JP6543827B2 - リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法に関する。
近年、小型化、軽量化、高容量化が期待される電池として、リチウムイオン二次電池等の非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極および負極と、非水系の電解質とから構成されている。
リチウムイオン二次電池の負極材料の負極活物質としては、一般に炭素系材料またはリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物が用いられる。そのようなLi含有金属酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(LiTi12)が挙げられる。
一方、リチウムイオン二次電池の正極としては、正極材料およびバインダー等を含む正極材料合剤が用いられている。正極活物質としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物が用いられる。そして、この正極材料合剤を電極集電体と称される金属箔の表面に塗布することにより、リチウムイオン二次電池の正極が形成される。
リチウムイオン二次電池の電解液には非水系溶媒が用いられる。非水系溶媒は、高電位で酸化還元する正極活物質や、低電位で酸化還元する負極活物質を適用することができる。これにより、高電圧を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
このようなリチウムイオン二次電池は、鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の従来の二次電池と比べて、軽量かつ小型であるとともに、高エネルギーを有している。そのため、リチウムイオン二次電池は、携帯用電話機およびノート型パーソナルコンピューター等の携帯用電子機器に用いられる小型電源のみならず、定置式の非常用大型電源としても用いられている。
近年、リチウムイオン二次電池の性能向上が求められ、種々検討されている。例えば、リン酸鉄リチウム等の電子伝導性が低い正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を高電流密度領域で使用する場合、性能向上のためには、正極活物質の電子伝導性の向上が求められる。このような物性要求に対しては、正極活物質の表面に炭素質の材料で被覆(以下、「炭素質被膜」と言うことがある。)する技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。正極活物質の表面を炭素質被膜で被覆する方法としては、正極活物質と炭素源とを混合し、その混合物を不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で焼成する方法が知られている。
リン酸鉄リチウムの表面における炭素質被膜の被覆率が高くなるほど、電子伝導性が向上し、入出力特性も向上する傾向にある。しかし、炭素質被膜はリチウムイオンの移動を阻害する側面も有するため、被覆率が高過ぎると入出力特性が低下することも知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2009−004371号公報 特開2011−049161号公報 特開2012−104290号公報 特許第5822017号公報
リン酸鉄リチウムの入出力特性を向上させるために最適な炭素質被膜の被覆状態は、リチウムイオンの移動を阻害し過ぎないようにしつつ、できるだけリン酸鉄リチウムの電子伝導性を高めることができるような被覆率の状態である。
しかしながら、炭素質被膜の被覆性を精確かつ簡便に評価することは容易ではない。例えば、特許文献4では、炭素被覆率を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray microanalyzer、EDX)を用いた面分析によって炭素質被膜の割合を算出している。この面分析は、炭素質被膜層の細かい未被覆領域を検出できないため、検出精度が低い。この面分析の他にも、ラマン分光法で得られる炭素質被膜由来のピーク面積と炭素被覆されていないPOピーク面積との面積比から、炭素質被膜の被覆性を評価する方法も知られている。この方法は、ビーム光のエネルギーで炭素質被膜が酸化分解するため、精度が低い。
さらに、炭素質被膜の被覆性は、被覆率、膜厚およびその均一性(凹凸状態)、炭素質被膜中の細孔や炭素質被膜の結晶度等にも影響される。
上記の理由から、リン酸鉄リチウムの表面における炭素質被膜の被覆性を精確に評価することは難しい。また、入出力特性を向上するために最適な炭素質被膜の被覆性は不明であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、最適な炭素質被膜の被覆性を有するリチウムイオン二次電池用正極材料、そのリチウムイオン二次電池用正極材料を含有するリチウムイオン二次電池用正極、および、そのリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池、リン酸鉄リチウムの表面における炭素質被膜の被覆性を精確かつ簡便に評価することができるリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化してなる炭素質被膜とを含む活物質粒子における炭素質被膜の被覆性をΔb/BET比表面積比で評価することによって、Δb/BET比表面積比を0.25以上かつ0.35以下、BET比表面積が5m /g以上かつ30m /g以下とすることにより、入出力特性の向上に最適な炭素質被膜の被覆性を有するリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料は、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化してなる炭素質被膜とを含む活物質粒子であって、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下(Δb:前記活物質粒子を大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記活物質粒子の加熱前の色度bとの差)、BET比表面積が5m /g以上かつ30m /g以下であることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、電極集電体と、該電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備えたリチウムイオン二次電池用正極であって、前記正極合剤層は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有することを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を備えたことを特徴とする。
