以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.車両の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る車両1000の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両1000の概略構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、車両1000は、前輪100,102と、後輪104,106と、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動するモータ108,110,112,114と、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれの車輪速を検出する車輪速センサ116,118,120,122と、ステアリングホイール124と、舵角センサ130と、パワーステアリング機構140と、ヨーレートセンサ150と、加速度センサ160と、外部認識部170と、制御装置200と、を備える。
本実施形態に係る車両1000には、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動するためにモータ108,110,112,114が設けられている。このため、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれについて個別に駆動トルクを制御することができる。従って、前輪100,102又は後輪104,106の左右輪の駆動力配分を制御することによって、ヨーモーメントを発生させることができる。本実施形態では、後輪104,106の左右輪の駆動トルクを個別に制御し、駆動力差を生じさせることによって、ヨーモーメントを発生させる。制御装置200の動作指示に基づいて、後輪104,106に対応するモータ112,114が駆動されることによって、後輪104,106の左右輪の各々の駆動トルクが制御される。それにより、後輪104,106の左右輪の駆動力配分が制御装置200によって制御される。
なお、前輪100,102の左右輪の駆動力配分を制御することによって、ヨーモーメントを発生させるように構成されてもよい。また、前輪100,102及び後輪104,106の双方についてそれぞれ左右輪の駆動力配分を制御することによって、ヨーモーメントを発生させるように構成されてもよい。また、本実施形態に係る車両1000の構成からは、前輪100,102を駆動するモータ108,110又は後輪104,106を駆動するモータ112,114のいずれか一方が省略されてもよい。
パワーステアリング機構140は、ドライバのステアリングホイール124を介した転舵をアシストする。パワーステアリング機構140は、図示しないパワーステアリング制御装置によって算出される基準アシスト量に基づいて、転舵のアシストを行う。基準アシスト量は、ステアリング操舵トルク又は操舵回転速度等のドライバの操舵入力に応じて、算出される。例えば、基準アシスト量として、ドライバによるステアリング操舵トルクが大きいほど、大きな値が算出される。ドライバによるステアリング操舵トルクは、パワーステアリング機構140に設けられるトルクセンサによって検出される。また、パワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストは、例えば、電動モータの駆動によって実現される。本実施形態では、制御装置200によって、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量が調整される。それにより、車両1000の旋回の支援が実現される。
舵角センサ130は、ドライバによるステアリングホイール124の操作に応じたステアリング操舵角θhを検出する。ヨーレートセンサ150は、車両1000の実ヨーレートγを検出する。車輪速センサ116,118,120,122は、車両1000の車両速度Vを検出する。加速度センサ160は、車両1000の加速度を検出する。
外部認識部170は、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、自車両が走行する進行路の形状を示す情報を画像情報として認識することができる。外部認識部170によって取得された車両1000の進行路の形状を示す情報は、制御装置200による演算に用いられる。なお、ナビゲーション情報等の外部から取得される情報に含まれる自車両が走行する進行路の形状を示す情報を利用する場合には、車両1000の構成から外部認識部170は省略されてもよい。
制御装置200は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)並びにCPUの実行において使用するプログラム及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)によって構成される。
制御装置200は、車両1000を構成する各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置200は、制御対象である各アクチュエータに対して電気信号を用いて動作指示を行う。より具体的には、制御装置200は、後輪104,106に対応するモータ112,114の駆動を制御する。それにより、制御装置200は、後輪104,106の左右輪の駆動力配分を制御する。また、制御装置200は、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。本実施形態では、制御装置200による後輪104,106の左右輪の駆動力配分の制御及びパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整の各々によって、車両1000の旋回の支援が実現される。
図2は、本実施形態に係る制御装置200による車両1000の旋回の支援について説明するための模式図である。後輪104,106の左右輪の駆動力配分の制御では、制御装置200により、後輪104,106の左右輪に駆動力差を生じさせることによって、ヨーモーメントを発生させることができる。それにより、車両1000の旋回を支援することができる。図2に示す例では、ドライバの操舵により車両1000が左回りに旋回している。ここで、図2の左側の図に示すように、右側の後輪106に前向きの駆動力を発生させ、左側の後輪104に発生させる駆動力を右側の後輪106に対して抑制させることによって、左回りの旋回を支援する方向にモーモーメントを発生させることができる。それにより、車両1000の左回りの旋回を支援することができる。また、図2の右側の図に示すように、右側の後輪106に前向きの駆動力を発生させ、左側の後輪104に後ろ向きに駆動力を発生させることによって、左回りの旋回を支援する方向にモーモーメントを発生させることができる。それにより、車両1000の左回りの旋回を支援することができる。
また、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整では、ドライバがステアリングホイール124を操作する際に、制御装置200により、ドライバの負荷を減らすように転舵のアシスト量を調整することによって、車両1000の旋回を支援することができる。図2に示す例では、ドライバによってステアリングホイール124が左回りに操作されることによって、車両1000が左回りに旋回している。ここで、ドライバによるステアリングホイール124の左回り方向の操作に必要なトルクを、電動モータ等により、アシストすることによって、車両1000の左回りの旋回を支援することができる。
また、制御装置200は、各センサから出力された情報を当該センサから受信する。制御装置200は、CAN(Controller Area Network)通信を用いて各センサと通信を行ってもよい。なお、本実施形態に係る制御装置200が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。本実施形態に係る制御装置200によれば、操舵支援制御が介入するのに伴う違和感を抑制し、かつドライバのステアリング操舵に対する所定の旋回量を確保しつつ、車両の旋回支援における消費エネルギ量を低減することが可能となる。係る制御装置200の詳細については、後述する。
<2.制御装置の機能構成>
