯電量を良好に維持できる観点から好ましい。さらには、1.5mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、樹脂Cの酸価(mgKOH/g)は、重合時のモノマー組成比などによって制御可能である。
本発明において、樹脂Cと共に、従来公知のスチレンアクリル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはポリエステル樹脂を併用してもよい。樹脂C以外の樹脂を併用する場合、トナー中の数平均分子量(Mn)が1500以上の全樹脂の総質量に対して、1.0質量%以上35.0質量%以下であることが好ましい。樹脂Cの含有量は、1.0質量%以上である場合、良好なクリーニング性を効果的に得られる点から好ましい。樹脂Cの含有量が35.0質量%以下である場合、トナーの吸湿特性を抑制できる点から好ましい。
なお、本発明に係るトナーにおいて、樹脂Cの含有量は、上述のようにトナー中の数平均分子量(Mn)が1500以上の全樹脂に対する割合(質量%)で表す。すなわち、本発明における樹脂Cの含有量は、下記式で表される。
(式)樹脂Cの含有量(質量%)=100×{樹脂C(質量)/トナー中の数平均分子量(Mn)が1500以上の樹脂(質量)}
また、同様に、樹脂C以外の樹脂を併用する場合も、樹脂C以外の樹脂の含有量は、トナー中の数平均分子量(Mn)が1500以上の全樹脂に対する割合(質量%)で表す。
本発明において、樹脂Cは、スチレンアクリル樹脂と併用することがより好ましい。さらには、スチレンアクリル樹脂の、該トナー中の数平均分子量が1500以上の全樹脂に対する含有量を、50.0質量%以上99.0質量%以下とすることが、トナーの帯電性を良好なものとすることができることから特に好ましい。より好ましくは、60質量%以上80質量%以下である。
該構成によりトナーの帯電量を最適化でき、さらにはトナーの帯電量分布をシャープにできる。その結果、本発明のトナーを一成分現像方式などに用いた場合、画像濃度が良好であり、カブリの発生が抑制された画像を提供することが可能である。これは、低抵抗の樹脂Cと高抵抗のスチレンアクリル樹脂の両者を最適な量で存在させることで、トナーの抵抗値が最適化され、結果としてトナーの帯電量分布がシャープになるものと考えている。
本発明の樹脂Cと併用するに好ましいスチレンアクリル樹脂とは、スチレンモノマーとアクリル系モノマーの共重合体である。アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなアクリル酸エステル系モノマー、あるいはメタクリル酸エステル系モノマー;などが挙げられる。
また、スチレンモノマーとアクリル系モノマーと共に、スチレンモノマー以外の芳香族ビニルモノマーを併用してもよい。該芳香族ビニルモノマーとしては、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。
本発明において、トナーの機械的強度を高めると共に、スチレンアクリル樹脂の分子量を制御するために、架橋剤を用いてもよい。
該架橋剤としては、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
一方、多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートなどが挙げられる。
本発明において、上記スチレンアクリル樹脂のピーク分子量(Mp)は、5000以上30000以下であることが好ましく、8000以上27000以下であることがより好ましい。スチレンアクリル樹脂のピーク分子量(Mp)が5000未満の場合、スチレンアクリル樹脂と共存している樹脂Cの分子鎖の分子運動が大きくなり、高湿環境下での吸湿性が高くなる傾向にあり、トナーの帯電量が低下する傾向にある。また、ピーク分子量(Mp)が30000を超えると、スチレンアクリル樹脂と樹脂Cとの相溶性が低下する傾向にあり、トナー中に樹脂Cの大きなドメインが形成されやすく、トナーの帯電量分布がブロードになりやすい。
樹脂のピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などの既存の装置を用いて測定することができる。
本発明のトナーは着色剤を含有してもよい。該着色剤としては、公知のものを使用することができる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、以下に示すイエロー、マゼンタ、及びシアン着色剤を用い各色に調色されたものが挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214などが例示できる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、以下の、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが例示できる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から選択される。前記着色剤の添加量は、好ましくは樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である。
本発明のトナーにおいて、磁性材料を含有させ磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。
該磁性材料としては、以下の、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいはこれら金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物などが例示できる。
磁性材料は、好ましくは、表面改質されたものである。懸濁重合法により磁性トナーを調整する場合には、重合阻害のない表面改質剤により、疎水化処理を施したものが好ましい。このような表面改質剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤を挙げることができる。
該磁性材料は、個数平均粒径が2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。トナー中の含有量は、樹脂100質量部に対して、20質量部以上200質量部以下であることが好ましく、40質量部以上150質量部以下であることがより好ましい。
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。該ワックスとしては、以下のものが挙げられる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムのような石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスのような天然ワックス及びその誘導体。誘導体としては酸化物や、ビニル系単量体とのブロック共重合物、グラフト変性物などが挙げられる。さらには、以下のものが挙げられる。高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸;酸アミドワックス;エステルワックス;硬化ヒマシ油及びその誘導体;植物系ワックス;動物性ワックス。この中で特に、離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。より好ましくは、トータルの炭素数が同一の化合物が50質量%以上95質量%以下ワックスに含有されているものが、ワックス純度が高く現像性の観点で好ましい。