また、本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、炭素質被膜で被覆されたリン酸鉄リチウム粒子を、大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bとリン酸鉄リチウム粒子の加熱前の色度bとの差を、リン酸鉄リチウム粒子の加熱前のBET比表面積で除した値(以下、「Δb/BET比表面積比」と言うこともある。)により、炭素質被膜によるリン酸鉄リチウム粒子の被覆性を精確に評価できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法は、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化してなる炭素質被膜とを含む活物質粒子を、大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記中心粒子の加熱前の色度bとの差を、前記活物質粒子の加熱前のBET比表面積で除した値により、前記炭素質被膜による前記中心粒子の被覆性を評価することを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料によれば、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下であるため、リチウムイオンの移動の阻害を最小限にしつつ、正極活物質(中心粒子)の電子伝導性を最大限高めることができ、入出力特性の向上が可能なリチウムイオン二次電池用正極材料を提供できる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極によれば、本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有しているため、高エネルギー密度であり、入出力特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られる。
本発明のリチウムイオン二次電池によれば、本発明のリチウムイオン二次電池用正極を備えているため、高エネルギー密度であり、入出力特性に優れるリチウムイオン二次電池が得られる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法によれば、Δb/BET比表面積比を測定することで、精確かつ簡便に導電性炭素質被膜の被覆性を評価でき、リチウムイオン二次電池用の正極活物質に適した炭素質被膜の被覆性に調整することが可能になる。
実施例1〜3および比較例1〜3において、Δb/BET比表面積比と10C放電容量との関係を示す図である。 実施例4〜6および比較例4〜6において、Δb/BET比表面積比と10C放電容量との関係を示す図である。 実施例7〜9および比較例7〜9において、Δb/BET比表面積比と10C放電容量との関係を示す図である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[リチウムイオン二次電池用正極材料]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料(以下、「正極材料」と言うことがある。)は、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含む活物質粒子であって、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下(Δb:前記活物質粒子を大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記活物質粒子の加熱前の色度bとの差)である。
上記の中心粒子(一次粒子)が複数個凝集した凝集粒子の平均二次粒子径は、0.5μm以上かつ20μm以下であることが好ましく、0.7μm以上かつ10μm以下であることがより好ましい。
凝集粒子の平均二次粒子径が0.5μm以上であると、正極材料と、導電助剤と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶剤とを混合して、リチウムイオン二次電池用正極材料ペーストを調製する際の導電助剤、および結着剤の配合量を抑えることができる。その結果、正極合剤層の単位質量当たりのリチウムイオン二次電池の電池容量を大きくすることができる。一方、凝集粒子の平均二次粒子径が20μm以下であると、正極合剤層中の導電助剤や結着剤の分散性、均一性を高めることができる。その結果、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、高速充放電における放電容量を大きくすることができる。
凝集粒子の形状は特に限定されないが、球状、特に真球状であることが好ましい。凝集粒子が球状であることで、リチウムイオン二次電池用正極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶剤とを混合して、正極材料ペーストを調製する際の溶剤量を低減することができる。また、凝集粒子の形状が球状であることで、正極材料ペーストの電極集電体への塗工が容易となる。さらに、凝集粒子の形状が球状であれば、正極材料ペーストにおけるバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができる。その結果、リチウムイオン二次電池用正極材料を用いた正極の単位体積当たりのリチウムイオン二次電池用正極材料の充填量が多くなり、高容量のリチウムイオン二次電池が得られる。
ここで、平均粒子径とは、体積平均粒子径のことである。正極材料の一次粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。また、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)で観察した一次粒子を任意に複数個選択し、その一次粒子の平均粒子径を算出してもよい。
リチウムイオン二次電池用正極材料に含まれる炭素量、すなわち、炭素質被膜を形成する炭素量は、中心粒子100質量部に対して0.1質量部以上かつ10質量部以下であることが好ましく、0.6質量部以上かつ3質量部以下であることがより好ましい。
炭素量が0.1質量部以上であると、リチウムイオン二次電池の高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素量が10質量部以下であると、正極材料の単位質量当たりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下することを抑制できる。
炭素質被膜の膜厚は1.0nm以上かつ10.0nm以下であることが好ましく、炭素質被膜の平均膜厚は2.0nm以上かつ7.0nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の平均膜厚が2.0nm以上であると、炭素質被膜中の電子の移動抵抗の総和が高くなりにくく、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。一方、炭素質被膜の平均膜厚が7.0nm以下であると、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際の立体障害が抑制され、リチウムイオンの移動抵抗が低くなる。その結果、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。
また、炭素質被膜の膜厚が1.0nm以上であると、炭素質被膜の平均膜厚を2.0nm以上に保ち易い。一方、炭素質被膜の膜厚が10.0nm以下であると、炭素質被膜の平均膜厚を7.0nm以下に抑え易い。
なお、炭素質被膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡を用いて、測定することができる。
炭素質被膜の炭素分によって算出される、炭素質被膜の密度は0.3g/cm以上かつ1.5g/cm以下であることが好ましく、0.4g/cm以上かつ1.0g/cm以下であることがより好ましい。