図3は、本実施形態に係る制御装置200の機能構成の一例を示す説明図である。図3に示すように、本実施形態に係る制御装置200は、第1基準ヨーレート(γ_Std1)算出部210と、第2基準ヨーレート(γ_Std2)算出部220と、減算部230と、操安制御部240と、モータ要求トルク算出部250と、パワーステアリング調整部260と、を含む。
(2−1.第1基準ヨーレート算出部)
第1基準ヨーレート算出部210は、車両1000の進行路の曲率R及び車両速度Vに基づいて、進行路に沿って車両1000が走行する場合に車両1000に発生すると予測されるヨーレートに相当する第1基準ヨーレートγ_Std1を算出する。具体的には、第1基準ヨーレート算出部210は、外部認識部170から出力される車両1000の進行路の形状を示す情報に基づいて得られる進行路の曲率R及び車両速度Vを下記の式(1)に代入することにより、第1基準ヨーレートγ_Std1を算出する。第1基準ヨーレートγ_Std1は、車両1000の進行路の形状に関連する第1の状態量の一例である。
(2−2.第2基準ヨーレート算出部)
第2基準ヨーレート算出部220は、ステアリング操舵量及び車両速度Vに基づいて、車両1000に発生しているヨーレートのモデル値に相当する第2基準ヨーレートγ_Std2を算出する。第2基準ヨーレートγ_Std2は、車両1000の走行状態に関連する第2の状態量の一例である。具体的には、第2基準ヨーレート算出部220は、一般的な平面2輪モデルを表す下記の式(2)、式(3)を連立して解くことで、第2基準ヨーレートγ_Std2(式(2)、式(3)におけるγ)を算出する。
なお、変数、定数は以下の通りである。
<変数>
γ:車両ヨーレート
V:車両速度
δ:タイヤ舵角(前輪舵角)
θh:ステアリング操舵角
<定数>
lf:車両重心点から前輪中心までの距離
lr:車両重心点から後輪中心までの距離
m:車両重量
Kf:コーナリングパワー(フロント)
Kr:コーナリングパワー(リア)
Gh:ステアリング操舵角からタイヤ舵角への変換ゲイン(ステアリングギヤ比)
式(2),式(3)のタイヤ舵角δは、直接センシングできないため、第2基準ヨーレート算出部220は、式(4)を用いて、ステアリング操舵角θhを変換ゲインGhで除算することによって、タイヤ舵角δを算出する。変換ゲインGhとして、ステアリングギア比が用いられる。なお、第2基準ヨーレート算出部220は、ステアリング操舵角θhとタイヤ舵角δの関係性を規定する一般的なステアリングモデルを用いて、ステアリング操舵角θhからタイヤ舵角δを算出してもよい。第2基準ヨーレート算出部220は、算出されたタイヤ舵角δ及び車両速度Vを式(2)、式(3)へ代入することにより、第2基準ヨーレートγ_Std2を算出する。
また、第2基準ヨーレート算出部220は、ステアリング操舵量として、パワーステアリング機構140に設けられるトルクセンサによって検出されるステアリング操舵トルクを用いて、第2基準ヨーレートγ_Std2を算出してもよい。具体的には、第2基準ヨーレート算出部220は、ステアリング操舵トルクとタイヤ舵角δの関係性を規定する一般的なステアリングモデルを用いて、ステアリング操舵トルクからタイヤ舵角δを算出する。そして、算出されたタイヤ舵角δ及び車両速度Vを式(2)、式(3)へ代入することにより、第2基準ヨーレートγ_Std2が算出される。
(2−3.減算部)
減算部230は、第1基準ヨーレート算出部210により算出された第1基準ヨーレートγ_Std1から第2基準ヨーレート算出部220により算出された第2基準ヨーレートγ_Std2を減算することによって、γ_Std1とγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdを求める。すなわち、偏差Δγ_Stdは、下記式(5)により求められる。γ_Std1とγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdは、第1の状態量と第2の状態量とを比較して算出される第3の状態量の一例である。
第3の状態量である偏差Δγ_Stdは、進行路に沿って車両1000が走行するために必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量を図る指標として、制御装置200が行う左右輪の駆動力配分の制御及びパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整に用いられる。
なお、本発明の技術的範囲は、第1の状態量及び第2の状態量として、それぞれγ_Std1及びγ_Std2が用いられる例に限定されない。例えば、第1の状態量及び第2の状態量として、それぞれ車両1000の中心の現在位置に対する進行路上の前方の地点の方向を示す値及び車両1000の車体が現在向く方向を示す値が用いられてもよい。その場合、制御装置200は、車両1000の中心の現在位置に対する進行路上の前方の地点の方向と車体が現在向く方向のなす角に基づいて、第3の状態量を算出してもよい。また、第1の状態量及び第2の状態量として、それぞれ進行路上の前方の地点の位置を示す値及び車両1000の車体が現在向く方向上の地点の位置を示す値が用いられてもよい。その場合、制御装置200は、進行路上の前方の地点と車体が現在向く方向上の地点との車両1000の横方向の偏差に基づいて、第3の状態量を算出してもよい。
上記の進行路上の前方の地点は、例えば、車両1000が将来的に到達しうる進行路上の基準点である。また、車体が現在向く方向上の地点は、例えば、外部認識部170により検出される車両前方における所定の注視点である。なお、制御装置200は、車両1000の中心の現在位置に対する進行路上の前方の地点の方向と車体が現在向く方向のなす角又は進行路上の前方の地点と車体が現在向く方向上の地点との車両1000の横方向の偏差をタイヤ舵角δ相当のパラメータに換算することによって、偏差Δγ_Stdに相当する値を、第3の状態量として、算出してもよい。具体的には、タイヤ舵角δとして換算された値、車両速度V及び式(2)、式(3)から得られるγが、偏差Δγ_Stdに相当する値として求められ得る。
(2−4.操安制御部)
操安制御部240は、制御目標ヨーレート(γ_Tgt)算出部241と、減算部243と、フィードバックヨーレート算出部245と、減算部247と、制御目標モーメント算出部249と、を含む。
操安制御部240は、左右輪の駆動力配分を制御するための制御量を算出する。具体的には、操安制御部240は、当該制御量として、車両1000に発生させるヨーモーメントである制御目標モーメントMgTgtを算出し、モータ要求トルク算出部250へ出力する。それにより、算出された制御目標モーメントMgTgtを発生させるための左右輪の駆動力配分がモータ要求トルク算出部250により制御される。また、本実施形態に係る操安制御部240は、第1基準ヨーレートγ_Std1と第2基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdに基づいて、制御目標モーメントMgTgtを調整する。以下、操安制御部240を各機能構成に分けて説明する。
制御目標ヨーレート算出部241は、一般的な平面2輪モデルを表す下記の式(6)から操安制御用の制御目標ヨーレートγ_Tgtを算出する。制御目標ヨーレートγ_Tgtは、平面2輪モデルの式(6)の右辺に各値を代入することによって算出される。式(6)における目標スタビリティファクタSfTgtは、一般的には実車の特性を表す定数として下記の式(7)から算出される。
なお、変数、定数は以下の通りである。
<変数>
γ:車両ヨーレート
V:車両速度
δ:タイヤ舵角(前輪舵角)
<定数>
l:車両ホイールベース
lf:車両重心点から前輪中心までの距離
lr:車両重心点から後輪中心までの距離
m:車両重量
Kf:コーナリングパワー(フロント)
Kr:コーナリングパワー(リア)
式(6)に表される平面2輪モデルは、車両速度V及びステアリング操舵量との関係を目標スタビリティファクタSfTgtによって規定した車両モデルである。式(6)における目標スタビリティファクタSfTgtは、式(7)から算出される定数と異なる値に設定されてもよい。制御目標ヨーレートγ_Tgtは、車両速度V及びタイヤ舵角δを変数として、式(6)から算出される。式(6)のタイヤ舵角δは、上述した第2基準ヨーレートγ_Std2の算出過程と同様に、例えば、式(4)を用いてステアリング操舵角θhを変換ゲインGhで除算することによって算出される。なお、タイヤ舵角δは、ステアリング操舵角θhとタイヤ舵角δの関係性を規定する一般的なステアリングモデルを用いて、ステアリング操舵角θhから算出されてもよい。また、タイヤ舵角δは、ステアリング操舵トルクとタイヤ舵角δの関係性を規定する一般的なステアリングモデルを用いて、ステアリング操舵トルクから算出されてもよい。
