以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[1]本発明の実施形態に係る入力装置における処理の概要(本発明の実施形態に係る判定方法に係る処理の概要)
上述したように、静電容量式の入力装置(以下、単に「入力装置」と示す。)では、例えば、指などの操作体による操作によって生じる電極の静電容量の変化が検出されることによって、電極に対応する静電センサに対して操作が行われているか否かが判定される。また、上述したように、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合には、操作体以外の要因による静電容量の増加によって、入力装置において誤判定が生じる恐れがある。
図1は、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加しない場合における操作の判定の一例を説明するための説明図である。また、図2は、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合における操作の判定の一例を説明するための説明図である。
図1、図2に示す“Cp”は、電極に対応する寄生容量を示しており、図1、図2に示す“Cf”は、操作体による操作により増加する静電容量の増加量を示している。また、図2に示す“Ct”は、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により増加する静電容量の増加量を示している。
また、図1、図2に示す“判定閾値”は、操作が行われたか否かを判定するための閾値である。
また、図1、図2に示す“ON”は、電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定される状態を示し、図1、図2に示す“OFF”は、電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定されない状態を示している。
まず、図1を参照して、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加しない場合について説明する。
ある電極に対応する静電センサに対して操作体による操作が行われると、操作体による操作により、検出される電極の静電容量は増加する(図1に示す“Cp”から“Cp+Cf”への増加。)。入力装置は、検出される電極の静電容量が判定閾値以上となった場合(または、検出される電極の静電容量が判定閾値より大きくなった場合)に、当該電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定する。
また、上記静電センサに対して操作体による操作が行われなくなると、操作体による操作が行われなくなることにより、検出される電極の静電容量は減少する(図1に示す“Cp+Cf”から“Cp”への減少。)。入力装置は、検出される電極の静電容量が判定閾値より小さくなった場合(または、検出される電極の静電容量が判定閾値以下となった場合)に、当該電極に対応する静電センサに対して操作が行われなくなったと判定する。
例えば図1に示すように、入力装置では、判定閾値を用いた閾値処理により、操作体による操作によって生じる電極の静電容量の変化を検出することによって、電極に対応する静電センサに対して操作が行われているか否かが判定される。
次に、図2を参照して、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合について説明する。
ある電極に対応する静電センサに対して操作体による操作が行われると、図1に示す例と同様に、操作体による操作により、検出される電極の静電容量は増加する(図2に示す“Cp”から“Cp+Cf”への増加。)。入力装置は、検出される電極の静電容量が判定閾値以上となった場合(または、検出される電極の静電容量が判定閾値より大きくなった場合)に、当該電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定する。
ここで、例えば操作体が有する熱などに起因する温度変化により、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合には、検出される電極の静電容量は、さらに増加する(図2に示す“Cp+Cf”から“Cp+Cf+Ct”への増加。)。
また、上記静電センサに対して操作体による操作が行われなくなると、操作体による操作が行われなくなることにより、検出される電極の静電容量は減少する(図2に示す“Cp+Cf+Ct”から“Cp+Ct”への減少。)。