炭素質被膜の炭素分によって算出される、炭素質被膜の密度が0.3g/cm以上であると、炭素質被膜が充分な電子伝導性を示す。一方、炭素質被膜の密度が1.5g/cm以下であると、炭素質被膜中に層状構造からなる黒鉛の微結晶が少量であるため、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に黒鉛の微結晶による立体障害が生じない。これにより、リチウムイオン移動抵抗が高くなることがない。その結果、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が上昇することがなく、リチウムイオン二次電池の高速充放電レートにおける電圧低下が生じない。
リチウムイオン二次電池用正極材料を構成する中心粒子の一次粒子の比表面積に対する炭素担持量(「[炭素担持量]/[中心粒子の一次粒子の比表面積]」;以下「炭素担持量割合」と言う。)は、0.01g/m以上かつ0.5g/m以下であることが好ましく、0.03g/m以上かつ0.3g/m以下であることがより好ましい。
炭素担持量割合が0.01g/m以上であると、リチウムイオン二次電池の高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素担持量割合が0.5g/m以下であると、正極材料の単位質量当たりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下することを抑制できる。
リチウムイオン二次電池用正極材料のBET比表面積は、5m/g以上かつ30m/g以下であることが好ましい。
BET比表面積が5m/g以上であると、正極材料の粗大化を抑制して、その粒子内におけるリチウムイオンの拡散速度を速くすることができる。これにより、リチウムイオン二次電池の電池特性を改善することができる。一方、BET比表面積が30m/g以下であると、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含む正極内の正極密度を高くすることができる。そのため、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池用正極材料のΔb/BET比表面積比は、0.25以上かつ0.35以下であり、0.27以上かつ0.33以下であることが好ましい。
Δb/BET比表面積比が0.25以上であると、炭素質被膜がリチウムイオンの移動を阻害し過ぎないため、リチウムイオン二次電池の入出力特性を向上できる。一方、Δb/BET比表面積比が0.35以下であると、電子伝導性が充分に担保されているため、リチウムイオン二次電池の入出力特性を向上できる。Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下の範囲内であると、トレードオフ関係にある電子伝導速度とリチウムイオン伝導速度のいずれかの速度のみが極端に遅くならず、速度バランスが最も良好となる。そのため、最も優れた入出力特性を有する炭素質被膜を得ることができる。
(中心粒子)
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を構成する中心粒子は、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表される正極活物質からなる。
なお、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの15元素のことである。
一般式LiFePOで表わされる化合物としては、例えば、LiFePO、LiFe0.95Mg0.05PO、Li0.95Fe0.95Al0.05PO等が挙げられる。これらの中でも、電気化学的活性を示さない金属が含まれておらず、理論上のエネルギー密度が最も高くなる点から、LiFePOであることが好ましい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を構成する中心粒子の一次粒子の平均一次粒子径は、5nm以上かつ800m以下であることが好ましく、20nm以上かつ500nm以下であることがより好ましい。
中心粒子の一次粒子の平均一次粒子径が5nm以上であると、中心粒子の一次粒子の表面を炭素質被膜で充分に被覆することができる。そして、リチウムイオン二次電池の高速充放電における放電容量を高くし、充分な充放電性能を実現することができる。一方、中心粒子の一次粒子の平均一次粒子径が800nm以下であると、中心粒子の一次粒子の内部抵抗を小さくすることができる。そして、リチウムイオン二次電池の高速充放電における放電容量を高くすることができる。
(炭素質被膜)
炭素質被膜は、中心粒子の表面を被覆する。
中心粒子の表面を炭素質被膜で被覆することにより、リチウムイオン二次電池用正極材料の電子伝導性を向上させることができる。
炭素質被膜の厚みは、0.2nm以上かつ10nm以下であることが好ましく、0.5nm以上かつ4nm以下であることがより好ましい。
炭素質被膜の厚みが0.2nm以上であると、炭素質被膜の厚みが薄すぎるために所望の抵抗値を有する膜を形成できなくなることを抑制できる。そして、リチウムイオン二次電池用正極材料としての導電性を確保することができる。一方、炭素質被膜の厚みが10nm以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料の単位質量当たりの電池容量が低下することを抑制できる。
また、炭素質被膜の厚みが0.2nm以上かつ10nm以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料を最密充填し易くなるため、正極における単位体積当たりのリチウムイオン二次電池用正極材料の充填量が多くなる。その結果、正極密度を高くすることができ、高容量のリチウムイオン二次電池が得られる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料によれば、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含む活物質粒子であって、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下(Δb:前記活物質粒子を大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記活物質粒子の加熱前の色度bとの差)とすることにより、リチウムイオンの移動の阻害を最小限にしつつ、正極活物質の電子伝導性を最大限に高めることができ、入出力特性の向上が可能なリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することができる。
[リチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法]
「活物質粒子の製造方法」
本実施形態における活物質粒子の製造方法は、例えば、中心粒子および中心粒子の前駆体の製造工程と、中心粒子および中心粒子の前駆体からなる群から選択される少なくとも1種の中心粒子原料、炭素質被膜前駆体である有機化合物、水およびアンモニア(NH)水を混合し、スラリーを調製するスラリー調製工程と、スラリーを乾燥し、得られた乾燥物を非酸化性雰囲気下にて焼成する焼成工程と、を有する。
(中心粒子および中心粒子の前駆体の製造工程)
一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表される化合物(中心粒子)の製造方法としては、固相法、液相法、気相法等の従来の方法が用いられる。このような方法で得られたLiFePOとしては、例えば、粒子状のもの(以下、「LiFePO粒子」と言うことがある。)が挙げられる。
LiFePO粒子は、例えば、Li源と、Fe源と、P源と、水と、必要に応じてM源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成して得られる。水熱合成によれば、LiFePOは、水中に沈殿物として生成する。得られた沈殿物は、LiFePOの前駆体であってもよい。この場合、LiFePOの前駆体を焼成することで、目的のLiFePO粒子が得られる。