該ワックスの含有量は、樹脂100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、3質量部以上25質量部以下である。ワックスの含有量が、1質量部以上40質量部以下の場合には、トナーの加熱加圧時に適度なワックスのブリード性を持てることにより、高温時の耐巻きつき性が向上する。さらに、現像時や転写時のトナーへのストレスを受けてもトナー表面へのワックスの露出が少なく、トナー個々の均一な帯電性を得ることができる。
本発明のトナーは、流動性などの向上を目的として無機微粒子がトナー粒子に外添されている態様が好ましい。
トナー粒子に外添する無機微粒子としては、少なくともシリカ微粒子を含むことが好ましい。該シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、4nm以上80nm以下であることが好ましい。シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径が上記範囲にあることで、トナーの流動性が向上すると共に、トナーの保存安定性も良好になる。
該無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、走査電子顕微鏡で観察し、視野中の100個の無機微粒子の一次粒子の粒径を測定し、その算術平均により求める。
該無機微粒子として、シリカ微粒子と、酸化チタン、アルミナ又はそれらの複酸化物の微粒子を併用することができる。併用される無機微粒子としては、酸化チタンが好ましい。
該シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカの両者の微粒子が含まれる。シリカとしては、表面及びシリカの内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカは、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンのような他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能である。本発明におけるシリカはそれらも包含する。
無機微粒子は、また、トナーの摩擦帯電性の均一化のために添加される。無機微粒子を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上などの機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粒子を用いることが好ましい。トナー粒子に外添された無機微粒子が吸湿すると、トナーとしての摩擦帯電量が低下しやすく、現像性や転写性の低下が生じ易くなるためである。
無機微粒子の疎水化処理のための処理剤としては、以下のものが挙げられる。
未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの処理剤は単独であるいは併用して用いてもよい。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粒子が好ましい。より好ましくは、無機微粒子をカップリング剤で疎水化処理すると同時、あるいはカップリング剤で疎水化処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粒子が高湿環境下でもトナー粒子の摩擦帯電量を高く維持し、選択現像性を低減できるという点でよい。
該無機微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、通常、0.01質量部以上10質量部以下であり、好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下である。
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されず、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法など、従来公知の方法を用いることができる。上記の中でも懸濁重合法は、水とトナー材料の極性のバランスを利用して、トナー表面近傍の樹脂Cの存在状態を容易に制御することができる。そのため懸濁重合法は、トナーの帯電性を良好なものとするうえで、より好ましい方法である。
以下に懸濁重合法を用いたトナー粒子の製造方法を説明する。
まず、樹脂C、及び、必要に応じて樹脂C以外の樹脂を生成する重合性単量体、並びに、必要に応じて着色剤などの成分を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、該重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体を重合する。重合によって得られた粒子は、ろ過、洗浄、乾燥工程を経てトナー粒子とすることができる。
該水系媒体には、重合性単量体組成物を均一に分散させて、重合性単量体組成物の液滴を造粒するために、分散剤を添加することが好ましい。
樹脂C以外の樹脂としてスチレンアクリル樹脂を用いる場合、懸濁重合法において、トナー粒子中のスチレンアクリル樹脂の含有量を調整する方法としては、重合性単量体として、スチレンモノマー及びアクリル系モノマーを用いてもよいし、懸濁重合を行う際に予めスチレンアクリル樹脂を添加して調整してもよい。
懸濁重合法において用いられる重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加物を添加するときに同時に加えてもよいし、水系媒体中に重合性単量体組成物を造粒する直前に混合してもよい。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えてもよい。
該重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートのような過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、上記重合性単量体100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の種類は、目的により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に選定され、単独又は混合して使用される。
上記重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させるための分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
一方、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させるための分散剤として、市販のノニオン型、アニオン型、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
これらの上記重合性単量体組成物を水系媒体中に分散させるための分散剤の中でも、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、酸に可溶性である難水溶性の無機分散剤を用いることがより好ましい。