図2に示すように、操作体による操作が行われなった後の減少後の静電容量(図2に示す“Cp+Ct”)が判定閾値より大きい場合には、入力装置では、操作体による操作が行われていないにも関わらず、電極に対応する静電センサに対して操作が行われていると判定される。よって、図2に示すように、温度変化などの操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合には、操作体以外の要因による静電容量の増加によって、入力装置において誤判定が生じる恐れがある。
ここで、例えば図2に示す“Cp+Cf”から“Cp+Cf+Ct”への増加のような、操作が行われたと判定された後に検出される電極の静電容量の増加が、静電センサに触れる操作体の面積などの操作体に起因するものであるのか、または、操作体以外の要因に起因するものであるのかを判別することは、困難である。
また、上記操作体が有する熱などに起因する温度変化などの操作体以外の要因による、電極の静電容量の増加に係る特性は、例えば、電極の寄生容量などにより、電極ごとに異なりうる。よって、温度変化などの操作体以外の要因による電極の静電容量の増加に係る特性を、一意に特定することは、困難である。
そこで、本発明の実施形態に係る入力装置は、操作が行われたと判定された電極について、操作体以外による電極の静電容量の変化分を補正して、電極に対する操作を判定する。以下では、操作が行われたと判定された電極を「判定電極」と示し、操作が行われたと判定されていない電極を「非判定電極」と示す場合がある。
本発明の実施形態に係る操作体としては、例えば、本発明の実施形態に係る入力装置の利用者の指などの利用者の体の一部分や、ペン型のオブジェクトなどの任意のオブジェクトが、挙げられる。
本発明の実施形態に係る入力装置における、操作体以外による電極の静電容量の変化分の補正は、例えば、操作が行われたと判定された電極の判定閾値を、操作体以外による当該電極の静電容量の変化分補正することによって、行われる。
本発明の実施形態に係る入力装置は、判定電極の判定閾値を補正するための補正値を、検出された非判定電極の静電容量に基づいて算出する。そして、本発明の実施形態に係る入力装置は、算出された補正値を、判定電極の判定閾値に加算することによって、判定電極の判定閾値を補正する。なお、本発明の実施形態に係る補正値の算出方法の一例については、後述する。
上記のように、判定電極の判定閾値を補正するための補正値が、検出された非判定電極の静電容量に基づいて算出されることによって、図2に示す“Ct”のような操作体以外の要因による静電容量の増加を加味した操作の判定閾値の補正が、可能となる。
また、操作体以外の要因による静電容量の増加を加味して補正された判定閾値を用いて、操作が判定されることによって、本発明の実施形態に係る入力装置は、操作体以外の要因による静電容量の増加を加味して、操作が行われたか否かを判定することができる。
したがって、本発明の実施形態に係る入力装置は、操作体による操作の判定精度の向上を図ることができる。
[2]本発明の実施形態に係る入力装置の構成例
以下、本発明の実施形態に係る入力装置の構成の一例を説明しつつ、本発明の実施形態に係る入力装置における処理について、より具体的に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る入力装置100の構成の一例を示すブロック図である。入力装置100は、例えば、スイッチ部102と、検出部104と、処理部106とを備える。
また、入力装置100は、例えば、制御部(図示せず)や、ROM(Read Only Memory。図示せず)、RAM(Random Access Memory。図示せず)、記憶部(図示せず)などを備えていてもよい。入力装置100は、例えば、データの伝送路としてのバスにより上記各構成要素間を接続する。入力装置100は、例えば、入力装置100が備えているバッテリなどの内部電源から供給される電力、または、接続されている外部電源から供給される電力などによって、駆動する。
制御部(図示せず)は、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路で構成される、1または2以上のプロセッサや、各種処理回路などで構成され、入力装置100全体を制御する。また、制御部(図示せず)は、入力装置100において、例えば処理部106の役目を果たしてもよい。なお、処理部106は、処理部106における処理を実現可能な、専用の回路または汎用の回路(例えば、制御部(図示せず)とは別体のプロセッサなど)で構成することも可能である。