この水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCHCOO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩、水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられる。これらの中でも、Li源としては、酢酸リチウム、塩化リチウムおよび水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
Fe源としては、鉄の塩化物、鉄のカルボン酸塩、鉄の硫酸塩等が挙げられる。Fe源としては、例えば、塩化鉄(II)(FeCl)、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))、硫酸鉄(II)(FeSO)等の2価の鉄塩が挙げられる。これらの中でも、Fe源としては、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)および硫酸鉄(II)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
M源としては、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
P源としては、リン酸(HPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)等のリン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、P源としては、リン酸、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸水素二アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
(スラリー調製工程)
スラリー調製工程により、中心粒子間に、炭素質被膜の前駆体である有機化合物が介在し、それらが均一に混合するため、中心粒子の表面を有機化合物でムラなく被覆することができる。
さらに、焼成工程により、中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化することにより、炭素質被膜が均一に被覆された中心粒子を含む活物質粒子(正極材料)が得られる。
本実施形態における活物質粒子の製造方法で用いられる有機化合物としては、中心粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されない。このような有機化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、エチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール等が挙げられる。
スラリー調製工程では、中心粒子原料と、有機化合物と、アンモニア水とを、水に溶解または分散させて、均一なスラリーを調製する。
これらの原料を水に溶解または分散させる際には、分散剤を加えることもできる。
中心粒子原料と、有機化合物とを、水に溶解または分散させる方法としては、水に中心粒子原料を分散させ、水に有機化合物を溶解または分散させる方法であれば、特に限定されない。このような方法としては、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカーおよびアトライタ等の媒体粒子を高速で攪拌する媒体攪拌型分散装置を用いる方法が好ましい。
中心粒子原料と、有機化合物とを、水に溶解または分散させる際には、水に中心粒子原料を一次粒子として分散させ、その後、水に有機化合物を添加して溶解または分散させるように攪拌することが好ましい。このようにすれば、中心粒子原料の一次粒子の表面が有機化合物で被覆され易い。これにより、中心粒子原料の一次粒子の表面に有機化合物が均一に配され、その結果として、中心粒子の一次粒子の表面が、有機化合物由来の炭素質被膜によって被覆される。
スラリー調製工程で投入するアンモニア水の量を調整することで、スラリーのpHを調整し、中心粒子原料の鉄イオンの酸化の程度を調整し、焼成工程において中心粒子表面で鉄イオンの還元に消費される炭素量を調整し、炭素質被膜の被覆率を制御することができる。アンモニア水の添加量は、中心粒子原料の全モル量(100モル%)に対して、3モル%以下であることが好ましい。アンモニア水の添加量が3モル%以下であると、中心粒子表面の過剰な酸化による鉄系不純物の生成を抑制できる。
(焼成工程)
次いで、スラリー調製工程で調製したスラリーを、高温雰囲気中、例えば、70℃以上かつ250℃以下の大気中に噴霧し、乾燥させる。
次いで、得られた乾燥物を、非酸化性雰囲気下、好ましくは500℃以上かつ1000℃以下、より好ましくは600℃以上かつ1000℃以下の温度にて、0.1時間以上かつ40時間以下焼成する。
非酸化性雰囲気としては、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスからなる雰囲気が好ましい。乾燥物の酸化をより抑えたい場合には、水素(H)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去することを目的として、非酸化性雰囲気中に酸素(O)等の支燃性ガスまたは可燃性ガスを導入してもよい。
ここで、焼成温度を500℃以上とすることにより、乾燥物に含まれる有機化合物の分解および反応が充分に進行し易く、有機化合物の炭化を充分に行い易い。その結果、得られた凝集粒子中に高抵抗の有機化合物の分解物が生成することを防止し易い。一方、焼成温度を1000℃以下とすることにより、中心粒子原料中のリチウム(Li)が蒸発し難く、また、中心粒子が目的の大きさ以上に粒成長することが抑制される。その結果、本実施形態の正極材料を含む正極を備えたリチウムイオン二次電池を作製した場合に、高速充放電レートにおける放電容量が低くなることを防止でき、充分な充放電レート性能を有するリチウムイオン二次電池を実現することができる。
以上により、乾燥物中の有機化合物が熱分解して生成した炭素(炭素質被膜)により中心粒子の一次粒子の表面が被覆された凝集粒子からなる活物質粒子が得られる。
[リチウムイオン二次電池用正極]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極(以下、単に「正極」と言うことがある。)は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含む。より詳細には、本実施形態の正極は、金属箔からなる電極集電体と、その電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備え、正極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有するものである。すなわち、本実施形態の正極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むため、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極を用いたリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度であり、入出力特性に優れる。