なお、操安制御部240で用いる制御目標ヨーレートγ_Tgtは、ステレオカメラなどから構成される外部認識部170により取得され、又はナビゲーション情報等の外部からの情報に含まれる、外部環境に関する情報から算出してもよい。また、操安制御部240で用いる制御目標ヨーレートγ_Tgtは、これらの外界環境に関する情報から算出される制御目標ヨーレートと、ステアリング操舵角θh及び車両速度Vに基づいて、式(4)を用いて算出される制御目標ヨーレートと、を重みづけした状態量から算出してもよい。
減算部243は、第2基準ヨーレートγ_Std2から実ヨーレートγを減算することによって、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとの差γ_diffを求める。差γ_diffは、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとを比較して算出される比較値の一例である。減算部243により求められた差γ_diffは、フィードバックヨーレート算出部245へ入力される。ここで、差γ_diffは路面状況を表すパラメータに相当するため、減算部243は路面状況を表すパラメータを取得する構成要素に相当する。
フィードバックヨーレート算出部245には、第2基準ヨーレート算出部220から第2基準ヨーレートγ_Std2が入力され、ヨーレートセンサ150から実ヨーレートγが入力される。フィードバックヨーレート算出部245は、車両1000に発生しているヨーレートとして、制御目標ヨーレートγ_Tgtと比較するためのフィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。具体的には、フィードバックヨーレート算出部245は、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとの差γ_diffに基づいて、フィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。より具体的には、フィードバックヨーレート算出部245は、差γ_diffが小さい場合は第2の基準ヨーレートγ_Std2の配分を大きくし、差γ_diffが大きい場合は実ヨーレートγの配分を大きくして、第2の基準ヨーレートγ_Std2及び実ヨーレートγからフィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。算出されたフィードバックヨーレートγ_F/Bは、減算部247へ入力される。
フィードバックヨーレート算出部245は、まず、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとの差γ_diffに基づいて、重み付けゲインκを算出する。そして、フィードバックヨーレート算出部245は、下記の式(8)に基づき、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγを重み付けゲインκによって重み付けし、フィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。
図4は、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとの差γ_diffと重み付けゲインκとの関係を表すマップM10の一例を示す説明図である。フィードバックヨーレート算出部245は、例えば、図4に示したマップM10を用いて、差γ_diffに基づいて重み付けゲインκを算出する。図4に示した重み付けゲインκの値は、式(2)、式(3)により表された、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルの信頼度に対応する0〜1の間の値である。第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγとの差γ_diffは、当該車両モデルの信頼度を図る指標として、重み付けゲインκを算出するために用いられる。図4に示すように、差γ_diffの絶対値が小さいほど、重み付けゲインκの値が大きくなるようにマップM10が設定されている。
図4に示すマップM10において、閾値TH1_Pは重み付けゲインκの切り替えの閾値(+側)、閾値TH2_Pは重み付けゲインκの切り替え閾値(+側)、閾値TH1_Mは重み付けゲインκの切り替え閾値(−側)、閾値TH2_Mは重み付けゲインκの切り替え閾値(−側)、をそれぞれ示している。なお、+側の閾値の大小関係は閾値TH1_P<閾値TH2_Pとし、−側の閾値の大小関係は閾値TH1_M>閾値TH2_Mとする。
図4に示すマップM10の領域A1は、差γ_diffが0に近づく領域であり、S/N比が小さい領域や、タイヤ特性が線形の領域(ドライの路面)であり、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルの信頼度は高い。このため、重み付けゲインκ=1として、式(8)より第2基準ヨーレートγ_Std2の配分を100%としてフィードバックヨーレートγF/Bが演算される。これにより、実ヨーレートγに含まれるヨーレートセンサ150のノイズの影響を抑止することができ、フィードバックヨーレートγ_F/Bからセンサノイズを排除することができる。従って、車両1000の振動を抑制して乗り心地を向上することができる。
特に、運転支援制御では、車両1000がコーナーに進入する前の直進状態から、推定走行路に基づいて車両1000が旋回する量を予見的に制御する。従って、車両1000の旋回時のみならず、車両1000の直進状態においても、センサノイズの影響を排除することで、車両1000に振動を生じさせることなく、安定して直進させることが可能である。
このように、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルの信頼度が高い領域は、差γ_diffから指定することができる。図4に示したように、ドライ路面(高μ)走行時であり、かつステアリング操舵量が小さい場面(低曲率での旋回など)においては、重み付けゲインκが1となる様に差γ_diffと重み付けゲインκを関係づけることが、マップM10による係数設定の一例として想定される。なお、上述した平面2輪モデルは、タイヤのスリップ角と横加速度との関係(タイヤのコーナーリング特性)が線形である領域を想定している。タイヤのコーナーリング特性が非線形になる領域では、実車のヨーレートと横加速度がタイヤ舵角やスリップ角に対して非線形になり、平面2輪モデルにより規定されるヨーレートと実車でセンシングされるヨーレートとが乖離する。このため、タイヤの非線形性を考慮したモデルを使用すると、ヨーレートに基づく制御が煩雑になるが、本実施形態によれば、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルの信頼度を差γ_diffに基づいて容易に判定することが可能である。
また、図4に示すゲインマップM10の領域A2は、差γ_diffが大きくなる領域であり、ウェット路面走行時、雪道走行時、または高Gがかかる旋回時などに相当し、タイヤが滑っている限界領域である。この領域では、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルの信頼度が低くなり、差γ_diffがより大きくなる。このため、重み付けゲインκ=0として、式(8)より実ヨーレートγの配分を100%としてフィードバックヨーレートγ_F/Bが演算される。これにより、実ヨーレートγに基づいてフィードバックの精度を確保し、実車の挙動を反映したヨーレートのフィードバック制御が行われる。従って、実ヨーレートγに基づいて車両1000の旋回を最適に制御することができる。また、タイヤが滑っている領域であるため、ヨーレートセンサ150の信号にノイズの影響が生じていたとしても、車両1000の振動としてドライバが感じにくいので、乗り心地の低下も抑止できる。図4に示す低μの領域A2の設定については、設計要件から重み付けゲインκ=0となる領域を決めてもよいし、低μ路面を実際に車両1000が走行した時の操縦安定性能、乗り心地等から実験的に決めてもよい。
また、図4に示すマップM10の領域A3は、線形領域から限界領域へ遷移する領域(非線形領域)であり、実車である車両1000のタイヤ特性も必要に応じて考慮して、第2基準ヨーレートγ_Std2と実ヨーレートγの配分(重み付けゲインκ)を線形に変化させる。領域A1(高μ域)から領域A2(低μ域)への遷移、ないし領域A2(低μ域)から領域A1(高μ域)へ遷移する領域においては、重み付けゲインκの急変に伴うトルク変動、ヨーレートの変動を抑えるため、線形補間で重み付けゲインκを演算する。
