JPH1112160A - 水溶性抗腫瘍薬含有エマルジョン型製剤およびキット - Google Patents

水溶性抗腫瘍薬含有エマルジョン型製剤およびキット

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JPH1112160A
JPH1112160A JP9162990A JP16299097A JPH1112160A JP H1112160 A JPH1112160 A JP H1112160A JP 9162990 A JP9162990 A JP 9162990A JP 16299097 A JP16299097 A JP 16299097A JP H1112160 A JPH1112160 A JP H1112160A
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water
emulsion
preparation
kit
contrast agent
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JP9162990A
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Hitoshi Kato
仁 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 0.1mg/ml以上で水に溶解する水
溶性抗腫瘍薬、非イオン性造影剤および油性造影剤を含
有するエマルジョン型製剤およびキット。 【効果】 本発明のエマルジョン型製剤は優れた抗腫瘍
作用を有し、腫瘍治療、特に肝細胞癌の治療における肝
動注化学塞栓療法に使用することができる。当該製剤は
エマルジョン型であるため腫瘍組織内に均等に分散し、
かつ長時間腫瘍局所に滞留して持続的で高い治療効果を
与えることができる。しかも粒子径がコントロールしや
すく安定性が高い。また本発明の製剤は簡便な操作で調
製することができ、肝動注化学塞栓療法で用いる抗腫瘍
剤として有利に使用することができる。また界面活性
剤、乳化剤等を含まないため生体への安全性が高い。さ
らに、腫瘍部位に集積した本発明の製剤を造影すること
により腫瘍の診断および腫瘍治癒状況の確認を行うこと
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶性抗腫瘍薬、
非イオン性造影剤、および油性造影剤を含有するエマル
ジョン型製剤および該製剤調製用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】肝細胞癌に対する治療法として、近年、
癌組織の主要な栄養血管である肝動脈を塞栓させるTA
E療法(transcatheter arterial embolization :経カ
テーテル動脈塞栓術)が普及している。さらに、血管カ
テーテルを用いて抗腫瘍剤を癌組織に投与した後に肝動
脈の塞栓を行う肝動注化学塞栓療法も頻繁に行われ、高
い治療効果が得られている。本発明者はすでに、上記の
肝動注化学塞栓療法においてシスプラチン、塩酸エピル
ビシン、リピオドール、イオパミドールおよびホスファ
チジルコリンを含有するマルチコンプレックスを調製
し、臨床応用している(Drug Delivery SystemVol.11 N
o.5 September 1996, p355-360; Drug Delivery System
Vol.8 No.6 November 1993, p433-439; Drug Delivery
System Vol.7 No.6 November 1992, p423-429 )。こ
のマルチコンプレックス製剤については、 Drug Delive
ry System Vol.8 No.6 November 1993, p433-439、およ
びDrug Delivery System Vol.7 No.6 November 1992, p
423-429 においてエマルジョンとして記載されている
が、実際には懸濁剤とエマルジョンが混在しているマル
チコンプレックスであることがわかっている。抗腫瘍薬
単独での大量動注one shot療法では標的腫瘍組織におけ
る薬剤濃度が一時的に上昇しても、薬剤が短時間で排出
