JP6541252B2 - 医薬用乳化製剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
内水相が薬剤含有水溶液であり、かつ、界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が油相中に含有されてなるw/o油滴が外水相中に分散された血管注射用のw/o/w型エマルション製剤であって、
前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレンの付加モル数が1以上9以下であり、
前記外水相は、浸透圧が0.9%NaCl相当未満の水溶液であり、
前記内水相の浸透圧が前記外水相の浸透圧と等しいことを特徴としている。
この特徴によれば、油性界面活性剤として酸化エチレンの付加モル数が低いポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用することにより、酸化エチレンの付加位置や重合度の違いによる分子の立体構造のばらつきが少なくなり、安定した単分散性のw/o/w型エマルション製剤とすることができるとともに、油相を介した外水相と内水相間での薬剤の移動が可能であることから体内に投与された後に内水相の薬効成分を徐放させることができる。また、血管中に放出されるw/o/w型エマルション製剤は、外水相が血液に置き換わり、浸透圧の低い内水相の溶液が油相を介して血液中へ漸次移行することにより内水相中の薬剤含有水溶液を効率よく徐放することができる。
この特徴によれば、界面活性剤を、酸化エチレンを付加することができる複数の位置に略均等に、あるいは一定位置に付加されて立体構造の近似したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とすることができるため、より安定した単分散性のw/o/w型エマルション製剤とすることができるとともに、体内に投与された後に内水相の薬効成分を徐放させることができる。
この特徴によれば、油性界面活性剤がw粒子及びw/o粒子を十分に被覆し長時間安定した単分散性のw/o/w型エマルション製剤とすることができる。
この特徴によれば、w/o粒子が血管を通りやすく、かつ、十分に薬効成分を徐放することができる大きさとすることができる。
この特徴によれば、浸透圧の低い外水相の溶液が油相を介して内水相へ移行することにより、w粒子が膨張して薬剤含有水溶液の容量を増加させ、血管中に放出されるw/o/w型エマルション製剤による内水相の徐放時間を長くすることができる。
(1)前記第一のシリンジと前記第二のシリンジの各プランジャーを移動させることにより前記第一のシリンジの油相と前記第二のシリンジの内水相を前記流路aと前記流路bを通過させてなる一次乳化物を前記第二のシリンジに回収し、
(2)前記第二のシリンジと前記第三のシリンジの各プランジャーを移動させることにより前記第二のシリンジの一次乳化物と前記第三のシリンジの外水相を前記流路bと前記流路cを通過させて二次乳化物とするとともに、
前記流路a若しくは前記流路aの端部と第一のシリンジとを接続可能なコネクター
及び/又は
前記流路c若しくは前記流路cの端部と第三のシリンジとを接続可能なコネクター
には多孔体が設置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、3以上の流路の制御が可能な活栓を用いて、複数の貫通孔をもつ多孔体を通過させて効率よく一度に一次乳化物や二次乳化物を形成することができる。
この特徴によれば、開孔から射出される粒子同士が合体せずに、連続相中に分散させることができる。
この特徴によれば、多孔体を通過する液体と多孔体が反発しあって液体が多孔体内で球状態に成形されやすく、粒子同士が合体せずに射出した粒子の状態で連続相中に分散させることができるとともにエマルション転相を防ぐことができる。
(1)前記第三のシリンジの外水相を前記流路cに注入して、介する前記多孔体を該外水相で予め濡らすとともに、該流路cのエア抜きを行い、
(2)前記第一のシリンジの油相を前記流路aに注入して、介する前記多孔体を該油相で予め濡らすとともに、前記流路aと前記流路bを該油相で満たし、
(3)前記流路bに内水相の充填された前記第二のシリンジを接続することを特徴としている。
この特徴によれば、製造される乳化物に空気が混入することがなく、また流路内の各多孔体が、製造される乳化物の連続相で予め湿潤されることになりエマルション転相を防ぐことができる。