また、図4に示すマップM10の領域A4は、実ヨーレートγの方が第2基準ヨーレートγ_Std2よりも大きい場合に相当する。例えば、第2基準ヨーレートγ_Std2の算出に用いられる車両モデルに誤ったパラメータが入力されて第2基準ヨーレートγ_Std2が誤計算された場合等においては、領域A4のマップM10により実ヨーレートγを用いて制御を行うことができる。更に、領域A4のマップM10によれば、フィルタ処理に伴う実ヨーレートγの位相遅れに起因して、一時的に第2基準ヨーレートγ_Std2が実ヨーレートγよりも小さくなった場合においても、実ヨーレートγを用いて制御を行うことができる。なお、重み付けゲインκの設定値の範囲は0〜1の間に限定されるものではなく、車両制御として成立する範囲であれば任意の値を取れる様に構成を変更することも、本発明の技術で成し得る範疇に入る。
減算部247には、制御目標ヨーレート算出部241から制御目標ヨーレートγ_Tgtが入力され、フィードバックヨーレート算出部245からフィードバックヨーレートγ_F/Bが入力される。減算部247は、制御目標ヨーレートγ_Tgtからフィードバックヨーレートγ_F/Bを減算することによって、ヨーレート補正量Δγ_Tgtを求める。すなわち、ヨーレート補正量Δγ_Tgtは、下記の式(9)から算出される。算出されたヨーレート補正量Δγ_Tgtは、制御目標モーメント算出部249へ出力される。ヨーレート補正量Δγ_Tgtは、制御目標ヨーレートγ_Tgtとフィードバックヨーレートγ_F/Bとの比較結果の一例である。
制御目標モーメント算出部249は、減衰制御モーメント算出部249aと、慣性補償モーメント算出部249bと、減衰モーメントゲイン算出部249cと、微分部249dと、微分部249eと、慣性補償モーメントゲイン算出部249fと、加算部249gと、を含む。制御目標モーメント算出部249は、目標ヨーレートγ_Tgtとフィードバックヨーレートγ_F/Bとの差であるヨーレート補正量Δγ_Tgtに基づいて、左右輪の駆動力配分を制御するための制御量として、制御目標モーメントMgTgtを算出する。
制御目標モーメント算出部249は、ヨーレート補正量Δγ_Tgtに基づいて、制御目標モーメントMgTgtを算出するとともに、調整ゲインにより、制御目標モーメントMgTgtを補正することで、低周波のステアリング操舵時の安定性確保と、高周波のステアリング操舵時の車両の応答性能を両立させ、車両旋回時における定常的な挙動と過渡的な挙動の双方の観点から操縦安定性能を制御する。このため、制御目標モーメント算出部249は、車両旋回時の収束性能を向上させるためのパラメータである定常的な目標減衰モーメントMgDampTgtを算出する減衰制御モーメント算出部(定常項算出部)249aと、車両1000のヨー慣性を補償するためのパラメータである過渡的な目標慣性補償モーメントMgTransTgtを算出する慣性補償モーメント算出部(過渡項算出部)249bとを有している。制御目標モーメント算出部249は、目標減衰モーメントMgDampTgt及び目標慣性補償モーメントMgTransTgtを加算して、制御目標モーメントMgTgtを算出する。以下、制御目標モーメント算出部249による制御目標モーメントMgTgtの算出について、詳細に説明する。
減衰制御モーメント算出部249aは、公知の平面2輪モデル(ヨー運動)をヨーモーメントについて整理した下記の式(10)におけるヨーレートγに掛かっている係数D1(減衰モーメント演算係数)をヨーレート補正量Δγ_Tgtに乗じることで、車両旋回時の収束性能を向上させるためのパラメータである目標減衰モーメントMgDampTgtの基本量MgDampを算出する。
つまり、基本量MgDampは、下記の式(11)から算出される。係数D1は、式(10)でγに掛かっている2/V(lf 2Kf+lr 2Kr)に相当する。
減衰制御モーメント算出部249aは、減衰モーメントゲイン算出部249cによって算出される減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainを基本量MgDampに乗算することによって、目標減衰モーメントMgDampTgtを算出する。つまり、目標減衰モーメントMgDampTgtは、下記の式(12)から算出される。算出された目標減衰モーメントMgDampTgtは、加算部249gへ入力される。
減衰モーメントゲイン算出部249cは、偏差Δγ_Stdに基づいて、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainを算出し、減衰制御モーメント算出部249aへ出力する。ここで、偏差Δγ_Stdは、進行路に沿って車両1000が走行するために必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量を図る指標として、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainの算出に用いられる。
左右輪の駆動力配分を制御するための制御量である制御目標モーメントMgTgtは、目標減衰モーメントMgDampTgt及び目標慣性補償モーメントMgTransTgtを加算して得られる。また、目標減衰モーメントMgDampTgtは、偏差Δγ_Stdに基づいて算出される減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainに応じて求められる。ゆえに、制御目標モーメントMgTgtは、偏差Δγ_Stdに基づいて、調整される。本実施形態では、操安制御部240が行う制御目標モーメントMgTgtの偏差Δγ_Stdに基づく調整及び後述するパワーステアリング調整部260が行うパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の偏差Δγ_Stdに基づく調整によって、ステアリング操舵についての違和感を抑制しつつ、車両の旋回支援における消費エネルギ量を低減することが可能となる。なお、偏差Δγ_Stdに基づく減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainの算出の詳細については、後述する。
慣性補償モーメント算出部249bは、公知の平面2輪モデル(ヨー運動)をヨーモーメントについて整理した式(10)において、ヨー加速度に掛かっている係数T1(慣性補償モーメント演算係数)をヨーレート補正量Δγ_Tgtの微分値に乗じることで、車両旋回時におけるヨー慣性を補償するためのパラメータである目標慣性補償モーメントMgTransTgtの基本量MgTransを算出する。つまり、基本量MgTransは下記の式(13)から算出される。係数T1は、式(10)でdγ/dtに掛かっているI(車両のヨー慣性モーメント)に相当する。ヨーレート補正量Δγ_Tgtの微分値は、微分部249dによって求められ、慣性補償モーメント算出部249bへ入力される。
慣性補償モーメント算出部249bは、慣性補償モーメントゲイン算出部249fによって算出される慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainを基本量MgTransに乗算することによって、目標慣性補償モーメントMgTransTgtを算出する。つまり、目標慣性補償モーメントMgTransTgtは、下記の式(14)から算出される。算出された目標慣性補償モーメントMgTransTgtは、加算部249gへ入力される。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、第1の基準ヨーレートγ_Std1と第2の基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdの推移に基づいて、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainを算出し、慣性補償モーメント算出部249bへ出力する。ゆえに、目標慣性補償モーメントMgTransTgtは、偏差Δγ_Stdの推移に基づいて、調整される。偏差Δγ_Stdの微分値は、微分部249eによって求められ、慣性補償モーメントゲイン算出部249fへ入力される。ここで、偏差Δγ_Stdの微分値は、路面状態の変動又はステアリング操舵のふらつきに起因する車体のふらつきの度合いを図る指標として、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainの算出に用いられる。