されてしまう。一方、上記のマルチコンプレックスを用
いた場合には、リピオドールに肝腫瘍に対する選択的腫
瘍集積性があるため速やかに腫瘍組織内に取り込まれ、
またある程度は腫瘍局所に滞留するため、肝細胞癌の治
療に相応の効果をあげているが、なお十分とはいえな
い。また、従来使用されている上記のマルチコンプレッ
クスは調製の方法が複雑であり、均質に調製するために
は熟練を要する。また、懸濁剤とエマルジョンが混在し
ているためエマルジョン単独の製剤に比べると粒子径の
コントロールが困難であり、安定性に劣る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、調製が容易で、上記肝動注化学塞栓療法等にも簡便
に使用することができ、安定でかつ優れた徐放性、滞留
性を有するエマルジョン型の製剤を開発することであ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため鋭意研究を重ね、水溶性抗腫瘍薬、非イ
オン性造影剤、および油性造影剤をエマルジョン化して
調製したエマルジョン型製剤が、極めて高い徐放性およ
び滞留性を発揮することを見い出した。また当該製剤は
調製が簡便であるため、肝動注化学塞栓療法等において
用時に調製する場合でも、容易に均質に調製することが
できる。またエマルジョン型であるため、粒子径がコン
トロールしやすく安定であり、当該製剤は腫瘍組織内に
均等に分散し、長時間腫瘍組織内に留まることができ
る。しかも、上記エマルジョン型製剤は、選択的腫瘍集
積性を有し、且つ非イオン性造影剤および油性造影剤を
含有するので、腫瘍患部に集積した当該エマルジョン型
製剤を造影することによって腫瘍の診断が可能であり、
また造影によって腫瘍治癒の状況を確認することが可能
である。
【0005】すなわち本発明は、(1)0.1mg/m
l以上で水に溶解する水溶性抗腫瘍薬、非イオン性造影
剤、および油性造影剤を含有するエマルジョン型製剤、
(2)水溶性抗腫瘍薬が塩酸ピラルビシンである上記
(1)に記載のエマルジョン型製剤、(3)非イオン性
造影剤がイオパミドールである上記(1)又は(2)に
記載のエマルジョン型製剤、(4)油性造影剤がヨード
化ケシ油脂肪酸エチルエステルである上記(1)〜
(3)のいずれかに記載のエマルジョン型製剤、(5)
0.1mg/ml以上で水に溶解する水溶性抗腫瘍薬、
非イオン性造影剤、および油性造影剤を有するエマルジ
ョン型製剤調製用キット、(6)0.1mg/ml以上
で水に溶解する水溶性抗腫瘍薬と非イオン性造影剤を含
有する配合物、および油性造影剤を有する第2構成物を
有するエマルジョン型製剤調製用キット、(7)水溶性
抗腫瘍薬が塩酸ピラルビシンである上記(5)または
(6)に記載のキット、(8)非イオン性造影剤がイオ
パミドールである上記(5)〜(7)のいずれかに記載
のキット、(9)油性造影剤がヨード化ケシ油脂肪酸エ
チルエステルである上記(5)〜(8)のいずれかに記
載のキット、に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のエマルジョン型製剤は、
0.1mg/ml以上で水に溶解する水溶性抗腫瘍薬、
非イオン性造影剤、および油性造影剤を含有する。当該
エマルジョン型製剤は、各成分をあらかじめ混合し調製
しておいてもよい。また、各成分を別個に、または上記
成分の任意の2成分と他成分とを別個に、または隔絶し
てキットの形態で保存し用時に調製してもよい。例え
ば、当該水溶性抗腫瘍薬(第1キット要素)、非イオン
性造影剤(第2キット要素)、および油性造影剤(第3
キット要素)を別個にキット要素として保存しておき、
用時これらをエマルジョンに調製する態様、少なくとも
水溶性抗腫瘍薬を非イオン性造影剤に溶解させた配合物
(第1+2キット要素)、油性造影剤(第3キット要
素)を別個にまたは隔絶して保存する態様が挙げられ
る。その際、好適には第1〜3キット要素の各々の要素
を注射筒に各々充填して三方活栓で接合し、当該製剤キ
ットとするか、あるいは、第1+2キット要素と第3キ
ット要素とを注射筒に各々充填して実開平5−7328
号公報に記載の薬液混合用連結管を用いてこれらの注射
筒を連結し、当該製剤キットとする。
【0007】本発明で用いられる水溶性抗腫瘍薬は0.