該分散剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、該水系媒体は、重合性単量体組成物100質量部に対して、300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて調製されることが好ましい。
本発明において、上記のような難水溶性の無機分散剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤の粒子を得るために、水系媒体中で、高速撹拌下、難水溶性の無機分散剤を生成させて調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することが挙げられる。
<電子写真感光体>
本発明に用いられる電子写真感光体についてさらに詳細に説明する。
本発明に係る電子写真感光体は、支持体、該支持体上に設けられた電荷発生層、および該電荷発生層上に設けられた電荷輸送層を有する電子写真感光体である。
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスのような金属製の支持体を用いることができる。アルミニウムまたはアルミニウム合金製の支持体の場合は、ED管、EI管や、これらを切削、電解複合研磨、湿式または乾式ホーニング処理したものを用いることもできる。また、アルミニウム、アルミニウム合金または酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着によって被膜形成された層を有する金属製支持体や樹脂製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子のような導電性粒子を樹脂などに含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。
支持体の表面は、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体と、後述の中間層または電荷発生層との間には、導電層を設けてもよい。これは、導電性粒子を結着樹脂に分散させた導電層用塗布液を用いて形成される層である。導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
支持体または導電層と、電荷発生層との間には、中間層を設けてもよい。
中間層は、結着樹脂を含有する中間層用塗布液を支持体または導電層上に塗布し、これを乾燥または硬化させることによって形成することができる。
中間層の結着樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂などが挙げられる。
また、中間層は電子輸送材料を含んでもよく、電子輸送材料は樹脂と混合して使用、または硬化させて用いられる。中でも、電子輸送材料、樹脂、架橋剤を硬化させて使用することが、繰り返し使用時の電気特性向上のために好ましい。
中間層の膜厚は、0.05μm以上7μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、中間層には、半導電性粒子、電子輸送物質、あるいは電子受容性物質を含有させてもよい。
支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
本発明に係る電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料およびペリレン顔料が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンのような金属フタロシアニンは、高感度であるため好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂および尿素樹脂が挙げられる。これらの中でも、特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルを用いた方法が挙げられる。
電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:10〜10:1(質量比)の範囲が好ましく、特には1:1〜3:1(質量比)の範囲がより好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質、または電子受容性物質を含有させてもよい。
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
電荷輸送層が本発明に係る電子写真感光体の表面層である場合、該電荷輸送層が少なくとも式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を含む。
また、電荷輸送層上に表面保護層を設ける場合、該表面保護層は本発明に係る表面層であり、該表面保護層が少なくとも式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を含む。
電荷輸送層上に該表面保護層を設ける場合、電荷輸送層は適当な電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られた電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール及びポリスチリルアントラセンのような複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、トリアゾール及びカルバゾールのような複素環化合物、トリフェニルメタンのようなトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンのようなトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などが挙げられる。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。また、これらの重量平均分子量(Mw)は、10,000〜300,000の範囲であることが好ましい。
電荷輸送層において、電荷輸送物質と結着樹脂との質量比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、10/5〜5/10の範囲であることが好ましく、10/8〜6/10の範囲であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましい。
本発明に係る電子写真感光体の表面層は式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を含む。
式(2)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示す。
式(3)は、炭素数3から5の環状エーテルを有する基を示し、該環状エーテルを有する基としては、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはテトラヒドロピランを有する基を示す。
式(2)で示される基または式(3)で示されるエーテル基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を表面層に有し、かつ、トナー粒子が式(1)で示される構造を有する樹脂を含有することを特徴とする、本発明の画像形成方法は、良好なクリーニング性を有する。クリーニング性が良好となる理由としては、以下の理由が考えられる。