上述したように、制御目標モーメント算出部249は、偏差Δγ_Stdの推移に基づいて、目標慣性補償モーメントMgTransTgtを調整する。ここで、目標慣性補償モーメントMgTransTgtの調整は、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainが偏差Δγ_Stdの推移に基づいて算出されることによって実現される。以下、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainの算出について詳細に説明する。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、偏差Δγ_Stdの微分値の推移に基づいて、車体のふらつきの度合いが所定の度合いより大きい状態(以下、車体ふらつき状態とも呼ぶ)が継続的に存続しているか否かを判定する。例えば、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が大きいほど、車体のふらつきの度合いは大きいと考えられるので、慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が所定値より大きい場合に、車体の状態が車体ふらつき状態であると判定する。慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、車体ふらつき状態が継続的に存続していると判定された場合に、車体ふらつき状態が継続的に存続していると判定されない場合と比較して、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainとして、小さな値を算出する。それにより、車体のふらつきの度合いが大きい場合に生じ得る車両1000の過渡的な動きを抑えることによって、車両の安定性能を確保することができる。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、例えば、図5に示したマップM20を用いて、偏差Δγ_Stdの微分値の推移に基づいて、車体ふらつき状態が継続的に存続しているか否かを判定するためのカウンタ値を増減させる。図5は、第1基準ヨーレートγ_Std1と第2基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdの微分値とカウンタ変更量ΔCntとの関係を表すマップM20の一例を示す説明図である。
図5に示したように、カウンタ変更量ΔCntは、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_HIGH以上の場合に正の値となり、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_LOW以下の場合に負の値となり、閾値TH_HIGHと閾値TH_LOWとの大小関係は閾値TH_HIGH>閾値TH_LOWとなるようにマップM20が設定されている。また、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_LOWより大きく閾値TH_HIGHより小さい場合には、カウンタ変更量ΔCntは0となるようにマップM20が設定されている。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、マップM20に基づき、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_HIGH以上の場合には正のカウンタ変更量ΔCntによりカウンタ値を増加させ、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_LOW以下の場合には負のカウンタ変更量ΔCntによりカウンタ値を減少させる。また、慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、マップM20に基づき、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH_LOWより大きく閾値TH_HIGHより小さい場合にはカウンタ値を保持する。慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、カウンタ値が所定の閾値以上である場合に、車体ふらつき状態が継続的に存続していると判定する。一方、慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、カウンタ値が所定の閾値より小さい場合に、車体ふらつき状態が継続的に存続していないと判定する。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、カウンタ値が所定の閾値以上である場合に、カウンタ値が所定の閾値より小さい場合と比較して、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainとして、小さな値を算出する。慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、カウンタ値が所定の閾値以上である場合に、例えば、図6に示したマップM30を用いて、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainを算出する。図6は、第1基準ヨーレートγ_Std1と第2基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdの微分値と慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainとの関係を表すマップM30の一例を示す説明図である。図6に示したマップM30において、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainは、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値に応じて0〜1の間の値が設定され、カウンタ値が所定の閾値より小さい場合においては1となるように設定されている。例えば、図6に示したマップM30において、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainは、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH1_T以下の場合には1に設定され、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH1_T〜閾値TH2_Tの場合には偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が大きくなるにつれて減少するように設定され、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH2_T以上の場合には0に設定されている。
慣性補償モーメントゲイン算出部249fは、カウンタ値が所定の閾値以上である場合、かつ、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が所定の値より大きい場合に、カウンタ値が所定の閾値より小さい場合と比較して、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainとして、小さな値を算出してもよい。例えば、図6に示したマップM30において、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainは、偏差Δγ_Stdの微分値の絶対値が閾値TH1_Tより大きい場合に、1より小さい値となるように設定されてもよい。それにより、車体のふらつきの度合いが小さい場合には、車両1000の応答性能を重視する一方で、車体のふらつきの度合いが大きい場合に生じ得る車両1000の過渡的な動きを抑えることによって、車両1000の安定性能を確保することができる。また、車体のふらつきの度合いが大きい場合に目標慣性補償モーメントMgTransTgtを低減することによって、左右輪の駆動力配分を制御するための制御量である制御目標モーメントMgTgtを低減することができる。よって、操舵ふらつきが含まれる状況でも、ふらつき成分に伴い生じ得る不要なトルク制御を抑制することにより、不要なエネルギ消費を抑制することができる。ゆえに、車両1000の旋回を支援するために消費されるエネルギ量をより効果的に低減することができる。