1mg/ml以上で水に溶解する程度の水溶性を有して
いれば特に限定されないが、好ましくは1mg/ml以
上で水に溶解する抗腫瘍薬、より好ましくは10mg/
ml以上で水に溶解する抗腫瘍薬が用いられる。前記水
溶性抗腫瘍薬としては、例えば塩酸ピラルビシン、シス
プラチン、塩酸エピルビシン、塩酸ドキソルビシン等が
挙げられるが、好適には塩酸ピラルビシンを用いる。本
発明のエマルジョン型製剤における該抗腫瘍薬の含有濃
度は、1mg/ml〜20mg/ml、好ましくは5m
g/ml〜10mg/mlである。本発明のキットより
用時調製されたエマルジョン型製剤における該抗腫瘍薬
の含有濃度は1mg/ml〜20mg/ml、好ましく
は5mg/ml〜10mg/mlである。
【0008】本発明に用いられる非イオン性造影剤は特
に限定されないが、上記抗腫瘍薬および後述する油性造
影剤と混合してエマルジョンとした際に安定性が高いこ
とが好ましい。このような条件を満たす非イオン性造影
剤としては、イオパミドール、イオプロミド、イオヘキ
ソール、イオベルソール、イオメプロール、イオトロラ
ン等が挙げられるが、好ましくはイオパミドールを用い
る。
【0009】本発明に用いられる油性造影剤としては、
ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル等が挙げられる
が、好ましくはヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルを
用いる。ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルとしては
例えばリピオドールが挙げられる。特に、肝細胞癌等の
肝腫瘍に対して当該製剤を用いる場合には、肝腫瘍集積
性の高いヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステルを油性造
影剤として使用することが好ましい。
【0010】本発明の製剤における非イオン性造影剤と
油性造影剤の混合比(容量比)は、非イオン性造影剤:
油性造影剤=0.1〜10:1、好ましくは0.5〜
4:1である。本発明のキットより用時調製された製剤
における、非イオン性造影剤と油性造影剤の混合比(容
量比)は、非イオン性造影剤:油性造影剤=0.1〜1
0:1、好ましくは0.5〜4:1である。
【0011】本発明のエマルジョン型製剤およびキット
では、非イオン性造影剤が水溶性抗腫瘍薬を溶解し、ま
た乳化作用、界面活性作用を有するため、乳化剤あるい
は界面活性剤を配合する必要はない。このため本発明の
製剤は生体への安全性が高い。
【0012】本発明のエマルジョン型製剤は、公知の手
法を用いて以下のようにして調製することができる。水
溶性抗腫瘍薬を非イオン性造影剤に溶解させ、次いで油
性造影剤と混合しエマルジョン化する。エマルジョン化
の際には、例えば高圧ホモジナイズ法、振盪乳化法等の
方法を用いて、均一に微粒子化することができる。
【0013】上記各成分を別個に保存するキットにおい
ては、上記と同様にして用時に本発明のエマルジョン型
製剤を調製することができる。また、例えば第1キット
要素、第2キット要素、第3キット要素を注射筒に各々
充填し、三方活栓で接合して当該製剤キットとした場合
には、用時にこの活栓を開き、注射筒のシリンジを交互
に押して第1キット要素、第2キット要素、および第3
キット要素を混合しエマルジョン化することにより、簡
便に本発明のエマルジョン型製剤を調製することができ
る。また、第1+2キット要素と第3キット要素とを注
射筒に各々充填し、前記の実開平5−7328号公報に
記載の薬液混合用連結管により連結して当該製剤キット
とした場合には、用時に上記の薬液混合用連結管を使用
して高圧ホモジナイズ法により第1+2キット要素と第
3キット要素とを混合しエマルジョン化することによ
り、簡便に本発明のエマルジョン型製剤を調製すること
ができる。
【0014】本発明のエマルジョン型製剤、および本発
明のキットから用時調製された製剤は、W/O(water
in oil)型エマルジョン、O/W(oil in water)型エ