本発明に係る電子写真感光体の表面層は式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーを含む組成物の硬化物を表面層に有することで、表面層が水酸基、またはエーテル構造を多数含むことになる。これによって、トナーに含まれる式(1)で示される構造であるイソソルビドユニットとの親和性が高まり、クリーニングブレードの当接ニップにおいて、トナーの保持性が高まると予想している。
クリーニングブレードの当接ニップにおいて、トナーの保持性が高まることによって、滞留層が形成され、スティック−スリップ運動を安定化し、良好なクリーニング性が得られていると考えている。
また、表面層を電荷輸送機能を有するモノマーの硬化物とすることで、上記電子写真感光体とトナーの親和性の効果に加え、電子写真感光体表面層からの削れ粉の発生を抑制し、当接ニップにおけるトナー量が相対的に増えることから、トナー同士の相互作用も関係していると考えている。
また、本発明の画像形成方法において、前記式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーが式(4)または式(9)で示される化合物であることが好ましい。
式(4)中、R
3からR
5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、X
1からX
3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基または式(5)から式(8)で示される構造であり、X
1からX
3の少なくともいずれかひとつは式(5)から式(8)で示される構造を示す。
式(5)中、R
11、R
12はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R
13、R
14はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示し、n2は0から4の整数である。
式(6)中、R
21、R
22およびR
27はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R
23からR
26はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示し、n3は0から4の整数である。
式(7)中、R
31、R
32はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、n4は0から4の整数である。
式(8)中、R
33、R
34はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、n5は0から4の整数である。
式(9)中、R
41からR
44はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Y
4は単結合または置換若しくは無置換のアルキレン基を示し、X
4からX
7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基または式(10)から式(13)で示される構造を示し、X
4からX
7の少なくともいずれかひとつは式(10)から式(13)で示される構造を示す。
式(10)中、R
51、R
52はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R
53、R
54はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示し、n6は0から4の整数である。
式(11)中、R
61、R
62およびR
67はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R
63からR
66はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基を示し、n7は0から4の整数である。
式(12)中、R
71、R
72はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、n8は0から4の整数である。
式(13)中、R
73、R
74はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、n9は0から4の整数である。
以下に式(2)または式(3)で示される基のいずれかを1つ以上有するモノマーの具体例を示す。
これらのモノマーは公知の方法で合成することができる。例えば、特開2003−246771、特開2012−150401に記載の方法で合成することができる。
これらのモノマーは各種溶剤に溶解し、塗布、加熱乾燥することで、硬化膜を得ることができる。
該モノマーを硬化した表面層の膜厚としては、1μm以上、20μm以下が好ましい。
該モノマーは二つ以上のモノマーを混合して使用してもよい。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
〔樹脂Cおよびドナーの製造例〕
本発明に用いられる樹脂Cおよびトナーの製造例を以下に示す。なお、本発明は該製造例によって制限されるものではない。
〔樹脂Cの製造例1〕
無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを表1に示した仕込み量で混合した混合物100質量部と、触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52質量部を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した6リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。さらに反応系を210℃に昇温した後に、無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて反応を行い、生成する樹脂の重量平均分子量(Mw)が12000になるまで反応を続けた。得られた樹脂を樹脂C1とする。
〔樹脂Cの製造例2〜4〕
酸成分とアルコール成分の仕込み量を表1のように変更することを除いて、樹脂Cの製造例1と同様にして製造した。得られた樹脂Cを樹脂C2〜C4とする。
※モノマー組成の表記はアルコール成分のトータルモル数を100とした時のモル比を示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:トリメリット酸
BPA(PO):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物
BPA(EO):ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物
〔トナーの製造例1〕
下記の手順によってトナー1を製造した。
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1mol/L−Na3PO4水溶液850質量部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/L−CaCl2水溶液68質量部を添加し、微少な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系媒体を調製した。