[リチウムイオン二次電池用正極の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層を形成できる方法であれば特に限定されない。本実施形態の正極の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、正極材料ペーストを調製する。この際、本実施形態における正極材料ペーストには、必要に応じて、カーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
「結着剤」
結着剤、すなわち、バインダー樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
正極材料ペーストを調製するに当たり用いられる結着剤の配合量は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池用正極材料100質量部に対して、1質量部以上かつ30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上かつ20質量部以下であることがより好ましい。
結着剤の配合量が1質量部以上であると、正極合剤層と電極集電体との間の結着性を充分に高くすることができる。これにより、正極合剤層の圧延形成時等において正極合剤層の割れや脱落が生じることを抑制できる。また、リチウムイオン二次電池の充放電過程において、正極合剤層が電極集電体から剥離し、電池容量および充放電レートが低下することを抑制できる。一方、結着剤の配合量が30質量部以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料の内部抵抗が低下し、高速充放電レートにおける電池容量が低下することを抑制できる。
「導電助剤」
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF;Vapor Grown Carbon Fiber)およびカーボンナノチューブ等の繊維状炭素からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
「溶媒」
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含む正極材料ペーストに用いられる溶媒は、結着剤の性質に応じて適宜選択される。溶媒を適宜選択することにより、正極材料ペーストを、電極集電体等の被塗布物に対して塗布し易くすることができる。
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびジアセトンアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;並びに、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極材料ペーストにおける溶媒の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と結着剤と溶媒の合計質量を100質量%とした場合に、50質量%以上かつ70質量%以下であることが好ましく、55質量%以上かつ65質量%以下であることがより好ましい。
正極材料ペーストにおける溶媒の含有率が上記の範囲内であると、正極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた正極材料ペーストを得ることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合する方法としては、これらの成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、ボールミル、サンドミル、プラネタリー(遊星式)ミキサー、ペイントシェーカーおよびホモジナイザー等の混錬機を用いた混合方法が挙げられる。
正極材料ペーストを、電極集電体の一主面に塗布して塗膜とし、その後、この塗膜を乾燥し、上記の正極材料と結着剤との混合物からなる塗膜が一主面に形成された電極集電体を得る。
その後、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、電極集電体の一主面に正極合剤層を有する正極を得る。
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、を備え、正極が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極である。具体的には、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極としての本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、セパレータと、非水電解質と、を備えてなる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、負極、非水電解質およびセパレータは特に限定されない。
「負極」
負極としては、例えば、金属Li、天然黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、Li合金およびLiTi12、Si(Li4.4Si)等の負極材料を含むものが挙げられる。
「非水電解質」
非水電解質としては、例えば、炭酸エチレン(エチレンカーボネート;EC)と、炭酸エチルメチル(エチルメチルカーボネート;EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を、例えば、濃度1モル/dmとなるように溶解したものが挙げられる。
「セパレータ」
セパレータとして、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
また、非水電解質とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極として、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極を備えているため、高エネルギー密度であり、入出力特性に優れる。
[リチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法は、一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含む活物質粒子を、大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと中心粒子の加熱前の色度bとの差(Δb)を、活物質粒子の加熱前のBET比表面積で除した値(Δb/BET比表面積比)により、炭素質被膜による中心粒子の被覆性を評価する。
炭素質被膜で被覆されたリン酸鉄リチウム粒子を大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱すると、炭素質被膜で被覆されていないリン酸鉄リチウム粒子(一般式LiFePOで表わされる中心粒子)の表面領域でFeイオンが酸化する。Feイオンの酸化に応じて、炭素質被膜で被覆されていないリン酸鉄リチウムの表面領域の黄色度が増加する。この黄色度の変動幅は、炭素質被膜の被覆性に応じて変化し、炭素質被膜の被覆性が高いと黄色度の変動幅が小さくなる。一方、炭素質被膜の被覆性が低いと黄色度の変動幅が大きくなる。黄色度の変動幅は、L表色系における色度bの変動幅で評価できる。また、リン酸鉄リチウム粒子におけるFeイオンの酸化反応は、リン酸鉄リチウム粒子の表面領域で生じるため、リン酸鉄リチウム粒子のBET比表面積の大きさと黄色度の変動幅は比例関係にある。よって、色度bの変動幅をBET比表面積で除することにより、リン酸鉄リチウム粒子の比表面積当たりの炭素質被膜の被覆性を示唆する値が得られる。
活物質粒子のBET比表面積の測定方法は、測定装置(商品名:HM model−1208、マウンテック社製)を用いて、一点法、相対圧0.29(P/P)にて測定した。