マルジョン、または両者が混在する形態のエマルジョン
であり、これらのエマルジョンの平均粒子径は180n
m〜1000μmである。
【0015】本発明の製剤はエマルジョン型であるため
粒子径がコントロールしやすく、また安定性が高いため
腫瘍組織内に均等に分散し、かつ長時間組織内に滞留し
て腫瘍局所に持続的で高い治療効果を与えることができ
る。さらに本発明の製剤は界面活性剤、乳化剤を含まな
いため、生体への安全性が高い。
【0016】本発明の製剤は調製が容易であり、簡便な
操作で均質に調製することができる。このため、肝動注
化学塞栓療法において用いる抗腫瘍剤として有利に使用
することができる。特に本発明のキットは、肝動注化学
塞栓療法を行う際に簡便な操作で本発明の製剤を提供す
ることができるため、有用性が高い。
【0017】本発明の製剤は、優れた抗腫瘍作用を有
し、良性腫瘍、悪性腫瘍、および前癌病変等の腫瘍、具
体的には、例えば肝細胞癌、膵癌、大腸癌、胃癌、肺
癌、白血病、乳癌、脳腫瘍等の治療に使用可能である。
特に、肝細胞癌の治療において患者に肝動注化学塞栓療
法を施す際に、本発明の製剤を肝動注することができ
る。
【0018】肝細胞癌の治療における肝動注化学塞栓療
法の際に、本発明のキットから本発明の製剤を用時調製
して肝動注する場合、別個にあるいは隔絶して保存され
た、例えば第1+2キット要素と第3キット要素とを混
合して本発明の製剤を調製し、上記と同様に肝動注する
ことができる。
【0019】従来肝細胞癌に適用されていた抗腫瘍薬以
外の抗腫瘍薬についても、本発明のエマルジョン型製剤
として製剤化し、例えば肝動注化学塞栓療法により肝細
胞癌の治療に使用可能である。
【0020】本発明の製剤の投与量は、患者の疾患、症
状、年齢、体重、投与方法等によって異なるが、例えば
成人肝細胞癌患者に対して、肝動注化学塞栓療法の際に
経カテーテル投与により動脈内に注入する場合、通常、
1回(one shot)につき、含有される抗腫瘍薬力価に換
算して20〜60mg/Bodyを投与する。
【0021】
【実施例】以下に実施例および試験例を挙げて本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定さ
れるものではない。
【0022】実施例1 本発明のエマルジョン型製剤の
調製 塩酸ピラルビシン10mgをイオパミロン300(日本
シエーリング株式会社)1mlに溶解させた。この薬液
と、リピオドールウルトラフルイド(三井製薬工業株式
会社)1mlを、それぞれ2本のディスポーザブルシリ
ンジ(テルモシリンジ:テルモ)に充填し、三方活栓
(MX433−1R、Medex)で接合した。次に、
双方の注射筒のシリンジを50回(25往復)交互に押
すことでエマルジョン化を行い(高圧ホモジナイズ
法)、本発明の製剤を調製した。次に、リピオドールウ
ルトラフルイドの量を2ml、3ml、4mlに変化さ
せ、上記と同様にしてそれぞれ本発明の製剤を調製し
た。
【0023】実施例2 本発明のキットの調製 塩酸ピラルビシン10mgをイオパミロン300(日本
シエーリング株式会社)1mlに溶解させた。この薬液
と、リピオドールウルトラフルイド(三井製薬工業株式
会社)1mlを、それぞれ2本のディスポーザブルシリ
ンジ(テルモシリンジ:テルモ)に充填し、三方活栓
(MX433−1R、Medex)で接合し、本発明の
キットとした。次に、リピオドールウルトラフルイドの
量を2ml、3ml、4mlに変化させ、上記と同様に
してそれぞれ本発明のキットを製造した。
【0024】試験例1 本発明のエマルジョン型製剤の安定性試験 注射用塩酸ピラルビシン〔ピノルビン(注):メルシャ
ン株式会社−日本化薬株式会社〕に、溶解液としてイオ
パミロン300(IOP300)〔日本シエーリング株
式会社〕を加えて完全に溶解させた。注射用塩酸ピラル
ビシンとイオパミロン300の割合は、注射用塩酸ピラ
ルビシン10mgに対してイオパミロン300を1ml
とした。この薬液1mlと、リピオドールウルトラフル
イド(三井製薬工業株式会社)1mlを、ディスポーザ
ブルシリンジ(ニプロシリンジ,10ml,ロック付:
ニプロ)でそれぞれとり、各々を三方活栓(テルフュー