ROM(図示せず)は、例えば、制御部(図示せず)や処理部106が使用する、プログラムや演算パラメータなどのデータを記憶する。RAM(図示せず)は、制御部(図示せず)や処理部106により実行されるプログラムや、処理データなどを一時的に記憶する。
記憶部(図示せず)は、入力装置100が備える記憶手段である。記憶部(図示せず)には、例えば、電極の初期静電容量を示すデータ(後述する)や、アプリケーションソフトウェアなどの、様々なデータが記憶される。なお、電極の初期静電容量を示すデータ(後述する)は、ROMなどの他の記録媒体に記憶されていてもよい。
ここで、記憶部(図示せず)としては、例えば、ハードディスクなどの磁気記録媒体や、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどが挙げられる。また、記憶部(図示せず)は、入力装置100から着脱可能であってもよい。
[2−1]スイッチ部102
スイッチ部102は、複数の電極EA、EB、…を有する。スイッチ部102には、少なくとも2以上の電極が、離隔して設けられる。
電極EA、EB、…は、検出部104における静電容量の検出対象の電極である。電極EA、EB、…には、例えば後述する電圧源110A、110B、…から駆動信号が印加される。
電極EA、EB、…それぞれは、例えば、入力装置100の利用者が操作することが可能な静電センサ(静電スイッチ)に対応する。つまり、入力装置100は、電極の数に応じた複数の静電センサを有する。
[2−2]検出部104
検出部104は、自己容量方式によって、複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量を検出する。
検出部104は、例えば、電圧源110A、110B、…と、測定回路112A、112B、…と、スイッチング回路SW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6、…と、接地容量Cpa、Cpb、…とを有する。
ここで、図3では、例えば、電圧源110A、測定回路112A、スイッチング回路SW1、SW2、SW3が、電極EAに対応する検出回路に該当する。また、図3では、例えば、電圧源110B、測定回路112B、スイッチング回路SW4、SW5、SW6が、電極EBに対応する検出回路に該当する。
接地容量Cpaは、例えば、電極EAとスイッチング回路SW1との間に接続され、接地容量Cpbは、例えば、電極EBとスイッチング回路SW4との間に接続される。接地容量Cpa、Cpbそれぞれは、寄生容量であってもよいし、キャパシタなどの回路素子であってもよい。接地容量Cpa、Cpb、…は、電極ごとに対応する静電容量である。
以下、電極EAに対応する検出回路を例に挙げて、検出部104の構成の一例を説明する。なお、電極EBなどの他の電極に対応する検出回路は、電極EAに対応する検出回路と同様の構成をとることが可能であるので、説明を省略する。
電圧源110Aは、電極EAを駆動させるための駆動信号(電圧信号)を出力する。なお、電圧源110Aは、入力装置100の外部の電圧源であってもよい。また、電圧源110Aと、電圧源110B、…などの他の電極に対応する電圧源の一部または全部とは、同一の電圧源であってもよい。
測定回路112Aは、例えば、容量の充電時間を測定することによって、静電容量値(自己容量値)を検出する。測定回路112Aは、例えば、1または2以上のコンパレータなどを用いて容量の充電時間を測定し、測定された充電時間から容量値を求める。
なお、測定回路112Aは、上記に示す例に限られない。測定回路112Aは、静電容量値を測定することが可能な任意の方法に対応する構成をとることが可能である。
スイッチング回路SW1、SW2、SW3は、例えば、スイッチングトランジスタで構成され、印加される信号の信号レベル(電圧レベル)に応じてオン状態(導通状態)またはオフ状態(非導通状態)となる。
スイッチングトランジスタとしては、例えば、バイポーラトランジスタや、TFT(Thin Film Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などのFET(Field-Effect Transistor)が挙げられる。
スイッチング回路SW1、SW2、SW3それぞれのオン状態、オフ状態の切り替えは、例えば、処理部106により行われる。また、スイッチング回路SW1、SW2、SW3それぞれのオン状態、オフ状態の切り替えは、例えば、制御部(図示せず)や、入力装置100と接続されている外部のコントローラなどにより行われてもよい。