活物質粒子のL表色系における色度bは、分光式色彩計(型番:SE−2000、日本電色工業社製)とD65光源を用いた、反射光2度視野測定によって得られた。リチウムイオン二次電池用正極材料の色度bを測定する際には、シャーレに斑なく測定対象の正極材料を載せて、その正極材料の色度bを測定した。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法において、Δb/BET比表面積比の値が小さいほど、炭素質被膜によるリン酸鉄リチウム粒子の被覆性が高く、電子伝導性が良好であると言える。一方、Δb/BET比表面積比の値が大きいほど、炭素質被膜によるリン酸鉄リチウム粒子の被覆性が低く、リチウムイオンの伝導性が良好であると言える。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法において、炭素質被膜で被覆されているリン酸鉄リチウム粒子の加熱条件は、炭素質被膜が酸化分解することなく、Feイオンを酸化できる条件とする必要がある。加熱温度が180℃であれば、炭素質被膜がほとんど酸化分解せず、かつリン酸鉄リチウム粒子の表面領域に存在するFeイオンを充分に酸化させることができる。したがって、炭素質被膜によるリン酸鉄リチウム粒子の被覆性を精確に評価できる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
「リチウムイオン二次電池用正極材料の合成」
2molのリン酸リチウム(LiPO)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO)とに水を加え、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて12時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。
次いで、この沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
次いで、この正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール20gと、炭素質被膜の被覆性調整剤としてのNH水(28%)0.58gと、純水とを加え、これらの混合物を、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボールを用いて、ビーズミルにて1時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。この際、スラリー質量を分母とし、正極活物質の前駆体の質量を分子とした場合の割合が0.4になるように純水量を調整した。
次いで、このスラリーを200℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が8.3μmの有機物で被覆された、正極材料の前駆体の凝集粒子を得た。
次いで、得られた乾燥粉体(正極材料の前駆体の凝集粒子)を、窒素雰囲気下、780℃にて1.5時間焼成し、平均粒子径が8.3μmである正極材料1を得た。
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、正極材料1と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料1:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、混練機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、公転2000rpmの条件で10分混練し、正極材料ペースト(正極用)を調製した。
この正極材料ペースト(正極用)を、厚さ30μmのアルミニウム箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。
その後、正極合剤層を、58.84MPaの圧力にて加圧し、実施例1の正極1を作製した。
この正極1に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極1と負極との間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレータを配置し、電池用部材1とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1mol/LのLiPF溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液1を作製した。
次いで、電池用部材1を電解質溶液1に浸漬し、実施例1のリチウムイオン二次電池1を作製した。
[実施例2]
NH水の投入量を0.72gとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の正極材料2を得た。
正極材料2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池2を作製した。
[実施例3]
NH水の投入量を0.87gとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の正極材料3を得た。
正極材料3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池3を作製した。
[実施例4]
「リチウムイオン二次電池用正極材料の合成」
2molのリン酸リチウム(LiPO)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO)とに水を加え、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、170℃にて8時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。
次いで、この沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
次いで、この正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール20gと、炭素質被膜の被覆性調整剤としてのNH水(28%)0.72gと、純水とを加え、これらの混合物を、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボールとを用いて、ビーズミルにて1時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。この際、スラリー質量を分母とし、正極活物質の前駆体の質量を分子とした場合の割合が0.35になるように純水量を調整した。
次いで、このスラリーを200℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が9.7μmの有機物で被覆された、正極材料の前駆体の凝集粒子を得た。
次いで、得られた乾燥粉体(正極材料の前駆体の凝集粒子)を、窒素雰囲気下、760℃にて1.0時間焼成し、平均粒子径が9.7μmである正極材料4を得た。
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、正極材料4と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料4:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、混練機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、公転2000rpmの条件で10分混練し、正極材料ペースト(正極用)を調製した。