ジョン,R型,ロック付:テルモ)で接続した。その
後、シリンジを交互に合計50回(往復25回)押すこ
とによりエマルジョンを調製した。次に、イオパミロン
とリピオドールウルトラフルイドの配合量を、イオパミ
ロン−リピオドールウルトラフルイド:1ml−4m
l、2ml−1ml、2ml−2mlに変化させて、上
記と同様の方法でそれぞれエマルジョンを調製した。さ
らに、溶解液をイオパミロン370(IOP370)
〔日本シエーリング株式会社〕、オムニパーク300
(OMN300)〔第一製薬株式会社〕、オムニパーク
240(OMN240)〔第一製薬株式会社〕、オプチ
レイ320(OPT320)〔山之内製薬〕、オプチレ
イ240(OPT240)〔山之内製薬〕に変化させ、
上記と同様の方法で、それぞれエマルジョンを調製し
た。これらの溶解液とリピオドールウルトラフルイドの
配合量は、溶解液−リピオドールウルトラフルイド:1
ml−1ml、1ml−4ml、2ml−1ml、2m
l−2mlに変化させた。上記で得られた各エマルジョ
ンについて、25℃において経時的に、肉眼で観察し、
エマルジョンの状態を調べた。3時間後においても分離
が認められなかったエマルジョンを「安定である(均一
層)」とした。それらの結果を表1に示す。
【0025】試験例2 エマルジョンの型の判定 試験例1で得られた各エマルジョンについて、エマルジ
ョンを水相(溶解液)に滴下したときに、エマルジョン
が丸くなればW/O型、水相に分散すればO/W型であ
るとした。詳細な確認は、色素を用いる方法、導電率を
求める方法によった。その結果も表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】光学顕微鏡下で観察した結果、光を透過す
る球体のみを形成していることが確認されたことによっ
て、当該エマルジョンには不溶性の塩酸ピラルビシンが
存在せず、完全にエマルジョン化されていることを確認
した。また試験例1で得られたエマルジョンについて、
塩酸ピラルビシンを溶解した非イオン性造影剤で40倍
に希釈して試料とし、アマシャム製画像解析装置RAS
−GN3000を用いて粒子径を測定した。その結果、
イオパミロン300:リピオドールウルトラフルイド=
1ml−1mlの場合、エマルジョンの粒子径は0.6
4μmであり、オムニパーク300:リピオドールウル
トラフルイド=1ml−1mlの場合は、0.68μm
であった。24時間室温保存しても、これらの粒子径は
ほとんど変化しなかった。
【0028】試験例3 本発明のエマルジョン型製剤の安全性試験 (1)試験物質 イオパミロン300(日本シエーリング株式会社)ある
いはオムニパーク300(第一製薬株式会社)に塩酸ピ
ラルビシンを溶解させ、この液とリピオドールウルトラ
フルイド(三井製薬工業株式会社)を乳化させ、試験物
質として用いた。塩酸ピラルビシンの最終濃度は5mg
/mlとした。また、対照群には生理食塩液(大塚製薬
株式会社)をそのまま用いた。
【0029】(2)群構成 上記各造影剤とリピオドールウルトラフルイドの混合比
および群構成は以下に示した。 グループ1 生理食塩液 グループ2 イオパミロン300:リピオドールウル
トラフルイド=1:1 グループ3 イオパミロン300:リピオドールウル
トラフルイド=1:4 グループ4 オムニパーク300:リピオドールウル
トラフルイド=1:1
【0030】(3)実験動物 雄性Jcl:Wistar系ラット(日本クレア株式会
社)を使用した。使用時の週齢は7週齢で、体重は22
4−249gであった。動物はブラケットケージ CL
−2315(日本クレア株式会社)に個別に収容し、固
型飼料CE−2(日本配合飼料株式会社)および飲料水
(水道水)を自由に摂取させた。
【0031】(4)投与および採血 ネンブタール腹腔内投与麻酔下で、被験物質0.2ml
/匹をラットに肝動脈内投与し、3時間後、24時間
後、3日後、および7日後に血液を採取した。採血は原
則として尾静脈より行い、7日目のみエーテル麻酔下で
頸静脈より採取した。なお、投与前にもあらかじめ採血
し、0(pre)の試料とした。1回の採血量は約0.