なお、スイッチング回路SW1、SW2、SW3は、スイッチングトランジスタに限られず、オン状態とオフ状態とを切り替えることが可能な任意の素子(または回路)であってもよい。
検出部104では、例えば下記のようにスイッチング回路SW1、SW2、SW3それぞれのオン状態、オフ状態が切り替えられることによって、測定回路112Aにおいて電極EAの静電容量値(自己容量値)が検出される。
・スイッチング回路SW1、SW2:オン状態
・スイッチング回路SW3:オフ状態
また、スイッチング回路SW3は、静電容量値の測定の初期化を行うためのスイッチング回路であり、例えば下記のようにスイッチング回路SW1、SW2、SW3それぞれのオン状態、オフ状態が切り替えられることによって、電極EAの静電容量値の測定の初期化が行われる。
・スイッチング回路SW3:オン状態
・スイッチング回路SW1、SW2:オフ状態
検出部104は、例えば図3に示す構成によって、電極EA、EB、…それぞれの静電容量値(自己容量値)を検出する。
なお、検出部104の構成は、図3に示す例に限られない。
例えば、検出部104は、電極EA、EB、…それぞれの静電容量値(自己容量値)を測定することが可能な、任意の構成をとることが可能である。
[2−3]処理部106
処理部106は、検出された複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量の変化に基づいて、複数の電極EA、EB、…それぞれに対する操作を判定する。
処理部106としては、例えば、CPUなどの演算回路で構成される、1または2以上のプロセッサなどが挙げられる。
処理部106は、検出された複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量と、電極EA、EB、…ごとに設定される判定閾値とを比較して、複数の電極EA、EB、…それぞれに対する操作を判定する。
スイッチ部102を構成する複数の電極のうち、操作が行われたと判定された判定電極が存在する場合、処理部106は、判定電極について、操作体以外による判定電極の静電容量の変化分を補正して、判定電極に対する操作を判定する。上述したように、操作体以外による電極の静電容量の変化分の補正は、例えば、操作が行われたと判定された電極の判定閾値を、操作体以外による当該電極の静電容量の変化分、補正することによって、行われる。
また、処理部106は、操作が行われたと判定されていない非判定電極については、判定閾値を補正しない。
処理部106は、判定電極の判定閾値を補正するための補正値を、検出された非判定電極の静電容量に基づいて算出する。そして、処理部106は、算出された補正値を、判定電極の判定閾値に加算することによって、判定電極の判定閾値を補正する。
以下、判定電極が、図3に示す電極EAであり、非判定電極が、図3に示す電極EBである場合を例に挙げて、判定電極の判定閾値を補正するための補正値を算出する処理(以下、「補正値算出処理」と示す。)の一例を説明する。なお、例えば、判定電極が電極EBであり、非判定電極が電極EAである場合など、判定電極および非判定電極の他の組み合わせにおいても、処理部106は、下記に示す例と同様に、補正値を算出することが可能である。
処理部106は、例えば、下記の(1)に示す第1の例に係る補正値算出処理、または、下記の(2)に示す第2の例に係る補正値算出処理を行うことによって、補正値を算出する。
(1)補正値算出処理の第1の例
処理部106は、例えば下記の数式1に示す演算を行うことによって、判定電極の判定閾値を補正するための補正値を算出する。
Cpa’=Cpb’×(Cpa/Cpb)
・・・(数式1)
ここで、上記数式1に示す“Cpa’”は、判定電極の一例である電極EAの判定閾値を補正するための補正値を示している。
また、上記数式1に示す“Cpb’”は、非判定電極の一例である電極EBにおける、検出された静電容量を示している。“Cpb’”は、例えば、温度変動後の電極EBにおける静電容量を示している。
また、上記数式1に示す“Cpa”は、判定電極の一例である電極EAの初期静電容量を示しており、上記数式1に示す“Cpb”は、非判定電極の一例である電極EBの初期静電容量を示している。
判定電極の初期静電容量としては、例えば、予め設定されている静電容量、または、判定電極が操作されていないときに検出された静電容量が、挙げられる。また、非判定電極の初期静電容量としては、例えば、予め設定されている静電容量、または、非判定電極が操作されていないときに検出された静電容量が、挙げられる。