図1に示されるように、本実施例の乳化物製剤は、抗がん剤水溶液w1が油相o中に分散されたw/o油滴が、更に外水相w中に分散されたw/o/w型エマルションである。該w/o/w型エマルションは、特に、肝細胞がん治療のために肝動脈血管にマイクロカテーテルを通して注入される肝動脈医薬用乳化製剤である。なお、w/o/w型エマルションは、肝細胞がん治療のみに使用されることに限られず、例えば、その他のがん治療などに用いられてもよく、また、身体に投与されるものであればよい。
理想的なw/o/w型エマルション製剤について述べると、主たる治療目的で薬効性を有する医薬品を内水相w1に用いる場合、外水相wに分散するw/o粒子において、粒子内に高濃度で封入される内水相w1は、製剤を投与して目的部位に到達して初めて内水相w1が油相oを介して染み出て、疾患部に対して薬効を奏するという機序が理想的である。これは内水相w1の徐放特性を活かした治療効果が期待できるものである。これに対し、w/o/w型エマルションを製造するときには、内水相w1は外水相w側へ染み出ないことが理想的である。
図2(a)に示すように、w/o/w型エマルションの製造に使用する器具は、医療用の三方活栓4、多孔体搭載メス−メス乳化デバイス5、多孔体搭載オス−メス乳化デバイス6、注射用シリンジ1,2,3である。三方活栓4は、三方活栓オスコネクター4a、三方活栓メスコネクター4b,4c、コック4dとからなる。多孔体搭載メス−メス乳化デバイス5は、乳化デバイスメスコネクター5a,5aの中央に多孔体s1が装備されたものであり、乳化デバイスメスコネクター5a,5aは、注射用シリンジ1,2,3や三方活栓オスコネクター4aに接続可能となっている。多孔体搭載オス−メス乳化デバイス6は、乳化デバイスメスコネクター6aと乳化デバイスオスコネクター6bの中央に多孔体s2が装備されたものであり、乳化デバイスメスコネクター6aは注射用シリンジ1,2,3に、乳化デバイスオスコネクター6bは三方活栓メスコネクター4b,4cに接続可能となっている。注射用シリンジ1,2,3は、10cc容量の液体を収容可能でありその先端を三方活栓メスコネクター4b,4c、乳化デバイスメスコネクター5a又は乳化デバイスメスコネクター6aに接続可能となっている。
w/o/w型エマルション製造の前準備について図3を用いて説明する。まず、三方活栓4に接続する各注射用シリンジ1,2,3に、それぞれ内水相w1、油相o、外水相wを収容する(図示省略)。次に(a)に示すように三方活栓メスコネクター4cと注射用シリンジ3を多孔体搭載オス−メス乳化デバイス6を介して連結させる。三方活栓4のコック4dを三方活栓オスコネクター4a側に切り替え、注射用シリンジ3内の外水相wをプランジャーP3を矢印方向へ押圧して多孔体s2を外水相wで湿潤させると同時に、二次乳化用流路b−cの少なくとも三方活栓メスコネクター4c内流路のエア抜きを完了する。なお、二次乳化用流路b−cとは、三方活栓メスコネクター4b内の流路と三方活栓メスコネクター4c内の流路と多孔体搭載オス−メス乳化デバイス6内の流路とからなる。
次に、w/o/w型エマルションの製造方法について図4を用いて説明する。先ず、(a)のように三方活栓4のコック4dを注射用シリンジ3側に切り替えた状態で、プランジャーP2を押圧して注射用シリンジ1内に内水相w1と油相oを収容する。この時点で、注射用シリンジ1を振とうすることで、内水相w1と油相oを事前に粗混合させ、次いで注射用シリンジ1,2の各プランジャーP1、P2を交互に往復移動させる。これらの液体は矢印の一次乳化用流路a−bを通って多孔体s1を介してポンピングにより乳化(以下、「ポンピング乳化」という)され、一次乳化物であるw/o型エマルションwoが製造される。ポンピング回数は、目的の一次乳化物を得るために適宜調整するものでことができるが、例えば、多孔体s1に約10パス〜30パス(「1パス」とは、流路を1回通過させることをいう)通過させることで所望の一次乳化物を製造することができる。なお、製造したw/o型エマルションwoは注射用シリンジ1に収容しておく。
次に、本発明に係るw/o/w型エマルション製剤の油相に、医薬品添加物とされている表1に示す界面活性剤のうちNo.3、4、5、7、8、9を用いて、w/o/w型エマルションの安定性と単分散性について評価した。