5mlであったが、頸静脈より採血する際は約5mlで
あった。血液を遠心分離(3000rpm、10分)し
た後、得られた血清を測定に用いた。対照群には生理食
塩液を投与した。
【0032】(5)臨床検査 全自動分析装置(COBAS FARA)を用いて、G
OT、GPT、LDH、ALP(レート法)および総ビ
リルビン量(安定化ジアゾ法)の測定を行った。各測定
に用いた試薬キットの名称およびメーカーを以下に示し
た。 GOT:オートパック・GOT opt(ベーリンガー
・マンハイム社) GPT:モノテスト a GPT(OPT)(ベーリン
ガー・マンハイム社) ALP:オートパック・ALP opt(ベーリンガー
・マンハイム社) LDH:モノテスト LDH(ベーリンガー・マンハイ
ム社) 総ビリルビン:T・BIL−T試薬(国際試薬)、総ビ
リルビン標準液(和光純薬)
【0033】(6)結果 上記の検査の結果を表2〜6に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】1)GOT、GPT 生理食塩液および被験物質投与後、いずれも一過性に上
昇し、各投与群とも投与3時間から3日後に最高値を示
し、投与7日後にはpre値と同等のレベルにまで回復
した。 2)ALP 各投与群とも投与による明らかな影響は認められなかっ
た。 3)LDH 各群とも投与後一過性の上昇を示し、投与3時間から3
日後に最高値を示し、7日後には最低となった。生理食
塩液投与群と被験物質投与群との間に差は認められなか
った。 4)総ビリルビン 各時点での測定値には投与の影響は見られなかった。以
上の結果から、本発明のエマルジョン型製剤の安全性に
問題がないことが確認された。
【0040】試験例4 本発明のエマルジョン型製剤の放出試験 薬剤の効果を持続させるためには、周囲組織に徐放的に
拡散しなければならない。そこでエマルジョンからの水
溶性抗腫瘍薬の溶出性について調べるために、本発明の
エマルジョン型製剤について塩酸ピラルビシン放出試験
を行った。その方法を以下に詳述する。注射用塩酸ピラ
ルビシン10mgにイオパミロン300(IOP30
0)1mlを加えて完全に溶解させた。得られた溶液
を、リピオドールウルトラフルイド4mlと乳化させ、
実施例1と同様にして本発明のエマルジョン型製剤を調
製した。試験管に上記のエマルジョン型製剤3mlを入
れ、その上に生理食塩水3mlを重層し25℃で静置し
た。上層を経時的にHPLC法で定量し、塩酸ピラルビ
シンの溶出率(%)を求めた。その結果を図1に示す。
塩酸ピラルビシンの定量は、日抗基(1993)の「塩
酸ピラルビシン−力価試験(液体クロマトグラフ法)」
に準じて行った。カラムはYMC−PackODS A
−312(ワイ・エム・シー)を用い、カラム温度は3
5℃とした。検出器は紫外可視分光光度計検出器を用
い、測定波長は495nmとした。図1に示したよう
に、本発明のエマルジョン型製剤では時間が経過しても
溶出率の増加はほとんどなく、徐放性を示した。
【0041】試験例5 水溶性抗腫瘍薬の安定性試験 抗腫瘍剤がその効果を発揮するためには、抗腫瘍剤が目
的部位、即ち腫瘍組織に到達するまで安定でなければな
らない。水溶性抗腫瘍薬の大部分は水相中に存在してお
り、水相として用いる非イオン性造影剤中での水溶性抗
腫瘍薬の安定性は、エマルジョン中における水溶性抗腫
瘍薬の安定性に影響を及ぼす。そこで水溶性抗腫瘍薬の
非イオン性造影剤中での安定性について検討した。その
方法を以下に詳述する。塩酸ピラルビシンを2mlの溶
解液で溶かし、25℃で静置した。経時的にHPLC法
で定量し、塩酸ピラルビシン残存率(%)および塩酸ピ
ラルビシンの分解物であるドキソルビシンの含量(%)
を求めた。溶解液としては、イオパミロン300(IO
P300)、イオパミロン370(IOP370)、オ
ムニパーク300(OMN300)、オムニパーク24
0(OMN240)、オプチレイ320(OPT32