なお、慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainの設定値の範囲は0〜1の間に限定されるものではなく、車両制御として成立する範囲であれば任意の値を取れる様に構成を変更することも、本発明の技術で成し得る範疇に入る。
加算部249gには、減衰制御モーメント算出部249aから目標減衰モーメントMgDampTgtが入力され、慣性補償モーメント算出部249bから目標慣性補償モーメントMgTransTgtが入力される。加算部249gは、目標減衰モーメントMgDampTgt及び目標慣性補償モーメントMgTransTgtを加算することによって、制御目標モーメントMgTgtを求める。すなわち、制御目標モーメントMgTgtは、下記の式(15)から算出される。算出された制御目標モーメントMgTgtは、モータ要求トルク算出部250へ出力される。
(2−5.モータ要求トルク算出部)
モータ要求トルク算出部250は、操安制御部240によって算出された制御目標モーメントMgTgtから制御目標ヨーレートγ_Tgtを実現するための左右輪の駆動力配分を制御する。具体的には、モータ要求トルク算出部250は、操安制御部240から出力された制御目標モーメントMgTgtに基づいて後輪104,106に対応するモータ112,114の各々のモータ要求トルクを算出し、算出されたモータ要求トルクでモータ112,114の各々を駆動させる。それにより、後輪104,106の左右輪の駆動力差により、制御目標ヨーレートγ_Tgtを実現するための旋回モーメントを車両に付与することができる。
(2−6.パワーステアリング調整部)
パワーステアリング調整部260は、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。具体的には、パワーステアリング調整部260は、第1の基準ヨーレートγ_Std1と第2の基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdに基づいて、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。例えば、パワーステアリング調整部260は、偏差Δγ_Stdに基づいて、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistを算出し、パワーステアリング機構140へ出力することによって、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。パワーステアリング機構140は、ドライバの操舵入力に基づいて求められる基準アシスト量を操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistが示す割合に応じて嵩上げしたアシスト量によって、転舵のアシストを行う。
(2−7.転舵のアシスト量の調整及び制御目標モーメントMgTgtの調整)
以下、後述するパワーステアリング調整部260が行うパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整について、操安制御部240が行う制御目標モーメントMgTgtの調整と合わせて説明する。ここで、制御目標モーメントMgTgtの調整は、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainが偏差Δγ_Stdに基づいて算出されることによって実現される。
パワーステアリング調整部260は、例えば、図7に示したマップM40を用いて、偏差Δγ_Stdに基づいて、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistを算出する。図7は、第1の基準ヨーレートγ_Std1と第2の基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdと操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistとの関係を表すマップM40の一例を示す説明図である。図7(図8)において、閾値TH1〜TH4は、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssist(減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGain)の切り替え閾値をそれぞれ示している。なお、閾値TH1〜TH4の大小関係は、閾値TH1<閾値TH2<閾値TH3<閾値TH4とする。
パワーステアリング調整部260は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、ドライバの操舵入力に基づいて求められる基準アシスト量と比較して、大きくなるようにパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。例えば、図7に示したように、マップM40において、偏差Δγ_Stdが閾値TH3より大きい場合に、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistは、パワーステアリングシステムによって基準値として算出される基準アシスト量(制御量)への割増率に相当する値が設定される。
一方、減衰モーメントゲイン算出部249cは、例えば、図8に示したマップM50を用いて、偏差Δγ_Stdに基づいて、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainを算出する。図8は、第1の基準ヨーレートγ_Std1と第2の基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdと減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainとの関係を表すマップの一例を示す説明図である。
操安制御部240は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、転舵のアシスト量のパワーステアリング調整部260によって調整される量が大きいほど、小さくなるように制御目標モーメントMgTgtを調整する。例えば、図7及び図8に示したように、マップM50において、偏差Δγ_Stdが閾値TH3より大きい場合に、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainは、パワーステアリング調整部260によって算出される操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistが大きいほど、小さくなるように設定される。
本実施形態に係る制御装置200によれば、左右輪の駆動力配分の制御及びパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整によって、車両1000の旋回の支援が行われる。それにより、車両1000の旋回の支援をパワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストのみによって実現しようとした場合に生じ得るステアリング操舵についての違和感を抑制することができる。
また、偏差Δγ_Stdが大きいほど、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量は大きいと考えられる。ここで、左右輪の駆動力配分の制御による旋回の支援では、パワーステアリング機構140による転舵のアシストによって車両の旋回を支援する場合と比較して、制御においてより多くのエネルギが消費される。本実施形態に係る制御装置200によれば、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量が比較的大きい場合において、パワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストによって車両1000の旋回の支援が行われる。それに伴い、左右輪の駆動力配分の制御における制御量が低減される。ゆえに、車両1000の旋回支援における消費エネルギ量を低減することができる。