予め設定されている静電容量としては、例えば、入力装置100の製造時などに、複数の電極EA、EB、…それぞれに対して設定された静電容量が、挙げられる。
また、判定電極が操作されていないときに検出された静電容量としては、例えば、入力装置100の起動時(例えば、主電源がオン状態となったときなど。以下、同様とする。)に検出された、判定電極に該当する電極の静電容量が、挙げられる。なお、判定電極が操作されていないときに検出された静電容量は、上記に示す例に限られない。例えば、判定電極が操作されていないときに検出された静電容量は、判定電極に該当している電極が、非判定電極である任意のタイミングにおいて検出された静電容量であってもよい。
また、非判定電極が操作されていないときに検出された静電容量としては、例えば、入力装置100の起動時に検出された、非判定電極に該当する電極の静電容量が、挙げられる。なお、非判定電極が操作されていないときに検出された静電容量は、上記に示す例に限られない。例えば、非判定電極が操作されていないときに検出された静電容量は、非判定電極に該当している電極が、非判定電極である任意のタイミングにおいて検出された静電容量であってもよい。
処理部106は、例えば、記憶部(図示せず)などの記録媒体に記憶されている初期静電容量を示すデータを読み出すことによって、判定電極の初期静電容量と、非判定電極の初期静電容量とをそれぞれ取得する。本発明の実施形態に係る初期静電容量を示すデータは、例えば、電極EA、EB、…ごとのデータであってもよいし、電極を示すIDと初期静電容量とが電極EA、EB、…ごとに対応付けられているテーブル(またはデータベース)であってもよい。
例えば、判定電極の初期静電容量が予め設定されている静電容量である場合、判定電極に該当する電極に対応する初期静電容量を示すデータは、入力装置100の製造時などに、記録媒体に記録される。また、例えば、非判定電極の初期静電容量が、予め設定されている静電容量である場合、非判定電極に該当する電極に対応する初期静電容量を示すデータは、入力装置100の製造時などに、記録媒体に記録される。
また、入力装置100では、例えば入力装置100の起動時に、複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量が検出される。そして、入力装置100では、複数の電極EA、EB、…それぞれに対して検出された静電容量を示すデータを、初期静電容量を示すデータとして記録媒体に記録する。上記に示す初期静電容量を示すデータを記録媒体に記録させる処理は、例えば、制御部(図示せず)または処理部106によって主導的に行われる。
このとき、電極に対応する初期静電容量を示すデータが、既に記録媒体に存在する場合には、入力装置100は、初期静電容量を示すデータを更新してもよいし、更新しなくてもよい。上記の場合において、電極の初期静電容量を示すデータが更新されるときには、当該電極の初期静電容量は、電極が操作されていないときに検出された静電容量を示すこととなる。また、上記の場合において、電極の初期静電容量を示すデータが更新されないときには、当該電極の初期静電容量は、予め設定されている静電容量、または、電極が操作されていないときに検出された静電容量を示すこととなる。
図4は、本発明の実施形態に係る電極の初期静電容量の一例を示す説明図である。図4に示すAは、電極EAの初期静電容量の一例を示しており、図4に示すBは、電極EBの初期静電容量の一例を示している。
図4に示すように、スイッチ部102を構成する複数の電極の初期静電容量は、異なりうる。なお、スイッチ部102を構成する複数の電極のうちの、一部の電極の初期静電容量、または、全部の電極の初期静電容量が、同一であることが起こりうることは、言うまでもない。
処理部106は、例えば上記数式1に示すように、判定電極の初期静電容量と非判定電極の初期静電容量との容量比を、検出された非判定電極の静電容量に乗算することによって、補正値を算出する。
ここで、非判定電極は、操作が行われたと判定されていない電極であるので、操作体の操作による静電容量の増加の影響を受けない。そのため、例えば上記数式1に示すように、検出された非判定電極の静電容量に基づき補正値を算出することによって、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因による静電容量の変動を、補正値に反映させることができる。