0)、オプチレイ240(OPT240)を用いた。塩
酸ピラルビシン、ドキソルビシンの定量は、日抗基(1
993)の「塩酸ピラルビシン−力価試験(液体クロマ
トグラフ法)」に準じて行った。カラムはYMC−Pa
ckODS A−312(ワイ・エム・シー)を用い、
カラム温度は35℃とした。検出器は紫外可視分光光度
計検出器を用い、測定波長は495nmとした。得られ
た塩酸ピラルビシン残存率(%)を図2に、ドキソルビ
シン含量(%)を図3に示した。塩酸ピラルビシン残存
率は24時間後においてすべての溶解液(非イオン性造
影剤)で94%以上を維持していた。このことから、非
イオン性造影剤中において水溶性抗腫瘍薬が安定である
ことが示された。
【0042】
【発明の効果】本発明の製剤は優れた抗腫瘍作用を有す
るため、各種の腫瘍の治療、特に肝細胞癌の治療におけ
る肝動注化学塞栓療法に使用することができる。本発明
の製剤はエマルジョン型であるため腫瘍組織内に均等に
分散し、かつ長時間組織内に滞留して腫瘍局所に持続的
で均質な治療効果を与えることができる。しかも粒子径
がコントロールしやすく安定性が高い。また、本発明の
製剤は簡便な操作で均質に調製することができる。この
ため肝動注化学塞栓療法を行う際に用いる抗腫瘍剤とし
て有利に使用することができる。特に本発明のキット
は、迅速かつ簡便な操作で本発明の製剤を調製すること
ができるため、肝動注化学塞栓療法を行う際の有用性が
高い。また当該製剤は界面活性剤、乳化剤を含まないた
め、生体への安全性が高い。しかも、本発明のエマルジ
ョン型製剤は、選択的腫瘍集積性を有し、且つ非イオン
性造影剤および油性造影剤を含有するので、腫瘍患部に
集積した該エマルジョン型製剤を造影することによって
腫瘍の診断が可能であり、また造影によって腫瘍治癒の
状況を確認することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエマルジョン型製剤からの塩酸ピラル
ビシンの溶出率の経時的な変化を示す図である。
【図2】塩酸ピラルビシンを溶解した非イオン性造影剤
における塩酸ピラルビシン残存率(%)の経時的変化を
示す図である。
【図3】塩酸ピラルビシンを溶解した非イオン性造影剤
におけるドキソルビシン含量(%)の経時的変化を示す
図である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.1mg/ml以上で水に溶解する水
    溶性抗腫瘍薬、非イオン性造影剤、および油性造影剤を
    含有するエマルジョン型製剤。
  2. 【請求項2】 水溶性抗腫瘍薬が塩酸ピラルビシンであ
    る請求項1記載のエマルジョン型製剤。
  3. 【請求項3】 非イオン性造影剤がイオパミドールであ
    る請求項1又は2記載のエマルジョン型製剤。
  4. 【請求項4】 油性造影剤がヨード化ケシ油脂肪酸エチ
    ルエステルである請求項1〜3のいずれかに記載のエマ
    ルジョン型製剤。
  5. 【請求項5】 0.1mg/ml以上で水に溶解する水
    溶性抗腫瘍薬、非イオン性造影剤、および油性造影剤を
    有するエマルジョン型製剤調製用キット。
  6. 【請求項6】 0.1mg/ml以上で水に溶解する水
    溶性抗腫瘍薬と非イオン性造影剤を含有する配合物、お
    よび油性造影剤を有する第2構成物を有するエマルジョ
    ン型製剤調製用キット。
  7. 【請求項7】 水溶性抗腫瘍薬が塩酸ピラルビシンであ
    る請求項5または6記載のキット。
  8. 【請求項8】 非イオン性造影剤がイオパミドールであ
    る請求項5〜7のいずれかに記載のキット。
  9. 【請求項9】 油性造影剤がヨード化ケシ油脂肪酸エチ
    ルエステルである請求項5〜8のいずれかに記載のキッ
    ト。
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