表1のNo.4、5、7、8をw/o/w型エマルションの油相用として使用するために、先ず一次乳化w/o型エマルションで乳化安定性を確認した。乳化内容は、内水相に20%乳糖水溶液3mlで、油相用油脂に医薬用油性造影剤のヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル(商品名「リピオドール」:ゲルべ・ジャパン(株)製、以下、単に「リピオドール」という)5mlを使用し、当該界面活性剤は、前記油脂5mlに対し、10wt%の0.5gを添加した。乳化方法は、スターラー900rpm、3分間の撹拌で簡易的に評価した。その結果は、図5の写真に示すように、(a)の乳化直後は均一にw/o型エマルションが得られたように見られるが、静置3日後の(b)に示すように、No.4(SL−10)、No.5(SO−10V)、No.8(HCO10)は破線で示すように2層分離することが目視でも確認され、乳化安定性が悪いことが明確となった。これらに対し、No.7(HCO5)は、3日経過後も分離層は現れず安定したw/o型エマルションが得られ、顕微鏡下でも容易に1〜3μmの微細w粒子が得られていることが確認できた。このように、医薬品添加物の油性界面活性剤であっても、w/o/w型エマルションを形成するのに重要な一次乳化w/o型エマルションの安定性に優れているのは、同じポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系であっても、HCO10は安定性がなく、HCO5であることが分かる。なお、HCO10は2層分離することが確認されたが、HCO20及びHCO30について追加実験を行ったところ、HCO10と同様に2層に分離することが確認できたため、HCO20及びHCO30は、一次乳化w/o型エマルション形成においてはHCO10と同様の性質をもつ界面活性剤であるということができる。
w/o/w型エマルション製剤を製造するために、油相のリピオドールに、表1のNo.7、8、9のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系であるHCO5、HCO10、HCO40と、特許文献1記載のw/o/w型エマルションを形成するのに優れた安定性と単分散性を示す油性界面活性剤であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名「CR−310」:阪本薬品工業(株)製など、以下、単に「PGCR」という)を用いた場合の単分散性について比較実験評価を行った。その結果をそれぞれ表2の実験例2、比較例21、比較例22、比較例23に示す。
次に、薬効機序について説明すると、薬効性のある内水相を高濃度で内封したw/o/w型エマルション製剤が、目標とする部位において高確率で奏効するためには、前述のとおり、エマルション製造時には内水相が外水相側へ染み出さず、投与時には例えば血液中或いは患部組織中では、w/o粒子の内水相が外相側へ染み出る働きをすることが理想であり、つまり、そもそもw/o/w型エマルション製剤の内水相と外水相の溶液の移動が顕著に起こる油性界面活性剤でなければならない。要するに、w/o粒子径が、w/o/w型エマルション製造中又は製造後から投与直前までの間に肥大化すれば、内水相が外水相の溶液を吸収して膨潤したことが言えるため、内水相と外水相の溶液の移動が双方に起こり得ることとなり、前述の理想のw/o/w型エマルションであるということが言える。
(1.8%NaCl×3ml+0.4%NaCl×7.5ml)/(3ml+7.5ml)=0.8%NaCl相当
前述した実験例は、SPG膜乳化においても静的な直接膜乳化法であり、つまり分散相w/o型エマルションをSPG膜を介して連続相側へ圧入分散させる方法で、油相用界面活性剤の評価を行った。これに対し、当実験例では、前述で説明した図2〜図4に示す通りの三方活栓を用いた方法(以下、「三方活栓法」という)のように、SPG膜乳化においても動的な透過膜乳化法である所謂分散相と連続相を予め粗混合して、連続相中に粗分散した分散相液滴を、後にSPG膜を介して整粒する方法(当実験例では、前述のポンピング乳化法)で実施した。また、当実験例では乳化デバイス5に装備した一次乳化用SPG膜は50μm疎水性、乳化デバイス6に搭載した二次乳化用SPG膜は100μm親水性のそれぞれSPG膜多孔体を用いて、本発明に係る三方活栓法により得られるw/o/w型エマルション形成のための油相用界面活性剤の評価を行った。
前述の実験例に引き続き、内水相の処方を変えた場合の評価を行いその結果を表5に示す。内水相を20%乳糖水溶液とした場合、HCO5とPGCRはw/o/w型エマルション形成には問題なく使用でき、安定した単分散のw/o/w型エマルションを得ることができた。これに対し、HCO10とHCO40は前記比較例42のHCO40同様、2ピークの多分散粒度分布となり油相に添加する界面活性剤として相応しくない結果となった。