ここで、閾値TH3は、車両1000の旋回支援において、操舵支援制御の介入に伴う違和感の抑制及び消費エネルギ量の低減の優先度並びに所定の操舵入力に対する旋回量の確保を考慮して適宜設定され得る。例えば、閾値TH3を大きくすることにより、操舵支援制御が介入するタイミングを遅らせながら駆動力配分制御による旋回支援を行うことができ、操舵支援制御の介入に伴う違和感を可能な限り抑制し得る。一方、閾値TH3を小さくすることで、操舵支援制御を早期に介入させ、消費エネルギ量の低減の効果を増大させつつ、所定の操舵入力に対する車両の旋回量を補償し得る。また、閾値TH3は、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量が左右輪の駆動力配分の制御によって実現可能な旋回の支援量の上限値となるような偏差Δγ_Stdの値に設定されてもよい。
また、パワーステアリング調整部260は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて増大するように、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整してもよい。例えば、図7に示したマップM40では、偏差Δγ_Stdが閾値TH3〜閾値TH4の区間において、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistは、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて増大するように設定されている。
一方、操安制御部240は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて減少するように、制御目標モーメントMgTgtを調整してもよい。例えば、図8に示したマップM50では、偏差Δγ_Stdが閾値TH3〜閾値TH4の区間において、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainは、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて減少するように設定されている。
それにより、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量が大きくなるほど、左右輪の駆動力配分の制御による車両1000の旋回の支援量に対する、パワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストによる車両1000の旋回の支援量の割合を増大させることができる。ゆえに、車両1000の旋回支援における消費エネルギ量をより効果的に低減することができる。
また、パワーステアリング調整部260は、偏差Δγ_Stdが所定の値より小さい場合に、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整しなくてもよい。例えば、図7に示したように、マップM40において、偏差Δγ_Stdが閾値TH3より小さい場合に、操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistは、0に設定される。
一方、操安制御部240は、偏差Δγ_Stdが所定の値より小さい場合に、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて増大するように、制御目標モーメントMgTgtを調整してもよい。例えば、図8に示したマップM50では、偏差Δγ_Stdが閾値TH1〜閾値TH2の区間において、減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainは、偏差Δγ_Stdが大きくなるにつれて増大するように設定されている。
それにより、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量が比較的小さい場合においては、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量に応じて左右輪の駆動力配分の制御による車両1000の旋回の支援が行われる。また、パワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストによる車両1000の旋回の支援は行われない。ゆえに、操舵支援制御が介入することに伴う違和感をより効果的に抑制しながら、ドライバのステアリング操舵に伴う所定の旋回量を確保することができる。
なお、パワーステアリング調整部260は、前輪舵角のアシスト要求値δReqをパワーステアリング機構140へ出力することによって、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整してもよい。パワーステアリング機構140は、前輪舵角のアシスト要求値δReqに基づいて、前輪舵角を変化させることによって、転舵をアシストする。具体的には、パワーステアリング調整部260は、第1基準ヨーレートγ_Std1と第2基準ヨーレートγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdに基づいて、前輪舵角のアシスト要求値δReqを算出する。より具体的には、下記の式(16)に示したように、前輪舵角のアシスト要求値δReqは、ステアリング補正ゲインSteerGainを前輪舵角の基準値δStdに乗算することで求められる。例えば、パワーステアリング調整部260は、式(16)におけるステアリング補正ゲインSteerGainを偏差Δγ_Stdに基づいて、0〜1の間で変化させることによって、前輪舵角のアシスト要求値δReqを算出する。ステアリング補正ゲインSteerGainとして、例えば、偏差Δγ_Stdが閾値TH3より小さい場合に0が算出され、偏差Δγ_Stdが閾値TH3より大きい場合に偏差Δγ_Stdに応じたアシスト要求値が算出されるように構成され得る。
<3.動作>
図9は、本実施形態に係る制御装置200が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9に示したように、まず、第1基準ヨーレート算出部210が第1基準ヨーレートγ_Std1を算出する(ステップS502)。次に、第2基準ヨーレート算出部220が第2基準ヨーレートγ_Std2を算出する(ステップS504)。そして、減算部230が第1基準ヨーレートγ_Std1から第2基準ヨーレートγ_Std2を減算することによって、γ_Std1とγ_Std2との差である偏差Δγ_Stdを算出する(ステップS506)。
続いて、減衰モーメントゲイン算出部249cが、偏差Δγ_Stdに基づいて減衰モーメント補正ゲインDampAdjustGainを算出する(ステップS508)。次に、慣性補償モーメントゲイン算出部249fが、偏差Δγ_Stdの微分値に基づいて慣性補償モーメント補正ゲインTransAdjustGainを算出する(ステップS510)。そして、パワーステアリング調整部260が、偏差Δγ_Stdに基づいて操舵アシスト嵩上げ要求値RequestForSteeringAssistを算出し、パワーステアリング機構140へ出力する(ステップS512)。
続いて、制御目標ヨーレート算出部241が、制御目標ヨーレートγ_Tgtを算出する(ステップS514)。次に、フィードバックヨーレート算出部245がフィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する(ステップS516)。そして、減算部247が、制御目標ヨーレートγ_Tgtからフィードバックヨーレートγ_F/Bを減算することによって、ヨーレート補正量Δγ_Tgtを算出する(ステップS518)。
続いて、減衰制御モーメント算出部249aが、目標減衰モーメントMgDampTgtを算出する(ステップS520)。次に、慣性補償モーメント算出部249bが、目標慣性補償モーメントMgTransTgtを算出する(ステップS522)。そして、加算部249gが、目標減衰モーメントMgDampTgt及び目標慣性補償モーメントMgTransTgtを加算して、制御目標モーメントMgTgtを算出する(ステップS524)。
本発明の効果を確認するために、本実施形態に係る制御を行う実施例及び比較例のそれぞれにおける各制御量、車両挙動及び消費電力についての試験を行った。当該試験は、本実施形態によれば、パワーステアリング調整部260によって、基準アシスト量と比較して、大きくなるようにパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量が調整される条件で行った。なお、係る条件において、本実施形態によれば、減衰モーメントゲイン算出部249cにより、転舵のアシスト量のパワーステアリング調整部260によって調整される量が大きいほど、小さくなるように制御目標モーメントMgTgtが調整される。