また、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレン 75.0質量部
・アクリルモノマー(n−ブチルアクリレート) 25.0質量部
・樹脂C1 3.8質量部
次に上記溶解液に下記の材料を添加した。
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5質量部
・炭化水素ワックス 9.0質量部
(最大吸熱ピークのピーク温度が77℃、HNP−51、日本精蝋社製)
その後、混合液を温度60℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)にて、9000r/minにて攪拌し、溶解、分散した。
これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度60℃にてクレアミックスを15000rpmで回転させながら15分間造粒した。
その後、プロペラ式攪拌装置に移して100r/minで攪拌しつつ、温度70℃で5時間反応させた後、温度80℃まで昇温し、さらに5時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、前記粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。
上記トナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池製)で3000r/minで15分間混合してトナー1を得た。
〔トナーの製造例2、3〕
トナーの製造例1において、表2の添加量と種類に従った他は、トナーの製造例1と同様にしてトナーを製造した。得られたトナーをトナー2およびトナー3とする。
〔トナーの製造例4〕
下記の手順に従って、溶解懸濁法によってトナーを製造した。
水660質量部、48.5質量%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液25質量部を混合撹拌し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10000r/minにて撹拌して水系媒体を調製した。
その後、下記の材料を酢酸エチル500質量部へ投入し、プロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレンとn−ブチルアクリレート共重合体 100.0質量部
(共重合質量比:スチレン/n−ブチルアクリレート=75/25、Mp=17000)
・樹脂C1 3.8質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.5質量部
・炭化水素ワックス 9.0質量部
(最大吸熱ピークのピーク温度が77℃、HNP−51、日本精蝋社製)
次に水系媒体150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数12000rpmで攪拌し、これに上記溶解液100質量部を添加し、10分間混合して乳化スラリーを調製した。
その後、脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分間で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し45℃で4時間熟成させて、脱溶剤スラリーとした。脱溶剤スラリーを減圧濾過した後、得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12000rpmにて10分間)した後、濾過した。得られた濾過ケーキを乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩いトナー粒子を得た。
上記トナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水性シリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池製)で3000r/minで15分間混合してトナー4を得た。
〔トナーの製造例5〕
下記の手順に従って、粉砕法によってトナーを製造した。
・樹脂C1 100.0質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.0質量部
・フィッシャートロプシュワックス 5.0質量部
(最大吸熱ピークのピーク温度が105℃)
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製))にて回転数3.3s−1、混練樹脂温度110℃の条件で混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径7.0μmの負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、イソブチルトリメトキシシラン15質量%で表面処理した一次平均粒子径50nmの酸化チタン微粒子1.0質量部、及びヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次平均粒子径16nmの疎水性シリカ微粒子0.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナー5を得た。
〔トナーの製造例6〕
トナーの製造例1において、アクリルモノマーを使用せず、表2の添加量と種類に従った以外は、トナーの製造例1と同様にしてトナーを製造した。得られたトナーをトナー6とする。
〔トナーの製造例7〕
トナーの製造例1において、表2の添加量と種類に従った他は、トナーの製造例1と同様にしてトナーを製造した。得られたトナーをトナー7とする。
〔比較トナーの製造例1〕
トナー1の製造例において、樹脂C1を添加せず、それ以外はトナーの製造例1と同様にしてトナーを製造した。得られたトナーを比較トナー1とする。
トナー1〜7及び比較トナー1について、トナー中に含まれる樹脂C(種類、含有量)、樹脂C以外の樹脂(種類、含有量)およびトナー製造方法を表3に示す。
〔感光体の製造例〕
本発明に用いられる感光体の製造例を以下に示す。なお、本発明は該製造例によって制限されるものではない。
〔感光体の製造例1〕
直径24mm、長さ257mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
次に、金属酸化物粒子として酸素欠損型酸化スズ(SnO2)が被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子214部、結着材料としてフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ−325、DIC(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部、および、溶剤として1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、平均粒径2μm)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