更に、内水相にボロン化合物であるボロカプテイト(BSH:borocaptate)水溶液を用いた場合の評価を行いその結果を表6に示す。実験例1と同じSPG直接膜乳化法の静的な膜乳化手段で行ったにもかかわらず、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系であっても、HCO40は、内水相の処方が変わると微粒子を多く発生させてしまう結果となり、油相に添加する界面活性剤として相応しくないことが確認できた。これに対し、HCO5は理想の安定した単分散のw/o/w型エマルションを得ることができた。
w1 内水相(抗がん剤水溶液)
w 外水相
wo w/o型エマルション
wow w/o/w型エマルション
1,2,3 注射用シリンジ
P1,P2,P3 プランジャー
4 三方活栓
4a 三方活栓オスコネクター
4b,4c 三方活栓メスコネクター
4d コック
5 多孔体搭載メス−メス乳化デバイス
5a 乳化デバイスメスコネクター
6 多孔体搭載オス−メス乳化デバイス
6a 乳化デバイスメスコネクター
6b 乳化デバイスオスコネクター
s1,s2 多孔体
a−b 一次乳化用流路
b−c 二次乳化用流路
Claims (9)
- 内水相が薬剤含有水溶液であり、かつ、界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が油相中に含有されてなるw/o油滴が外水相中に分散された血管注射用のw/o/w型エマルション製剤であって、
前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレンの付加モル数が1以上9以下であり、
前記外水相は、浸透圧が0.9%NaCl相当未満の水溶液であり、
前記内水相の浸透圧が前記外水相の浸透圧と等しいことを特徴とする医薬用乳化製剤。 - 前記界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレンの付加モル数が4以上6以下であることを特徴とする請求項1に記載の医薬用乳化製剤。
- 前記界面活性剤を前記油相の0.1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の医薬用乳化製剤。
- 前記w/o/w型エマルション製剤のw/o粒子は、その径が1μm〜400μmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医薬用乳化製剤。
- 前記w/o/w型エマルション製剤の仕込み時の前記内水相の浸透圧が前記外水相の浸透圧以上であり、前記内水相と前記外水相が浸透圧平衡することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医薬用乳化製剤の製造方法。
- 3以上の流路の制御が可能な活栓を用い、該活栓の流路a側には前記油相が充填された第一のシリンジが接続され、流路b側には前記内水相が充填された第二のシリンジが接続され、流路c側には前記外水相が充填された第三のシリンジがそれぞれ接続されており、
(1)前記第一のシリンジと前記第二のシリンジの各プランジャーを移動させることにより前記第一のシリンジの油相と前記第二のシリンジの内水相を前記流路aと前記流路bを通過させてなる一次乳化物を前記第二のシリンジに回収し、
(2)前記第二のシリンジと前記第三のシリンジの各プランジャーを移動させることにより前記第二のシリンジの一次乳化物と前記第三のシリンジの外水相を前記流路bと前記流路cを通過させて二次乳化物とするとともに、
前記流路a若しくは前記流路aの端部と第一のシリンジとを接続可能なコネクター
及び/又は
前記流路c若しくは前記流路cの端部と第三のシリンジとを接続可能なコネクター
には多孔体が設置されていることを特徴とする請求項5に記載の医薬用乳化製剤の製造方法。 - 前記多孔体は、開孔の大きさと、該開孔同士の隣り合う距離とを調節して粒子同士が干渉しない構造となっていることを特徴とする請求項6に記載の医薬用乳化製剤の製造方法。
- 前記多孔体は、該多孔体を通過して製造される乳化物の連続相が水相である場合は親水性、油相である場合は疎水性であることを特徴とする請求項6または7に記載の医薬用乳化製剤の製造方法。
- 前記乳化物を製造する前に、
(1)前記第三のシリンジの外水相を前記流路cに注入して、介する前記多孔体を該外水相で予め濡らすとともに、該流路cのエア抜きを行い、
(2)前記第一のシリンジの油相を前記流路aに注入して、介する前記多孔体を該油相で予め濡らすとともに、前記流路aと前記流路bを該油相で満たし、
(3)前記流路bに内水相の充填された前記第二のシリンジを接続する
ことを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の医薬用乳化製剤の製造方法。
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