まず、図10〜図13を参照して、操舵がふらついていない状態での実施例及び比較例1についての試験結果を説明する。図11〜図13において、実線は、上述した本実施形態に係る制御装置200による制御を行う実施例についての結果を示している。また、破線は、本実施形態に係るパワーステアリング調整部260が行うパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整に相当する制御を行わず、左右輪の駆動力差による旋回の支援のみを行う比較例1についての結果を示している。
実施例及び比較例1ともに、図10の上図に示すようなステアリング操舵による走行を行った場合についての試験を行った。また、図10の下図に示すように、車両速度Vは、一定とした。
図11の上図は、ステアリング操舵角と車両に発生するヨーレートとの関係性についての試験結果を示す模式図である。図11の上図に示したように、実施例及び比較例1ともに各ステアリング操舵角に対応するヨーレートはほぼ一致した。また、図11の下図は、車両の横方向への移動量の推移についての試験結果を示す模式図である。図11の下図に示したように、実施例及び比較例1ともに各時刻における車両の横方向への移動量はほぼ一致した。当該結果から、本実施形態に係るパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整を行う場合であっても、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の調整に相当する制御を行わない場合と同等の車両挙動を実現することができることが確認できた。
図12の上図は、車両に発生するヨーレートとモータ要求トルク総量との関係性についての試験結果を示す模式図である。ここで、モータ要求トルク総量は、各モータのモータ要求トルクの合計値である。図12の上図に示したように、実施例では、比較例1と比較して、各ヨーレートに対応するモータ要求トルク総量の絶対値は概ね小さくなる。また、図12の下図は、モータ要求トルク総量の絶対値の推移についての試験結果を示す模式図である。図12の下図に示したように、実施例では、比較例1と比較して、各時刻におけるモータ要求トルク総量の絶対値は概ね小さくなる。
図13は、消費電力の推移についての試験結果を示す模式図である。比較例1における消費電力は、モータ要求トルク総量に基づいて算出される。また、実施例における消費電力は、モータ要求トルク総量に基づいて算出される電力に、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の基準アシスト量からの嵩上げ量に相当する電力を加算して得られる。図13に示したように、実施例について、各時刻における消費電力を積分して得られる領域S1の面積は、比較例1について、各時刻における消費電力を積分して得られる領域S2の面積と比較して、概ね小さくなる。ゆえに、実施例における消費電力量は、比較例1における消費電力量と比較して、概ね小さくなる。当該結果から、本発明により、車両1000の旋回支援における消費電力量を低減することができることが確認できた。
続いて、図14〜図17を参照して、操舵がふらついている状態での実施例及び比較例2についての試験結果を説明する。図15及び図16において、実線は、上述した実施例についての結果を示している。また、一点鎖線は、本実施形態に係る制御装置200と比較して、制御目標モーメント算出部249による目標慣性補償モーメントMgTransTgtの調整に相当する制御を行わない点が異なる比較例2を示している。
実施例及び比較例2ともに、図14の上図に示すようなステアリング操舵による走行を行った場合についての試験を行った。また、図14の下図に示すように、車両速度Vは、一定とした。
図15の上図は、ステアリング操舵角と車両に発生するヨーレートとの関係性についての試験結果を示す模式図である。図15の上図に示したように、実施例及び比較例2ともに各ステアリング操舵角に対応するヨーレートはほぼ一致した。また、図15の下図は、車両の横方向への移動量の推移についての試験結果を示す模式図である。図15の下図に示したように、実施例及び比較例2ともに各時刻における車両の横方向への移動量はほぼ一致した。当該結果から、本実施形態に係る目標慣性補償モーメントMgTransTgtの調整を行う場合であっても、目標慣性補償モーメントMgTransTgtの調整に相当する制御を行わない場合と同等の車両挙動を実現することができることが確認できた。
図16の上図は、目標慣性補償モーメントMgTransTgtの推移についての試験結果を示す模式図である。図16の上図に示したように、実施例では、比較例2と比較して、各時刻における目標慣性補償モーメントMgTransTgtの絶対値は概ね小さくなる。また、図16の下図は、モータ要求トルク総量の操舵のふらつき成分の絶対値の推移についての試験結果を示す模式図である。モータ要求トルク総量の操舵ノイズ成分は、図14の上図に示したステアリング操舵量と図10の上図に示したステアリング操舵量との差分に相当するステアリング操舵のふらつきに起因するモータ要求トルク総量の成分である。図16の下図に示したように、実施例では、比較例2と比較して、各時刻におけるモータ要求トルク総量のうち操舵のふらつきが占める成分の絶対値は概ね小さくなる。ゆえに、実施例では、比較例2と比較して、各時刻におけるモータ要求トルク総量の絶対値は概ね小さくなる。
図17は、実施例、比較例1及び比較例2のそれぞれについて、消費電力の推移についての試験結果を示す模式図である。なお、図17に示した比較例1についての結果は、左右輪の駆動力差による旋回の支援のみを行う比較例1についての、実施例及び比較例2と同様の条件での、試験結果である。比較例2における消費電力は、実施例における消費電力と同様に、モータ要求トルク総量に基づいて算出される電力に、パワーステアリング機構140による転舵のアシスト量の基準アシスト量からの嵩上げ量に相当する電力を加算して得られる。図17に示したように、実施例について、各時刻における消費電力を積分して得られる領域S10の面積は、比較例1及び比較例2の各々について、各時刻における消費電力を積分して得られる領域S20の面積及び領域S30の面積の各々と比較して、概ね小さくなる。ゆえに、実施例における消費電力量は、比較例1及び比較例2の各々における消費電力量と比較して、概ね小さくなる。当該結果から、本実施形態に係る慣性補償モーメントゲイン算出部249fによる目標慣性補償モーメントMgTransTgtの調整により、車両1000の旋回支援における消費電力量をより効果的に低減することができることが確認できた。
<4.むすび>
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、パワーステアリング調整部260は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、ドライバの操舵入力に基づいて求められる基準アシスト量と比較して、大きくなるようにパワーステアリング機構140による転舵のアシスト量を調整する。また、操安制御部240は、偏差Δγ_Stdが所定の値より大きい場合に、転舵のアシスト量のパワーステアリング調整部260によって調整される量が大きいほど、小さくなるように制御目標モーメントMgTgtを調整する。それにより、車両1000の旋回の支援をパワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストのみによって実現しようとした場合に生じ得るステアリング操舵についての違和感を抑制することができる。また、必要であると見込まれる車両1000の旋回の支援量が比較的大きい場合において、パワーステアリング機構140によるドライバの転舵のアシストによって車両1000の旋回の支援が行われる。それに伴い、左右輪の駆動力配分の制御における制御量が低減される。ゆえに、車両1000の旋回支援における消費エネルギ量を低減することができる。
なお、上記では、前輪操舵と駆動力配分の制御によって旋回支援制御を行う例について説明したが、本発明の技術的範囲は係る例に限定されず、例えば、前後輪の舵角を制御する4WSのシステムと駆動力配分の制御によって旋回支援制御を行ってもよい。
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。