また、上述したように、温度変化などの操作体以外の要因による電極の静電容量の増加に係る特性は、電極によって異なりうる。しかしながら、上記数式1に示すように、判定電極の初期静電容量と非判定電極の初期静電容量との容量比を、検出された非判定電極の静電容量に乗算することによって、“電極によって異なりうる、操作体以外の要因による電極の静電容量の増加に係る特性の影響”を、低減することができる。
したがって、例えば上記数式1により算出された補正値を、判定電極の判定閾値に加算することによって、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により増加する静電容量の増加量の影響を加味した上で、判定電極に対する操作を判定することが、できる。
(2)補正値算出処理の第2の例
例えば、電極EA、EB、…が、基板部分と異なる材料で構成される場合には、材料の違いによって、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により増加する静電容量の増加量が、変動しうる。
そこで、処理部106は、非判定電極の静電容量に加えて、さらに、基板部分に対応する静電容量に基づいて、補正値を算出する。
図5は、本発明の実施形態に係る補正値の算出方法の一例を説明するための説明図である。図5は、基板部分がPCB(Poly Chlorinated Biphenyl)で構成され、電極EAがPCB以外の材料で構成されている場合における、電極および基板部分それぞれの静電容量の一例を示している。図5に示す“Cpx”は、基板部分における静電容量を示している。なお、本発明の実施形態に係る基板部分を構成する材料が、PCBに限られないことは、言うまでもない。
電極EA、EB、…と基板部分とが異なる材料で構成される場合には、例えば図5に示すような基板部分の静電容量の影響を排除することが、操作体による操作の判定精度の向上を図る上で望ましい。
処理部106は、例えば下記の数式2に示す演算を行うことによって、基板部分に対応する静電容量の影響が排除された、判定電極の判定閾値を補正するための補正値を算出する。
Cpa’=(Cpb’−Cpx’)×(Cpa/Cpb)+Cpx
・・・(数式2)
ここで、上記数式2に示す“Cpa’”は、上記数式1と同様に、判定電極の一例である電極EAの判定閾値を補正するための補正値を示している。また、上記数式2に示す“Cpb’”は、上記数式1と同様に、判非判定電極の一例である電極EBにおける、検出された静電容量(温度変動後の静電容量)を示している。
また、上記数式2に示す“Cpa”は、上記数式1と同様に、判定電極の一例である電極EAの初期静電容量を示しており、上記数式2に示す“Cpb”は、上記数式1と同様に、非判定電極の一例である電極EBの初期静電容量を示している。
また、上記数式2に示す“Cpx’”は、基板部分に対応する静電容量を示している。基板部分に対応する静電容量は、例えば、基板部分の静電容量の影響を排除するための電極形状(以下、「ダミー電極」と示す。)を入力装置100に設け、ダミー電極の静電容量が検出されることによって、得られる。つまり、上記数式2に示す“Cpx’”は、検出された基板部分に対応する静電容量(温度変動後の静電容量)に該当する。
図6は、本発明の実施形態に係る補正値の算出方法の一例を説明するための説明図であり、入力装置100に設けられるダミー電極の一例を示している。
また、上記数式2に示す“Cpx”は、ダミー電極の初期静電容量、すなわち、基板部分に対応する初期静電容量を示している。
ダミー電極の初期静電容量としては、例えば、予め設定されている静電容量が挙げられる。また、ダミー電極の初期静電容量は、例えば入力装置100の起動時などに検出される、ダミー電極の静電容量であってもよい。
処理部106は、例えば、判定電極の初期静電容量および非判定電極の初期静電容量と同様に、記録媒体に記憶されている初期静電容量を示すデータを読み出すことによって、ダミー電極の初期静電容量を取得する。
処理部106は、例えば上記数式2に示すように、検出された非判定電極の静電容量から検出された基板部分に対応する静電容量を減算する。また、処理部106は、判定電極の初期静電容量と非判定電極の初期静電容量との容量比を、減算された非判定電極の静電容量に乗算する。そして、処理部106は、基板部分に対応する初期静電容量を加算することによって、補正値を算出する。
ここで、例えば上記数式2に示すように、検出された非判定電極の静電容量から検出された基板部分に対応する静電容量を減算することによって、例えば図5に示すような基板部分の静電容量の影響を排除することが可能となる。