次に、式(e−1)で示される電子輸送物質を5部、ブロックされたイソシアネート化合物(商品名:SBN−70D、旭化成ケミカルズ(株)製)8.6部、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS−5Z、積水化学工業(株)製)0.6部、ヘキサン酸亜鉛(II)(商品名:ヘキサン酸亜鉛(II)、三津和化学薬品(株)製)0.15部とを、1−メトキシ−2−プロパノール45部とテトラヒドロフラン45部の混合溶媒に溶解した。得られた溶解液に、シリカ粒子がイソプロパノールに分散されたスラリー(商品名:IPA−ST−UP、シリカ比率:15質量%、日産化学(株)製)を3.3部加えて撹拌した。この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を20分間170℃で加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン(電荷発生物質)10部を用意した。それに、シクロヘキサノン250部およびポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下1時間分散した。分散後、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.26μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送物質として、式(h−1)で示される化合物14部、樹脂として、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)12部、テトラヒドロフラン70部およびトルエン40部の混合溶剤に溶解させることとによって、電荷輸送用塗布液を調製した。この電荷輸送用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、これを120℃で30分間乾燥させて、膜厚が17μmの電荷輸送層を作製した。
次に、表面保護層として、式(A−1)で示される化合物30部、エタノール70部を混合し、2時間撹拌して溶解し、表面保護層用塗工液とした。
この表面保護層用塗工液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布し、150℃で1時間乾燥し、膜厚が3μmの表面保護層を得た。
このようにして感光体1を作製した。
〔感光体の製造例2〜14〕
感光体の製造例1において、式(A−1)で示される化合物を表4に示すように変更した以外は感光体1と同様に感光体2〜14を作製した。
〔比較感光体の製造例1〕
感光体の製造例1において、表面保護層を設けなかった以外は感光体1と同様にして比較感光体1を作製した。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、電子写真感光体に当接し該電子写真感光体を帯電するための帯電工程と、該電子写真感光体上にトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、該電子写真感光体の表面を摺擦して清掃する転写残トナーを除去するためのクリーニング工程を有し、電子写真感光体として上述した<電子写真感光体>を用い、且つトナーとして上述した<トナー>を用いるものである。本発明の画像形成方法を適用することができる画像形成装置の一例としての電子写真装置を用いて、本発明の画像形成方法をさらに説明する。
図1に、電子写真感光体およびトナーを有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される(帯電工程)。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく(静電潜像形成工程)。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5に含まれるトナー収容容器に収容されたトナーTで反転現像により現像されてトナー画像となる(現像工程)。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー画像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく(転写工程)。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー画像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー画像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される(クリーニング工程)。本発明においては、上記特定の電子写真感光体及び特定のトナーを用いているため、新品のプロセスカートリッジや電子写真装置の使用初期段階においてもクリーニング不良の発生が抑えられ、良好な画像品質を得ることができる。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述したように、電子写真感光体1、帯電手段3および現像手段5、さらには必要に応じてクリーニング手段7などの構成要素を、例えば容器に納めて一体に結合したものが、本発明のプロセスカートリッジである。このプロセスカートリッジは、複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して取り外し可能に装着される。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
〔実施例1〕
<評価>
評価装置は、一成分接触現像システムの現像装置(Satera LBP5300;キヤノン製)を用い、非画像形成時のトナー吐き出しを行わないように調整した。評価はクリーニングがより厳しくなる低温低湿環境下(10℃/14%RH)で行った。低温低湿下でクリーニングが厳しくなる理由は、クリーニングブレードの硬度が高くなることで感光体への追従性が低下するためと考えられる。
感光体は感光体1を用い、現像容器にはトナー1を充填した。こうして、感光体1とトナー1を有するプロセスカートリッジを用いた。
・画像評価
低温低湿環境下(10℃/14%RH)にて、印字率1%のテストチャートを用いて10,000枚耐久後、紙全面に、シアン単色モードにてベタ黒画像部を形成したチャートを20枚連続で出力し、以下の基準で評価した。評価結果を表5に示す。
A:20枚の画像いずれにおいても、白いスジ状の縦線が全く見られない。
B:20枚の画像中、白いスジ状の縦線が、1〜2本程度薄く見られる画像がある。
C:20枚の画像中、はっきりした白いスジ状の縦線が見られる、あるいは薄い縦線が3本以上見られる画像がある。
・帯電部材汚染
上記画像評価実施後に、カートリッジ内の帯電部材を回収し、外添剤付着由来の汚れが見られるか否かの目視確認を行い、以下の基準で評価した。評価結果を表5に示す。
A:白い汚れが全く見られない。
B:白い汚れがやや見受けられる。
C:白い汚れが目立つ。
〔実施例2〜28〕
実施例1において、感光体1とトナー1を表5に記載の感光体とトナーに変更した以外は、実施例1と同様にしてプロセスカートリッジを作製し、画像評価と帯電部材汚染の評価を行った。結果を表5に示す。
〔比較例1〜6〕
実施例1において、感光体1とトナー1を表5に記載の感光体とトナーに変更した以外は、実施例1と同様にしてプロセスカートリッジを作製し、画像評価と帯電部材汚染の評価を行った。結果を表5に示す。
実施例と比較例との比較より、比較例では、帯電部材汚染の抑制効果が十分に得られず、帯電部材汚染に由来する画像品質の低下がみられる。