この正極材料ペースト(正極用)を、厚さ30μmのアルミニウム箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。
その後、正極合剤層を、58.84MPaの圧力にて加圧し、実施例4の正極4を作製した。
この正極4に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極4と負極との間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレータを配置し、電池用部材4とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1mol/LのLiPF溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液4を作製した。
次いで、電池用部材4を電解質溶液4に浸漬し、実施例4のリチウムイオン二次電池4を作製した。
[実施例5]
NH水の投入量を0.87gとしたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の正極材料5を得た。
正極材料5を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池5を作製した。
[実施例6]
NH水の投入量を1.01gとしたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6の正極材料6を得た。
正極材料6を用いたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池6を作製した。
[実施例7]
「リチウムイオン二次電池用正極材料の合成」
2molのリン酸リチウム(LiPO)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO)とに水を加え、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、140℃にて2時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。
次いで、この沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質の前駆体を得た。
次いで、この正極活物質の前駆体150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール20gと、炭素質被膜の被覆性調整剤としてのNH水(28%)0.87gと、純水とを加え、これらの混合物を、媒体粒子としての直径5mmのジルコニアボールとを用いて、ビーズミルにて4時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。この際、スラリー質量を分母とし、正極活物質の前駆体の質量を分子とした場合の割合が0.30になるように純水量を調整した。
次いで、このスラリーを200℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が11.2μmの有機物で被覆された、正極材料の前駆体の凝集粒子を得た。
次いで、得られた乾燥粉体(正極材料の前駆体の凝集粒子)を、窒素雰囲気下、700℃にて1.0時間焼成し、平均粒子径が11.2μmである正極材料7を得た。
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、正極材料7と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料7:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、混練機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、公転2000rpmの条件で10分混練し、正極材料ペースト(正極用)を調製した。
この正極材料ペースト(正極用)を、厚さ30μmのアルミニウム箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。
その後、正極合剤層を、58.84MPaの圧力にて加圧し、実施例7の正極7を作製した。
この正極7に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極7と負極との間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレータを配置し、電池用部材7とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1mol/LのLiPF溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液7を作製した。
次いで、電池用部材7を電解質溶液7に浸漬し、実施例7のリチウムイオン二次電池1を作製した。
[実施例8]
NH水の投入量を1.01gとしたこと以外は実施例7と同様にして、実施例8の正極材料8を得た。
正極材料8を用いたこと以外は実施例7と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池8を作製した。
[実施例9]
NH水の投入量を1.16gとしたこと以外は実施例7と同様にして、実施例9の正極材料9を得た。
正極材料9を用いたこと以外は実施例7と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池9を作製した。
「比較例1」
NH水の投入量を0.29gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の正極材料11を得た。
正極材料11を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池11を作製した。
「比較例2」
NH水の投入量を1.01gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の正極材料12を得た。
正極材料12を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池12を作製した。
「比較例3」
NH水の投入量を1.16gとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の正極材料13を得た。
正極材料13を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池13を作製した。
「比較例4」
NH水の投入量を0.29gとしたこと以外は実施例4と同様にして、比較例4の正極材料14を得た。
正極材料14を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池14を作製した。
「比較例5」
NH水の投入量を0.58gとしたこと以外は実施例4と同様にして、比較例5の正極材料15を得た。
正極材料15を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池15を作製した。
「比較例6」
NH水の投入量を1.16gとしたこと以外は実施例4と同様にして、比較例6の正極材料16を得た。
正極材料16を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池16を作製した。
「比較例7」
NH水の投入量を0.29gとしたこと以外は実施例7と同様にして、比較例7の正極材料17を得た。