また、上述したように、非判定電極は、操作体の操作による静電容量の増加の影響を受けない。そのため、例えば上記数式2に示すように、検出された非判定電極の静電容量に基づき補正値を算出することによって、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因による静電容量の変動を、補正値に反映させることができる。
また、判定電極の初期静電容量と非判定電極の初期静電容量との容量比を、減算された非判定電極の静電容量に乗算することによって、上記数式1が用いられる場合と同様に、“電極によって異なりうる、操作体以外の要因による電極の静電容量の増加に係る特性の影響”を、低減することができる。
したがって、例えば上記数式2により算出された補正値を、判定電極の判定閾値に加算することによって、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により増加する静電容量の増加量の影響を加味し、かつ、基板部分の静電容量の影響を排除した上で、判定電極に対する操作を判定することが、できる。
処理部106は、例えば、上記(1)に示す第1の例に係る補正値算出処理、または、上記(2)に示す第2の例に係る補正値算出処理を行うことによって、補正値を算出する。
上述したように、処理部106は、算出された補正値を、判定電極の判定閾値に加算することによって、判定電極の判定閾値を補正する。そして、処理部106は、検出された判定電極の静電容量と、補正された当該判定電極に対応する判定閾値とを比較して、当該判定電極に対する操作を判定する。
図7は、本発明の実施形態に係る補正後の判定閾値を用いた操作の判定の一例を説明するための説明図である。図7は、判定電極が図3に示す電極EAであり、上記数式1または上記数式2によって算出された補正値によって判定閾値が補正される場合を示している。
図7に示す“Cpa”は、電極EAに対応する寄生容量を示しており、図7に示す“Cf”は、図1、図2と同様に、操作体による操作により増加する静電容量の増加量を示している。また、図7に示す“Ct”は、図2と同様に、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因により増加する静電容量の増加量を示している。
また、図7に示す“Cpa’”は、上記数式1または上記数式2によって算出された補正値を示している。図7に示すように、算出された補正値が、補正前の判定閾値に加算されることによって、補正後の判定閾値が得られる。
また、図7に示す“ON”は、図1、図2と同様に、電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定される状態を示し、図7に示す“OFF”は、図1、図2と同様に、電極に対応する静電センサに対して操作が行われたと判定されない状態を示している。
電極EAに対応する静電センサに対して操作体による操作が行われると、図1に示す例と同様に、操作体による操作により、検出される電極EAの静電容量は増加する(図7に示す“Cpa”から“Cpa+Cf”への増加。)。処理部106は、検出される電極EAの静電容量が判定閾値以上となった場合(または、検出される電極EAの静電容量が判定閾値より大きくなった場合)に、電極EAに対応する静電センサに対して操作が行われたと判定する。
また、電極EAに対応する静電センサに対して操作が行われたと判定されると、処理部106は、上記数式1または上記数式2の演算を行い、判定電極に該当する電極EAに対応する補正値を算出する。そして、処理部106は、設定されている判定閾値に算出された補正値を加算することによって、判定閾値を補正する(図7に示す“判定閾値(補正前)”から“判定閾値(補正後)”への補正)。
ここで、例えば操作体が有する熱などに起因する温度変化により、操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合には、図2に示す例と同様に、検出される電極EAの静電容量は、さらに増加する(図7に示す“Cpa+Cf”から“Cpa+Cf+Ct”への増加。)。
また、電極EAに対応する静電センサに対して操作体による操作が行われなくなると、操作体による操作が行われなくなることにより、検出される電極EAの静電容量は減少する(図7に示す“Cpa+Cf+Ct”から“Cpa+Ct”への減少。)。
ここで、電極EAは判定電極に該当する電極であるので、処理部106は、検出された電極EAの静電容量と、補正された判定閾値(図7に示す“判定閾値(補正後)”)とを比較して、当該判定電極に対する操作を判定する。
具体的には、処理部106は、検出された電極EAの静電容量が、補正された判定閾値(図7に示す“判定閾値(補正後)”)より小さくなった場合(または、検出された電極EAの静電容量が補正された判定閾値以下となった場合)に、電極EAに対応する静電センサに対して操作が行われなくなったと判定する。また、処理部106は、検出された電極EAの静電容量が、補正された判定閾値(図7に示す“判定閾値(補正後)”)以上である場合(または、検出された電極EAの静電容量が補正された判定閾値より大きい場合)には、電極EAに対応する静電センサに対して操作が行われていると判定する。
判定閾値の補正は、算出された補正値を設定されている判定閾値に加算することによって行われ、また、補正値は、上述したように、温度変化や湿度変化などの操作体以外の要因による静電容量の変動が反映されたものである。
よって、電極EAに対応する静電センサに対して操作体による操作が行われなった場合、操作体による操作が行われなった後の減少後の静電容量(図7に示す“Cpa+Ct”)は、図7に示すように、補正された判定閾値(図7に示す“判定閾値(補正後)”)より小さくなる。
したがって、処理部106は、判定電極に該当する電極において、温度変化などの操作体以外の要因により電極の静電容量が増加した場合であっても、電極に対応する静電センサに対して操作体による操作が行われているか否かを、より正確に検出することができる。
処理部106は、例えば上記のように、検出された複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量の変化に基づいて、複数の電極EA、EB、…それぞれに対する操作を判定する。また、処理部106は、判定電極に該当する電極については、操作体以外による判定電極の静電容量の変化分を補正して、判定電極に対する操作を判定する。
なお、本発明の実施形態に係る処理部106における処理は、上記に示す例に限られない。
例えば、判定電極に該当する電極に対して、補正された判定閾値を用いた閾値処理が行われた結果、当該電極に対応する静電センサに対して操作が行われなくなったと判定された場合には、処理部106は、“補正された判定閾値を補正前の判定閾値に戻す処理”をさらに行うことが可能である。
処理部106は、例えば、上記操作が行われなくなったと判定された電極の静電容量が、補正前の判定閾値よりも小さくなったと判定された場合に、補正された判定閾値を補正前の判定閾値に戻す。
入力装置100は、例えば図3に示す構成によって、検出された複数の電極EA、EB、…それぞれの静電容量の変化に基づいて、複数の電極EA、EB、…それぞれに対する操作を判定する。また、入力装置100は、操作が行われたと判定された判定電極について、操作体以外による判定電極の静電容量の変化分を補正して、判定電極に対する操作を判定する。
したがって、入力装置100は、操作体による操作の判定精度の向上を図ることができる。
なお、本発明の実施形態に係る入力装置の構成が、図3に示す構成に限られないことは、言うまでもない。
また、例えば、図3に示すスイッチ部102および検出部104と同様の機能を有する入力装置と、処理部106と同様の機能を有する処理装置(例えば、入力装置の外部のマイクロコンピュータなど)とによって、図3に示す入力装置100と同様の機能を有するシステムが、実現される。
[3]本発明の実施形態に係る入力装置の適用例
本発明の実施形態に係る入力装置は、例えば、車などの車両(または、車両システムを構成するUI(User Interface)部分など車両システムの一部)や、携帯電話やスマートフォンなどの通信装置、タブレット型の装置、テレビ受像機、PC(Personal Computer)などのコンピュータなど、様々なシステムや機器に適用することができる。
[4]本発明の実施形態に係るプログラム
コンピュータを、本発明の実施形態に係る入力装置として機能させるためのプログラム(例えば、図3に示す処理部106として機能させるためのプログラム)が、コンピュータにおいてプロセッサなどにより実行されることによって、操作体による操作の判定精度の向上を図ることができる。
また、コンピュータを、本発明の実施形態に係る入力装置として機能させるためのプログラムが、コンピュータにおいてプロセッサなどにより実行されることによって、上述した本発明の実施形態に係る入力装置における処理(例えば、図3に示す処理部106における処理)によって奏される効果を、奏することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。