正極材料17を用いたこと以外は実施例7と同様にして、比較例7のリチウムイオン二次電池17を作製した。
「比較例8」
NH水の投入量を0.58gとしたこと以外は実施例7と同様にして、比較例8の正極材料18を得た。
正極材料18を用いたこと以外は実施例7と同様にして、比較例8のリチウムイオン二次電池18を作製した。
「比較例9」
NH水の投入量を0.72gとしたこと以外は実施例7と同様にして、比較例9の正極材料19を得た。
正極材料19を用いたこと以外は実施例7と同様にして、比較例9のリチウムイオン二次電池19を作製した。
[リチウムイオン二次電池用正極材料およびリチウムイオン二次電池の評価]
実施例1〜9および比較例1〜9のリチウムイオン二次電池用正極材料およびリチウムイオン二次電池について、以下の通り、評価を行った。
(1)比表面積
リチウムイオン二次電池用正極材料のBET比表面積は、測定装置(商品名:HM model−1208、マウンテック社製)を用いて、一点法、相対圧0.29(P/P)にて測定した。
(2)炭素量
リチウムイオン二次電池用正極材料の炭素量は、炭素硫黄分析装置(商品名:EMIA−220V、堀場製作所製)を用いて測定した。
(3)色度b
リチウムイオン二次電池用正極材料のL表色系における色度bは、分光式色彩計(型番:SE−2000、日本電色工業社製)とD65光源を用いた、反射光2度視野測定によって得られた。リチウムイオン二次電池用正極材料の色度bを測定する際には、シャーレに斑なく測定対象の正極材料を載せて、その正極材料の色度bを測定した。
(4)10C放電容量
リチウムイオン二次電池の10C放電容量は、25℃環境下で、電流値1Cにて電池電圧が4.0Vになるまで定電流充電した後、電流値10Cにて電池電圧が2.0Vになるまで放電したときの放電容量とした。
また、一次粒子径が大サイズの実施例1〜3および比較例1〜3では、10C放電容量が100mAh/g以上の場合、入出力特性を○、100mAh/g未満の場合、入出力特性を×と評価した。
一次粒子径が中サイズの実施例4〜6および比較例4〜6では、10C放電容量が105mAh/g以上の場合、入出力特性を○、105mAh/g未満の場合、入出力特性を×と評価した。
一次粒子径が小サイズの実施例7〜9および比較例7〜9では、10C放電容量が103mAh/g以上の場合、入出力特性を○、103mAh/g未満の場合、入出力特性を×と評価した。
このように一次粒子径によって良否の判断を変更している理由は、一次粒子径によって電解液との接触面積や一次粒子バルク内のリチウム拡散距離が異なるため、10C放電容量の絶対値が異なるためである。
「評価結果」
実施例1〜9および比較例1〜9のリチウムイオン二次電池用正極材料およびリチウムイオン二次電池の評価結果を表1に示す。
なお、表1に示す炭素量は、正極活物質100質量部に対する、炭素質被膜を形成する炭素の量(質量部)を示す。また、炭素質被膜の被覆性の尺度となるΔb/BET比表面積比と入出力特性の尺度となる10C放電容量をプロットした図を、図1(一次粒子径:大サイズ)、図2(一次粒子径:中サイズ)、図3(一次粒子径:小サイズ)に示す。
Figure 0006543827
表1および図1の結果から、実施例1〜3と、比較例1〜3とを比較すると、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下の範囲にある実施例1〜3は、比較例1〜3に比べ10C放電容量が100mAh/g以上と優れた入出力特性を示した。特に、Δb/BET比表面積比が0.31である実施例2で最も優れた10C放電容量を示した。
また、表1および図2の結果から、実施例4〜6と、比較例4〜6とを比較すると、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下の範囲にある実施例4〜6は、比較例4〜6に比べ10C放電容量が105mAh/g以上と優れた入出力特性を示した。特に、Δb/BET比表面積比が0.30である実施例5で最も優れた10C放電容量を示した。
表1および図3の結果から、実施例7〜9と、比較例7〜9とを比較すると、Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下の範囲にある実施例7〜9は、比較例7〜9に比べ10C放電容量が103mAh/g以上と優れた入出力特性を示した。特に、Δb/BET比表面積比が0.30である実施例8で最も優れた10C放電容量を示した。
表1、図1、図2および図3の結果から、一次粒子径の大小に依らず、Δb/BET比表面積比は0.25以上かつ0.35以下の範囲で優れた入出力特性を示すことが示唆され、特に、Δb/BET比表面積比が0.27以上かつ0.33以下の範囲で特に優れた入出力特性を示すことが示唆された。実施例1〜9では、必要な正極活物質の電子伝導パスを担保しつつ、リチウムイオンの移動を阻害しないような適度な炭素質被膜の被覆性を実現できたため、このように優れた入出力特性が得られたと推察される。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度、入出力特性に優れるため、移動体用途を初めとするリチウムイオン二次電池の信頼性の進歩に大きく貢献することができる。

Claims (7)

  1. 一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化してなる炭素質被膜とを含む活物質粒子であって、
    Δb/BET比表面積比が0.25以上かつ0.35以下(Δb:前記活物質粒子を大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記活物質粒子の加熱前の色度bとの差)、
    BET比表面積が5m/g以上かつ30m/g以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。
  2. 前記中心粒子がLiFePOであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
  3. 前記炭素質被膜を形成する炭素量が、前記中心粒子100質量部に対して0.6質量部以上かつ3質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
  4. 電極集電体と、該電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備えたリチウムイオン二次電池用正極であって、
    前記正極合剤層は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  6. 一般式LiFePO(0.95≦x≦1.1、0.8≦y≦1.1、0≦z≦0.2、但し、Mは、Mg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種)で表わされる中心粒子と、該中心粒子の表面を被覆する有機化合物が炭化してなる炭素質被膜とを含む活物質粒子を、大気雰囲気下、180℃にて72時間加熱した後のL表色系における色度bと前記活物質粒子の加熱前の色度bとの差を、前記活物質粒子の加熱前のBET比表面積で除した値により、前記炭素質被膜による前記中心粒子の被覆性を評価することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法。
  7. 前記中心粒子がLiFePOであることを特徴とする請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料の評価方法。
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